(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
G21C17/00 110
(21)【出願番号】P 2020182060
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 伸久
(72)【発明者】
【氏名】田原 美香
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中川 孝博
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027328(JP,A)
【文献】特開2017-049153(JP,A)
【文献】特開2018-060255(JP,A)
【文献】特開2018-106013(JP,A)
【文献】特開2020-027523(JP,A)
【文献】特開2020-052054(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103928071(CN,A)
【文献】長嶋一史,“原子力災害初期段階における住民防護措置の意思決定に関する研究”,福井大学リポジトリ,福井大学,2019年09月27日,P84-104,http://hdl.handlenet/10098/10751
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力データを読み込み、事故進展の解析プログラムに基づいて複数の演算を順次的に処理し、核分裂生成物が放出されるタイミングを出力する第1処理部と、
順次的に処理された複数の前記演算のうち、緊急時活動レベルの判断基準に関係する演算情報を予め指定しておく指定部と、
第2入力データ及び前記演算情報を読み込み、前記判断基準が成立するタイミングを出力する第2処理部と、を備え
、
前記第2入力データは、前記事故進展のシナリオの行方を左右する複数の項目と、各々の前記項目に紐付けされている複数の状態の中から択一的に選択した前記状態と、により構成されている緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置において、
前記第1入力データは、プラントデータ、モデルパラメータ、入出力管理パラメータ、事故シーケンスの指定、緩和操作の指定、パラメータの変更指示、出力用パラメータである緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置において、
前記判断基準は、複数に分類された前記緊急時活動レベルのEAL区分の各々に対し設定される緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載の緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置において、
前記判断基準が成立した前記EAL区分のリストを、タイミングに基づき配列し出力する緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置。
【請求項5】
第1入力データを読み込み、事故進展の解析プログラムに基づいて複数の演算を順次的に処理し、核分裂生成物が放出されるタイミングを出力するステップと、
順次的に処理された複数の前記演算のうち、緊急時活動レベルの判断基準に関係する演算情報を予め指定しておくステップと、
第2入力データ及び前記演算情報を読み込み、前記判断基準が成立するタイミングを出力するステップと、を含み
、
前記第2入力データは、前記事故進展のシナリオの行方を左右する複数の項目と、各々の前記項目に紐付けされている複数の状態の中から択一的に選択した前記状態と、により構成されている緊急時活動レベルの成立タイミング評価方法。
【請求項6】
コンピュータに、
第1入力データを読み込み、事故進展の解析プログラムに基づいて複数の演算を順次的に処理し、核分裂生成物が放出されるタイミングを出力するステップ、
順次的に処理された複数の前記演算のうち、緊急時活動レベルの判断基準に関係する演算情報を予め指定しておくステップ、
第2入力データ及び前記演算情報を読み込み、前記判断基準が成立するタイミングを出力するステップ、を実行させ
、
前記第2入力データは、前記事故進展のシナリオの行方を左右する複数の項目と、各々の前記項目に紐付けされている複数の状態の中から択一的に選択した前記状態と、により構成されている緊急時活動レベルの成立タイミング評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原子力施設における緊急時活動レベルの判断基準が成立するタイミングを評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急時活動レベル(EAL:Emergency Action Level)とは、原子力施設において異常事態が発生した際、緊急性を判断する基準を言う。そして判断される緊急事態は、施設の情報、放射線量等に基づき「警戒事態(AL:Alert)」、「施設敷地緊急事態(SE:Site area Emergency)」及び「全面緊急事態(GE:General Emergency)」の三種類に大きく分類される。さらにEALには、発生した異常事態が、これら三種類の緊急事態のいずれの分類に合致するかの判断基準が示されている。
【0003】
また、事故時の公衆の放射線被ばくリスクを低減するために、原子力規制委員会が制定した原子力災害対策指針では、放射性物質の環境への放出前に公衆の予防的避難を行うこととしている。そして、原子力施設の状態に対応したEALに基づき警報を発令し、公衆避難の準備・実施をするという運用が検討されている。
【0004】
一方、原子力施設の運転情報に基づいて起因事象を同定し、同定した起因事象からの事象進展を解析し、この解析結果から導かれる被ばく予測に基づいて、避難計画を立案する原子力緊急時対応システムが公知である。この公知技術によれば、予め想定される事故内容に基づいて、被ばく予測し、避難計画が立案できることになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、原子力施設に異常事態が発生し避難計画を立案する際は、様々な事故シナリオに基づき、EALによる警報発令からFP(核分裂生成物)放出開始までの時間的余裕が、どの程度あるか把握する必要がある。しかしながら、上述の公知技術では、FPの放出開始時間は予測できるが、EALによる警報発令のタイミングを予測できない。そのため、避難実施に係る時間的余裕を把握できず、被ばくを極力避けるための安全な避難計画の立案に支障をきたしていた。
【0007】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、被ばくを極力避けて安全に避難するための時間的余裕を持つ警報を発令するため、FP放出タイミングを予測する事象進展解析に基づいて、EALの成立タイミングを評価する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置において、第1入力データを読み込み事故進展の解析プログラムに基づいて複数の演算を順次的に処理し核分裂生成物が放出されるタイミングを出力する第1処理部と、順次的に処理された複数の前記演算のうち緊急時活動レベルの判断基準に関係する演算情報を予め指定しておく指定部と、第2入力データ及び前記演算情報を読み込み前記判断基準が成立するタイミングを出力する第2処理部と、を備え、前記第2入力データは、前記事故進展のシナリオの行方を左右する複数の項目と、各々の前記項目に紐付けされている複数の状態の中から択一的に選択した前記状態と、により構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態により、被ばくを極力避けて安全に避難するための時間的余裕を持つ警報を発令するため、FP放出タイミングを予測する事象進展解析に基づいて、EALの成立タイミングを評価する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置のブロック図。
【
図2】緊急時活動レベルを判断基準で分類したEAL区分を示すマトリックス表。
【
図3】第2入力データを構成する項目と対応する状態を示すテーブル。
【
図4】起因事象として給水喪失が発生した場合において、各項目の状態を展開した第2入力データの構成例を示すテーブル。
【
図5】起因事象として給水喪失が発生した場合において、核分裂生成物が放出されるまでに成立するEAL区分を成立タイミングに従って配列したリスト。
【
図6】実施形態に係る緊急時活動レベルの成立タイミング評価方法及びその成立タイミング評価プログラムを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は実施形態に係る緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置10(以下、単に「評価装置10」という)のブロック図である。
図2は緊急時活動レベル(EAL:Emergency Action Level)を判断基準36で分類したEAL区分を示すマトリックス表である。
【0012】
このように評価装置10は、第1入力データ11を読み込み事故進展の解析プログラム15に基づいて複数の演算25
m(m=1~M)を順次的に処理し核分裂生成物(FP)が放出されるタイミング(FP放出タイミングデータ16)を出力する第1処理部21と、順次的に処理された複数の演算25
m(m=1~M)のうち緊急時活動レベル(EAL)の判断基準36(
図2)に関係する演算情報28を予め指定しておく指定部26と、第2入力データ12及び演算情報28を読み込み判断基準36が成立するタイミング(EAL成立タイミングデータ17)を出力する第2処理部22と、を備えている。
【0013】
緊急時活動レベル(EAL)は、原子力施設において異常事象が発生した際、緊急事態を判断する基準(判断基準36)を定義している。
図2に示すようにこの緊急事態は、施設の情報、放射線量等に基づき「警戒事態(AL:Alert)」、「施設敷地緊急事態(SE:Site area Emergency)」及び「全面緊急事態(GE:General Emergency)」の3つに区分されている。
【0014】
さらに緊急時活動レベル(EAL)は、発生事態がいずれのEAL区分に該当するかの判断基準36が項目分けして定義されている。つまり、複数に分類されたEAL区分の各々に対し、判断基準36が設定されている。なお以降において、特定のEAL区分を指す場合は、
図2のマトリックスの行を特定する項目番号と列を特定する記号を用いて、例えば、SE27,GE42のように示す。
【0015】
警戒事態(AL)では、プラントの安全レベルが低下した場合、あるいは、その可能性があるような事象が発生した場合を判定基準とし、この場合、PAZ(予防的防護措置を準備する区域)内の災害時要援護者の避難の準備が開始される。
【0016】
施設敷地緊急事態(SE)では、公衆を防護するために必要とされるプラントの機能が喪失した場合、あるいは、その可能性があるような事象が発生した場合を判定基準とし、この場合、PAZ内の災害時要援護者の避難が実施され、PAZ内住民の避難準備が実施
される。
【0017】
全面緊急事態(GE)では、炉心損傷若しくは燃料の溶融が発生した場合、あるいは、その可能性があるような事象が発生し、さらに格納容器の健全性を喪失する可能性がある事象が発生した場合を判定基準とし、この場合、PAZ内住民の避難が実施され、UPZ(緊急時防護措置を準備する区域)の屋内退避が実施される。
【0018】
図1に戻って説明を続ける。事故進展の解析プログラム15は、例えば、米国電力研究所(EPRI)によって開発されたMAAPコードが挙げられる。このMAAPコードは、軽水炉の炉心損傷、原子炉圧力容器(RPV)破損、原子炉格納容器(PCV)破損からコア・コンクリート反応、放射性物質の発生・移行・放出に至る事故進展の一連のプロセスを解析できる。
【0019】
そして、一連の事故進展が、炉心を冷却可能な状態にすることができて終息するか、あるいはPCVが機能喪失し核分裂生成物(FP)を放出するといった重大事故に発展するか、の結末を迎えるまでのプロセス解析を行う。なお解析プログラム15は、事故進展の過程プロセスを個別に解析するモジュールを統合することで、一連のプロセスを解析する構成となっている。
【0020】
第1入力データ11は、プラントデータ、モデルパラメータ、入出力管理パラメータ、事故シーケンスの指定、緩和操作の指定、パラメータの変更指示、出力用パラメータである。具体的には、プラント特性(格納容器の体積など)、温度や圧力等のパラメータ、原子炉注水系等をはじめとする事象緩和機能の動作のパラメータ(ON/OFFや起動タイミングなど)などである。
【0021】
第1処理部21は、事故進展のシナリオを模擬させる第1入力データ11を読み込む。そして、予めインストールされている解析プログラム15により、この第1入力データ11を、複数の演算25m(m=1~M)で順次的に処理する。その結果、炉心が冷却可能な状態となり事故が終息するか、あるいはPCVが機能喪失し核分裂生成物(FP)を放出するかについて、いずれかの場合の情報が得られる。
【0022】
そして第1処理部21は、FP放出の場合、そのタイミングに関するFP放出タイミングデータ16を出力する。なお、このFP放出タイミングデータ16は、EAL成立タイミングデータ17との関係で、各種EAL区分の判断基準36が成立してからFP放出が開始されるまでの時間的余裕が把握できるものであればよい。
【0023】
ところで、上述した第1入力データ11と解析プログラム15により第1処理部21でFP放出タイミングデータ16を出力するまでは、公知技術といえる。実施形態に係る評価装置10の特徴は、公知技術である第1処理部21の機能に、次に説明する指定部26及び第2処理部22の機能が、新たに追加された点にある。
【0024】
指定部26は、順次的に処理された複数の演算25
m(m=1~M)のうち緊急時活動レベル(EAL)の判断基準36(
図2)に関係する演算情報28を予め指定して、保持部27に保持させておく。つまり指定部26は、第2処理部22において判断基準36の成立性が判断される各々のEAL区分に関係する演算情報28を指定する。
【0025】
例えば、EAL区分がGE23(
図2)の判断基準36(残留熱除去機能喪失後の圧力制御機能喪失)が成立するのは次の条件を満たす場合である。すなわち、残留熱除去系による除熱失敗後に、サプレッションプール水平均温度が100℃以上となった場合もしくは原子炉格納容器内の圧力が設計上の最高使用圧力1Pdに達した場合である。
【0026】
この場合、指定部26は、解析プログラム15が順次的に処理する複数の演算25m(m=1~M)のうち、サプレッションプール水平均温度が100℃以上となった時刻の演算情報28、及び原子炉格納容器内の圧力が設計上の最高使用圧力1Pdに達した時刻の演算情報28を指定して保持部27に保持させる。
【0027】
さらにEAL区分がSE25の判断基準36(全交流電源の30分以上喪失)の成立性を判断する場合、指定部26において次のように指定される。すなわち、解析プログラム15が順次的に処理する複数の演算25m(m=1~M)のうち、交流電源喪失後30分の時刻の演算情報28を指定して保持部27に保持させる。
【0028】
なお、ここに例示したGE23とSE25以外のEAL区分に関係する演算情報28についても同様に保持部27に保持させる。また、これら複数のEAL区分の各々に関係する複数の演算情報28を指定するための指定情報23が、指定部26から第1処理部21に送信される。
【0029】
図3は第2入力データ12(適宜、
図1参照)を構成する項目31と対応する状態32を示すテーブルである。
図4は「起因事象」として「給水喪失」が発生した場合において各項目31の状態32を展開した第2入力データ12の構成例を示すテーブルである。このように第2入力データ12は、事故進展として想定されるシナリオの行方を左右する複数の項目31に対し、各々の項目31の状態32を設定することにより構成される。第2入力データ12を構成する複数の項目31及び各々に紐付けされる状態32により、対象となるシナリオの解析条件及び緩和機能が指定される。
【0030】
第2入力データ12は、
図3に示される各々の項目31に紐付けされた複数の状態32を
図4に示すように択一的に選択して作成される。
図4に示す第2入力データ12は、「給水喪失」の発生による過渡事象のシナリオの場合の設定例である。ここで、「起因事象」は事故のきっかけとなり得る出来事を指定する。「スクラム成否」はスクラム(原子炉緊急停止)が「成功」か「失敗」かを指定する。「LOCA(冷却材喪失事故)」はLOCAが「発生」か「なし」かを指定する。「給水喪失」は「給水有り」か給水喪失が「発生」かを指定する。「水位計測」は水位計測が「健全」か「不能」かを指定する。「PCV(原子炉格納容器)隔離」はPCV隔離が「健全」か「隔離失敗」かを指定する。「DC(直流電源)の複数系統中の単一系統かつ供給電源が1種類のみ」はDCが「健全」かDCが複数系統中の単一系統かつ供給電源が1種類のみ生きていることに「該当」するかを指定する。
【0031】
「HPCS(HPCI)(高圧炉心スプレイ系(高圧注入系))」はHPCS(HPCI)が「健全」か「故障」か「運転継続失敗」かを指定する。「RCIC(原子炉隔離時冷却系)」はRCICが「健全」か「故障」か「運転継続失敗」かを指定する。「HPAC(高圧代替注水系)」はHPACが「健全」か「故障」か「運転継続失敗」かを指定する。「LPCI(低圧注水系)」はLPCIが「健全」か「故障」か「運転継続失敗」かを指定する。「LPCS(低圧炉心スプレイ系)」はLPCSが「健全」か「故障」か「運転継続失敗」かを指定する。「RHR(残留熱除去系)停止時冷却モード」はRHR停止時冷却モードが「健全」か「故障」か「運転継続失敗」かを指定する。「RHR(残留熱除去系)SP(サプレッションプール)冷却モード」はRHRSP冷却モードが「健全」か「故障」か「運転継続失敗か」を指定する。「RHR(残留熱除去系)格納容器スプレイモード」はRHR格納容器スプレイモードが「健全」か「故障」か「運転継続失敗」かを指定する。「原子炉減圧」は原子炉減圧が「なし」か「実行」かを指定する。「格納容器ベント」は格納容器ベントが「なし」か「実行」かを指定する。
【0032】
第2処理部22(
図1)は、第2入力データ12及び演算情報28を読み込み、何れかのEAL区分の判断基準36(
図2)が成立するタイミング(EAL成立タイミングデータ17)を出力する。
【0033】
図5は、起因事象として「給水喪失」が発生した場合において、核分裂生成物(FP)が放出される「格納容器機能喪失」までに成立する複数のEAL区分をその発生順序に従い配列した成立EALリスト18である。このように第2処理部22は、判断基準36が成立したEAL区分を、FP放出タイミングデータ16及びEAL成立タイミングデータ17に基づき配列した結果(成立EALリスト18)を出力する。
【0034】
図5に示されるEAL区分がSE23の「RHR(残留熱除去系)機能喪失」は、
図4の第2入力データ12において、「RHR(残留熱除去系)停止時冷却モード」、「RHR(残留熱除去系)SP(サプレッションプール)冷却モード」、「RHR(残留熱除去系)格納容器スプレイモード」の全てが最初から「故障」している。このため第2処理部22(
図1)は、SE23の成立タイミングを0と評価する。
【0035】
そしてEAL区分がSE42の「3つの障壁の内いずれか2つの障壁の喪失又はその可能性」については、様々な条件成立に関する演算情報28のなかから最早タイミングである「D/W(ドライウェル)圧力高かつ減圧禁止領域到達」が該当する。このため第2処理部22(
図1)は、この最早タイミングの5.77時間を、SE42の成立タイミングと評価する。
【0036】
そしてEAL区分がGE23の「RHR(残留熱除去系)機能喪失後、SP(サプレッションプール)水温100℃以上又は1Pd到達」については、
図4の第2入力データ12において、「RHR(残留熱除去系)停止時冷却モード」、「RHR(残留熱除去系)SP(サプレッションプール)冷却モード」、「RHR(残留熱除去系)格納容器スプレイモード」の全てが最初から「故障」している。このため第2処理部22(
図1)は、「SP(サプレッションプール)水温100℃以上又は1Pd到達」に関する演算情報28に基づいてGE23の成立タイミングを10.84時間と評価する。
【0037】
第2処理部22は、上述したSE23、SE42、GE23の例に従って、その他のEAL区分についても同様に成立タイミングを評価していく。但し、評価される成立タイミングが、演算処理上、「格納容器機能損失」(FP放出タイミングデータ16)を超えるEAL区分については、判断基準36が不成立とみなす。そして、
図5の成立EALリスト18に示すように、成立タイミングが早い順に配列し、EAL区分の発生順序を示す。
【0038】
図1に戻って説明を続ける。図示を省略するが、実施形態の評価装置10は、インターネットやイントラネットなどのネットワーク(図示略)に接続され、他のコンピュータと通信可能となっている。さらに、第1入力データ11や第2入力データ12は、オペレータがキーボードやマウス等の入力手段(図示略)を操作することで評価装置10に入力される。もしくは各種入力データは、上述のネットワークや通信インタフェースを介して他のコンピュータから入力されるものであっても良い。またFP放出タイミングデータ16、EAL成立タイミングデータ17及び成立EALリスト18は、モニタ等の表示部(図示略)や、プリンタ(図示略)により出力される。もしくは、ネットワーク(図示略)を介して、他のコンピュータに転送される。
【0039】
図6のフローチャートに基づいて実施形態に係る緊急時活動レベルの成立タイミング評価方法及びその成立タイミング評価プログラムを説明する(適宜、
図1,
図2参照)。まず、事故進展の解析プログラム15に基づいて順次的に処理される演算25
m(m=1~M)のうち、緊急時活動レベルの判断基準36に関係する演算情報28を予め指定しておく(S11)。
【0040】
次に、事故進展のシナリオを模擬させるプラントデータ等の第1入力データ11を読み込む(S12)。そして、事故進展の解析プログラム15に基づいて複数の演算25m(m=1~M)を順次的に処理し(S13)、核分裂生成物が放出されるタイミング(FP放出タイミングデータ16)を出力する(S14)。なお、読み込んだ第1入力データ11によっては、解析プログラム15により、核分裂生成物は放出されない(炉心を冷却可能な状態にすることができ事故進展は終息する)と判断される場合もある。
【0041】
次に、対象とする事故進展のシナリオの解析条件及び緩和機能を指定する第2入力データ12及び予め指定された演算情報28を読み込み(S15)、EAL区分の判断基準36が成立するタイミング(EAL成立タイミングデータ17)を出力する(S16)。さらに、FP放出タイミングデータ16に到達するまでにEAL成立タイミングデータ17が成立する何れかのEAL区分を、成立する順番に従って配列した成立EALリスト18を出力する(S17)。
【0042】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置によれば、FP放出タイミングを予測する第1処理部の事象進展解析に基づいて、第2処理部でEALの成立タイミングを評価することにより、被ばくを極力避けて安全に避難するための時間的余裕を持つ警報を発令することが可能となる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0044】
本実施形態に係る評価装置10は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。また本実施形態に係る評価装置10の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、評価装置プログラムにより動作させることが可能である。
【0045】
また本実施形態に係る評価プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0046】
また、本実施形態に係る評価プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、本実施形態に係る装置10は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0047】
10…緊急時活動レベルの成立タイミング評価装置(評価装置)、11…第1入力データ、12…第2入力データ、15…解析プログラム、16…FP放出タイミングデータ、17…EAL成立タイミングデータ、18…成立EALリスト、21…第1処理部、22…第2処理部、23…指定情報、25m(m=1~M)…演算、26…指定部、27…保持部、28…演算情報、31…項目、32…状態、36…判断基準。