(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】識別子設定システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/023 20060101AFI20240109BHJP
H04L 61/00 20220101ALI20240109BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20240109BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240109BHJP
B60L 1/00 20060101ALN20240109BHJP
B60L 3/00 20190101ALN20240109BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20240109BHJP
B60L 58/12 20190101ALN20240109BHJP
【FI】
B60R16/023 P
H04L61/00
H04L12/28 100A
H02J7/02 F
B60L1/00 L
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2021147706
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】平山 篤史
(72)【発明者】
【氏名】河本 倫典
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137947(JP,A)
【文献】特開2011-111039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0169466(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015224485(DE,A1)
【文献】国際公開第2012/131797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-16/08
H04L 12/28
H04L 61/00
H02J 7/02
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御装置と、前記複数の制御装置間を通信可能に接続する通信線と、前記複数の
制御装置の起動を相互に制御可能に接続する起動線と、を備えた識別子設定システムであ
って、
前記複数の制御装置は、
前記通信線と通信可能に構成された通信部と、
前記通信線を監視する監視部と、
識別子を設定する識別子設定部と、
前記制御装置の起動を制御する起動制御部と、
を備えており、
ここで、前記複数の制御装置のうち一の制御装置の前記識別子設定部で自装置の識別子が未設定であると判定した場合には、前記監視部が前記通信線を所定期間監視して、前記複数の制御装置から出力された識別子を取得するとともに、前記起動制御部が前記識別子を出力していない他の
同じ構成の制御装置を停止させるように前記起動線を制御し、
前記識別子設定部は前記監視部が前記通信線を所定期間監視して取得した識別子とは異なる識別子を自装置の識別子として設定し、前記起動制御部は前記識別子を出力していない他の
同じ構成の制御装置を起動させるように前記起動線を制御することを特徴とする、識別子設定システム。
【請求項2】
前記複数の制御装置のうち一の制御装置の前記識別子設定部で自装置の識別子が設定済
であると判定した場合には、前記識別子設定部が前記自装置の識別子を前記通信線に出力
し、
前記起動制御部は、前記複数の制御装置のうち他の制御装置を起動させるように前記起
動線を制御することを特徴とする、請求項1に記載の識別子設定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、識別子設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される通信システムは、CAN(Controller Area Network)通信によってマスタ装置と複数のスレーブ装置とが接続され、各スレーブ装置同士も識別子を設定するための通信線によって接続されている。マスタ装置は、かかるCAN通信を介してスレーブ装置にID設定信号を送信し、ID設定信号を受信したスレーブ装置は当該ID設定信号に基づくID(識別子)を記憶する。そして、ID設定信号を受信したスレーブ装置は、後続のスレーブ装置に対してID設定信号を出力し、該ID設定信号を受信したスレーブ装置は、マスタ装置から送信されるIDを記憶する。かかる方法によって、識別子を設定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような複数のスレーブ装置(例えば、制御装置)において、故障等の理由で一部のスレーブ装置を交換した場合、交換後のスレーブ装置に対して識別子を設定する(再設定する)必要がある。かかる識別子の設定は当該通信システムの管理者等によって手作業で実施することも可能であるが、複数のスレーブ装置を交換した場合には、設定変更の手順が煩雑になり、交換作業に時間がかかる虞がある。このため、スレーブ装置の交換時の識別子設定は自動で短時間に実施されることが好ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法によっては、マスタ装置から各スレーブ装置に対して複数回指令を送信する必要があるため、識別子を設定するスレーブ装置が多数ある場合には、識別子の設定時間が長くなる。また、CAN通信接続とはべつに、各スレーブ装置間を通信線によって接続させる必要があり、部品数が増加してコストが上昇することや、システムが大型化する傾向にあった。
【0006】
ここに開示される技術は、かかる問題を解決するためになされたものであり、複数の制御装置に対して、簡便な方法によって重複しない識別子を設定するための識別子設定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するべく、ここに開示される技術によって、以下の識別子設定システムが提供される。ここに開示される識別子設定システムは、複数の制御装置と、前記複数の制御装置間を通信可能に接続する通信線と、上記複数の制御装置の起動を相互に制御可能に接続する起動線と、を備えており、上記複数の制御装置は、上記通信線と通信可能に構成された通信部と、上記通信線を監視する監視部と、識別子を設定する識別子設定部と、上記制御装置の起動を制御する起動制御部と、を備えている。ここで、上記複数の制御装置のうち一の制御装置の上記識別子設定部で自装置の識別子が未設定であると判定した場合には、上記監視部が上記通信線を所定期間監視して、上記複数の制御装置から出力された識別子を取得するとともに、上記起動制御部が上記識別子を出力していない他の制御装置を停止させるように上記起動線を制御し、上記識別子設定部は上記監視部が上記通信線を所定期間監視して取得した識別子とは異なる識別子を自装置の識別子として設定し、上記起動制御部は上記識別子を出力していない他の制御装置を起動させるように上記起動線を制御することを特徴とする。
【0008】
上述した構成の識別子設定システムによれば、複数の制御装置のうち、一の制御装置において識別子が未設定の場合には、識別子を送信していない他の制御装置を一旦停止させる。これにより、複数の制御装置において識別子設定処理が並行して実行されることを防止し、識別子設定システム内において重複した識別子が設定されることを未然に防ぐことができる。すなわち、複数の制御装置に対して、簡便な方法によって重複しない識別子を設定することができる。また、一の制御装置において識別子設定処理を実行している間は、識別子が未設定の他の制御装置が停止状態にあるため、消費電力を節約することができる。
【0009】
ここに開示される識別子設定システムの好適な一態様では、上記複数の制御装置のうち一の制御装置の上記識別子設定部で自装置の識別子が設定済であると判定した場合には、上記識別子設定部が上記自装置の識別子を上記通信線に出力し、上記起動制御部は、上記複数の制御装置のうち他の制御装置を起動させるように上記起動線を制御することを特徴とする。
かかる構成によれば、より好適に簡便な方法によって重複しない識別子を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るバッテリシステムの一構成例を大まかに示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る演算処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る識別子設定処理方法を示すフロー図である。
【
図4】
図1に示すバッテリシステムの電池モジュールの交換の一例を示す模式図であり、(a)は交換のために取り外した状態を示し、(b)は交換のために設置した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ここに提案される識別子設定システムについての一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0012】
ここに開示される識別子設定システムの好適な実施形態の一つとして、複数の電池モジュールを備えたバッテリシステムを例として図を参照しつつ詳細に説明するが、本発明の適用対象をかかるバッテリシステムに限定する意図ではない。
バッテリシステムは、例えば、電気自動車等に用いられる車両搭載用電源として使用され得る。また、バッテリシステムは、充放電が可能な複数の単電池を備える蓄電装置としても使用され得る。
【0013】
図1は、バッテリシステム100の大まかな構成を示す図である。
図1を参照して、本実施形態におけるバッテリシステム100の全体構成について概略的に説明する。バッテリシステム100は、複数の電池モジュールA1~Anと、該複数の電池モジュールA1~An間を通信可能に接続する通信線20と、該複数の電池モジュールA1~An間に接続される起動制御線30と、を備えている。複数の電池モジュールA1~Anは、それぞれ、起動制御線30を介して演算処理装置40の起動を相互に制御することができる。ここで、通信線20は通信線の一例であり、起動制御線30は起動線の一例である。また、バッテリシステム100は、複数の電池モジュールA1~An、通信線20および起動制御線30の他に、複数の電池モジュールA1~Anを管理する電池ECU(Electrical Control Unit:電子制御ユニット)50を備えている。ただし、電池ECU50は必須の形態ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0014】
バッテリシステム100は、複数(n個:n≧2、ここで、nは整数である。)の電池モジュール(A1,A2,A3・・・,An)を備えている。
図1では、便宜上、n個の電池モジュールのうち、5つの電池モジュールA1,A2,A3,A4,Anのみを図示している。各電池モジュールは、それぞれ、複数の単電池61からなる単電池群60と、演算処理装置40と、を備えている。ここで、複数の電池モジュールA1~Anが有する演算処理装置40は、複数の制御装置の一例である。
【0015】
単電池群60は、少なくとも一つの単電池61を備えている。本実施形態の単電池群60には、複数の単電池61が設けられている。単電池61としては、例えば、種々の二次電池(例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池等)が使用され得る。例えば、複数の単電池群60は、
図1に示すように配線70を介して直列に接続されている。図示は省略するが、単電池群60は、外部端子を介してバッテリシステム100の外部負荷(または充電装置)と接続されることで、これらの単電池群60が充放電を実施することができる。なお、
図1の配線70では単電池群60を直列に接続しているが、並列に接続してもよい。
【0016】
単電池群60には、図示は省略するが、電圧検出部および温度検出部が装着されている。電圧検出部は、単電池群60が備える単電池61(本実施形態では、直列に接続された複数の単電池61)の電圧を検出する。温度検出部は、単電池群60が備える単電池61の温度、または、単電池61の近傍の温度を検出する。温度検出部には、温度を検出する各種素子(例えばサーミスタ等)を使用できる。ここで取得された単電池群60の状態は、例えば、設定された自装置の識別子と共に通信線20を介して電池ECU50に送信され得る。
【0017】
ここに開示される演算処理装置40は、
図2に示すように、通信部41と、識別子設定部42と、監視部43と、起動制御部44と、を備えている。演算処理装置40は、各部41~44に加えて、識別子記憶部45を備えている。
【0018】
演算処理装置40は、典型的には、マイクロコンピュータにより構成される。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されない。例えば、ホストコンピュータ等の外部機器からデータ等を受信するインターフェイス(I/F)と、予め定められたプログラムに沿って演算を行う中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMと、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置(記憶媒体)とを備えている。演算処理装置40の各機能は、予め定められたプログラムを実行するコンピュータとハードウェアとの協働によって具現化されうる。演算処理装置40は、予め定められたプログラムに沿って所定の演算処理を行い、演算結果から識別子を設定する。識別子設定処理によって設定された自装置の識別子は、識別子記憶部45に記憶される。ここで識別子記憶部45は不揮発性メモリである。
【0019】
演算処理装置40は、通信部41を介して通信線20(
図1参照)と接続する。各電池モジュールA1~Anは、例えば、通信線(CAN:Controller Area Network)を介して通信可能に接続されている。また、各電池モジュールA1~Anは、通信線20を介して電池ECU50にライン型接続されている。これにより、各電池モジュールA1~An間、および、各電池モジュールA1~Anと電池ECU50との間で、各種信号の送受信ができるように接続されている。
【0020】
図1に示すように、電池モジュールA1の演算処理装置40は、起動制御線30を介して電池モジュールA2や電池モジュールA3の演算処理装置40と接続される。また、電池モジュールA2の演算処理装置40も同様に、起動制御線30を介して電池モジュールA1や電池モジュールA3の演算処理装置40と接続される。各演算処理装置40には、起動制御線30Aを介して、IG(イグニッション)信号オン/オフが入力される。また、各演算処理装置40(より詳細には起動制御部44)は、起動制御線30BにIG信号オン/オフを出力することができる。ここで、IG信号とは、オンおよびオフ等の2つの状態を表す二値信号である。演算処理装置40は、起動制御線30Aを介してIG信号オンが入力された場合には、後述する識別子設定処理を開始する。一方で、起動制御線30Aを介してIG信号オフが入力された場合には、識別子設定処理を停止する。本実施形態において演算処理装置40の起動制御部44は、起動制御線30Bを介してIG信号オン/オフを出力することができる。すなわち、各電池モジュールA1~Anの起動制御部44は、起動制御線30BにIG信号オン/オフを出力することにより、同じ構成の他の演算処理装置40の識別子設定処理の起動および停止を制御可能に構成されている。
【0021】
識別子設定部42は、自装置の識別子を設定する。識別子設定部42は、後述する監視部43が所定期間、通信線20を監視した結果、複数の電池モジュールのうち他の電池モジュールの識別子と重複しない識別子を自装置の識別子として設定するように構成されている。設定された自装置の識別子は、通信線20を介して、送信CANIDとして一定周期で他の電池モジュールに送信される。この周期は例えば100ミリ秒である。なお、識別子設定部42における制御方法の詳細については後述する。
【0022】
監視部43は、通信線20を所定期間監視して、複数の電池モジュールのうち他の電池モジュールから送信される識別子を取得する。上述したように自装置の識別子として設定された識別子は、一定周期で送信されている。監視部43が通信線20を監視する所定期間は、例えば、他の電池モジュールが識別子を通信する周期よりも長ければよく、適宜調整することができる。
【0023】
次に、上述したバッテリシステム100を用いた識別子の設定方法について説明する。
図3は、バッテリシステム100の識別子設定処理のフローを示す図である。
ここでは、適宜、バッテリシステム100の電池モジュールA1~Anのうち、電池モジュールA3を電池モジュールA3'に交換し、電池モジュールA4を電池モジュールA4’に交換する場合を例にして、ここに開示される識別子設定方法について説明するが、当然ながらかかる識別子設定方法が適用される形態をこれに限定するものではない。
【0024】
図4(a)および(b)に示すように、複数の電池モジュールA1~Anのうち、例えば電池モジュールA3を電池モジュールA3’に交換し、電池モジュールA4を電池モジュールA4’に交換する場合には、バッテリシステム100を管理する管理者等によって、電池モジュールA3’および電池モジュールA4’が通信線20および起動制御線30と接続される。これにより、バッテリシステム100を構成する複数の電池モジュールA1~Anは、電池モジュールA3が電池モジュールA3’に交換され、電池モジュールA4が電池モジュールA4’に交換されたことを認識して、
図3に示すフローが開始される。電池モジュールA3’および電池モジュールA4’が交換される場合、典型的には、交換していない他の電池モジュールA1~Anは、識別子が設定済みであり、設定された自装置の識別子を送信している(後述するS15~S18)。
【0025】
図3のステップS10において、電池モジュールA3’の演算処理装置40の起動制御部44は、起動制御線30を介しIG信号オンが入力されるか否か判定する。演算処理装置40は、IG信号オンが入力されると識別子設定処理を開始する。IG信号オンが入力された場合(S10:YES)には、ステップS11に進む。なお、IG信号は識別子設定処理を開始する段階において、典型的には、電池モジュールA1に対して入力され、後続する電池モジュールに次々と入力されるように構成されている。
一方で、IG信号オンが入力されない場合(S10:NO)には、IG信号オンが入力されるまで待機する。
【0026】
ステップS11では、識別子設定部42は、自装置の識別子が未設定であるか否か判定する。交換された電池モジュールA3’は、識別子が未設定である(S11:YES)ため、ステップS12に進む。ここで、識別子が未設定であるとは、識別子記憶部45に自装置の識別子が記憶されておらず、識別子設定部42が自装置の識別子を読み出すことができない状態をいう。なお、交換された電池モジュール3’が別のバッテリシステムにおいて既に使用される等して、識別子記憶部45に有効でない識別子が設定されている場合には通信線20を介して初期化処理を実施してから、当該識別子設定処理を実行するとよい。かかる初期化処理は、例えば管理者等によって実施されればよい。
ステップS12では、監視部43が通信線20を所定期間監視する。ここで監視部43が通信線20を監視する期間は、上述したように他の電池モジュールが識別子を通信する周期よりも長ければよく、適宜調整することができる。
【0027】
上述したように、交換していない他の電池モジュールA1~Anは、設定された自装置の識別子を送信しているため、電池モジュールA3’の監視部43は、交換していない他の電池モジュールA1~Anから識別子を受信する。ステップS13では、電池モジュールA3’の起動制御部44は、識別子を送信していない他の電池モジュール(ここでは、電池モジュールA4’)の識別子設定処理を停止させるようにIG信号オフを起動制御線30に出力する。これにより、電池モジュールA4’の識別子設定処理が一旦停止される。すなわち、複数の電池モジュールを同時に交換した場合であっても、最も早くIG信号オンが入力された電池モジュール(ここでは、電池モジュールA3’)が識別子設定処理を実行している間に、他の電池モジュール(ここでは、電池モジュールA4’)においても識別子設定処理が実行されて、複数の電池モジュールで重複した識別子が設定されることを、防ぐことができる。
【0028】
ステップS14では、電池モジュールA3’の識別子設定部42は、監視部43が通信線20を監視した際に取得した識別子とは異なる識別子を、自装置の識別子として設定する。好適な一態様では、設定可能な識別子の中で、最も小さい識別子番号を自装置の識別子として設定するとよい。ここでは、例えば、電池モジュールA1の識別子が「ID1」と設定されているとき、電池モジュールA3’の監視部43は、識別子として例えば、ID1に対応するCANID101を受信する。同様にして、電池モジュールA2の識別子が「ID2」、電池モジュールA5の識別子が「ID5」と設定されているとき、電池モジュールA3’の監視部43は、ID2に対応するCANID201、ID5に対応するCANID501を受信する。このため、電池モジュールA3’の識別子設定部42は、自装置の識別子として「ID3」を設定するとよい。設定された識別子は自装置の識別子として識別子記憶部45において記憶される。これにより、電池モジュールA3が電池モジュールA3’に交換された場合であっても、識別子に紐づいて設定されていた各種の情報を引き継がせることができ、簡便に電池モジュールの交換を実施することができる。
【0029】
なお、ここで、ステップS12において監視部43が通信線20を所定期間監視した結果、識別子を受信しなかった場合についても説明する。識別子を受信しない場合に、起動制御部44は、複数の電池モジュールのすべてを停止させるようにIG信号オフを起動制御線30に出力する。これにより、識別子を送信していないすべての電池モジュールの識別子設定処理が一旦停止される。識別子を受信しない場合には、複数の電池モジュールのうち、他の電池モジュールにおいて既に設定(使用)されている識別子がないものと判断することができる。したがって、識別子設定部42は、任意の識別子を自装置の識別子として設定する。好適な一態様においては、最も小さい識別子番号(例えば「ID1」)を自装置の識別子として設定するとよい。設定された識別子は自装置の識別子として識別子記憶部45において記憶される。
【0030】
ステップS15では、電池モジュールA3’の識別子設定部42は、自装置の識別子として設定された識別子(ここでは、ID3に対応するCANID301)を、通信部41を介して通信線20へ送信する。送信方法は特に限定されないが、例えば、100ミリ秒の周期で送信するとよい。ステップS16では、電池モジュールA3’の起動制御部44は、起動制御線30に対してIG信号オンを出力する。ここで送信されるIG信号オンは、上述したように電池モジュールの識別子設定処理を開始させる。これにより、電池モジュールA4’の識別子設定処理が開始される。すなわち、複数の電池モジュールのうち識別子を送信していない(言い換えれば識別子が未設定である)電池モジュールを起動させて識別子設定処理を開始させることができる。
なお、電池モジュールA4’の識別子は、電池モジュールA3’の識別子設定処理ステップと同様のステップを実行することにより設定される。
【0031】
上述した構成の識別子設定システムは、複数の電池モジュールのうち一の電池モジュールにおいて識別子が未設定であり、識別子設定処理を実行する必要がある場合には、識別子を送信していない他の電池モジュールの識別子設定処理を一旦停止させる。これにより、複数の電池モジュールのうち一の電池モジュールにおいて識別子設定処理を実行している間に、他の電池モジュールにおいても並行して識別子設定処理が実行され、バッテリシステム内で重複した識別子が設定されることを未然に防ぐことができる。また、一の電池モジュールにおいて識別子設定処理を実行している間は、識別子が未設定の他の電池モジュールの識別子設定処理が停止状態にあるため、消費電力を節約することができる。
【0032】
一方で、識別子が設定済みである場合(S11:NO)について説明する。かかる識別子設定処理は、例えば電池モジュールA3を電池モジュールA3’に交換し、電池モジュールA4を電池モジュールA4’に交換する場合に、交換していない電池モジュール(例えば、
図4(b)に示す電池モジュールA2)において実行され得る。なお、ここで、識別子が設定済みであるとは、識別子記憶部45に自装置の識別子が記憶済みであって、識別子設定部42が自装置の識別子を読み出すことができる状態をいう。
【0033】
識別子が設定済みである場合(S11:NO)には、ステップS17に進む。ステップS17では、電池モジュールA2の識別子設定部42は、識別子記憶部45から自装置の識別子を読み出す。次いで、ステップS18では、電池モジュールA2の識別子設定部42は、読み出した識別子を自装置の識別子(ここでは、ID2)として設定する。設定された識別子は自装置の識別子として識別子記憶部45において記憶される。そして、ステップS15に進む。以降の処理は上述した処理と同様であるため、説明は省略する。
上述したようにここに開示される識別子設定システムによれば、自装置において識別子が設定済みである場合には、読み出した識別子を自装置の識別子として設定して当該識別子を通信線20に送信し、かつ、他の電池モジュールを起動させるようにIG信号オンを起動制御線30に出力して、識別子設定処理を開始させることができる。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形例に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形例を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0035】
例えば、上記した実施形態では、起動線による制御の一例として起動制御線30にIG信号を出力することにより、複数の電池モジュールのうち他の電池モジュールの起動を制御する構成について説明した。しかし、起動線による制御の方法はこれには限定されない。例えば、複数の電池モジュールA1~An間に電源供給が可能となるように電源供給線を接続し、かかる電源供給線を制御することにより他の電池モジュールの起動を制御してもよい。具体的には、上記した起動制御部44は、自装置の識別子が未設定である場合には、複数の電池モジュールのうち他の電池モジュールへの電源供給線からの電源供給を一時的に遮断することにより、同じ構成の他の電池モジュールを停止させる。そして、上述した識別子設定処理を実行したのちに、複数の電池モジュールのうち他の電池モジュールを起動させるように電源供給線から電源供給し、他の電池モジュールを起動させればよい。これにより、複数電池モジュールにおいて、自装置の識別子が未設定である場合に、他の電池モジュールにおいて識別子設定処理が並行して行われ、バッテリシステム内で重複した識別子が設定されることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0036】
20 通信線
30 起動制御線
30A 起動制御線
30B 起動制御線
40 演算処理装置
41 通信部
42 識別子設定部
43 監視部
44 起動制御部
45 識別子記憶部
60 単電池群
61 単電池
70 配線
100 バッテリシステム
A1、A2、A3、A4、A5、An 電池モジュール