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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/04 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H02K9/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021022169
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124419
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 勧也
(72)【発明者】
【氏名】川島 琢也
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-83903(JP,A)
【文献】実開平5-15661(JP,U)
【文献】実開平1-150459(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と回転子とを格納するハウジングと、
前記ハウジングを外から覆うファンカバーと、
前記ハウジングの軸方向端面に取り付けられるエンドブラケットと、
前記ファンカバーに設けられた冷却ファンと、
前記ファンカバーの出力軸側端面は軸方向へ延伸する凸部を有し、
出力軸側の前記エンドブラケットには、前記ファンカバーの凸部と相対する凹形状の第1の排気用開口部が形成され、
反出力軸側の前記エンドブラケットには、第1の排気用開口部と反対側に第2の排気用開口部が形成される回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記ファンカバーと同一面に複数の冷却ファンが配置される回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
前記冷却ファンからの冷却風は、前記ファンカバーと前記ハウジングの間の隙間を通り、第1の冷却ファンからの冷却風の流路と、第2の冷却ファンからの冷却風の流路とは、異なる流路である回転電機。
【請求項4】
請求項2に記載の回転電機において、
前記冷却ファンからの冷却風は、前記ファンカバーと前記ハウジングの間の隙間を通り、
出力軸側に配置される第1の冷却ファンからの冷却風と、反出力軸側に配置される第2の冷却ファンからの冷却風とを分断するに仕切りを配置する回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機において、
前記ファンカバーは矩形であり、
矩形の四隅に開口部が形成される回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関し、特に回転電機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は大出力化や大トルク化を実現しようとする場合、その体格は一般的に大型化する傾向にある。回転電機の大型化に伴い、回転電機の組み込まれる機械装置においても大型化が必要となるため、機械装置の設置スペースの制約,高コスト化などの課題が生じる。
【0003】
回転電機は、駆動状態で外部負荷に対応するトルクを発生させることで想定の動作が得られる。この時、コイル通電により生じる銅損や回転磁束に起因する鉄心内部で生じる鉄損を主とした損失が回転電機内部で発生し、熱として消費される。回転電機内部で発生した熱は熱伝導よりハウジング表面より放熱される。このハウジング表面の排熱を迅速に行なうことにより、ハウジングが冷却されるため、回転電機内部の温度上昇を抑制することが可能となる。故に、回転電機の小型化が可能となり、低コスト化が図れる。また、同体格とした場合は、高出力化や大トルク化が可能となる。永久磁石型回転電機においては、回転電機内部の温度上昇を抑制されることから、永久磁石の温度上昇が抑制され、永久磁石の永久減磁に対する耐量が拡大するため、永久磁石の薄型化が可能となり、更なる低コスト化が図れる。
【0004】
ハウジング表面の排熱による冷却効率の向上のために、冷却用として他励ファンがしばしば採用される。その冷却構造としては、回転電機の側面全体を覆うように設けられたファンカバーの各面に複数台の冷却ファンを設置する構造が多く採用される。冷却ファンより吐き出された冷却風が回転電機のハウジングとファンカバーとで作られる空間を通過することで、回転電機のハウジング表面の排熱を迅速に行われ、ハウジングが冷却され、回転電機の内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0005】
特許文献1には回転電機の冷却構造が開示されている。特許文献1では、複数台の冷却ファンを回転電機の軸方向に並列に配置し、且つ、所定の角度だけ傾斜した状態で設置することで、並列に配置された夫々の冷却ファンから吐き出される冷却風の相互干渉を防止することより、冷却効率を向上させる構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-220854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されている構造は、所定の角度だけ傾斜した状態で冷却ファンを設置することで、複数台の冷却ファンから吐き出された夫々の冷却風は同一の方向に向かわせることで、冷却風の相互干渉を防止する構造である。しかしながら、所定の角度だけ傾斜した状態で冷却ファンを設置するため、冷却ファンを含めた回転電機の外形寸法は大きくなってしまい、回転電機の小型化を実現することが困難となる課題があった。
【0008】
本発明の目的は、回転電機の外形寸法は大きくすることなく、ハウジング表面の排熱をより迅速に行うことで冷却効率を向上させる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一例としては、固定子と回転子とを格納するハウジングと、前記ハウジングを外から覆うファンカバーと、前記ハウジングの軸方向端面に取り付けられるエンドブラケットと、前記ファンカバーに設けられた冷却ファンと、前記ファンカバーの出力軸側端面は軸方向へ延伸する凸部を有し、出力軸側の前記エンドブラケットには、前記ファンカバーの凸部と相対する凹形状の第1の排気用開口部が形成され、反出力軸側の前記エンドブラケットには、第1の排気用開口部と反対側に第2の排気用開口部が形成される回転電機である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転電機の外形寸法は大きくすることなく、ハウジング表面の排熱をより迅速に行うことで冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の回転電機の平面図である。
図2】比較例の回転電機における冷却風の流れを示す図である。
図3図1における冷却風の流れを示す図である。
図4】実施例2の回転電機の断面形状を示す図である。
図5図4で仕切り板が無い場合の冷却風の流れを示す図である。
図6】実施例3の回転電機の平面図である。
図7図6で仕切り板が無い場合の冷却風の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
実施例1を、図1を用いて説明する。図1は、実施例1の回転電機の平面図である。実施例1に示す回転電機の構造は、固定子と回転子とを格納するハウジング5と、ハウジング5を外から覆うファンカバー4と、ハウジング5の軸方向端面に取り付けられるエンドブラケット2、3と、ファンカバー4に設けられた冷却ファン1とを備える。
【0013】
ハウジング5の軸方向端部には、凹形状の排気用開口部6が設けられた出力軸側(負荷側)エンドブラケット2と反出力軸側(反負荷側)エンドブラケット3とが配置される。また、回転電機の側面全体を覆うようにファンカバー4が取り付けられ、ファンカバー4の各面には複数台の冷却ファン1が同一平面上に設置されている構造である。図1では、1つの側面が矩形であるファンカバー4に2台の冷却ファン1が配置されている。
【0014】
ファンカバー4の出力軸側端面は軸方向へ延伸する凸部を有し、出力軸側のエンドブラケット2には、ファンカバー4の凸部と相対する位置に凹形状の第1の排気用開口部6が形成され、反出力軸側のエンドブラケット3には、第1の排気用開口部6(図1の右側)と相対する反対側に第2の排気用開口部6(図1の左側)が形成される。なお、ファンカバー4の各面に設置される複数台の冷却ファンは、図1では各面に2台ずつ示しているがこれに限らない。
【0015】
本実施例では、回転電機のハウジングが4つの側面を備え、その1側面が矩形である場合には、ハウジング5の側面とは隙間を介して近接した位置に4面分の矩形のファンカバー4を配置することで、ハウジング5とファンカバー4との間の隙間に、冷却ファン1からの冷気を効率よく循環させることができる。ハウジング5の外径の形状が円筒であれば、ハウジングを囲うように円筒のファンカバーであってもよい。また、ハウジングの断面形状は、四角形に限らず、その他の多角形であってもよい。
【0016】
図2は、比較例としての回転電機における冷却風7の流れを示す。比較例の構造では、回転電機のハウジング表面に吹き付けるように設置された冷却ファン1から吐き出された冷却風7は、ファンカバー4の内面側を通過し、回転電機を取り付けるために切り開かれたファンカバー4の出力軸側四隅の開口部や反出力軸側エンドブラケット3の四隅の開口部などより排気される。しかしながら、実施例1における各エンドブラケットに設けられた凹形状の排気用開口部6に対応する部分は完全に遮風されているため、閉塞部8では通風抵抗が増大することから排気が迅速に行われず、その付近ではハウジング5は十分には冷却されない。
【0017】
図3は、図1に示した実施例1の構造における冷却風の流れを示す図である。各エンドブラケットに凹形状の排気用開口部6を設けることで、図2に示す閉塞部8に対応する部分の通風抵抗を低減することが可能となる。そのため、回転電機を取り付けるためにボルトなどの固定具を挿入するため切り開かれたファンカバー4の出力軸側四隅の開口部からの冷却風7の排気だけではなく、より多くの冷却風7が閉塞部8を通過し、排気用開口部6から排気される。
【0018】
従って、図2に示す閉塞部8の暖められた空気は回転電機の外部に迅速に排出されるため、ハウジング表面の熱交換が加速化し、つまりは、回転電機内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0019】
本実施例は、特に大出力や大トルクを必要とする射出成形機やプレス機械などの工作機械装置の駆動用モータに有効である。
【0020】
本実施例によれば、回転電機の各面の軸方向端部に冷却風が排気される開口部を設けることで、ハウジング表面の排熱をより迅速に行うことで冷却効率を向上させつつ、且つ、回転電機の側面を覆うファンカバーの各面に設置する冷却ファンは同一平面に設置されるため、冷却ファンを含めた回転電機の外形寸法の拡大を回避することが可能となる。
【実施例2】
【0021】
実施例2を、図4を用いて説明する。図4は、回転電機の軸方向に平行な断面形状を示す。実施例2は、ファンカバー4の外表面に設置される複数台の冷却ファン1の各々の間に相対するファンカバー4の内面の位置に、各冷却ファン1から吐き出された冷却風7を出力軸側エンドブラケット2に設けられた排気用開口部6に促すように成形された仕切り板9が設けられた構造である。
【0022】
本実施例では、冷却ファン1からの冷却風は、ファンカバー4とハウジング5の間の隙間を通り、第1の冷却ファンからの冷却風の流路と、第2の冷却ファンからの冷却風の流路とは、図4に示すように、上記した隙間の上下で異なる流路であるため、冷却風7の相互干渉が回避される。
【0023】
図4では出力軸側エンドブラケット2の排気用開口部6に促すように成形された仕切り板9を示すが、反出力軸側エンドブラケット3の排気用開口部に促すように成形された仕切り板9でも良い。
【0024】
図5は、図4におけるファンカバー4の内面の仕切り板9が無い場合の断面形状を示す図である。図5は、実施例1である図1の回転電機の軸方向に平行な断面形状を示す図でもある。
【0025】
仕切り板9が無い場合、ファンカバー4の外表面に設置された複数台の冷却ファン1より吐き出された夫々の冷却風7は相互で干渉する。冷却風7の干渉部10付近の暖められた空気は、その相互干渉により回転電機の外部へ排出されづらいため、この付近ではハウジング5の冷却が十分に行えず冷却性能が低下する。
【0026】
この冷却風7の相互干渉を回避するためには、図4に示すように、排気用開口部6へ促すように成形された仕切り板9をファンカバー4の内面に配置する。仕切り板9を配置することにより、出力軸側に位置する冷却ファン1から吐き出された冷却風7はファンカバー4内表面付近を通過し、反出力軸側に位置する冷却ファン1から吐き出された冷却風7は回転電機のハウジング表面付近を通過する。
【0027】
仕切り板9を通過した各冷却風7は合流し、排気用開口部6より排出される。つまりは、仕切り板9を配置することにより冷却風7の相互干渉が回避されるため、ハウジング5の表面付近の暖められた空気を回転電機の外部へ迅速に排出することが可能となり、冷却効率を向上させることが可能となる。
【実施例3】
【0028】
実施例3を、図6を用いて説明する。図6は、実施例3の回転電機の平面図である。実施例3は、ファンカバー4の外表面に設置される複数台の冷却ファン1の間に相対するファンカバー4の内面の位置に、仕切り板9が設けられた構造である。
【0029】
本実施例では、冷却ファン1からの冷却風は、ファンカバー4とハウジング5の間の隙間を通り、出力軸側に配置される第1の冷却ファンからの冷却風と、反出力軸側に配置される第2の冷却ファンからの冷却風とを分断するに仕切り9を配置している。仕切り板9を配置することにより冷却風7の相互干渉が回避される。
【0030】
実施例3における仕切り板9は、反出力軸に位置する冷却ファン1から吐き出され、出力軸側に向かう冷却風7がファンカバー4の四隅に切り開かれた出力軸側の所定の開口部へ促すように配置され、一方で、出力軸側に位置する冷却ファン1から吐き出された反出力軸側に向かう冷却風7が反出力軸側エンドブラケット3の四隅の所定の開口部へ促すように配置された構造である。
【0031】
図7は、図6(実施例3)におけるファンカバー4の内面の仕切り板9が無い場合を示す図である。仕切り板9が無い場合、ファンカバー4の外表面に設置された複数台の冷却ファン1より吐き出された夫々の冷却風7は相互で干渉する。冷却風7の干渉部10付近の暖められた空気は回転電機の外部へ排出されづらいため、この付近ではハウジング5の冷却は十分に行えず、冷却性能が低下する。
【0032】
冷却風7の相互干渉を回避するために、図6に示すように、仕切り板9をファンカバー4の内面に配置する。出力軸側に位置する冷却ファン1から吐き出された干渉部10付近の冷却風7は、仕切り板9に沿い、反出力軸側エンドブラケット3の四隅の所定の開口部より排出される。
【0033】
一方で、反出力軸側に位置する冷却ファン1から吐き出された干渉部10付近の冷却風7は、同様に、ファンカバー4の出力軸側四隅の開口部より排出される。つまりは、仕切り板9を配置することにより冷却風7の相互干渉が回避されるため、ハウジング5表面付近の暖められた空気を回転電機の外部へ迅速に排出することが可能となり、冷却効率を向上させることが可能となる。
【0034】
本実施例によれば、実施例2に比べて、ファンカバー4とハウジング5の間の冷却風の高さを低くできるので、その分、回転電機の外径を小さくできる。
【符号の説明】
【0035】
1…冷却ファン
2…出力軸側エンドブラケット
3…反出力軸側エンドブラケット
4…ファンカバー
5…ハウジング
6…排気用開口部
7…冷却風
8…冷却風の閉塞部
9…ファンカバー内面の仕切り板
10…冷却風の干渉部
11…出力軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7