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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】抗菌・防カビのポリエステル材料
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20240109BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240109BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20240109BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20240109BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A01N25/10
A01P3/00
A01N59/16 A
C08K9/02
C08L67/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021188169
(22)【出願日】2021-11-18
(65)【公開番号】P2023007326
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】110123923
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】劉 岳欣
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-502828(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143317(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056294(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103709669(CN,A)
【文献】国際公開第2010/098309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
C08L 67/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂基材と、
溶融押出成形により前記ポリエステル樹脂基材に分散する複数の機能性ポリエステルマスターバッチとを、含む抗菌・防カビのポリエステル材料であって、
前記機能性ポリエステルマスターバッチのそれぞれは、ポリエステル樹脂マトリックス及び抗菌・防カビ添加剤を含み、
前記抗菌・防カビ添加剤は、前記ポリエステル樹脂マトリックスに分散する複数のガラスビーズを含むと共に、前記ガラスビーズのそれぞれの外面に複数の銀ナノ粒子が分布していることにより、前記抗菌・防カビのポリエステル材料に抗菌・防カビ能力を付与し、
複数の前記ガラスビーズの中の少なくとも一部の前記ガラスビーズが前記抗菌・防カビのポリエステル材料の表層に分布していることにより、複数の前記銀ナノ粒子の少なくとも一部の前記銀ナノ粒子が外部環境に曝されると共に、前記抗菌・防カビのポリエステル材料に前記抗菌・防カビ能力を付与
前記ガラスビーズのそれぞれにおいて、前記ガラスビーズのマトリックスは、可溶性ガラス粉末であり、前記ガラスビーズの粒子径は、10μm以下であり、前記ガラスビーズの密度は、2~3g/cm であり、前記ガラスビーズの耐熱温度は、500℃以上である、ことを特徴とする抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項2】
前記抗菌・防カビのポリエステル材料を100wt%として、前記ポリエステル樹脂基材の含有量は、80~98wt%であり、複数の前記機能性ポリエステルマスターバッチの含有量は、2~20wt%であり、
前記機能性ポリエステルマスターバッチのそれぞれにおいて、前記抗菌・防カビ添加剤に対する前記ポリエステル樹脂マトリックスの重量比(前記ポリエステル樹脂マトリックス:前記抗菌・防カビ添加剤)は、70~99:1~30である、請求項1に記載の抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項3】
前記ガラスビーズのそれぞれにおいて、複数の前記銀ナノ粒子は、物理吸着(physical adsorption)により前記ガラスビーズの外面に分布している、請求項1に記載の抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項4】
前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、射出成形プロセス、押出成形プロセス、真空成形プロセス又はブリスター成形プロセルにより、延伸されたポリエステル材料を形成する、請求項1に記載の抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂基材は、ポリエチレンテレフタレートであると共に、前記機能性ポリエステルマスターバッチにおける前記ポリエステル樹脂マトリックスは、ポリエチレンテレフタレートであり、
前記ポリエステル樹脂基材は、第1の屈折率を有し、前記ポリエステル樹脂マトリックスは、第2の屈折率を有し、前記ガラスビーズは、第3の屈折率を有し、
前記第1の屈折率は、1.55~1.60であり、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率の95~105%であり、前記第3の屈折率は、前記第1の屈折率の95~105%である、請求項1に記載の抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項6】
前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、80%以上の可視光透過率及び5%以下のヘイズ値を有する、請求項5に記載の抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項7】
前記機能性ポリエステルマスターバッチにおける前記ポリエステル樹脂マトリックスは、低い結晶化度を有するポリエチレンテレフタレートであると共に、前記ポリエステル樹脂マトリックスの結晶化度は、5~15%である、請求項5に記載の抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂基材に分散する抗酸化剤及びスリップ剤を更に含み、前記抗菌・防カビのポリエステル材料の総重量を100wt%として、前記抗酸化剤の含有量は、0.1~1.0wt%であり、前記スリップ剤の含有量は、0.1~1.0wt%である、請求項1に記載の抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項9】
前記抗菌・防カビ添加剤は、細菌・カビに対して抗菌力・防カビ能力を有し、
前記細菌は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、サルモネラ、緑膿菌及び薬剤耐性黄色ブドウ球菌を含み、
前記カビは、クロコウジカビ、ペニシリウム・ピノフィラム、カエトミウム グロボスム、グリオクラディウム・ビレンス及びアウレオバシジウム・プルランスを含む、請求項1に記載の抗菌・防カビのポリエステル材料。
【請求項10】
ポリエステル樹脂基材と、抗菌・防カビ添加剤とを含む抗菌・防カビのポリエステル材料であって、
前記抗菌・防カビ添加剤は、前記ポリエステル樹脂基材に分散する複数のガラスビーズを含むと共に、前記ガラスビーズのそれぞれの外面に複数の銀ナノ粒子が分布していることにより、前記抗菌・防カビのポリエステル材料に抗菌・防カビ能力を付与し、
複数の前記ガラスビーズの中の少なくとも一部の前記ガラスビーズが前記抗菌・防カビのポリエステル材料の表層に分布していることにより、複数の前記銀ナノ粒子の少なくとも一部の前記銀ナノ粒子が外部環境に曝されると共に、前記抗菌・防カビのポリエステル材料に前記抗菌・防カビ能力を付与
前記ガラスビーズのそれぞれにおいて、前記ガラスビーズのマトリックスは、可溶性ガラス粉末であり、前記ガラスビーズの粒子径は、10μm以下であり、前記ガラスビーズの密度は、2~3g/cm であり、前記ガラスビーズの耐熱温度は、500℃以上である、ことを特徴とする抗菌・防カビのポリエステル材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル材料に関し、特に、抗菌・防カビのポリエステル材料に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生上の配慮に基づいて、食品包装材料や医療・衛生設備などの材料の表面は、通常、抗菌性及び防カビ能力が要求されている。これらの材料の表面に抗菌性・防カビ性を持たせるために、既存の技術はほとんど、コーティング法又はスプレー法によって実現されている。これらの方法を使用すると、材料を良好な透明性を維持させることができるが、抗菌・防カビ効果を長期間維持することができない。さらに、これらの材料の表面で対応できる細菌・カビの種類は限られている。
【0003】
又、従来技術において、内部添加法を採用することにより、材料の表面に抗菌・防カビ性を付与することもある。しかしながら、内部添加法で使用されたマスターバッチの担体は、材料の透明度とヘイズ値に大きく影響し、例えば、材料の透明度が大幅に低下し、材料のヘイズ値が大幅に増加することがある。
【0004】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、抗菌・防カビのポリエステル材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、抗菌・防カビのポリエステル材料を提供することである。前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、ポリエステル樹脂基材と、溶融押出成形により前記ポリエステル樹脂基材に分散する複数の機能性ポリエステルマスターバッチとを、含み、なかでも、前記機能性ポリエステルマスターバッチのそれぞれは、ポリエステル樹脂マトリックス及び前記抗菌・防カビ添加剤を含み、前記抗菌・防カビ添加剤は、前記ポリエステル樹脂マトリックスに分散する複数の前記ガラスビーズを含むと共に、前記ガラスビーズのそれぞれの外面に複数の銀ナノ粒子が分布していることにより、前記抗菌・防カビのポリエステル材料に抗菌・防カビ能力を付与する。
【0007】
好ましくは、前記抗菌・防カビのポリエステル材料を100wt%として、前記ポリエステル樹脂基材の含有量は、80~98wt%であり、複数の前記機能性ポリエステルマスターバッチの含有量は、2~20wt%であり、なかでも、前記機能性ポリエステルマスターバッチのそれぞれにおいて、前記抗菌・防カビ添加剤に対する前記ポリエステル樹脂マトリックスの重量比(前記ポリエステル樹脂マトリックス:前記抗菌・防カビ添加剤)は、70~99:1~30である。
【0008】
好ましくは、前記ガラスビーズのそれぞれにおいて、複数の前記銀ナノ粒子は、物理吸着(physical adsorption)により前記ガラスビーズの前記外面に分布している。
【0009】
好ましくは、前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、射出成形プロセス、押出成形プロセス(例えば、シート材、板材又はフィルム材となるように押出成形する)、真空成形プロセスやブリスター成形プロセルにより、延伸されたポリエステル材料を形成する。
【0010】
好ましくは、前記抗菌・防カビのポリエステル材料において、複数の前記ガラスビーズの中の少なくとも一部の前記ガラスビーズが前記抗菌・防カビのポリエステル材料の表層に分布していることにより、複数の前記ナノ銀粒子の少なくとも一部の前記ナノ銀粒子が外部環境に曝されると共に、前記抗菌・防カビのポリエステル材料に前記抗菌・防カビ能力を付与する。
【0011】
好ましくは、前記ポリエステル樹脂基材は、ポリエチレンテレフタレートであると共に、前記機能性ポリエステルマスターバッチにおける前記ポリエステル樹脂マトリックスは、ポリエチレンテレフタレートであり、なかでも、前記ポリエステル樹脂基材は、第1の屈折率を有し、前記ポリエステル樹脂マトリックスは、第2の屈折率を有し、前記ガラスビーズは、第3の屈折率を有し、前記第1の屈折率は、1.55~1.60であり、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率の95~105%であり、前記第3の屈折率は、前記第1の屈折率の95~105%である。
【0012】
好ましくは、前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、80%以上の可視光透過率及び5%以下のヘイズ値を有する。
【0013】
好ましくは、前記機能性ポリエステルマスターバッチにおける前記ポリエステル樹脂マトリックスは、低い結晶化度を有するポリエチレンテレフタレートであると共に、前記ポリエステル樹脂マトリックスの結晶化度は、5~15%である。
【0014】
好ましくは、前記ガラスビーズのそれぞれにおいて、前記ガラスビーズのマトリックスは、可溶性ガラス粉末であり、前記ガラスビーズの粒子径は、10μm以下であり、前記ガラスビーズの密度は、2~3g/cmであり、前記ガラスビーズの耐熱温度は、500℃以上である。
【0015】
好ましくは、前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、前記ポリエステル樹脂基材に分散する抗酸化剤及びスリップ剤を含み、なかでも、前記抗菌・防カビのポリエステル材料の総重量を100wt%として、前記抗酸化剤の含有量は、0.1~1.0wt%であり、前記スリップ剤の含有量は、0.1~1.0wt%である。
【0016】
好ましくは、前記抗菌・防カビ添加剤は、細菌・カビに対して抗菌力・防カビ能力を有し、前記細菌は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、サルモネラ、緑膿菌及び薬剤耐性黄色ブドウ球菌を含み、前記カビは、クロコウジカビ、ペニシリウム・ピノフィラム、カエトミウム グロボスム、グリオクラディウム・ビレンス及びアウレオバシジウム・プルランスを含む。
【0017】
上記の技術的課題を解決するために、抗菌・防カビのポリエステル材料を提供することである。前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、ポリエステル樹脂基材と、抗菌・防カビ添加剤とを含み、前記抗菌・防カビ添加剤は、ポリエステル樹脂基材に分散する複数の前記ガラスビーズを含むと共に、前記ガラスビーズのそれぞれの外面に複数の銀ナノ粒子が分布していることにより、前記ポリエステル材料に抗菌・防カビ能力を付与する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有利な効果として、本発明に係る抗菌・防カビのポリエステル材料は、「ポリエステル材料に抗菌・防カビ添加剤を導入する」及び、「抗菌・防カビ添加剤は、ポリエステル材料に分散する複数のガラスビーズを含むと共に、ガラスビーズのそれぞれの外面に複数の銀ナノ粒子が分布している」といった技術特徴により、良好な抗菌・防カビ能力を有すると共に、高い透明度及び低いヘイズ値を維持することができる。前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、一定時間を使用しても、良好な抗菌・防カビ能力を維持すると共に、前記抗菌・防カビのポリエステル材料の応用が見込め、例えば、抗菌・防カビ能力が要求された食品包装材料や医療・衛生設備に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一実施形態に係る抗菌・防カビのポリエステル材料を示す模式図である
図2図1におけるII部分の部分拡大図である。
図3】ガラスビーズ及びナノ銀粒子が材料の表面に曝されることを示す模式図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る抗菌・防カビのポリエステル材料を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
以下、所定の具体的な実施態様を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0022】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0023】
[第一実施形態]
図1~3に示すように、本発明に係る第一実施形態において、抗菌・防カビのポリエステル材料100(antibacterial and antifungal polyester material)を提供する。前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、良好な抗菌・防カビ能力を有すると共に、高い透明度及び低いヘイズ値を維持することができる。又、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、一定時間を使用しても、ある程度の抗菌・防カビ能力を維持すると共に、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100の抗菌・防カビ能力は、比較的に多い細菌とカビの種類に対応することができる。尚、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100の応用が見込め、例えば、抗菌・防カビ能力が要求された食品包装材料や医療・衛生設備に応用することができる。
【0024】
上述した目的を達成するために、本実施形態の抗菌・防カビのポリエステル材料100は、ポリエステル樹脂基材1(polyester resin base material)と、溶融押出成形によりポリエステル樹脂基材1に分散する複数の機能性ポリエステルマスターバッチ2(functional polyester master-batches)を含む。なかでも、本実施形態の抗菌・防カビのポリエステル材料100は、機能性ポリエステルマスターバッチ2の導入により抗菌・防カビ能力を付与する。
【0025】
より具体的に説明すると、前記機能性ポリエステルマスターバッチ2のそれぞれは、ポリエステル樹脂マトリックス21(polyester resin matrix material)と、抗菌・防カビ添加剤22(antibacterial and antifungal additive)とを含む。なかでも、前記抗菌・防カビ添加剤22は、ポリエステル樹脂マトリックス21に分散する複数のガラスビーズ22a(glass beads)を含み、前記ガラスビーズ22aのそれぞれの外面に複数の銀ナノ粒子22b(silver nanoparticles)が分布している。それによって、本実施形態の抗菌・防カビのポリエステル材料100は、機能性ポリエステルマスターバッチ2の導入により抗菌・防カビ能力(abilities of antibacterial and antifungal properties)を付与する。
【0026】
より詳しく説明すると、複数の銀ナノ粒子22bは、前記ガラスビーズ22aの外面に均一に分布していることから、複数の前記銀ナノ粒子22bは、互いに凝集することがないと共に、ガラスビーズ22aの外面にナノサイズで分散し、それによって、前記抗菌・防カビ能力を与える。
【0027】
説明すべきことは、前記ガラスビーズ22a及びその外面に分布する複数の銀ナノ粒子22bは、機能性ポリエステルマスターバッチ2を介してポリエステル樹脂基材1に分散され、それによって、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、ナノサイズで分散している複数の銀ナノ粒子22bを含むことにより、抗菌・防カビ能力を有する。
【0028】
含有量について、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100の総重量を100wt%として、前記ポリエステル樹脂基材1の含有量は、80~98wt%であることが好ましく、90~98wt%であることは特に好ましい。尚、複数の前記機能性ポリエステルマスターバッチ2の含有量は、2~20wt%であることが好ましく、2~10wt%であることは特に好ましい。
【0029】
更に説明すると、前記機能性ポリエステルマスターバッチ2のそれぞれにおいて、前記ポリエステル樹脂マトリックス21と前記抗菌・防カビ添加剤22(ガラスビーズ22a及び銀ナノ粒子22bを含む)との重量比は、70~99:1~30であることが好ましく、85~95:5~15であることが特に好ましい。全体的に、抗菌・防カビのポリエステル材料100において、複数の前記銀ナノ粒子22bの含有量は、0.1~5.0wt%であることが好ましく、0.2~2.0wt%であることが特に好ましい。
【0030】
上述した構成により、前記機能性ポリエステルマスターバッチ2における抗菌・防カビ添加剤22は、抗菌・防カビのポリエステル材料に十分な抗菌・防カビ性を与える。前記抗菌・防カビ添加剤22の含有量が前記含有量の下限値より低くなると、前記ナノ銀粒子22の濃度が足りないことがあるため、十分な抗菌・防カビ性を付与することができない。一方、前記抗菌・防カビ添加剤22の含有量が前記含有量の上限値より高くなると、前記ガラスビーズ22aの濃度が高すぎとなることがあるため、ポリエステル樹脂基材1に均一に分散されることができないと共に、過量のガラスビーズ22aは、ポリエステル材料の透過性、ヘイズ値及び成形効果に影響することがある。
【0031】
本発明の一つの実施形態において、前記ガラスビーズ22aのそれぞれにおいて、複数の前記銀ナノ粒子22bは、物理吸着(physical adsorption)によりガラスビーズ22aの外面に分布しているが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0032】
特筆すべきことは、前記銀ナノ粒子22bは、ガラスビーズ22aを担体にすると共に、ナノサイズでガラスビーズ22aの外面に分散されることから、前記銀ナノ粒子22bは凝集しにくくなる。尚、前記機能性ポリエステルマスターバッチ2は、溶融押出により、ポリエステル樹脂基材1に分散する時に、前記ガラスビーズ22aが破裂する場合があるが、ほとんどの銀ナノ粒子22bは依然として、凝集することがなく、ナノサイズでガラスビーズ22aの外面に分散・付着されることによって、十分な抗菌・防カビ能力を与える。
【0033】
本発明の一つの実施形態において、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100において、複数の前記ガラスビーズ22aの中の少なくとも一部のガラスビーズ22aが抗菌・防カビのポリエステル材料100の表層に分布していることにより、複数の前記ナノ銀粒子22bの少なくとも一部のナノ銀粒子22bが外部環境に曝されると共に、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100に抗菌・防カビ能力を付与する。
【0034】
本発明の一つの実施形態において、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、延伸されることで、延伸されたポリエステル材料を形成することができる。例えば、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、射出成形プロセス(injection molding process)、真空成形プロセス(vacuum forming process)、押出成形プロセス(extrusion process)又はブリスター成形プロセル(blister molding process)により、延伸されたポリエステル材料を形成する。前記延伸されたポリエステル材料は例えば、抗菌・防カビ能力が要求された食品包装材料や医療・衛生設備に応用することができる。
【0035】
説明すべきことは、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100が延伸された後に、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100の表層に分布しているガラスビーズ22aは、抗菌・防カビのポリエステル材料100の表面により突出し(図3を参照)、それによって、外部環境に曝されたナノ銀粒子22bの数が増加することで、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100の抗菌・防カビ能力をより高くにすることができる。
【0036】
ポリエステル樹脂基材の材料として、前記ポリエステル樹脂基材1は、抗菌・防カビのポリエステル材料100のマトリックスであると共に、二塩基酸と二価アルコール又は、その誘導体との縮合重合反応により得たものである。尚、前記機能性ポリエステルマスターバッチ2におけるポリエステル樹脂マトリックス21も、二塩基酸と二価アルコール又はその誘導体)との縮合重合反応により得たものである。
【0037】
前記ポリエステル材料を形成するための二塩基酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、1,4-ナフタル酸、ジ安息香酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸及びドデカンジオン酸の中の少なくとも1つである。尚、前記ポリエステル材料を形成するための二価アルコールは、エチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,10-デカンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンの中の少なくとも1つである。
【0038】
本発明の一つの実施形態において、前記二塩基酸は、テレフタル酸であると共に、前記二価アルコールはエチレングリコールである。それによって、前記ポリエステル材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。即ち、前記ポリエステル樹脂基材1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることは好ましく、又、前記機能性ポリエステルマスターバッチ2におけるポリエステル樹脂マトリックス21も、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることは好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0039】
特筆すべきことは、図1に示すように、前記ポリエステル樹脂基材1の材質は、ポリエステル樹脂マトリックス21の材質は基本的に同一であるため、前記ポリエステル樹脂基材1とポリエステル樹脂マトリックス21との相容性が良好であり、明瞭な境界が存在しない。
【0040】
本発明の一つの実施形態において、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100に高い透明度及び低いヘイズ値を維持させるため、異なる材料の屈折率の間に対応関係を有する。
【0041】
例えば、前記ポリエステル樹脂基材1は、第1の屈折率を有し、前記ポリエステル樹脂マトリックス21は、第2の屈折率を有し、且つ前記ガラスビーズ22aは、第3の屈折率を有する。なかでも、前記第1の屈折率は、1.55~1.60であり、1.57~1.59であることが特に好ましい。尚、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率の95~105%であり、前記第3の屈折率は、前記第1の屈折率の95~105%である。
【0042】
上述した異なる材料の屈折率の間の対応関係によると、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、高い透明度及び低いヘイズ値を果たせる。
【0043】
例えば、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100の可視光透過率(visible light transmittance)は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。前記抗菌・防カビのポリエステル材料100のヘイズ値(haze)は、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の一つの実施形態において、前記機能性ポリエステルマスターバッチ2におけるポリエステル樹脂マトリックス21は、低い結晶化度を有するポリエチレンテレフタレート(PET)であると共に、前記ポリエステル樹脂マトリックスの結晶化度は、5~15%である。
【0045】
説明すべきことは、従来の技術において、コーティング方法やスプレー方法により材料表面の抗菌・防カビ処理を行う場合、材料に優れた透明性を与えるが、このような製品は、耐久性が不良であると共に、抑制できる菌の種類が制限されている。尚、従来の内部添加法のマスターバッチの担体として、ポリプロピレン(PP)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)であることは多いが、PP担体とポリエステル(PET)との相容性が不良であり、PBT担体がポリエステル材料(PET)とを結晶するため、製品の透明性及び伸び性が不良となる。
【0046】
従来の技術に対して、本発明に係る実施形態における抗菌・防カビのポリエステル材料100において、マスターバッチの担体として、低い結晶化度を有するポリエチレンテレフタレート(PET)を使用する。前記機能性ポリエステルマスターバッチ2は、二軸スクリュー押出機(twin-screw extruder)により、ナノ銀粒子22bが付着されたガラスビーズ22aを分散させると共に、加工過程においてPETポリエステル材料(例えば、ポリエステル樹脂基材1)を導入させることによって、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100に優れた抗菌・防カビ能力、可視光透過率及び伸び性を与える。
【0047】
特筆すべきことは、本発明の実施形態に係る抗菌・防カビのポリエステル材料100は、延伸成形された後でも良好な抗菌・防カビ能力及び可視光透過率を有する。従いまして、本発明の実施形態に係る抗菌・防カビのポリエステル材料100は、抗菌・防カビ能力が要求された食品包装材料や医療・衛生設備に応用することができる。
【0048】
本発明の一つの実施形態において、前記ガラスビーズ22aの構成は、好ましい範囲を有する。例えば、前記ガラスビーズ22aのマトリックスは、可溶性ガラス粉末(soluble glass powder)であり、前記ガラスビーズ22aの粒子径は、10μm以下(好ましくは、3~10μmである)であり、前記ガラスビーズ22aの密度は、2~3g/cm(好ましくは、2.3~2.8g/cmである)であると共に、前記ガラスビーズ22aの耐熱温度は、500℃以上である。
【0049】
上述した構成により、前記ガラスビーズ22aは、十分な量のナノ銀粒子22bが付着された上で、ポリエステル樹脂マトリックス21に分散されることができる。前記ガラスビーズ22aは、二軸押出プロセスでの高温及び高圧を耐えられると共に、十分な量のナノ銀粒子22bが付着されることにより、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100に抗菌・防カビ能力を与える。
【0050】
添加剤として、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、前記ポリエステル樹脂基材1に分散する抗酸化剤及びスリップ剤を含む。なかでも、前記抗菌・防カビのポリエステル材料の総重量を100wt%として、前記抗酸化剤の含有量は、0.1~1.0wt%であり、前記スリップ剤の含有量は、0.1~1.0wt%である。
【0051】
抗酸化剤の材料として、前記抗酸化剤は、フェノール系抗酸化剤、亜リン酸系抗酸化剤、ヒンダードフェノール系抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つであり、又、スリップ剤の材料として、前記スリップ剤は、二酸化ケイ素、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、ステアリン酸塩系、脂肪酸エステル系及び複合系スリップ剤からなる群から選択される少なくとも1つであるが、本発明はこれに制限されるものではない。それらの用途について、前記抗酸化剤は、抗菌・防カビのポリエステル材料100の抗酸化能力を向上させるためのものであり、前記スリップ剤は、抗菌・防カビのポリエステル材料100の表面の摩擦係数又は粘着性を低減させるものである。
【0052】
抗菌・防カビ能力について、前記抗菌・防カビ添加剤は、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎桿菌(Pneumoniae)、サルモネラ(Salmonella)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び薬剤耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant staphylococcus aureus)を含む細菌に対して、抗菌効果を果たせる。
【0053】
尚、前記抗菌・防カビ添加剤は、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、ペニシリウム・ピノフィラム(Penicillium tetrapine)、カエトミウム グロボスム(Chaetomium globosum)、グリオクラディウム・ビレンス(Gliocladium virens)及びアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)を含むカビに対して防カビ効果を果たせる。
【0054】
実験データの試験について、延伸された前記抗菌・防カビのポリエステル材料100の厚さは、0.125~0.50ミリメートル(mm)である。前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、90%以上の可視光透過率及び3%以下のヘイズ値を有する。抗菌試験について、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、サルモネラ、緑膿菌及び薬剤耐性黄色ブドウ球菌との六つの細菌に対して、SGS認証(抗菌活性値がいずれも2を超える)を満たし、優れた抗菌効果を示す。防カビ試験について、前記抗菌・防カビのポリエステル材料100は、クロコウジカビ、ペニシリウム・ピノフィラム、カエトミウム グロボスム、グリオクラディウム・ビレンス及びアウレオバシジウム・プルランスとの五つのカビに対して、SGS認証(レベル0、カビの成長がない)を満たし、優れた防カビ効果を示す。
【0055】
[第二実施形態]
図4に示すように、本発明の第二実施形態において、抗菌・防カビのポリエステル材料を提供し、本実施形態の抗菌・防カビのポリエステル材料は、前記第一実施形態と大抵同様である。それらの相違点について、本実施形態に係る抗菌・防カビのポリエステル材料において、前記抗菌・防カビ添加剤22は、直接にポリエステル樹脂基材1に分散されている。即ち、前記抗菌・防カビ添加剤22は、機能性ポリエステルマスターバッチを介してポリエステル樹脂基材1に分散されることなく、直接にポリエステル樹脂基材1に分散される。
【0056】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る抗菌・防カビのポリエステル材料は、ポリエステル樹脂基材1及び抗菌・防カビ添加剤22を含む。前記抗菌・防カビ添加剤22は、ポリエステル樹脂基材1に分散する複数のガラスビーズ22aを含むと共に、前記ガラスビーズ22aのそれぞれの外面に複数の銀ナノ粒子22bが分布していることにより、前記ポリエステル材料に抗菌・防カビ能力を付与する。
【0057】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る抗菌・防カビのポリエステル材料は、「ポリエステル材料に抗菌・防カビ添加剤を導入する」及び、「抗菌・防カビ添加剤は、ポリエステル材料に分散する複数のガラスビーズを含むと共に、ガラスビーズのそれぞれの外面に複数の銀ナノ粒子が分布している」といった技術特徴により、良好な抗菌・防カビ能力を有すると共に、高い透明度及び低いヘイズ値を維持することができる。前記抗菌・防カビのポリエステル材料は、一定時間を使用しても、良好な抗菌・防カビ能力を維持すると共に、前記抗菌・防カビのポリエステル材料の応用が見込め、例えば、抗菌・防カビ能力が要求された食品包装材料や医療・衛生設備に応用することができる。
【0058】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
100...抗菌・防カビのポリエステル材料
1...ポリエステル樹脂基材
2...機能性ポリエステルマスターバッチ
21...ポリエステル樹脂マトリックス
22...抗菌・防カビ添加剤
22a...ガラスビーズ
22b...ナノ銀粒子
図1
図2
図3
図4