(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ソーラパネル付き時計
(51)【国際特許分類】
G04G 21/00 20100101AFI20240109BHJP
G04C 9/00 20060101ALI20240109BHJP
G04C 10/02 20060101ALI20240109BHJP
G04G 19/00 20060101ALI20240109BHJP
G04R 60/10 20130101ALI20240109BHJP
G04G 9/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G04G21/00 D
G04C9/00 301A
G04C10/02 A
G04G19/00 B
G04R60/10
G04G9/00 301Z
(21)【出願番号】P 2021103131
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 吉康
(72)【発明者】
【氏名】仲 秀治
(72)【発明者】
【氏名】中平 大輔
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-154913(JP,A)
【文献】特開2019-60672(JP,A)
【文献】特開2003-215271(JP,A)
【文献】特開2019-32212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00 - 99/00
G04G 3/00 - 99/00
G04R 20/00 - 60/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字板と、
前記文字板を透過した光が入射されることで発電するソーラパネルと、
ループアンテナと、
を有し、
前記ループアンテナのうち電流分布の極値となる極値位置は、平面視において、前記ソーラパネルのうち発電に寄与しない非発電領域に沿う位置にある、
ソーラパネル付き時計。
【請求項2】
前記ループアンテナは、一端側の第1給電位置と、他端側の第2給電位置と、を含み、
前記極値位置は、前記第1給電位置又は前記第2給電位置からの長さが、前記ループアンテナの周の長さの2分の1となる位置である、
請求項1に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項3】
前記非発電領域の少なくとも一部は、平面視において、前記ループアンテナの中心位置と、前記極値位置との間に配置されている、
請求項1又は2に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項4】
前記ループアンテナは、平面視において、前記非発電領域と、前記ソーラパネルの外縁との間に配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項5】
前記極値位置は、前記非発電領域よりも径方向の外側で前記非発電領域に隣り合う位置にある、
請求項1~4のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項6】
前記極値位置は、その周辺に生じる磁界の少なくとも一部が前記非発電領域に生じる位置にある、
請求項1~5のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項7】
表示画面を備える表示装置をさらに有し、
前記文字板には、前記表示画面を外部から視認させる第1開口部が形成されており、
前記非発電領域は、平面視において前記第1開口部と重なると共に前記表示画面を外部から視認させる第2開口部である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項8】
前記ループアンテナは、上下方向において、前記表示装置との間に隙間を形成するように配置されており、
前記極値位置は、その周辺に生じる磁界の少なくとも一部が前記隙間に生じる位置にある、
請求項7に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項9】
前記表示装置は、少なくとも、液晶層と、前記液晶層を挟む一対の電極層と、を含む液晶表示装置であって、
前記ソーラパネルは、少なくとも、半導体層と、前記半導体層を挟む一対の電極層と、を含み、
前記液晶層を挟む一対の電極層の厚みは、前記半導体層を挟む一対の電極層の厚みよりも薄い、
請求項7又は8に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項10】
前記表示装置は、平面視において前記表示画面を囲む、非金属製の縁部を含み、
前記ループアンテナの少なくとも一部は、平面視において、前記縁部に重なるように設けられている、
請求項7~9のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項11】
前記ループアンテナは、前記表示画面の外形に合わせて屈曲する屈曲部を含んでいる、
請求項7~10のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項12】
前記極値位置は、前記ループアンテナのうち前記屈曲部以外の部分に位置している、
請求項11に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項13】
前記文字板は、小窓部を有し、
前記小窓部を介して視認される表示が設けられる、非金属製の表示板を有し、
前記非発電領域は、平面視において、前記小窓部に重なるように設けられている、
請求項1~6のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラパネル付き時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、ソーラパネルとループアンテナとを備える電波時計が開示されている。特許文献1においては、ソーラパネルに円形の開口が形成されており、その開口と平面視において重なるようにループアンテナが配置されている。特許文献2においては、ソーラパネルよりも径の大きいループアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-132684号
【文献】特開2013-64723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、ソーラパネルに形成される開口は発電に寄与しない領域となり、その分ソーラパネルにおける発電量が低下してしまう。また、特許文献2においては、アンテナの径によっては、ソーラパネルの径(発電面積)が小さくなり、発電量が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、発電量を維持しつつ、ソーラパネルによるループアンテナの感度への影響を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)文字板と、前記文字板を透過した光が入射されることで発電するソーラパネルと、ループアンテナと、を有し、前記ループアンテナのうち電流分布の極値となる極値位置は、平面視において、前記ソーラパネルのうち発電に寄与しない非発電領域に沿う位置にある、ソーラパネル付き時計。
【0007】
(2)(1)において、前記ループアンテナは、一端側の第1給電位置と、他端側の第2給電位置と、を含み、前記極値位置は、前記第1給電位置又は前記第2給電位置からの長さが、前記ループアンテナの周の長さの2分の1となる位置である、ソーラパネル付き時計。
【0008】
(3)(1)又は(2)において、前記非発電領域の少なくとも一部は、平面視において、前記ループアンテナの中心位置と、前記極値位置との間に配置されている、ソーラパネル付き時計。
【0009】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、前記ループアンテナは、平面視において、前記非発電領域と、前記ソーラパネルの外縁との間に配置されている、ソーラパネル付き時計。
【0010】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記極値位置は、前記非発電領域よりも径方向の外側で前記非発電領域に隣り合う位置にある、ソーラパネル付き時計。
【0011】
(6)(1)~(5)のいずれかにおいて、前記極値位置は、その周辺に生じる磁界の少なくとも一部が前記非発電領域に生じる位置にある、ソーラパネル付き時計。
【0012】
(7)(1)~(6)のいずれかにおいて、表示画面を備える表示装置をさらに有し、前記文字板には、前記表示画面を外部から視認させる第1開口部が形成されており、前記非発電領域は、平面視において前記第1開口部と重なると共に前記表示画面を外部から視認させる第2開口部である、ソーラパネル付き時計。
【0013】
(8)(7)において、前記ループアンテナは、上下方向において、前記表示装置との間に隙間を形成するように配置されており、前記極値位置は、その周辺に生じる磁界の少なくとも一部が前記隙間に生じる位置にある、ソーラパネル付き時計。
【0014】
(9)(7)又は(8)において、前記表示装置は、少なくとも、液晶層と、前記液晶層を挟む一対の電極層と、を含む液晶表示装置であって、前記ソーラパネルは、少なくとも、半導体層と、前記半導体層を挟む一対の電極層と、を含み、前記液晶層を挟む一対の電極層の厚みは、前記半導体層を挟む一対の電極層の厚みよりも薄い、ソーラパネル付き時計。
【0015】
(10)(7)~(9)のいずれかにおいて、前記表示装置は、平面視において前記表示画面を囲む、非金属製の縁部を含み、前記ループアンテナの少なくとも一部は、平面視において、前記縁部に重なるように設けられている、ソーラパネル付き時計。
【0016】
(11)(7)~(10)のいずれかにおいて、前記ループアンテナは、前記表示画面の外形に合わせて屈曲する屈曲部を含んでいる、ソーラパネル付き時計。
【0017】
(12)(11)において、前記極値位置は、前記ループアンテナのうち前記屈曲部以外の部分に位置している、ソーラパネル付き時計。
【0018】
(13)(1)~(6)のいずれかにおいて、前記文字板は、小窓部を有し、前記小窓部を介して視認される表示が設けられる、非金属製の表示板を有し、前記非発電領域は、平面視において、前記小窓部に重なるように設けられている、ソーラパネル付き時計。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明の(1)~(13)の側面によれば、発電量を維持しつつ、ソーラパネルによるループアンテナの感度への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るソーラパネル付き時計を示す平面図である。
【
図2】本実施形態におけるムーブメントを上側から見た様子を示す平面図である。
【
図3】本実施形態におけるムーブメントを上側から見た様子を示す平面図である。
【
図4】
図1及び
図3のIV-IV切断線で切り取った断面を示す断面図である。
【
図5】
図1及び
図3のV-V切断線で切り取った断面を示す断面図である。
【
図6A】本実施形態のループアンテナを模式的に示す図である。
【
図6B】本実施形態のループアンテナの電流分布を示す図である。
【
図7】変形例におけるソーラパネルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
[ソーラパネル付き時計の概要]
図1は、本実施形態に係るソーラパネル付き時計1(以下、単に「時計1」ともいう)を示す平面図である。
【0023】
図1には、時計1の外装ケース(時計ケース)の一部を構成する胴10、胴10内に配置された文字板3、時刻を示す時刻針である時針15、分針16、秒針17が示されている。外装ケースは、ステンレスやチタン合金等の金属製であるとよい。また、文字板3には所定の位置に時字18が設けられている。また、胴10の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部11が伸びている。また、胴10の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うためのボタン12、竜頭13が配置されている。また、文字板3の1時側及び11時側のそれぞれにサブダイヤルSDが設けられている。なお、
図1に示した時計のデザインは一例である。
【0024】
時計1は、文字板3を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防を有し、風防は胴10に取り付けられている。また、風防の反対側においては裏蓋が胴10に取り付けられている。本明細書では、時計1の厚み方向のうち、風防が設けられる側を上側、裏蓋が設けられる側を下側と呼ぶ。すなわち、
図1における紙面手前側を上側、
図1における紙面奥側を下側と呼ぶ。
【0025】
時計1は、中空の外装ケースの内側に、
図2に示すムーブメント50を収容している。ムーブメント50は、合成樹脂製の地板51を含み、地板51には、各種電子部品を実装する回路基板80(
図4、
図5参照)、二次電池、モータ、輪列その他駆動機構、及び後述のアンテナ基板41(
図3参照)などの複数の部品が組み付けられている。
【0026】
ムーブメント50には指針軸19が文字板3の上面から突出するように設けられており、その先端に秒針17、分針16、時針15が取り付けられている。
【0027】
時計1は、さらに、表示画面Mを含む液晶表示装置30を有する。表示画面Mには、時刻を示す数字や、他の情報を示す文字や記号がデジタル表示されるとよい。
図1においては、液晶表示装置30のうち表示画面Mが、文字板3に形成される開口部(第1開口部)3hを介して外部から視認される様子を示している。なお、
図1においては、表示画面Mにおける具体的な表示については省略している。
図1に示すように、表示画面Mの平面形状は略矩形である。ただし、これに限らず、表示画面Mの平面形状は円形等であっても構わない。
【0028】
詳細な図示は省略するが、液晶表示装置30は、少なくとも、液晶層と、液晶層を挟む一対の電極層(上部電極層及び下部電極層)と、が積層される積層構造を含んで構成される。この積層構造により表示画面Mにデジタル表示を行うことができる。なお、液晶表示装置30に含まれる一対の電極層は金属製であるとよい。
【0029】
また、液晶表示装置30は、平面視において表示画面Mを囲む非金属製(例えば、樹脂製)の縁部31を有しているとよい(
図3参照)。また、平面視における表示画面Mと縁部31との間の領域には、液晶表示装置30を駆動するためのドライバー回路等を含む液晶ドライバー回路部32が配置されているとよい(
図3参照)。
【0030】
時計1は、さらに、ソーラパネル2とループアンテナ40を有する(
図1~
図5参照)。
【0031】
[ソーラパネル]
次に、主に
図2を参照して、本実施形態のソーラパネル2の詳細について説明する。
図2は、本実施形態におけるムーブメントを上側から見た様子を示す平面図である。なお、
図2においては、ソーラパネル2よりも上側に配置される文字板3等の部材を省略して示している。
【0032】
以下の説明において、ソーラパネル2において、その外縁よりも径方向内側の領域であって発電に寄与しない領域を「非発電領域」と定義し、発電に寄与する領域を「発電領域」と定義する。なお、本明細書において、「径方向」とは、ある中心位置を通る軸線に対して直交する方向であって、平面視において中心位置から外側に向かう方向であると定義する。すなわち、ソーラパネル2における径方向とは、
図2に示す指針軸19が延びる方向に対して直交する方向であって、指針軸19から外側に向かう方向である。
【0033】
ソーラパネル2は、文字板3よりも下側に配置されており、文字板3を透過した光が入射されることで発電し、ムーブメント50に組み付けられている二次電池を充電するためのものである。なお、二次電池は、ムーブメント50に電力を供給すると共に、ソーラパネル2により発電された電力を蓄積するものであり、例えば、ボタン型のリチウム二次電池等であるとよい。
【0034】
ソーラパネル2は、少なくとも、半導体層と、半導体層を挟む一対の電極層(上部電極層及び下部電極層)と、を含む。ソーラパネル2の半導体層は、入射光を電気に変換する機能を有する層であり、例えば、アモルファスシリコン等からなるとよい。ただし、これに限られるものではなく、結晶シリコン等、他の半導体を半導体層として用いてもよい。ソーラパネル2の上部電極層は、光透過性を有する透明電極からなるとよい。ソーラパネル2の上部電極層は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、FTO(Fluorine-doped Tin Oxide)等からなるとよい。また、ソーラパネル2の下部電極層は、例えば、Al(アルミニウム)、Au(金)、Ag(銀)等からなるとよい。
【0035】
ソーラパネル2は、
図2に示すように、分割領域Dを介して互いに隣接して配置される複数のソーラセルCを含む。
図2においては、平面形状が略扇状の6つのソーラセルCを含むソーラパネル2を示している。すなわち、ソーラパネル2は、分割領域Dを介して6つのソーラセルCに区画されている。分割領域Dは、上述の下部電極層、半導体層、上部電極層が設けられていない領域である。なお、
図2に示す分割領域Dの数や配置は一例であって、これに限られるものではない。
【0036】
ソーラパネル2は、液晶表示装置30よりも上側に設けられている。そのため、
図2に示すように、ソーラパネル2には、液晶表示装置30の表示画面Mを外部に視認させる開口部(第2開口部)2hが形成されている。開口部2hは、発電に寄与しない非発電領域である。
【0037】
開口部2hは、表示画面Mの外形に沿う平面形状である。すなわち、本実施形態においては、開口部2hの平面形状は矩形である。なお、ソーラパネル2の非発電領域である開口部2hは、貫通穴であってもよいし、表示画面Mを外部から視認させる非金属製の透明部材で構成されるものであってもよい。文字板2に形成される開口部2hも同様である。
【0038】
ソーラパネル2の発電領域の少なくとも一部は、平面視において液晶表示装置30の液晶ドライバー回路部32と重なるように設けられているとよい。液晶ドライバー回路部32に外部からの光が入射すると、光励起が生じることで液晶表示装置30における消費電流が増加する可能性があるためである。本実施形態においては、
図2に示すように、開口部2hの大きさを、表示画面Mの大きさとほぼ同じとした。すなわち、平面視において開口部2hと重なるのは、液晶表示装置30の表示画面Mのみとした。このため、液晶表示装置30の液晶ドライバー回路部32は、ソーラパネル2の発電領域により遮蔽されることとなる。
【0039】
また、ソーラパネル2は、上下方向においてムーブメント50と文字板3の間に配置されており、指針軸19が貫通する貫通穴を有する。
図2に示す例においては、円形のムーブメント50の中心に配置される時刻針用の指針軸19が貫通する貫通穴に加えて、他の機能針用の指針軸が貫通する貫通穴が2つ形成されている例を示している。これら機能針は、
図1に示すサブダイヤルSDに配置される指針である。ただし、
図2に示すソーラパネル2は一例であって、時刻針以外の機能針が設けられていない時計においては、ソーラパネル2には機能針用の指針軸が貫通する貫通穴は形成されていないとよい。
【0040】
[ループアンテナの基本構成]
次に、
図3を参照して、ループアンテナの基本構成について説明する。
図3は、本実施形態におけるムーブメントを上側から見た様子を示す平面図である。なお、
図3においては、文字板3やソーラパネル2等、ループアンテナ40よりも上側に配置される部材を省略して示している。
【0041】
本実施形態においては、ループアンテナ40として13.56MHzの周波数を利用する近距離無線通信(NFC(Near Field Communication))用のアンテナを用いた。そのため、ループアンテナ40は、13.56MHzの電波を受信可能な長さである。本実施形態において、ループアンテナ40は、周方向の長さがλである、いわゆる磁界型の1波長ループアンテナである。
【0042】
ただし、ループアンテナ40は、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)を用いた他の近距離無線通信用のアンテナであってもよいし、標準電波やGPS(Global Positioning System)衛星などの時刻情報を含む衛星信号を受信するアンテナであってもよい。
【0043】
ループアンテナ40は、FPC(Flexible Printed Circuits)であるアンテナ基板41上に設けられているとよい。
図3においては、環状のアンテナ基板41上に、環状のループアンテナ40が設けられる例を示している。アンテナ基板41は、例えば、絶縁性の誘電体からなるとよい。
【0044】
なお、
図3においては、ループアンテナ40の平面形状を模式的に示しているが、実際には、ループアンテナ40は1本の巻き線(電線)が複数回巻かれてなるものであるとよい。
【0045】
ループアンテナ40は、巻き線の一端側の第1給電位置40a1と、巻き線の他端側の第2給電位置40a2と、を含む給電部40aを有している。
図3の例においては、給電部40aは、環状の外形を構成するループアンテナ40の本体部分より、径方向の外側に配置されている。また、本実施形態において、給電部40aは2時位置付近に配置されている。
【0046】
第1給電位置40a1は、下方に延びる給電バネ61(
図5参照)に接続される位置であり、第2給電位置40a2は、下方に延びる給電バネ62に接続される位置である。給電バネ61、62は、ムーブメント50に組付けられる回路基板80に電気的に接続されている。これにより、ループアンテナ40は、第1給電位置40a1、第2給電位置40a2を通じて、回路基板80との間で信号(電流)を受け渡すことができる。なお、回路基板80は、ループアンテナ40を介してデータの送受信を行うための通信回路を実装しているとよい。ただし、これに限られず、通信回路は、回路基板80とは別の基板に実装されていてもよい。
【0047】
[断面構造]
次に、
図4、
図5を参照して、時計1の断面構造について説明する。
図4は、
図1及び
図3のIV-IV切断線で切り取った断面を示す断面図である。具体的には、
図4は、液晶表示装置を通る切断線で切り取った断面を示す断面図である。
図5は、
図1及び
図3のV-V切断線で切り取った断面を示す断面図である。具体的には、
図5は、給電部40a近傍を通る切断線で切り取った断面を示す断面図である。
【0048】
なお、
図4、
図5においては、ループアンテナ40が設けられるアンテナ基板41の図示は省略している。また、
図4、
図5においては、ループアンテナ40やソーラパネル2の技術的特徴と関連性の小さい部材については適宜省略して図示している。また、
図5においては、切断端面より奥にある部材も示されている。具体的には、ボタン12のうち時計1内部に位置する部分や、給電バネ61、62が示されている。
【0049】
図4、
図5に示すように、ソーラパネル2は、文字板3よりも下側に配置されている。
図4に示すように、ソーラパネル2は、パネル支持板21により支持されているとよい。パネル支持板21は、地板51の一部であってもよいし、地板51とは別体であって、地板51に固定されるものであってもよい。
【0050】
また、ループアンテナ40は、ソーラパネル2よりも下側に配置されている。具体的には、ループアンテナ40は、ソーラパネル2の下面に設けられている。また、ループアンテナ40は、液晶表示装置30よりも上側に配置されている。具体的には、
図4に示すように、ループアンテナ40は、上下方向において、液晶表示装置30との間に隙間Gが形成されるように配置されている。また、
図5に示すように、ループアンテナ40の下側には磁性シート70が設けられている。
【0051】
図5に示すように、給電バネ61は、その上端部がループアンテナ40の第1給電位置40a1に接続されており、その下端部が回路基板80に接続されている。同様に、給電バネ62は、その上端部がループアンテナ40の第2給電位置40a2に接続されており、その下端部が回路基板80に接続されている。
【0052】
なお、本実施形態においては、給電部40aと回路基板80とを電気的に接続する部材として給電バネ61、62を示したが、これに限られず、給電用の配線やピン等を用いても構わない。
【0053】
また、
図4に示すように、液晶表示装置30は、表示画面Mを構成する液晶層を含む積層構造よりも下側に配置される導光板35と、光源であるLED36と、液晶ドライバー回路部32に接続されるFPC37を含んで構成される。なお、
図4に示す液晶表示装置30の形状や各部材の配置は一例であって、これに限られるものではない。
【0054】
[ループアンテナの周辺に生じる磁界]
主に
図3、
図6A、及び
図6Bを参照して、ループアンテナ40の周辺に生じる磁界について説明する。
【0055】
本実施形態においては、ループアンテナ40の環状の巻き線の内側の領域である受信面に外部からの電波(磁界)が通過することにより、ループアンテナ40の巻き線に電流が生じることとなる。また、アンペールの法則として知られるように、電流の大きさと、その周りに生じる磁界(磁場)の大きさとは比例するため、ループアンテナ40のうち電流分布の大きい部分ほど感度に影響を及ぼすこととなる。
【0056】
ここで、
図6A、
図6Bを参照して、本実施形態のループアンテナにおける電流分布を説明する。
図6Aは、本実施形態のループアンテナを模式的に示す図である。
図6Bは、本実施形態のループアンテナの電流分布を示す図である。なお、
図6Aにおいては、ループアンテナ40が真円である例を示しているが、これは電流分布の説明の便宜上模式的に示したものである。
【0057】
ループアンテナ40は、周方向の長さがλである、いわゆる1波長ループアンテナである。そのため、給電部40aの反対側の位置は、給電部40aから周方向にλ/2離れた位置となる。
図6Bは、給電部40aから周方向にλ/2離れた位置においてループアンテナを展開して、直線状で表した様子を示している。なお、
図6A、
図6Bにおいては、ループアンテナ40を展開した際の一端側を「a」、他端側を「a’」で示している。
【0058】
図6Bに示すように、ループアンテナ40においては給電部40aが電流分布の腹となる。また、給電部40aからλ/4離れた位置が電流分布の節となる。また、給電部40aからλ/2離れた位置が電流分布の腹となる。
【0059】
すなわち、ループアンテナ40においては、給電部40aと、給電部40aからλ/2離れた位置(以下、極値位置40bという)とにおいて、電流分布は極値をとることとなる。極値位置40bは、給電部40aからの長さが、ループアンテナ40の周の長さ(λ)の2分の1となる位置である。より正確には、極値位置40bは、第1給電位置40a1又は第2給電位置40a2のいずれか一方からの長さが、ループアンテナ40の周の長さ(λ)の2分の1となる位置である。
【0060】
ここで、ループアンテナ40の周辺に生じる磁界が、金属に影響を受けると、ループアンテナ40の感度が低下してしまう。特に電流分布の極値となる位置の周辺に生じる磁界が金属に影響を受けると、ループアンテナ40の感度が低下しやすくなる。
【0061】
本実施形態においては、極値位置40bの周辺において、金属等の影響を少なくすることにより、ループアンテナ40の感度(通信性能)を向上させる構成を採用した。具体的には、本実施形態においては、
図3に示すように、極値位置40bを、平面視において、ソーラパネル2のうち発電に寄与しない非発電領域である開口部2hに沿う位置とした。すなわち、極値位置40bを、平面視において、開口部2hに隣り合う位置とした。より具体的には、極値位置40bを、平面視において、開口部2hよりも径方向の外側で開口部2hに隣り合う位置とした。このため、極値位置40bに流れる電流に寄与する外部からの磁界の少なくとも一部は、磁気的な影響が小さい開口部2hに生じることとなる。その結果、ソーラパネル2の影響を受けることによるループアンテナ40の感度の低下を抑制できる。
【0062】
なお、本実施形態において、極値位置40bの周辺に生じる磁界は、液晶表示装置30による影響を受ける。液晶表示装置30は、上述のように、金属製の電極層を含むためである。しかしながら、液晶表示装置30による磁気的な影響は、ソーラパネル2による磁気的な影響に対して小さい。液晶表示装置30に含まれる一対の電極層の厚み、ソーラパネル2に含まれる一対の電極層の厚みと比較して薄いためである。なお、一対の電極層の厚みとは、上部電極層と下部電極層の合計の厚みである。
【0063】
また、液晶表示装置30は、平面視における全面に電極層を含んではいない。すなわち、液晶表示装置30のうち、表示画面Mの周辺の縁部31は金属を含んでいない。そのため、極値位置40bの周辺に生じる磁界の少なくとも一部は、磁気的な影響が小さい縁部31に生じることとなる。それにより、ループアンテナ40の感度が低下することが抑制される。
【0064】
さらに、
図4に示すように、本実施形態においては、ループアンテナ40は、上下方向(時計1の厚み方向)において、液晶表示装置30との間に隙間Gを形成するように配置されている。そのため、極値位置40bの周辺に生じる磁界の少なくとも一部は、この隙間Gに生じることとなる。それにより、ループアンテナ40の感度が低下することが抑制される。
【0065】
[ループアンテナの平面形状の詳細]
さらに、主に
図3を参照して、本実施形態のループアンテナ40の平面形状の詳細について説明する。
【0066】
図3に示すように、本実施形態において、表示画面Mは、指針軸19よりも6時側の位置に配置されると共に、3時側と9時側を結ぶ方向が長手である略長方形である。また、
図3に示すように、表示画面Mの右角部MRは5時位置付近に位置しており、表示画面Mの左角部MLは7時位置付近に位置している。
【0067】
ループアンテナ40は、環状であって、表示画面Mの右角部MRの形状に合わせて屈曲する屈曲部42Rと、表示画面Mの左角部MLの形状に合わせて屈曲する屈曲部42Lと、表示画面Mの下辺に沿う直線状の直線部43と、を含む形状である。
【0068】
ループアンテナ40の屈曲部42L、42Rは、平面視において、液晶表示装置30の表示画面Mと重ならず、かつ液晶表示装置30の縁部31及び液晶ドライバー回路部32と重なるように設けられている。同様に、ループアンテナ40の直線部43は、平面視において、液晶表示装置30の表示画面Mと重ならず、かつ液晶表示装置30の縁部31及び液晶ドライバー回路部32と重なるように設けられている。
【0069】
このように、ループアンテナ40が屈曲部42L、42R及び直線部43を含む形状であることより、液晶表示装置30の表示画面Mの面積を広くすることが可能となる。そのため、表示画面Mのデジタル表示の視認性を向上することができる。
【0070】
また、ループアンテナ40が屈曲部42L、42R及び直線部43を含む形状であることより、極値位置40bを開口部2hにより近い位置とすることができる。そのため、極値位置40bの周辺に生じる磁界はソーラパネル2による影響を受けにくく、ループアンテナ40の感度をより向上することができる。
【0071】
また、本実施形態においては、
図3に示すように、上述の極値位置40bは、直線部43に位置している。すなわち、極値位置40bは、金属製の胴10と近接する位置にある屈曲部42L、42R以外の部位に位置している。このため、ループアンテナ40は、極値位置40bが屈曲部42L、42Rに位置している場合と比較して、金属製の胴10による影響を受けにくい構成となっている。また、極値位置40bが屈曲部42L、42Rに位置している場合と比較して、極値位置40bに流れる電流が安定し、ループアンテナ40の感度が低下することが抑制される。
【0072】
また、本実施形態においては、
図3で示すように、ループアンテナ40は、平面視において、ムーブメント50の地板51の内側であって、地板51の外縁から径方向に離間する位置に設けられている。そのため、ループアンテナ40は、金属製の胴10(
図3においては不図示)から十分に距離をとって配置されることとなる。そのため、ループアンテナ40は胴10による感度の影響は受けにくい。
【0073】
また、本実施形態においては、
図3に示すように、表示画面Mの少なくとも一部は、平面視において、指針軸19と、極値位置40bとの間に配置されている。すなわち、ソーラパネル2の開口部2hの少なくとも一部は、平面視において、ループアンテナ40の中心位置と、極値位置40bとの間に配置されている。
【0074】
また、ループアンテナ40は、平面視において、開口部2hと、ソーラパネル2の外縁との間に配置されている。すなわち、ソーラパネル2の径は、ループアンテナ40の径よりも大きい。このような構成のため、ループアンテナ40の径の大きさを確保しつつ、ソーラパネル2における発電量を維持することができる。
【0075】
[まとめ]
以上説明した本実施形態においては、極値位置40bが、平面視において、ソーラパネル2のうち発電に寄与しない開口部2hに沿う位置にあるという構成を採用したことより、ソーラパネル2による、ループアンテナ40の感度への影響を抑制することができる。また、ソーラパネル2にループアンテナ40の形状に合わせた開口を形成する必要がないため、上記特許文献1の構成と比較して、ループアンテナ40の径を大きくすると共に発電量を維持することができる。また、ソーラパネル2の径をループアンテナ40の径よりも大きくしたことより、上記特許文献2の構成と比較して、ソーラパネル2の発電領域の面積を確保することができ、発電量を向上する維持することができる。
【0076】
[変形例]
次に、
図7を参照して、本実施形態の変形例におけるソーラパネル102について説明する。
図7は、変形例におけるソーラパネルを示す平面図である。
図7においては、ソーラパネル2の下側に配置されるループアンテナ140を模式的に破線で示している。なお、変形例は、ソーラパネル2の非発電領域及びループアンテナの配置等が異なることを除いて、
図1~
図6を参照して説明した本実施形態と同様である。そのため、同様の構成についての説明は省略する。
【0077】
ソーラパネル102は、発電に寄与しない非発電領域である小窓部102hを有する。小窓部102hは、例えば、貫通穴であるとよい。
【0078】
図示は省略するが、ソーラパネル102の下側には、日にちを示す数字が表示される日板(表示板)が配置されている。日板の表示は、小窓部102hを介して、外部から視認される。また、図示は省略するが、変形例においては、文字板にも、平面視において小窓部102hと重なるように小窓部が設けられているとよい。なお、日板の代わりに、曜日を示す文字が表示される表示板等が設けられていても構わない。
【0079】
ループアンテナ140は、本実施形態で説明したループアンテナ40と同じ電流分布をとる。すなわち、給電位置140a、及び給電位置140aからλ/2離れた位置(
図7に示す極値位置140b)が、電流分布の極値となる。
【0080】
図7に示すように、変形例においては、給電位置140aを9時位置に配置し、極値位置140bを3時位置に配置した。また、小窓部102hを3時位置に配置した。すなわち、極値位置140bが、ループアンテナ140のうち小窓部102hに沿う部分に位置している。このため、極値位置140bの周辺に生じる磁界の少なくとも一部は、小窓部102hに生じることとなる。このような構成を採用するため、ソーラパネル102による磁気的な影響を抑制し、ループアンテナ140の感度を向上することができる。
【0081】
なお、変形例においては、本実施形態で説明した液晶表示装置30を有しない時計におけるソーラパネル102を示している。すなわち、ソーラパネル102は、
図2で示した開口部2hを有していない。ただし、これに限られず、小窓部102hに加えて、さらに
図2で示す開口部2hを有する構成であってもよい。
【0082】
[その他]
本実施形態においては、極値位置40bを、平面視において、ソーラパネル2のうち発電に寄与しない非発電領域である開口部2hに沿う位置としたが、これに限られず、電流分布の極値となる位置にある給電部40a(給電位置40a1又は給電位置40a2)を、平面視において、ソーラパネル2のうち発電に寄与しない非発電領域である開口部2hに沿う位置としてもよい。
【0083】
なお、本実施形態においては、表示装置として、液晶表示装置30を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、表示装置として、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等を採用してもよい。また、ソーラパネル付き時計1として腕時計を例に挙げて説明したが、これに限らず、懐中時計等であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 ソーラパネル付き時計、2,102 ソーラパネル、2h,102h 開口部、21 パネル支持板、3 文字板、3h 開口部、10 胴、11 バンド固定部、12 ボタン、13 竜頭、15 時針、16 分針、17 秒針、18 時字、19 指針軸、30 液晶表示装置、31 縁部、32 液晶ドライバー回路部、35 導光板、36 LED、37 FPC、40,140 ループアンテナ、40a,140a 給電部、40a1 第1給電位置、40a2 第2給電位置、40b,140b 極値位置、41 アンテナ基板、42L,42R 屈曲部、43 直線部、50 ムーブメント、51 地板、61,62 給電バネ、80 回路基板、M 表示画面。