(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/03 20120101AFI20240109BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20240109BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240109BHJP
H02K 5/06 20060101ALI20240109BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240109BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F16H57/03
B60K6/405
B60K17/04 G
H02K5/06
H02K7/116
H02K7/14 B
(21)【出願番号】P 2021027028
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 笙
(72)【発明者】
【氏名】信安 清太郎
(72)【発明者】
【氏名】舘野 啓之
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄紀
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-45981(JP,A)
【文献】特開2018-70115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/03
B60K 17/04
B60K 6/405
H02K 5/06
H02K 7/116
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータおよびロータを含む電動機と、前記電動機を収容するケースと、ホイールに連結されるドライブシャフトとを含み、車幅方向からみて、前記ケースがサイドメンバと部分的に重なり合うように車両に搭載される駆動装置において、
前記ケースは、それぞれ前記車幅方向に突出すると共に放射状に延在する複数の放射リブと、前記車幅方向に突出すると共に前記複数の放射リブの中心側端部と結合する連結リブとを含み、
前記複数の放射リブの少なくとも一部は、前記車幅方向からみて前記サイドメンバと重なり合い、かつ前記ホイールと重なり合わない前記ケースの第1領域に達する駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記連結リブは、環状に延在するように前記ケースの前記第1領域以外の領域に形成され、
前記複数の放射リブは、それぞれ前記連結リブの外周面から外方に延在する駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の駆動装置において、
前記ケースは、前記車幅方向からみて、前記サイドメンバおよび前記ホイールの双方と重なり合わない第2領域を更に含み、
前記連結リブの少なくとも一部は、前記ケースの前記第2領域に含まれ、
前記複数の放射リブの少なくとも一部は、前記第2領域を越えて前記第1領域に達する駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置において、
前記連結リブは、前記ロータの軸心が前記連結リブの内側を通るように前記ケースの前記第2領域に形成される駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の駆動装置において、
前記ケースに圧入されるアウターレースを含むと共に前記電動機の前記ロータを回転自在に支持する軸受を更に備え、
前記連結リブは、前記車幅方向からみて、前記軸受の前記アウターレースと少なくとも部分的に重なるように形成されているバックアップ座を含む駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の駆動装置において、
前記ケースは、前記電動機を収容するケース本体と、前記ケース本体の前記車幅方向における一端を覆うカバーとを含み、
前記複数の放射リブおよび前記連結リブは、前記カバーの外表面に形成されている駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動装置において、
少なくとも1つのポンプロータを含むオイルポンプを更に備え、
前記カバーは、前記オイルポンプの前記ポンプロータを収容する凹部を含み、
前記連結リブは、前記車幅方向からみて、前記凹部を少なくとも部分的に包囲するように前記カバーに形成される駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動装置において、
前記ケース内に収容されると共に、前記車両の内燃機関、前記電動機の前記ロータおよび前記ドライブシャフトに連結されるプラネタリギヤと、
前記ケース内に収容されると共に、前記ドライブシャフトに連結される第2の電動機とを更に備え、
前記電動機の前記ロータは、中空に形成され、
前記オイルポンプの前記ポンプロータは、前記電動機の前記ロータ内に挿通されるシャフトおよび前記プラネタリギヤの回転要素を介して前記内燃機関に連結される駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機および当該電動機を収容するケースを含むと共に、車両に搭載される駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを含むと共にハイブリッド車両や電気自動車等に動力発生源として搭載される駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この駆動装置において、モータは、当該モータの回転を減速させる減速装置や、モータ側からのトルクを車軸(ドライブシャフト)に伝達する差動装置と共にケース(ハウジング)の内部に収容される。そして、当該駆動装置は、モータ軸および差動装置の軸心(差動軸)が車両の左右方向(車幅方向)に延在するように当該車両に搭載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような駆動装置を搭載した車両が衝突(前突や側突)を受けた場合、当該車両のサイドメンバが変形して駆動装置のケース(ハウジング)に直接干渉したり、ポール等の他の構造物が車両側方から駆動装置のケースに直接干渉したりするおそれがある。従って、上述のような駆動装置では、衝突が発生した際の衝撃に耐えられるように高電圧部品であるモータを収容するケースの強度をより向上させることが求められる。
【0005】
そこで、本開示は、電動機を含むと共に車両に搭載される駆動装置のケースの強度をより向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の駆動装置は、ステータおよびロータを含む電動機と、前記電動機を収容するケースと、ホイールに連結されるドライブシャフトとを含み、車幅方向からみて、前記ケースがサイドメンバと部分的に重なり合うように車両に搭載される駆動装置において、前記ケースが、それぞれ前記車幅方向に突出すると共に放射状に延在する複数の放射リブと、前記車幅方向に突出すると共に前記複数の放射リブの中心側端部と結合する連結リブとを含み、前記複数の放射リブの少なくとも一部が、前記車幅方向からみて前記サイドメンバと重なり合い、かつ前記ホイールと重なり合わない前記ケースの第1領域に達するものである。
【0007】
本開示の駆動装置において、電動機を収容するケースは、それぞれ車幅方向に突出すると共に放射状に延在する複数の放射リブと、車幅方向に突出すると共に複数の放射リブの中心側端部と結合する連結リブとを含む。更に、複数の放射リブの少なくとも一部は、車幅方向からみてサイドメンバと重なり合い、かつホイールと重なり合わないケースの第1領域に達する。かかる駆動装置を含む車両が前突や側突といった衝突を受けた際、サイドメンバは、連結リブに連なる放射リブの第1領域に含まれた部分に当たることになる。これにより、ケースの第1領域にサイドメンバが衝突した際に、当該サイドメンバから放射リブに加えられた応力を高い強度を有する連結リブ側に逃がすことが可能となり、当該第1領域における応力を低下させて第1領域での破損等の発生を良好に抑制することができる。この結果、電動機を含むと共に車両に搭載される駆動装置のケースの強度をより向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の駆動装置を含む車両を示す概略構成図である。
【
図3】本開示の駆動装置のケースを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の駆動装置としてのトランスアクスル20を含む車両1を示す概略構成図である。同図に示す車両1は、エンジン(内燃機関)10と、モータジェネレータMG1およびMG2を含む共にエンジン10に連結される駆動装置としてのトランスアクスル20と、図示しないインバータ等を介してトランスアクスル20のモータジェネレータMG1およびMG2と電力をやり取りする図示しないバッテリ(蓄電装置)とを含むハイブリッド車両である。
【0011】
エンジン10は、図示しないインジェクタから噴射されるガソリン(炭化水素系燃料)と空気との混合気を複数の燃焼室内で燃焼させ、混合気の燃焼に伴うピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動へと変換するガソリンエンジンである。ただし、エンジン10は、ディーゼルエンジンやLPGエンジンであってもよい。
【0012】
トランスアクスル20は、
図1に示すように、モータジェネレータMG1およびMG2に加えて、プラネタリギヤ30と、これらの要素を収容するケース40とを含む。モータジェネレータMG1(第1の電動機)は、ステータS1およびロータR1を含む同期発電電動機(三相交流電動機)であり、主に、負荷運転されるエンジン10からの動力の少なくとも一部を電力に変換する発電機として作動する。モータジェネレータMG2(第2の電動機)は、ステータS2およびロータR2を含む同期発電電動機(三相交流電動機)であり、主に、バッテリからの電力およびモータジェネレータMG1からの電力の少なくとも何れか一方により駆動されて駆動トルクを発生する電動機として作動する。モータジェネレータMG1およびMG2は、図示しない電力制御装置を介して上記バッテリと電力をやり取りすると共に、当該電力制御装置を介して相互に電力をやり取りする。
【0013】
プラネタリギヤ30は、サンギヤ(第1回転要素)31と、リングギヤ(第2回転要素)32と、複数のピニオンギヤ33を回転自在に支持するプラネタリキャリヤ(第3回転要素)34とを含む差動回転機構である。
図1に示すように、サンギヤ31は、中空のロータシャフトRSを介してモータジェネレータMG1のロータR1に連結され、プラネタリキャリヤ34は、ダンパ機構25を介してエンジン10のクランクシャフトに連結される。リングギヤ32は、出力部材としてのカウンタドライブギヤ35と一体化されており、両者は、同軸かつ一体に回転する。
【0014】
カウンタドライブギヤ35は、当該カウンタドライブギヤ35に噛合するカウンタドリブンギヤ36、当該カウンタドリブンギヤ36と一体に回転するファイナルドライブギヤ(ドライブピニオンギヤ)37、ファイナルドライブギヤ37に噛合するファイナルドリブンギヤ(デフリングギヤ)39r、デファレンシャルギヤ39およびドライブシャフトDSを介して図示しないタイヤと共に左右の駆動輪を構成するホイールWに連結される。トランスアクスル20、すなわちプラネタリギヤ30、カウンタドライブギヤ35からファイナルドリブンギヤ39rまでのギヤ列およびデファレンシャルギヤ39は、エンジン10とモータジェネレータMG1とを互いに連結すると共に、動力発生源としてのエンジン10の出力トルクの一部をドライブシャフトDSおよびホイールWに伝達する。
【0015】
また、モータジェネレータMG2のロータR2には、ドライブギヤ38が一体回転するように連結(固定)される。当該ドライブギヤ38は、カウンタドリブンギヤ36よりも少ない歯数を有し、カウンタドリブンギヤ36に噛合する。これにより、モータジェネレータMG2は、ドライブギヤ38、カウンタドリブンギヤ36、ファイナルドライブギヤ37、ファイナルドリブンギヤ39rおよびデファレンシャルギヤ39を介して左右のドライブシャフトDSおよびホイールWに連結される。すなわち、モータジェネレータMG2は、単独あるいはエンジン10と協働して、ドライブシャフトDSおよびホイールWに駆動トルク(駆動力)を出力する動力発生装置として機能すると共に、車両1の制動に際して回生制動トルクを出力する。
【0016】
トランスアクスル20のケース40は、第1ケース41、第2ケース42およびカバー(第3ケース)45を含む。第1ケース41は、複数のボルトを介してエンジン10のエンジンブロックに締結(結合)される。第2ケース42は、複数のボルトを介して第1ケース41に締結(結合)され、当該第1ケース41と共にケース本体を構成する。カバー45は、当該ケース本体の車幅方向における一端すなわち第2ケース42の開放端を覆うように複数のボルトを介して当該第2ケース42に締結(結合)される。本実施形態において、第1ケース41、第2ケース42およびカバー45は、何れも例えばアルミ合金や鋼材等により形成された鋳造品である。
【0017】
また、トランスアクスル20において、モータジェネレータMG1のロータシャフトRSは、
図2に示すように、軸受B1およびB2により回転自在に支持される。本実施形態において、軸受B1は、ロータシャフトRSに圧入により固定されるインナーレースILと、ケース40のカバー45に形成された筒状部451内に圧入により固定されるアウターレースOLとを含むボールベアリングである。また、軸受B2は、ロータシャフトRSに圧入により固定されるインナーレースILと、ケース40の第2ケース42の一部(
図2では、図示省略)に圧入により固定されるアウターレースOLとを含むボールベアリングである。
【0018】
更に、トランスアクスル20は、機械式のオイルポンプ50を含む。オイルポンプ50は、
図2に示すように、ポンプロータとしてのインナーロータ51およびアウターロータ52と、ケース40のカバー45と共にポンプハウジングを画成するポンプカバー53とを含む。インナーロータ51は、図示しない複数の外歯を有する外歯ギヤ(ドライブギヤ)であり、モータジェネレータMG1の中空のロータR1およびロータシャフトRS内に挿通されるキャリヤシャフトCSを介してプラネタリギヤ30のプラネタリキャリヤ34すなわちエンジン10のクランクシャフトに連結される。アウターロータ52は、インナーロータ51の外歯の総数よりも1つ多い数の内歯を有する内歯ギヤ(ドリブンギヤ)である。
【0019】
本実施形態において、インナーロータ51およびアウターロータ52は、ケース40のカバー45に形成されたロータ収容室450内に配置される。ロータ収容室450は、カバー45の内面から外面側に窪む断面円形状の凹部である。インナーロータ51およびアウターロータ52は、アウターロータ52の1つまたは複数の内歯がインナーロータ51の対応する外歯に噛合すると共に、アウターロータ52がインナーロータ51に対して偏心するようにロータ収容室450内に回転自在に配置される。また、ポンプカバー53は、ロータシャフトRSが挿通される貫通孔を有し、ロータ収容室450を塞ぐようにカバー45に固定される。これにより、キャリヤシャフトCSすなわちエンジン10からの動力によりインナーロータ51が回転すれば、オイルポンプ50によって図示しない作動油貯留部(オイルパン)内の作動油(ATF)がストレーナ(図示省略)を介して吸引されると共に昇圧された作動油が図示しない油圧制御装置に供給(吐出)される。
【0020】
図3は、トランスアクスル20のケース40をカバー45側からみた側面図である。同図に示すように、トランスアクスル20は、ケース40が車幅方向(紙面手前側)からみて車両1のサイドメンバ2と部分的に重なり合うと共に当該トランスアクスル20に連結されたホイールWと部分的に重なり合うように車両1に搭載される。すなわち、例えばカバー45が車両1の左側面側に位置する場合、当該カバー45の左側にサイドメンバ2が位置し、カバー45は、車幅方向からみて当該サイドメンバ2と部分的に重なり合う。
【0021】
また、
図3に示すように、ケース40は、車幅方向からみて、サイドメンバ2と重なり合い、かつホイールWと重なり合わない第1領域A1と、車幅方向からみて、サイドメンバ2およびホイールWの双方と重なり合わない第2領域A2とを含む。本実施形態において、ケース40の第1および第2領域A1,A2は、主としてカバー45により画成される。また、カバー45の第2領域A2に含まれる部分には、それぞれ車幅方向かつ外方(紙面手前側)に突出するように複数の放射リブ455および連結リブ457が鋳造により形成されている。カバー45の外表面上で、複数の放射リブ455は放射状に延在し、連結リブ457は当該複数の放射リブ455の中心側端部と結合する。本実施形態において、連結リブ457の一部は、
図3に示すように、第2領域A2の外部(
図3における右側の領域)に含まれる。ただし、連結リブ457の全体が第2領域A2に含まれてもよい。
【0022】
複数の放射リブ455は、それぞれ連結リブ457の外周面から予め定められた方向に沿って外方に延在する。また、複数の放射リブ455は、
図3に示すように、各々の先端部が第2領域A2を越えて第1領域A1に達するように形成された放射リブ455aおよび455bを含む。更に、本実施形態において、放射リブ455aは、
図3に示すように、連結リブ457に結合する本体部から分岐された分岐部456を含み、当該分岐部456の先端部も、第2領域A2を越えて第1領域A1に達する。
【0023】
本実施形態において、連結リブ457は、
図2および
図3に示すように、カバー45の外表面からモータジェネレータMG1のロータR1の軸心(
図2における一点鎖線参照)と同軸かつ外方に突出するように形成された環状(円筒状)の突起部である。すなわち、連結リブ457は、モータジェネレータMG1のロータR1の軸心が当該連結リブ457の内側を通るようにカバー45に形成され、車幅方向からみて、ロータR1の軸心の周りに環状に延在する。また、連結リブ457は、
図2からわかるように、車幅方向からみて、オイルポンプ50のインナーロータ51およびアウターロータ52を収容するロータ収容室450を包囲する。
【0024】
更に、連結リブ457は、軸受B1に対応した筒状部451と同軸に延在すると共に、当該筒状部451の内径よりも若干小さい外径を有し、車幅方向からみて、当該筒状部451に圧入される軸受B1のアウターレースOLと少なくとも部分的に重なり合う。加えて、連結リブ457の遊端部には、複数(本実施形態では、3つ)のバックアップ座458が周方向に間隔をおいて形成されている。各バックアップ座458は、平坦な端面を有すると共に連結リブ457の軸方向に突出する短尺の突起部であり、車幅方向からみて、軸受B1のアウターレースOLと少なくとも部分的に重なり合う。また、複数のバックアップ座458の端面は、モータジェネレータMG1のロータR1の軸心と直交する一平面内に含まれる。
【0025】
上述のように、トランスアクスル20では、モータジェネレータMG1等を収容するケース40が、車幅方向からみて、サイドメンバ2と重なり合い、かつホイールWと重なり合わない第1領域A1と、車幅方向からみて、サイドメンバ2およびホイールWの双方と重なり合わない第2領域A2とを含む。また、ケース40のカバー45は、それぞれ車幅方向かつ外方(紙面手前側)に突出すると共に第2領域A2で放射状に延在する複数の放射リブ455と、車幅方向に突出すると共に第2領域A2で複数の放射リブ455の中心側端部と結合する連結リブ457の少なくとも一部とを含む。これにより、トランスアクスル20では、サイドメンバ2およびホイールWの双方と重なり合わないケース40(カバー45)の第2領域A2の強度を良好に確保することが可能となる。
【0026】
更に、複数の放射リブ455のうち、放射リブ455a,455bの先端部および放射リブ455aの分岐部456は、第2領域A2を越えて第1領域A1に達する。これにより、車両1が前突や側突といった衝突を受けた際、サイドメンバ2は、連結リブ457に連なる放射リブ455a、455bおよび分岐部456に含まれた部分(
図3において点線で囲まれた部分参照)に当たる。従って、サイドメンバ2から当該放射リブ455a,455b等に加えられた応力を高い強度を有する連結リブ457側すなわち第2領域A2に逃がすことができる。
【0027】
これにより、ケース40(カバー45)の第1領域A1にサイドメンバ2が衝突した際に、当該第1領域A1における応力を低下させて第1領域A1でのカバー45の破損等の発生を良好に抑制することが可能となる。この結果、モータジェネレータMG1を含むと共に車両1に搭載されるトランスアクスル20のケース40の強度をより向上させることができる。加えて、ケース40の強度向上により、ケース40とサイドメンバ2等との直接の干渉を抑制する保護カバーを省略可能となるので、トランスアクスル20ひいては車両1のコストを低下させることもできる。
【0028】
また、トランスアクスル20において、連結リブ457は、環状に延在するようにカバー45の第2領域A2に含まれる部分に形成され、複数の放射リブ455(455a,455b)は、それぞれ連結リブ457の外周面から外方に延在する。これにより、連結リブ457の周辺(内側)に、いわゆる肉盗みを施して、複数の放射リブ455および連結リブ457を含むカバー45を鋳造により製造する際に鋳巣や未凝固部の発生等を良好に抑制することが可能となる。ただし、連結リブ457は、複数の放射リブ455の中心側端部と結合するものであれば、必ずしも環状の突起部である必要はない、すなわち、連結リブ457は、車幅方向からみて例えば円弧状あるいはC字状に延在すると共に両端部を有する曲線状の突起部であってもよい。
【0029】
更に、トランスアクスル20において、ケース40のカバー45は、オイルポンプ50のインナーロータ51およびアウターロータ52を収容するロータ収容室450を含み、連結リブ457は、車幅方向からみて、当該ロータ収容室450を包囲するようにカバー45に形成されている。これにより、複数の放射リブ455および連結リブ457を含むと共にオイルポンプ50のポンプハウジングとしても機能するカバー45を鋳造により製造する際に、鋳巣や未凝固部の発生等を良好に抑制することが可能となる。
【0030】
また、トランスアクスル20において、連結リブ457は、車幅方向からみて、カバー45の筒状部451に圧入される軸受B1のアウターレースOLと少なくとも部分的に重なるように形成された複数のバックアップ座458を含む。これにより、ケース40に対する軸受B1の組み付けに際し、連結リブ457のバックアップ座458を治具等により支持しながら、当該軸受B1のアウターレースOLを容易かつ円滑にカバー45の筒状部451に圧入することが可能となる。
【0031】
更に、トランスアクスル20において、連結リブ457は、モータジェネレータMG1のロータR1の軸心が当該連結リブ457の内側を通るようにカバー45に形成される。これにより、放射リブ455a,455bから連結リブ457に伝えられた応力(荷重)を強度が高められているロータR1の支持部すなわち軸受B1,B2を保持する筒状部451や第2ケース42の一部により受け止めることが可能となる。
【0032】
なお、トランスアクスル20において、複数の放射リブ455の少なくとも一部が第1領域A1に達しているのであれば、連結リブ457は、ケース40(カバー45)の第2領域A2以外に形成されてもよく、第1および第2領域A1,A2以外に形成されてもよい。更に、トランスアクスル20では、複数の放射リブ455および連結リブ457がケース40のカバー45の外表面に形成されるが、これに限られるものではない。すなわち、例えばカバーが第2ケースと一体に形成される場合には、複数の放射リブ455および連結リブ457が、当該第2ケースの第2領域A2に含まれる外表面に形成されてもよい。また、ケース40(カバー45)に要求される強度によっては、放射リブ455aから分岐部456が省略され得ることはいうまでもない。
【0033】
更に、トランスアクスル20は、ケース40内に収容されると共に、車両1のエンジン10、モータジェネレータMG1のロータR1およびドライブシャフトDSに連結されるプラネタリギヤ30と、ケース40内に収容されると共にドライブシャフトDSに連結されるモータジェネレータMG2とを含むものであるが、これに限られるものではない。すなわち、トランスアクスル20は、単一のモータジェネレータを含むハイブリッド車両または電気自動車用の駆動装置であってもよい。また、トランスアクスル20において、オイルポンプ50は、カバー45のロータ収容室(凹部)450以外に収容されるインナーロータ51およびアウターロータ52を含むものであってもよい。更に、トランスアクスル20のオイルポンプ50は、ギヤポンプに限られるものではなく、上記ロータ収容室450等に配置されるポンプロータを含むベーンポンプであってもよい。
【0034】
以上説明したように、本開示の駆動装置は、ステータ(S1)およびロータ(R1)を含む電動機(MG1)と、前記電動機(MG1)を収容するケース(40,45)と、ホイール(W)に連結されるドライブシャフト(DS)とを含み、車幅方向からみて、前記ケース(40,45)がサイドメンバ(2)と部分的に重なり合うように車両(1)に搭載される駆動装置(20)において、前記ケース(40、45)が、それぞれ前記車幅方向に突出すると共に放射状に延在する複数の放射リブ(455,455a,455b)と、前記車幅方向に突出すると共に前記複数の放射リブ(455,455a,455b)の中心側端部と結合する連結リブ(457)とを含み、前記複数の放射リブ(455,455a,455b)の少なくとも一部(455a,455b)が、前記車幅方向からみて前記サイドメンバ(2)と重なり合い、かつ前記ホイール(W)と重なり合わない前記ケース(40,45)の第1領域(A1)に達するものである。
【0035】
本開示の駆動装置を含む車両が前突や側突といった衝突を受けた際、サイドメンバは、連結リブに連なる放射リブの第1領域に含まれた部分に当たることになる。これにより、ケースの第1領域にサイドメンバが衝突した際に、当該サイドメンバから放射リブに加えられた応力を高い強度を有する連結リブ側に逃がすことが可能となり、当該第1領域における応力を低下させて第1領域での破損等の発生を良好に抑制することができる。この結果、電動機を含むと共に車両に搭載される駆動装置のケースの強度をより向上させることが可能となる。加えて、ケースの強度向上により、ケースとサイドメンバ等との直接の干渉を抑制する保護カバーを省略することができるので、駆動装置ひいては車両のコストを低下させることも可能となる。なお、放射リブは、当該放射リブから分岐して第2領域を越えて第1領域に達する分岐部を含むものであってもよい。
【0036】
また、前記連結リブ(457)は、環状に延在するように前記ケース(40,45)ケースの前記第1領域(A1)以外の領域に形成されてもよく、前記複数の放射リブ(455,455a,455b)は、それぞれ前記連結リブ(457)の外周面から外方に延在するものであってもよい。これにより、ケースの第1領域にサイドメンバが衝突した際に、第1領域での破損等の発生を極めて良好に抑制すると共に、連結リブの周辺に、いわゆる肉盗みを施して、複数の放射リブおよび連結リブを含むケースを鋳造により製造する際に鋳巣や未凝固部の発生等を良好に抑制することが可能となる。
【0037】
更に、前記ケース(40、45)は、前記車幅方向からみて、前記サイドメンバ(2)および前記ホイール(W)の双方と重なり合わない第2領域(A2)を更に含むものであってもよく、連結リブ(457)の少なくとも一部は、前記ケース(40,45)の前記第2領域(A2)に含まれてもよく、前記複数の放射リブ(455,455a,455b)の少なくとも一部(455a,455b)は、前記第2領域(A2)を越えて前記第1領域(A1)に達するものであってもよい。かかる駆動装置では、サイドメンバおよびホイールの双方と重なり合わないケースの第2領域の強度を良好に確保することが可能となる。また、ケースの第1領域にサイドメンバが衝突した際に、サイドメンバから放射リブに加えられた応力を連結リブすなわち第2領域に逃がすことができる。これにより、電動機を含むと共に車両に搭載される駆動装置のケースの強度をより一層向上させることが可能となる。
【0038】
更に、前記連結リブ(457)は、前記ロータ(R1)の軸心が前記連結リブ(457)の内側を通るように前記ケース(40,45)の前記第2領域(A2)に形成されてもよい。これにより、連結リブに伝えられた応力(荷重)を強度が高められている電動機のロータの支持部により受け止めることが可能となる。
【0039】
また、前記駆動装置(20)は、前記ケース(40)に圧入されるアウターレース(OL)を含むと共に前記電動機(MG1)の前記ロータ(R1)を回転自在に支持する軸受(B1)を含むものであってもよく、前記連結リブ(457)は、前記車幅方向からみて、前記軸受(B1)の前記アウターレース(OL)と少なくとも部分的に重なるように形成されたバックアップ座(458)を含むものであってもよい。これにより、ケースに対する軸受の組み付けに際し、連結リブのバックアップ座を治具等により支持しながら、当該軸受のアウターレースを容易かつ円滑にケースに圧入することが可能となる。
【0040】
更に、前記ケース(40)は、前記電動機(MG1)を収容するケース本体(41,42)と、前記ケース本体(41,42)の前記車幅方向における一端を覆うカバー(45)とを含むものであってもよく、前記複数の放射リブ(455)および前記連結リブ(457)は、前記カバー(45)の外表面に形成されてもよい。
【0041】
また、前記駆動装置(20)は、少なくとも1つのポンプロータ(51,52)を有するオイルポンプ(50)を含むものであってもよく、前記カバー(45)は、前記オイルポンプ(50)の前記ポンプロータ(51,52)を収容する凹部(450)を含むものであってもよく、前記連結リブ(457)は、前記車幅方向からみて、前記凹部(450
)を少なくとも部分的に包囲するように前記カバー(45)に形成されてもよい。これにより、複数の放射リブおよび連結リブを含むと共にオイルポンプのハウジングとしても機能するカバーを鋳造により製造する際に、鋳巣や未凝固部の発生等を良好に抑制すること
が可能となる。
【0042】
更に、前記駆動装置(20)は、前記ケース(40)内に収容されると共に、前記車両(1)の内燃機関(10)、前記電動機(MG1)の前記ロータ(R1)および前記ドライブシャフト(DS)に連結されるプラネタリギヤ(30)と、前記ケース(40)内に収容されると共に、前記ドライブシャフト(DS)に連結される第2の電動機(MG2)とを含むものであってもよく、前記電動機(MG1)の前記ロータ(R1)は、中空に形成されてもよく、前記オイルポンプ(50)の前記ポンプロータ(51)は、前記電動機(MG1)の前記ロータ(R1)内に挿通されるシャフト(CS)および前記プラネタリギヤ(30)の回転要素(34)を介して前記内燃機関(10)に連結されてもよい。
【0043】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の発明は、車両に搭載される駆動装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両、2 サイドメンバ、10 エンジン、20 トランスアクスル、25 ダンパ機構、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 プラネタリキャリヤ、35 カウンタドライブギヤ、36 カウンタドリブンギヤ、37 ファイナルドライブギヤ、38 ドライブギヤ、39 デファレンシャルギヤ、39r ファイナルドリブンギヤ、40 ケース、41 第1ケース、42 第2ケース、45 カバー、50 オイルポンプ、51 インナーロータ、52 アウターロータ、53 ポンプカバー、450 ロータ収容室、451 筒状部、455,455a,455b 放射リブ、456 分岐部、457 連結リブ、458 バックアップ座、A1 第1領域、A2 第2領域、B1,B2 軸受、CS キャリヤシャフト、DS ドライブシャフト、IL インナーレース、MG1,MG2 モータジェネレータ、OL アウターレース、R1,R2 ロータ、RS ロータシャフト、S1,S2 ステータ、W ホイール。