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  • 特許-セルフタッピングネジ 図1
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  • 特許-セルフタッピングネジ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】セルフタッピングネジ
(51)【国際特許分類】
   F16B 25/04 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
F16B25/04 B
F16B25/04 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020570106
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019066533
(87)【国際公開番号】W WO2019243608
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】102018114983.2
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513321652
【氏名又は名称】エーヨット ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アーシェンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ベール
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ビルケルバッハ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ディックマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ドラッツシュミット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ハックラー
(72)【発明者】
【氏名】レーネ ゲルベール
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジェイ ヘルミグ
(72)【発明者】
【氏名】イリル セリミ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ヴェイツェル
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-107932(JP,A)
【文献】特開平10-103321(JP,A)
【文献】特開2007-100741(JP,A)
【文献】特開2007-285336(JP,A)
【文献】米国特許第03703843(US,A)
【文献】特表2004-509292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 25/04
F16B 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部(12)と、前記駆動部と逆の方向に位置する端部にネジ端部(18)を含むシャンク(14)とを備えるセルフタッピングネジ(10,30)であって、
前記シャンク(14)は、
パイロット穴に雌ねじを形成するための主ねじ(16,32)と、
前記パイロット穴に対する前記セルフタッピングネジのセンタリングを補助するためのタップフルートねじ(20)とを含み、
前記シャンク(14)は、前記駆動部からネジ端部に向かって、支え領域(T)、切削領域(F)およびタップフルート領域(AB)の順に区画され、
前記主ねじ(16,32)は、前記支え領域(T)、前記切削領域(F)および前記タップフルート領域(AB)に亘って設けられ、
前記タップフルートねじ(20)は、前記タップフルート領域(AB)に設けられ、
前記タップフルートねじ(20)は、少なくとも2つのタッピングねじターン(20a,20b)を備えており、
前記主ねじ(16,32)は、前記支え領域または切削領域において最大主ねじ外径(DAF)を有し、
前記ネジ端部(18)の外径(DE)は、前記最大主ねじ外径(DAF)の少なくとも20%であり、
前記少なくとも2つのタッピングねじターンの外径(DAA)は同じであり、かつ前記最大主ねじ外径(DAF)の90%以下であり、
タップフルート領域(AB)にある前記主ねじ(16,32)の外径(D)は、前記タッピングねじターン(20a,20b,20c)の外径(DAA)と同じか、それよりも小さく、
少なくとも3つのタッピングねじターン(20a,20b,20c)が設けられ、
前記タップフルート領域における主ねじの外径(D)は、前記タップフルートねじ(20)の外径(D AA )よりも小さいことを特徴とする、セルフタッピングネジ。
【請求項2】
前記タップフルート領域(AB)における主ねじ(16、32)の外径がタップフルートねじの外径(DAA)と同一であることを特徴とする、請求項1に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項3】
前記ネジ端部(18)の領域におけるタッピングねじターン(20a,20b,20c)は、芯から始まり、外径が一定に増加していることを特徴とする、請求項1または2に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項4】
前記少なくとも2つのタッピングねじターンは同一外径(DAA,D)であり、前記タップフルート領域(AB)の周りに均等に分布していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項5】
前記ネジ端部(18)は、前記最大主ねじ外径(DAF)の少なくとも20%の外径(D)を有していることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項6】
前記タップフルート領域(AB)におけるすべてのタッピングねじターンは、同じ断面の平面で始まることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項7】
前記タップフルート領域(AB)におけるすべてのタッピングねじターン(20a,20b,20c)は、同一のねじ設計であることを特徴とする、請求項6に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項8】
前記タップフルートねじ(20)は、前記ネジ端部(18)の直後から始まることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項9】
前記タップフルートねじ(20)は、前記ネジ端部(18)から離れた点から始まることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項10】
前記タップフルートねじ(20)および主ねじ(16)は、ロールねじであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項11】
前記タップフルートねじ(20)および前記タップフルート領域にある主ねじ(16)は、前記タップフルート領域以外の前記領域にある主ねじ(16)よりも鈍角のフランク角を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項12】
前記タップフルートねじ(20)は、前記タップフルート領域(AB)と切削領域(F)の境界で終了することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項13】
前記タップフルートねじ(20)は、最大2ターンを超えて延びていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項14】
前記タッピングねじターンの連続性は、前記シャンクの外周に設けられた経路上で途切れることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項15】
前記主ねじの最大主ねじ外径(DAF)は前記切削領域(F)にあり、前記支え領域(T)の主ねじ外径(DAT)は、前記最大主ねじ外径(DAF)より小さいことを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のセルフタッピングネジ。
【請求項16】
前記主ねじ断面輪郭の半径方向外側領域(E)において、前記最大主ねじ外径(DAF)の領域における主ねじの断面輪郭(38)は、支え領域(T)のねじの断面輪郭(36)よりも大きいことを特徴とする、請求項15に記載のセルフタッピングネジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載されているようなセルフタッピングネジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばEP0948719B1から知られているように、特にプラスチック材料にねじ込まれるように適合されたネジは、駆動部とねじ付きシャンクとを含む。ネジは主ねじをさらに含み、前記主ねじは最大主ねじ外径を有する。前記主ねじは荷重支え領域およびねじ切削領域を有し、前記ねじ切削領域は、雌ねじが完成するねじターンの箇所で終了する。
【0003】
ネジのシャンク上で、駆動部から遠ざかる方に向く端部で、ネジは最大主ねじ外径の少なくとも20%の直径のネジ終端を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】EP0948719B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改善された挿入特性を有するネジを提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴をその前提部分と組み合わせることによって達成される。
【0007】
従属請求項は、本発明の有利な実施形態を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ネジ終端の領域に、タップフルートを含むシャンクを提供する。タップフルートは、少なくとも2つのタッピングねじターンを備える。これらのタッピングねじターンの外径は、主ねじの最大外径の90%以下である。従って、タップフルート領域がネジ上に形成され、タッピングねじターンは、同じ直径の輪郭を有する。さらに、タップフルート領域における主ねじの直径は、タッピングねじターンの直径と同じか、それよりも小さい。
【0009】
この利点は、タッピングねじターンが、部品、特にプラスチック材料に作られたパイロット穴にネジを最初に迅速かつ直線的に挿入し得るようにするものであり、その結果、ねじ切削領域に続く荷重支え領域の可能な限り正確な位置合わせが得られることである。これにより、荷重支え領域はねじ切削領域によって予め切削された雌ねじに沿って進行し、従ってねじ挿入プロセスの間、摩擦を減ずることができる。
【0010】
本発明の有利な実施形態では、タップフルート領域の主ねじがタップフルート自体と同じ直径を有する。その結果、この領域では、主ねじがタッピングねじターンとして機能することができ、ネジが挿入されるパイロット穴の側壁との均一な係合を保証する。したがって、2つのタッピングねじターンを有する主ねじは、特に、ネジを最適にセンタリングし、整列させることを確実にするために使用され得る。
【0011】
あるいは、タップフルート領域の主ねじの直径がタップフルート自体の直径よりも小さい状態で、3つのタッピングねじターンを設けることもできる。この実施形態では、タッピングねじターンのみが、ネジをセンタリングするのに使用され、その後でのみ、主ねじが雌ねじ切削する。
【0012】
好ましくは、タッピングねじターンは、ネジ端部の領域の芯から始まり、芯の始まりから直径を連続的に拡張する。これにより、タッピング中にネジを均一かつ高速にセンタリングできる。
【0013】
特に、同じ外径を有するねじターンは、タップフルート領域の周りに均等に分布している。これはまた、ねじのセンタリングを容易にする。
【0014】
さらに、ねじ端部の直径は、主ねじ外径の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%とすることができる。この結果、鈍いネジ端部が形成されるので、ほんの短い挿入距離で、ネジは既にパイロット穴によって案内されることになる。
【0015】
タップフルート領域内の全てのねじターンが、同じ断面平面内にそれらの始まりを有することが特に好ましい。これにより、タップフルート領域全体にわたって、タップフルート領域のねじターンの均等な接触を確実にする。
【0016】
別の有利な実施形態によれば、タップフルート領域内のすべてのねじは、同じねじ設計、特に同じねじ輪郭を有することができる。
【0017】
好ましくは、タップフルートがネジの端部から直接始まる。これは、迅速なセンタリング機能を提供する。
【0018】
あるいは、タップフルートがネジの端部から離れた位置から始まることができる。このようにして、ネジの端部に向かう領域は、位置決め機能を果たすことができる。
【0019】
タップフルートねじおよび主ねじは、ロールねじであり得、したがって、それらの製造を低コストで可能にする。
【0020】
タップフルートと主ねじは、タップフルート領域の中で、タップフルート領域の外側の主ねじのフランク角よりも鈍角のフランク角を有するようにしてもよい。これにより、タップフルート領域のセンタリング機能と主ねじの切削機能を特に考慮することができる。
【0021】
タップフルートがその最大外径に達した後、タップフルートを急に無くすことができる。これにより、特にねじが狭いパイロット穴に挿入された場合に、摩擦が減少する。
【0022】
さらに、本発明は、タップフルートが最大2ターンにわたって延在することを提供することができる。これにより、十分な案内を確保する一方で、効果的なネジ接続を確保する。
【0023】
本発明によれば、ねじの外径の補間されたコースが同じままである状態で、ねじターンの中断があってもよい。
【0024】
本発明によれば、最大主ねじ外径が切削領域内に存在し、さらにその外径も支え領域内でより小さくなるという点で、挿入トルクをさらに小さくすることができる。その結果、切削領域に追従する支え領域のターンが、わずかに大きく切削された雌ねじにねじ込まれる。こうして、ねじターンによって受ける摩擦が減少する。これは、ねじがプラスチック材料にねじ込まれるときに特に好ましい効果を有する。
【0025】
好ましくは、最大主ねじ外径の領域におけるねじ断面輪郭が、この領域における支え領域におけるねじ断面輪郭よりも、少なくともねじ断面輪郭の半径方向外側の領域において大きい。半径方向外側領域は、最大主ねじ直径の約85%である。
【0026】
本発明のさらなる利点、特徴、および可能な用途は、図面に示された実施形態を参照する以下の説明から集めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明によるネジの側面図である。
図2図1のネジシャンクのタップフルート領域における線B-Bに沿った断面図である。
図3】3つのタッピングねじターンを有する本発明に係るネジの側面図である。
図4a図3のネジシャンクのタップフルート領域における線A-Aに沿った断面図である。
図4b図3のネジシャンクのタップフルート領域における線B-Bに沿った断面図である。
図5】切削領域におけるねじの輪郭と主ねじの支え領域におけるねじの輪郭との比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、ネジシャンク14とネジドライブ12とを備えたセルフタッピングネジ10を示している。ネジシャンク14は主ねじ16を有し、この主ねじは切削領域F及び支え領域Tを有する。切削領域Fは、主ねじ16上の箇所で終端となり、その箇所で雌ねじが完了する。切削領域の後に支え領域Tが続く。これは、ネジ18の自由端から始まる主ねじ16の約2ターン後に当てはまる。
【0029】
この例では、切削領域Fと支え領域Tとは、同じねじターンの部分であるので、支え領域Tと切削領域Fとの間には実際の移行がない。ドライブ(駆動部)と逆に位置するネジの端部、すなわち「先端」には、本発明によるタップフルート領域ABが設けられている。この実施形態では、タップフルート領域ABが、ネジ端部18で直接的にねじ芯から延び、かつ駆動部12に向かってタップフルート領域ABの端部にまでそれらの直径DAAを連続的に増加させている2つのねじターン20a、20bによって形成される。タッピングねじターン20a、20bは、タップフルート領域ABの終端において、それらの最大直径DAAを有する。この直径は、主ねじ18の直径DAFの90%未満である。その結果、タップフルート20の保持特性が損なわれることはなく、ネジ10の最初の中心合わせされた真っ直ぐな挿入が依然として可能である。タップフルート領域ABでは、主ねじ16が、タッピングねじターン20a、20bと同様に延びている。
【0030】
図2に示すのは、タップフルート領域ABのほぼ中央を通る線B-Bに沿った断面図である。この断面図は、タッピングねじターン20a、20bと主ねじ16とを示している。この箇所では、すべてのねじは、同じ直径DAAを有している。直径DAAは、ネジの端部から駆動部に向かって徐々に増大するが、この直径はタップフルート領域AB内の各断面において同じである。
【0031】
図3は本発明によるネジの別の実施形態の側面図であり、このネジには、3つのタッピングねじ20a、20b、20cが設けられている。タップフルート領域ABにおける主ねじ32は、タッピングねじ20a、20b、20cよりも小さい直径を有している。
【0032】
主ねじ32は、タッピングねじターン20a、20b、20c間のタップフルート領域ABで始まり、タップフルート領域ABの終端でタッピングねじターン20a、20b、20cの直径と同じになるようにその直径を増加する。タップフルート領域ABの終端から、タップフルート20が無くなり、主ねじ32がシャンクに沿ってさらに延びる。ねじターンの直径は、タップフルート領域ABの終端のA-A線に沿った断面図である図4aに示され、及びシャンクのB-B線に沿った断面図である図4bに示されている。
【0033】
さらに、タップフルート領域ABに続いて、主ねじターン32は、ヘッドの方向において、切削領域Fと、支え領域Tとを有する。
【0034】
最大主ねじ直径DAFは切削領域Fにあり、その後、切削領域Fの後に雌ねじが形成される。駆動方向において切削領域に続く支え領域Tは、最大主ねじ外径DAFよりも小さい外径DATを有する。このようにして、ねじ挿入工程中に,切削領域Fの後に続く支え領域Tが受ける摩擦を減少させる。これにより、ねじ挿入トルクが低くなる。
【0035】
本発明は、以下の特徴を備えるネジに関するものであることに注目すべきである。すなわち、ネジは、図1に示す設計の切削領域Fと、図3に示す設計の主ねじ32とを有し、切削領域Fに最大ねじ外径DAFを有し、支え領域により小さな外径DATを有する。
【0036】
図4aは、タップフルート領域ABの端部のネジシャンクを通る線A-Aに沿った断面図である。すべてのねじは、この位置で同じ外径DAAを持つ。
【0037】
図4bは、タップフルート領域ABのほぼ中央を通る線B-Bに沿った断面図である。この図は、主ねじ32がタッピングねじターン20a、20b、20cによって規定された外径DAA内にあることを明確に示す。
【0038】
図5は、さらに、切削領域のねじ輪郭と、主ねじの支え領域のねじ輪郭との比較図である。図5は、主ねじの最大外径DAFの領域におけるねじの断面輪郭38が、ねじ断面輪郭の少なくともその半径方向外側領域Eにおいて、この領域Eにおける支え領域Tにおけるねじの断面輪郭36よりも大きいことを示している。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5