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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/08 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H02K9/08 Z
H02K9/08 A
H02K9/08 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020208689
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095390
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 慎次
(72)【発明者】
【氏名】加幡 安雄
(72)【発明者】
【氏名】久保 伸二
(72)【発明者】
【氏名】淵本 遼
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-175409(JP,A)
【文献】特開2010-154585(JP,A)
【文献】特開2013-220023(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110460198(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻内に設けられた固定子および回転子と、前記固定子の背部に設けられたガスクーラと、前記回転子の軸方向両端部に設けられた回転子ファンとを備え、機内を循環する冷却ガスが、前記回転子ファンから、中央ガイドと内部ガイドとの間の流路を通って、前記ガスクーラを通過し、固定子コイル端部を通風し、前記固定子と前記回転子との間のエアギャップに流入した後、固定子鉄心へと流入し、前記固定子鉄心の外径側から、外殻と前記中央ガイドとの間の流路を通って、前記回転子ファンに流入する回転電機おいて、
前記外殻と前記中央ガイドとの間の流路は、前記回転子ファンの上流側において一定の流路幅で前記回転子ファンへ向けて回転子軸方向に延在する一定の長さの流路区間を有し、さらに当該流路区間の上流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が徐々に縮小する流路区間を有し、
前記中央ガイドと前記内部ガイドとの間の流路は、前記回転子ファンの下流側において一定の流路幅で前記回転子ファンから回転子軸方向に延在する一定の長さの流路区間を有し、さらに当該流路区間の下流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が徐々に拡大する流路区間を有する、
回転電機。
【請求項2】
前記中央ガイドは、前記回転子ファンの上流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が縮小する前の流路部分を構成する当該中央ガイドの一部と、前記回転子ファンの下流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が拡大した後の流路部分を構成する当該中央ガイドの一部とが、当該回転電機を周方向に見たときに重なるように形成されている、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記中央ガイドは、前記回転子ファンの上流側から下流側へ回転子軸方向に延在する流路部分を構成する当該中央ガイドの一部が回転子軸方向に一定以上の長さを有するように形成されている、
請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記回転子ファンの上流側の流路または下流側の流路に、静翼が設置されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記回転子ファンの上流側の流路および下流側の流路のそれぞれに、静翼が設置されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス冷却タービン発電機等の密閉型の回転電機では、回転子の両側の回転子軸に取り付けたファンにより冷却ガスを固定子および回転子内に通風して、固定子コイルや固定子鉄心および回転子コイルを冷却する。
【0003】
冷却ガスの通風方式には、フォワードフロー通風方式とリバースフロー通風方式とがある。また、フォワードフロー通風方式には、ファン出口直後冷却タイプとガスクーラ出口直後冷却タイプとがある。
【0004】
図6は、従来のフォワードフロー通風方式・ファン出口直後冷却タイプによる回転電機の一部の断面構造を模式的に示す部分断面図である。
【0005】
図6には回転電機の1/4の部分についての断面構造が示されている。それ以外の部分については断面構造の記載を省略しているが、回転電機全体としての構造は上下左右対称である。図中の矢印は冷却ガスの流れを表している。
【0006】
このフォワードフロー通風方式の回転電機は、外殻7および内部ガイド9と、この内部ガイド9の内側に設けられた固定子2と、この固定子2の中心に設けられた回転子1とを備え、冷却ガスは、回転子1の両端に取り付けられた回転子ファン10によって、外殻7と内部ガイド9との間に形成された流路から内部ガイド9の内側へ送入される。
【0007】
冷却ガスは回転子1側、回転子1と固定子2の内径との隙間のエアギャップ3側、および固定子2の外径側の3方向に分岐する。回転子1の保持環4から回転子鉄心1a内へ入った冷却ガスは、回転子胴内の回転子コイルの軸方向または半径方向に設けられた冷却パスを通り回転子コイルを冷却し、エアギャップ3へと排出される。
【0008】
固定子2への冷却ガスの供給は、回転子ファン10から直接エアギャップ3に流れ込む通風経路と固定子コイル端部5を冷却した後に固定子鉄心2aの外径側に流れる通風経路から行う。固定子鉄心2aには半径方向に多数のラジアルダクトが配設されている。それらのダクト群は、冷却ガスが鉄心の外径側から内径側へ流れる給気セクション2bと冷却ガスが内径から外径側へ流れる排気セクション2cに区切られている。
【0009】
固定子鉄心2aの外径側に供給された冷却ガスは給気セクション2bに導かれ、固定子鉄心2aと固定子コイルを冷却した後、エアギャップ3に排出され、回転子1からの冷却ガスおよび回転子ファン10から直接エアギャップ3内に流れ込んだ冷却ガスと合流する。合流した冷却ガスは排気セクション2cを流れて、固定子鉄心2aと固定子コイルを冷却し、固定子2の外径側で合流する。このようにして固定子2および回転子1を冷却して高温となった冷却ガスは、水冷式のガスクーラ6を通過して冷却され、再び回転子ファン10へと循環する。
【0010】
前記フォワードフロー通風方式・ファン出口直後冷却タイプの冷却ガスはファンを通過する際にファンでの損失により温度が上昇する。図6に示した構成の場合、ガスクーラ6から出た低温の冷却ガスが回転子ファン10を通過し、損失により温度上昇した後に回転電機内の冷却を行うこととなり効率的ではない。
【0011】
この点を改善するために、フォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプの通風経路が採用されることがある。このタイプの通風方式の代表的な公知例としては、特許文献1が挙げられる。
【0012】
図7は、従来のフォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプによる回転電機の一部の断面構造を模式的に示す部分断面図である。
【0013】
図7に示すように、回転子1の両端に取り付けた回転子ファン10から排出された冷却ガスは、直接、回転子1および固定子2へ流入するのではなく、中央ガイド8と内部ガイド9とで形成された流路を通り、ガスクーラ6へと導かれる。ガスクーラ6から出た冷却ガスは、固定子コイル端部5へ流入し、以降、冷却ガスの流れは、前述したフォワードフロー通風方式・ファン出口直後冷却タイプと同様の流れで回転子1および固定子2を冷却し、再び回転子ファン10へと導かれる。
【0014】
このフォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプの場合、ガスクーラ6から出た低温の冷却ガスで直接回転電機各部を冷却するため、効率的な冷却を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特許第5325566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上記のような回転電機の固定子コイルおよび回転子コイルは、それらを構成する絶縁物の耐熱性能により厳しく温度上限が制限されており、回転電機の設計においては、これらの温度が規格値以下に保たれるように設計する必要がある。
【0017】
前記フォワードフロー通風方式・ファン出口直後冷却タイプの回転電機においては、冷却ガスがファンを通過する際にファンでの損失により温度が上昇する。図6に示した構成の場合、ガスクーラ6から出た低温の冷却ガスが回転子ファン10を通過し、損失により温度上昇した後に回転電機内の冷却を行うこととなり、効率的とはいえない。
【0018】
一方、前記フォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプの回転電機においては、図7に示される通り、冷却ガスがガスクーラ6を出た直後に固定子コイル端部5を通過し、回転電機各部に配流されるため、低温の冷却ガスを固定子2や回転子1に供給し冷却することができる。しかしながら、固定子2の外径側から出た冷却ガスは、外殻7、中央ガイド8、および内部ガイド9で形成された拡大縮小等を伴う複雑な流路を辿り、回転子ファン10を通り、ガスクーラ6へ導かれるため、回転子ファン10の抵抗となり、冷却に必要な風量が確保できない場合がある。一方で抵抗を減らすための流路の拡大による通風構造の大型化はコスト大につながる。また、特許文献1に示される回転電機では、冷却ガスの流路は、回転子ファン高さとほぼ同じ高さで構成されることから、コンパクトな通風経路となる利点があるが、流路幅が狭いことにより、回転子ファン10の冷却ガス流入口側および冷却ガス流出口側の通風構造に急激な曲がり部分等の流路が形成されているため、抵抗が多く、充分な風量を確保することができない。
【0019】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、フォワードフロー通風方式において、回転子ファンが配置されている流路を流れる冷却ガスの圧力損失を低減し、十分な風量の確保し、固定子コイル等を効率よく冷却することができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
実施形態の回転電機は、外殻内に設けられた固定子および回転子と、前記固定子の背部に設けられたガスクーラと、前記回転子の軸方向両端部に設けられた回転子ファンとを備え、機内を循環する冷却ガスが、前記回転子ファンから、中央ガイドと内部ガイドとの間の流路を通って、前記ガスクーラを通過し、固定子コイル端部を通風し、前記固定子と前記回転子との間のエアギャップに流入した後、固定子鉄心へと流入し、前記固定子鉄心の外径側から、外殻と前記中央ガイドとの間の流路を通って、前記回転子ファンに流入する回転電機おいて、前記外殻と前記中央ガイドとの間の流路は、前記回転子ファンの上流側において一定の流路幅で前記回転子ファンへ向けて回転子軸方向に延在する一定の長さの流路区間を有し、さらに当該流路区間の上流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が徐々に縮小する流路区間を有し、前記中央ガイドと前記内部ガイドとの間の流路は、前記回転子ファンの下流側において一定の流路幅で前記回転子ファンから回転子軸方向に延在する一定の長さの流路区間を有し、さらに当該流路区間の下流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が徐々に拡大する流路区間を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フォワードフロー通風方式において、回転子ファンが配置されている流路を流れる冷却ガスの圧力損失を低減し、十分な風量の確保し、固定子コイル等を効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係るフォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプによる回転電機の一部の断面構造を模式的に示す部分断面図。
図2A】R方向に回転する回転子ファン10のブレード(動翼)10aを回転子径方向に見たときの一部断面構造を模式的に示す図。
図2B】回転子ファン入口において形成される速度三角形の概念を模式的に示す図。
図2C】従来技術による速度三角形を説明するための図。
図2D】理想的な速度三角形を説明するための図。
図2E】風量およびファンの静圧上昇をそれぞれ流量係数および圧力係数で表現したファン単体の性能を表すグラフ。
図3】静圧回復係数の回復効果を本実施形態と従来技術とで対比させて示すグラフ。
図4】第2の実施形態に係るフォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプによる回転電機の一部の断面構造を模式的に示す部分断面図。
図5図4に示した構造の変形例を示す図。
図6】従来のフォワードフロー通風方式・ファン出口直後冷却タイプによる回転電機の一部の断面構造を模式的に示す部分断面図。
図7】従来のフォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプによる回転電機の一部の断面構造を模式的に示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
最初に、第1の実施形態について説明する。以下では、背景技術と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0025】
図1は、第1の実施形態に係るフォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプによる回転電機の一部の断面構造を模式的に示す部分断面図である。なお、背景技術で説明した図7と共通する要素には、同一の符号を付している。
【0026】
なお、以下の説明において、「流路幅」とは、図1のように回転電機を周方向に見たときの流路の幅を指す。流路幅が大きいほど流路面積は大きくなり、流路幅が小さいほど流路面積は小さくなるものとする。
【0027】
図1中の矢印は冷却ガス(以降、「流体」と称す場合がある。)の流れを表している。本実施形態に係るフォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプの回転電機には、回転子1と、回転子1に対してエアギャップ3を設けて取り囲み、回転子1と同軸に設置された固定子2とが設けられている。固定子2の端面部分には固定子コイル端部5が設置されている。固定子2の背部にはガスクーラ6が設けられている。回転子1の軸方向両端部には、回転子ファン10(以降、「ファン」と略称する場合がある。)が取り付けられている。
【0028】
更に、当該回転電機には、回転子ファン10の回転により循環する冷却ガスの流路を形成するために、外殻7と、外殻7側面に対向するようにその内側に設置された中央ガイド8と、中央ガイド8の側面に対向するようにその内側に設置された内部ガイド9とが設けられている。回転子ファン10の冷却ガス流入口(以下、「回転子ファン入口」)および冷却ガス流出口(以下、「回転子ファン出口」)の周辺における流路の幅は、ファン高さとほぼ同じとなっている。
【0029】
機内を循環する冷却ガスは、回転子ファン10から、中央ガイド8と内部ガイド9との間の流路を通って、ガスクーラ6を通過し、固定子コイル端部5を通風し、固定子2と回転子1との間のエアギャップ3に流入した後、固定子鉄心2aへと流入し、固定子鉄心2aの外径側から、外殻7と中央ガイド8との間の流路を通って、回転子ファン10に流入する。
【0030】
なお、中央ガイド8と内部ガイド9との間の流路は、固定子鉄心2aの外径側から当該回転電機の軸方向に延在する流路と重ならないように交差し、紙面奥側から当該回転電機の外径側へと向かうように形成されている。
【0031】
本実施形態においては、外殻7と中央ガイド8との間の流路は、回転子ファン10の上流側において一定の流路幅で回転子ファン10へ向けて回転子軸方向に延在する一定の長さの流路区間を有し、さらに当該流路区間の上流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が徐々に縮小する流路区間を有する。
【0032】
また、本実施形態においては、中央ガイド8と内部ガイド9との間の流路は、回転子ファン10の下流側において一定の流路幅で回転子ファン10から回転子軸方向に延在する一定の長さの流路区間を有し、さらに当該流路区間の下流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が徐々に拡大する流路区間を有する。
【0033】
本実施形態で使用される外殻7、中央ガイド8、および内部ガイド9は、図1図7との対比から分かるように従来のものとは構造が異なる。
【0034】
例えば、外殻7、中央ガイド8、および内部ガイド9は、図1中に示される流路区間Lにおいて、回転子ファン10の上流側から下流側へ回転子軸方向に一定の流路幅で延在する流路部分を構成している。この場合、中央ガイド8は、この流路部分を構成する当該中央ガイド8の一部が回転子軸方向に一定以上の長さを有するように形成されている。また、この流路部分を構成する外殻7の一部および内部ガイド9の一部も、回転子ファン10を介して回転子軸方向に一定以上の長さを有するように形成されている。
【0035】
また、本実施形態の中央ガイド8は、図1中のQに示されるように、回転子ファン10の上流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が縮小する前の流路部分を構成する当該中央ガイド8の一部と、回転子ファン10の下流側において冷却ガスが流れる方向へ向けて流路幅が拡大した後の流路部分を構成する当該中央ガイド8の一部とが、回転電機を周方向に見たときにQ点の位置で重なる(部分的に接合される)ように形成されている。
【0036】
このように形成された中央ガイド8の形状は、回転電機を周方向に見た場合、上部にある角が鋭角で底部の両脇にある2つの角が角丸形状の三角形、もしくはこれに近似した形を成している。
【0037】
このような外殻7、中央ガイド8、および内部ガイド9を含む構造は、回転電機の周方向に分散して複数箇所に(例えば回転子軸方向に見て上下左右の4箇所に)配置される。
【0038】
次に、第1の実施形態の作用・効果について説明する。
【0039】
本実施形態によれば、固定子2の外径側から排出される冷却ガスは、外殻7と中央ガイド8との間の流路に流入するが、図1中のP1近傍において冷却ガスが通る流路の断面積(流路幅)が大きくとられているため、急激な断面積縮小による流れの剥離を避け、圧力損失を低減することができる。さらにその後に冷却ガスが通る流路の断面積(流路幅)は徐々に小さくなるため、急激な断面積変化がなく、圧力損失を低減することができる。また、回転子ファン10から流出する冷却ガスは、中央ガイド8と内部ガイド9との間の流路に流入するが、図1中のP2近傍において冷却ガスが通る流路の断面積(流路幅)は徐々に大きくなるため、急激な断面積変化がなく、圧力損失を低減することができる。
【0040】
さらに本実施形態によれば、回転子ファン10の前後において冷却ガスが回転子軸方向に平行に流れる一定の長さ・一定の流路幅を有する流路区間Lが形成されているため、回転子ファン入口における予旋回成分が少なくなり、より大きい風量を得ることができる。以下では、予旋回成分と風量に関し、図2A図2Eを参照してより詳細に説明する。
【0041】
図2Aは、R方向に回転する回転子ファン10のブレード(動翼)10aを回転子径方向に見たときの一部断面構造を模式的に示す図である。図2Bは、回転子ファン入口において形成される速度三角形の概念を模式的に示す図である。
【0042】
図2A及び図2Bから分かるように、回転子ファン入口において形成される速度三角形は、流体の「絶対流入速度c」(=「軸流速度v」+「予旋回u」)、ファンの「回転周速U」およびファンに対する流体の「相対流入速度w」の各ベクトルで定義される。
【0043】
例えば、図2Cに示されるように、「予旋回u」が大きくなると、「絶対流入速度c」も大きくなる。このとき、「回転周速U」は一定であり変化しないため、「相対流入速度w」が変化し、「相対流入角度(ファンに対する流体の相対的な流入角度)」(ブレード10aの後縁端と流体の相対流入速度wの線とファンの回転方向の線とがなす角度)が大きくなり、この相対流入角度とブレード10aの取付角度(ブレード10aの後縁端と前縁端とを結んだ線とファンの回転方向の線とがなす角度)とのずれが増大することから、充分な揚力が得られず、ファンの効率が低下し、風量が減少してしまう。
【0044】
これに対し、本実施形態では、「予旋回u」が小さくなるため、図2Dに示されるような「軸流速度v=絶対流入速度c」の状態(予旋回u=0の状態)に近づけることができ、流体の相対流入角度とブレード10aの取付角度とのずれを、予め設計された理想的な値に近づけることができるため、理想に近い揚抗比を得ることができ、ファンの効率を向上させ、充分な風量を得ることができる。ここで、予旋回と風量との関係を、図2Eを参照して説明する。
【0045】
図2Eは、風量およびファンの静圧上昇をそれぞれ流量係数および圧力係数で表現したファン単体の性能を表すグラフである。このグラフでは、ファンが送る風量を「流量係数」を用いて表し、ファンが流体を送る圧力を「圧力係数」を用いて表している。また、予旋回を「予旋回係数」を用いて表し、予旋回係数の例として、0、A、B(但し、0<A<B)の3つを用いている。
【0046】
図2Eに示されるように、予旋回係数の値が小さいほど、ファンの性能を表す曲線が右上へ移動する。すなわち、予旋回uが小さいほど、ファンの性能を表す曲線は右上へ移動し、充分な風量が得られる。
【0047】
本実施形態では、回転子ファン入口における予旋回uを低減させるのに充分な長さの流路区間Lが形成されていることから、予旋回uが小さくなり、風量を大きくすることができる。これに加えて、流路区間Lの下流側では急激な断面積変化が生じないように冷却ガスが通る流路の断面積(流路幅)が徐々に大きくなるように形成されていることから、静圧回復係数の回復効果が向上し、圧力損失を低減することができ、大きい冷却ガス風量を得ることができる。以下では、静圧回復係数に関し、図3を参照してより詳細に説明する。
【0048】
図3は、静圧回復係数の回復効果を本実施形態と従来技術とで対比させて示すグラフである。このグラフでは、横軸に回転子ファン出口からの流路距離をとり、縦軸に静圧回復係数をとっている。
【0049】
静圧回復とは、流体運動エネルギーの変換(動圧から静圧への変換)を意味する。図3のグラフに示される縦軸の静圧回復係数は、分母を回転子ファン出口の動圧にとり、分子を(「出口位置の静圧」-「回転子ファン入口の静圧」)にとった係数である。ここで、出口位置とは、回転子ファン出口から流路出口まで(即ち、ガスクーラ6の入口まで)の流路の中の任意の位置を指し、横軸の「回転子ファン出口からの流路距離」に相当する。
【0050】
従来技術では、回転子ファン出口から流路出口まで(ガスクーラ6の入口まで)の流路において、急激な断面積拡大があるため、ある位置で剥離渦が発生すると、その粘性によって運動エネルギーが熱エネルギーに変換される。すなわち、急激な断面積変化によって圧力損失(運動エネルギー損失)が生じ、図3中の破線の曲線に示されるように静圧回復係数の回復効果が阻害される。これにより、十分な冷却ガス風量を確保できない場合がある。
【0051】
一方、本実施形態では、回転子ファン出口から流路出口まで(ガスクーラ6の入口まで)の流路において、急激な断面積拡大はないため、剥離渦の発生が抑えられ、圧力損失(運動エネルギー損失)が少なく、図3中の実線の曲線に示されるように静圧回復係数の回復効果が向上する。これにより、十分な冷却ガス風量を確保することができる。
【0052】
また、本実施形態では、中央ガイド8の形状が、上述したように上部にある角が鋭角で底部の両脇にある2つの角が角丸形状の三角形もしくはこれに近似した形を成しているため、十分な冷却ガス風量を確保しながらも、回転電機の軸方向スパンを短くすることができ、コンパクト化、低コスト化を実現することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0054】
図4は、第2の実施形態に係るフォワードフロー通風方式・ガスクーラ出口直後冷却タイプによる回転電機の一部の断面構造を模式的に示す部分断面図である。なお、第1の実施形態で示した図1と共通する要素には、同一の符号を付している。
【0055】
図4の構造が図1の構造と異なる点は、回転子ファン10の上流側の流路に前置静翼19が設置されている点にある。
【0056】
具体的には、回転子ファン10の上流側において、外殻7と中央ガイド8とに接するように複数枚の前置静翼19が周方向に配列するように設けられる。図4の例では前置静翼19が回転子軸方向に延在する流路区間Lに収まる位置に設置されているが、これよりも上流側の湾曲した流路区間に設置されていてもよい。
【0057】
なお、図4の例では前置静翼19が設けられているが、前置静翼19を設ける代わりに、後述する後置静翼20を設ける構成としてもよい。
【0058】
図5は、図4に示した構造の変形例を示す図である。
【0059】
図5の構造が図1の構造と異なる点は、回転子ファン10の上流側の流路に前置静翼19が設置されており、かつ、回転子ファン10の下流側の流路に後置静翼20が設置されている点にある。
【0060】
具体的には、前述のように複数枚の前置静翼19が設けられるほか、中央ガイド8と内部ガイド9とに接するように複数枚の後置静翼20が周方向に配列するように設けられる。図5の例では後置静翼20が回転子軸方向に延在する流路区間Lに収まる位置に設置されているが、これよりも下流側の湾曲した流路区間に設置されていてもよい。
【0061】
なお、図5の例では前置静翼19と後置静翼20の両方が設けられているが、後置静翼20を設けて前置静翼19を設けない構成としてもよい。
【0062】
次に、第2の実施形態の作用・効果について説明する。
【0063】
本実施形態によれば、前置静翼19を設置することにより、予旋回成分がより一層少なくなり、図2Bに示した予旋回uがより一層0に近づく。すなわち、「軸流速度v=絶対流入速度c」の状態(予旋回u=0の状態)により一層近づけることができるため、第1の実施形態の場合よりも大きい冷却ガス風量を得ることができる。また、後置静翼20を設置することにより、より一層剥離渦の発生を抑えることができるため、第1の実施形態の場合よりも静圧回復係数の回復効果が向上し、圧力損失をより低減することができ、より大きな冷却ガス風量を得ることができる。
【0064】
以上詳述したように、実施形態によれば、フォワードフロー通風方式において、回転子ファンが配置されている流路を流れる冷却ガスの圧力損失を低減し、十分な風量の確保し、固定子コイル等を効率よく冷却することができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…回転子、1a…回転子鉄心、2…固定子、2a…固定子鉄心、2b…給気セクション、2c…排気セクション、3…エアギャップ、4…保持環、5…固定子コイル端部、6…ガスクーラ、7…外殻、8…中央ガイド、9…内部ガイド、10…回転子ファン、10a…ブレード(動翼)、19…前置静翼、20…後置静翼。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7