(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸/コラーゲン系真皮充填剤組成物およびそれを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/20 20060101AFI20240109BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20240109BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61L27/20
A61L27/24
A61L27/44
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020178208
(22)【出願日】2020-10-23
(62)【分割の表示】P 2018153870の分割
【原出願日】2013-09-05
【審査請求日】2020-11-24
(32)【優先日】2012-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ポロック ジェイコブ エフ
(72)【発明者】
【氏名】ユー シャオジエ
(72)【発明者】
【氏名】マネシス ニコラス ジェイ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第6784732(JP,B2)
【文献】特許第6389820(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L15/00-33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分
(a)6mg/mL~24mg/mLのヒアルロン酸成分および
(b)3mg/mL~12mg/mLのコラーゲン成分
を有する架橋高分子マトリックス
であって、
(i) 前記ヒアルロン酸成分対前記コラーゲン成分の重量比が0.5~7であり;
(ii) 前記ヒアルロン酸成分が架橋成分により前記コラーゲン成分に架橋されており;
(iii)前記架橋成分は複数の架橋単位を含み、前記架橋単位の少なくとも一部分は、エステル結合またはアミド結合を含み;かつ、
(iv)前記架橋高分子マトリックスがヒドロゲル形態で水性液体中に分散されている、
前記架橋高分子マトリックス。
【請求項2】
16mg/mL~24mg/mLのヒアルロン酸成分を有する、請求項1に記載の架橋高分子マトリックス。
【請求項3】
3mg/mL~6mg/mLのコラーゲン成分を有する、請求項1又は2に記載の架橋高分子マトリックス。
【請求項4】
ヒアルロン酸が1,000,000ダルトン~5,000,000ダルトンの分子量を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋高分子マトリックス。
【請求項5】
ヒアルロン酸が1,000,000ダルトン~3,000,000ダルトンの分子量を有する、請求項4に記載の架橋高分子マトリックス。
【請求項6】
前記コラーゲン成分がI型コラーゲンまたはIII型コラーゲンに由来する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
架橋高分子マトリックス。
【請求項7】
前記ヒアルロン酸成分対前記コラーゲン成分の重量比
が1~5である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の
架橋高分子マトリックス。
【請求項8】
前記水性液体が、水、100mM~200mMの濃度の塩化ナトリウム、2mM~3mMの濃度の塩化カリウム、および5mM~15mMの濃度のリン酸緩衝液を含み、前記液体のpHは、7~8である、請求項
1~7のいずれか1項に記載の
架橋高分子マトリックス。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の
架橋高分子マトリックスの製造方法であって:
(a)反応前水溶液を形成するために、水溶液中でヒアルロン酸およびコラーゲンを溶解する工程、
(b)
(i) 前記ヒアルロン酸と、
(ii) 前記コラーゲンと、
(iii)水溶性カルボジイミドと、
(iv) N-ヒドロキシスクシンイミドまたはN-ヒドロキシスルホスクシンイミドとを含
む架橋反応混合物を形成するために、前記反応前水溶液を修飾する工程であって、
前記架橋反応混合物は、前記反応前水溶液よりも高いpHを有する工程:及び、
(c)前記架橋反応混合物を反応させ、それにより前記ヒアルロン酸および前記コラーゲンを架橋する工程とを含む、
前記方法。
【請求項10】
前記反応前水溶液がさらに塩を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩が40mM~500mMの濃度の塩化ナトリウムである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応前水溶液が4未満のpHを有する、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
架橋反応混合物を形成するために前記反応前水溶液を修飾する工程は、
(i)前記反応前水溶液の前記pHを増加させる工程と、前記水溶性カルボジイミドを添加する前に、繊維形成を生じさせる工程と、を含み、または
(ii)任意の繊維形成が生じる前に、前記水溶性カルボジイミドを前記反応前水溶液に添加する工程を含む、請求項
9~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶性カルボジイミドは、前記架橋反応混合物中の20mM~100mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである、請求項
9~
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記架橋反応混合物は、10mM~1Mの濃度を有する非配位性緩衝液をさらに含む、請求項9~
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
10ミクロン~100ミクロンの細孔径を有するメッシュを通して、前記架橋高分子マトリックスを微粒子化する工程をさらに含む、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
透析によって、前記架橋高分子マトリックスを滅菌する工程をさらに含み、
前記透析は、リン酸緩衝液、塩化カリウム、および塩化ナトリウムを含む滅菌リン酸緩衝溶液に対するものであり、前記滅菌リン酸緩衝溶液は、ヒト生理学的流体に対して実質的に等浸透圧性であり、及び
前記透析は、5,000ダルトン~1,000,000ダルトンの分画分子量を有する膜を通す、
請求項
9~
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか1項に記載の架橋高分子マトリックスを含む、美容デバイス。
【請求項19】
ヒトの組織に注入またはインプラントすることによりヒトの解剖学的特徴の美容的な質を改善するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の架橋高分子マトリックスを含む、美容デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2011年9月6日出願の米国仮特許出願第61/531,533号の優先権を主張し、また米国特許出願第13/603,213号の一部継続出願でもあり、それは、2011年9月6日出願の米国仮特許出願第61/531,533号の優先権を主張し、それらの開示全体は、この特定の参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は概して、真皮充填剤組成物に関し、より具体的には、架橋されたヒアルロン酸およびコラーゲンを含む、注入可能な真皮充填剤組成物に関する。ヒアルロン酸およびコラーゲンは、ヒト組織の主要な構造構成成分である。これらの生体高分子は、細胞培養および再生医療のための組織工学スカフォールドおよび材料を構築するために広く使用されてきた。
【0003】
皮膚の老化は、進行性の現象であり、経時的に生じ、アルコール摂取、喫煙、および日光曝露などの生活要因によって影響を受ける可能性がある。顔面皮膚の老化は、萎縮、たるむこと、および太ることによって特徴づけられ得る。萎縮は、皮膚組織の厚さの大幅な減少に対応する。皮下組織のたるみは、余分な皮膚および下垂をもたらし、垂れ下がった頬および瞼の発現をもたらす。太ることは、顔面の底部および首の腫れによる過剰な重量増加を指す。これらの変化は典型的には、乾燥、弾力性の損失、および肌荒れと関連する。
【0004】
ヒアルロン酸(HA)としても既知であるヒアルロナンは、結合、上皮、および神経組織中で人体全体を通して広く分布している、非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロナンは、皮膚の異なる層中に豊富にあり、そこで例えば、良好な水和を確実にすること、細胞外マトリクスの組織化を補助すること、充填剤材料として機能すること、および組織修復機構に関与することなど、多数の機能を有する。しかしながら、加齢に伴い、皮膚中に存在するヒアルロナン、コラーゲン、エラスチン、および他のマトリクス高分子の量は減少する。例えば、紫外線(例えば、太陽からの)への繰り返される曝露は、真皮細胞に、それらのヒアルロナンの生成を減少させ、かつその分解速度を高めさせる。このヒアルロナン損失は、例えば、欠点、異常、疾病、および/または疾患などの種々の皮膚状態をもたらす。例えば、皮膚中の含水量と真皮組織中のヒアルロナンレベルとの間には強い相関関係がある。皮膚が老化するにつれて、皮膚中のヒアルロナンの量および質は低減する。これらの変化は、皮膚の乾燥およびしわをもたらす。
【0005】
真皮充填剤は、充填剤がこれらの皮膚状態を治療するために、失われた内因性マトリクス高分子に取って代わるか、または既存のマトリクス高分子の機能を強化/促進するため、軟組織状態の治療および他の皮膚治療において有用である。これまで、真皮充填剤組成物は、しわ、線、ひだ、傷跡を充填するために、かつ真皮組織を強化するために、例えば、薄い唇を膨らませるために、またはくぼんだ目もしくは浅い頬を充填するために、美容用途で使用されてきた。以前の真皮充填剤製品は概して、コラーゲンから作られていた。現代の真皮充填剤組成物で使用される1つの一般的なマトリクス高分子は、ヒアルロナンである。ヒアルロナンは人体にとって天然であるため、それは概して、幅広い種類の皮膚状態に対して良好な耐容性を示し、かなりリスクの低い治療法である。
【0006】
もともと、ヒアルロナンを含む組成物は、未架橋状態で存在する天然高分子から作られていた。水分子に対して優れた生体適合性および親和性を示すが、天然ヒアルロナンは、真皮充填剤として不十分な生体力学特性を示す。1つの主な理由は、この高分子が未架橋であるため、それが高度に可溶性であり、したがって、皮膚領域中に投与されるとき、迅速に除去されるためである。このインビボ除去は、主に高分子の迅速な分解、主にヒアルロニダーゼを介した酵素分解およびフリーラジカルを介した化学分解によって達成される。したがって、商業的に使用されてはいるが、未架橋ヒアルロナン高分子を含む組成物は、投与後数日以内に分解する傾向があり、したがって、それらの皮膚改善効果を維持するために、かなり頻繁な再注入を必要とする。
【0007】
これらのインビボ分解経路の効果を最小限に抑えるために、マトリクス高分子は、安定化ヒドロゲルを形成するように互いに架橋される。架橋マトリクス高分子を含むヒドロゲルがより固形の物質であるため、架橋マトリクス高分子を含むヒドロゲルを含む真皮充填剤は、インプラント部位の定位置により長くとどまる。加えて、これらのヒドロゲルは、そのより固形の性質が充填剤の機械的特性を改善し、充填剤がよりよく皮膚領域を持ち上げ、充填することを可能にするため、真皮充填剤としてより好適である。ヒアルロナン高分子は典型的には、架橋剤で架橋され、ヒアルロナン高分子間の共有結合を形成する。架橋剤で架橋された高分子は、分解に対してより耐性を示す、水溶性が低いヒドロゲルネットワークを形成し、したがって、未架橋ヒアルロナン 組成物ほど頻繁な再注入は必要としない。
【0008】
本発明は、皮膚の外観を強化するための新しい注入可能な真皮充填剤組成物を提供する。
【発明の概要】
【0009】
したがって、新しい真皮充填剤組成物ならびにそれを作製する方法が提供される。いくつかの実施形態は、ヒアルロン酸およびコラーゲンから調製される均質なヒドロゲル 組成物を含む。これらの組成物は、ヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋することを含む方法によって調製されてもよい。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸およびコラーゲンは、両方の構成成分が最初に水溶液中で可溶性である条件下で架橋される。
【0010】
いくつかの実施形態は、反応前水溶液を形成するために、水溶液中にヒアルロン酸およびコラーゲンを溶解することであって、反応前水溶液は、塩をさらに含み、あるいは低いpHを有する、水溶液中にヒアルロン酸およびコラーゲンを溶解することと、ヒアルロン酸、コラーゲン、水溶性結合剤、および塩を含む、架橋反応混合物を形成するために、反応前水溶液を修飾することであって、架橋反応は、反応前水溶液よりも高いpHを有する、反応前水溶液を修飾することと、架橋反応混合物を反応させ、それによりヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋することと、を含む、ヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋する方法を含む。
【0011】
いくつかの実施形態は、反応前水溶液を形成するために、水溶液中にヒアルロン酸およびコラーゲンを溶解することであって、反応前水溶液は、塩をさらに含み、あるいは約4未満のpHを有する、水溶液中にヒアルロン酸およびコラーゲンを溶解することと、ヒアルロン酸、コラーゲン、水溶性カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、またはN-ヒドロキシスルホスクシンイミド、および塩を含む、架橋反応混合物を形成するために、反応前水溶液を修飾することであって、架橋反応は、反応前水溶液よりも高いpHを有する、反応前水溶液を修飾することと、架橋反応混合物を反応させ、それによりヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋することと、を含む、ヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋する方法を含む。
【0012】
いくつかの実施形態は、反応前水溶液を形成するために、水溶液中にヒアルロン酸およびコラーゲンを溶解することであって、反応前水溶液は、塩をさらに含み、あるいは約4未満のpHを有する、水溶液中にヒアルロン酸およびコラーゲンを溶解することと、ヒアルロン酸、コラーゲン、水溶性カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化剤、および塩を含む、架橋反応混合物を形成するために、反応前水溶液を修飾することであって、架橋反応は、反応前水溶液よりも高いpHを有する、反応前水溶液を修飾することと、架橋反応混合物を反応させ、それによりヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋することと、を含む、ヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋する方法を含む。
【0013】
いくつかの実施形態は、ヒアルロン酸、コラーゲン、および水溶性結合剤を含む組成物を含み、組成物は、水溶液である。
【0014】
いくつかの実施形態は、ヒアルロン酸、コラーゲン、水溶性結合剤、および緩衝液を含む組成物を含み、組成物は、水溶液である。
【0015】
いくつかの実施形態は、ヒアルロン酸構成成分およびコラーゲン構成成分を含む、架橋高分子マトリクスを含み、ヒアルロン酸構成成分は、架橋構成成分によってコラーゲン構成成分に架橋され、架橋構成成分は、複数の架橋単位を含み、架橋単位の少なくとも一部分は、エステル結合またはアミド結合を含む。
【0016】
いくつかの実施形態は、ヒアルロン酸構成成分、I型コラーゲンまたはIII型コラーゲン由来のコラーゲン構成成分を含む、架橋高分子マトリクスを含み、ヒアルロン酸構成成分は、架橋構成成分によってコラーゲン構成成分に架橋され、架橋構成成分は、複数の架橋単位を含み、架橋単位の少なくとも一部分は、エステル結合またはアミド結合を含む。
【0017】
いくつかの実施形態は、ヒト組織中に注入またはインプラントするのに好適な形態を有する、美容デバイスと、ヒト組織中に美容デバイスを注入またはインプラントするための説明書を含む、ラベルと、を備える、軟組織美容製品組成物を含み、美容デバイスは、本明細書に記載される架橋高分子マトリクスを含む。
【0018】
いくつかの実施形態は、ヒト組織中に注入またはインプラントするのに好適な形態を有する、強化または再生デバイスと、ヒト組織中に強化または再生デバイスを注入またはインプラントするための説明書を含む、ラベルと、を備える、軟組織 強化または再生製品組成物を含み、強化または再生デバイスは、本明細書に記載される架橋高分子マトリクスを含む。
【0019】
いくつかの実施形態は、ヒトの組織中に美容デバイスを注入またはインプラントし、それにより解剖学的特徴の美容的な質を改善することを含む、ヒトの解剖学的特徴の美容的な質を改善する方法を含み、美容デバイスは、本明細書に記載される架橋高分子マトリクスを含む。
【0020】
いくつかの実施形態は、ヒトの組織中に強化または再生デバイスを注入またはインプラントし、それにより解剖学的特徴の少なくとも一部分を強化または再生することを含む、ヒトの解剖学的特徴を強化または再生する方法を含み、強化または再生デバイスは、本明細書に記載されるものを含む架橋高分子マトリクスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1Aは、実施例3のゲルに対する周波数掃引の図であり、
図1Bは、実施例3のゲルに対するひずみ掃引の図である。
【
図2】実施例3のゲルに対する押出プロファイルである。
【
図3】50X(A)、1,000X(B)、および40,000X(C)で示される実施例4からのゲルの走査型電子顕微鏡画像(SEM画像)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
真皮充填剤中で使用されるような架橋ヒアルロン酸、コラーゲン、および架橋コラーゲンヒドロゲルは、細胞浸潤および組織内部成長を積極的に促進しない。同様に、単純にヒアルロン酸ヒドロゲルとブレンドされたコラーゲンは、組織集積またはデノボ組織生成を促進しない。しかしながら、本明細書に記載される一部の組成物は、インビボでインプラントされたとき、ヒドロゲル中への細胞移動およびゲル内の組織形成を促進する。
【0023】
ヒアルロン酸-コラーゲンヒドロゲルは、カルボジイミドなどの結合剤を使用して、ヒアルロン酸をコラーゲンと結合することによって合成されてもよい。これらのヒドロゲルにおいて、ヒアルロン酸は、生体適合性水結合構成成分としての役割を果たし、バルクおよび等容性分解を提供し得る。加えて、コラーゲンは、細胞付着、移動、および細胞外マトリクス沈着などの他の細胞機能を促進するために、細胞接着およびシグナリングドメインを付与し得る。生体高分子は、調節可能な組成物、膨潤、および機械的特性を有する均一なヒドロゲルを形成する。組成物は、注射器および針を通した低侵襲インプラントに対して注入可能になるように作製され得る。
【0024】
ヒアルロン酸は、保水性を強化し、静水圧応力に抵抗する、非硫酸化グリコサミノグリカンである。それは非免疫原性であり、多数の方法で化学修飾され得る。ヒアルロン酸は、そのカルボン酸基のpKa前後の、またはそれを超えるpH範囲でアニオン性であり得る。
【化1】
【0025】
コラーゲンは、引張荷重に耐える原線維およびシートを形成するタンパク質である。コラーゲンはまた、細胞接着に対して特定のインテグリン結合部位を有し、細胞付着、移動、および増殖を促進することが既知である。コラーゲンは、アルギニン、リジン、およびヒドロキシリジンなど、その塩基性アミノ酸残基の高含量のため、正電荷を持ち得る。
【0026】
ヒアルロン酸はアニオン性であり得、コラーゲンはカチオン性であり得るため、2つの巨大分子は、水溶液中でポリイオン複合体を形成し得る。ポリイオン複合体は、ヒアルロン酸またはコラーゲンのいずれかよりも有意に水溶性が低い可能性があり、したがって、2つの巨大分子が一緒に混合物中にあるとき、水溶液から沈殿し得る。さらに、コラーゲンは多くの場合、低いpHにおいての可溶性であり、カルボジイミド結合が生じやすいpHに引き上げられるとき、溶液から沈殿し得る。
【0027】
ある特定の条件下で、ヒアルロン酸およびコラーゲンは、両方の構成成分が可溶性である水性液体中で混合されてもよい。ヒアルロン酸およびコラーゲンは次いで、ヒドロゲルを形成するために、両方が水溶液中に溶解されると同時に架橋されてもよい。ヒアルロン酸の濃度、コラーゲンの濃度、溶液のpH、および塩濃度などの反応条件は、アニオン性ヒアルロン酸とカチオン性コラーゲンとの間のポリイオン複合体形成を防止するのを補助するように調節されてもよい。それらはまた、溶液からの沈澱をもたらし、架橋を阻止し得る、コラーゲンミクロフィブリル形成を防止するのを補助し得る。
【0028】
いくつかの実施形態は、ヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋する方法を含む。この方法は概して、反応前水溶液をもたらす溶解工程を含む。溶解工程中、ヒアルロン酸およびコラーゲンは、反応前水溶液を形成するために、低いpHおよび/または塩を有する水溶液中に溶解される。
【0029】
ヒアルロン酸-コラーゲン 架橋方法はさらに、活性化工程を含む。活性化工程中、反応前水溶液は、少なくとも、水溶性結合剤を添加することによって、および/または溶液のpHを増加させることによって修飾される。必要な場合、より高いpHの溶液中でヒアルロン酸およびコラーゲンを保持するために、塩もまた添加され得る。したがって、架橋反応混合物は、水性培地中で溶解または分散されるヒアルロン酸およびコラーゲン、水溶性結合剤、ならびに塩を含み、それが由来した反応前水溶液よりも高いpHを有する。架橋反応混合物は反応させられ、それによりヒアルロン酸およびコラーゲンを架橋する。
【0030】
いくつかの実施形態では、反応前水溶液のpHは、増加させられてもよく、実質的な量の繊維形成が、水溶性結合剤を添加する前に溶液中で生じてもよい。いくつかの実施形態では、水溶性結合剤は、実質的に任意の繊維形成が生じる前に、反応前水溶液に添加されてもよい。
【0031】
架橋反応混合物は、架橋高分子マトリクスを形成するように反応することができる。反応は水溶液中で生じるため、架橋高分子マトリクスは、それが架橋反応によって形成されるとき、ヒドロゲル形態で水性液体中に分散されてもよい。架橋高分子マトリクスは、多くの場合、架橋高分子マトリクスがヒドロゲル形態で使用されるため、ヒドロゲル形態で保持されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、反応前水溶液または架橋反応混合物はさらに、エタノール、メタノール、イソプロパノールなど、ヒアルロン酸が不十分な可溶性を有する、約10%~約90%の有機溶媒を含んでもよい。
【0033】
架橋反応が生じた後、架橋高分子マトリクスは、メッシュを通して微粒子化または均質化されてもよい。これは、注入可能なスラリーまたはヒドロゲルを形成するのを補助し得る。架橋高分子マトリクスを微粒子化するために使用されるメッシュは、所望の粒径に応じて、任意の好適な細孔径を有してもよい。いくつかの実施形態では、メッシュは、約10ミクロン~約100ミクロン、約50ミクロン~約70ミクロン、または約60ミクロンの細孔径を有してもよい。
【0034】
架橋分子マトリクスを含むヒドロゲルは、滅菌または他の目的で透析によって処理されてもよい。透析は、ヒドロゲルと別の液体との間に半透過性膜を配置し、ヒドロゲルおよび液体が膜間を通過し得る分子または塩を交換することを可能にすることによって、実施されてもよい。
【0035】
透析膜は、異なり得る分画分子量を有してもよい。例えば、分画は、約5,000ダルトン~約1,000,000ダルトン、約10,000ダルトン~約30,000ダルトン、または約20,000ダルトンであってもよい。
【0036】
透析は、緩衝溶液に対して実施されてもよく、ヒドロゲルからの膜の反対側の液体が、緩衝溶液であってもよいことを意味する。いくつかの実施形態では、緩衝溶液は、リン酸緩衝液、塩化カリウム、および/または塩化ナトリウムを含んでもよい、滅菌リン酸緩衝溶液であってもよい。滅菌リン酸緩衝溶液は、ヒト生理学的流体に対して実質的に等浸透圧性であってもよい。したがって、透析が完了したとき、ヒドロゲルの液体構成成分は、ヒト生理学的流体に対して実質的に等浸透圧性であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、架橋巨大分子複合体はさらに、水性液体を含んでもよい。例えば、架橋巨大分子複合体は、ヒドロゲルが形成されるように、水性液体を吸収してもよい。水性液体は、リン酸緩衝液、塩化ナトリウム、塩化カリウムなど、塩が溶解された水を含んでもよい。いくつかの実施形態では、水性液体は、水、約100mM~約200mMの濃度の塩化ナトリウム、約2mM~約3mMの濃度の塩化カリウム、および約5mM~約15mMの濃度のリン酸緩衝液を含んでもよく、液体のpHは約7~約8である。
【0038】
ヒドロゲルは、軟組織美容製品中で使用されてもよい。美容製品は、動物またはヒトの任意の部分の任意の美容特性を改善する、任意の製品を含む。軟組織美容製品は、ヒト組織中に注入またはインプラントするのに好適な形態を有する、美容デバイスと、ヒト組織中に美容構成成分を注入またはインプラントするための説明書を含む、ラベルと、を含んでもよく、美容デバイスは、本明細書に記載される架橋高分子マトリクスを含む。一部の製品は、ヒドロゲル形態で架橋高分子マトリクスを含んでもよい。
【0039】
いくつかの実施形態は、ヒトの解剖学的特徴の美容的な質を改善する方法を含む。ヒトの解剖学的特徴の美容的な質を改善することは、外観、触感などを含む任意の種類の美容的な質を改善すること、および顔面、四肢、胸、臀部などを含む、任意の解剖学的特徴を改善することを含む。ヒトの解剖学的特徴の美容的な質を改善する方法は、ヒトの組織中に美容デバイスを注入またはインプラントし、それにより解剖学的特徴の美容的な質を改善することを含んでもよく、美容デバイスは、本明細書に記載される架橋高分子マトリクス組成物を含む。いくつかの実施形態では、製品中で使用される架橋高分子マトリクスは、ヒドロゲル形態であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、架橋巨大分子複合体のヒドロゲルは、約1Pa~約10,000Pa、約50Pa~10,000Pa、約500Pa~約1000Pa、約500Pa~約5000Pa、約850Pa、約852Pa、約560Pa、約556Pa、約1000Pa、またはこれらの値のいずれかによって境界される範囲中、もしくはこれらの値のいずれかの間の任意の値の貯蔵弾性率を有してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、架橋巨大分子複合体のヒドロゲルは、約1Pa~約500Pa、約10Pa~200Pa、約100Pa~約200Pa、約20Pa、約131Pa、約152Pa、またはこれらの値のいずれかによって境界される範囲中、もしくはこれらの値のいずれかの間の任意の値の損失弾性率を有してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、架橋巨大分子複合体のヒドロゲルは、約11mMに対して100mM/分の速度で、ヒドロゲルを含有する1mLの注射器のプランジャーを移動させ、約4mM~約10mMの平均力を測定することによって、ヒドロゲルが、30G針注射器を通して押し出されるとき、約10N~約50N、約20N~30N、または約25Nの平均押出力を有してもよい。
【0043】
架橋高分子マトリクスは、反応条件およびヒドロゲル希釈に基づき、調節可能な膨潤特性を有してもよい。いくつかの実施形態では、架橋高分子マトリクスは、約20~約200の膨潤比を有してもよい。膨潤比は、合成後の架橋高分子マトリクスの重量対水なしの架橋高分子マトリクスの重量の比である。架橋高分子マトリクスは、約1~約7の膨潤力を有してもよい。膨潤力は、架橋高分子マトリクスが水で飽和したときのその重量対合成後の架橋高分子マトリクスの重量の比である。
【0044】
架橋反応において、ヒアルロン酸の分子量は異なり得る。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸は、約200,000ダルトン~約10,000,000ダルトン、約500,000ダルトン~約10,000,000ダルトン、約1,000,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、または約1,000,000ダルトン~約3,000,000ダルトンの分子量を有してもよい。架橋反応が生じたとき、得られる巨大分子生成物は、架橋反応中にヒアルロン酸から得られるヒアルロン酸構成成分を有してもよい。したがって、上記に列挙される範囲はまた、ヒアルロン酸構成成分の分子量、例えば、約200,000ダルトン~約10,000,000ダルトン、約500,000ダルトン~約10,000,000ダルトン、約1,000,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、または約1,000,000ダルトン~約3,000,000ダルトンに適用されてもよい。用語「分子量」は、ヒアルロン酸構成成分が架橋によって実際に別個の分子ではない可能性があっても、この状況でマトリクスの一部に適用される。いくつかの実施形態では、より高い分子量のヒアルロン酸は、より高い体積弾性率および/またはより低い膨潤を有する可能性がある架橋分子マトリクスをもたらし得る。
【0045】
反応前水溶液または架橋反応混合物中のヒアルロン酸の濃度は異なり得る。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸は、約3mg/mL~約100mg/mL、約6mg/mL~約24mg/mL、約1mg/mL~約30mg/mL、約6mg/mL、約12mg/mL、約16mg/mL、または約24mg/mLで存在する。いくつかの実施形態では、より高いヒアルロン酸濃度は、架橋高分子マトリクス中のより高い剛性および/またはより高い膨潤をもたらし得る。
【0046】
任意の種類のコラーゲンが本明細書に記載される方法および組成物で使用され得る。いくつかの実施形態では、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、VI型コラーゲン、またはこれらの組み合わせが使用されてもよい。コラーゲンは、細胞培養、動物組織、または組み換え手段から得られてもよく、ヒト、ブタ、またはウシ源から得られてもよい。いくつかの実施形態は、ヒト線維芽細胞培養から得られるコラーゲンを含む。いくつかの実施形態は、ゼラチンに変性されたコラーゲンを含む。
【0047】
反応前水溶液または架橋反応混合物のコラーゲン濃度中は異なり得る。いくつかの実施形態では、コラーゲンは、約1mg/mL~約40mg/mL、約1mg/mL~約15mg/mL、約3mg/mL~約12mg/mL、約1.7mg/mL、約3mg/mL、約6mg/mL、約8mg/mL、または約12mg/mLの濃度で存在してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、反応前水溶液または反応前水溶液液または架橋反応混合物中のヒアルロン酸対コラーゲンの重量比(例えば、[重量ヒアルロン酸]/[重量コラーゲン])は、約0.5~約7、約1~約5、または約1~約3、または約1~約2、または約1、または約2であってもよい。架橋反応が生じたとき、得られる巨大分子生成物は、架橋反応中のコラーゲン由来のコラーゲン構成成分を有してもよい。したがって、得られる架橋高分子マトリクスは、架橋反応中の重量比に対応する、ヒアルロン酸構成成分対コラーゲン構成成分の重量比、例えば、約0.5~約7、約1~約3、約1~約2、約1、または約2を有してもよい。ヒアルロン酸対コラーゲンのより高い重量比は、膨潤が増加し、剛性が減少し、および/または細胞接着が減少した、架橋高分子マトリクスをもたらし得る。
【0049】
ヒアルロン酸およびコラーゲンの両方の量の増加は、剛性が増加した架橋高分子マトリクスをもたらし得る。
【0050】
塩は、コラーゲンの正電荷からヒアルロン酸の負電荷を選別するのを補助し得、したがって、溶液からのポリイオン複合体の沈澱を防ぎ得る。しかしながら、高濃度の塩は、溶液中のいくつかの構成成分の可溶性を低減し得る。したがって、いくつかの実施形態では、反応前水溶液または架橋反応混合物の塩濃度は、ポリイオン複合体が形成されないように電荷を選別するのに十分高い可能性があるが、混合物の構成成分が溶液中にとどまるように十分低い可能性もある。例えば、一部の反応前水溶液または架橋反応混合物の総塩濃度は、約10mM~約1M、約100mM~約300mM、または約150mMであってもよい。いくつかの実施形態では、より高い塩濃度は、架橋反応の効率性を高め得、それは、より低い膨潤および/またはより高い剛性をもたらし得る。
【0051】
反応前水溶液または架橋反応混合物中の一部の塩は、非配位性緩衝液であってもよい。混合物を緩衝することが可能であり、結合剤または金属原子との配位複合体を形成しない、任意の非配位性緩衝液が使用されてもよい。好適な非配位性緩衝液の例としては、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPS)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)などが挙げられ得るがこれらに限定されない。
【化2】
【0052】
非配位性緩衝液の濃度は異なり得る。例えば、一部の反応前水溶液または架橋反応混合物は、約10mM~約1M、約10mM~約500mM、約20mM~約100mM、または約25mM~約250mMの範囲の緩衝液濃度を有してもよい。一部の反応前水溶液または架橋反応混合物は、約20mM~約200mM、約20mM~約100mM、約100mM、または約180mMの範囲のMESを含む。
【0053】
非緩衝塩もまた、緩衝塩の代わりに、またはそれに加えて、反応前水溶液または架橋反応混合物中に含まれ得る。いくつかの例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化リチウムなどの無機塩が挙げられ得る。非緩衝塩の濃度は異なり得る。例えば、一部の混合物は、約10mM~約1M、約30mM~約500mM、または約50mM~約300mMの範囲の非緩衝塩濃度を有してもよい。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムは、約0.5%w/v~約2%約0.9%w/v、約1.6%w/v、約20mM~約1M、約40mM~約500mM、約50~300mM、約80mM~約330mM、約150mM、または約270mMの範囲の濃度で存在してもよい。
【0054】
反応前水溶液のpHは、架橋反応混合物のpHより低くてもよい。反応前水溶液の塩含有量が低い場合、pHは、ヒアルロン酸およびコラーゲンの可溶性を高めるために低くてもよい。塩含有量が高い場合、pHは、反応前水溶液中でより高くてもよい。いくつかの実施形態では、水性反応前混合物のpHは、約1~約8、約3~約8、約4~約6、約4.7~約7.4、または約5.4である。低い塩濃度に対して、pHは、約1~約4または約1~約3であってもよい。いくつかの実施形態では、約5.4のpHが、より高い剛性および/またはより低い膨潤を有する架橋高分子マトリクスをもたらし得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、pHは、結合剤を添加する前のコラーゲンゲル化または繊維形成を可能にするように、中性に調節されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、pHは、コラーゲンゲル化が低減されるか、または実質的に生じないように、結合剤を添加する直前、結合剤を添加する頃、または結合剤を添加した後に、中性に調節されてもよい。
【0057】
ヒアルロン酸をコラーゲンに架橋することができる、任意の水溶性結合剤が使用され得る。結合剤のいくつかの限定されない例としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド結合剤は、結合の一部になることなく、エステルまたはアミド結合形成を促進し得る。換言すれば、エステル結合またはアミド結合は、ヒアルロン酸またはコラーゲンのうちの一方からのカルボキシレート基、およびもう一方からのヒドロキシル基またはアミン基からの原子を含んでもよい。しかしながら、架橋基の一部になる他の結合剤が使用されてもよい。結合剤の濃度は異なり得る。いくつかの実施形態では、結合剤は、約2mM~約150mM、約2mM~約50mM、約20mM~約100mM、または約50mMで存在してもよい。いくつかの実施形態では、結合剤は、約20mM~約100mM、約2mM~約50mM、または約50mMの濃度で存在するEDCである。最大で約50mMまでのカルボジイミド濃度の増加は、より大きいヒドロゲル剛性および/またはより低い膨潤を有する架橋高分子マトリクスをもたらし得る。
【化3】
【0058】
架橋反応は、ヒアルロン酸が複数の(例えば、2つ以上の)位置でコラーゲンに共有結合される、任意の反応を含む。いくつかの実施形態では、架橋反応は、以下の図式1によって示され得る。
【化4】
【0059】
図式1中、反応官能基の一部のみが図示され、架橋反応において反応し得るが、未反応のままでもあり得る多くの官能基は、図示されない。例えば、示されないOH、CO2H、-NHCOCH3、およびヒアルロン酸上の他の基は、反応し得るが、未反応のままでもあり得る。同様に、コラーゲンは、OH、SH、CO2H、NH2など、反応し得るが、未反応のままでもあり得る、さらなる基を有し得る。加えて、図示されるよりも少ない基が反応する場合がある。
【0060】
図式1中、ヒアルロン酸上のCO2Hなどの官能基は、いくつかの架橋単位を形成するために、NH2およびOHなどのコラーゲン上の官能基と反応し得る。架橋単位は一緒に、架橋構成成分を構成する。図式1中、結合構成成分は、架橋単位の一部にならない。しかしながら、いくつかの結合剤に対して、1つの結合剤の少なくとも一部は、架橋単位に組み込まれてもよい。ヒアルロン酸構成成分は、架橋高分子マトリクスの一部になるように反応したヒアルロン酸を含む。コラーゲン構成成分は、架橋高分子マトリクスの一部になるように反応したコラーゲンを含む。ヒアルロン酸とコラーゲンとの間の架橋に加えて、ヒアルロン酸またはコラーゲンは、部分的に自己架橋してもよい。したがって、図式1は、架橋反応の理解の便宜上示されるが、必ずしも実際の化学構造を反映していない。例えば、架橋分子マトリクスは、ヒアルロン酸巨大分子およびコラーゲン巨大分子のネットワークであってもよく、多くの巨大分子は、2つ以上の巨大分子に架橋される。
【0061】
架橋反応の結果として、架橋高分子マトリクスは、ヒアルロン酸構成成分をコラーゲン構成成分に架橋または共有結合する、架橋構成成分を含んでもよい。上記で説明されたように、架橋構成成分は、ヒアルロン酸構成成分とコラーゲン構成成分との間に、複数の架橋単位、または個々の共有結合リンクを含む。架橋単位は、結合剤が架橋高分子マトリクスに組み込まれないように、単純に、ヒアルロン酸構成成分とコラーゲン構成成分との間の直接結合であってもよい。あるいは、架橋単位は、結合剤の少なくとも一部分が、架橋高分子マトリクスの一部になるように、結合剤からのさらなる原子または基を含有してもよい。架橋単位の少なくとも一部分は、エステル結合またはアミド結合を含んでもよい。いくつかの実施形態では、架橋単位の少なくとも一部分は、-CON-または-CO2-であってもよく、ここでNはアミノ酸残基からの窒素である。
【0062】
最終生成物中の架橋反応の速度および架橋単位の数を増加させるために、活性化剤が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、活性化剤は、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAT)などのトリアゾール;ペンタフルオロフェノールなどのフッ素化フェノール;N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホNHS)などのスクシンイミドなどであってもよい。
【化5】
【0063】
活性化剤の濃度は異なり得る。いくつかの実施形態では、活性化剤は、約2mM~約200mM、約2mM~約50mM、約20mM~約100mM、または約50mMの濃度を有してもよい。いくつかの実施形態では、活性化剤は、約2mM~約50mMの濃度のNHSまたはスルホNHSであってもよい。いくつかの実施形態では、活性化剤は、約20mM~約100mM、または約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミド、ナトリウム塩であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、カルボジイミド結合剤および活性化剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、結合剤は、EDCであり、活性化剤は、NHSまたはスルホNHSである。いくつかの実施形態では、EDCは、約2mM~約50mMの濃度で存在し、NHSまたはスルホNHSは、約2mM~約50mMで存在する。
【0065】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約3mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約3mg/mLの濃度のヒトIII型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約6mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約6mg/mLの濃度のヒトIII型コラーゲン、約180mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約16mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約8mg/mLの濃度のラットI型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約12mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約12mg/mLの濃度のラットI型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約12mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約12mg/mLの濃度のラット尾I型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.3のpHを有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約3mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約3mg/mLの濃度のヒトI型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約12mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約6mg/mLの濃度のヒトI型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約16mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約8mg/mLの濃度のヒトI型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約12mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約12mg/mLの濃度のヒトI型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約24mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約12mg/mLの濃度のヒトI型コラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約16mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約8mg/mLの濃度のコラーゲン、約100mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.9重量%または約150mMの濃度の塩化ナトリウム、約50mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約50mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約5.4のpHを有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、架橋反応混合物は、約1mg/mL~約20mg/mLの濃度のヒアルロン酸、約1mg/mL~約15mg/mLの濃度のブタI型コラーゲン、約20mM~約200mMの濃度の2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、約0.5重量%~約2重量%または約80mM~約330mMの濃度の塩化ナトリウム、約20mM~約100mMの濃度の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、および約20mM~約100mMの濃度のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を含んでもよく、溶液は、約4~約6のpHを有する。
【実施例】
【0077】
実施例1
10mMのHCl(Fibrogen)中の10mLの3mg/mLのIII型コラーゲン溶液中に、30mgの2MDaヒアルロン酸ナトリウム塩(Corneal)を溶解することによって、ヒアルロン酸およびコラーゲンの溶液を作成した。2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸緩衝塩(195.2mg)を90mgのNaClと共に溶液に添加し、pH2.5で反応前溶液を形成した。次いで、200μLの1N NaOHの添加によって、pHを5.4に調節した。次に、95.9mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHClおよび108.6mgのN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を、ヒアルロン酸/コラーゲン(III)溶液に添加し、完全に混合した。ゲルを60ミクロンの細孔径のメッシュを通して微粒子化する前に、架橋反応を18時間継続した。サイズ決定後、4℃で3時間、70%イソプロパノール/30%水に対する、20kDaの分画分子量のセルロースエステル膜を通した透析によって、ゲルを滅菌した。次いで、緩衝液を4回交換し、4℃で72時間、滅菌リン酸緩衝液に対して透析を継続した。次いで、ゲルを無菌条件下で注射器に分注した。
【0078】
実施例2
pH4.7で、0.9重量%NaClを有する、20mLの100mMの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸緩衝液中に、60mgの2MDaヒアルロン酸ナトリウム塩(Corneal)を溶解することによって、ヒアルロン酸の溶液を作成した。ヒアルロン酸の完全水和および溶解後、この溶液を10mMのHCl(Fibrogen)中の20mLの3mg/mLのヒトコラーゲン(III)溶液と混合した。得られるヒアルロン酸/コラーゲン(III)溶液のpHを、1N NaOHで5.4に調節した。次いで、溶液を乾燥スポンジ状に凍結乾燥し、10mLの蒸留水中で再構成し、6mg/mLのヒアルロン酸および6mg/mLのコラーゲン(III)の溶液を得た。次に、192mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHClおよび217mgのN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を、ヒアルロン酸/コラーゲン(III)溶液に添加し、完全に混合した。ゲルを60ミクロンの細孔径のメッシュを通して微粒子化する前に、架橋反応は18時間継続した。サイズ決定後、4℃で3時間、70%イソプロパノール/30%水に対する、20kDaの分画分子量のセルロースエステル膜を通した透析によって、ゲルを滅菌した。次いで、緩衝液を4回交換し、4℃で72時間、滅菌リン酸緩衝液に対して透析を継続した。次いで、ゲルを無菌条件下で注射器に分注した。
【0079】
実施例3
ラット尾コラーゲン(I)(Roche)を0.01N塩酸中に20mg/mLで溶解した。pH4.7で、0.9重量%NaClを有する、100mMの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸緩衝塩(MES)緩衝液中に、ヒアルロン酸、2MDa分子量、(Corneal)を40mg/mLで溶解した。pH4.7で0.9重量%NaClを有する、100mMのMES緩衝液中に、43mgのNaClおよび95mgのMES緩衝塩を溶解することによって、pH6.3のMES緩衝液(500mM)を作成した。4.2gのラットコラーゲン(I)溶液、4.2gのヒアルロン酸溶液、および1.05mLのMES緩衝液を混合することによって、反応前溶液を作成した。pH5.2で、0.9重量%NaClを有する、530μLの100mMのMES緩衝液中の、114mgのN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩から、活性化溶液を作製した。pH5.2で、0.9重量%NaClを有する、530μLの100mMのMES緩衝液中の、100.6mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHClから、結合溶液を作製した。次いで、9gのヒアルロン酸/コラーゲン溶液に、500μLの活性化溶液、続いて500μLの結合溶液を添加することによって、反応混合物を作成した。反応混合物をガラスバイアルに移し、4000RPMで5分間遠心分離し、気泡を除去した。反応を4℃で18時間継続した。次いで、100ミクロンの細孔径のメッシュを通して、ゲルを微粒子化した。サイズ決定後、4℃で3時間、70%イソプロパノール/30%水に対する、20kDaの分画分子量のセルロースエステル膜を通した透析によって、ゲルを滅菌した。次いで、緩衝液を4回交換し、4℃で72時間、滅菌リン酸緩衝液に対して透析を継続した。次いで、ゲルを無菌条件下で注射器に分注した。
【0080】
実施例4
20kDaの分画分子量の遠心濾過装置を使用して、0.01N塩酸中のラット尾コラーゲン(I)を5mg/mLから12mg/mLに濃縮した。ヒアルロン酸(120mg、2MDa)を10mLのコラーゲン溶液に添加し、60分間水和させた。次いで、ルアー-ルアーコネクタを通して注射器から注射器に通すことによって、溶液を均質化した。
次いで、90mgのNaCl(0.9重量%)および200mgの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸緩衝塩(100mM)を溶液に添加し、混合した。次いで、98mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHClおよび111mgのN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩(それぞれ50mM)を溶液に添加し、迅速に混合した。最後に、200μLの1N NaOHを溶液に添加し、注射器から注射器への通過によって混合した。反応溶液をガラスバイアルに移し、4000RPMで5分間遠心分離し、気泡を除去した。反応を4℃で18時間継続した。次いで、100ミクロンの細孔径のメッシュを通して、ゲルを微粒子化した。サイズ決定後、4℃で3時間、70%イソプロパノール/30%水に対する、20kDaの分画分子量のセルロースエステル膜を通した透析によって、ゲルを滅菌した。次いで、緩衝液を4回交換し、4℃で72時間、滅菌リン酸緩衝液に対して透析を継続した。次いで、ゲルを無菌条件下で注射器に分注した。
【0081】
実施例5
Anton Paar MCR 301を使用して、ゲルの機械的特性を特徴付けるために、振動平行板レオロジーを使用した。1mmの隙間高さで25mmの板直径を使用した。周波数が対数的に増加する、2%の固定ひずみでの0.1~10Hzの周波数掃引を適用し、続いて、ひずみが対数的に増加する、5Hzの固定周波数での0.1%~300%の間のひずみ掃引を適用した。5Hzでの周波数掃引測定から、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を決定した。
【0082】
実施例1からのゲルは、505Paの貯蔵弾性率(G’)および70Paの損失弾性率(G”)を有した。
【0083】
実施例3からのゲルは、2,580Paの貯蔵弾性率(G’)および155Paの損失弾性率(G”)を有した。
【0084】
実施例3からのゲルに対する周波数およびひずみ掃引は、
図1に示される。
【0085】
実施例6
ゲルを押し出すために必要とされる力を決定するために、Bluehill 2ソフトウェアを有するInstron 5564を使用して、30G針を通した1mLのBD注射器からゲルを放出した。11.35mmに対して100mm/分の速度でプランジャーを押し、押出プロファイルを記録した。
【0086】
実施例3からのゲルに対する30G針を通した押出プロファイルは、
図2に示される。
ゲルは、4~10mmまで、12.2Nの平均押出力を有した。
【0087】
実施例7
ゲルを液体窒素中で急速冷凍し、凍結乾燥によって乾燥させた。次いで、Hitachi S-4500走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、乾燥試料を撮像した。実施例4からのゲルのSEM画像は、50X(A)、1,000X(B)、および40,000X(C)で、
図3に示される。コラーゲン(I)の原線維の特性は、ヒドロゲル中で部分的に保存される。
【0088】
実施例8
20kDaの分画分子量の遠心濾過装置を使用して、0.01N塩酸中のラット尾コラーゲン(I)を5mg/mLから12mg/mLに濃縮した。ヒアルロン酸ナトリウム塩(120mg、2MDa)を10mLのコラーゲン溶液に添加し、60分間水和させた。
次いで、ルアー-ルアーコネクタを通して注射器から注射器に通すことによって、溶液を均質化し、93mgのNaCl、201mgの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸緩衝塩、および200μLの1N NaOHを溶液に添加し、混合した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(98mg)および111mgのN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩を添加し、最終溶液を、注射器から注射器への通過によって混合した。反応溶液をガラスバイアルに移し、4000RPMで5分間遠心分離し、気泡を除去した。反応を4℃で16時間継続した。次いで、60ミクロンの細孔径のメッシュを通して、ゲルを微粒子化した。サイズ決定後、4℃で3時間、70%イソプロパノール/30%水に対する、20kDaの分画分子量のセルロースエステル膜を通した透析によって、ゲルを滅菌した。次いで、緩衝液を4回交換し、4℃で72時間、滅菌リン酸緩衝液に対して透析を継続した。次いで、ゲルを無菌条件下で注射器に分注した。
【0089】
実施例9
Sprague-Dawleyラット中の50μLの皮内試料注入によって、ゲルの生体適合性を試験した。インプラントを1週目で除去し、H&EおよびマクロファージマーカーCD68染色による組織像によって、エクスプラントを分析した。染色度に基づき、CD68染色の3つの20X画像を0から4までスコア付けした。次いで、これらの値を平均化し、試料スコアを得た。各ゲルに対する4つの試料を分析した。実施例3、4、および8、ならびにいくつかの市販の真皮充填剤の生体適合性試験の結果は、表1に示される。
【表1】
【0090】
実施例10
ISO10993-5のアガロース・オーバーレイ法:Biological Evaluation of Medical Devices-Part5:Tests for In Vitro Cytotoxicityに従って、NAMSAによって、実施例4からのゲルの細胞毒性を決定した。フィルタディスク上に配置した0.1mLのゲル、ならびにフィルタディスク上に配置した0.1mLの0.9%NaCl溶液、および陰性対照として1cmの長さの高密度ポリエチレン、および陽性対照として1cm×1cmのラテックス片を、三重ウェルに投与した。L929マウス線維芽細胞のサブコンフルエント単層を直接覆うアガロース表面上に、それぞれを配置した。24時間、5%CO2中で37℃のインキュベーション後、任意の異常細胞形態および細胞溶解に対して、肉眼的および顕微鏡的に培養物を検査した。試料に近接した細胞溶解の領域に基づき、試験物品を0から4までスコア付けした。
【0091】
実施例4からのゲルは、任意の細胞溶解または毒性を引き起こした証拠は示さず、細胞毒性に対して0点を得た。
【0092】
実施例11
ISO 10993-10L Biological Evaluation of Medical Devices-Part 10:Tests for Irritation and Delayed-Type Hypersensitivityに従って、NAMSAによって、実施例4からのウサギにおけるゲルの皮内反応を評価した。
ゲルの抽出物を0.9%NaCl溶液(4:20のゲル:生理食塩水の比)中で調製し、3匹の動物のそれぞれの背部右側の5つの別々の部位に、0.2mLの抽出物を皮内注射した。各動物の背部左側に、抽出物対照を同様に注射した。紅斑および浮腫の徴候に対して、注射の24、48、および72時間後に注射部位を観察した。紅斑および浮腫をそれぞれ、各動物の各時点に対する各部位において、0~4のスケールでスコア付けした。スコア合計をスコアの総数で割ることによって、全体の平均スコアを決定した。
【0093】
実施例4からのゲルは、全体の対照群のスコアと同様に、0の全体の平均スコアを有した。これは、ゲル抽出物からの紅斑または浮腫の徴候がないことを示す。
【0094】
実施例12
ヒアルロン酸ナトリウム塩、2MDaの分子量を、0.01N塩酸中のヒトコラーゲン(I)溶液(Advanced BioMatrix)中に溶解した。溶液に、塩化ナトリウムを0.9重量%で添加し、MESを100mMで添加し、混合した。ヒアルロン酸を1時間水和させ、注射器から注射器への混合によって、溶液を均質化した。1N水酸化ナトリウムの添加によって、溶液のpHを5.4に調節した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(50mM)およびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩(50mM)を、ヒアルロン酸/コラーゲン溶液に添加し、注射器から注射器への移動によって迅速に混合した。溶液をガラスバイアルに移し、4000RPMで5分間遠心分離し、気泡を除去した。得られるゲルを4℃で16時間反応させた。次いで、100ミクロンの細孔径のメッシュを通して、ゲルを微粒子化した。サイズ決定後、4℃で3時間、70%イソプロパノール/30%水に対する、20kDaの分画分子量のセルロースエステル膜を通した透析によって、ゲルを滅菌した。次いで、緩衝液を4回交換し、4℃で72時間、滅菌リン酸緩衝液、pH7.4に対して透析を継続した。次いで、ゲルを無菌条件下で注射器に分注した。
【0095】
異なる濃度のヒアルロン酸およびコラーゲンを有するヒドロゲルを生成するために、この手順を使用した。必要な場合、20kDaの分画分子量の遠心濾過装置中で、0.01N塩酸中のヒトコラーゲン(I)を、3mg/mLから所望の反応濃度まで濃縮した。各ゲルの50mLの試料を合成し、70%イソプロパノールへの曝露によって滅菌し、リン酸緩衝液、pH7.4に対する透析によって精製した。合成したゲルは、それらのレオロジー特性と共に、表2に記載される。Anton Paar MCR 301を使用して、ゲルのレオロジー特性を特徴付けるために、振動平行板レオロジーを使用した。1mmの隙間高さで25mmの板直径を使用した。2%のひずみおよび5Hzで、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を決定した。
【表2】
【0096】
実施例13
ゲル中の生体高分子濃度を決定するために、水和ゲルの重量を乾燥ゲルの重量と比較した。ゲルの2mLの試料を計量し、液体窒素中での急速冷凍、続いて、-50℃および0.02トールの凍結乾燥によって乾燥させた。適切な緩衝液の溶液もまた計量し、ゲルの塩含有量を構成するように同じ方法で乾燥させた。湿潤ゲルに対して1g/mLの密度を仮定して、乾燥重量を湿潤体積で割ることによって、ゲルの総固形分を計算し、mg/mLでの値を得た。次いで、塩固形分をこの値から引き、ゲル中の生体高分子濃度を決定した。
【表3】
【0097】
実施例14
ゲルに対する膨潤比を、初期の含水量と比較して決定し、リン酸緩衝液での平衡後のゲル質量の増加を監視することによって測定した。各ゲルに対して、約1mLを15mLのファルコンチューブに注入し、計量し、続いて10mLのリン酸緩衝食塩水、pH7.4を添加した。ゲルを緩衝液と完全に混合し、30秒間ボルテックスした。次いで、4℃で48時間、ゲルを緩衝液中で平衡化させた。この後、5分間、スウィング型ロータ中で、4000RPMで、懸濁液を遠心分離した。次いで、上清緩衝液を静かに移し、膨潤ゲルの重量を測定した。膨潤ゲルの最終重量を初期ゲルの重量で割ることによって、膨潤比を決定した。
【表4】
【0098】
実施例15
ヒアルロン酸(800mg、2MDaの分子量)を0.01N塩酸中の50mLの8mg/mLのブタコラーゲン(I)溶液中に溶解した。溶液に、塩化ナトリウムを0.9重量%で添加し、2-[モルホリノ]エタンスルホン酸を100mMで添加し、混合した。
ヒアルロン酸を1時間水和させ、注射器から注射器への混合によって、溶液を均質化した。1N水酸化ナトリウムの添加によって、溶液のpHを5.4に調節した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(50mM)およびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩(50mM)を、ヒアルロン酸/コラーゲン溶液に添加し、注射器から注射器への移動によって迅速に混合した。溶液をガラスバイアルに移し、4000RPMで5分間遠心分離し、気泡を除去した。得られるゲルを4℃で16時間反応させた。次いで、100ミクロンの細孔径のメッシュを通して、ゲルを微粒子化した。サイズ決定後、4℃で3時間、70%イソプロパノール/30%水に対する、20kDaの分画分子量のセルロースエステル膜を通した透析によって、ゲルを滅菌した。
次いで、緩衝液を4回交換し、4℃で72時間、滅菌リン酸緩衝液、pH7.4に対して透析を継続した。次いで、ゲルを無菌条件下で注射器に分注した。
【0099】
実施例16
ヌードマウスの背部の小切開を通るカニューレを介して、試料ヒドロゲルの皮下ボーラス注射(1mL)が実施される。注射される試料は、16mg/mLの架橋ヒアルロン酸、16mg/mLの架橋ヒトコラーゲン(I)、および実施例12からの試料Bの架橋ヒアルロン酸-ヒトコラーゲン(I)ヒドロゲルからなる。6週目に、細胞内部成長および組織浸潤の組織学的評価と共に、試料の体積継続時間が決定される。架橋ヒアルロン酸は、90%の体積継続時間を有し、架橋ヒトコラーゲン(I)は、30%の体積継続時間を有し、架橋ヒアルロン酸-ヒトコラーゲン(I)は、85%の体積継続時間を有することがわかる。組織学的評価は、架橋ヒアルロン酸および架橋コラーゲンが組織内部成長をほとんどまたは全く有しないことを示し、一方で、細胞および新しく沈着した細胞外マトリクスは、ヒアルロン酸-ヒトコラーゲン(I)試料全体にわたって見られる。
【0100】
別段の指示がない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量、反応条件などの特性を表す全ての数字は、用語「約」によって全ての場合において修飾されるものとして理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、得られることが求められる所望の特性に応じて異なり得る、近似値である。少なくとも、かつ特許請求の範囲の同等物の原理の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された重要な桁数を考慮して、かつ通常の丸め技術の適用によって、少なくとも解釈されるべきである。
【0101】
用語「a」、「an」、「the」、および本発明を記載する文脈中(特に、以下の特許請求の範囲の文脈中)で使用される同様の指示対象は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるものとする。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例または例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、本発明の理解をより容易にすることのみを目的とし、いかなる特許請求の範囲にも制限を課さない。明細書中のいかなる用語も、本発明の実施に不可欠な任意の非請求の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0102】
本明細書に開示される代替要素または実施形態の群分けは、制限することと解釈されるものではない。各群のメンバーは、個々に、または群の他のメンバーもしくは本明細書に見られる他の要素と任意に組み合わせて、言及および請求されてもよい。群の1つ以上のメンバーが、利便性および/または特許性の理由から、群に含まれるか、または群から削除され得ることが予想される。任意のそのような群への包含または群からの削除が行われる場合、本明細書は、修正された群を含有し、したがって、添付の特許請求の範囲に使用される全てのマーカッシュ群の記述を満たすものとみなされる。
【0103】
本発明を実施するための、本発明者らに既知の最良の形態を含む、ある特定の実施形態が本明細書に記載される。当然のことながら、これらの記載された実施形態の変化形は、上記の説明を読むことによって、当業者に明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者が必要に応じて、記載された実施形態の変化形を採用することを予想し、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、特許請求の範囲は、適用法によって認められるような、特許請求の範囲に記述される主題の全ての修正物および同等物を含む。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、その全ての考えられる変化形における上記の要素の任意の組み合わせが考えられる。
【0104】
最後に、本明細書に開示される実施形態は、特許請求の範囲の原理を例示するものであることが理解されたい。採用され得る他の修正物は、特許請求の範囲内である。したがって、限定ではなく一例として、代替の実施形態が、本明細書の教示に従って利用されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、正確に図示および記載されるような実施形態に限定されない。