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特許7414814(-)-シベンゾリンコハク酸塩の新規な製造工程
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】(-)-シベンゾリンコハク酸塩の新規な製造工程
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/06 20060101AFI20240109BHJP
   A61K 31/41 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240109BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20240109BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C07D233/06 CSP
A61K31/41
A61K9/48
A61K9/20
A61P9/06
A61P9/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021517439
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2019012299
(87)【国際公開番号】W WO2020067684
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】201841036791
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】515074983
【氏名又は名称】セルトリオン, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】デシ レディ、スリニヴァス レディ
(72)【発明者】
【氏名】マーサド、ヴィジャヤヴィタル ティパンナチャル
(72)【発明者】
【氏名】レン、ドヤンデブ ラッホ
(72)【発明者】
【氏名】パティール、ヴィカス シヴァジ
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-132561(JP,A)
【文献】特表2008-519046(JP,A)
【文献】特表2011-509933(JP,A)
【文献】特表平10-503752(JP,A)
【文献】特開2012-136526(JP,A)
【文献】特表2011-514892(JP,A)
【文献】特開平07-070070(JP,A)
【文献】Haruno, Akihiro; Matsuzaki, Takushi; Hashimoto, Keitaro,Antiarrhythmic effects of optical isomers of cibenzoline on canine ventricular arrhythmias,Journal of Cardiovascular Pharmacology ,1990年,16(3),,376-382
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/06
A61K 31/41
A61K 9/48
A61K 9/20
A61P 9/06
A61P 9/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(IA)で表され、11.2°、14.1°、17.3°、22.1°、23.0°および24.3°(2θ±0.2°)での回折ピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンを有する、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型。
【化1】
【請求項2】
17.6°、18.2°、21.4°および26.4°(2θ±0.2°)からなる群より選択される一つ以上の回折ピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項に記載の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型。
【請求項3】
8.99°、11.15°、13.36°、14.09°、14.30°、17.29°、17.59°、18.15°、19.81°、21.37°、22.06°、22.93°、24.25°、25.41°、26.36°、27.59°および29.50°(2θ)での回折ピークを含むXRPDパターンを有する、請求項に記載の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型。
【請求項4】
昇温速度が10℃/minである場合、187℃~193℃の温度において示差走査熱量(DSC)吸熱ピークを有する、請求項に記載の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型。
【請求項5】
昇温速度が10℃/minである場合、190±1℃の温度において示差走査熱量(DSC)吸熱ピークを有する、請求項に記載の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型および薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項7】
前記組成物は、経口投与用カプセルまたは錠剤の形態である、請求項に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(-)-シベンゾリンコハク酸塩に関する。
また、本発明は、99.9%以上のキラル純度を有する(-)-シベンゾリンコハク酸塩の製造工程に関する。
また、本発明は、(-)-シベンゾリンコハク酸塩およびその結晶型の製造工程を提供する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
シベンゾリンコハク酸塩(ラセミ)は、化学的に化学式(II)で表される構造を有する(±)-2-(2,2-ジフェニルシクロフェニル)-2-イミダゾリンコハク酸塩として知られており、ブリストル マイヤーズ スクイブ(Bristol-Myers Squibb(BMS))によりシプララン(Cipralan(登録商標))、およびフランスXO研究所によりイザッカー(Exacor(登録商標))として開発されて販売された。シベンゾリンコハク酸塩(ラセミ)は、CipralanとExacorという商標名で販売される抗不整脈剤である。ラセミシベンゾリンコハク酸塩は、フランスで1983年10月21日に不整脈心臓疾患患者を治療するために承認された。シベンゾリンは、不整脈心臓疾患(Eur J Clin Pharmacol.1984;26(3):297-302)および心不全(Circ J.2006 May;70(5):588-92)の治療に効果的である。
【化2】
【0003】
鏡像異性体である、(-)-シベンゾリン塩および(+)-シベンゾリン塩(例えば、これらの結晶型)は知られていない。例えば、前記それぞれの(-)-シベンゾリンコハク酸塩および(+)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶形態はどこにも知られていない。
【0004】
Tetrahedron:Asymmetry 17(2006)3067-3069は、化学式()で表される(+)-2,2-ジフェニルシクロプロピルメタノールからの(+)-シベンゾリンの製造工程を次のように開示する;ジメチルスルホキシド(DMSO)において化学式()で表される化合物を2-ヨード安息香酸(2-iodobenzoic acid;IBX)で酸化させて化学式()で表されるアルデヒドを合成し、それを亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、過酸化水素(H)およびアセトニトリル-水(MeCN-HO)下のリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)と反応させて化学式()で表される酸化合物を提供する。さらに、それをジクロロメタン(CHCl)下のベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)およびトリエチルアミン(EtN)の存在下でエチレンジアミン(HNCHCHNH)を縮合して化学式()で表されるアミド化合物を提供する。最終的に、化学式()で表されるアミド化合物を160℃の温度で2mmHg減圧下で37時間転換させて(+)-シベンゾリンを得る。
【0005】
前記合成工程は下記反応式1に示されている。
【化3】
【0006】
Tetrahedron:Asymmetry(2009)、20(17)、2065-2071は、化学式()で表される(+)-2,2-ジフェニルシクロプロピルメタノールから(+)-シベンゾリンの製造工程を次のように開示する;76%の鏡像異性体過剰率(enantiomeric excess(ee))を有する化学式()で表される化合物がトリエチルアミン(EtN)、4-メチルアミンピリジン(DMAP)、テトラヒドロフラン(THF)下の化学式(X)で表される化合物と反応して、76%のeeを有する化学式(11)で表されるエステルを製造し、それをエチルアセテート(EtOAc)およびヘキサンの混合物を用いて再結晶して、98%のeeを有する化学式(12)で表されるエステル化合物を提供する。その後、エステル化合物はエタノール(EtOH)下のナトリウムエトキシド(EtONa)と反応して、98%のeeを有する化学式()で表されるアルコール化合物を提供し、それをジメチルスルホキシド(DMSO)下で2-ヨード安息香酸(IBX)で酸化させて化学式()で表されるアルデヒド化合物を提供する。その後、化学式()で表されるアルデヒド化合物をヨウ素(I)下のエチレンジアミン(ethylenediamine)およびtert-ブチルアルコール(tBuOH)下の炭酸カルシウム(KCO)と反応させて(+)-シベンゾリンを得る。
【0007】
前記合成工程は下記反応式2に示されている。
【化4】
【0008】
純粋な鏡像異性体である薬物の使用は、より単純でより選択的な薬理学的プロファイル、向上した治療指数(therapeutic indices)、他の鏡像異性体の互いに異なる代謝速度に応じたより単純な薬理力学、および減少した薬物相互作用を導くことができるため、製薬会社は、マーケティング戦略としてキラルスイッチング(chiral switching)を漸次的に多く使用している。また、互いに異なる薬理学的活性により、キラル薬物の鏡像異性体は、ラセミ薬物に比べて毒性の側面で互いに異なりうる。
【0009】
単一鏡像異性体薬物の潜在的な利点は次のようなものを含む:一つの鏡像異性体にのみ排他的に存在する毒性効果と望まない薬物動態学的副作用の区別、より少ない量の薬物服用;より簡単でより選択的な薬物動態学的プロファイル;より単純な薬物動態学的プロファイル;ディストマー(distomer)の除去によるさらに少ない副作用;薬物相互作用の減少、有害作用(adverse effect)の減少、一つの形態は薬物相互作用においてより有害でありうる;酵素システムに対する代謝負荷の減少;向上した治療指数および血漿濃度と効果との間のより単純な関係に対する可能性。また、ラセミ薬物に比べて光学的に純粋な薬物の利点は場合に応じて様々であり、ラセミ薬物に比べて単一鏡像異性体薬物の生物学的効果は特定の場合では依然として明らかではない。臨床試験のためのシベンゾリンコハク酸塩の純粋な鏡像異性体に対する要求は商業的供給から続く。そこで、本発明者らは、シベンゾリンコハク酸塩の純粋な光学異性体を製造可能な、産業的に効率的且つ経済的な工程に対する開発の必要性を感じるようになった。
【0010】
反応式1および2(Tetrahedron:Asymmetry(2009)、20(17)、2065-2071)に示すように、純粋な鏡像異性体である、化学式()で表される化合物を出発物質とする(+)-シベンゾリン塩基に対する立体選択的な合成を除いては、純粋な鏡像異性体形態のシベンゾリンコハク酸塩の製造に関する文献は報告されていない。この工程の主な短所は次の通りである:
a)立体選択的な戦略による化学式()で表される化合物の製造は、単に76%ee(鏡像異性体過剰率)純度を提供し、(+)-シベンゾリンを得るために精製のような追加の努力が求められ、これは商業的に実行可能な工程ではない。
b)(+)-シベンゾリン工程で用いられる試薬は、非常に高価であり、工場規模で取り扱うことが非常に難しい。よって、産業的に実現可能な工程ではない。
c)(+)-シベンゾリンを製造するための多段階工程は、多くの類縁物質を誘発し、収率損失を招く。
【0011】
しかしながら、(-)-シベンゾリンコハク酸塩と(-)-シベンゾリン塩の商業的に有用な合成を開示した文献は存在しない。よって、従来技術の方法と関連した問題を解決するための新しい方法の開発が必要である。そこで、本発明者らは、(-)-シベンゾリンおよびその塩の製造方法を開発するに至った。本発明は、高純度および高収率且つ簡単で費用効率的な産業上に適用可能な工程を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Eur J Clin Pharmacol.1984;26(3):297-302
【文献】Circ J.2006 May;70(5):588-92
【文献】Tetrahedron:Asymmetry 17(2006)3067-3069
【文献】Tetrahedron:Asymmetry(2009)、20(17)、2065-2071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、化学式(IVA)で表される新規な(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を提供する。
【化5】
【0014】
本発明は、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の高収率および高純度の新規な製造工程を提供する。
【化6】
【0015】
本発明は、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を提供する。
【化7】
【0016】
本発明は、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の製造工程を提供する。
【化8】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、化学式(IVA)で表される新規なキラル酸塩を用いた化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の製造工程に関する。
【0018】
本発明は、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型およびその製造工程を提供する。
【化9】
【0019】
本発明の第1実現例は、化学式(IVA)で表される新規な(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を提供する。
【化10】
【0020】
本発明の第2実現例は、化学式(IA)で表される、純粋な鏡像異性体である(-)-シベンゾリンコハク酸塩を製造する新規な製造工程を提供する。前記製造工程は、次のようなステップを含む:
【化11】
【0021】
a)化学式(II)で表されるラセミシベンゾリンコハク酸塩を塩基と反応させて化学式(III)で表されるラセミシベンゾリン遊離塩基を製造するステップ;
【化12】
b)化学式(III)で表されるラセミシベンゾリン遊離塩基を溶媒存在下でキラル酸と反応させて化学式(IIIA)で表されるラセミシベンゾリン・キラル酸塩を得るステップ;
【化13】
c)化学式(IVA)で表される(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を分離するステップ;
【化14】
d)化学式(IVA)で表される(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を塩基で中和させて化学式(VA)で表される(-)-シベンゾリン遊離塩基を製造するステップ;および
【化15】
e)化学式(VA)で表される(-)-シベンゾリン遊離塩基を溶媒存在下でコハク酸と反応させて化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩を製造するステップ。
【0022】
本発明の第3実現例は、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を提供する。
【化16】
【0023】
本発明の第4実現例は、
a)(-)-シベンゾリン遊離塩基を含む第1溶液とコハク酸を含む第2溶液とを混合して混合物を製造するステップ;および
b)前記混合物を冷却するステップ
を含む、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の製造工程を提供する。
【0024】
本発明の第5実現例は、
a’)直鎖もしくは分岐鎖のC~Cのアルコール存在下で(-)-シベンゾリン遊離塩基とコハク酸を反応させて(-)-シベンゾリンコハク酸塩を含む混合物を製造するステップ;および
b’)前記混合物を冷却させて固体形態の(-)-シベンゾリンコハク酸塩を得るステップ
を含む、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の製造工程を提供する。
【0025】
本発明の第6実現例は、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を有効量で含む薬学的組成物を提供する。
【0026】
化学式(IVA)で表される新規なキラル酸塩を用いた化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の製造工程
本発明は、化学式(IVA)で表される新規なキラル酸塩を用いた化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の製造工程に関する。
本発明は、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型およびその製造工程を提供する。
【化17】
【0027】
本発明の第1実現例は、化学式(IVA)で表される新規な(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を提供する。
【化18】
【0028】
前記(-)-シベンゾリン・キラル酸塩において、キラル酸は、L-(+)-酒石酸(L-(+)-Tartaric acid)、D-(-)-酒石酸(D-(-)-Tartaric acid)、(R)-(-)-マンデル酸((R)-(-)-Mandelic acid)、(S)-(+)-マンデル酸((S)-(+)-Mandelic acid)、ジベンゾイル-L-酒石酸(Dibenzoyl-L-tartaric acid)、(+)-2,3-ジベンゾイル-D-酒石酸((+)-2,3-Dibenzoyl-D-tartaric acid)、(-)-O,O’-ジベンゾイル-L-酒石酸一水和物((-)-O,O’-Dibenzoyl-L-tartaric acid monohydrate)、(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸一水和物((+)-O,O-Dibenzoyl-D-tartaric acid monohydrate)、(-)-O,O’-ジベンゾイル-L-酒石酸モノ(ジメチルアミド)((-)-O,O’-Dibenzoyl-L-tartaric acid mono(dimethylamide))、ジ-p-トルオイル-D-酒石酸一水和物(Di-p-toluoyl-D-tartaric acid monohydrate)、ジ-p-トルオイル-L-酒石酸一水和物(Di-p-toluoyl-L-tartaric acid monohydrate)、(-)-O,O’-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸((-)-O,O’-Di-p-toluoyl-L-tartaric acid)、(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸((+)-O,O’-Di-p-toluoyl-D-tartaric acid)、D-グルタミン酸(D-Glutamic acid)、L-グルタミン酸(L-Glutamic acid)、L-(-)-リンゴ酸(L-(-)-Malic acid)、D-(+)-リンゴ酸(D-(+)-Malic acid)、(-)-メンチルオキシ酢酸((-)-Men
thyloxyacetic acid)、(+)-メンチルオキシ酢酸((+)-Menthyloxyacetic acid)、(R)-(+)-α-メトキシ-α-トリフルオロメチルフェニル酢酸((R)-(+)-α-Methoxy-α-trifluoromethylphenylacetic acid)、(S)-(-)-α-メトキシ-α-トリフルオロメチルフェニル酢酸((S)-(-)-α-Methoxy-α-trifluoromethylphenylacetic acid)、(R)-(-)-5-オキソ-2-テトラヒドロフランカルボン酸((R)-(-)-5-Oxo-2-tetrahydrofurancarboxylic acid)、(S)-(+)-5-オキソ-2-テトラヒドロフランカルボン酸((S)-(+)-5-Oxo-2-tetrahydrofurancarboxylic acid)、(R)-(+)-N-(1-フェニルエチル)フタルアミド酸((R)-(+)-N-(1-Phenylethyl)phthalamic acid)、(S)-(-)-N-(1-フェニルエチル)フタルアミド酸((S)-(-)-N-(1-Phenylethyl)phthalamic acid)、(R)-(-)-2-フェニルプロピオン酸((R)-(-)-2-Phenylpropionic acid)、(S)-(+)-2-フェニルプロピオン酸((S)-(+)-2-Phenylpropionic acid)、L-ピログルタミン酸(L-Pyroglutamic acid)、D-ピログルタミン酸(D-Pyroglutamic acid)、D-(-)-キナ酸(D-(-)-Quinic acid)、L-(+)-キナ酸(L-(+)-Quinic acid)、L-アスパラギン酸(L-Aspartic acid)、D-アスパラギン酸(D-Aspartic acid)、(R)-1,4-ベンゾジオキサン-2-カルボン酸((R)-1,4-Benzodioxane-2-carboxylic acid)、(S)-1,4-ベンゾジオキサン-2-カルボン酸((S)-1,4-Benzodioxane-2-carboxylic acid)、N,N-ビス[(S)-(-)-1-フェニルエチル]フタルアミド酸(N,N-Bis[(S)-(-)-1-phenylethyl]phthalamic acid)、N,N-ビス[(R)-(+)-1-フェニルエチル]フタルアミド酸(N,N-Bis[(R)-(+)-1-phenylethyl]phthalamic acid)、(1S)-(+)-3-ブロモカンファー-10-スルホン酸水和物((1S)-(+)-3-Bromocamphor-10-sulfonic acid hydrate)、(1R)-(-)-3-ブロモカンファー-10-スルホン酸水和物((1R)-(-)-3-Bromocamphor-10-sulfonic acid hydrate)、(1S)-(-)-カンファン酸((1S)-(-)-Camphanic acid)、(1R)-(+)-カンファン酸((1R)-(+)-Camphanic acid)、(1R,3S)-(+)-ショウノウ酸((1R,3S)-(+)-Camphoric acid)、(1S,3R)-(-)-ショウノウ酸((1S,3R)-(-)-Camphoric
acid)、(1R)-(-)-10-カンファースルホン酸((1R)-(-)-10-Camphorsulfonic acid)および(1S)-(+)-10-カンファースルホン酸((1S)-(+)-10-Camphorsulfonic acid)からなる群より選択される。
【0029】
本発明の第2実現例は、化学式(IA)で表される、純粋な鏡像異性体である(-)-シベンゾリンコハク酸塩の新規な製造工程を提供する。前記工程は、次のようなステップを含む:
【化19】
a)化学式(II)で表されるラセミシベンゾリンコハク酸塩と塩基を反応させて化学式(III)で表されるラセミシベンゾリン遊離塩基を製造するステップ;
【化20】
b)前記化学式(III)で表されるラセミシベンゾリン遊離塩基を溶媒存在下でキラル酸と反応させて化学式(IIIA)で表されるラセミシベンゾリン・キラル酸塩を得るステップ;
【化21】
c)化学式(IVA)で表される(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を分離するステップ;
【化22】
d)化学式(IVA)で表される(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を塩基で中和させて化学式(VA)で表される(-)-シベンゾリン遊離塩基を製造するステップ;および
【化23】
e)化学式(VA)で表される(-)-シベンゾリン遊離塩基を溶媒存在下でコハク酸と反応させて化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩を製造するステップ。
【0030】
本発明の実現例に係る工程は、薬学的に許容可能な程度の顕著に高いキラル純度を有する、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩を高収率で製造することができ、大量生産に好適であり、且つ、経済的である。
【0031】
本発明の実現例によれば、ステップ(b)において、化学式(IIIA)で表されるラセミシベンゾリン・キラル酸塩は(+)-シベンゾリン・キラル酸塩と(-)-シベンゾリン・キラル酸塩とを含むことができ、(+)-シベンゾリン・キラル酸塩と(-)-シベンゾリン・キラル酸塩は互いにジアステレオマーであってもよい。例えば、前記キラル酸がD-酒石酸である場合、前記化学式(IIIA)で表されるラセミシベンゾリン・キラル酸塩はラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩であってもよく、前記ラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩は、互いにジアステレオマーである、(+)-シベンゾリン-D-酒石酸塩と(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩とを含むことができる。
【0032】
本発明の実現例によれば、本発明は、化学式(II)で表されるラセミシベンゾリンコハク酸塩と塩基を0~30℃の温度で0~30分間反応させて化学式(III)で表されるラセミシベンゾリン遊離塩基を製造する工程を含む。
【0033】
本発明の実現例によれば、本発明は化学式(III)で表されるラセミシベンゾリン遊離塩基を溶媒存在下で適合な温度でキラル酸と反応させて化学式(IIIA)で表されるラセミシベンゾリン・キラル酸塩を得るステップを含み、前記反応における温度は約20~65℃であり、前記反応は30分~6時間行うことができる。
【0034】
本発明の実現例によれば、化学式(IVA)で表される前記(-)-シベンゾリン・キラル酸塩は、濾過または遠心分離などのような技術により分離できる。
本発明の実現例によれば、化学式(IVA)で表される前記(-)-シベンゾリン・キラル酸塩は、箱型乾燥機(tray dryer)、真空オーブン(vacuum oven)、流動層乾燥機(fluidized bed dryer)およびスピンフラッシュ乾燥機(spin flash dryer)を用いてさらに乾燥することができる。
【0035】
本発明の実現例によれば、前記工程は、化学式(IVA)で表される(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を結晶化、沈殿、遠心分離などのような様々な方法を用いることによって精製するステップをさらに含むことができる。
本発明の実現例によれば、本発明は、化学式(IVA)で表される(-)-シベンゾリン・キラル酸塩を塩基で中和させて化学式(VA)で表される(-)-シベンゾリン遊離塩基を製造するステップを含み、前記反応は、10~50℃の温度で30分~5時間行うことができる。
【0036】
本発明の実現例によれば、本発明は、化学式(VA)で表される(-)-シベンゾリン遊離塩基を0~65℃の温度でコハク酸と反応させ、10分~5時間攪拌して化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩を製造するステップを含む。
【0037】
本発明の実現例によれば、本発明は、溶媒において(-)-シベンゾリンコハク酸塩を再結晶して薬学的に許容可能な程度の光学的に純粋な(-)-シベンゾリンコハク酸塩を得るステップを含む。
【0038】
前記分離した光学的に純粋な(-)-シベンゾリンコハク酸塩は、箱型乾燥機(tray dryer)、真空オーブン(vacuum oven)、流動層乾燥機(fluidized bed dryer)およびスピンフラッシュ乾燥機(spin flash dryer)のような様々な技術を用いて乾燥される。
【0039】
本発明の実現例によれば、キラル酸は、L-(+)-酒石酸(L-(+)-Tartaric acid)、D-(-)-酒石酸(D-(-)-Tartaric acid)、(R)-(-)-マンデル酸((R)-(-)-Mandelic acid)、(S)-(+)-マンデル酸((S)-(+)-Mandelic acid)、ジベンゾイル-L-酒石酸(Dibenzoyl-L-tartaric acid)、(+)-2,3-ジベンゾイル-D-酒石酸((+)-2,3-Dibenzoyl-D-tartaric acid)、(-)-O,O’-ジベンゾイル-L-酒石酸一水和物((-)-O,O’-Dibenzoyl-L-tartaric acid monohydrate)、(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸一水和物((+)-O,O-Dibenzoyl-D-tartaric acid monohydrate)、(-)-O,O’-ジベンゾイル-L-酒石酸モノ(ジメチルアミド)((-)-O,O’-Dibenzoyl-L-tartaric acid mono(dimethylamide))、ジ-p-トルオイル-D-酒石酸一水和物(Di-p-toluoyl-D-tartaric acid monohydrate)、ジ-p-トルオイル-L-酒石酸一水和物(Di-p-toluoyl-L-tartaric acid monohydrate)、(-)-O,O’-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸((-)-O,O’-Di-p-toluoyl-L-tartaric acid)、(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸((+)-O,O’-Di-p-toluoyl-D-tartaric acid)、D-グルタミン酸(D-Glutamic acid)、L-グルタミン酸(L-Glutamic acid)、L-(-)-リンゴ酸
(L-(-)-Malic acid)、D-(+)-リンゴ酸(D-(+)-Malic acid)、(-)-メンチルオキシ酢酸((-)-Menthyloxyacetic acid)、(+)-メンチルオキシ酢酸((+)-Menthyloxyacetic acid)、(R)-(+)-α-メトキシ-α-トリフルオロメチルフェニル酢酸((R)-(+)-α-Methoxy-α-trifluoromethylphenylacetic acid)、(S)-(-)-α-メトキシ-α-トリフルオロメチルフェニル酢酸((S)-(-)-α-Methoxy-α-trifluoromethylphenylacetic acid)、(R)-(-)-5-オキソ-2-テトラヒドロフランカルボン酸((R)-(-)-5-Oxo-2-tetrahydrofurancarboxylic acid)、(S)-(+)-5-オキソ-2-テトラヒドロフランカルボン酸((S)-(+)-5-Oxo-2-tetrahydrofurancarboxylic acid)、(R)-(+)-N-(1-フェニルエチル)フタルアミド酸((R)-(+)-N-(1-Phenylethyl)phthalamic acid)、(S)-(-)-N-(1-フェニルエチル)フタルアミド酸((S)-(-)-N-(1-Phenylethyl)phthalamic acid)、(R)-(-)-2-フェニルプロピオン酸((R)-(-)-2-Phenylpropionic acid)、(S)-(+)-2-フェニルプロピオン酸((S)-(+)-2-Phenylpropionic acid)、L-ピログルタミン酸(L-Pyroglutamic acid)、D-ピログルタミン酸(D-Pyroglutamic acid)、D-(-)-キナ酸(D-(-)-Quinic acid)、L-(+)-キナ酸(L-(+)-Quinic acid)、L-アスパラギン酸(L-Aspartic acid)、D-アスパラギン酸(D-Aspartic acid)、(R)-1,4-ベンゾジオキサン-2-カルボン酸((R)-1,4-Benzodioxane-2-carboxylic acid)、(S)-1,4-ベンゾジオキサン-2-カルボン酸((S)-1,4-Benzodioxane-2-carboxylic acid)、N,N-ビス[(S)-(-)-1-フェニルエチル]フタルアミド酸(N,N-Bis[(S)-(-)-1-phenylethyl]phthalamic acid)、N,N-ビス[(R)-(+)-1-フェニルエチル]フタルアミド酸(N,N-Bis[(R)-(+)-1-phenylethyl]phthalamic acid)、(1S)-(+)-3-ブロモカンファー-10-スルホン酸水和物((1S)-(+)-3-Bromocamphor-10-sulfonic acid hydrate)、(1R)-(-)-3-ブロモカンファー-10-スルホン酸水和物((1R)-(-)-3-Bromocamphor-10-sulfonic acid hydrate)、(1S)-(-)-カンファン酸((1S)-(-)-Camphanic acid)、(1R)-(+)-カンファン酸((1R)-(+)-Camphanic acid)、(1R,3S)-(+)-ショウノウ酸((1R,3S)-(+)-Camphoric acid)、(1S,3R)-(-)-ショウノウ酸((1S,3R)-(-)-Camphoric acid)、(1R)-(-)-10-カンファースルホン酸((1R)-(-)-10-Camphorsulfonic acid)および(1S)-(+)-10-カンファースルホン酸((1S)-(+)-10-Camphorsulfonic acid)からなる群より選択される。
【0040】
本発明の実現例によれば、前記塩基は、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)、水酸化リチウム(lithium hydroxide)または水酸化カリウム(potassium hydroxide)などのようなアルカリ金属水酸化物(alkali metal hydroxides)、または炭酸セシウム(cesium carbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)または炭酸リチウム(lithium carbonate)などのようなアルカリ金属炭酸塩(alkali met
al carbonates)、または重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)または重炭酸カリウム(potassium bicarbonate)のようなアルカリ金属重炭酸塩(alkali metal bicarbonates)、またはこれらの混合物のような無機塩基から選択される。
【0041】
本発明の実現例によれば、前記溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールなどのようなアルコールまたはエチルアセテート、メチルアセテート、ブチルアセテート、イソプロピルアセテート、メトキシエチルアセテートなどのようなエステルまたはヘプタン、ヘキサンなどのような脂肪族炭化水素、アセトン、メチルイソブチルケトン、2-ペンタノン、エチルメチルケトン、ジエチルケトンなどのようなケトンまたはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどのような芳香族炭化水素またはクロロホルム、ジクロロメタンなどのようなハロゲン化炭化水素またはメチル第3級ブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのようなエーテルまたはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルのような非プロトン性溶媒または水および/またはこれらの混合物から選択される。
【0042】
本発明は、酒石酸を用いて(-)-シベンゾリンコハク酸塩を高いキラル純度に製造する工程を提供する。
【0043】
本発明の実現例に係る(-)-シベンゾリンコハク酸塩を製造する工程は、次のようなステップを含む:
溶媒存在下で化学式(III)で表されるラセミシベンゾリン遊離塩基をD-酒石酸と反応させてラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を含む混合物を得るステップ;および
【化24】
ラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を含む混合物から(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を分離するステップ。
【0044】
本発明の実現例において、ラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩は、溶媒存在下で製造することができる。
【0045】
本発明の実現例において、溶媒存在下でラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を製造するステップは、次のようなステップを含む。
【0046】
ラセミシベンゾリン遊離塩基を含む第1溶液にD-酒石酸を含む第2溶液を添加して混合物を製造するステップ;および
前記混合物に有機溶媒を1滴ずつ添加してラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を製造するステップ。
【0047】
本発明の実現例において、前記混合物を製造するステップにおいて、前記第1溶液に第
2溶液が徐々に1滴ずつ添加されることができる。
【0048】
本発明の実現例において、前記混合物に有機溶媒を添加するステップにおいて、前記混合物に追加の有機溶媒が徐々に1滴ずつ添加されることができる。
【0049】
本発明の実現例において、前記第1溶液はラセミシベンゾリン遊離塩基をアセトニトリルに溶解させて製造され、前記第2溶液はD-酒石酸を水に溶解させて製造されたものであってもよい。
【0050】
本発明の実現例において、前記追加の有機溶媒は、メチル第3級ブチルエーテルであってもよい。
【0051】
本発明の実現例において、前記溶媒存在下でラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を製造するステップにおいて、前記溶媒は、アセトニトリル、水およびメチル第3級ブチルエーテルであってもよい。
【0052】
本発明の実現例において、前記溶媒存在下でラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を製造するステップにおいて、アセトニトリルとメチル第3級ブチルエーテルの体積比は0.5:1~1.5:1、具体的には約0.7:1~1.3:1であってもよい。例えば、アセトニトリルとメチル第3級ブチルエーテルの前記体積比は約1:1または1:1であってもよい。
【0053】
本発明の実現例において、前記追加の有機溶媒を添加した後に室温で反応が行われ、反応の加速のために室温で反応後に40~60℃の温度で加熱することができ、具体的には約45℃以上、より具体的には約50℃以上、さらに具体的には約50~55℃の温度で加熱することができる。
【0054】
本発明の実現例において、前記追加の有機溶媒は15分以上1滴ずつ添加することができ、添加時間は反応スケール(scale)に応じて異なるが、20分、30分、1時間および2時間の間1滴ずつ添加することができる。また、追加の有機溶媒を1滴ずつ添加した後に2時間以上攪拌することができ、攪拌時間は反応スケール(scale)に応じて異なるが、2.5時間、3時間、3.5時間および4時間攪拌を行うことができる。
【0055】
本発明の実現例において、ラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を含む混合物から(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を分離するステップは、ラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を含む混合物から(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を固体形態で得るステップであってもよい。
【0056】
本発明の実現例において、ラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を含む混合物から(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を分離するステップは、次のようなステップをさらに含むことができる:
【0057】
ラセミシベンゾリン-D-酒石酸塩を含む混合物を加熱するステップ;および
前記加熱後に前記混合物を冷却するステップ。
【0058】
本発明の実現例において、前記加熱ステップは約45℃以上、具体的には約50℃以上、より具体的には約50℃~55℃の温度で行うことができる。
【0059】
本発明の実現例において、(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を分離するステップは、前記加熱ステップ以後に攪拌ステップをさらに含むことができる。前記攪拌ステップは
30分以上行い、攪拌時間は反応スケール(scale)に応じて異なるが、1時間、2時間、3時間、4時間および5時間攪拌することができる。
【0060】
本発明の実現例において、前記冷却ステップは約20~30℃、具体的には約25~30℃の温度で行うことができる。
【0061】
本発明の実現例において、(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を分離するステップは、前記冷却ステップ以後に攪拌ステップをさらに含むことができる。
【0062】
前記攪拌は30分以上行い、攪拌時間は反応スケール(scale)に応じて異なるが、1時間、2時間、3時間、4時間および5時間攪拌することができる。
【0063】
本発明の実現例において、(-)-シベンゾリンコハク酸塩を製造する工程は、前記(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を精製するステップをさらに含むことができる。
【0064】
本発明の実現例において、ラセミシベンゾリン遊離塩基は、ラセミシベンゾリンコハク酸塩を塩基と反応させて製造することができる。
【0065】
本発明の実現例において、使用可能な塩基の種類は前述した通りである。
【0066】
本発明の実現例において、(-)-シベンゾリンコハク酸塩を製造する工程は、次のようなステップをさらに含む:
(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を塩基と反応させて(-)-シベンゾリン遊離塩基を得るステップ;および
前記(-)-シベンゾリン遊離塩基をコハク酸と反応させるステップ。
【0067】
本発明の実現例において、使用可能な塩基の種類は前述した通りである。
【0068】
本発明の実現例に係る方法により得られた前記(-)-シベンゾリン-コハク酸塩は、薬学的に許容可能な程度のキラル純度を有し、単一結晶型であってもよい。
【0069】
本発明の一実現例は、化学式(IVA)で表される前記(-)-シベンゾリン・キラル酸塩、薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0070】
(-)-シベンゾリンコハク酸塩および・キラル酸塩以外の塩の製造
本発明の純粋な鏡像異性体である(-)-シベンゾリンコハク酸塩の新規な製造工程またはそれと同一であると認められる工程を通じて(-)-シベンゾリンの薬学的に許容される塩を製造することができる。
【0071】
本発明の実現例に係る方法により得られた前記(-)-シベンゾリン遊離塩基、(-)-シベンゾリン-コハク酸塩、(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩を含む(-)-シベンゾリン・キラル酸塩は、追加の反応を通じて(-)-シベンゾリンの薬学的に許容される塩を製造することができる。
【0072】
前記「薬学的に許容される塩」は、無機酸塩および有機酸塩をいずれも含み、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、クエン酸塩などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0073】
(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型およびその製造工程
本発明の第3実現例は、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の
結晶型を提供する。
【化25】
【0074】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、11.2°、14.1°、17.3°、22.1°、23.0°および24.3°(2θ±0.2°)での回折ピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンを有する。
【0075】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、11.15°、14.09°、17.29°、22.06°、22.93°および24.25°(2θ)での回折ピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンを有する。
【0076】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、11.2°、14.1°、17.3°、18.2°、21.4°、22.1°、23.0°、24.3°および26.4°(2θ±0.2°)での回折ピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンを有する。
【0077】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、11.2°、14.1°、17.3°、22.1°、23.0°および24.3°(2θ±0.2°)でのXRPD回折ピークに加え、17.6°、18.2°、21.4°、26.4°および29.5°(2θ±0.2°)からなる群より選択される一つ以上の回折ピークをさらに含むXRPDパターンを有することができる。
【0078】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、11.15°、14.09°、17.29°、22.06°、22.93°および24.25°(2θ)でのXRPD回折ピークに加え、17.59°、18.15°、21.37°、26.36°および29.50°(2θ)からなる群より選択される一つ以上の回折ピークをさらに含むXRPDパターンを有することができる。
【0079】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、下記表1のように、8.99°、11.15°、13.36°、14.09°、14.30°、17.29°、17.59°、18.15°、19.81°、21.37°、22.06°、22.93°、24.25°、25.41°、26.36°、27.59°および29.50°(2θ)での回折ピークを含むXRPDパターンを有することができる。
【0080】
【表1】
【0081】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、5.31°、10.05°、8.99°、11.15°、13.36°、14.09°、14.30°、17.29°、17.59°、18.15°、19.81°、21.37°、22.06°、22.93°、24.25°、25.41°、25.94°、26.36°、27.59°および29.50°(2θ)での回折ピークを含むXRPDパターンを有することができる。
【0082】
本発明の実現例において、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、光学回転が[α]-124.47であって、純粋な光学異性体であり、IRスペクトルが1674.96cm-1(Acid C=O 伸縮振動(stretching vibration))、2954.43cm-1(sp3 伸縮振動(stretching vibration))値でのピークを含むことができる。
【0083】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、図1のXRPDパターンを有することができる。
本発明の実現例によれば、XRPDパターンは、Cu-KαまたはCu-Kβ放射線を
用いて測定されたものであってもよく、具体的にはCu-Kα放射線を用いて測定されたものであってもよく、より具体的にはCu-Kα1、Cu-Kα2、Cu-Kβ、またはCu-Kα1およびCu-Kα2を用いて測定されたものであってもよい。例えば、前記XRPDパターンは、Cu-Kα放射線を用いて測定されたものであってもよい。
【0084】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の前記示差走査熱量(DSC)のグラフは、10℃/minの昇温速度で約187~193℃の温度での吸熱ピークを有し、具体的には190.00℃±2℃、より具体的には190.00℃±1℃であってもよく、例えば、DSC溶融吸熱転移ピークは、約190.59℃から始まって約190.78℃において最大に達する。一般に溶融点および吸熱転移温度の測定は、±2℃または一般に±1℃の許容誤差内にある値を提供する。
【0085】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型に対する示差走査熱量(DSC)グラフは図2の通りである。
【0086】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型のFT-IRによるスペクトルは1674±5cm-1および2954±5cm-1、例えば、1674cm-1および2953cm-1においてピークを有することができる。
【0087】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型のFT-IRスペクトルは図3の通りである。
【0088】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の粒子大きさ分布は、D10:10.0μm以上、D50:150μm以上およびD90:300.0μm以下であり、例えば、D10:15.2μm、D50:104.0μmおよびD90:265.0μmを有することができる。前記(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の粒子大きさは非常に微細であることを確認することができる。前記結晶型は、粉砕(miling)のような追加の工程なしに製剤化することができる。
【0089】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の水に対する溶解度は、41.0±1mg/ml(25±3℃の温度下)であってもよい。溶解度はpHに応じて様々であり、0.1N HClでは65.0±1mg/ml(25±3℃の温度下)であり、pH6.8のリン酸塩では45.0±1mg/ml(25±3℃の温度下)であってもよい。
【0090】
本発明の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、固体C-NMR、結晶格子面間隔での特定回折ピーク、固体結晶型の顕微鏡写真上の形態、固体結晶型の顕微鏡写真上の粒子大きさまたは粒度分布(particle size distribution、D-value)のような追加の物理的性質などにより定義できる。
【0091】
また、本発明の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、吸湿性が低く、加速条件および長期保管条件に応じた安定性に優れ、含量の変化なしに安定的に長期間維持できる。したがって、本発明の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、高純度の原料物質として得ることができ、長期間保管時にも高い純度および結晶型の形態を長期間維持することができる。
【0092】
また、本発明の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、別途のカラムクロマトグラフィーのような複雑な精製工程を経ることなく高純度および高収率で得ることができるため、大量生産および商業的な目的に容易に適用できる。
【0093】
さらに、本発明の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、安定性が高く、優れた薬理効果を奏することができるため、心臓病、不整脈心臓疾患および心不全からなる群より選択された疾患の予防または治療の用途のための有効成分として有用に使用できる。
【0094】
(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、通常の技術者であれば、公知された通常の製剤化方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟膏、クリーム、座剤、点眼剤(Eye drop)および注射剤からなる群より選択された剤形の形態に剤形化できる。
【0095】
本発明の第4実現例は、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を製造する工程を提供する。
【化26】
【0096】
本発明の実現例によれば、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の製造工程は、次のようなステップを含む:
a)化学式(VA)で表される(-)-シベンゾリン遊離塩基を含む第1溶液とコハク酸を含む第2溶液とを混合して混合物を製造するステップ;および
【化27】
b)前記混合物を冷却させて化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を製造するステップ。
【化28】
【0097】
本発明の実現例によれば、前記ステップa)において、第1溶液に第2溶液を添加して前記混合物を製造することができる。
【0098】
本発明の実現例によれば、前記第1溶液は、(-)-シベンゾリン遊離塩基を直鎖もしくは分岐鎖のC~Cのアルコールに溶解させて製造されたものであってもよい。
【0099】
本発明の実現例によれば、前記第2溶液は、コハク酸を直鎖もしくは分岐鎖のC~Cのアルコールに溶解させて製造されたものであってもよい。
【0100】
本発明の実現例によれば、前記直鎖もしくは分岐鎖のC~Cのアルコールは、メタノール、エタノール、直鎖もしくは分岐鎖のプロパノール、直鎖もしくは分岐鎖のブタノール、直鎖もしくは分岐鎖のペンタノール、またはこれらの混合物であってもよく、具体的にはメタノール、エタノール、直鎖もしくは分岐鎖のプロパノール、またはこれらの混合物であってもよく、より具体的にはメタノール、直鎖もしくは分岐鎖のプロパノール、またはこれらの混合物であってもよい。
【0101】
本発明の実現例によれば、前記第1溶液は、イソプロパノールを溶媒として用いて製造されたものであってもよく、前記第2溶液は、メタノールを溶媒として用いて製造されたものであってもよい。この場合、前記イソプロパノールとメタノールの体積比は1~5:1であってもよく、具体的には1~3:1であってもよく、より具体的には2:1であってもよい。
【0102】
本発明の実現例によれば、前記a)ステップの混合は20~60℃の温度で行い、具体的には20~50℃の温度で行い、より具体的には20~35℃の温度で行うことができる。
【0103】
本発明の実現例によれば、前記b)ステップの冷却は0~10℃の温度で行うことができる。
【0104】
本発明の実現例によれば、前記b)ステップの冷却後、濾過および乾燥ステップをさらに行って固体形態の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を得ることができる。
【0105】
本発明の実現例によれば、a)ステップの混合は5分以上行い、反応スケール(scale)に応じて異なるが、10分、20分、30分および1時間行うことができる。
【0106】
本発明の実現例によれば、ステップb)の冷却は1時間以上行い、冷却は反応スケール(scale)に応じて異なるが、2時間、3時間、4時間および5時間行うことができる。
【0107】
本発明の第5実現例は、化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を製造する工程を提供する。
【0108】
本発明の実現例によれば、前記(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の製造工程は、次のようなステップを含む:
a’)直鎖もしくは分岐鎖のC~Cのアルコール存在下で(-)-シベンゾリン遊離塩基とコハク酸を反応させて混合物を製造するステップ;および
b’)前記混合物を冷却させて固体形態の(-)-シベンゾリンコハク酸塩を得るステップ。
【0109】
本発明の実現例によれば、前記直鎖もしくは分岐鎖のC~Cのアルコールは、メタノール、エタノール、直鎖もしくは分岐鎖のプロパノール、直鎖もしくは分岐鎖のブタノール、直鎖もしくは分岐鎖のペンタノール、またはこれらの混合物であってもよく、具体的にはメタノール、エタノール、直鎖もしくは分岐鎖のプロパノール、またはこれらの混合物であってもよく、より具体的にはメタノール、直鎖もしくは分岐鎖のプロパノール、またはこれらの混合物であってもよい。
【0110】
本発明の実現例によれば、前記直鎖もしくは分岐鎖のC~Cのアルコールは、イソプロパノールおよびメタノールであってもよい。前記イソプロパノールとメタノールの体積比は1~5:1であってもよく、具体的には1~3:1であってもよく、より具体的には2:1であってもよい。
【0111】
本発明の実現例によれば、前記a’)ステップでの混合は20~60℃の温度で行い、具体的には20~50℃の温度で行い、より具体的には20~35℃の温度で行うことができる。
【0112】
本発明の実現例によれば、前記b’)ステップの冷却は0~10℃の温度で行い、冷却により固体形態のシベンゾリンコハク酸塩の結晶型が形成される。
【0113】
本発明の実現例によれば、前記b’)ステップの冷却後、濾過および乾燥ステップをさらに行って固体形態のシベンゾリンコハク酸塩の結晶型を得ることができる。
【0114】
本発明の実現例によれば、前記a’)ステップでの混合は5分以上行い、攪拌時間は反応のスケールに応じて異なるが、10分、20分、30分および1時間行うことができる。
【0115】
本発明の実現例によれば、前記b’)ステップでの冷却は1時間以上行い、攪拌時間は反応のスケールに応じて異なるが、2時間、3時間、4時間および5時間行うことができる。
【0116】
(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を含む薬学的組成物
本発明の第6実現例は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と共に、有効成分として化学式(IA)で表される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型を有効量で含む薬学的組成物を提供する。
【0117】
前記組成物は、通常の技術者であれば、公知された通常の製剤化方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟膏、クリーム、座剤、点眼剤(Eye drop)および注射剤からなる群より選択された剤形の形態に剤形化できる。
【0118】
前記組成物は、心臓病、不整脈心臓疾患および心不全症からなる群より選択された少なくとも一つの疾患に対して予防または治療の効果を示すことができる。
【0119】
本発明の実現例によれば、前記薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有した者が容易に実施できる方法により、薬学的に許容可能な担体を用いて製剤化して単位用量の形態に製造するかまたは多用量の容器に入れて製造することができる。
【0120】
本発明の実現例によれば、前記薬学的組成物に含まれる添加剤の含量は、特に制限されるものではなく、通常の製剤化に用いられる範囲内で適切に調節できる。
【0121】
本発明の実現例によれば、前記薬学的組成物は、様々な経路、例えば、経口投与または非経口投与により有効量で患者に投与できる。好ましくは、本発明の組成物は、カプセル、錠剤、分散液および懸濁液のような経口投与用の形態に製造できる。
【0122】
本発明の実現例に係る薬学的組成物の好ましい投与量および投与周期は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、投与期間または間隔、排泄率、体質特異性、製剤の性質、疾患の重症度などに応じて異なり、通常の技術者により適切に選択できる。
【発明の効果】
【0123】
本発明に係る(-)-シベンゾリンコハク酸塩は、高いキラル純度に単純な工程で製造可能であり、経済的且つ大量生産に顕著に有利である。
【0124】
また、本発明に係る(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、吸湿性が低く、加速条件および長期保管条件に応じた安定性に優れ、含量の変化なしに安定的に長期間維持できる。したがって、本発明の(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、高純度の原料物質として得ることができ、長期間保管時にも高い純度および結晶型の形態を長期間維持することができる。さらに、(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、簡単且つ経済的であり、産業上に適用可能な工程を通じて別途の精製工程を経ることなく高純度および高収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
図1】実施例4により製造される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の粉末X線回折(XRPD)パターンを示す図である。
図2】実施例4により製造される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の示差走査熱量(DSC)を示す図である。
図3】実施例4により製造される(-)-シベンゾリンコハク酸塩のFT-IRスペクトルを示す図である。
図4】実施例4により製造される(-)-シベンゾリンコハク酸塩の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0126】
本発明の工程の細部事項は下記の実施例にて提示されるが、これは単に例示として提供されるものであるため、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0127】
実験過程:
<機器分析および測定条件>
1.キラル純度(HPLC)分析
製造された化合物の光学純度(e.e)は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、測定条件は以下の通りである。
【0128】
【表2】
【0129】
2.H-NMRおよび13C-NMR分析
Bruker advance-III FT-NMRを用いて(-)-シベンゾリンコハク酸塩の核磁気共鳴スペクトルを得て、H-NMRは400MHz(DMSO-D)において、そして13C-NMRは400MHz(CDOD)において測定された。
【0130】
3.IR(赤外線分光学)分析
パーキンエルマースペクトラムFT-IR分光光度法(PerkinElmer spectrum FT-IR spectrophotometer)を用いて(-)-シベンゾリンコハク酸塩のIR分析を行い、IRスペクトルはKBr discを用いて記録された。
【0131】
4.質量スペクトル(Mass spectral)分析
エレクトロスプレーイオン化(Electro Spray Ionization)(ESI)が取り付けられたアジレントLCQ Fleetサーモイオントラップ質量分析計(Agilent LCQ Fleet Thermo-ion trap mass spectrometer)を用いて(-)-シベンゾリンコハク酸塩の質量スペクトル分析を行った。
【0132】
5.紫外線-可視光線分光学(UV-Visible spectroscopy)分
パーキンエルマー(モデルLambda 25)の紫外線-可視光線分光学分析機を用いて(-)-シベンゾリンコハク酸塩の紫外線-可視光線分光学分析を行った。メタノールを溶媒にして(-)-シベンゾリンコハク酸塩を溶解させて10μg/mlの溶液を製造し、200nmから400nmまでスキャンして分析を行った。
【0133】
6.比旋光度(Specific Optical Rotation)分析
1.401g/100ml(メタノール)濃度の(-)-シベンゾリンコハク酸塩溶液に対して、常温でアジレント(Agilent) Autopol V、シリアル#81225により比旋光度分析を行った。
<実施例>
【0134】
実施例1.(±)-シベンゾリン遊離塩基の製
50gの(±)-シベンゾリンコハク酸塩の懸濁液を200mlの水において攪拌し、25~30℃の温度で30分間10%水酸化ナトリウム溶液でpH10.5~10.8に塩基性化した後、エチルアセテート400mlで抽出した。前記得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、45℃以下で減圧(400-20mmHg)下で濃縮して白色の固体形態の(±)-シベンゾリン遊離塩基30gを得た。
[キラルHPLCにより測定されたキラル純度:(-)-シベンゾリン48.76%および(+)-シベンゾリン51.24%の混合物]
【0135】
実施例2.(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩の製造
実施例1により製造された(±)-シベンゾリン遊離塩基15gを250mlのアセトニトリルに溶解させた後、25~30℃の温度で15分間攪拌し、30mlの水に溶解されたD-(-)-酒石酸(1.0m.eq.)溶液を25~30℃の温度で20分間添加して混合物を得た。前記混合物を30分間攪拌した後、前記混合物にメチル第3級ブチルエーテル(MTBE)250mlを20分間添加し、常温で2時間30分間攪拌して混合物を製造した。前記混合物を50~55℃の温度で加熱し、1時間攪拌した後、25~30℃に冷却し1時間攪拌した。前記得られた固体を濾過し、アセトニトリル23mlで洗浄してキラルHPLC測定結果99.0%のキラル純度を有する(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩6.4gを得た(収率:41(w/w)%)。
1H-NMR (400 MHz, CD 3OD): 7.38(m, 6H); 7.29(m, 3H); 7.20(m, 1H); 4.40(s, 2H); 3.71(m, 2H); 3.52(m, 2H); 2.83(t, 1H); 2.34(t, 1H); 1.90(t, 1H) ppm.
13C-NMR (100 MHz, CD 3OD): 177.01, 170.68, 144.71, 139.88, 130.73, 129.82, 129.72, 128.90, 128.77, 128.19, 74.21, 45.52, 42.54, 23.02, 20.11.
IR (cm -1): 1731.23, 3531.63.
【0136】
実施例3.(-)-シベンゾリン遊離塩基の製造
実施例2により製造された(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩5gを25mlの水に添加し、25~30℃の温度で飽和重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)溶液50mlで塩基性化した後、ジクロロメタン200mlで抽出した。抽出されたジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、40℃以下で減圧(500-20mmHg)下で蒸留して[α]-153.82およびキラルHPLC測定結果99.09%のキラル純度を有する半固体形態の(-)-シベンゾリン遊離塩基3.0gを得た。
【0137】
実施例4.(-)-シベンゾリンコハク酸塩の製造
実施例3により製造された(-)-シベンゾリン塩基2.5gを25mlのイソプロパノールに溶解させた後、50~55℃の温度で攪拌し、12.5mlのメタノールに溶解されたコハク酸(1.0m.eq.)溶液を10分間添加し、25~30℃の温度で30分間攪拌後に1時間30分間0~5℃の温度において冷却した。製造された白色固体を濾過し、イソプロパノール3.75mlで洗浄した後、真空条件で40~45℃の温度で乾燥させてキラルHPLC測定結果99.9%のキラル純度を有する純粋な(-)-シベンゾリンコハク酸塩3.2gを得た(図4)。
1H-NMR (400 MHz, CD 3OD): 7.38(m, 6H); 7.29(m, 3H); 7.21(m, 1H); 3.71(m, 2H);
3.53(m, 2H); 2.82(m, 1H); 2.50(s, 4H); 2.36(t, 1H); 1.91(m, 1H) ppm.
13C-NMR (100 MHz, CD 3OD): 179.20, 170.55, 141.73, 139.83, 130.70, 129.78, 129.69, 128.84, 128.76, 128.16, 45.41, 42.41, 32.96, 23.00, 21.01 ppm.
IR spectrum: 1674.96 cm -1 (Acid C=O stretching vibration), 2954.43 cm -1(Sp3 stretching vibration).
M.w: 380.44
m/z of (-)-Cibenzoline: 263.35(theoretical), 263(observed)
UV absorption: 1.155 absorption at 202.5 nm
Specific Optical Rotation: [α] D -124.47; Rotation -VE.
【0138】
実施例5.(±)-シベンゾリン-L-酒石酸塩の製造
実施例1により製造された(±)-シベンゾリン遊離塩基15gを255mlのアセトニトリルに溶解させた後に25~30℃の温度で15分間攪拌し、35mlの水に溶解された-()-酒石酸(1.0m.eq.)溶液を25~30℃の温度で15分間添加した後、30分間攪拌した。その後、メチル第3級ブチルエーテル260mlを20分間添加し、前記と同一な温度条件で混合物を2時間攪拌した。前記得られた混合物を1時間30分間50~55℃の温度で加熱し、25~30℃に冷却して同一温度で1時間攪拌した。その後、製造された固体を濾過し、それをアセトニトリル30mlで洗浄してキラルHPLC測定結果99.0%のキラル純度を有する()-シベンゾリン-L-酒石酸塩6.0gを得て、濾過された溶液(filtrate)を減圧下で蒸留してオイル残留物の(±)-シベンゾリン-L-酒石酸塩を得た(ここで、全体含量の70%が(-)-シベンゾリン-L-酒石酸塩であり、30%が(+)-シベンゾリン-L-酒石酸塩である。)。
【0139】
実施例6.(±)-シベンゾリン遊離塩基の製造
実施例5により製造された(±)-シベンゾリン-L-酒石酸塩45gを225mlの水に添加し、飽和重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)水溶液450mlで30分間塩基性化した後、ジクロロメタン600mlで抽出した。抽出されたジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、40℃以下で減圧(500-20mmHg)下で蒸留して半固体形態の(±)-シベンゾリン遊離塩基28.0gを得た。
【0140】
実施例7.(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩の製造
実施例6により製造された(±)-シベンゾリン遊離塩基18gを300mlのアセトニトリルに溶解させた後に25~30℃の温度で15分間攪拌し、1モル当量(molar equivalent)の36mlのD-(-)-酒石酸水溶液を25~30℃の温度で15分間添加した。前記混合溶液を30分間攪拌し、メチル第3級ブチルエーテル300mlを20分間添加し、常温で2時間30分間攪拌した。得られた混合物を50~55℃の温度で加熱し、1時間攪拌した後に25~30℃に冷却した。製造された固体を濾過し、それをアセトニトリル27mlで洗浄してキラルHPLC測定結果90~99%のキラル純度を有する(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩11.2gを得た。
【0141】
実施例8.(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩の精製
実施例7により製造された粗(crude)(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩10.0gと55mlのアセトニトリルおよび6.5mlの水を50~55℃の温度で混合して製造された懸濁液に55mlのメチル第3級ブチルエーテルを添加して30分間攪拌した。その後、製造された懸濁液を25~30℃において冷却させた。得られた固体を濾過し、アセトニトリル:メチル第3級ブチルエーテルが1:1(v/v)で混合された混合物(12.2ml)と水0.8mlで洗浄した後、45~50℃の温度で乾燥してキラルHPLC測定結果99%以上のキラル純度を有する純粋な(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩9.3gを得た。
【0142】
実施例9.(-)-シベンゾリン遊離塩基の製造
実施例7または8により製造された(-)-シベンゾリン-D-酒石酸塩10gを50mlの水に添加し、飽和重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)溶液100mlで塩基性化した後、ジクロロメタン400mlで抽出した。前記抽出された層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に蒸留してキラルHPLC測定結果99%以上のキラル純度を有する半固体形態の(-)-シベンゾリン遊離塩基6.2gを得た。
【0143】
実施例10.(-)-シベンゾリンコハク酸塩の製
実施例9により製造された(-)-シベンゾリン遊離塩基5.0gを50mlのイソプロパノールに溶解させた溶液を50℃の温度で攪拌し、28mlのメタノールに溶解されたコハク酸(1.0m.eq.)溶液を10分間添加し、25~30℃の温度で30分間攪拌した後、 0~5℃の温度において1時間冷却した。製造された白色固体を濾過し、真空条件で40~45℃の温度で乾燥させてキラルHPLC測定結果99%以上のキラル純度を有する純粋な(-)-シベンゾリンコハク酸塩6.3gを得た。
【0144】
<実験例>
実験例1.粉末X線回折(XRPD)分析
実施例4により製造された(-)-シベンゾリンコハク酸塩の粉末X線回折(XRPD)パターンを以下のような条件で測定し、その結果を図1に示す。
【0145】
【表3】
【0146】
図1に示すように、実施例4により製造された(-)-シベンゾリンコハク酸塩は、特定の2θ値でのピークを含むXRPDパターンを有しており、結晶型であることを確認した。
【0147】
実験例2.示差走査熱量法(DSC)分析
実施例4により製造された結晶型に対して示差走査熱量(DSC)分析を以下のような条件で行い、その結果を図2に示す。
-製造会社:Metter Toredo
-モデル名:DSC 1 STARE system
-昇温速度:25.0℃~250.0℃(10.00K/min)、250.0℃(10min)、250.0℃~40℃(-10.00K/min)
-温度範囲:25℃~250℃/250℃~40℃
-N速度:100ml/min
図2に示すように、本発明の実現例に係る結晶型は、示差走査熱量法にて190.00℃±2℃の吸熱ピークを有することを確認した。
【0148】
実験例3.長期保管安定性試験
実施例4により製造された前記(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型に対して長期保管条件で長期保管安定性試験を行った。
そして関連の物質を以下のような条件でHPLCで測定した。
【0149】
【表4】
【0150】
<パッキングの詳細な説明>
-1次パッキング:実施例4により製造された(-)-シベンゾリンコハク酸塩を透明なLDPE封筒に入れ、入口を捻ってストリップシールで縛ってパッキングする。
-2次パッキング:前記封筒は黒色LDPE封筒に入れ、入口を捻ってストリップシールで縛って保管する。
-3次パッキング:前記封筒は、熱密封された3重ラミネートアルミニウム封筒で保管する。前記封筒は、HDPEドラムに保管し、蓋を閉じる。
【0151】
具体的には、実施例4により製造された前記結晶型に対して3重パッキングし、それに対して25±2℃、相対湿度60±5%の条件下で長期保管安定性試験を行い、その結果を下記表5に示す。
【0152】
【表5】
【表6】
【0153】
表5に示すように、長期保管条件で白色の結晶型粉末の形態が6ヶ月間そのまま維持された。
【0154】
また、105℃で3時間乾燥後に損失率を見てみると、初期ステップにおける損失率は0.11%として0.5%より低く、1~6ヶ月間の長期保管条件で保管後の105℃で3時間乾燥後の損失率は初期ステップと類似したレベルであることを確認することができた。
【0155】
長期保管条件で、実施例4により製造された前記(S)-form((-)-シベンゾリン)が(R)-form((+)-シベンゾリン)に変化せずに安定的に形態を維持しており、優れた安定性を確認した。
【0156】
また、電位差法分析結果から確認できるように、1~6ヶ月間の保管後にも初期ステップの98%~102%範囲の値を示しており、初期レベルが維持されるという結果を確認した。
【0157】
また、長期保管条件においても類縁物質がほぼ発生せず、実施例4により製造された前記(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、長期保管条件においても変形なしに高い純度を維持して優れた安定性を確認した。
【0158】
実験例4.加速安定性試験
実施例4により製造された前記(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型に対して加速条件で長期保管安定性試験を行った。
【0159】
【表7】
【0160】
<パッキングの詳細な説明>
-1次パッキング:実施例4により製造された(-)-シベンゾリンコハク酸塩を透明なLDPE封筒に入れ、入口を捻ってストリップシールで縛ってパッキングする。
-2次パッキング:前記封筒は黒色LDPE封筒に入れ、入口を捻ってストリップシールで縛って保管する。
-3次パッキング:前記封筒は、熱密封された3重ラミネートアルミニウム封筒で保管する。前記封筒は、HDPEドラムに保管し、蓋を閉じる。
具体的には、実施例4により製造された前記結晶型に対して3重パッキングし、それに対して40±2℃の温度および相対湿度75±5%の条件下で加速安定性試験を行い、その結果を下記表7に示す。
【0161】
【表8】
【表9】
【0162】
表7に示すように、加速条件で白色の結晶型粉末の形態が6ヶ月間そのまま維持された。また、105℃で3時間乾燥後に損失率を見てみると、初期ステップにおける損失率は0.11%として0.5%より低く、1~6ヶ月間の加速条件で保管後の105℃で3時間乾燥後の損失率は初期ステップと類似したレベルであることを確認することができた。
【0163】
加速条件で、実施例4により製造された前記(S)-体(form)((-)-シベンゾリン)が(R)-体(form)((+)-シベンゾリン)に変化せずに安定的に形態を維持しており、優れた安定性を確認した。
【0164】
また、電位差法(potentiometry)分析結果から確認できるように、1~6ヶ月間の保管後にも初期ステップの98%~102%範囲の値を示しており、初期レベルが維持されるという結果を確認した。
【0165】
また、加速条件においても類縁物質がほぼ発生せず、実施例4により製造された前記(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型は、加速条件においても変形なしに高い純度を維持して優れた安定性を確認した。
【0166】
実験例5.粒子大きさの分析
実施例4により製造された(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の粒子大きさの分析は、マルバーン(Malvern)の粒子大きさ分析機(モデルMASSTERSIZER 3000)を用いて試験が行われた。前記粉末サンプルは、2barの分散圧力で分散させた。前記結果は表8に示す。
【0167】
【表10】
【0168】
添付された表9(参考 2019 USP 42 NF 37 Volume 4 物理試験 <811> 粉末の細かさ)は、該当値と関連した粒子大きさ分布を示す。
【0169】
【表11】
【0170】
粒子大きさの分析結果から確認できるように、d50(μm)は104(μm)に測定され、粒子大きさが非常に微細であることを示す。
【0171】
実験例6.吸湿性
前記吸湿性は、質量変化による固体の水蒸気吸収挙動を示す。
実施例4により製造された前記(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の吸湿性に対して80±2% RHにおいて24時間の25±1℃の温度条件で実験を行った。
前記結果を表10に示す。
【0172】
【表12】
【0173】
前記吸湿性の研究結果は、表11の基準によって評価される(参考 ヨーロッパ薬局方
第9.0版 ボリューム 1 5.11.モノグラフの文字セクション)。
【0174】
【表13】
【0175】
吸湿性の結果から確認できるように、質量変化は0.01%に測定され、「非吸湿性」として評価された。
【0176】
実験例7.溶解度
実施例4により製造された前記(-)-シベンゾリンコハク酸塩の結晶型の溶解度は、三つの異なるpH媒質において、アジレント(Agilent)のHPLC(モデルAGILENT 1260SERIES)を用いて実験した。各媒質において沈殿するまで実施例4により製造された前記結晶型を添加した。その後、前記混合物は1時間攪拌され、1時間30分間放置した。固定溶液の上清1mlをサンプリングし、メタノールで10回希釈した。希釈した溶媒をHPLCで分析し、(-)-シベンゾリンコハク酸塩ピークの幅を用いて溶解度を測定した。HPLC分析の条件は表12に示す。前記結果は表13に要約されている。
【0177】
【表14】
【0178】
【表15】
*ミリポア社の超純水用水浄水システム(モデル:Milli-Q Integral)により精製水を製造した。
【0179】
添付された表14(参考 2015 USP 38 NF 33 一般的な注意事項と要件(general notices and requirements) 5.30.説明と溶解度(Description and Solubility))は、該当数値に関する溶解度を示す。
【0180】
【表16】
【0181】
溶解度の結果から確認できるように、平均溶解度は40mg/ml(1g/25mlと同一)以上に測定され、高い溶解度として評価された。
図1
図2
図3
図4