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特許7414741X線に露出される被検体のデジタル画像の少なくとも一つの阻害領域を処理するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】X線に露出される被検体のデジタル画像の少なくとも一つの阻害領域を処理するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240109BHJP
【FI】
A61B6/00 350M
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020571537
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 FR2019051487
(87)【国際公開番号】W WO2019243731
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】1855390
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520496280
【氏名又は名称】エラ-ミ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】タルディ,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】シェフェール,ブルノ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0133033(US,A1)
【文献】特開2010-187827(JP,A)
【文献】Wenda He et al.,Breast image pre-processing for mammographic tissue segmentation,Computers in Biology and Medicine,2015年12月01日,Vol. 67,P. 61-73
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
阻害領域(RP1,RP2)と呼ばれる被検体(3)のデジタル画像(IMG1)の少なくとも一つの部分を処理するための、コンピュータシステム(1)を使用して具現される方法であって、
前記被検体(3)をX線に露出することによりX線機器(2)から前記画像が生成され、
前記画像が、データメモリ(103)に記憶されて、
前記被検体(3)の対応点に衝突した光子の数に対応する初期強度Iと呼ばれる数的強度値と各々が関連する点(P)と、
少なくとも一つのメタデータ(M)項目と、
を包含し、
前記少なくとも一つのメタデータ(M)項目が、以下のメタデータ項目すなわち、
記被検体の一つ以上の物理的パラメータと、
記画像が獲得される際の前記X線のパワー又はエネルギーに関係する一つ以上のパラメータと、
のうち少なくとも一つを包含することを特徴とする方法であり、
前記画像の前記点(P)の初期強度値Iと前記少なくとも一つのメタデータ(M)項目とに基づく、阻害領域(RP1,RP2)に対応する前記画像内の少なくとも一つの点群の特定と、
前記少なくとも一つの阻害領域(RP1,RP2)の前記点の少なくとも幾つかの前記初期強度値Iを新規強度値と置換するステップを包含する新規画像(IMG2)の作成と、
を包含し、
テクスチャ加工要素(ET121,ET122,ET123;ET131,ET132,ET133)と呼ばれてデータメモリに記憶される点群の集合を提供することを包含する方法であって、
各テクスチャ加工要素が、複数の点と前記点と関連する強度値とを包含する、
ことと、
前記少なくとも一つの阻害領域の前記点の少なくとも幾つかの前記初期強度値Iを新規強度値と置換する前記ステップが、
複数のテクスチャ加工要素の中からテクスチャ加工要素を選択するか、選択された一つ以上のテクスチャ加工要素から新規テクスチャ加工要素を作成することと、
前記少なくとも一つの阻害領域の前記点の少なくとも幾つかの前記初期強度値(I)を、選択された前記テクスチャ加工要素あるいは作成された前記新規テクスチャ加工要素の前記点の少なくとも幾つかの前記強度値と置換することと、
を包含することと、
選択された前記テクスチャ加工要素又は作成された前記新規テクスチャ加工要素が、置換される前記阻害領域の組織タイプとは異なる組織タイプに対応するメタデータ項目を有すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記画像の前記点(P)の前記初期強度値Iと前記少なくとも一つのメタデータ(M)項目とに基づいて関心領域(RI1)に対応する前記画像内の少なくとも一つの点群を特定することも包含する方法であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像(IMG1)の少なくとも一つの点群を阻害領域(RP1)として特定する前記ステップが、データベース(BDD)に記憶された他の参照点群(PR1,PR2,PR3)と前記画像内の前記点を比較することを包含し、各参照点群が、参照メタデータ項目と呼ばれる少なくとも一つのメタデータ項目(MrefPR)と関連していることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各テクスチャ加工要素が少なくとも一つのメタデータ項目を包含して、前記少なくとも一つのメタデータ項目に基づいて前記テクスチャ加工要素が選択されるか前記新規テクスチャ加工要素が作成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
特定された前記阻害領域(RP1,RP2)について、
特定された前記阻害領域(RP1,RP2)の少なくとも一部分の前記点の前記強度値から少なくとも一つの数学的モーメントを計算することと、
複数の既定テクスチャ加工要素(ET121,ET122,ET123;ET131,ET132,ET133)の中からテクスチャ加工要素(ET121;ET133)と呼ばれる点群を選択するか、選択された一つ以上のテクスチャ加工要素から新規テクスチャ加工要素(ET143)を作成することと、
を包含して、
前記阻害領域(RP1,RP2)の前記少なくとも一部分の前記点の、計算された前記少なくとも一つの数学的モーメントに基づいて、前記テクスチャ加工要素が選択又は作成され、選択された前記テクスチャ加工要素(ET121;ET133)又は作成された前記新規テクスチャ加工要素(ET143)の点が、特定された前記阻害領域の前記少なくとも一部分の前記点とは異なる所与の強度値の集合を有することと、
選択された前記テクスチャ加工要素又は作成された前記新規テクスチャ加工要素の前記点の少なくとも幾つかが、特定された前記阻害領域の前記少なくとも一つの部分の前記点に置き換わることと、
を特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記画像と関連する前記少なくとも一つのメタデータ項目が、前記被検体の別の画像の少なくとも一部分との相関関係により規定されるメタデータ項目を包含することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
マスキング操作とも呼ばれる置換ステップが、セル(C1,C2,C3,C4,C5)と呼ばれる隣接点のブロックへの前記被検体の前記画像(400)の分割を包含することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
セル(C1)の前記点の各々が関心領域(RI1)に属している時に、作成された前記新規画像(IMG2)において前記点が無変化であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
セル(C2,C3)の前記点が阻害領域(RP1,RP2)に属しており隣接セルの前記点も前記阻害領域に属している時に、複数の既定テクスチャ加工要素(ET121,ET122,ET123;ET131,ET132,ET133)の中から選択されるテクスチャ加工要素(ET121;ET133)の前記点と前記セル(C2)の前記点が置換されることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記テクスチャ加工要素(ET121;ET133)の選択が前記セルの前記点の前記強度値に依存することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
セル(C4)の前記点が前記阻害領域(RP1)に属しており、少なくとも一つの隣接セル(CV4)の前記点が前記阻害領域以外のカテゴリに属している時に、一つ以上の既定テクスチャ加工要素(ET141,ET142)から、また前記少なくとも一つの隣接セル(CV4)の前記点に基づいて、新規テクスチャ加工要素(ET143)が作成され、前記セル(C4)の前記点が前記新規テクスチャ加工要素(ET143)の前記点と置換されることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
セル(C5)が前記関心領域(RI1)と前記阻害領域(RP1,RP2)の両方の点を内含する時に、前記セル(C5)がサブセル(C51)に分割され、前記サブセル自体が、各サブセルが前記関心領域(RI1)の点のみ又は前記阻害領域(RP1,RP2)の点のみを内含するまでサブセルに分割されうる、請求項2または請求項8を引用する請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記被検体の画像(400)と呼ばれる前記被検体(3)に対応する前記画像の前記部分(400)が、獲得された前記画像の背景(500)から隔離される獲得画像(IMG)の処理ステップを包含する方法であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記被検体(3)の輪郭エリアに対応して輪郭領域(RC)と呼ばれる領域を判断するステップを包含する方法であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記被検体に対応する画像部分(400)において、少なくとも一つの幾何学的構造(SGI1,SGP1)を特定することを包含する方法であることと、
前記幾何学的構造と少なくとも一つの関心領域との間に相関関係が確立される時に関心カテゴリに対応する第1値と、前記幾何学的構造と前記関心領域との間に相関関係が見られない時に非関心カテゴリに対応する第2値とを有する分類パラメータを、特定された前記少なくとも一つの幾何学的構造(SGI1,SGP1)に割り当てることを包含する特徴であることと、
を特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
所与の圧縮力の作用を受けて前記被検体(3)が圧縮されうる際に、前記少なくとも一つのメタデータ(M)項目が、圧縮状態での前記被検体の厚さと前記被検体に印加される前記圧縮力とを包含することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータシステム(1)のプロセッサ(102)によりプログラムが実行される時に請求項1から16のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を包含する非一時的コンピュータプログラム製品。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を内含するメモリ(101)と、前記プログラムコード命令を実行するためのプロセッサ(102)と、画像データ(D)とメタデータ(M)とを記憶するためのメモリ(103)と、を包含するコンピュータシステム(1)。
【請求項19】
請求項18に記載のコンピュータシステム(1)と、X線機器(2)とを包含する設備であって、前記機器(2)が、X線ビームを放出できる放出装置(210)と、前記放出装置(210)から放出されたX線を被検体(3)の通過後に受容できる受容装置(220)とを包含し、前記被検体(3)を通過した後に前記受容装置(220)により受容される前記X線に対応する画像データ(D)と、を前記コンピュータシステム(1)へ送信するように前記X線機器(2)が構成される、設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、画像を処理するためのコンピュータシステムと設備と方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
医療用X線撮影の分野、特にマンモグラフィの分野では、X線撮影される被検体の何らかの異常を検出するために放出線医師は取得されたX線対応画像を確実に解釈できなければならない。
【0003】
マンモグラムに対応する画像は、病状に対応する異常を呈して関心領域と呼ばれる一つ以上の領域を包含しうる。
【0004】
これらの領域は放出線医師の注意を留めておかなければならないが、一方で非関心領域又は阻害領域と呼ばれる他の領域は、放出線医師にとって特に関心のないX線撮影被検体の部分、例えば健常な線形構造(脈管、結合組織)に対応する。
【0005】
しかしながらこれらの領域の存在は、放出線医師による画像の解析を妨げ、特に関心領域での異常の特定を妨害しうる。
【0006】
阻害領域の様々な点への同一の強度値の印加により阻害領域を修正すること、又は関心領域の強度を高めることは周知であるが、阻害領域のこのような処理は放出線医師の解析を妨害して関心領域の解釈を妨げうるので、得られる結果はたいてい不十分である。
【0007】
非特許文献1と特許文献1とは特に、マンモグラフィにより獲得される画像の修正又は再構築を提案する画像処理方法を開示している。しかしながら、これらの修正又は再構築方法も放出線医師の解析の解釈を妨害しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2016/133033号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】「マンモグラフィ組織細分化のための乳房画像前処理」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上に挙げた問題の全て又は幾つかを軽減するための新規のコンピュータシステムと新規の設備と新規の方法とを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため、本発明は、被検体のデジタル画像の阻害領域と呼ばれる少なくとも一つの部分を処理するための、コンピュータシステムを使用して具現される方法に関係しており、
被検体をX線に露出することによりX線機器から画像が生成され、
画像がデータメモリに記憶されて、
被検体の対応の点と衝突した光子の数に対応する、初期強度Iと呼ばれる数的強度値が各々と関連する点と、
少なくとも一つのメタデータ項目と、
を包含する方法であって、
少なくとも一つのメタデータ項目が、以下のメタデータ項目すなわち、
被検体の厚さなど、被検体の一つ以上の物理的パラメータと、
X線を生成するのに使用される電圧及び電流値など、画像が獲得される際のX線のパワー又はエネルギーに関係する一つ以上のパラメータと、
のうち少なくとも一つを包含する、
ことを特徴とする方法であり、
この方法は、
画像内の点の初期強度値Iと少なくとも一つのメタデータ項目とに基づいて阻害領域に対応する画像の少なくとも一つの点群の特定と、
少なくとも一つの阻害領域の少なくとも幾つかの点の初期強度値Iを新規強度値と置換するステップを包含する新規画像の作成と、
を包含する。
【0012】
一つの特定態様によれば、被検体は人間又は動物の体の器官である。
【0013】
画像の阻害領域の線形構造など一つ以上の部分が、これが乳房画像である時には特に、脂肪エリアなど視覚的誘引性の低いエリアに対応する一つ以上の画像部分と置換されるように設定されうる。
【0014】
この方法は、技術的に許容可能な何らかの組み合わせから得られる以下の特徴のうち一つ以上も包含しうる。
【0015】
本発明の一つの有利な特徴によれば、この方法は、画像内の点の初期強度値Iと少なくとも一つのメタデータ項目とに基づいて、関心領域に対応する画像の少なくとも一つの点群を特定することも包含する。
【0016】
本発明の一つの有利な特徴によれば、画像内の少なくとも一つの点群を阻害領域として特定するステップは、データベースに記憶された他の参照点群と画像内のこれらの点を比較することを包含し、各参照点群は、参照メタデータ項目と呼ばれる少なくとも一つのメタデータ項目と関連している。
【0017】
本発明の一つの有利な特徴によれば、この方法は、
データメモリに記憶されたテクスチャ加工要素の集合を提供すること、
を包含して、
各テクスチャ加工要素が、複数の点とこの点と関連する強度値とを包含し、
少なくとも一つの阻害領域の少なくとも幾つかの点の初期強度値Iを新規強度値と置換するステップは、
複数のテクスチャ加工要素の中からテクスチャ加工要素を選択するか、選択された一つ以上のテクスチャ加工要素から新規テクスチャ加工要素を作成することと、
少なくとも一つの阻害領域の少なくとも幾つかの点の初期強度値Iを、選択されたテクスチャ加工要素又は作成された新規テクスチャ加工要素の少なくとも幾つかの点の強度値と置換することと、
を包含する。
【0018】
一つの特定態様によれば、各テクスチャ加工要素は少なくとも一つのメタデータ項目を包含し、このメタデータ項目に基づいて一つ以上のテクスチャ加工要素が選択される。
【0019】
一つの特定態様によれば、この方法は、阻害領域の部分を形成するものとして特定された画像の点群をマスキングするために、阻害領域の特徴と最も近似整合する(メタデータ、例えばサイズデータ、値データ、又は強度モーメントデータの形を取りうる)特徴を持つテクスチャ加工要素を選択又は作成することを包含し、阻害領域の組織タイプに対応する特徴が除外されることは自明である。
【0020】
組織タイプは例えば脈管でありうる。ゆえに健常な脈管タイプの阻害領域は、組織タイプが脂肪であって、元の阻害領域の特徴、隣接領域の特徴、及び/又は元の画像全体の特徴に近似する組織タイプ以外の特徴を持つテクスチャ加工要素と置換されうる。
【0021】
幾つかの実施形態によれば、選択されたテクスチャ加工要素又は作成された新規テクスチャ加工要素は、置換される阻害領域の組織タイプ、例えば血管とは異なる組織タイプ、例えば脂肪に対応するメタデータ項目を有する。
【0022】
本発明の一つの有利な特徴によれば、画像と関連する少なくとも一つのメタデータ項目は、被検体の別の画像の少なくとも一つの部分との相関関係により規定されるメタデータ項目を包含する。
【0023】
相関関係に使用される他の画像は被検体の画像でありうるが、別の角度から又は別の時点で獲得されてもよい。異なる時点で取得された画像を比較することにより相関関係が実施される時には特に、少なくとも一つのメタデータ項目は例えば、部位、あるいは領域のタイプ、つまり阻害領域か関心領域かでありうる。
【0024】
本発明の一つの有利な特徴によれば、特定された阻害領域について、この方法は、
特定された阻害領域の少なくとも一部分における点の平均強度値Iavg又は強度分散などの強度値から少なくとも一つの数学的モーメントを計算することと、
複数の既定テクスチャ加工要素の中から、テクスチャ加工要素と呼ばれる点群を選択するか、選択された複数のテクスチャ加工要素から新規テクスチャ加工要素を作成することと、
を包含し、
阻害領域の少なくとも一つの部分における点の平均強度値Iavg又は強度分散など、計算された少なくとも一つの数学的モーメントに基づいて、テクスチャ加工要素が選択又は作成され、選択されたテクスチャ加工要素又は作成されたテクスチャ加工要素の点は、特定された阻害領域の少なくとも一つの部分における点の強度値とは異なる強度値の集合を有し、
選択されたテクスチャ加工要素又は作成された新規テクスチャ加工要素の少なくとも幾つかの点が、特定された阻害領域の少なくとも一つの部分における点と置き換わる。
【0025】
一つの特定態様によれば、画像のセル内の点など画像のエリア(点群)の初期強度により、参照画像サンプルとの比較を通して、少なくとも一つのメタデータ項目がこのエリア内の点に割り当てられ、このエリアの物質のタイプ、例えば組織タイプの分類を可能にする。
【0026】
次に、元の画像エリア内の点をテクスチャ加工要素の点と置換するために、このメタデータ項目がおそらくは他のデータとともに、既定テクスチャ加工要素の集合の中から適切な既定テクスチャ加工要素を選択するか、選択された複数の既定テクスチャ加工要素から新規テクスチャ加工要素を作成するのに使用される。
【0027】
ゆえに画像エリアと関連するメタデータ項目は、画像エリアの生理学的タイプを特定することと、所与のベースに前もって記憶された複数のテクスチャ加工要素の中から少なくとも一つの適切なテクスチャ加工要素を選択することを可能にする。下に説明するように、元の画像のこのエリアからの他のメタデータがこの選択を行うのに使用されうる。
【0028】
画像のこのエリアの置換を目的として画像のこのエリアに関してこのテクスチャ加工要素の受容性又は欠如の解析を可能にするため、記憶された各テクスチャ加工要素自体もメタデータを備えるように設定されうる。
【0029】
このテクスチャ加工要素を形成する(そして初期画像のこのエリア内の点とは異なる既定強度値の集合を有する)点が、初期画像のこのエリア内の点に置き換わるのに使用される。
【0030】
置換は、逆の操作を通して可逆的でありうる先行技術のケースのように画像に適用される数学的強度処理操作ではなく、むしろ、画像のこのエリア内の点を、元の画像の外側にある(又は異質である)少なくとも一つのテクスチャ加工要素からの他の点で、不可逆的に代用することを意味する。
【0031】
一つの特定態様によれば、元の点と置換された処理後の画像内の点の強度から元の点の強度値を復元することを可能にする数学的逆変換は行われない。それゆえ当該のエリアと置換するためのテクスチャ加工要素の使用は、画像とは別に入手可能であって複数のテクスチャ加工要素の中から選択され、おそらくは修正/調節されたテクスチャ加工要素、あるいは選択されたテクスチャ加工要素から作成されて画像の当該エリアに置き換わる新規テクスチャ加工要素を必要とするので、エリアの強度についての単純な処理操作と区別される。
【0032】
ゆえに、例として、そして特に乳房画像のケースにおいて、画像エリア内の点は、健常な脈管の部分であるとの特定をおそらくは他のデータとの組み合わせで可能にする初期強度値を有しうる。この特定は、例えば形状及び/又は強度偏差の特徴を用いて組織タイプについての結論を下す統計的学習アルゴリズムを使用して行われうる。そして健常な脈管に対応するメタデータ項目は、画像のこのエリア内の点と関連しうる。
【0033】
例を挙げると、テクスチャ加工要素は、このテクスチャ加工要素に対応する物質の被検体での部位をメタデータとして包含しうる。ゆえに、テクスチャ加工要素が脂肪組織に対応する時には、それが皮下脂肪であることを追加のメタデータ項目が明示しうる。
【0034】
一つの特定態様によれば、関心領域はテクスチャ加工要素と置換されない。
【0035】
そしてエリア内の点のメタデータ項目は、おそらくは他のデータとの組み合わせで、元の画像のエリア内の点に置き換わるのに使用される点を含む適切なテクスチャ加工要素を選択することを可能にする。
【0036】
ゆえにテクスチャ加工要素の特徴が脂肪に対応するという事実を表すメタデータ項目と関連するテクスチャ加工要素が、画像のこのエリアに放出線医師の目を引き付けないのと同時に乳房の視覚的外観を放出線医師の目にとって現実的な見慣れたものにするように複数のテクスチャ加工要素の中から選択されて、健常な脈管部分に対応する元の画像のエリアに置き換わる。
【0037】
画像では、健常な脈管は、放出線医師にとって関心のない領域であって画像に存在し続けたならば医師の解析を阻害するリスクがあることが、明確に理解されるだろう。例えば他のエリアの強度値を上昇させることにより画像を単純に修正すると、放出線医師の妨げとなるリスクがやはり生じるだろう。同様に、強度値を単純に正規化しても充分ではないだろう。脈管のこのエリアを、脈管のこのエリアの特徴に基づいて選択されたテクスチャ加工要素と置換すると、乳房の自然な画像を維持するのと同時に放出線医師の目がこのエリアに引き付けられるのを防止することが可能になる。こうして放出線医師は、関心エリアとして特定された他のエリアに自然に集中することが可能になる。
【0038】
置換エリアと隣接エリアとの間の連続性つまり滑らかな視覚的移行を確保するために隣接の点群の特徴又はメタデータ(強度モーメント、分類パラメータなど)に基づいて、元の点を置換するように選択されたテクスチャ加工要素の点の強度がさらに修正されるように設定されうる。
【0039】
言い換えると、阻害領域の少なくとも一つの部分に対応するエリアについて、テクスチャ加工要素が選択されるか、選択されたテクスチャ加工要素から作成され、このテクスチャ加工要素の特徴は、特にその強度において、こうして修正された画像の被検体(例えば乳房)の現実的な外観の保持と矛盾しないテクスチャ加工要素の点とこのエリア内の点を置換するのと同時に、他の現実的な関心エリアに放出線医師が集中できるようにこのエリアに医師の目を引き付けるのを抑制することを可能にする。
【0040】
本発明の一つの有利な特徴によれば、マスキング操作とも呼ばれるこの置換ステップは、被検体の画像を、セルと呼ばれる隣接点のブロックに分割することを包含する。
【0041】
一つの特定態様によれば、セル内の各点が関心領域に属する時には、作成される新規画像でこの点は無変化である。
【0042】
本発明の一つの有利な特徴によれば、セル内の点が阻害領域に属しており、隣接セルの点も阻害領域に属している時には、複数の既定テクスチャ加工要素の中から選択されたテクスチャ加工要素の点とセル内の点が置換される。
【0043】
一つの特定実施形態によれば、複数の既定テクスチャ加工要素の中からのテクスチャ加工要素の選択は、セル内の点の強度値に依存する。
【0044】
本発明の一つの有利な特徴によれば、セル内の点が阻害領域に属しており、少なくとも一つの隣接セルの点が阻害領域以外のカテゴリに、例えば関心領域又は別の阻害領域に属する時には、少なくとも一つ、好ましくは複数の既定テクスチャ加工要素から、そして少なくとも一つの隣接セル内の点に基づいて新規テクスチャ加工要素が作成され、セル内の点が新規テクスチャ加工要素の点と置換される。
【0045】
本発明の一つの有利な特徴によれば、関心領域及び阻害領域の両方の点をセルが内含する時には、セルがサブセルに分割され、サブセル自体は、関心領域の点のみ又は阻害領域の点のみを各サブセルが含有するまでサブセルに分割される。
【0046】
本発明の一つの有利な特徴によれば、この方法は、被検体の画像と呼ばれる被検体に対応の画像部分が獲得画像の背景から隔離される獲得画像処理ステップを包含する。
【0047】
本発明の一つの有利な特徴によれば、この方法は、被検体の輪郭エリアに対応する輪郭領域と呼ばれる領域を判断するステップを包含する。
【0048】
本発明の一つの有利な特徴によれば、この方法は、被検体に対応する画像部分において、少なくとも一つの幾何学的構造、例えば線形構造を特定することを包含する。この方法は、幾何学的構造と少なくとも一つの関心領域との間に相関関係が確立される時の関心カテゴリに対応する第1値と、幾何学的構造と関心領域との間に相関関係が見られない時の非関心カテゴリに対応する第2値とを有する分類パラメータに、特定された少なくとも一つの幾何学的構造を割り当てることを包含する。
【0049】
本発明の一つの有利な特徴によれば、所与の圧縮力の作用を受けて被検体が圧縮される際に、少なくとも一つのメタデータ項目は、圧縮状態での被検体の厚さと、被検体に印加される圧縮力とを包含する。
【0050】
本発明は、コンピュータシステムのプロセッサによりプログラムが実行される時に、上に提示した方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を包含する非一時的コンピュータプログラム製品にも関係する。
【0051】
本発明は、コンピュータプログラムが記憶される記録媒体にも関係する。
【0052】
本発明は、上に提示した方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を内含するメモリと、プログラムコード命令を実行するためのプロセッサと、画像データ及びメタデータを記憶するためのメモリと、好ましくは表示画面とを包含するコンピュータシステムにも関係する。
【0053】
本発明は、上に提示したコンピュータシステムとX線機器とを包含する設備にも関係しており、この機器は、X線ビームを放出できる放出装置と、放出装置により放出されたXビームを、被検体を通過した後に受容できる受容装置とを包含し、X線機器は、被検体を通過した後に受容装置により受容されるX線に対応する画像データと、任意であるが、生成されたX線のパワー又はエネルギーに関係する一つ以上のパラメータを例えば包含するメタデータとをコンピュータシステムへ送信するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の他の特徴及び利点は、純粋に例示的かつ非限定的であって添付図面とともに解釈されるべきである以下の記載から一層明白になるだろう。
図1】本発明の一実施形態によるコンピュータシステムの概略図である。
図2】本発明の一実施形態による、X線機器を使用して獲得された乳房の画像の概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、画像の背景を除去した後の図2の画像の概略図である。
図4】本発明の一実施形態による、判断された乳房の輪郭エリアが概略的に示されている図3の画像の概略図である。
図5】本発明の一実施形態による、阻害領域が概略的に示されている図3の画像の概略図である。
図6】本発明の一実施形態による、関心領域が概略的に示されている図3の画像の概略図である。
図7】本発明の一実施形態による、関心領域と関連する幾何学的構造が概略的に示されている図3の画像の概略図である。
図8】本発明の一実施形態による、一つ以上の阻害領域と関連する幾何学的構造が概略的に示されている図3の画像の概略図である。
図9】本発明の一実施形態による、図4から8に概略的に示された阻害領域と関心領域と輪郭エリアと幾何学的構造とが概略的に示されている図3の画像の概略図である。
図10】本発明の一実施形態による、画像をセルに分割するためにグリッドが適用された図9の画像の概略図である。
図11】本発明の一実施形態による、関心領域のセルC1と隣接セルとを示す図10の画像の部分の図である。
図12】本発明の一実施形態による、第1阻害領域のセルC2と隣接セルとを示す図10の画像の部分の図である。
図12A】本発明の一実施形態による複数のテクスチャ加工要素を示す概略図である。
図12B】本発明の一実施形態による、図12Aの少なくとも一つのテクスチャ加工要素に基づくセルC2の修正の後の図12の画像部分の概略図である。
図13】第2阻害領域のセルC3と隣接セルとを示す図10の画像部分の図である。
図13A】本発明の一実施形態による3個のテクスチャ加工要素を示す概略図である。
図13B】本発明の一実施形態による、図13Aの少なくとも一つのテクスチャ加工要素に基づくセルC3の修正の後の図13の画像部分の概略図である。
図14】本発明の一実施形態による、阻害領域のセルC4と隣接セルとを示す図10の画像の部分の図である。
図14A】本発明の一実施形態による、1個(下の一つ)が他の2個に基づいて作成された3個のテクスチャ加工要素を示す概略図である。
図14B】本発明の一実施形態による、図14Aで作成されたテクスチャ加工要素に基づくセルC4の修正の後の図14の画像部分の概略図である。
図15】本発明の一実施形態による、関心領域の点と阻害領域の点とを包含するセルC5を示す図10の画像の部分の図である。
図15A】本発明の一実施形態による、各サブセルが関心領域の点のみか阻害領域の点のみを包含するように微細メッシュをセルC5に適用した後に見られる図15の図である。
図16】本発明の一実施形態による、テクスチャ加工要素を使用した阻害領域の修正の後に図10の画像から作成された画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の概念の実施形態を示す添付図面を参照して、本発明の概念が下でより詳しく記載される。図面において、要素のサイズ及び相対サイズは明瞭性のために誇張されうる。図面全体で類似の数字は類似の要素を指す。しかしながら、本発明のこの概念は、多くの異なる形で具現されうるものであり、本書に開示の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。代わりに、これらの実施形態は、この説明が完全であって本発明の概念の範囲を当業者に伝えるように提供される。以下の実施形態は、簡潔性のため、特にマンモグラフィ環境におけるX線機器及び画像処理システムの専門用語及び構造に関連して述べられる。
【0056】
明細書全体における“an/one embodiment(ある/一つの実施形態)”という言及は、ある実施形態に関連して記載される特定の機能性、構造、又は特徴が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに、明細書全体の様々な箇所での“in one embodiment(一実施形態において)”という表現の存在は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の機能性、構造、又は特徴は、一つ以上の実施形態において適当な手法で組み合わされうる。
【0057】
下に記載の画像処理は、乳房のような被検体の二次元又は三次元X線への露出に続いてこれらのX線獲得を通して作成される画像のあるエリアをマスキングすることが意図されている。視認される被検体の自然な外観を保つようにしてマスキングが行われる。被検体の画像内の幾つかの点集合を、被検体の画像から独立して規定及び記憶されて今後はテクスチャ加工要素と呼ばれる他の点集合と置換することにより、不可逆的にマスキングが行われうる。ゆえに、被検体の画像の獲得に先行して、これらのテクスチャ加工要素がメモリに存在するように設定することが可能である。言い換えると、画像の所与のエリア(阻害領域と考えられる)を置換するのに使用されるテクスチャ加工要素は、置換されるエリアのコンテンツからではなく、元の画像の別のエリアのコンテンツから最初に作成される。特に、参照画像であると考えられる他の画像のエリアに基づいてテクスチャ加工要素が規定されるように設定されうる。
【0058】
言うまでもないが、下で説明するように、置換される画像エリアの特徴に基づいてテクスチャ加工要素が規定されない場合には、置換される画像エリアの特徴を考慮しながら、テクスチャ加工要素の集合からテクスチャ加工要素が選択又は作成される。また、このテクスチャ加工要素の選択又は作成の後に、置換されるエリアに隣接するエリアに応じて適応化される為に、特に置換エリアと環境との間に視覚的連続性を設ける為に、テクスチャ加工要素が任意で修正されうる。
【0059】
処理は特に、弾性かつ変形可能な要素の二次元及び三次元X線画像に適用可能である。変形として、肺、より大まかには胸郭など、被検体が剛性または変形可能であってもよいが、画像獲得中に圧縮力は受けない。
【0060】
図1は、コンピュータシステム1とX線撮影機器2とを図示している。
【0061】
下に記載するように、コンピュータシステム1は、被検体のデジタル画像のうち阻害領域と呼ばれる一つ以上の領域を処理することを可能にする。残りの記載では、被検体3は乳房であり、X線機器2を使用して取得される画像はマンモグラムである。言うまでもなく、本発明は他の弾性的圧縮可能な被検体に適用可能である。変形として、上記のように、この被検体は剛性又は変形可能であるが画像獲得中には圧縮力を受けなくてもよい。
【0062】
阻害領域は、例えば異常を特定するために放出線医師にとって関心のある関心領域と呼ばれる他の領域と異なり、放出線医師が実施しなければならない画像解析においてそれ自体は関心対象ではないという意味で「阻害」と呼ばれる。
【0063】
画像の一つ以上の阻害領域は、放出線医師が関心領域に解析を集中するのを妨げることにより一つ以上の関心領域についての放出線医師による解析を妨害しうる。
【0064】
下に記載するように、本発明は、各関心領域を維持するとともに、一つ以上の阻害領域の存在により放出線医師による解析が妨害されるリスクを制限するのと同時に、阻害領域の点が同一の強度値を単純に割り当てられる場合、あるいは修正領域が阻害グラフィック特徴を維持するように阻害領域の点が強度値に対する数学的操作を受ける場合に起こりうるように、阻害領域について不適切であるグラフィック処理操作を通して操作者を混乱させることがなくなるように、乳房の大まかなグラフィック特徴(その形状、そのテクスチャなど)の維持を可能にする。例えば、乳房の健常脈管に対応する組織をグラフィックで示すとともにこれらの強度値に対する可逆的な数学的操作を受ける領域であれば、この脈管の大まかなグラフィック外観を維持し、やはり被検体の画像の解析を妨害するリスクがあるだろう。この領域と無関係に最初に規定されるテクスチャ加工要素と阻害領域を置換することによるマスキングが行われる本発明による解決法は、阻害領域が乳房の健常脈管を含む上記の例では、健常な脈管の代わりに乳房脂肪を視覚的に示すように、乳房脂肪に対応するテクスチャ加工要素を選択して、おそらくはこのテクスチャ加工要素を修正した後に、阻害領域の点をテクスチャ加工要素の点で代用することが可能になる。乳房画像については、乳房脂肪は、脈管とは異なり、画像を解析する専門家の目を引かない組織タイプであるので、このようなマスキングを受けない、すなわちテクスチャ加工要素と置換されない一つ以上の関心領域に専門家が自分の解析を集中させられることが理解されている。
【0065】
画像獲得
X線機器2は、乳房3をX線(又はX線ビーム)に露出することにより乳房3の画像を獲得するのに使用される。特に、機器2は、乳房3が間に配置される圧縮板211,221を包含する。そして好ましくは調節可能である所与の圧縮力の作用を受けて、乳房3が圧縮板211,221の間で圧縮される。
【0066】
そしてX線発生装置210がX線を発生させ、これに乳房3が露出される。発生装置210はこの目的のため、X線放出管と、X線を生成するのに使用されるエネルギー又はパワー、例えば電圧及び電流を調節するための電子システムとを包含しうる。
【0067】
受容装置220は、乳房3を通過した後でX線を受容する。受容装置220は、被検体を通過することなく被検体を迂回するとともに画像の背景を画定する光線も受容しうる。受容装置2に受容されるX線は、通過する乳房の様々なエリアの特徴に応じて異なる強度値を有し、ゆえにマンモグラムに対応する画像IMG1の形成を可能にする。
【0068】
取得された画像IMG1内の点は、X線に露出された乳房3の点に、又は画像の背景を形成する乳房3の周囲の点に対応する。図2から16に示されている画像又は画像部分は処理方法の理解を容易にするために単純化された図であることに注意すべきである。
【0069】
コンピュータレベルでは、空間内で画定される点の集合により画像が表現される。画像は、幅、高さ、そして奥行のような寸法の全て又は幾つかを特徴としうる。
【0070】
各点は、座標、例えば二次元(つまり平面画像)、三次元(例えばボリューム又は二次元+時間)、あるいは四次元(例えば三次元ボリューム+時間)の座標と、各点と関連して輝度値に対応する数値とを特徴とする。数値は有界でありうる。数値は特に、自然数又は実数空間の部分集合に属する。
【0071】
ゆえに多数のタイプの画像獲得が可能である。例を挙げると、以下の獲得対象、すなわち、
二次元画像と、
露出角度が既知である多様な入射で、又はこの角度が既知ではない多様な入射で獲得される複数の二次元画像と、
三次元画像と、
を区別することが可能である。
【0072】
各獲得対象のタイプについて、多数の獲得パラメータ(つまりメタデータ)が用意されうる。例えば、以下のパラメータ、すなわち、
獲得機器の製造者及び/又はモデル
パワー、持続時間等のようなX線放出特徴
獲得対象の入射角度
好ましくは圧縮を受けた研究対象の被検体の厚さ
の全て又は幾つか。
【0073】
これらのパラメータの全て又は幾つかは、獲得された画像と関連するメタデータとして使用されうる。
【0074】
残りの記載では、一つの画像について言及されるが、記載は言うまでもなく複数の画像に適用される。特に、上記のように、X線への被検体の様々な露出角度、すなわち被検体に対する光線の様々な入射角度で被検体の複数の画像が獲得されるように設定されうる。
【0075】
コンピュータシステムは、受容装置220を使用して獲得される画像のデータDを記憶するデータメモリ103を包含する。ゆえにデータDは、画像の各点Pについて、この点の座標と、初期強度値と呼ばれる強度値Iとを包含しうる。
【0076】
コンピュータシステム1は、下に記載されるステップを包含する方法のステップを実行するためのプログラムコード命令(コンピュータ命令)を内含するメモリ101も包含する。プロセッサ102は、このプログラムコード命令の実行を可能にする。
【0077】
上記のように、メモリ103は、受容装置220を使用して獲得される画像データDの記憶を可能にする。下に提示されるメタデータMも、メモリ103又は別のメモリに記憶される。コンピュータシステムは、画像を表示するための表示画面104も包含しうる。
【0078】
乳房3の点と関連する画像内の点Pの初期強度Iは、乳房3の対応の点に衝突した光子の数に対応する。また、上に説明したように、画像内の各点PはメタデータMと関連している。ゆえに、図2に概略的に図示されているように、獲得された画像IMG1は、座標と関連する点Pと、初期強度値Iと、メタデータMとを有する。画像IMG1の一つの部分400は被検体3に対応し、別の部分500は画像の背景に対応する。
【0079】
一つの好適な実施形態によれば、メタデータMは、
圧縮状態における乳房3の厚さ及び被検体に印加される圧縮力と、
X線を生成するのに使用される電圧及び電流の値と、
を包含する。
【0080】
上に説明したように、他のメタデータ又は追加のメタデータが追加されうるか、あるメタデータが同等のメタデータと置換されうる。例えば、電圧及び電流値が、X線を発生させるのに使用されるパワー又はエネルギーを表す変数と置換されうる。同様に、圧縮板221,222が存在しない際には、圧縮された被検体の厚さが明確にされなくてもよい。
【0081】
メタデータは、機器2をコンピュータシステム1に接続することにより全部又は一部が機器2により提供されうるか、初期データから計算されうる。メタデータは、キーボード又はタッチ画面などのデータ入力インタフェースを使用してユーザによりコンピュータシステム1へ入力されうる。メタデータは、画像の獲得中に提供される一次メタデータと呼ばれるものと、初期強度値及び一次メタデータなど一次データから計算される二次メタデータと呼ばれるものとを包含しうる。
【0082】
メタデータは乳房3の密度も包含しうる。密度は、画像の領域と関連する所与のカテゴリの中からサブカテゴリを規定するのに使用されうる。密度が、初期データから計算される値、つまり獲得された画像に最初に割り当てられる初期値及びメタデータから計算される値であるように設定されてもよい。
【0083】
乳房3に対応する画像の部分は、今後は乳房の画像400と呼ばれる(図2参照)。
【0084】
一つの特定態様によれば、そして図3に概略的に図示されているように、乳房の画像の部分400が、獲得された画像の背景500から隔離される。こうして処理は、乳房3に対応する画像の部分400を対象とする。
【0085】
阻害領域と関心領域
阻害領域と関心領域とを特定するのに、画像の点Pの初期強度値Iと画像のメタデータMとが使用される。
【0086】
そして阻害領域の特定に続いて、非関心カテゴリとおそらくはサブカテゴリとに対応する値を持つパラメータが、阻害領域の点に割り当てられる。そして同様に、関心領域の特定に続いて、関心カテゴリとおそらくはサブカテゴリとに対応する値を持つパラメータが関心領域の点に割り当てられる。
【0087】
下に説明するように画像内の点を処理した後に、阻害領域の点の初期強度値Iを新規強度値と置換することにより新規画像IMG2が作成される(図16参照)。
【0088】
一つの特定態様によれば、マスキング操作とも呼ばれる置換方法は、(阻害領域とも呼ばれる)非関心エリア内の点の強度値を画像サンプルの強度値と置換することに対応する。これらの画像サンプルは、既定テクスチャ加工要素の中から選択されるか他の既定テクスチャ加工要素から作成される、下に提示のテクスチャ加工要素でありうる。テクスチャ加工要素は、獲得された画像と最初は無関係であるが、視覚的一貫性を確保するため画像又は画像の部分の特徴、例えば(阻害又は関心領域でありうる)隣接領域の点に従ってさらに適応化されうる。
【0089】
阻害領域と関心領域の特定
画像(画像領域)の点群が阻害領域又は関心領域に対応するかどうかを特定するため、画像内の点群が、他の参照点群、例えばデータベースBDDに記憶された点群PR1,PR2,PR3と比較されうる。これらの点群PR1,PR2,PR3は画像サンプルに対応しうる。
【0090】
データベースBDDに記憶された各参照点群PR1,PR2,PR3は参照強度値と参照メタデータMrefPRとを包含し、阻害領域タイプ又は関心領域タイプに対応するカテゴリと、おそらくはサブカテゴリ、例えば低強度領域又は高強度領域に対応するサブカテゴリと関連している。別の例は、サブカテゴリ、例えば特定の形状、例えば星の形状を表す点の分布に対応する関心領域サブカテゴリでありうる。有利なことに、同じメタデータが一つの同じ点群に属する様々な点と関連し、点の各々は、他の点とは異なりうる強度値を有する。
【0091】
参照点RP1,RP2,RP3の参照メタデータMrefPRは、好ましくは、獲得された画像IMG1と関連するメタデータと同じタイプのメタデータを包含する。参照メタデータMrefPRはゆえに、獲得された画像と関連するメタデータと同様の手法で、
圧縮状態での参照乳房厚さ値及び対応の圧縮力値と、
電圧及び電流値などX線のパワー又はエネルギーに関係する一つ以上のパラメータ値と、
を包含しうる。
【0092】
特に、下に記載するように画像のセルに対応しうる領域の所与の点群について、システムは、データベースBDDに記憶された群PR1,PR2,PR3の中から参照点群を特定し、そのメタデータ及び点強度は、カテゴリを特定しようとする点群の点のメタデータ及び初期強度と最も近似整合する。
【0093】
カテゴリ化される点群の特徴と最も近似整合する特徴を持つ参照点群が特定されると、カテゴリ化された点群は、特定される参照点群のカテゴリ(阻害領域又は関心領域)、おそらくは各サブカテゴリに割り当てられる。
【0094】
カテゴリ化される点群(又は対応の領域)が、メタデータ及び/又はカテゴリパラメータ、おそらくはサブカテゴリパラメータの全て又は幾つかを、特定された対応の参照点群から引き継ぐように設定されうる。
【0095】
画像の所与の点群に最も近似整合する参照点群は、相関関数を使用して特定されうる。
【0096】
例を挙げると、メタデータMGPと、点群の点の強度値から計算される統計的強度モーメントSとを有する画像内の所与の点群GPについて、システムは、評価関数V(GP)=f(GP,MGP,S)を使用して点群GPについてのスコアを計算する。
【0097】
スコアV_PR_1,V_PR_2,V_PR_3も、この評価関数を使用して各参照領域について計算される。そしてシステムは、各参照領域についての目的関数又は費用関数L(GP,PR_i)=f(V(GP),V_PR_i)を評価する。目的関数又は費用関数の最大又は最小値をもたらす参照点群PR1,PR2,PR3が選ばれるだろう。
【0098】
図に示されている例では、特定される阻害領域(すなわち非関心領域)は領域PR1,PR2(図5参照)であり、特定される関心領域はRI1(図6参照)である。一つ以上の阻害領域と一つ以上の関心領域とを有する他の画像構成にも提示の方法が適用されることが理解されるだろう。
【0099】
輪郭領域
一つの特定態様によれば、そして図4に図示されているように、乳房3の輪郭エリアに対応する乳房3の画像400の輪郭領域RCが判断されうる。
【0100】
図4の例では、輪郭領域RCの幅広部分は、圧縮板211,221と直接接触している乳房の部分に対応する。
【0101】
輪郭領域RCは、形状整合により、そしておそらくは輪郭エリアの強度値と乳房3に印加される力の値とに基づいて判断されうる。
【0102】
特定の幾何学的形状又は形状を持つ幾何学的構造の特定
システムは、乳房の画像400の一つ以上の幾何学的構造SGI1,SGP1の特定を可能にする。幾何学的構造は例えば線形構造を包含する。
【0103】
ゆえに第1ステップにおいて、幾何学的構造が、その幾何学的形状、例えば中断又は非中断の線形幾何学的形状により特定されうる。次に、システムは、幾何学的構造と、一つ以上の関心領域又は一つ以上の阻害領域(非関心領域)との相関関係を探索する。相関関係は輝度値、おそらくはメタデータに依存しうる。相関関数は上に提示されたものに類似しうる。
【0104】
システムは、(例えば上に提示のものと類似した)相関関数を使用して、幾何学的構造と少なくとも一つの関心領域との間に相関関係が確立される時に関心カテゴリに対応する第1値を有する分類パラメータを、特定された幾何学的構造に割り当てることを可能にする。逆に、幾何学的構造と関心領域との間に(充分な)相関関係が見られない時には、非関心カテゴリ(又は阻害カテゴリ)に対応する第2値が幾何学的構造に割り当てられる。
【0105】
ゆえに、図7に図示されているように、システムは、関心カテゴリに対応するパラメータが幾何学的構造SGI1に割り当てられるように、関心領域RI1との相関関係が確立された幾何学的構造SGI1を特定する。図8に図示されているように、システムは、非関心カテゴリに対応するパラメータが幾何学的構造SGP1に割り当てられるように、阻害領域RP1との相関関係が確立された幾何学的構造SGP1も特定する。相関している領域のメタデータ及び/又はカテゴリパラメータ、おそらくはサブカテゴリパラメータの全て又は幾つかを幾何学的構造が引き継ぐように設定されうる。
【0106】
テクスチャ加工要素
マスキングを行うために、前もって収集又は規定されるテクスチャ加工要素ET1,ET2,ET3が使用される。テクスチャ加工要素は、画像が獲得される被検体、ここでは乳房3と同じ種類の被検体の一部分を示すX線画像である。
【0107】
このテクスチャ加工要素は例えば、視覚的誘引性が低くそれゆえ阻害領域のエリアほど混乱を生じない脂肪エリアの画像に対応する。ゆえに、放射線医師が関心領域に集中できるようにするため、これらのテクスチャ加工要素が、おそらくは修正された後に、画像の阻害領域に置き換わるのに使用される時には、これらの置換が放射線医師を混乱させるリスクが制限されるように、乳房はそれでも大まかな特徴(形状及びテクスチャ)を保つだろう。
【0108】
テクスチャ加工要素は、解析中にアクセス可能な(局所又は遠隔)データベース、例えばデータベースBDDに記憶されうる。
【0109】
各テクスチャ加工要素ET1,ET2,ET3は、点群とメタデータとを包含する。
【0110】
参照点群RP1,RP2,RP3と同様の手法で、各テクスチャ加工要素ET1,ET2,ET3は強度値と参照メタデータMrefETとを包含し、おそらくは阻害領域サブカテゴリ、例えば、低強度領域又は高強度領域に対応するサブカテゴリと関連する。
【0111】
有利なことに、同じメタデータが一つの同じテクスチャ加工要素点群に属する様々な点と関連して、各点が他の点とは異なる強度値を有する。
【0112】
テクスチャ加工要素ET1,ET2,ET3の参照メタデータMrefETは、獲得された画像IMG1と関連するメタデータと同じタイプのメタデータを好ましくは包含する。ゆえに参照メタデータMrefETは、獲得された画像と関連するメタデータと同様の手法で、
圧縮状態での参照乳房厚さ値及び対応の圧縮力値と、
電圧及び電流値などX線のパワー又はエネルギーに関係する一つ以上のパラメータ値と、
を包含しうる。
【0113】
テクスチャ加工要素のサイズ、組織タイプ、又は統計的強度特徴など、様々なデータも各テクスチャ加工要素と関連しうる。これらのデータは、上に提示した参照点とも関連しうる。
【0114】
一つの特定実施形態によれば、参照点群の一つ又は各々の強度分散(つまり第2数学的モーメント)は、テクスチャ加工要素の一つ又は各々のものより高い。言い換えると、テクスチャ加工要素は参照点群より高い強度均質性を有しうる。
【0115】
一つの特定実施形態によれば、参照点群の一つ又は各々の点の強度値(つまり第1数学的モーメント)の平均は、テクスチャ加工要素の一つ又は各々の強度値よりも高い。
【0116】
テクスチャ加工要素は、阻害領域又は関心領域を特定するのに使用される参照点群とは異なっていることが理解されている。
【0117】
一つの好適な実施形態によれば、マスキング操作の目的は、一つ以上の阻害領域と呼ばれるものを操作者にとって不可視にすることと、画像解析中の注意の軽減を可能にする領域とこれを置換することである。ゆえにテクスチャ加工要素は、その強度特性、特に要素の点の強度値と関連の数学的モーメントについて選択及び分類される。さらにテクスチャ加工要素の点の統計的分布が、テクスチャ加工要素により表される組織タイプを判断するために考慮されうる。
【0118】
一つ以上のテクスチャ加工要素から形成されるマスクを阻害領域の全部又は部分に適用することにより、阻害領域がマスキングされうる。
【0119】
テクスチャ加工要素の選択又は作成
特定された阻害領域RP1,RP2について、平均強度値Iavg又は強度分散など、この領域の点の強度値の少なくとも一つの数学的モーメントが計算される。阻害領域を特定するために、様々な数学的モーメントが単独又は組み合わせで計算され、取り入れられうる。同様に、阻害領域の近傍のセルについて一つ以上の数学的モーメントが計算されうる。
【0120】
テクスチャ加工要素ET121;ET133は、阻害領域について計算された一つ以上の数学的モーメントと好ましくは一つ以上の関連のメタデータ項目などの特徴に基づいて、そして任意でこの領域の近傍の数学的モーメントに基づいて、複数の既定テクスチャ加工要素ET121,ET122,ET123;ET131,ET132,ET133の中から選択される。
【0121】
特に、下に説明するように、画像のセルに対応しうる領域の所与の点群について、画像へのグリッドの適用に続いて、システムがデータベースBDDの既定テクスチャ加工要素の中からテクスチャ加工要素を選択するように設定され、そのメタデータ及び点強度は、阻害領域とおそらくはその近傍の点のメタデータ及び初期強度と最も近似整合する。テクスチャ加工要素と阻害領域との間の相関関係は、この領域のメタデータ及び初期強度の幾つか又は全てを考慮して目的関数又は費用関数を解析することにより確立されうる。この目的のため、上に提示されたものと類似しうる相関関係と目的又は費用関数とを使用することが可能である。
【0122】
例えば対応する数学的強度モーメントに基づいて特定される複数のテクスチャ加工要素に基づいて新規テクスチャ加工要素が作成されるように設定されてもよい。
【0123】
選択されたテクスチャ加工要素からテクスチャ加工要素が選択又は作成されると、システムは、阻害領域の点群を修正するためのマスクとしてこのテクスチャ加工要素を使用する。特に、テクスチャ加工要素の点の強度値に基づいてシステムがこの群の点の強度値を修正しうる。この修正では、この群の点の強度値をテクスチャ加工要素の点の強度値と置換しうる。領域の他の点群の強度は、テクスチャ加工要素の点群の強度に基づいて修正されるか、これと置換されてもよい。
【0124】
獲得された画像の大まかな特徴(強度、テクスチャ)から逸脱しないように、マスクとして使用されるテクスチャ加工要素の特徴は、例えばマスクが適用される各エリアに隣接する一つ以上のエリアに基づいて適応化(すなわち修正)されうる。
【0125】
一つの好適な実施形態によれば、「阻害」非関心領域と呼ばれるもののマスキングは、テクスチャ加工要素又はテクスチャ加工要素の構成物から構築されるマスクで領域を置換することが意図されている。
【0126】
一つの好適な実施形態において、マスクを形成するテクスチャ加工要素は固有の強度特徴を呈する。
【0127】
例を挙げると、最小の画像強度値が空気に対応するように設定されうる。
【0128】
絶対最小値(例えば空気の強度)と異なる、Mminと記される既定の閾値に近づけることにより平均強度(つまり第1数学的モーメント)を最小化するように、そしてSminと記されるゼロ以外の閾値に近づけることにより強度値の標準偏差を最小化する(すなわち均質性を最大化する)ように、選択されたテクスチャ加工要素からテクスチャ加工要素が選択又は作成されうる。このような実施形態によれば、テクスチャ加工要素はその一つ以上の数学的モーメントへの制約のみを受ける。
【0129】
一つの特定実施形態によれば、参照点群PR_iは、少なくとも一つのテクスチャ加工要素と同じ統計的特徴を有しうる。
【0130】
画像の被検体のセルへの分割
乳房の画像400は、セルC1,C2,C3,C4,C5と呼ばれる隣接点のブロックに分割される(図10)。
【0131】
画像の分割から生じるセルは、既定サイズのメッシュを有するグリッドG400の画像への適用の結果として得られる。
【0132】
最初に、使用される最大のテクスチャ加工要素の寸法に対応するように、グリッドのメッシュ、それゆえセルの寸法が選択されうる。必要であれば、より小さいテクスチャ加工要素の使用を可能にするように、その後、より微細なメッシュを持つグリッドが画像又は画像の部分に、例えば所与のセルに適用されうる。
【0133】
セルの構成物
特に、セル、例えば、図10に図示されているセルC5が、様々な領域カテゴリ又は様々なサブカテゴリの点、例えば関心領域RI1と阻害領域PR1,PR2の点、あるいは二つの異なる阻害領域の他の点を内含する時には、対応のセルがサブセルに分割されるように設定されうる。
【0134】
ゆえに、図15Aに図示されているように、セルC5はサブセルC51に分割され、このサブセル自体は、関心領域RI1の点のみ、又は阻害領域PR1,PR2の点のみを各サブセルが内含するまでサブセルに分割されうる(図15及び15A)。そしてこの記載で提示された処理ステップがこれらのサブセルに適用される。
【0135】
ゆえに図15Aは、セルC5への微細メッシュの適用を図示しているので、各サブセルC51は関心領域の点のみ、又は阻害領域の点のみを包含する。所与の領域に属するこれらの点のセルでの比率が所与の閾値、例えば95%より高い時に、セルが所与の領域の点「のみ」を包含すると見なすことが可能であろう。
【0136】
言い換えると、微細な解析を実施するために、セルはより小さいメッシュを持つグリッドに分割されるのである。
【0137】
このような分割は段階的であって数回行われる。新たに繰り返す度に、追加の分割の必要性を特定するためセルのコンテンツが解析される。
【0138】
関心領域セル
セルC1の点の各々が関心領域RI1に属する時に、作成された新規画像IMG2でこれらの点は無変化である(図11)。特に、隣接セルの点が阻害領域に属するか関心領域に属するかに関係なく、これらの点は無変化である。
【0139】
阻害領域セルの処理
セルの点の各々が阻害領域に属して隣接セルの点も阻害領域に属する時に、これらのセルの点は、複数の既定テクスチャ加工要素から選択されるテクスチャ加工要素の点と置換される。
【0140】
ゆえに、図12に図示されているように、セルC2は、やはり阻害領域RP1に属する隣接セルに囲繞されている。システムは、複数のテクスチャ加工要素ET121,ET122,ET123の中から、セルの点及びテクスチャ加工要素と関連する強度値及びメタデータに基づいてセルC2と最も近似整合するテクスチャ加工要素ET121を判断する。同様に、図13に図示されているセルC3は、やはり阻害領域RP2に属する隣接セルに囲繞されている。システムは、複数のテクスチャ加工要素ET131,ET132,ET133の中から、セルの点及びテクスチャ加工要素と関連する強度値及びメタデータに基づいてセルC3と最も近似整合するテクスチャ加工要素ET133を判断する。
【0141】
セルの各点が阻害領域に属していて少なくとも一つの隣接セルの点がこの阻害領域以外のカテゴリに、例えば関心領域や別の阻害領域に属する時には、少なくとも一つ、好ましくは複数の既定のテクスチャ加工要素から、そして少なくとも一つの隣接セルの点に基づいて、新規テクスチャ加工要素が作成される。特に、新規テクスチャ加工要素を作成するのに使用されるテクスチャ加工要素の一つが少なくとも一つの隣接セルの点に基づいて選択されるように設定されうる。セルの点は、新規テクスチャ加工要素の点と置換される。有利なことに、処理されるセルの特徴に基づいて選択される既定のテクスチャ加工要素から、そして少なくとも一つの隣接セルの特徴に基づいて選択される別のテクスチャ加工要素から、新規テクスチャ加工要素が作成される。
【0142】
ゆえに、図14に図示されているように、セルC4の点の各々は阻害領域RP1に属し、一方で隣接セルCV4は関心領域RI1に属する点を包含する。
【0143】
そして、セルC4と近似整合する既定のテクスチャ加工要素ET141から、そして隣接セルCV4の点と近似整合するテクスチャ加工要素ET142から、新規テクスチャ加工要素ET143が作成される。そしてセルC4内の点が新規テクスチャ加工要素ET143の点と置換される(図14,14A,14B)。セルC4のマスクとして使用されるテクスチャ加工要素ET143の点がセルC4の囲繞部に基づいて適応化されてもよい。
【0144】
結果画像
図16に図示されているように、関心領域RI1は、これと関連する幾何学的関心構造SGI1とともに維持され、一方で元の阻害領域RP1,RP2は、これらの領域をその環境に融合させることで放射線医師の注意を引き付けるリスクを無くすようにテクスチャ加工要素を使用して修正されている。図16に図示されている例では、被検体の大まかな形状及びテクスチャを維持して、視覚的な混乱を生じないように適切な領域移行を確保するために、図5の関心領域又は阻害参照領域RP1に近接する図5の参照領域のエリアRP2が領域RP2の残りとは異なる形で修正されていることに気づくだろう。
【0145】
こうして放射線医師は、関心領域RI1と、これと関連する幾何学的関心構造SGI1とに解析を集中させることができる。
【0146】
記載された機能及びステップは、コンピュータプログラムの形で、又はハードウェアコンポーネント(例えばプログラマブルゲートアレイ)を介して具現されうる。特に、コンピュータシステム1により行われる機能及びステップは、命令集合、あるいはプロセッサ又はコントローラとして具現されるコンピュータモジュールにより実施されうるか、専用の電子コンポーネントあるいはFPGA又はASICコンポーネントにより実施されうる。コンピュータ部品と電子部品とを組み合わせることも可能である。
【0147】
所与の操作を実施するようにコンピュータシステムが構成されると記される時に、これは、コンピュータ命令とこの操作の実施を可能にする対応の実行手段とをシステムが包含すること、及び/又は、このシステムが対応の電子コンポーネントを包含することを意味する。
【0148】
本発明は、図面に図示されている実施形態に限定されない。
【0149】
加えて、“comprising(を包含する)”の語は他の要素又はステップを除外するものではない。加えて、上に開示された実施形態の一つを参照して記載された特徴又はステップは、上に開示された他の実施形態の他の特徴又はステップとの組み合わせでも使用されうる。
【符号の説明】
【0150】
1 コンピュータシステム
2 X線撮影機器
3 乳房
101 メモリ
102 プロセッサ
103 メモリ
104 表示画面
210 X線発生装置
211 圧縮板
220 受容装置
221 圧縮板
400 画像IMG1の一部分
500 画像IMG1の別の部分
BDD データベース
C セル
CV 隣接セル
D データ
ET テクスチャ加工要素
G400 グリッド
IMG 獲得画像
M メタデータ
MrefET,MrefPR 参照メタデータ
P 点
PR 参照点
RC 輪郭領域
RI 関心領域
RP 阻害領域
SGI,SGP 幾何学的構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図12A
図12B
図13
図13A
図13B
図14
図14A
図14B
図15
図15A
図16