(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ガス絶縁変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20240109BHJP
H01F 27/20 20060101ALI20240109BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01F27/32 130
H01F27/20
H01F30/10 H
H01F30/10 S
(21)【出願番号】P 2020177312
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水澤 綾
(72)【発明者】
【氏名】森 繁和
(72)【発明者】
【氏名】中澤 義基
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和磨
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-092113(JP,U)
【文献】特開2009-224690(JP,A)
【文献】特開昭56-069807(JP,A)
【文献】特開2020-072147(JP,A)
【文献】特開2003-197435(JP,A)
【文献】特開平11-154615(JP,A)
【文献】特開昭60-074410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/08-27/22
H01F 27/28
H01F 27/29-27/32
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性を有する筒状のバリアと、
前記バリアの径方向の外側に配置され、前記バリアの周方向に巻回された円板巻線と、
電気絶縁性を有し、冷却ガスが通過可能な冷却ガス道を有するバンドと、
前記バリアの軸方向に隣り合う前記円板巻線の間に配置されたスペーサと、
前記軸方向に延び、前記スペーサを保持するレールと、を備え、
前記円板巻線は、前記径方向において最も内側に配置される最内側ターンを有し、
前記最内側ターンは、前記バリアの外周面と接
し、
前記円板巻線は、前記径方向において前記最内側ターンの外側に配置され、前記最内側ターンと隣接する隣接ターンを有し、
前記バンドは、前記径方向において前記最内側ターンと前記隣接ターンとの間に配置され、
前記レールは、前記径方向において前記最内側ターンと前記隣接ターンとの間に配置され、
前記レールは、前記径方向に窪む凹部を有し、
前記バンドは、前記径方向において前記凹部と重なる凸部を有する
ガス絶縁変圧器。
【請求項2】
前記最内側ターンは、
前記バリアの周方向に延びる最内側ターン本体と、
前記最内側ターン本体に巻回された絶縁パーチと、を備える
請求項
1に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項3】
前記絶縁パーチは、前記最内側ターン本体に多重に巻回される
請求項
2に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項4】
前記最内側ターンは、電流が流されず、かつ、前記隣接ターンと同電位とされる
請求項1から
3のいずれか一項に記載のガス絶縁変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス絶縁変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
タンク内に絶縁ガスを封入したガス絶縁変圧器が利用されている。ガス絶縁変圧器は、バリア及び円板巻線を備える。バリアは、電気絶縁性を有する。バリアは、筒状に形成される。円板巻線は、バリアの径方向の外側に配置される。円板巻線は、バリアの周方向に巻回される。絶縁ガスであるSF6は地球温暖化係数が高い。SF6の代替ガスとして、ドライエア、N2またはCO2などの利用が検討されている。代替ガスは、絶縁性能及び冷却性能ともにSF6よりも低いので、放電のバラツキが大きい。代替ガスを利用する場合でも、円板巻線とバリアとの間の絶縁性能を向上できるガス絶縁変圧器が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-33987号公報
【文献】特開2010-283061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、代替ガスを利用する場合でも、円板巻線とバリアとの間の絶縁性能を向上することができるガス絶縁変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のガス絶縁変圧器は、バリアと、円板巻線と、バンドと、スペーサと、レールと、を持つ。バリアは、電気絶縁性を有する。バリアは、筒状に形成される。円板巻線は、前記バリアの径方向の外側に配置される。円板巻線は、前記バリアの周方向に巻回される。円板巻線は、前記径方向において最も内側に配置される最内側ターンを有する。最内側ターンは、前記バリアの外周面と接する。バンドは、電気絶縁性を有する。バンドは、冷却ガスが通過可能な冷却ガス道を有する。スペーサは、前記バリアの軸方向に隣り合う前記円板巻線の間に配置される。レールは、前記軸方向に延びる。レールは、前記スペーサを保持する。円板巻線は、前記径方向において最も内側に配置される最内側ターンを有する。最内側ターンは、前記バリアの外周面と接する。円板巻線は、前記最内側ターンと隣接する隣接ターンを有する。隣接ターンは、前記径方向において前記最内側ターンの外側に配置される。バンドは、前記径方向において前記最内側ターンと前記隣接ターンとの間に配置される。レールは、前記径方向において前記最内側ターンと前記隣接ターンとの間に配置される。レールは、前記径方向に窪む凹部を有する。バンドは、前記径方向において前記凹部と重なる凸部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態のガス絶縁変圧器の部分断面斜視図。
【
図3】
図4のIII-III断面を含む、スペーサの断面図。
【
図4】
図3の矢視IVから見た、レールの貫通孔及びバンドの凸部を示す図。
【
図5】第2実施形態のガス絶縁変圧器の部分断面図。
【
図9】第1実施例及び第2実施例の絶縁破壊電圧を比較例と共に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のガス絶縁変圧器を、図面を参照して説明する。
本願において、極座標系のZ方向、R方向およびθ方向が以下のように定義される。Z方向は筒状のバリアの軸方向である。例えば、Z方向は鉛直方向である。+Z方向は鉛直方向の上側の方向(上方向)である。R方向はバリアの径方向である。+R方向は径方向の外側の方向である。例えば、R方向は水平方向である。θ方向はバリアの周方向である。
【0008】
まず、
図1から
図4を参照して、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態のガス絶縁変圧器1の部分断面斜視図である。例えば、ガス絶縁変圧器1は、ガス絶縁静止誘導電器である。例えば、ガス絶縁変圧器1は、変圧器2と、不図示のタンクと、を備える。
【0009】
変圧器2は、タンクの内部に収容される。タンクの内部空間には、特定ガスが封入される。特定ガスは、SF6より地球温暖化係数が低いガスである。例えば、特定ガスは、ドライエア、N2もしくはCO2などの自然由来ガス、またはこれらの混合ガスである。
【0010】
変圧器2は、不図示の鉄心と、低圧コイル10と、低圧絶縁筒11と、円板巻線12と、バリア13と、バンド14(
図2参照)と、スペーサ15と、レール16と、を備える。
【0011】
例えば、鉄心は、磁性材料により形成される。鉄心は、円柱状に形成される。鉄心の軸方向は、Z方向と平行に配置される。
【0012】
例えば、低圧コイル10は、絶縁被覆された平角銅線により構成される。低圧コイル10は、絶縁被覆された導線をθ方向に巻回して形成される。導線は、厚さ方向をR方向に一致させて、R方向に積層するように巻回される。低圧コイル10は、鉄心と同軸状に配置される。低圧コイル10は、鉄心の外周からR方向に所定距離を置いて配置される。低圧コイル10は、Z方向に複数並んで配置される。複数の低圧コイル10は、直列に接続される。
【0013】
低圧絶縁筒11は、電気絶縁性材料により形成される。低圧絶縁筒11は、円筒状に形成される。低圧絶縁筒11は、R方向において鉄心と低圧コイル10との間に配置される。低圧絶縁筒11は、鉄心及び低圧コイル10と同軸状に配置される。低圧絶縁筒11は、鉄心と低圧コイル10との間の絶縁距離を確保する。例えば、低圧絶縁筒11は、R方向に間隔をあけて複数配置されてもよい。図の例では、3層の低圧絶縁筒21~23(第1低圧絶縁筒21、第2低圧絶縁筒22及び第3低圧絶縁筒23)を示す。
【0014】
円板巻線12は、高圧コイルである。例えば、円板巻線12は、絶縁被覆された平角銅線により構成される。円板巻線12は、絶縁被覆された導線をθ方向に巻回して形成される。導線は、厚さ方向をR方向に一致させて、R方向に積層するように巻回される。円板巻線12は、低圧コイル10と同軸状に配置される。円板巻線12は、低圧コイル10の外周からR方向に所定距離を置いて配置される。円板巻線12は、Z方向に複数並んで配置される。複数の円板巻線12は、直列に接続される。
【0015】
バリア13は、電気絶縁性材料により形成される。バリア13は、円筒状に形成される。例えば、バリア13は、形状加工が容易なプレスボードなどにより形成される。バリア13は、R方向において低圧コイル10と円板巻線12との間に配置される。バリア13は、低圧コイル10及び円板巻線12と同軸状に配置される。バリア13は、低圧コイル10と円板巻線12との間の絶縁距離を確保する。例えば、バリア13は、R方向に間隔をあけて複数配置されてもよい。図の例では、3層のバリア25~27(第1バリア25、第2バリア26及び第3バリア27)を示す。
【0016】
円板巻線12の周囲には、特定ガスが配置される。特定ガスは、地球温暖化係数が高いSF6の代替ガスであり、SF6より電気絶縁性能が低い。バリア13は、円板巻線12からの部分放電を抑制する。
【0017】
円板巻線12は、最内側ターン30及び隣接ターン31を有する。最内側ターン30は、円板巻線12のうちR方向において最も内側に配置される。最内側ターン30は、バリア13の外周面と接する。最内側ターン30は、第3バリア27の外周面と接する。
【0018】
図2は、
図1の破線範囲の拡大図である。
図2に示すように、最内側ターン30は、最内側ターン本体35及び絶縁パーチ36を備える。例えば、最内側ターン本体35は、絶縁被覆された平角銅線である。最内側ターン本体35は、θ方向に延びる。最内側ターン30は、絶縁パーチ36を介してバリア13の外周面と接する。レール16(
図3参照)は、最内側ターン30とバリア13との間には設けられない。
【0019】
絶縁パーチ36は、電気絶縁性材料により形成される。例えば、絶縁パーチ36は、絶縁紙により形成される。絶縁パーチ36は、最内側ターン本体35に巻回される。絶縁パーチ36は、最内側ターン本体35が延びる方向(θ方向)の周りに巻かれる。絶縁パーチ36は、最内側ターン30に多重に巻回される。絶縁パーチ36は、最内側ターン30の絶縁補強を行う。図の例では、2重から3重巻きにした絶縁パーチ36を示す。
【0020】
隣接ターン31は、R方向において最内側ターン30の外側に配置される。隣接ターン31は、最内側ターン30とR方向に所定距離を置いて隣接する。
【0021】
バンド14は、プレスボードなどの電気絶縁性材料により形成される。バンド14は、環状に形成される。バンド14は、R方向において最内側ターン30と隣接ターン31との間に配置される。バンド14は、最内側ターン30及び隣接ターン31と同軸状に配置される。バンド14は、最内側ターン30と隣接ターン31との間の絶縁距離を確保する。
【0022】
バンド14は、冷却ガスが通過可能な冷却ガス道40を有する。冷却ガス道40は、冷却ガスとして特定ガスが通過可能なガスギャップである。冷却ガス道40は、バンド14をZ方向に開口する。冷却ガス道40は、バンド本体41の外周面と隣接ターン31の-R方向の面との間に形成される。冷却ガス道40は、バンド本体41の外周面と隣接ターン31の-R方向の面との間において、バンド14の凸部42及びレール16が設けられない空間に相当する。冷却ガス道40は、θ方向において間隔を置いて配置されたレール16(
図3参照)により確保される。
【0023】
バンド14は、バンド本体41及び凸部42を備える。バンド本体41は、円環状に形成される。凸部42は、R方向においてバンド本体41の外周面から外側に突出する。
図4に示すように、凸部42は、θ方向において間欠的に配置される。例えば、凸部42は、θ方向において等角度間隔で配置される。凸部42は、R方向から見て矩形状に形成される。凸部42は、R方向においてレール16の貫通孔55(凹部)と重なる。
【0024】
スペーサ15(
図1参照)は、プレスボードなどの電気絶縁性材料により形成される。
図1に示すように、スペーサ15は、平板状に形成される。スペーサ15は、Z方向に積層して複数配置される。複数のスペーサ15は、Z方向に隣り合う円板巻線12の間に配置される。スペーサ15は、円板巻線12のセクション間45(
図2参照)の絶縁距離を確保する。図中において、符号は円板巻線12においてZ方向の所定部位の第1セクション46、符号47は円板巻線12において第1セクション46の上側の第2セクション、符号48は円板巻線12において第1セクション46の下側の第3セクションをそれぞれ示す。
【0025】
図3は、
図4のIII-III断面を含む、スペーサ15の断面図である。
図3に示すように、スペーサ15は、R方向と平行に配置される。スペーサ15は、θ方向において間欠的に配置される。例えば、スペーサ15は、θ方向において等角度間隔で配置される。
【0026】
スペーサ15は、R方向の一部にスペーサ側係合部50を有する。スペーサ側係合部50は、Z方向から見て矩形状に開口する。スペーサ側係合部50は、レール16のZ方向の一部と係合する。例えば、スペーサ側係合部50及びレール16は、それぞれ鍵型に形成されて相互に係合してもよい。
【0027】
スペーサ15は、複数設けられる。複数のスペーサ15は、第1スペーサ51及び第2スペーサ52を含む。第1スペーサ51及び第2スペーサ52は、レール16により保持される。
【0028】
第1スペーサ51は、R方向に延びる。第1スペーサ51の-R方向の端部は、バリア13の外周面と接する。
第2スペーサ52は、第1スペーサ51よりも短い長さでR方向に延びる。第2スペーサ52は、Z方向において第1スペーサ51と隣接ターン31(円板巻線12において最内側ターン30以外の部分)との間に配置される。第2スペーサ52の-R方向の端部は、絶縁パーチ36の+R方向の端部と接する。
【0029】
レール16は、プレスボードなどの電気絶縁性材料により形成される。レール16は、Z方向に延びる。レール16は、θ方向において間欠的に配置される。例えば、レール16は、θ方向において等角度間隔で配置される。レール16は、R方向において最内側ターン30と隣接ターン31との間に配置される。レール16は、スペーサ15を保持する。レール16の-R方向の面は、バンド本体41の外周面と接する。レール16の+R方向の面は、隣接ターン31の-R方向の面と接する。
【0030】
図4は、
図3の矢視IVから見た、レール16の貫通孔55及びバンド14の凸部42を示す図である。
レール16は、R方向に開口する貫通孔55を有する。貫通孔55は、バンド14の凸部42を嵌合可能な大きさに形成される。貫通孔55は、R方向から見て矩形状に形成される。貫通孔55は、R方向においてバンド14の凸部42と重なる。
【0031】
以上に説明されたように、実施形態のガス絶縁変圧器1は、バリア13と、円板巻線12と、を持つ。バリア13は、電気絶縁性を有する。バリア13は、筒状に形成される。円板巻線12は、バリア13のR方向の外側に配置される。円板巻線12は、θ方向に巻回される。円板巻線12は、R方向において最も内側に配置される最内側ターン30を有する。最内側ターン30は、バリア13の外周面と接する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
バリア13の外周面と最内側ターン30との間にガスギャップが無くなるため、最内側ターン30から発生した部分放電の進展がバリア13の外周面によって抑制される。これにより、放電エネルギーの増大を抑制し、バリア13が貫通されることを抑制することができる。したがって、特定ガスとしてSF6の代替ガスを利用する場合でも、円板巻線12とバリア13との間の絶縁性能を向上することができる。
【0032】
円板巻線12は、R方向において最内側ターン30の外側に配置され、最内側ターン30と隣接する隣接ターン31を有する。ガス絶縁変圧器1は、R方向において最内側ターン30と隣接ターン31との間に配置され、電気絶縁性を有するバンド14を備える。バンド14は、冷却ガスが通過可能な冷却ガス道40を有する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
冷却ガス道40を流れる冷却ガスにより、R方向において最内側ターン30と隣接ターン31との間の部分(最内側ターン30のバリア13とは反対側の部分)を冷却することができるため、最内側ターン30の発熱を抑制することができる。したがって、冷却ガスとしてSF6の代替ガスを利用する場合でも、最内側ターン30を冷却することができる。
【0033】
仮に、ガスギャップをR方向においてバリア13と最内側ターン30との間に配置した場合、最内側ターン30から発生した部分放電によって放出された電子がガスギャップで電離倍増し、放電エネルギーが増大する可能性がある。放電エネルギー増大により、バリア13が貫通され、絶縁破壊に至ってしまう可能性がある。実施形態によれば、冷却ガス道40がR方向において最内側ターン30と隣接ターン31との間に配置されることで、R方向においてバリア13と最内側ターン30との間にガスギャップが無くなるため、放電エネルギーの増大を抑制することができる。したがって、絶縁破壊を抑制することができるガス絶縁変圧器1を提供することができる。
【0034】
ガス絶縁変圧器1は、Z方向に隣り合う円板巻線12の間に配置されたスペーサ15と、R方向において最内側ターン30と隣接ターン31との間に配置され、Z方向に延び、スペーサ15を保持するレール16と、を備える。レール16は、R方向に開口する貫通孔55を有する。バンド14は、R方向において貫通孔55と重なる凸部42を有する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
レール16の貫通孔55にバンド14の凸部42を嵌合することにより、レール16とともにスペーサ15を保持することができる。加えて、θ方向に間隔を置いて隣り合うレール16の間に、冷却ガス道40を確保することができる。
【0035】
最内側ターン30は、θ方向に延びる最内側ターン本体35と、最内側ターン本体35に巻回された絶縁パーチ36と、を備えることで、以下の効果を奏する。
絶縁パーチ36により、最内側ターン本体35から発生した部分放電がバリア13の外周面に沿って進展することを抑制することができる。したがって、円板巻線12とバリア13との間の絶縁性能をより一層向上することができる。
【0036】
絶縁パーチ36は、最内側ターン本体35に多重に巻回されることで、以下の効果を奏する。
絶縁パーチ36の多重巻きにより、円板巻線12とバリア13との間の絶縁性能を更に向上することができる。
【0037】
次に、
図5を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。第2実施形態は、円板巻線12の構成が第1実施形態と異なる。
【0038】
図5は、第2実施形態のガス絶縁変圧器の部分断面図である。
図5は、第1実施形態の
図3に相当する。
図5に示すように、円板巻線12は、最内側ターン30と隣接ターン31とを接続する接続線32を更に備える。例えば、接続線32は、絶縁被覆された導線により形成される。接続線32は、最内側ターン30、隣接ターン31及び上下セクション47,48(第2セクション47及び第3セクション48)とは独立した別の導体で構成される。接続線32は、R方向において最内側ターン30と隣接ターン31との間に配置される。接続線32は、最内側ターン30に沿ってθ方向と交差するように延びる。
【0039】
最内側ターン本体35は、接続線32を介して隣接ターン31と接続される。例えば、接続線32は、バンド14の凸部42の一部に設けた挿通孔43に挿通されてもよい。例えば、接続線32は、絶縁パーチ36の一部に設けた挿通孔37に挿通されてもよい。接続線32の導線の第1端は、最内側ターン本体35の導線の+R方向の面に接続される。接続線32の導線の第2端は、隣接ターン31の導線の-R方向の面に接続される。これにより、最内側ターン本体35(最内側ターン30)に電流を流さずに、最内側ターン本体35が隣接ターン31と同電位とされる。すなわち、最内側ターン30をターンシールドとして利用することができる。
【0040】
第2実施形態によれば、最内側ターン30は、電流が流されず、かつ、隣接ターン31と同電位とされることで、以下の効果を奏する。
最内側ターン30の発熱を考慮する必要がなくなるため、第1実施形態よりも冷却性能を向上することができる。
【0041】
次に、実施形態の変形例について説明する。
実施形態のバンド14は、冷却ガスが通過可能な冷却ガス道40を有する。これに対して、バンド14は、冷却ガス道40を有しなくてもよい。例えば、冷却ガス道40は、バンド14とは異なる部材に設けられてもよい。例えば、冷却ガス道40の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0042】
実施形態のレール16は、R方向に開口する貫通孔55を有する。これに対して、レール16は、R方向に窪む凹部を有してもよい。例えば、バンド14は、R方向において凹部と重なる凸部42を有してもよい。例えば、レール16及びバンド14の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0043】
実施形態の最内側ターン30は、θ方向に延びる最内側ターン本体35と、最内側ターン本体35に巻回された絶縁パーチ36と、を備える。これに対して、最内側ターン30は、絶縁パーチ36を備えなくてもよい。例えば、最内側ターン30は、最内側ターン本体35のみにより構成されてもよい。例えば、最内側ターン30の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0044】
実施形態の絶縁パーチ36は、最内側ターン本体35に多重に巻回される。これに対して、絶縁パーチ36は、最内側ターン本体35に一巻きのみで巻かれてもよい。例えば、絶縁パーチ36の巻き数は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0045】
実施形態のタンクの内部空間には、特定ガスとしてSF6の代替ガスが封入される。これに対して、タンクの内部空間には、SF6が封入されてもよい。例えば、タンクの内部空間に封入されるガスの態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0046】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、最内側ターン30は、バリア13の外周面と接する。これにより、代替ガスを利用する場合でも、円板巻線12とバリア13との間の絶縁性能を向上することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
図6は、比較例の試験モデルの模式図である。
比較例は、高電圧印加線135と絶縁板113との間にガスギャップ140を設けたものを用いた。絶縁板113は、接地電極110と高電圧印加線135との間に配置した。高電圧印加線135は、実施形態の最内側ターン本体35(絶縁被覆した平角銅線)を模擬したものである。絶縁板113は、実施形態のバリア13(+R方向において最も外側に配置される第3バリア27)を模擬したものである。ガスギャップ140は、実施形態の冷却ガス道40を模擬したものである。接地電極110は、実施形態の低圧コイル10を模擬したものである。
【0050】
図7は、第1実施例の試験モデルの模式図である。第1実施例において、比較例と同様の構成については説明を省略する。
第1実施例は、高電圧印加線135を絶縁板113に当接したものを用いた。第1実施例は、ガスギャップ140を高電圧印加線135に対し
図7の紙面上側に移動したものである。
【0051】
図8は、第2実施例の試験モデルの模式図である。第2実施例において、比較例と同様の構成については説明を省略する。
第2実施例は、第1実施例の高電圧印加線135に絶縁紙136を多重に巻回したものを用いた。絶縁紙136は、実施形態の絶縁パーチ36を模擬したものである。第2実施例は、高電圧印加線135に絶縁紙136を3重に巻回した。
【0052】
比較例、第1実施例及び第2実施例のそれぞれにおいて、耐電圧試験を行い、絶縁破壊電圧を測定した。
図9は、第1実施例及び第2実施例の絶縁破壊電圧を比較例と共に示す図である。比較例の絶縁破壊電圧は、基準値の1とした。第1実施例及び第2実施例の絶縁破壊電圧は、比較例に対する割合とした。
図9に示すように、第1実施例は、比較例に対し、絶縁破壊電圧が20%向上することを確認できた。第2実施例は、比較例に対し、絶縁破壊電圧が28%向上することを確認できた。
【0053】
以上より、高電圧印加線135を絶縁板113に当接する(最内側ターン本体35がバリア13の外周面と接する)ことにより、絶縁破壊電圧が向上することが分かった。高電圧印加線135に絶縁紙136を多重に巻回する(最内側ターン本体35に絶縁パーチ36を多重巻きする)ことにより、絶縁破壊電圧が更に向上することが分かった。
【符号の説明】
【0054】
1…ガス絶縁変圧器、12…円板巻線、13,25,26,27…バリア、30…最内側ターン、31…隣接ターン、35…最内側ターン本体、36…絶縁パーチ、40…冷却ガス道、42…凸部、55…貫通孔(凹部)