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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電気回路及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20240109BHJP
   H03H 7/06 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H03H7/01 A
H03H7/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021062669
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158047
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 展輝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 琢也
(72)【発明者】
【氏名】沼生 貴志
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-223449(JP,A)
【文献】実開平03-084627(JP,U)
【文献】特開平6-132668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/00-7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源ライン、第2電源ライン、及びグラウンドラインと、
第1デジタル信号を送信する第1回路要素および第1静電容量の第1キャパシタンス成分を含み、第1電源端子を介して前記第1電源ラインに電気的に接続され、かつ第1グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第1回路と、
第2デジタル信号を送信する第2回路要素および前記第1静電容量よりも小さい第2静電容量の第2キャパシタンス成分を含み、第2電源端子を介して前記第2電源ラインに電気的に接続され、かつ第2グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第2回路と、
前記第1電源端子と前記第1グラウンド端子との間に設けられたRC直列回路と、
前記第2電源端子と前記第2グラウンド端子との間に設けられたコンデンサと、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間に設けられたノイズフィルタと、を備え
前記第1デジタル信号の伝送レートは、前記第2デジタル信号の伝送レートよりも高速である、
ことを特徴とする電気回路。
【請求項2】
第1電源ライン、第2電源ライン、及びグラウンドラインと、
第1デジタル信号を送信する第1回路要素および第1静電容量の第1キャパシタンス成分を含み、第1電源端子を介して前記第1電源ラインに電気的に接続され、かつ第1グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第1回路と、
第2デジタル信号を送信する第2回路要素および前記第1静電容量よりも小さい第2静電容量の第2キャパシタンス成分を含み、第2電源端子を介して前記第2電源ラインに電気的に接続され、かつ第2グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第2回路と、
前記第1電源端子と前記第1グラウンド端子との間に設けられたRC直列回路と、
前記第2電源端子と前記第2グラウンド端子との間に設けられたコンデンサと、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間に設けられたノイズフィルタと、を備え、
前記第1デジタル信号の電圧振幅は、前記第2デジタル信号の電圧振幅よりも小さい、
ことを特徴とする電気回路。
【請求項3】
第1電源ライン、第2電源ライン、及びグラウンドラインと、
第1静電容量の第1キャパシタンス成分を含み、第1電源端子を介して前記第1電源ラインに電気的に接続され、かつ第1グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第1回路と、
前記第1静電容量よりも小さい第2静電容量の第2キャパシタンス成分を含み、第2電源端子を介して前記第2電源ラインに電気的に接続され、かつ第2グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された2つの第2回路と、
前記第1電源端子と前記第1グラウンド端子との間に設けられたRC直列回路と、
前記2つの第2回路のうち一方の第2回路の前記第2電源端子と前記第2グラウンド端子との間に設けられた第1コンデンサと、
前記2つの第2回路のうち他方の第2回路の前記第2電源端子と前記第2グラウンド端子との間に設けられた第2コンデンサと、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間に設けられたノイズフィルタと、を備え、
前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサのうち少なくとも1つのコンデンサと前記第2電源ラインとは、ノイズフィルタが設けられていない配線で接続されている、
ことを特徴とする電気回路。
【請求項4】
前記第1回路は、第1デジタル信号を送信する第1回路要素を含み、
前記第2回路は、第2デジタル信号を送信する第2回路要素を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の電気回路。
【請求項5】
前記第1デジタル信号の伝送レートは、前記第2デジタル信号の伝送レートよりも高速である、
ことを特徴とする請求項2又は4に記載の電気回路。
【請求項6】
前記第1デジタル信号の電圧振幅は、前記第2デジタル信号の電圧振幅よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1又は4に記載の電気回路。
【請求項7】
前記第2電源ラインと前記グラウンドラインとの間に直流電圧を印加する電源装置を更に備え、
前記第1電源端子には、前記電源装置によって前記第2電源ライン、前記ノイズフィルタ及び前記第1電源ラインを介して電源電位が印加される、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電気回路。
【請求項8】
前記第1回路と前記第2回路とは、同一の半導体装置に含まれている、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電気回路。
【請求項9】
前記RC直列回路は、少なくとも一つの抵抗器と、少なくとも一つのコンデンサと、を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電気回路。
【請求項10】
前記ノイズフィルタが、ローパスフィルタである、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電気回路。
【請求項11】
前記ローパスフィルタが、フェライトビーズである、
ことを特徴とする請求項10に記載の電気回路。
【請求項12】
筐体と、
前記筐体の内部に配置された、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電気回路と、を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、信号の入力又は出力可能な複数の回路を含む電気回路が搭載されている。各回路が動作すると、各回路の動作に応じた電流が給電経路を通じて各回路に流れる。給電経路が持っているインピーダンスを電源インピーダンスという。給電経路を流れる電流と電源インピーダンスとの積により電位変動が生じる。この電位変動を電源電位変動又は電源ノイズという。
【0003】
電源ノイズを抑制する対策として、特許文献1には、複数の回路のそれぞれに、抵抗器とコンデンサからなる直列回路を接続したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-132668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、各回路の動作によって発生した電源ノイズが、給電経路を通じて、複数の回路の中の別の回路に干渉することがあった。したがって、回路の動作が安定するよう、更なる改良が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、回路の動作を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の第1態様は、第1電源ライン、第2電源ライン、及びグラウンドラインと、第1デジタル信号を送信する第1回路要素および第1静電容量の第1キャパシタンス成分を含み、第1電源端子を介して前記第1電源ラインに電気的に接続され、かつ第1グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第1回路と、第2デジタル信号を送信する第2回路要素および前記第1静電容量よりも小さい第2静電容量の第2キャパシタンス成分を含み、第2電源端子を介して前記第2電源ラインに電気的に接続され、かつ第2グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第2回路と、前記第1電源端子と前記第1グラウンド端子との間に設けられたRC直列回路と、前記第2電源端子と前記第2グラウンド端子との間に設けられたコンデンサと、前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間に設けられたノイズフィルタと、を備え、前記第1デジタル信号の伝送レートは、前記第2デジタル信号の伝送レートよりも高速である、ことを特徴とする電気回路である
【0008】
本開示の第2態様は、第1電源ライン、第2電源ライン、及びグラウンドラインと、第1デジタル信号を送信する第1回路要素および第1静電容量の第1キャパシタンス成分を含み、第1電源端子を介して前記第1電源ラインに電気的に接続され、かつ第1グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第1回路と、第2デジタル信号を送信する第2回路要素および前記第1静電容量よりも小さい第2静電容量の第2キャパシタンス成分を含み、第2電源端子を介して前記第2電源ラインに電気的に接続され、かつ第2グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第2回路と、前記第1電源端子と前記第1グラウンド端子との間に設けられたRC直列回路と、前記第2電源端子と前記第2グラウンド端子との間に設けられたコンデンサと、前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間に設けられたノイズフィルタと、を備え、前記第1デジタル信号の電圧振幅は、前記第2デジタル信号の電圧振幅よりも小さい、ことを特徴とする電気回路である
本開示の第3態様は、第1電源ライン、第2電源ライン、及びグラウンドラインと、第1静電容量の第1キャパシタンス成分を含み、第1電源端子を介して前記第1電源ラインに電気的に接続され、かつ第1グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された第1回路と、前記第1静電容量よりも小さい第2静電容量の第2キャパシタンス成分を含み、第2電源端子を介して前記第2電源ラインに電気的に接続され、かつ第2グラウンド端子を介して前記グラウンドラインに電気的に接続された2つの第2回路と、前記第1電源端子と前記第1グラウンド端子との間に設けられたRC直列回路と、前記2つの第2回路のうち一方の第2回路の前記第2電源端子と前記第2グラウンド端子との間に設けられた第1コンデンサと、前記2つの第2回路のうち他方の第2回路の前記第2電源端子と前記第2グラウンド端子との間に設けられた第2コンデンサと、前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間に設けられたノイズフィルタと、を備え、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサのうち少なくとも1つのコンデンサと前記第2電源ラインとは、ノイズフィルタが設けられていない配線で接続されている、ことを特徴とする電気回路である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路の動作が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電子機器の一例としての撮像装置であるデジタルカメラの説明図である。
図2】実施形態に係る処理モジュールの一部分を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る処理モジュールにおけるRC直列回路及びコンデンサの実装部分の配線構造を説明するための模式図である。
図4】実施形態に係る処理モジュールに含まれる電気回路の等価回路図である。
図5】(a)~(c)は、実施例1のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6】変形例の電気回路の等価回路図である。
図7】(a)~(c)は、変形例のRC直列回路の一例を示す説明図である。
図8】比較例の処理モジュールに含まれる電気回路の等価回路図である。
図9】(a)~(c)は、比較例1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、実施形態に係る電子機器の一例としての撮像装置であるデジタルカメラ600の説明図である。撮像装置であるデジタルカメラ600は、レンズ交換式のデジタルカメラであり、カメラ本体601を備える。カメラ本体601には、レンズを含むレンズユニット(レンズ鏡筒)602が着脱可能となっている。カメラ本体601は、筐体611と、筐体611の内部に配置された、処理モジュール100及びセンサモジュール900と、を備えている。処理モジュール100は、電子モジュールの一例であり、プリント回路板で構成されている。処理モジュール100とセンサモジュール900とはケーブル400で電気的に接続されている。筐体611の内部には、不図示のバッテリが設けられている。
【0012】
センサモジュール900は、撮像素子であるイメージセンサ901と、プリント配線板902と、を有する。イメージセンサ901は、プリント配線板902に実装されている。イメージセンサ901は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。イメージセンサ901は、レンズユニット602を介して入射した光を電気信号に変換する機能を有する。
【0013】
処理モジュール100は、半導体装置200と、電源装置140と、プリント配線板300と、を有する。半導体装置200は、第1半導体装置の一例である。電源装置140は、第2半導体装置の一例である。
【0014】
半導体装置200及び電源装置140は、プリント配線板300に実装されている。プリント配線板300は、リジッド配線板である。半導体装置200は、例えばデジタルシグナルプロセッサであり、イメージセンサ901から電気信号を取得し、取得した電気信号を補正する処理を行い、画像データを生成する機能を有する。電源装置140は、不図示のバッテリから半導体装置200を含むデジタルカメラ600の各部へ電力を供給する装置である。電源装置140は、電源素子を有するICである。電源装置140は、プリント配線板300を介して半導体装置200に直流電圧を印加して、動作に必要な電力、即ち電源電流を供給する。プリント配線板300には、電源装置140から半導体装置200へ電力、即ち電源電流を供給する、電源ライン及びグラウンドラインを含む給電経路が形成されている。
【0015】
図2は、実施形態に係る処理モジュール100の一部分を示す斜視図である。半導体装置200は、半導体パッケージであり、本実施形態では、BGA(Ball Grid Array)の半導体パッケージである。半導体装置200は、パッケージ基板201と、パッケージ基板201に実装された半導体素子202と、を有する。
【0016】
半導体素子202は、半導体チップであり、封止樹脂で封止されたダイ2020を有する。ダイ2020は、受信したデジタル信号を演算処理する複数のコア回路と、複数のコア回路から出力されたデジタル信号を外部機器や他の半導体装置に送信する複数の送信回路(バッファ)と、を有する。本実施形態では、複数の送信回路が、回路2021,2022,2023を含む。回路2021は、第1回路の一例である。各回路2022,2023は、第2回路の一例である。即ち、半導体素子202は、少なくとも1つの第1回路と、少なくとも1つの第2回路とを含む。本実施形態では、半導体素子202は、1つの回路2021と、2つの回路2022,2023とを含む。よって、回路2021~2023は、同一の半導体装置200に含まれる。各回路2021~2023は、半導体集積回路で構成されている。回路2021は、例えばUSBの送信回路である。回路2022,2023は、例えばLVCMOSの送信回路である。なお、各回路2021,2022,2023は、複数の送信回路のうちのいずれか1つであるが、複数のコア回路のうちのいずれか1つであってもよい。
【0017】
パッケージ基板201は、インタポーザの一例である。半導体素子202は、複数のはんだバンプ203によってパッケージ基板201に電気的及び機械的に接続されている。半導体装置200は、パッケージ基板201の一対の主面のうち、半導体素子202が実装された主面とは反対側の主面に配置された複数の端子204を有する。パッケージ基板201は、複数の端子204によってプリント配線板300に電気的及び機械的に接続されている。各端子204は、例えばはんだボールで構成されている。複数の端子204は格子状に配列されている。
【0018】
処理モジュール100は、プリント配線板300に実装されたRC直列回路51と、プリント配線板300に実装された複数のコンデンサ、例えば2つのコンデンサ52,53と、を有する。RC直列回路51は、回路2021に対応して設けられ、コンデンサ52は、回路2022に対応して設けられ、コンデンサ53は、回路2023に対応して設けられている。RC直列回路51及びコンデンサ52,53は、半導体装置200の動作によって発生する電源電位変動、即ち電源ノイズを抑制するために給電経路に設けられている。RC直列回路51及びコンデンサ52,53の各々は、給電経路に含まれる電源ラインとグラウンドラインとの間に設けられている。RC直列回路51は、少なくとも1つの抵抗器と、少なくとも1つのコンデンサと、を含む。本実施形態では、RC直列回路51は、抵抗器51Rと、コンデンサ51Cとからなる。抵抗器51Rとコンデンサ51Cとは直列に接続されている。
【0019】
プリント配線板300は、絶縁基板310を有する。絶縁基板310は、平板状であり、一対の主面311,312を有する。主面312は、主面311とは反対の主面である。本実施形態では、半導体装置200は、プリント配線板300の絶縁基板310の主面311の上に配置されており、RC直列回路51及びコンデンサ52,53は、プリント配線板300の絶縁基板310の主面312の上に配置されている。RC直列回路51及びコンデンサ52,53は、Z方向に見て、半導体装置200と重なる位置に配置されている。Z方向は、主面311,312に垂直な方向である。
【0020】
図3は、実施形態に係る処理モジュール100におけるRC直列回路51及びコンデンサ52,53の実装部分の配線構造を説明するための模式図である。図4は、実施形態に係る処理モジュール100に含まれる電気回路100Eの等価回路図である。プリント配線板300は、複数の導体層301,302,303と、不図示のソルダーレジスト層と、を有する。各導体層301~303は、導体パターンが配置される層である。導体層301は、主面311上に配置された外層、即ち表層であり、導体層302は、主面312上に配置された外層、即ち表層である。導体層303は、絶縁基板310の内部、即ち導体層301と導体層302との間に配置された内層である。各導体層301,302の導体パターンにおける、はんだの接合に用いられるパッド以外の部分が、ソルダーレジスト層で覆われている。パッドは、SMD(Solder Mask Defined)又はNSMD(Non-solder Mask Defined)のパッドである。
【0021】
複数の端子204は、電源端子211E、グラウンド端子211G、電源端子212E、グラウンド端子212G、電源端子213E、及びグラウンド端子213Gを含む。電源端子211Eは、第1電源端子の一例である。グラウンド端子211Gは、第1グラウンド端子の一例である。電源端子212Eは、第2電源端子の一例である。グラウンド端子212Gは、第2グラウンド端子の一例である。電源端子213Eは、第2電源端子の一例である。グラウンド端子213Gは、第2グラウンド端子の一例である。電源端子211Eは、回路2021の電源側に電気的に接続され、グラウンド端子211Gは、回路2021のグラウンド側に電気的に接続されている。電源端子212Eは、回路2022の電源側に電気的に接続され、グラウンド端子212Gは、回路2022のグラウンド側に電気的に接続されている。電源端子213Eは、回路2023の電源側に電気的に接続され、グラウンド端子213Gは、回路2023のグラウンド側に電気的に接続されている。
【0022】
回路2021は、電源端子211Eとグラウンド端子211Gによってプリント配線板300に電気的に接続されている。回路2022は、電源端子212Eとグラウンド端子212Gによってプリント配線板300に電気的に接続されている。回路2023は、電源端子213Eとグラウンド端子213Gによってプリント配線板300に電気的に接続されている。
【0023】
プリント配線板300は、電源端子211Eと電気的に接続される電源ライン321Eと、電源端子212E及び電源端子213Eと電気的に接続される電源ライン322Eと、を有する。よって、回路2021は、電源端子211Eを介して電源ライン321Eに電気的に接続され、かつグラウンド端子211Gを介してグラウンドライン320Gに電気的に接続されている。また、回路2022は、電源端子212Eを介して電源ライン322Eに電気的に接続され、かつグラウンド端子212Gを介してグラウンドライン320Gに電気的に接続されている。また、回路2023は、電源端子213Eを介して電源ライン322Eに電気的に接続され、かつグラウンド端子213Gを介してグラウンドライン320Gに電気的に接続されている。電源ライン321Eは、第1電源ラインの一例である。電源ライン322Eは、第2電源ラインの一例である。また、プリント配線板300は、グラウンド端子211G,212G,213Gと電気的に接続されるグラウンドライン320Gを有する。即ち、グラウンド端子211G,212G,213Gは、共通のグラウンドライン320Gで電気的に接続されている。
【0024】
コンデンサ51Cは、一対の電極11,12を有する。抵抗器51Rは、一対の電極13,14を有する。コンデンサ52は、一対の電極15,16を有する。コンデンサ53は、一対の電極17,18を有する。
【0025】
各RC直列回路51、コンデンサ52及びコンデンサ53は、各回路2021,2022、2023の電源電位変動を抑制するためのものである。各コンデンサ51C,52,53は、いわゆるバイパスコンデンサである。RC直列回路51は、電源端子211Eとグラウンド端子211Gとの間に設けられている。コンデンサ52は、電源端子212Eとグラウンド端子212Gとの間に設けられている。コンデンサ53は、電源端子213Eとグラウンド端子213Gとの間に設けられている。
【0026】
半導体装置200の電源端子211Eとコンデンサ51Cの電極11とは、電源ライン321Eで電気的に接続されている。半導体装置200の電源端子212Eと、半導体装置200の電源端子213Eと、コンデンサ52の電極15と、コンデンサ53の電極17とは、電源ライン322Eで電気的に接続されている。半導体装置200のグラウンド端子211G,212G,213Gと、抵抗器51Rの電極14と、コンデンサ52の電極16と、コンデンサ53の電極18とは、グラウンドライン320Gで電気的に接続されている。コンデンサ51Cの電極12と抵抗器51Rの電極13とは、接続ライン323で電気的に接続されている。
【0027】
電源ライン321E,322E及びグラウンドライン320Gは、電源装置140によって半導体装置200に給電するための給電経路である。よって、半導体素子202の回路2021,2022,2023は、電源ライン321E,322Eを介して電源装置140によって電力、即ち電源電流が供給される。
【0028】
電源ライン321E、電源ライン322E、グラウンドライン320G及び接続ライン323の各々は、絶縁基板310に設けられた導体、例えば銅で構成されている。
【0029】
電源ライン321Eは、導体層301に形成された電源パターン331Eと、導体層302に形成された電源パターン341Eと、電源パターン331E及び電源パターン341Eに接触して形成された電源ヴィア351Eと、を含む。
【0030】
電源ヴィア351Eは、電源パターン331Eと電源パターン341Eとをつなぐヴィア導体である。電源パターン331Eに含まれるパッドには、電源端子211Eが接合されている。電源パターン341Eに含まれるパッドには、コンデンサ51Cの電極11が接合されている。
【0031】
電源ライン322Eは、導体層301に形成された電源パターン332E及び電源パターン333Eと、導体層302に形成された電源パターン342Eと、を含む。また、電源ライン322Eは、電源パターン332E及び電源パターン342Eに接触して形成された電源ヴィア352Eと、電源パターン333E及び電源パターン342Eに接触して形成された電源ヴィア353Eと、を含む。
【0032】
電源ヴィア352Eは、電源パターン332Eと電源パターン342Eとをつなぐヴィア導体である。電源ヴィア353Eは、電源パターン333Eと電源パターン342Eとをつなぐヴィア導体である。電源パターン332Eに含まれるパッドには、電源端子212Eが接合されている。電源パターン333Eに含まれるパッドには、電源端子213Eが接合されている。電源パターン342Eに含まれる2つのパッドには、コンデンサ52の電極15、コンデンサ53の電極17が、それぞれ接合されている。
【0033】
グラウンドライン320Gは、導体層301に形成されたグラウンドパターン331Gと、導体層301に形成されたグラウンドパターン332Gと、導体層301に形成されたグラウンドパターン333Gと、を含む。また、グラウンドライン320Gは、導体層302に形成されたグラウンドパターン341Gと、導体層302に形成されたグラウンドパターン342Gと、導体層302に形成されたグラウンドパターン343Gと、を含む。また、グラウンドライン320Gは、グラウンドパターン331G及びグラウンドパターン341Gに接触して形成されたグラウンドヴィア351Gを含む。また、グラウンドライン320Gは、グラウンドパターン332G及びグラウンドパターン342Gに接触して形成されたグラウンドヴィア352Gを含む。また、グラウンドライン320Gは、グラウンドパターン333G及びグラウンドパターン343Gに接触して形成されたグラウンドヴィア353Gを含む。
【0034】
グラウンドヴィア351Gは、グラウンドパターン331Gとグラウンドパターン341Gとをつなぐヴィア導体である。グラウンドパターン331Gに含まれるパッドには、グラウンド端子211Gが接合されている。グラウンドパターン341Gに含まれるパッドには、抵抗器51Rの電極14が接合されている。
【0035】
グラウンドヴィア352Gは、グラウンドパターン332Gとグラウンドパターン342Gとをつなぐヴィア導体である。グラウンドパターン332Gに含まれるパッドには、グラウンド端子212Gが接合されている。グラウンドパターン342Gに含まれるパッドには、コンデンサ52の電極16が接合されている。
【0036】
グラウンドヴィア353Gは、グラウンドパターン333Gとグラウンドパターン343Gとをつなぐヴィア導体である。グラウンドパターン333Gに含まれるパッドには、グラウンド端子213Gが接合されている。グラウンドパターン343Gに含まれるパッドには、コンデンサ53の電極18が接合されている。
【0037】
接続ライン323に含まれる2つのパッドには、コンデンサ51Cの電極12及び抵抗器51Rの電極13がそれぞれ接合されている。
【0038】
電源ヴィア351Eは、コンデンサ51Cに近接して配置されている。電源ヴィア352Eは、コンデンサ52に近接して配置されている。電源ヴィア353Eは、コンデンサ53に近接して配置されている。グラウンドヴィア351Gは、抵抗器51Rに近接して配置されている。グラウンドヴィア352Gは、コンデンサ52に近接して配置されている。グラウンドヴィア353Gは、コンデンサ53に近接して配置されている。
【0039】
電源装置140は、電源端子1401(図4)と、グラウンド端子1402とを有する。電源装置140の電源端子1401は、電源ライン322Eに電気的に接続されている。電源装置140のグラウンド端子1402は、グラウンドライン320Gに電気的に接続されている。電源装置140は、各回路2021,2022,2023へ電力を供給するための電源回路1400を含む。
【0040】
グラウンドライン320Gは、導体層302に形成されたグラウンドパターン364Gと、電源装置140に近接して配置されたグラウンドヴィア354Gと、を有する。グラウンドパターン364Gに含まれるパッドには、電源装置140のグラウンド端子1402が接合されている。グラウンドパターン364Gは、グラウンドヴィア354Gに接触することでグラウンドヴィア354Gにつながれている。
【0041】
また、グラウンドライン320Gは、絶縁基板310(図2)の内部にある導体層303に配置されたグラウンドパターン350Gを有する。グラウンドパターン350Gは、ベタの導体パターンであり、導体層303のほぼ全体に亘って形成されている。グラウンドパターン350Gは、導体層303においてグラウンドヴィア351G,352G,353G,354Gと接触しており、グラウンドヴィア351G,352G,353G,354Gとつながっている。
【0042】
電源ライン321Eと電源ライン322Eとの間には、ローパスフィルタ、本実施形態ではフェライトビーズ160が設けられている。フェライトビーズ160は、電源ライン321Eと電源ライン322Eとを電気的に接続する電気部品である。フェライトビーズ160は、ノイズフィルタの一例である。フェライトビーズ160は、一対の電極21,22を有する。電極21は、電源ライン321Eの電源パターン341Eに含まれるパッドに接合されている。電極22は、電源ライン322Eの電源パターン342Eに含まれるパッドに接合されている。
【0043】
以上、電源装置140の電源端子1401は、電源ライン322Eを介して、半導体装置200の電源端子212E,213Eと、コンデンサ52の電極15と、コンデンサ53の電極17と、に電気的に接続されている。また、電源装置140の電源端子1401は、電源ライン322Eを介して、フェライトビーズ160の電極22に電気的に接続されている。また、電源装置140の電源端子1401は、電源ライン322E、フェライトビーズ160及び電源ライン321Eを介して、半導体装置200の電源端子211Eと、コンデンサ51Cの電極11と、に電気的に接続されている。
【0044】
また、電源装置140のグラウンド端子1402は、グラウンドライン320Gを介して、半導体装置200のグラウンド端子211G,212G,213Gに電気的に接続されている。また、電源装置140のグラウンド端子1402は、抵抗器51Rの電極14と、コンデンサ52の電極16と、コンデンサ53の電極18とに電気的に接続されている。
【0045】
以上の配線構造によって、電源装置140は、電源ライン322Eとグラウンドライン320Gとの間に直流電圧を印加して、各回路2021,2022,2023へ電力、即ち電源電流を供給する。そして、半導体装置200の電源端子211Eには、電源装置140によって電源ライン322E、ノイズフィルタの一例であるフェライトビーズ160、及び電源ライン321Eを介して、電源電位が印加される。半導体装置200の各電源端子212E,213Eには、電源装置140によって電源ライン322Eを介して、電源電位が印加される。半導体装置200の各グラウンド端子211G~213Gには、グラウンドライン320Gを介してグラウンド電位が印加される。
【0046】
回路2021は、回路要素31と、キャパシタンス成分41とで構成される。回路2022は、回路要素32と、キャパシタンス成分42とで構成される。回路2023は、回路要素33と、キャパシタンス成分43とで構成される。回路要素31は、第1回路要素の一例である。回路要素32は、第2回路要素の一例である。回路要素33は、第2回路要素の一例である。キャパシタンス成分41は、第1キャパシタンス成分の一例である。キャパシタンス成分42は、第2キャパシタンス成分の一例である。キャパシタンス成分43は、第2キャパシタンス成分の一例である。各キャパシタンス成分41,42,43は、オンダイキャパシタと呼ばれるキャパシタである。
【0047】
回路要素31は、デジタル信号S1を送信するように構成されている。回路要素32は、デジタル信号S2を送信するように構成されている。回路要素33は、デジタル信号S3を送信するように構成されている。回路要素31が送信するデジタル信号S1は、第1デジタル信号である。回路要素32が送信するデジタル信号S2は、第2デジタル信号である。回路要素33が送信するデジタル信号S3は、第2デジタル信号である。
【0048】
回路要素31が送信するデジタル信号S1の伝送レートR1[bps]は、各回路要素32,33が送信するデジタル信号S2,S3の伝送レートR2,R3[bps]よりも高速である。換言すると、各デジタル信号S2,S3の伝送レートR2,R3[bps]は、デジタル信号S1の伝送レートR1[bps]よりも低速である。即ち、R1>R2,R3である。伝送レートR1は第1伝送レートである。伝送レートR2は第2伝送レートである。伝送レートR3は第2伝送レートである。
【0049】
回路要素31が送信するデジタル信号S1の電圧振幅A1は、各回路要素32,33が送信するデジタル信号S2,S3の電圧振幅A2,A3よりも低く設定されている。即ち、A1<A2,A3である。電圧振幅A1は第1電圧振幅である。電圧振幅A2は第2電圧振幅である。電圧振幅A3は第2電圧振幅である。また、キャパシタンス成分41の静電容量C1は、各キャパシタンス成分42,43の静電容量C2,C3よりも大きく設定されている。換言すると、各キャパシタンス成分42,43の静電容量C2,C3は、キャパシタンス成分41の静電容量C1よりも小さく設定されている。即ち、C1>C2,C3である。静電容量C1は第1静電容量である。静電容量C2は第2静電容量である。静電容量C3は第2静電容量である。そして、各回路2022,2023が動作する際に各回路2022,2023に供給される電源電流I2,I3は、回路2021が動作する際に回路2021に供給される電源電流I1よりも大きい。即ち、I1<I2,I3である。電源電流I1は第1電源電流である。電源電流I2は第2電源電流である。電源電流I3は第2電源電流である。
【0050】
ここで、比較例の処理モジュールにおける電気回路について説明する。図8は、比較例の処理モジュールに含まれる電気回路100EXの等価回路図である。電気回路100EXは、電源装置140Xと、3つの回路2021X,2022X,2023Xとを有する。電源装置140Xと各回路2021X,2022X,2023Xとは、電源ライン321EXとグラウンドライン320GXとで電気的に接続されている。電源装置140Xは、各回路2021X~2023Xへ電力を供給するための電源回路1400Xと、電源端子1401Xと、グラウンド端子1402Xとを有する。電源端子1401Xは、電源ライン321EXに接続され、グラウンド端子1402Xは、グラウンドライン320GXに接続されている。
【0051】
回路2021Xは、回路要素31Xとキャパシタンス成分41Xで構成されている。回路2021Xの電源電位変動を抑制するためのRC直列回路51Xが電源ライン321EXとグラウンドライン320GXとの間に接続されている。RC直列回路51Xは、コンデンサ51CXと抵抗器51RXとで構成されている。
【0052】
回路2022Xは、回路要素32Xとキャパシタンス成分42Xで構成されている。回路2022Xの電源電位変動を抑制するためのコンデンサ52Xが、電源ライン321EXとグラウンドライン320GXとの間に接続されている。
【0053】
回路2023Xは、回路要素33Xとキャパシタンス成分43Xで構成されている。回路2023Xの電源電位変動を抑制するためのコンデンサ53Xが、電源ライン321EXとグラウンドライン320GXとの間に接続されている。
【0054】
比較例の電気回路100EXの電源ライン321EXには、本実施形態のフェライトビーズ160が存在しない。各回路2021X~2023Xは、各回路2021~2023と同様の構成である。各回路2022X,2023Xの動作によって発生した電源ノイズが回路2021Xに伝搬すると、回路2021Xの動作が不安定となる。回路2021Xが送信するデジタル信号S1は、各回路2022X,2023Xが送信するデジタル信号S2,S3よりも高速である。即ち、各デジタル信号S2,S3は、デジタル信号S1よりも低速である。デジタル信号S1の電圧振幅A1は、各デジタル信号S2,S3の電圧振幅A2,A3よりも小さく設定され、キャパシタンス成分41Xの静電容量C1は、各キャパシタンス成分42X,43Xの静電容量C2,C3よりも大きく設定されている。そして、各回路2022X,2023Xが動作する際に各回路2022X,2023Xに供給される電源電流I2,I3は、回路2021Xが動作する際に回路2021Xに供給される電源電流I1よりも大きい。よって、各回路2022X,2023Xの動作によって発生する電源ノイズが回路2021Xに伝搬されると、回路2021Xの動作に影響を与える。
【0055】
本実施形態によれば、フェライトビーズ160及びRC直列回路51により、各回路2022,2023の動作によって発生する電源ノイズが回路2021に伝搬されるのを抑制することができる。電源ノイズの伝搬が抑制されるので、各回路2021~2023、特に回路2021の動作が安定する。また、本実施形態によれば、回路2021と電気的に接続された電源端子211Eとグラウンド端子211Gとの間に、コンデンサのみを接続するのではなく、RC直列回路51を接続したことにより、電源電位変動を効果的に低減することができる。
【0056】
[実施例]
以下、比較例1及び実施例1の実験結果について説明する。比較例1は、上記比較例の具体例である。実施例1は、上記実施形態の具体例である。
【0057】
(比較例1)
図8において、キャパシタンス成分41X及びコンデンサ51CXとの並列回路と、各線分に寄生する寄生インダクタンスとにより共振回路が形成される。なお、各線分には、寄生インダクタンスだけでなく、寄生抵抗も含まれる。回路2021Xにおける回路要素31Xから見た電源インピーダンスZ11の特性には、この共振回路の影響が現れる。
【0058】
同様に、キャパシタンス成分42X及びコンデンサ52Xとの並列回路と、各線分に寄生する寄生インダクタンスとにより共振回路が形成される。なお、各線分には、寄生インダクタンスだけでなく、寄生抵抗も有している。回路2022Xにおける回路要素32Xから見た電源インピーダンスZ11の特性には、この共振回路の影響が現れる。
【0059】
同様に、キャパシタンス成分43X及びコンデンサ53Xとの並列回路と、各線分に寄生する寄生インダクタンスとにより共振回路が形成される。なお、各線分には、寄生インダクタンスだけでなく、寄生抵抗も有している。回路2023Xにおける回路要素33Xから見た電源インピーダンスZ11の特性には、この共振回路の影響が現れる。
【0060】
図9(a)は、比較例1の電源インピーダンス特性のシミュレーション結果を示すグラフである。図9(a)において、回路要素31Xに対応する電源インピーダンスZ11をZ11X1、回路要素32Xに対応する電源インピーダンスZ11をZ11X2、回路要素33Xに対応する電源インピーダンスZ11をZ11X3とする。図9(a)において、電源インピーダンスZ11X1を実線で示す。図9(a)において、電源インピーダンスZ11X2を破線で示す。図9(a)において、電源インピーダンスZ11X3を点線で示す。
【0061】
ここで、シミュレーションにおいて、キャパシタンス成分41Xの静電容量を800pF、各キャパシタンス成分42X,43Xの静電容量を0Fとした。また、各コンデンサ51CX,52X,53Xの静電容量を1μFとした。また、抵抗器51RXの電気抵抗値を1.1Ωとした。また、コンデンサ51CXと回路要素31Xとを接続する電源ラインのインダクタンス値を1040pHとした。また、コンデンサ52Xと回路要素32Xとを接続する電源ラインのインダクタンス値を720pHとした。また、コンデンサ53Xと回路要素33Xとを接続する電源ラインのインダクタンス値を950pHとした。
【0062】
各電源インピーダンスZ11X2,Z11X3は、各コンデンサ52X,53Xの自己共振周波数よりも高い周波数帯域において上昇する。一方、電源インピーダンスZ11X1は、コンデンサ51CXの自己共振周波数よりも高い周波数帯域において、プリント配線板や半導体パッケージに含まれる給電経路の寄生インダクタンスとキャパシタンス成分41Xとで反共振が発生する。この反共振が発生する回路における共振周波数ωは、式(1)で表すことができる。
【数1】
【0063】
式(1)に対して、Lとして1040pH、Cとして800pFを入力すると、共振周波数ωは、174MHzとなる。共振周波数ωにおいて、回路要素31Xから見た電源インピーダンスZ11X1は、反共振の発生によって極大値、即ちピーク値を持つ。そして、電源インピーダンスZ11X1は、共振周波数ωよりも高い周波数帯域では減少する。
【0064】
各回路要素31X~33Xには、各回路要素31X~33Xが動作するための電力が主に直近のキャパシタンス成分やコンデンサから供給される。反共振が発生している周波数帯域の近傍において、各電源インピーダンスZ11X2,Z11X3は、電源インピーダンスZ11X1よりも低いインピーダンス値となる。よって、回路2021Xは、各回路2022X,2023Xの動作によって発生した電源ノイズの干渉を受ける。特に、各回路2022X,2023Xが低速動作する回路であり、回路2021Xが高速動作する回路であると、各デジタル信号S2,S3の電圧振幅A2,A3がデジタル信号S1の電圧振幅A1に対して大きい。このため、回路2021Xで観測される電源電位変動が増大する。
【0065】
図9(b)は、比較例1の伝達インピーダンス特性のシミュレーション結果を示すグラフである。回路2021Xの回路要素31Xと回路2022Xの回路要素32Xとの間の伝達インピーダンスZ12をZ12X12とする。回路2021Xの回路要素31Xと回路2023Xの回路要素33Xとの間の伝達インピーダンスZ12をZ12X13とする。図9(b)において、伝達インピーダンスZ12X12を破線で示す。図9(b)において、伝達インピーダンスZ12X13を点線で示す。反共振が発生する174MHz相当の周波数帯域まで、特に伝達インピーダンスZ12X13が高くなっている。
【0066】
図9(c)は、比較例1の回路要素31Xにおける電源電位変動のシミュレーション結果を示すグラフである。図9(c)に示すように、電源電位変動の最大振幅が112mVとなっている。回路2021Xが140MHz周期で動作し、回路2022X及び回路2023Xは50nsec期間に一度だけ動作している。回路2021Xだけが動作している条件において、電源電位変動のシミュレーション結果は86mVであり、抵抗器51RXを0Ωとしたときであっても、電源電位変動は104mVである。このように、ノイズ干渉によって電源電位変動が増大していることが確認できる。
【0067】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、前述の特徴が異なる2つ以上の回路2021X~2023Xに対し、1つの電源装置140Xから電力を供給する構成において、給電経路を通じてノイズ干渉が発生することが明らかになった。
【0068】
本発明者らは、高速動作する回路2021Xの電源インピーダンスを低減する構成に対し、低速動作する回路2022X,2023Xを同電位の電源ライン321EXに接続すると、電流の供給経路が変化すると考えた。コンデンサ52Xまたは53Xから回路要素31Xに給電してノイズ干渉が発生すると考えた。
【0069】
また、本発明者らは、回路要素31Xと、回路要素32X,33Xとの間に高いインピーダンスを有するノイズフィルタを設け、RC直列回路51Xの代わりにコンデンサを設け、コンデンサ52Xの代わりにRC直列回路を設けた構成についても検討した。このような構成であっても、コンデンサ53Xから回路要素31Xに給電してノイズ干渉が発生することがわかった。
【0070】
(実施例1)
図4に示す電気回路100Eについて説明する。回路2021におけるキャパシタンス成分41の静電容量C1を800pFとした。RC直列回路51におけるコンデンサ51Cの静電容量を1μFとした。RC直列回路51における抵抗器51Rの電気抵抗値を1.1Ωとした。
【0071】
回路2022におけるキャパシタンス成分42の静電容量C2を0Fとした。コンデンサ52の静電容量を1μFとした。回路2023におけるキャパシタンス成分43の静電容量C3も0Fとした。コンデンサ53の静電容量も1μFとした。なお、各キャパシタンス成分41,42,43の静電容量C1,C2,C3は、LCRメータやネットワークアナライザ等の機器を用いて測定することが可能である。
【0072】
コンデンサ51Cと回路要素31との給電経路のインダクタンス値を1040pHとした。コンデンサ52と回路要素32との給電経路のインダクタンス値を720pHとした。コンデンサ53と回路要素33との給電経路のインダクタンス値を950pHとした。フェライトビーズ160は、100MHzで120Ωのインピーダンス値となるローパスフィルタ部品とした。
【0073】
ここで、半導体集積回路の内部に設けるキャパシタンス成分を大容量化することで、高周波帯域の電源インピーダンスが低減し、回路が高速動作したときの電源電位変動を抑制する効果が高い。そのため、特に高速動作する回路に対して、回路内にキャパシタンス成分を追加し、電源電位変動を抑制するのが好ましい。また、低速動作する回路に含まれるIO電源はノイズ耐性が高いため、回路内にキャパシタンス成分を設けず、プリント配線板にコンデンサを配置し、インダクタンスを低減して電源電位変動を抑制するのが好ましい。
【0074】
図4の回路構成において、各回路要素31,32,33の電源インピーダンスZ11をシミュレーションした。図5(a)は、実施例1の電源インピーダンス特性のシミュレーション結果を示すグラフである。図5(a)において、回路要素31に対応する電源インピーダンスZ11をZ11、回路要素32に対応する電源インピーダンスZ11をZ11、回路要素33に対応する電源インピーダンスZ11をZ11とする。図5(a)において、電源インピーダンスZ11を実線で示す。図5(a)において、電源インピーダンスZ11を破線で示す。図5(a)において、電源インピーダンスZ11を点線で示す。
【0075】
電源インピーダンスZ11は、反共振の周波数である174MHz近傍において、抵抗器51Rとフェライトビーズ160の効果により、比較例1よりも反共振のピーク値が低減している。
【0076】
図5(b)は、実施例1の伝達インピーダンス特性のシミュレーション結果を示すグラフである。回路2021の回路要素31と回路2022の回路要素32との間の伝達インピーダンスZ12をZ1212とする。回路2021の回路要素31と回路2023の回路要素33との間の伝達インピーダンスZ12をZ1213とする。図5(b)において、伝達インピーダンスZ1212を破線で示す。図5(b)において、伝達インピーダンスZ1213を点線で示す。図9(b)に示す比較例1と比較して、1MHz以上の周波数帯域における伝達インピーダンスZ1212,Z1213が低減しており、ノイズ干渉を抑制していることが確認できる。特に、回路要素31において反共振が発生する174MHz相当の周波数帯域において、伝達インピーダンスZ1212,Z1213が大幅に低減していることが確認できる。
【0077】
図5(c)は、実施例1の回路要素31における電源電位変動のシミュレーション結果を示すグラフである。電源電位変動の最大振幅が77.9mVであり、ノイズ干渉を抑制し、電源電位変動が低減されることが確認できる。
【0078】
このように、低速動作する回路要素32,33にコンデンサ52,53から給電される周波数帯域と、高速動作する回路要素31に反共振が発生する周波数帯域との両方において、伝達インピーダンスZ1212,Z1213が低減する。よって、回路要素31と、回路要素32,33との間のノイズ干渉が抑制されることが確認できる。
【0079】
回路要素32,33が周期的に動作する回路要素であっても、コンデンサ52,53から給電される周波数帯域における伝達インピーダンスZ1212,Z1213が低減されるので、回路要素31と、回路要素32,33との間のノイズ干渉が抑制される。ここで、周期的に動作する回路要素とは、例えば周期的な信号を送信する回路要素である。
【0080】
キャパシタンス成分41、コンデンサ51C、抵抗器51R、及びフェライトビーズ160のそれぞれの値の有効範囲は、回路要素31の反共振における電源インピーダンスを低減できる範囲である。また回路要素31の動作周波数の1/2の周波数、及び回路要素31の動作周波数の2倍高調波において、電源インピーダンスの反共振が発生しないことが好ましい。
【0081】
フェライトビーズ160が存在しないときの電源インピーダンスは、コンデンサ51C、キャパシタンス成分41、及び給電経路の寄生インダクタンスで決まる。例えば、図9(a)において、反共振が発生する周波数174MHzの電源インピーダンスZ11X1は、5.9Ωである。フェライトビーズ160を追加したときの電源インピーダンスZ11が、5.9Ωより低減できる範囲において、ノイズ干渉を抑制する効果が得られる。
【0082】
また、実施例1の回路構成において、例えばキャパシタンス成分41が400pFまで減少したときの共振周波数は247MHzとなり、2倍高調波である280MHzより低いため、ノイズ干渉を効果的に抑制することができる。
【0083】
抵抗器51Rを増大させたとき、低周波帯域の電源インピーダンスが上昇するため、抵抗器51Rの定数、即ち電気抵抗値は大きくしすぎないことが好ましい。特に、動作周波数の1/2の周波数帯域と、各回路要素32,33の反共振が発生する周波数帯域における電源インピーダンスに着目して抵抗器51Rの電気抵抗値を決定すればよい。
【0084】
キャパシタンス成分41の静電容量は、各キャパシタンス成分42,43の静電容量よりも大きい。回路2022,2023に容量セルを搭載しない状態を想定してキャパシタンス成分42,43の静電容量を0Fとしてシミュレーションしたが、これに限定するものではない。各回路2022,2023には寄生容量があるため、各キャパシタンス成分42,43は、寄生容量であってもよい。
【0085】
また、電源装置140は、電源ライン322Eと直接接続されていなくてもよく、電源装置140の電源端子1401と電源ライン322Eとの間に、不図示のノイズフィルタが配置されていてもよい。
【0086】
また、グラウンドライン320Gが、互いに独立した複数のグラウンドを含み、複数のグラウンド端子211G~213Gのそれぞれが、複数のグラウンドのうちそれぞれ異なるグラウンドに接続されるようにしてもよい。互いに独立したグラウンド同士は、フェライトビーズのようなノイズフィルタで接続されていてもよい。
【0087】
また、各コンデンサ52,53は、必ずしも1つのコンデンサ部品である必要はなく、複数のコンデンサ部品を並列接続した構成としてもよい。また、電源インピーダンスが上昇するのを抑制するため、各コンデンサ52,53には、抵抗器を直列接続しないようにするのが好ましい。
【0088】
また、RC直列回路51におけるコンデンサ51Cと抵抗器51Rとは、直列に接続されていればよく、図4に示す位置関係に限定するものではなく、コンデンサ51Cと抵抗器51Rとの位置を入れ替えてもよい。また、電気回路100Eが、1つのRC直列回路51を有する場合について説明したが、これに限定するものではない。電気回路100Eが、互いに並列に接続された複数のRC直列回路51を有していてもよい。
【0089】
また、電源ライン321Eと電源ライン322Eとを電気的に接続するノイズフィルタが、フェライトビーズ160である場合について説明したが、これに限定するものではない。ノイズフィルタが、例えばチップインダクタを含むローパスフィルタであるのが好適である。
【0090】
また、ノイズフィルタは、各回路要素31,32,33の電源インピーダンスよりも高いインピーダンスを有する部材であればよい。例えば、ノイズフィルタは、ジャンパ線であってもよい。
【0091】
また、ノイズフィルタの数は1つに限定するものではない。その際、グラウンドラインにもノイズフィルタを設けてもよい。
【0092】
また、回路2021,2022,2023が、同一の半導体装置200に含まれる場合について説明したが、これに限定するものではない。各回路2021,2022,2023が、互いに異なる半導体装置で構成されていてもよい。
【0093】
また、半導体装置200の端子構造がBGAである場合について説明したが、これに限定するものでない。半導体装置200の端子構造が、LGA(LandGridArray)であってもよく、リード線で接続する構造であってもよい。
【0094】
抵抗器51R及びコンデンサ51C,52,53は、半導体装置200を実装するプリント配線板300の主面11とは反対の主面312に実装される場合について説明したが、これに限定するものではない。また、プリント配線板300のグラウンドパターン350Gは、内層の導体層303に配置される場合について説明したが、これに限定するものはない。グラウンドライン320Gが極力低いインピーダンスとなれば、グラウンドライン320Gは、どのような配線構造であってもよい。
【0095】
[その他の変形例]
上述の実施形態では、電気回路100Eが複数の第2回路を含む場合の一例として2つの回路2022,2023を含む場合について説明したが、これに限定するものではない。図6は、変形例の電気回路100E1の説明図である。図6には、電気回路100E1の等価回路を図示している。図6に示すように、電気回路100E1が1つの第2回路を含む場合、例えば回路2023及びコンデンサ53が省略される場合についても本発明は適用可能である。
【0096】
また、RC直列回路は、少なくとも1つの抵抗器と、少なくとも1つのコンデンサとを含んでいればよく、種々の変形が可能である。図7(a)~図7(c)は、変形例のRC直列回路の一例を示す説明図である。図7(a)~図7(c)には、RC直列回路と、RC直列回路に接続される周囲の回路とを、等価回路として図示している。
【0097】
図7(a)に示す変形例のRC直列回路511は、1つのコンデンサ51Cと、2つの抵抗器51R1,51R2とを含む。2つの抵抗器51R1,51R2は、並列接続されている。2つの抵抗器51R1,51R2からなる並列回路と、コンデンサ51Cとが直列接続されている。2つの抵抗器51R1,51R2からなる並列回路に必要な合成抵抗値が1.1Ωであれば、各抵抗器51R1,51R2の電気抵抗値を2.2Ωとすればよい。
【0098】
図7(b)に示す変形例のRC直列回路512は、2つのコンデンサ51C1,51C2と、1つの抵抗器51Rとを含む。そして、コンデンサ51C1、抵抗器51R、コンデンサ51C2の順に直列接続してもよい。
【0099】
図7(c)に示す変形例のRC直列回路513は、2つのコンデンサ51C1,51C2と、1つの抵抗器51Rとを含む。2つのコンデンサ51C1,51C2は、並列接続されている。抵抗器51Rと2つのコンデンサ51C1,51C2からなる並列回路とが直列接続されている。
【0100】
このように、RC直列回路の構成は、種々の変形が可能であり、また、変形例のRC直列回路を複数並列に接続してもよい。
【0101】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
【0102】
上述の実施形態では、電子機器として、デジタルカメラ等の撮像装置に、本発明の電子モジュールを適用した場合について説明したが、これに限定するものではない。本発明の電子モジュールは、電子機器として、例えばモバイル機器、車載機器、画像形成装置等についても適用可能である。画像形成装置には、例えばプリンタ、複写機、ファクシミリ及びこれらの機能を備えた複合機等が含まれる。
【符号の説明】
【0103】
51…RC直列回路、52…コンデンサ、100E…電気回路、160…フェライトビーズ(ノイズフィルタ)、320G…グラウンドライン、321E…電源ライン(第1電源ライン)、322E…電源ライン(第2電源ライン)、600…デジタルカメラ(電子機器)、2021…回路(第1回路)、2022…回路(第2回路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9