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特許7414680インプリント方法、インプリント装置、及び膜形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】インプリント方法、インプリント装置、及び膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240109BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240109BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 564Z
H01L21/30 564D
B29C59/02 Z
C08L33/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020156112
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049853
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 剛志
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ オヌポン
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 貴大
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-065725(JP,A)
【文献】特開2016-219679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
C08L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物の上の第1の領域に光硬化性の第1のレジストを供給し、
前記第1のレジストに第1の光を照射し、
前記第1のレジストを含む前記処理対象物の上に第2のレジストを形成し、
前記第2のレジストにテンプレートを接触させ、
前記第2のレジストに前記テンプレートを接触させたまま、当該テンプレートを通して少なくとも前記第2のレジストに第2の光を照射することを含み、
前記第1の領域が凹部であり、予め取得された処理対象物上の段差情報に基づいて前記凹部が特定される、
インプリント方法。
【請求項2】
処理対象物の上の第1の領域に光硬化性の第1のレジストを供給し、
前記第1のレジストに第1の光を照射し、
前記第1のレジストを含む前記処理対象物の上に第2のレジストを形成し、
前記第2のレジストにテンプレートを接触させ、
前記第2のレジストに前記テンプレートを接触させたまま、当該テンプレートを通して少なくとも前記第2のレジストに第2の光を照射することを含み、
前記第1の光の光強度は、前記第2の光の光強度よりも小さい、
インプリント方法。
【請求項3】
処理対象物の上の第1の領域に光硬化性の第1のレジストを供給し、
前記第1のレジストに第1の光を照射し、
前記第1のレジストを含む前記処理対象物の上に第2のレジストを形成し、
前記第2のレジストにテンプレートを接触させ、
前記第2のレジストに前記テンプレートを接触させたまま、当該テンプレートを通して少なくとも前記第2のレジストに第2の光を照射することを含み、
前記第2のレジストはケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)、リン(P)、硫黄(S),ヒ素(As)、又は鉄(Fe)のうちの少なくとも一種類の無機元素を含む、
インプリント方法。
【請求項4】
処理対象物の上の第1の領域に光硬化性の第1のレジストを供給し、
前記第1のレジストに第1の光を照射し、
前記第1のレジストを含む前記処理対象物の上に第2のレジストを形成し、
前記第2のレジストにテンプレートを接触させ、
前記第2のレジストに前記テンプレートを接触させたまま、当該テンプレートを通して少なくとも前記第2のレジストに第2の光を照射することを含み、
酸素系ガスを用いたエッチングにおいて、前記第1のレジストのエッチングレートが、下地層のエッチングレートの-10%から+10%の範囲にある、
インプリント方法。
【請求項5】
処理対象物の上の第1の領域に光硬化性の第1のレジストを供給し、
前記第1のレジストに第1の光を照射し、
前記第1のレジストを含む前記処理対象物の上に第2のレジストを形成し、
前記第2のレジストにテンプレートを接触させ、
前記第2のレジストに前記テンプレートを接触させたまま、当該テンプレートを通して少なくとも前記第2のレジストに第2の光を照射することを含み、
前記第1の光の照射後の前記第1のレジストが、100から1000(mPa・s)までの範囲の粘度を有する、
インプリント方法。
【請求項6】
前記第1のレジストの供給がインクジェット法により行われる、
請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項7】
前記第2のレジストの形成が回転塗布法により行われる、
請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項8】
前記第1の光は、前記第1のレジストを感光可能な波長領域の波長を有する、
請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項9】
前記第1のレジストは有機物を含み、少なくともアクリル基、またはメタクリル基を含む、
請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項10】
処理対象物の段差情報を取得する段差計測ユニットと、
前記処理対象物の段差情報に基づき標的領域を決定する演算ユニットと、
前記処理対象物の前記標的領域に第1のレジストを供給する第1のレジスト供給ユニットと、
前記第1のレジストに光を照射する第1の光源と、
前記第1のレジストを含む前記処理対象物の上に第2のレジストを形成する第2のレジスト供給ユニットと、
テンプレートを保持する保持部と、
前記保持部を前記第2のレジストに押印する駆動手段と、
前記テンプレートを通して前記第2のレジストに光を照射する第2の光源と
を備える、インプリント装置。
【請求項11】
処理対象物の段差情報を取得する段差計測ユニットと、
前記段差情報に基づき標的領域を決定する演算ユニットと、
前記標的領域に第1の液体を供給する第1の液体供給ユニットと、
前記第1の液体に光を照射する光源と、
前記第1の液体を含む前記処理対象物の上に第2の液体を形成する第2の液体供給ユニットと
を備える、膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インプリント方法、インプリント装置、及び膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチングマスクを形成する方法としてインプリントリソグラフィが知られている。インプリントリソグラフィでは、エッチング対象の上に形成されたレジスト層に対して、回路パターンに対応した凹凸部を有するテンプレートが押し当てられる。レジスト層にテンプレートを押し付けると、テンプレートの凹部にレジストが充填されてレジスト層に凸部が形成される一方で、テンプレートの凸部とエッチング対象との間には、レジストが残ることとなる。このようにして残るレジストはレジスト残膜とも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-202982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、好適に下層をエッチング可能なインプリント方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によるインプリント方法は、エッチング対象の上の標的領域に光硬化性の第1のインプリントレジストを供給し、前記第1のインプリントレジストに第1の光を照射し、前記第1のインプリントレジストを含む前記エッチング対象の上に第2のインプリントレジストを形成し、前記第2のインプリントレジストにテンプレートを接触させ、前記第2のインプリントレジストに前記テンプレートが接触させたまま、当該テンプレートを通して少なくとも前記第2のインプリントレジストに第2の光を照射することを含み、前記標的領域が凹部であり、予め取得されたエッチング対象上の段差情報に基づいて前記凹部が特定される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態によるインプリント方法の概略を説明する説明図である。
図2図2は、第1の実施形態によるインプリント方法を説明する一部断面図である。
図3図3は、図2に引き続き、第1の実施形態によるインプリント方法を説明する一部断面図である。
図4図4は、比較例によるインプリント方法を説明する一部断面図である。
図5図5は、図4に引き続き、比較例によるインプリント方法を説明する一部断面図である。
図6図6は、第2の実施形態によるインプリント装置を模式的に示す上面図である。
図7図7は、第3の実施形態による膜形成装置を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間、または、種々の層の厚さの間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0008】
(第1の実施形態)
図1から図3までを参照しながら、第1の実施形態によるインプリント方法について説明する。図1は、本インプリント方法の概略を説明する説明図であり、図2及び図3は、本インプリント方法により形成されるパターンの一例を示す断面図である。
【0009】
図1に示すように、本インプリント方法は、基板Sの表面の段差情報を取得して、段差情報に基づいて凹部RPを特定し(図1(A))、凹部RPに有機系レジストCRを供給し(図1(B))、基板Sの表面と有機系レジストCRの上面に無機系レジストSRを塗布すること(図1(C))を含んでいる。ここで、段差情報は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や、原子間力顕微鏡(AFM)、接触式又は非接触式のスタイラス表面粗さ計などを用いて、基板Sの表面を測定することにより取得され得る。また、特定の設計データに基づいて基板Sに凹凸が形成されている場合には、その設計データから段差情報を抽出してもよい。段差情報は、例えば、基板S上の座標位置と、その位置における高さとを含むことができる。そして、予め定めた閾値よりも深い部分を凹部RPと特定することができる。
【0010】
なお、基板Sの表面には、例えば、複数の層が形成されていてもよく、この場合、段差情報は、最上層の表面についての測定から取得されてよい。また、この場合には、最上層により凹部RPが規定されてよい。なお、最上層は、例えば、スピン・オン・カーボン(SOC)などのカーボンを含む材料で形成されてよい。
【0011】
有機系レジストCRの凹部への供給には、例えばインクジェットを用いることができる一方、無機系レジストSRの塗布には、例えばスピンコーターを用いることができる。
【0012】
次に、図2及び図3を参照しながら、第1の実施形態によるインプリント方法を具体的に説明する。なお、図2及び図3は、基板Sの表面と凹部RPを横切る断面の一部を示している。また、以下の説明では、基板Sをエッチング対象とし、基板S上に形成されたSOC膜10をエッチングマスクに加工する場合を例にとるが、エッチング対象は、基板Sに限らず、基板Sの上方に形成される層、または複数の層のうちの最上層であってよい。
【0013】
図2(A)を参照すると、基板Sの上にSOC膜10が形成され、その上に接着層11が形成されている。SOC膜10には、基板Sの段差STを反映した凹部RPが形成されており、SOC膜10の上の接着層11もまた凹部RPに対してコンフォーマルに形成されている。接着層11は、後述するレジスト膜との接着性を向上させるために設けられ、例えば炭素を含む膜であってよく、レジストと強固な相互作用を有する官能基(例えば水酸基(OH基)やカルボキシル基(COOH基)、アミノ基(NH基)等)を含んでもよい。なお、以下の説明において、凹部RPの周囲の面を上面Uと言う場合がある。
【0014】
次に、図2(B)に示すように、凹部RPに向けて、インクジェット・ノズルIJから有機系レジストCRが吐出され、有機系レジストCRが凹部RPに供給される。凹部RPの位置は上記の段差情報から特定され得る。ここに言う有機系レジストCRは、例えば有機物から構成され、少なくともアクリル基又はメタクリル基を含むレジスト材料であってよい。また、各凹部RPに対して供給される有機系レジストCRの量は、段差情報から求まる凹部RPの容積を超えない範囲で、当該容積にできるだけ近くなるように決定されてよい。なお、インクジェット・ノズルIJから凹部RPへ吐出された有機系レジストCRは、液滴のまま凹部RPに付着し、互いに融合しない傾向にある。これは、液滴同士に静電反発力が働くためである。
【0015】
次に、図2(C)に示すように、凹部RPに供給された有機系レジストCRに対して、光LTが照射される。光LTは、使用する有機系レジストCRが感光され得る波長を有している。ただし、光LTの強度は、有機系レジストCRの粘度を増加させる程度であってよく、また、有機系レジストCRの溶媒の蒸発が抑制される程度あってよい。例えば、光LTの強度は、後述するテンプレートを通した光照射の際の光強度より小さい光強度とすることができる。具体的には、例えば10(mPa・s)程度の粘度が光LTの照射により、例えば100~1,000(mPa・s)の範囲の粘度まで上昇する程度に有機系レジストCRに対して光LTを照射することが望ましい。すなわち、光LTの強度は、光LTの照射によっても、有機系レジストCRが完全に硬化しない程度とすることができる。そのような光LTの強度は、例えば予備実験等を行うことにより決定することができる。なお、光LTは、凹部RPに対して局所的に照射されてもよく、上面Uを含めた全面に照射されてもよい。
【0016】
次いで、図2(D)に示すように、上面Uと、有機系レジストCRが供給された凹部RPとを覆うように例えばスピンコーターにより無機系レジストSRが塗布される。ここに言う無機系レジストSRは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)、リン(P)、硫黄(S),ヒ素(As)、鉄(Fe)のうちの1種類又は2種類以上の無機元素を含むレジストであってよい。ここで、液滴のまま凹部RPに付着していた有機系レジストCRは無機系レジストSR(又はその溶媒)により融合する。また、無機系レジストSRの粘度は100~400(mPa・s)程度である一方、有機系レジストCRの粘度は光LTの照射により高くなっているため、両者は、互いの界面で僅かに混ざり合うものの、全体としては混ざり合うことは殆どない。このため、凹部RPは、有機系レジストCRにより占有されることとなる(図3(A)参照)。そして、図3(A)に示すように、主に無機系レジストSRに対してテンプレートTPが押し当てられる。テンプレートTPが無機系レジストSRに接触した状態で、テンプレートTPを通して光を照射することにより、無機系レジストSR及び有機系レジストCRが硬化する。この後、テンプレートTPが無機系レジストSRから剥離される。
【0017】
その結果、主に無機系レジストSRが、図3(B)に示すように、テンプレートTPの凹凸形状を反映した凹凸形状を有することとなる。ここで、無機系レジストSRの凸部Pの間には(テンプレートTPが押し付けられたときにテンプレートTPの凸部に対応する部分には)、残膜12が残っている。残膜12は、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)法によりエッチングされて除去される(図3(C))。なお、残膜12の除去の際には、無機系レジストSRの凸部Pもエッチングされ、その高さもまた低くなる。
【0018】
続けて、無機系レジストSRがマスクとして利用され、接着層11やSOC膜10、有機系レジストCRが酸素系ガスを用いたRIE法によりエッチングされる。これにより、図3(D)に示すように、基板Sに対するエッチングマスクEMが得られる。この後、エッチングマスクEMを利用して基板Sをエッチングすると、テンプレートTPが有していた回路パターンが基板Sに転写される。
【0019】
なお、酸素系ガスを用いたRIE法によるエッチングの際、有機系レジストCRのエッチングレート(nm/秒)が、接着層11及びSOC膜10のエッチングレートの-10%から+10%の範囲にあることが好ましい。これによれば、有機系レジストCRと、接着層11及びSOC膜10とをほぼ同じレートでエッチングすることが可能となる。ただし、基板Sの上面US(図3(D))が露出した後に、下面LSが露出するまでのエッチングに要する時間を短縮するためには、有機系レジストCRのエッチングレートは、上記の範囲内で大きいことが望ましい。なお、このようなエッチングレート条件は、有機系レジストCRのレジスト材料を適宜選択したり、RIE法における諸条件を調整したりすることにより満たされてよい。
【0020】
次に、第1の実施形態によるインプリント方法の効果について、比較例を参照しながら説明する。図4及び図5は、比較例によるインプリント方法を説明する説明図であり、図2及び図3と対応している。
【0021】
図4(A)を参照すると、基板Sの上にSOC膜10が形成され、その上に接着層11が形成されている。この比較例においても、基板Sの凹部を反映した凹部RPが形成されている。そして、上面Uと凹部RPを覆うように無機系レジストSRが塗布されている。すなわち、第1の実施形態によるインプリント方法における、インクジェット・ノズルIJから凹部RPに有機系レジストCRを供給し、光LTを照射する工程は比較例には無い。無機系レジストSRが塗布される際、凹部RPは、無機系レジストSRによって平坦に埋め込まれる。すなわち、無機系レジストSRの表面は、上面Uの上と凹部RPの上とで、ほぼ同一面を構成している。言い換えると、無機系レジストSRは、上面Uの上では薄く、凹部RPでは厚くなる。
【0022】
次いで、図4(B)に示すように、無機系レジストSRに対してテンプレートTPが押し当てられて、テンプレートTPの凹凸形状が無機系レジストSRに転写される。続けて、図4(C)に示すようにフッ素系ガスを用いたRIE法によって残膜12が除去される。ここで、図4(D)に示すように上面Uの上の残膜12が除去されても、凹部RP内には残膜12が残っている。無機系レジストSRは、接着層11及びSOC膜10をエッチングするときの酸素系ガスを用いたRIE法によっては殆どエッチングされないため、凹部RPに残る無機系レジストSRの残膜12は除去されなければならない。このため、凹部RPの残膜12が除去されるまで、残膜12の除去が継続される。そして、凹部RPの残膜12が除去されて、エッチングマスクEMC(図5(A))が得られる。
【0023】
残膜12の除去中には、無機系レジストSRの凸部Pもまたフッ素系ガスを用いたRIE法によりエッチングされるため、その高さが全体的に低くなる。したがって、図5(A)に示すように、凸部Pは、凹部RPにおいては、後の接着層11及びSOC膜10をエッチングするのに十分な高さを有することができるとしても、上面Uでは、十分な高さを有することができない可能性がある。すなわち、酸素系ガスを用いたRIE法により接着層11及びSOC膜10をエッチングする際には、エッチング終了まで無機系レジストSRが残るべきところ、図5(B)に示すように、基板Sの段差の上面USの上方においては消失してしまう事態ともなる。そうすると、所望の回路パターン(凹凸パターン)が転写されてないこととなる。
【0024】
上述のとおり、比較例においては、無機系レジストSRは、上面Uの上で薄く、凹部RPで厚い(図4(A))。このため、テンプレートTPを押し当てた後に、凹部RPに厚い残膜12が残り(図4(C)、図4(D))、これを除去するためのエッチング時間が長くなる。そうすると、残膜12の除去後、無機系レジストSRの上面Uの上の厚さは、凹部RPでの厚さに対して相対的に更に薄くなる(図5(A))。このため、無機系レジストSRを利用して接着層11及びSOC膜10をエッチングしている間に、上面Uで無機系レジストSRが消失する可能性が高くなってしまう。
【0025】
これに対して、第1の実施形態によるインプリント方法においては、凹部RPは実質的に有機系レジストCRで占有され、その上に無機系レジストSRが設けられている。このため、無機系レジストSRの厚さが、上面Uの上と、凹部RPの上方とで大きく相違することがない。また、有機系レジストCRは、酸素系ガスを用いたRIE法により、接着層11及びSOC膜10のエッチングレートに匹敵するエッチングレートでエッチングされ得るため、予め除去しておく必要もない。すなわち、残膜12を除去するエッチングに要する時間は、上面Uの上の残膜12を除去するまでの時間で十分であり、比較例の場合よりも短くて済む。
【0026】
以上のことは、図3(C)と図5(A)とを対比するとより明らかとなる。接着層11及びSOC膜10のエッチングを開始する時点において、比較例では、図5(A)に示すように、無機系レジストSRの上面Uの上の凸部Pは、凹部RPにおける凸部Pよりも低くなっている。一方、第1の実施形態によるインプリント方法においては、無機系レジストSRは、上面Uの上と、凹部RPの上方とで、ほぼ同じ厚さHを有することができる。したがって、接着層11及びSOC膜10のエッチング中においても、無機系レジストSRは一様に薄くはなるものの、上面Uの上と、凹部RPの上方とで、相対的な厚さが変化することは殆どない。また、上述のとおり、有機系レジストCRもまた接着層11及びSOC膜10とほぼ同時にエッチングされていくため、無機系レジストSRのパターンがそのまま下地層に転写することができる。以上より、第1の実施形態によるインプリント方法の利点が理解される。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、図6を参照しながら、第2の実施形態によるインプリント装置を説明する。図6に示すように、本実施形態によるインプリント装置100は、基板搬入出ユニット101、搬送路102、基板段差計測ユニット103、第1の液適用ユニット104、第2の液適用ユニット105、インプリントユニット106、及び制御ユニット107を有している。
【0028】
基板搬入出ユニット101は、基板ステージ101Sを有している。基板ステージ101Sは、例えば、図中のY方向に移動可能であり、搬送路102に移動可能に設けられる搬送ロボット102Rと協働し、基板搬入出ユニット101と搬送路102との間で基板Sの受け渡しを可能とする。
【0029】
搬送路102は、基板搬入出ユニット101、基板段差計測ユニット103、第1の液適用ユニット104、第2の液適用ユニット105、インプリントユニット106を相互に接続し、これらのユニット101,103~106間での基板Sの搬送を許容する。また、搬送路102に設けられる搬送ロボット102Rは、台座PD及び搬送アームAMを有している。台座PDは、所定の駆動機構により搬送路102の長手方向に沿って移動可能である。搬送アームAMは台座PDに対して搬送路102の長手方向に摺動可能であり、所定の軸を中心に回転可能でもある。また、搬送アームAMの先端には、例えば吸引機構を有するフォークFが設けられている。搬送ロボット102Rは、例えば、搬送アームAMを基板搬入出ユニット101内へ伸ばし、フォークFで基板Sを吸着して保持しつつ基板ステージ101S上の基板Sを受け取り、例えば、基板段差計測ユニット103へ搬送する。
【0030】
基板段差計測ユニット103は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、又は接触式若しくは非接触式のスタイラス表面粗さ計を有することができる。基板段差計測ユニット103は、搬送ロボット102Rによって搬送された基板Sの表面を計測し、段差情報を生成する。段差情報は、後述する制御ユニット107へ送信される。
【0031】
第1の液適用ユニット104は、基板保持ステージ104S、インクジェット塗布機104I、及び第1の光照射部104Lを有している。基板保持ステージ104Sには、搬送ロボット102Rから搬送される基板Sが載置される。インクジェット塗布機104Iは、制御ユニット107からの指示信号に基づき、基板保持ステージ104Sに保持された基板Sの表面の凹部RP(図2)に対してインクジェット・ノズルIJ(図2)から例えば有機系レジストCRを吐出することができる。第1の光照射部104Lは、有機系レジストCRを感光可能な波長を有する光を発する光源(不図示)を有する。これにより、第1の光照射部104Lは、制御ユニット107からの指示信号に従って、凹部RPに有機系レジストCRが吐出された基板Sに対して光を照射する。なお、光源は、基板全面に光を照射可能な大型のランプを有してよく、また、凹部RPに対して光を照射可能な小型のランプを有してもよい。小型のランプの場合には、小型のランプを移動可能に支持する支持部を併せて設けることが好ましい。
【0032】
第2の液適用ユニット105は、例えばスピンコーターを有することができる。すなわち、第2の液適用ユニット105は、搬送ロボット102Rにより受け取った基板Sを回転可能に保持する保持部105Hと、保持部105Hにより保持される基板Sの周囲を囲むカップ105Cと、保持部105Hに保持される基板Sに対して例えば無機系レジストSRを滴下することができるディスペンサーノズル105Nとを有する。このような構成により、第2の液適用ユニット105は、基板Sを高速回転させることにより基板上に滴下された無機系レジストSRを遠心力で広げてレジスト層を形成する。
【0033】
インプリントユニット106は、テンプレートを交換可能に保持するテンプレート保持部(不図示)と、基板上に形成されたレジスト層に対してテンプレートを押し付けるようにテンプレート保持部を駆動する駆動機構(不図示)と、レジスト層に光を照射する第2の光照射部106Lとを有することができる。第2の光照射部106Lは、テンプレートが押し付けられたレジストが感光可能な波長を有する光を出射する。これにより、第2の液適用ユニット105により形成された無機系レジストSRに対してテンプレートTP(図3)が押し付けられ、押し付けられたまま光が照射されて無機系レジストSRが硬化する。
【0034】
制御ユニット107は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして実現されてよい。また、制御ユニット107は、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を始めとするハードウェアにより実現されてもよい。制御ユニット107は、制御プログラムや各種のデータに基づいてインプリント装置100を包括的に制御する。具体的には、制御ユニット107は、基板段差計測ユニット103により生成された段差情報に基づいて、凹部RPの位置やサイズを示す信号を生成することができる。そして、その信号に基づいて、第1の液適用ユニット104を制御することにより、凹部RPに適量の有機系レジストCRが供給されることとなる。また、制御ユニット107は、制御プログラムや各種のデータに基づいて種々の指示信号を生成し、生成した指示信号を基板搬入出ユニット101、搬送ロボット102R、基板段差計測ユニット103、第1の液適用ユニット104、第2の液適用ユニット105、インプリントユニット106等へ送信する。プログラムや各種データは、例えばハード・ディスク・ドライブ(HDD)や半導体メモリ、サーバなどの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体から有線又は無線でダウンロードされ得る。
【0035】
なお、制御ユニット107には、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置が接続されてよく、例えばキーボードやコンピュータマウスなどの入力装置が接続されてもよい。
【0036】
上記の構成を有するインプリント装置100によれば、例として第1の実施形態によるインプリント方法における各工程が実施され得る。したがって、本実施形態によるインプリント装置100によっても、第1の実施形態によるインプリント方法と同様の効果が発揮される。また、基板搬入出ユニット101、基板段差計測ユニット103、第1の液適用ユニット104、第2の液適用ユニット105、及びインプリントユニット106が搬送路102により接続され、搬送ロボット102Rにより基板Sが各ユニット101,103から106に搬送されるため、第1の実施形態によるインプリント方法の各工程を連続的に効率よく実施することが可能となる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、図7を参照しながら、第3の実施形態による膜形成装置を説明する。図7に示すように、本実施形態による膜形成装置200は、基板搬入出ユニット201、搬送室202、基板段差計測ユニット203、第1の液適用ユニット204、光照射ユニット205、第2の液適用ユニット206、基板加熱ユニット207、及び制御ユニット208を有している。
【0038】
基板搬入出ユニット201は、複数の(図示の例では4つの)基板格納カセット201Aを収容することができる。基板格納カセット201Aは、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)と呼ばれる密閉型の基板格納カセットであってよい。また、基板搬入出ユニット201は、基板ステージ201Sと、不図示の搬送アームとを有する。この搬送アームにより、基板格納カセット201Aから基板ステージ201Sへ基板Sが搬送され載置される。基板ステージ201Sは、図中のY軸方向に移動可能であり、搬送室202に移動可能に設けられる搬送ロボット202Rと協働し、基板搬入出ユニット201と搬送室202との間での基板Sの受け渡しが可能となる。
【0039】
搬送室202は、基板搬入出ユニット201、基板段差計測ユニット203、第1の液適用ユニット204、光照射ユニット205、第2の液適用ユニット206、及び基板加熱ユニット207を相互に接続し、これらのユニット201,203~207間での基板Sの搬送を許容する。また、搬送室202に設けられる搬送ロボット202Rは、第2の実施形態によるインプリント装置の搬送ロボット102Rと同じ構成を有することができる。
【0040】
基板段差計測ユニット203は、第2の実施形態によるインプリント装置の基板段差計測ユニット103と同じ構成を有することができ、基板Sの表面を計測し、段差情報を生成する。段差情報は、後述する制御ユニット208へ送信される。
【0041】
第1の液適用ユニット204は、基板保持ステージ204Sと、インクジェット塗布機204Iとを有している。基板保持ステージ204Sには、搬送ロボット202Rから搬送される基板Sが載置される。インクジェット塗布機204Iは、制御ユニット107からの指示信号に基づき、基板保持ステージ204Sに保持された基板Sの表面の凹部RP(図2)に対してインクジェット・ノズルIJ(図2)から例えば有機系レジストCRを吐出することができる。これにより、有機系レジストCRの液滴が凹部RPに付着する。
【0042】
光照射ユニット205は、基板ステージ205Sと、有機系レジストCRを感光可能な波長を有する光を発する光源205Lを有することができる。光照射ユニット205は、搬送ロボット202Rによって第1の液適用ユニット204から搬送され、基板ステージ205S上に載置された基板Sに対して、光を照射する。なお、光源は、基板全面に光を照射可能な大型のランプを有してよく、また、凹部RPに対して光を照射可能な小型のランプを有してもよい。小型のランプの場合には、小型のランプを移動可能に支持する支持部を併せて設けることが好ましい。
【0043】
第2の液適用ユニット206は、例えばスピンコーターを有することができる。すなわち、第2の液適用ユニット206は、搬送ロボット202Rにより基板Sを受け取り回転可能に保持する保持部206Hと、保持部206Hに保持される基板Sを囲むカップ206Cと、保持部206Hに保持される基板Sに例えば無機系レジストSRを滴下することができるディスペンサーノズル206Nとを有する。第2の液適用ユニット206は、基板Sを高速回転させることにより基板上に滴下された無機系レジストSRを遠心力で広げてレジスト層を形成する。
【0044】
基板加熱ユニット207は基板ステージ207Sを有する。基板ステージ207Sは、内部にヒーターを有することができ、不図示の温調器により、基板ステージ207Sの温度を所定の温度に維持することが可能である。
【0045】
制御ユニット208は、第2の実施形態によるインプリント装置100における制御ユニット107と同様に構成されてよい。制御ユニット208は、制御プログラムや各種のデータに基づいて種々の指示信号(凹部RPの位置及びサイズを示す信号を含む)を生成し、生成した指示信号を基板搬入出ユニット201、搬送ロボット202R、基板段差計測ユニット203、第1の液適用ユニット204、光照射ユニット205、第2の液適用ユニット206、及び基板加熱ユニット207等へ送信する。プログラムや各種データは、例えばハード・ディスク・ドライブ(HDD)や半導体メモリ、サーバなどの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体から有線又は無線でダウンロードされ得る。
【0046】
なお、制御ユニット208には、上述の制御ユニット107と同様に、表示装置や入力装置が接続されてよい。
【0047】
上記の構成を有する膜形成装置200によれば、例として第1の実施形態によるインプリント方法における無機系レジストSRの塗布までの工程が実施され得る。したがって、本実施形態による膜形成装置200によっても、下地層の凹部RP(図2)を実質的に有機系レジストCRで埋め込み、その上に無機系レジストSRを形成することができる。よって、1の実施形態によるインプリント方法と同様の効果が発揮され得る。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0049】
例えば、第1の実施形態において、インクジェット・ノズルIJからの有機系レジストCRの凹部RPへの吐出は2回又は3回以上行われてもよい。2回行う場合には、例えば、2回目には、1回目の吐出により凹部RPに付着した液滴の隙間に有機系レジストCRを吐出してよい。また、2回目の吐出の前に、一回目の吐出による有機系レジストCRの液滴に対して光を照射してもよい。
【符号の説明】
【0050】
S…基板、10…SOC膜、11…接着層、RP…凹部、CR…有機系レジスト、SR…無機系レジスト、IJ…インクジェット・ノズル、LT…光、U…上面、EM…エッチングマスク、P…凸部、12…残膜、100…インプリント装置、101,201…基板搬入出ユニット、102…搬送路、102R,202R…搬送ロボット、103,203…基板段差計測ユニット、104,204…第1の液適用ユニット、104L…第1の光照射部、105,206…第2の液適用ユニット、106…インプリントユニット、106L…第2の光照射部、107…制御ユニット、200…膜形成装置、202…搬送室、205…光照射ユニット、207…基板加熱ユニット、208…制御ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7