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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240109BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240109BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240109BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240109BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
H01M4/36 C
H01M4/505
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020201942
(22)【出願日】2020-12-04
(62)【分割の表示】P 2018217946の分割
【原出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2021048137
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0156847
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0095750
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ソンジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ムンホ
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ジュンウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジュンハン
(72)【発明者】
【氏名】ナム, ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, スンウ
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/038983(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0049647(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0359165(US,A1)
【文献】特開平11-067209(JP,A)
【文献】特開平10-236826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0133668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
C01G 53/00
H01M 4/36
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部、及び前記コア部を囲むシェル部を備え、
前記コア部及び前記シェル部における遷移金属の総含量に対するコバルトの含量が9モル%~12モル%であり、
前記コア部及び前記シェル部におけるコバルトの含量をWとするとき、前記シェル部におけるコバルトの含量は、0.2W~1.0Wであり、
前記粒子全体の直径をDとするとき、Dは10μm~25μmであり、シェル部の厚さは0.01D~0.3Dであり、
前記コア部におけるコバルト含量とシェル部におけるコバルト含量とが同一でない、
下記の化学式1で表示されるリチウム二次電池用正極活物質。
【化1】
(上記化学式1において0.9≦a≦1.3、0.7≦x<1.0、0.09≦y≦0.12、0.0≦z≦0.3、0.0≦1-x-y-z≦0.3であり、 Mは、B、Ba、Ce、Cr、F、Mg、Al、Cr、V、Ti、Fe、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、P、Sr、Ge、Cu、及びこれから選ばれる1種以上の元素である)。
【請求項2】
前記コア部におけるコバルト含量とシェル部におけるコバルト含量とが同一でない請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質に関し、より詳細には、コア部及び前記コア部を囲むシェル部を備え、前記コア部及びシェル部におけるコバルト含量が所定範囲内に、コア部及びシェル部におけるコバルト総含量が5モル%~12モル%に調節されるものであるリチウム二次電池用正極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、MP3プレーヤ、タブレットPCのような携帯用モバイル電子機器の発展により、電気エネルギーを保存できる二次電池に対する需要が爆発的に増加している。特に、電気自動車、中大型エネルギー保存システム、及び高エネルギー密度が求められる携帯機器の登場により、リチウム二次電池に対する需要が増加している実情である。
【0003】
リチウム二次電池用正極活物質は、層状構造のLiCoOが多く使用されている。LiCoOは、寿命特性及び充放電効率に優れて、最も多く使用されているが、構造的な安定性が低く、電池の高容量化技術に適用されるには限界がある。
【0004】
これを代替するための正極活物質として、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、Li(NiCoMn)Oなどの様々なリチウム複合金属酸化物が開発された。この中で、LiNiOの場合、高い放電容量の電池特性を表すという長所があるが、簡単な固相反応では合成が難しく、熱的安定性及びサイクル特性が低いという問題点がある。また、LiMnO又はLiMnなどのリチウムマンガン系酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さく、高温特性が低いという問題点がある。特に、LiMnの場合、低価格製品に一部商品化されているが、Mn3+による構造変形(Jahn-Teller distortion)のため、寿命特性が良くない。また、LiFePOは、低い価格と安全性に優れ、現在、ハイブリッド自動車(hybrid electric vehicle、HEV)用に多くの研究がなされているが、伝導度が低いため、他の分野に適用し難いという実情がある。
【0005】
これにより、LiCoOの代替正極活物質として近年最も脚光を浴びている物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、Li(NiCoMn)O(このとき、前記x、y、zは、各々独立的な酸化物組成元素等の原子分率であって、0<x≦1、0<y≦1、0<z≦1、0<x+y+z≦1である)である。この材料は、LiCoOより低価格であり、高容量及び高電圧に使用され得るという長所があるが、レート特性(rate capability)及び高温での寿命特性が良くないという短所を有している。
【0006】
このような問題点を解決するために、ニッケルの含量が高いコア(core)部とニッケルの含量が低いシェル(shell)部とで構成された、金属組成が濃度勾配を表すリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物が研究開発されている。この方法は、一応、所定組成の内部物質を合成した後、外部に他の組成を有する物質を被覆して二重層で製造した後、リチウム塩と混合して熱処理する方法である。前記内部物質では、市販されるリチウム遷移金属酸化物を使用することもできる。
【0007】
しかしながら、この方法は、生成された内部物質と外部物質との組成間で正極活物質の金属組成が不連続的に変化し、連続的に変わらないので、内部構造が不安定であるという問題点がある。また、この発明で合成された粉末は、キレート剤であるアンモニアを使用
しないためにタップ密度が低く、リチウム二次電池用正極活物質として使用するには不向きであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点であるコアシェル構造を有する正極活物質の安全性及び効率を増加させるためのものであって、コア部及びシェル部におけるコバルト総含量が所定の濃度で調節された正極活物質前駆体及びこれを用いて製造された正極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、本発明は、コア部及び前記コア部を囲むシェル部を備え、前記コア部及びシェル部におけるコバルト総含量が5モル%~12モル%で所定範囲内に維持されるものであるリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0010】
従来のコアシェル構造を有する正極活物質の場合、金属組成の不連続的な変化による内部構造の不安定問題と、これによるリチウム二次電池の効率が減少するという問題点があったが、本発明では、コアシェル構造を有するリチウム二次電池用正極活物質において、コア部及びシェル部におけるコバルト総含量を一定に、特に、含量を5モル%~12モル%で調節する場合、安定性及び効率に優れ、上記問題点の解消が確認できた。
【0011】
本発明の他の態様によれば、本発明は、前記コア部及びシェル部におけるコバルト総含量を一定に(5モル%~12モル%)調節した下記の化学式1で表示されるリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
(上記化学式1において0.9≦a≦1.3、0.7≦x<1.0、0.05≦y≦0.12、0.0≦z≦0.3、0.0≦1-x-y-z≦0.3であり、
Mは、B、Ba、Ce、Cr、F、Mg、Al、Cr、V、Ti、Fe、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、P、Sr、Ge、Cuから選ばれる1種以上の金属元素である)。
【0014】
本発明に係るリチウム二次電池用正極活物質において、前記正極活物質の粒子全体におけるコバルトの含量をWとするとき、シェル部におけるコバルトの含量は、0.2W~1.0Wであることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様によれば、本発明に係る前記正極活物質の粒子全体の直径をDとするとき、Dは、1μm~25μmであり、シェル部の厚さは、0.01D~0.3Dであることを特徴とする。すなわち、本願発明では、粒子全体におけるCo含量及びシェルにおけるCo含量を所定範囲に調節しつつ、これによりシェル部の厚さを変化させることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様によれば、本発明は、上記本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0017】
前記リチウム二次電池は、前記構成を有する正極活物質を含む正極、負極活物質を含む
負極、及び、これらの間に存在するセパレータを含む。また、正極、負極、セパレータに含浸されて存在する電解質を含む。前記負極活物質では、可逆的にリチウムイオンを吸蔵/放出できるものが好ましく、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、アモルファスカーボンなどを含むものを用いることができ、金属リチウムも負極活物質として用いることができる。前記電解質は、リチウム塩と非水性有機溶媒を含む液状の電解質でありうるし、ポリマーゲル電解質でありうる。
【発明の効果】
【0018】
前述したように、本発明に係る正極活物質前駆体及びこれを用いて製造されたリチウム二次電池用正極活物質は、粒子におけるコバルト含量を所定範囲に調節することにより、リチウム二次電池の最適容量を増加させるだけでなく、安定性を改善させることにより寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例において製造された正極活物質のサイズ及び内部金属濃度を測定した結果を示す。
図2】本発明の一実施例において製造された正極活物質のサイズ及び内部金属濃度を測定した結果を示す。
図3】本発明の一実施例及び比較例の正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
図4】本発明の一実施例及び比較例の正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
図5】本発明の一実施例及び比較例の正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
図6】本発明の一実施例及び比較例の正極活物質を含む電池の特性を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、幾つかの実施例によって本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであるから、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるとは解釈されない。
【0021】
(本実施例における前駆体の製造)
正極活物質を製造するために、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを用意し、まず、共沈反応によってコア及びシェル部で構成される前駆体1~3を製造した。このとき、コア及びシェル部全体のコバルト組成は、各々5モル%、9モル%、及び12モル%(実施例1~3)となるように製造した。
【0022】
リチウム化合物としてLiOHを添加して、N、O/(1LPM~100LPM)存在下に1℃/min~20℃/minの昇温速度で4時間~20時間の間(維持区間基準)1次熱処理後、Alを含む化合物を0mol%~10mol%混合して2次熱処理し、リチウム二次電池用正極活物質を製造した。
【0023】
その次に、蒸溜水を用意し、5℃~40℃の温度で一定に維持した後、前記製造されたリチウム二次電池用正極活物質を蒸溜水に投入して温度を維持させつつ、0.1時間~10時間、水洗した。
【0024】
水洗された正極活物質をフィルタプレス(filter press)後、50℃~300℃で3時間~24時間、酸素雰囲気で乾燥した。
【0025】
(比較例における前駆体の製造)
コア及びシェル部全体のコバルト含量を3モル%としたことを除いては、上記実施例と同様にして正極活物質を製造した。
【0026】
(粒子サイズ測定)
実施例1における正極活物質の粒子のサイズを測定し、その結果を図1に示した。図1に示すように、本発明の実施例によって製造された正極活物質の粒子のサイズは、10μm~25μmであることが分かる。
【0027】
(各実施例に係るシェル部の厚さ測定)
実施例1に係る正極活物質の粒子に対して表面から粒子内部への金属濃度からシェルの厚さを測定し、その結果を図2に示した。
【0028】
図2に示すように、本発明の実施例によって製造された正極活物質の粒子は、シェルの厚さが1.6μmであることが分かる。
【0029】
(半電池の製造)
上記実施例1~3及び比較例において製造された正極活物質94重量%、導電材(super-P)3重量%、バインダー(Binder)(PVDF)3重量%の割合で各々4.7g:0.15g:0.15gを混合し、攪拌機で1900rpm/10min混合後、アルミホイルにマイクロフィルムアプリケータ(Micro film applicator)で塗布した後、135℃のドライオーブン(Dry-oven)で4時間乾燥して正極板を製造した。
【0030】
また、負極板としては、リチウム金属ホイルを用いて、分離膜としてW-Scope-20μmポリプロピレン、電解液としてEC/EMC=7/3の組成を有する1.15M
LiPFを使用してコインセル(coin cell)を製造した。
【0031】
(充放電特性測定)
実施例1~3の正極活物質の粒子及び比較例の正極活物質の粒子に対する充放電特性を測定し、その結果を図3及び表1に示した。
【0032】
図3及び表1に示すように、コア及びシェル部全体のCoモル分率が9%である場合、充放電特性が比較例に比べて大きく改善されることが確認できた。
【0033】
【表1】
【0034】
(出力特性測定)
実施例1~3の正極活物質の粒子及び比較例に係る半電池の粒子に対する出力特性を測定し、その結果を図4及び表1に示した。
【0035】
図4及び表1に示すように、コア及びシェル部全体におけるCoモル分率が9%である場合、出力特性が比較例に比べて大きく改善されることが確認できた。
【0036】
また、図4及び表1において本発明に係る正極活物質を含む二次電池の場合、高率放電特性が特に改善されることが確認できた。
【0037】
(電気化学インピーダンス(EIS;Electrochemical Impedance Spectroscopy)特性測定)
実施例1~3の正極活物質の粒子及び比較例の正極活物質の粒子に対するEIS抵抗特性を測定し、その結果を図5及び表1に示した。
【0038】
その結果、図5及び表1に示すように、コア及びシェル部全体におけるCoモル分率が9%である場合、EIS抵抗特性が比較例に比べて大きく改善されたことが確認できた。
【0039】
(寿命特性測定)
実施例1~3の正極活物質の粒子及び比較例の正極活物質の粒子に対する寿命特性を測定し、その結果を図6及び表1に示した。
【0040】
その結果、図6及び表1に示すように、コア及びシェル部全体におけるCoモル分率が12%である場合、寿命特性が比較例に比べて大きく改善されたことが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6