(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ウエハ載置台及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2021007360
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 祐司
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022284(JP,A)
【文献】特開2007-005740(JP,A)
【文献】特開2003-152064(JP,A)
【文献】特開2015-159232(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052115(WO,A1)
【文献】特開平03-217043(JP,A)
【文献】特開2007-258610(JP,A)
【文献】特開2008-135737(JP,A)
【文献】特開2006-114250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有する第1セラミック基体と、
前記第1セラミック基体の下面側に配置された第2セラミック基体と、
前記第1セラミック基体の下面と前記第2セラミック基体の上面とを接合する金属接合層と、
上底と下底とを備え、前記上底が前記金属接合層と接触する状態で前記第2セラミック基体に埋設された接続部材と、
前記接続部材の前記下底に電気的に接続された給電端子と、
を備え、
前記接続部材は、前記接続部材を前記上底と平行な面で切断したときの断面積が前記上底側から前記下底側に向かって大きくなる部分を有し
、
前記接続部材は、金属メッシュが多段に積み重ねられた部材であるか、炭化タングステンにルテニウム合金を添加した混合材料のバルク体であるか、金属によって作製されるバルク体である、
ウエハ載置台。
【請求項2】
前記第2セラミック基体は、前記第2セラミック基体の下面に前記給電端子を挿入するための穴を備え、
前記給電端子の側面は、前記穴の側面に接合されている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記接続部材の形状は、前記接続部材を前記上底に平行な面で切断したときの断面積が前記上底から前記下底に向かって大きくなる形状である、
請求項1
又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記接続部材の形状は、円錐台形状、半球台形状又は前記円錐台形状と比べて側面が内側に入り込んだ形状である、
請求項
3に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
(a)上面にウエハ載置面を有する第1セラミック基体と、上底と下底とを備えた接続部材を埋設した第2セラミック基体とを用意する工程と、
(b)前記接続部材の前記上底が露出するように前記第2セラミック基体を研削し、接合面を形成する工程と、
(c)前記第1セラミック基体の下面と前記第2セラミック基体の前記接合面とを金属接合する工程と、
を含み、
前記工程(a)で用意する前記第2セラミック基体に埋設された前記接続部材は、前記接続部材を前記上底と平行な面で切断したときの断面積が前記上底側から前記下底側に向かって大きくなる部分を有している、
ウエハ載置台の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック基体同士を接合する金属接合層を、電極として用いるウエハ載置台が知られている。例えば、特許文献1には、金属接合層をRF電極として用いる静電チャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような静電チャックは、例えば、以下のようにして製造される。すなわち、まず、ウエハ載置面を有する第1セラミック基体と、接続部材を埋設した第2セラミック基体とを作製する。続いて、接続部材の一方の面が露出するように第2セラミック基体の一方の面を研削加工し、研削面を形成する。そして、第1セラミック基体のウエハ載置面とは反対側の面と第2セラミック基体の研削面とを金属接合層を介して接合する。そのため、第2セラミック基体と接続部材の密着性が低いと研削加工時の負荷により第2セラミック基体にクラックが発生するおそれがある。また、研削加工時の負荷により接続部材が第2セラミック基体から抜けるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、製造時にセラミック基体にクラックが発生することを防止し、接続部材が抜け難くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウエハ載置台は、
上面にウエハ載置面を有する第1セラミック基体と、
前記第1セラミック基体の下面側に配置された第2セラミック基体と、
前記第1セラミック基体の下面と前記第2セラミック基体の上面とを接合する金属接合層と、
上底と下底とを備え、前記上底が前記金属接合層と接触する状態で前記第2セラミック基体に埋設された接続部材と、
前記接続部材の前記下底に電気的に接続された給電端子と、
を備え、
前記接続部材は、前記接続部材を前記上底と平行な面で切断したときの断面積が前記上底側から前記下底側に向かって大きくなる部分を有している、
ものである。
【0007】
このウエハ載置台では、第2セラミック基体に埋設された接続部材は、その接続部材を上底と平行な面で切断したときの断面積が上底から下底に向かって大きくなる部分を有している。そのため、例えば、接続部材の形状が円柱である場合と比べると、接続部材の側面の面積が大きくなるため、第2セラミック基体と接続部材との接触面積が大きくなり、第2セラミック基体と接続部材との密着性が向上する。よって、ウエハ載置台を製造する際に、接続部材が埋設された第2セラミック基体のうち金属接合層が形成される面を研削して接続部材の上底を露出させる工程が含まれていたとしても、第2セラミック基体にクラックが発生し難くなる。また、その工程で接続部材に負荷が加わったとしても、接続部材の側面が第2セラミック基体に引っかかるため、抜け難くなる。
【0008】
なお、本明細書で「上」「下」は絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、ウエハ載置台の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0009】
本発明のウエハ載置台において、前記第2セラミック基体は、前記第2セラミック基体の下面に前記給電端子を挿入するための穴を備えていてもよく、前記給電端子の側面は、前記穴の側面に接合されていてもよい。こうすれば、給電端子の側面が第2セラミック基体の穴の側面に固定されるため、給電端子ごと接続部材が第2セラミック基体から抜けてしまうのを防止することができる。
【0010】
本発明のウエハ載置台において、前記接続部材は、金属メッシュが多段に積み重ねられた部材であってもよい。こうすれば、ウエハ載置台が加熱されたり冷却されたりしたとしても接続部材は金属メッシュ製のため伸縮しやすく、メッシュの隙間にセラミックが入り込むため熱膨張係数が第2セラミック基体に近くなる。したがって、第2セラミック基体にクラックが発生し難くなる。
【0011】
本発明のウエハ載置台において、前記接続部材の形状は、前記接続部材を前記上底に平行な面で切断したときの断面積が前記上底から前記下底に向かって大きくなる形状としてもよい。こうすれば、接続部材は比較的簡単な形状となるため、接続部材を比較的容易に作製することができる。この場合、前記接続部材の形状は、円錐台形状、半球台形状又は前記円錐台形状と比べて側面が内側に入り込んだ形状であってもよい。こうすれば、接続部材は簡単な形状となるため、接続部材を容易に作製することができる。
【0012】
本発明のウエハ載置台の製造方法は、
(a)上面にウエハ載置面を有する第1セラミック基体と、上底と下底とを備えた接続部材を埋設した第2セラミック基体とを用意する工程と、
(b)前記接続部材の前記上底が露出するように前記第2セラミック基体を研削し、接合面を形成する工程と、
(c)前記第1セラミック基体の下面と前記第2セラミック基体の前記接合面とを金属接合する工程と、
を含み、
前記工程(a)で用意する前記第2セラミック基体に埋設された前記接続部材は、前記接続部材を前記上底と平行な面で切断したときの断面積が前記上底側から前記下底側に向かって大きくなる部分を有している、
ものである。
【0013】
このウエハ載置台の製造方法では、工程(a)で用意する第2セラミック基体に埋設された接続部材は、接続部材を上底と平行な面で切断したときの断面積が上底側から下底側に向かって大きくなる部分を有している。そのため、例えば、接続部材の形状が円柱である場合と比べると、接続部材の側面の面積が大きくなるため、第2セラミック基体と接続部材との接触面積が大きくなり、第2セラミック基体と接続部材との密着性が向上する。よって、工程(b)で接続部材の上底が露出するように第2セラミック基体を研削して接合面を形成する際に、第2セラミック基体にクラックが発生し難くなる。また、その工程(b)で接続部材に負荷が加わったとしても、接続部材の側面が第2セラミック基体に引っかかるため、抜け難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】静電チャック10の製造方法の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、静電チャック10の斜視図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は
図2のB部分の拡大図である。
【0016】
静電チャック10は、本発明のウエハ載置台の一例であり、第1セラミック基体11と、第2セラミック基体12と、金属接合層13と、接続部材20と、給電端子30とを備えている。
【0017】
第1セラミック基体11は、プラズマ処理を施すシリコン製のウエハWと同径の円盤状でセラミック(例えばアルミナや窒化アルミニウム)製のプレートである。第1セラミック基体11の直径は特に限定するものではないが、例えば250~350mmとしてもよい。第1セラミック基体11の上面は、ウエハ載置面11aとなっている。第1セラミック基体11は、抵抗発熱体14を埋設している。抵抗発熱体14は、W,Mo,Ti,Si,Niの単体又は化合物(炭化物など)を主成分とする材料、それらを組み合わせた材料、あるいはそれらと第1セラミック基体11の原料との混合材料などによって構成されている。抵抗発熱体14は、第1セラミック基体11の全面にわたって配線されるように一筆書きの要領でパターン形成されている。抵抗発熱体14は、電圧を印加すると発熱してウエハWを加熱する。抵抗発熱体14が配線された領域は、平面視で円形でありウエハ載置面11aに平行な面に設けられている。なお、「平行」とは、完全に平行な場合のほか、完全に平行でなくても公差の範囲内であれば平行とみなす。
【0018】
第2セラミック基体12は、第1セラミック基体11のウエハ載置面11aの反対側の面(下面)側に配置されている。第2セラミック基体12は、第1セラミック基体11と同形状で、第1セラミック基体11と同じ材料のセラミックで形成されている。第2セラミック基体12は、接続部材20を埋設している。
【0019】
金属接合層13は、第1セラミック基体11の下面と第2セラミック基体12の上面とを接合する。そのため、第1セラミック基体11の下面を接合面11b、第2セラミック基体12の上面を接合面12aと称する。金属接合層13は、例えばAl-Si-Mg系又はAl-Mg系材料などのAl含有材料で構成されている。金属接合層13の厚みは、特に限定するものではないが、1~300μmが好ましく、50~150μmがより好ましい。また、金属接合層13の外周は第1セラミック基体11の外周からはみ出していないことが好ましい。金属接合層13は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。ここで、TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。金属接合層13は、本実施形態では静電電極として用いられる。第1セラミック基体11の接合面11bからウエハ載置面11aまでの領域(第1セラミック基体11の全体)は誘電体層28として機能する。この金属接合層13に直流電圧が印加されるとウエハ載置面11aに載置されたウエハWはウエハ載置面11aに吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面11aへの吸着固定が解除される。
【0020】
接続部材20は、上底20aと下底20bとを備え、上底20aが金属接合層13と接触する状態で第2セラミック基体12に埋設されている。接続部材20の形状は、接続部材20を上底20aと平行な面で切断したときの断面積が上底20a側から下底20b側に向かって大きくなる部分を有している。本実施形態では、接続部材20の形状は、断面積が上底20aから下底20bに向かって大きくなる形状であり、具体的には円錐台形状である。接続部材20は、例えば、炭化タングステンにルテニウム合金(例えば、RuAl)を添加した混合材料やMoなどの金属によって作製されるバルク体(塊状体)である。接続部材20の上底20aの表面積は、下底20bの表面積の50%以上98%以下であることが好ましい。
【0021】
給電端子30は、一方の端面30tが接続部材20の下底20bに電気的に接続され、他方の端面が図示しない外部の直流電源に接続されている。給電端子30は、例えばNiやMoなどの金属により形成され、第2セラミック基体12の下面12bに形成された穴33(
図4参照)に挿入されている。給電端子30の端面30tは、端子端面接合層31により、接続部材20の下底20bに接合されている。端子端面接合層31は、セラミック粒子と金属ロウ材とを含む層であり、セラミック粒子同士の隙間に金属ロウ材が入り込んだ層である。セラミック粒子としては、アルミナセラミック粒子や窒化アルミニウムセラミック粒子が好ましい。端子端面接合層31は、セラミック粒子同士の隙間に金属ロウ材が充填されているため、給電端子30と接続部材20とを電気的に接続する。給電端子30の側面30sは、端子側面接合層32により、穴33の側面33sに接合されている。端子側面接合層32は、金属ロウ材で形成された層である。金属ロウ材としては、例えば、Au-Niロウ材、Alロウ材、Agロウ材などが好ましい。
【0022】
次に、
図4を用いて、静電チャック10の製造方法について説明する。
図4は、静電チャック10の製造方法の一例を示す説明図である。
【0023】
まず、ウエハ載置面11aを有し、抵抗発熱体14を埋設した第1セラミック基体11と接続部材20を埋設した第2セラミック基体12とを用意する。具体的には、
図4(a)に示すように、抵抗発熱体14を埋設した円盤状の第1セラミック成形体51(第1セラミック基体11の前駆体)及び接続部材20を埋設した円盤状の第2セラミック成形体52(第2セラミック基体12の前駆体)を作製する。この工程を工程(1)と称する。工程(1)では、第1セラミック成形体51及び第2セラミック成形体52は、モールドキャスト法などにより作製される。ここで、「モールドキャスト法」とは、セラミック原料粉末とモールド化剤とを含むセラミックスラリーを成形型内に注入し、その成形型内でモールド化剤を化学反応させてセラミックスラリーをモールド化させることにより成形体を得る方法をいう。モールド化剤としては、例えば、イソシアネート及びポリオールを含み、ウレタン反応によりモールド化するものとしてもよい。続いて、
図4(b)に示すように、第1セラミック成形体51及び第2セラミック成形体52を、それぞれ厚さ方向に圧力を加えながらホットプレス焼成し、第1セラミック基体11及び第2セラミック基体12を作製する。この工程を、工程(2)と称する。これらの工程(1)及び工程(2)が、本発明のウエハ載置台の製造方法における工程(a)に相当する。
【0024】
次に、
図4(c)に示すように、第2セラミック基体12に埋設された接続部材20の下底20bが露出するように、第2セラミック基体12の下面12bに穴33を形成する。この工程を、工程(3)と称する。工程(3)では、穴33は、研削加工や切削加工やブラスト加工により形成される。なお、工程(3)では、第2セラミック基体12に穴33を形成する際に接続部材20に加わる負荷が小さいため、接続部材20は第2セラミック基体12から抜け難い。
【0025】
次に、穴33に給電端子30を挿入する。具体的には、
図4(d)に示すように、穴33が上を向くように第2セラミック基体12を配置し、複数のセラミック粒子で構成されるセラミック粉末41及び金属ロウ材42を接続部材20の下底20bに配置した状態で、給電端子30を穴33に挿入する。この工程を、工程(4)と称する。工程(4)では、セラミック粉末41として、例えば、アルミナセラミックや窒化アルミニウムセラミックなどを用いることができる。また、工程(4)では、金属ロウ材42として、Au-Niロウ材、Alロウ材、Agロウ材などを用いることができる。
【0026】
次に、給電端子30と接続部材20とを接続する。具体的には、まず、金属ロウ材42の温度が融点以上になるように第2セラミック基体12を加熱し、金属ロウ材42を融解させる。融解した金属ロウ材42は、セラミック粉末41に浸透してセラミック粉末41のセラミック粒子同士の隙間を充填すると共に、給電端子30の側面30sと穴33の側面33sと間に入り込む。そして、冷却して金属ロウ材42を固化させる。すると、
図4(e)に示すように、セラミック粒子同士の隙間に金属ロウ材42が入り込んだ端子端面接合層31が形成され、金属ロウ材42により端子側面接合層32が形成される。これにより、給電端子30の端面30tが接続部材20の下底20bに接合されると共に、給電端子30の側面30sが穴33の側面33sに接合される。この工程を、工程(5)と称する。工程(5)では、給電端子30の側面30sが第2セラミック基体12の穴33の側面33sに固定される。そのため、給電端子30ごと接続部材20が第2セラミック基体12から抜けてしまうのを防止することができる。
【0027】
次に、穴33が下を向くように第2セラミック基体12を配置した後、
図4(f)に示すように、接続部材20の上底20aが露出するように、第2セラミック基体12の上面12cを研削加工し、接合面12aを形成する。この工程を、工程(6)と称する。また、工程(6)が、本発明のウエハ載置台の製造方法における工程(b)に相当する。接続部材20は、接続部材20を上底20aと平行な面で切断したときの断面積が上底20a側から下底20b側に向かって大きくなる部分を有している。本実施形態では、接続部材20の形状は、断面積が上底20a側から下底20b側に向かって大きくなる形状であり、具体的には円錐台形状である。そのため、接続部材20の形状が円柱である場合と比べると、第2セラミック基体12と接続部材20との接触面積が大きくなり、第2セラミック基体12と接続部材20との密着性が向上する。よって、工程(6)において第2セラミック基体12にクラックが発生し難い。また、工程(6)において、接続部材20に負荷が加わったとしても、接続部材20の側面が第2セラミック基体12に引っかかるため、抜け難い。
【0028】
そして、第1セラミック基体11のウエハ載置面11aとは反対側の接合面11bと第2セラミック基体12の接合面12aとを金属接合する。具体的には、まず、
図4(g)に示すように、第2セラミック基体12の接合面12aに、第2セラミック基体12と同径の平板状の金属接合材53を載せ、その上に第1セラミック基体11の接合面11bが金属接合材53と接触するように
第1セラミック基体11を載せる。このようにして、第1セラミック基体11と第2セラミック基体12との間に金属接合材53が挟まれた状態の積層体70を作製する。この工程を、工程(7)と称する。工程(7)では、金属接合材53として、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。続いて、金属接合材53の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体70を加圧して、第1セラミック基体11と第2セラミック基体12とをTCB接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材53が金属接合層13になり、静電チャック10を得る。この工程を、工程(8)と称する。これらの工程(7)及び工程(8)が、本発明のウエハ載置台の製造方法における、工程(c)に相当する。
【0029】
次に、本実施形態の静電チャック10の使用例について説明する。この静電チャック10のウエハ載置面11aにウエハWを載置し、金属接合層13とウエハWとの間に電圧を印加することによりウエハWを静電気的な力によってウエハ載置面11aに吸着する。この状態で、ウエハWにプラズマCVD成膜を施したりプラズマエッチングを施したりする。また、抵抗発熱体14に電圧を印加してウエハWを加熱したり、静電チャック10に接合された図示しない冷却板の冷媒通路に冷媒を循環してウエハWを冷却したりすることにより、ウエハWの温度を一定に制御する。
【0030】
以上説明した本実施形態の静電チャック10によれば、第2セラミック基体12に埋設された接続部材20は、その接続部材20を上底20aと平行な面で切断したときの断面積が上底20a側から下底20b側に向かって大きくなる部分を有している。そのため、例えば、接続部材20の形状が円柱である場合と比べると、接続部材20の側面の面積が大きくなるため、第2セラミック基体12と接続部材20との接触面積が大きくなり、第2セラミック基体12と接続部材20との密着性が向上する。よって、静電チャック10を製造する際に、接続部材20が埋設された第2セラミック基体12のうち金属接合層13が形成される面を研削して接続部材20の上底20aを露出させる工程が含まれていたとしても、第2セラミック基体12にクラックが発生し難くなる。また、その工程で接続部材20に負荷が加わったとしても、接続部材20の側面が第2セラミック基体12に引っかかるため、抜け難くなる。
【0031】
また、第2セラミック基体12は、第2セラミック基体12の下面に給電端子30を挿入するための穴33を備えており、給電端子30の側面30sは、穴33の側面33sに接合されている。このように給電端子30の側面30sが第2セラミック基体12の穴33の側面33sに固定されるため、給電端子30ごと接続部材20が第2セラミック基体12から抜けてしまうのを防止することができる。
【0032】
更に、接続部材20の形状は、接続部材20を上底20aに平行な面で切断したときの断面積が上底20aから下底20bに向かって大きくなる形状(ここでは円錐台形状)であるため、接続部材20を容易に作製することができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、金属製のバルク体(塊状体)で作製された接続部材20を利用して、給電端子30と金属接合層13とを接続したがこれに限定されない。例えば、
図5に示すように、互いに直径の異なる金属メッシュM1~M6が、給電端子30側から直径の大きい順に多段(ここでは6段)に積層されて形成された接続部材120を用いて、給電端子30と金属接合層13とを接続してもいい。こうすれば、静電チャック10が加熱されたり冷却されたりしたとしても接続部材20は金属メッシュ製のため伸縮しやすく、金属メッシュM1~M6の隙間にセラミックが入り込むため熱膨張係数が第2セラミック基体12に近くなる。したがって、第2セラミック基体12にクラックが発生し難くなる。なお、
図5において、上述した実施形態と同様の構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0035】
上述した実施形態の静電チャック10では、円錐台形状の接続部材20を採用したがこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、接続部材220の形状を、接続部材220を上底220aに平行な面で切断したときの断面積が上底220a側から下底220b側に向かって大きくなる半球台形状(又は半球を底面に平行な2つの面で切断した形状)としてもよい。あるいは、
図7に示すように、接続部材320の形状を、接続部材320を上底320aに平行な面で切断したときの断面積が上底320a側から下底320b側に向かって大きくなるコニーデ形状(円錐台の側面が内側に入り込んだ形状)としてもよい。あるいは、
図8に示すように、接続部材420を上底420aと平行な面で切断したときの断面積が上底420a側から下底420b側に向かって大きくなる部分420cを有する樽形状としてもよい。あるいは、
図9に示すように、接続部材520を上底520aと平行な面で切断したときの断面積が上底520a側から下底520b側に向かって大きくなる部分520cを有する形状(円柱の側面が内側に入り込んだ形状)としてもよい。あるいは、
図10に示すように、接続部材620を上底620aと平行な面で切断したときの断面積が上底620a側から下底620b側に向かって大きくなる部分620cを有する形状(樽形状の側面下方が膨らんだ形状)としてもよい。
図6~
図10では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。接続部材220,320,420,520,620は、接続部材の形状が円柱である場合と比べると、側面の面積が大きくなるため、第2セラミック基体12の下面12bを研削して上底220a,320a,420a,520a,620aを露出させる工程が含まれていたとしても、第2セラミック基体12にクラックが発生し難くなる。また、その工程で接続部材220,320,420,520,620に負荷が加わったとしても、接続部材220,320,420,520,620の側面が第2セラミック基体12に引っかかるため、抜け難くなる。
【0036】
上述した実施形態では、金属接合層13を静電電極として用いたがこれに限定されない。例えば、グランド電極として用いてもよい。この場合、金属接合層13はグランドに接続されており、静電電極を抵抗発熱体14と平行となるように第1セラミック基体11に埋設してもよい。
【0037】
上述した実施形態では、セラミック粉末41と金属ロウ材42とによって構成された端子側面接合層32を介して、給電端子30の端面30tと接続部材20の下底20bとを接合したがこれに限定されない。例えば、端子側面接合層32は、セラミック粉末41を含まず金属ロウ材42で構成されていてもよい。この場合、工程(4)では、接続部材20の下底20bにセラミック粉末41を配置せず、金属ロウ材42を配置した状態で穴33に給電端子30を挿入し、上述した実施形態と同様に、金属ロウ材42を融解させた後、冷却して固化させればよい。
【0038】
上述した実施形態では、静電チャック10を製造する際に、給電端子30を接続部材20に接続した後に、第2セラミック基体12の上面12cを研削して、接合面12aを形成し、第1セラミック基体11と第2セラミック基体12とを接合したがこれに限定されない。例えば、第2セラミック基体12の上面12cを研削して接合面12aを形成した後に、下面12bに穴33を設け、給電端子30を接続部材20に接続し、第1セラミック基体11と第2セラミック基体12とを金属接合するものとしてもよい。あるいは、第2セラミック基体12の上面12cを研削して接合面12aを形成し、第1セラミック基体11と第2セラミック基体12とを金属接合した後に、下面12bに穴33を形成し、給電端子30を接続部材20に接続するものとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態において、第1セラミック基体11又は第2セラミック基体12にRF電極を埋設していてもよい。RF電極は、プラズマを発生する際に利用する電極である。
【符号の説明】
【0040】
10 ウエハ載置台、11 第1セラミック基体、11a ウエハ載置面、11b 接合面、12 第2セラミック基体、12a 接合面、12b 下面、12c 上面、13 金属接合層、14 抵抗発熱体、20、120,220,320,420,520,620 接続部材、20a,220,320a,420a,520a,620a 上底、20b,220b,320b,420b,520b,620b 下底、28 誘電体層、30 給電端子、30s 側面、30t 端面、31 端子端面接合層、32 端子側面接合層、33 穴、33s 側面、41 セラミック粉末、42 金属ロウ材、51 第1セラミック成形体、52 第2セラミック成形体、53 金属接合材、70 積層体、420c、520c、620c 部分、M1~M6 金属メッシュ、W ウエハ。