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特許7414813複合集電体、電極シート及び電気化学デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】複合集電体、電極シート及び電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20240109BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20240109BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/64 A
H01M4/70 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021516757
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2020117219
(87)【国際公開番号】W WO2022061612
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楊 曉兵
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535920(JP,A)
【文献】特開平06-076827(JP,A)
【文献】特開平09-073905(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110247056(CN,A)
【文献】特開平11-102711(JP,A)
【文献】特開2018-181796(JP,A)
【文献】国際公開第2013/172007(WO,A1)
【文献】特開2014-235912(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138382(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/090044(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
H01M 4/64
H01M 4/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、第1導電層と、及び前記第1導電層を前記基体の第1面に接着するための第1接続層とを含み、
前記第1導電層における前記第1接続層に近接した表面には、第1不動態化層が形成されており、
前記基体の第1面には、溝状パターンが設けられ、前記第1接続層は、前記溝状パターンに充填され、
前記溝状パターンは、1つ又は複数の孔からなり、
少なくとも1つの前記孔は前記基体を貫通するか、あるいは少なくとも1つの前記孔は前記基体を貫通しないことを特徴とする複合集電体。
【請求項2】
前記複合集電体は、前記基体の第2面に第2導電層を接着する第2接続層と、前記第2接続層に近接する表面に第2不動態化層が形成された前記第2導電層と、をさらに備える請求項1に記載の複合集電体。
【請求項3】
前記基体の厚さは、2μm~36μmであり、前記第1接続層の厚さは、0.2μm~2μmであり、前記第1導電層の厚さは、100nm~5000nmであり、前記第1不動態化層の厚さは、5nm~200nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合集電体。
【請求項4】
前記基体は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリオキシメチレンフィルム、ポリパラフェニレンスルフィドフィルム、ポリパラフェニレンエーテルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルムのうち、少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項1に記載の複合集電体。
【請求項5】
前記第1接続層は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、尿素樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、有機シリコーン樹脂、エチレン-アクリル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミドのうち、少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項1に記載の複合集電体。
【請求項6】
前記第1不動態化層は、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化ジルコニウム層、窒化アルミニウム層、窒化チタン層、炭化チタン層、炭化ジルコニウム層、二酸化ケイ素層、窒化ケイ素、炭化ケイ素層、アルミニウムクロメート層のうち、少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項1に記載の複合集電体。
【請求項7】
前記第1導電層は、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、銀、金、コバルト、クロム、モリブデン、タングステンのうち、少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項1に記載の複合集電体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の複合集電体と、
前記複合集電体の第1導電層における基体から離れる表面に設けられた活物質層と、を備えることを特徴とする電極シート。
【請求項9】
請求項に記載の電極シートを備えることを特徴とする電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、複合集電体、電極シート及び電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学デバイスは、充放電が可能であり、消費製品、デジタル製品、動力製品、医療及びセキュリティ等の分野に幅広く用いられている。集電体は、電気化学デバイスにおける活物質の担体であり、電気化学デバイスにおける重要な構成要素であり、電気化学デバイスのエネルギー密度に密接に関連する。従来の集電体を製造する過程では、一般に低密度のポリマーフィルムの表面に金属物理蒸着により金属ポリマーフィルムを得る。集電体に優れた導電性能を持たせるためには、ポリマーフィルムに大きな厚さの金属層を堆積させる必要があるが、集電体の厚さの増加は、電気化学デバイスのエネルギー密度を下げ、これにより作製した集電体は、電解液の浸食に抵抗する機能が悪く、電気化学デバイスの長期運転中に金属層が剥離されて失陥を起こしやすい。
【発明の概要】
【0003】
本願は、従来技術に存在する課題の少なくとも一つを解決することを目的とする。そのため、本願の一様態は、導電層が接続層に近い側に不動態化層を形成することで、接続層における導電層に対向する面から電解液が入り込んだ際に導電層と接触することで、導電層が電解液によって腐食して破壊されることを防止し、集電体の安定性を向上させた複合集電体を提出する。
【0004】
本願の実施例は、基体と、第1導電層と、及び前記第1導電層を前記基体の第1面に接着するための第1接続層とを含む複合集電体を提出する。前記第1導電層における前記第1接続層に近接した表面には、第1不動態化層が形成される。
【0005】
ある実施例において、前記複合集電体は、前記基体の第2面に第2導電層を接着する第2接続層と、前記第2接続層に近接する表面に第2不動態化層が形成された前記第2導電層と、をさらに備える。
【0006】
ある実施例において、前記基体の厚さは、2μm~36μmであり、前記第1接続層の厚さは、0.2μm~2μmであり、前記第1導電層の厚さは、100nm~5000nmであり、前記第1不動態化層の厚さは、5nm~200nmである。
【0007】
ある実施例において、前記基体は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリオキシメチレンフィルム、ポリパラフェニレンスルフィドフィルム、ポリパラフェニレンエーテルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルムのうち、少なくとも1つから選択される。
【0008】
ある実施例において、前記第1接続層は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、尿素樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、有機シリコーン樹脂、エチレン-アクリル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミドのうち、少なくとも1つから選択される。
【0009】
ある実施例において、前記第1不動態化層は、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化ジルコニウム層、窒化アルミニウム層、窒化チタン層、炭化チタン層、炭化ジルコニウム層、二酸化ケイ素層、窒化ケイ素、炭化ケイ素層、アルミニウムクロメート層のうち、少なくとも1つから選択される。
【0010】
ある実施例において、前記第1導電層は、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、銀、金、コバルト、クロム、モリブデン、タングステンのうち、少なくとも1つから選択される。
【0011】
ある実施例において、前記基体の第1面には、溝状パターンが設けられ、前記接続層には、前記溝状パターンが充填されている。
【0012】
ある実施例において、前記溝状ターンは、1つ又は複数の孔らなる。
【0013】
ある実施例において、少なくとも1つの前記孔、前記基体を貫通するか、あるいは少なくとも1つの前記孔、前記基体を貫通しない。
【0014】
本願のさらに別の態様は、複合集電体及び活物質層を有する電極シートを提出することである。複合集電体は、基体と、第1導電層と、及び前記第1導電層を前記基体の第1面に接着するための第1接続層と、を備える。前記第1導電層における前記第1接続層に近接した表面には、第1不動態化層が形成される。活物質層は、前記複合集電体における第1導電層の基体から離れる表面に設けられている。
【0015】
本願のさらに別の態様は、電極シートを有する電気化学デバイスを提出することである。この電極シートは、複合集電体と活物質層とを備える。複合集電体は、基体と、基体の第1面に第1導電層を接着する第1接続層と、第1導電層を接着する第1導電層と、を備える。前記第1導電層における前記第1接続層に近接した表面には、第1不動態化層が形成される。活物質層は、前記複合集電体における第1導電層の基体から離れる表面に設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本願実施例の複合集電体によれば、導電層が接続層に近い側に不動態化層を形成することで、接続層と導電層との対向面から電解液が入り込んだ際に導電層と接触して、導電層が電解液によって腐食で破壊されることを回避して、集電体の安定性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の上記及び/又は付加的様態と利点は、以下の図面と併せて、実施例の記載から、明らかになり理解しやすくなる。
図1】本願による一実施例に係る複合集電体を示す構造模式図である。
図2】本願による別の実施例に係る複合集電体を示す構造模式図である。
図3】本願による一実施例に係る基体表面に溝状パターンが形成された構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に例示される本願の実施例を詳細に説明するが、始めから終りまでの同一または類似の符号は、同一または類似の素子、または同一または類似の機能の素子を示す。以下、図面を参照して説明される実施例は例示的であり、本願を説明するためにのみ使用され、本願を限定するものとして理解されない。
【0019】
以下、図1図3を参照しながら、本願の実施例に係る複合集電体100について詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、本願実施例の複合集電体100は、基体10、第1接続層20、第1導電層30及び第1不動態化層40を備える。第1接続層20は、基体10と第1導電層30との間に位置し、第1接続層20に近接して第1導電層30の表面には、当該第1不動態化層40が形成されている。第1接続層20の一方の面は、基体10の第1面11に接着され、第1接続層20の他方の面は、第1不動態化層40に接着され、よって、第1接続層20は、第1導電層30を基体10の第1面11に接着させる。
【0021】
例えば、第1不動態化層40は、化学反応又は気相堆積によって第1導電層30の表面に密着してもよい。
【0022】
図2に示すように、複合集電体100は、第2接続層50、第2導電層60及び第2不動態化層70をさらに含む。第2接続層50は、基体10と第2導電層60との間に位置し、第2接続層50に近接している第2導電層60の表面には、当該第2不動態化層70が形成されている。第2接続層50の一方の面は、基体10の第2面11に接着され、第2接続層50の他方の面は、第2不動態化層70に接着され、よって、第2接続層50は、第2導電層60を基体10の第2面12に接着させる。
【0023】
例えば、第2不動態化層70は、化学反応又は気相堆積によって第2導電層60の表面に密着してもよい。
【0024】
ある実施形態において、第1導電層30と第2導電層60は、マグネトロンスパッタ法、ルツボボート蒸発メッキ法、電子ビーム蒸発メッキ法のいずれかから選択された物理蒸着プロセスによって形成される。第1導電層30と第2導電層60は、電子ビーム蒸発、直流マグネトロンスパッタ、高周波マグネトロンスパッタ、表面酸化、化学蒸着、スプレーコート等の加工プロセスによって、表面に第1不動態化層40と第2不動態化層70をそれぞれ形成する。前記第1不動態化層40は、第1接続層20における第1導電層30と対向する面から電解液が進入する際に第1導電層30に接触して第1導電層30が腐食で破壊されることを防止し、第2不動態化層70は、第2接続層50における第2導電層60と対向する面から電解液が進入する際に第2導電層60に接触して第2導電層60が腐食で破壊されることを防止し、ひいては複合集電体100の安定性を高める。
【0025】
ある実施例において、前記基体10は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリオキシメチレンフィルム、ポリパラフェニレンスルフィドフィルム、ポリパラフェニレンエーテルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルムのうち、少なくとも1つから選択される。前記基体10の厚さは、2μm~36μmであってもよい。
【0026】
ある実施例において、第1接続層20と第2接続層は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、尿素樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、有機シリコーン樹脂、エチレン-アクリル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミドのうち、少なくとも1つから選択される。第1接続層20と第2接続層50の厚さは、いずれも0.2μm~2μmであってもよい。
【0027】
ある実施例において、第1不動態化層40と第2不動態化層70は、酸化アルミニウム層、酸化チタン層、酸化ジルコニウム層、窒化アルミニウム層、窒化チタン層、炭化チタン層、炭化ジルコニウム層、二酸化ケイ素層、窒化ケイ素、炭化ケイ素層、アルミニウムクロメート層のうち、少なくとも1つから選択される。第1不動態化層40と第2不動態化層70の厚さは、いずれも5μm~200μmであってもよい。ある実施例において、第1不動態化層40は、不動態液によって、第1導電層30における第1接続層20に近い面に形成されていてもよいし、第2不動態化層70は、不動態化液によって、第2導電層60における第2接続層50に近い面に形成されていてもよい。不動態液とは、金属表面を不動態化する溶液であってもよく、不動態液は、金属表面に金属の正常反応を阻止する表面状態を形成し、その耐蝕性を向上させる。
【0028】
本願実施例の複合集電体100によれば、導電層が接続層に近い側に不動態化層を形成することで、接続層と導電層との対向面から電解液が入り込んだ際に導電層と接触して、導電層が電解液によって腐食で破壊されることを回避して、集電体の安定性を向上させる。
【0029】
図3に示すように、基体10の第1表面11には、溝状パターン80が設けられており、この溝状パターン80にも第1接続層20が充填され、ひいては第1接続層20と基体10との接着力を高め、第1導電層30が基体10から抜けにくくなり、集電体の安定性をより向上させる。
【0030】
ある実施例において、基体10の第1面11に穴あけ、浮き彫り等のパターニング処理を行って溝状パターン80を形成してもよい。第1面11に、例えば、レーザー穴あけ、コーアトラックエッチング、化学エッチング、光化学エッチング等の処理によって溝状パターン80が形成される。
【0031】
ある実施例において、溝状パターン80は、1つまたは複数の81によって構成され、当該は、実際のニーズに応じて、基体10を貫通するか、または、貫通しない。例えば、この複数の81は、いずれも基体10を貫通し、または、いずれも基体10を貫通せず、または、当該複数の81のうち一部のが基体10を貫通し、他の一部のが基体10を貫通しない。
【0032】
ある実施例において、81の形状は、図3に示すような81が円形孔であるように、実際のニーズに応じて設定できる。81は、三角形孔、四角形孔、多角形孔、異形孔等であってもよい。
【0033】
ある実施例において、基体10の第2面12には、溝状パターン80が設けられてもよく、第2接続層50は、この溝状パターン80に充填され、ひいては第2接続層50と基体10との接着力を高めて、第2導電層60が基体10から抜けにくくなる。
【0034】
また、本発明は、さらに上記のいずれかの場合の複合集電体100を含む電極シートを開示している。
【0035】
ある実施例において、第1導電層30は、第1接続層20から離れた面に活物質層が設けられており、第2導電層60にも、第2接続層50から離れた面に活物質層が設けられている。複合集電体100が陰極集電体である場合、該活物質層は陰極活物質コート層である。複合集電体100が陽極集電体である場合、活物質層は陽極活物質コート層である。
【0036】
また、本発明は、上記いずれかの場合の電極シートを備えた電気化学デバイスを開示している。電気化学デバイスは、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池などであってもよい。
【0037】
以下に述べる比較例1、比較例2及び比較例3は、いずれも不動態化層が設けられていない複合集電体である。
【比較例1】
【0038】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 Paまで気圧を引き、ルツボボート温度を1200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミニウムの厚さが200nmになった後、アルミめっきを停止する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面にビスフェノールA型エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との混合物を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を有する表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第1比較複合集電体を得る。
【比較例2】
【0039】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 Paまで気圧を引き、ルツボボート温度を1200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミニウムの厚さが500nmになった後、アルミめっきを停止する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面にビスフェノールA型エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との混合物を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を有する表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第2比較複合集電体を得る。
【比較例3】
【0040】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 Paまで気圧を引き、ルツボボート温度を1200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミニウムの厚さが500nmになった後、アルミめっきを停止する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面に単成分ポリウレタン接着剤を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を有する表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第3比較複合集電体を得る。
【0041】
以下に述べる具体的な実施例1~6は、本発明の実施例における不動態化層を含む複合集電体を用いる。
【実施例1】
【0042】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 Paまで気圧を引き、ルツボボート温度を1200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミニウムの厚さが200nmになった後、アルミめっきを停止して、その後、アルミニウム層の表面に、厚さ5nmのAl不動態化層を一層スパッタ処理して用意する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面にビスフェノールA型エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との混合物を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を不動化した表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第1複合集電体を得る。
【実施例2】
【0043】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 Paまで気圧を引き、ルツボボート温度を1200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミニウムの厚さが500nmになった後、アルミめっきを停止して、その後、アルミニウム層の表面に、厚さ10nmのAl不動態化層を一層スパッタ処理して用意する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面にビスフェノールA型エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との混合物を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を不動化した表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第2複合集電体を得る。
【実施例3】
【0044】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 Paまで気圧を引き、ルツボボート温度を1200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミニウムの厚さが500nmになった後、アルミめっきを停止して、その後、アルミニウム層の表面に、厚さ20nmのAl不動態化層を一層スパッタ処理して用意する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面にビスフェノールA型エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との混合物を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を不動化した表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第3複合集電体を得る。
【実施例4】
【0045】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 Paまで気圧を引き、ルツボボート温度を1200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミニウムの厚さが500nmになった後、アルミめっきを停止して、その後、アルミニウム層の表面に、厚さ20nmのAl不動態化層を一層スパッタ処理して用意する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面に単成分ポリウレタン接着剤を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を有する表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第4複合集電体を得る。
【実施例5】
【0046】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 Paまで気圧を引き、ルツボボート温度を1200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミニウムの厚さが500nmになった後、アルミめっきを停止して、その後、アルミニウム層の表面に、厚さ20nmのTiO不動態化層を一層スパッタ処理して用意する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面に単成分ポリウレタン接着剤を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を有する表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第5複合集電体を得る。
【実施例6】
【0047】
ルツボボート式真空蒸着アルミめっき機の真空チャンバーに厚さ50μmのポリイミドフィルムを載置し、真空チャンバーを密封して真空アルミめっき機を10-3 paまで気圧を引き、ルツボボート温度を12001200~1500℃に調整すると、アルミめっきを開始し、アルミめっき度が500nmになった後、アルミめっきを停止して、その後、Cr3+を含む塗布液を塗布して厚さ約200nmのアルミニウムクロメート不動態化層を形成して用意する。12μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムをコロナ処理し、その表面に単成分ポリウレタン接着剤を塗布し、塗布物の開放時間以内に、この前処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリイミドフィルム上のアルミめっき層を有する表面を熱圧複合(熱圧複合の温度が85℃、圧力が0.7MPa)し、第6複合集電体を得る。
【0048】
ある実施例において、実施例1~6と比較例1~3で得られた複合集電体について、浸漬実験を行い、実施過程は、以下のように行ってもよい。複合集電体ごとに長さ5cm、幅2cmに裁断した集電体ストリップを電解液に浸漬し、アルミプラスチック複合フィルムで封止して外部環境の干渉を除去し、最終的に85℃の恒温乾燥機に72時間放置した後、複合集電体を取り出して複合集電体ごとに外観を観察する。下記表1に示すように、実施例1~6と比較例1~3とで比較した複合集電体の観察結果をまとめる。
【0049】
【0050】
上記の表1からわかるように、実施例1~6の複合集電体は、比較例1~3よりも電解液耐性が顕著に優れており、導電層内面に不動態化層を設けることにより、接続層が導電層に対向する表面から電解液が入り込んだ際に導電層と接触して、導電層が電解液によって腐食で破壊されることを防止し、複合集電体の安定性を向上させることが示される。
【0051】
本出願の記載において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周向」等の用語で示された方位や位置関係は、図面に示す方位や位置関係に基づくものであり、指す装置や素子を指示や暗示せずに特定の方位、特定の方位構造や動作をしなければならないと理解する必要があるので、本出願の制限であるとは理解できない。本願の記載において、「複数」の意味は2つ以上である。
【0052】
本明細書の記載において、「ある実施例」、「いくつかの実施例」、「模式的な実施形態」、「一例」、「具体例」、または、「いくつかの例」等の用語の記述を参照することは、その実施例または例示に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、または特徴が、本願の少なくとも1つの実施例または例示に含まれることを意味する。本明細書において、上記の用語の模式的な表現は、同一の実施例または例示を必ずしも意味するものではない。さらに、いずれかの1つまたは複数の実施例や例示においても、発明の具体的な特徴、構造、材料、または特徴を適宜組み合わせてもよい。
【0053】
本願の実施例が既に示され説明されているが、本分野の当業者は、これらの実施例が、本願の原理や趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変更、修正、置換、および変形を行うことができることを理解できる。
【符号の説明】
【0054】
10 基体
11 第1面
12 第2面
20 第1接続層
30 第1導電層
40 第1不動態化層
50 第2接続層
60 第2導電層
70 第2不動態化層
80 溝状パターン
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図1
図2
図3