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  • 特許-水中係留索 図1
  • 特許-水中係留索 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】水中係留索
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/02 20060101AFI20240109BHJP
   D07B 1/20 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
D07B1/02
D07B1/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021520454
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019065381
(87)【国際公開番号】W WO2019243138
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】2018/5415
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】520502318
【氏名又は名称】ベクスコ エヌ.ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】BEXCO N.V.
【住所又は居所原語表記】Industriepark Zwaarveld 25,9220 Hamme (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルトゥール,クイントン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06085628(US,A)
【文献】実開昭57-048291(JP,U)
【文献】米国特許第04258608(US,A)
【文献】特開2016-033269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0247534(US,A1)
【文献】特表平09-508447(JP,A)
【文献】中国実用新案第201228334(CN,Y)
【文献】米国特許出願公開第2018/0327968(US,A1)
【文献】国際公開第90/00644(WO,A1)
【文献】米国特許第3849929(US,A)
【文献】特公昭50-978(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B1/00-9/00
D04C1/00-7/00
D04G1/00-5/00
B63B21/00-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成繊維のロープ(1)を含んだ係留索において、前記合成繊維ロープ(1)が、ロープ心(10)と前記ロープ心(10)の周りに配置された層状のシェル(20)とを備え、前記シェル(20)が編組された外側シェル層(26)を含む、係留索であって、
前記シェル(20)が、径方向に、前記ロープ心(10)と前記外側シェル(26)との間の高さ(h)にまたがって、水面下浮揚要素(24)を含み、かつ、
前記水面下浮揚要素(24)が、水圧圧潰点が30barよりも大きい発泡材料からなる
ことを特徴とする、係留索。
【請求項2】
前記浮揚要素(24が、独立気泡構造の発泡材料からなる、請求項1に記載の係留索。
【請求項3】
前記浮揚要素が、圧縮強さが310kPaよりも大きく、引張強さが520kPaよりも大きく、せん断強さが280kPaよりも大きい発泡材料からなる、請求項1または2に記載の係留索。
【請求項4】
前記浮揚要素が、密度が180kg/mよりも大きい発泡材料からなる、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の係留索。
【請求項5】
前記浮揚要素が長手方向に間隔を空けて配置され、長手方向に連続する浮揚要素間の距離が、前記高さの2倍(2h)より小さく、好ましくは前記高さ(h)よりも小さい、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の係留索。
【請求項6】
長手方向に連続する浮揚要素間の前記距離が、前記高さの4分の1(h/4)よりも大きく、好ましくは前記高さの2分の1(h/2)よりも大きい、請求項に記載の係留索。
【請求項7】
前記浮揚要素が接線方向に間隔を空けて配置され、接線方向に連続する浮揚要素間の距離が、前記高さの4分の1(h/4)よりも大きく、好ましくは前記高さの2分の1(h/2)よりも大きい、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の係留索。
【請求項8】
連続する浮揚要素間に形成された前記間隔に、空気、水、又は適切な固体材料が充填される、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の係留索。
【請求項9】
前記ロープ心(10)が、少なくとも1本のサブロープ(11)を備え、前記少なくとも1本のサブロープ(11)の周りに、内側シェル層(21)が編組され、任意選択で前記ロープ心(10)がさらに、前記少なくとも1本のサブロープ(11)と前記内側シェル層(21)との間に設けられた、不織布又はジオテキスタイルなどのフィルタ材からなる第1のフィルタカバー(12)を備える、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の係留索。
【請求項10】
前記ロープ心(10)と前記内側シェル層(21)とに巻き付けられた、中間シェル層(22)が設けられ、前記中間シェル層(22)がさらに、
前記ロープ心(10)と前記浮揚要素(24)との間に延びる、前記浮揚要素(24)を連結且つ支持するための要素シート(23)を備え、ならびに/または
前記浮揚要素(24)と前記外側シェル層(26)との間に延びる、不織布又はジオテキスタイルなどのフィルタ材からなる第2のフィルタカバー(25)を備える、請求項9に記載の係留索。
【請求項11】
前記係留索(1)が、その長さの少なくとも75%にわたって、好ましくはその長さの少なくとも90%にわたって、より好ましくはその長さの少なくとも95%にわたって、ほぼ円筒形になっており、ならびに/または
前記合成繊維ロープ(1)がほぼ円筒形である、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の係留索。
【請求項12】
前記合成繊維ロープ(1)が、前記係留索(1)の長さの少なくとも10%にわたって、好ましくは前記係留索(1)の長さの少なくとも25%にわたって、より好ましくは前記係留索(1)の長さの少なくとも50%にわたって、長手方向に延びる、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の係留索。
【請求項13】
ロープ心(10)と前記ロープ心(10)の周りに配置された層状のシェル(20)とを備え、前記シェル(20)が編組された外側シェル層(26)を含む、請求項ないし12のいずれか一項に記載の、合成繊維のロープであって、
前記シェル(20)が、径方向に、前記ロープ心(10)と前記外側シェル(26)との間の高さ(h)にまたがって、水面下浮揚要素(24)を含み、かつ、
前記浮揚要素(24)が、水圧圧潰点が30barよりも大きい発泡材料からなる
ことを特徴とする、ほぼ合成繊維のロープ。
【請求項14】
a)ロープ心(10)を提供するステップと、
b)例えば布又は織物からなる細長いシース(23)を提供するステップにおいて、前記細長いシース(23)が、前記細長いシースの長手方向に、間隔を空けて配置された水面下浮揚要素(24)を含む、ステップと、
c)前記細長いシース(23)を、前記ロープ心(10)の周りに巻き付けるステップとを含む、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の係留索または請求項13に記載の合成繊維ロープを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープ心とそのロープ心の周りに編組されたシェルとを備えるほぼ合成繊維のロープを含んだ係留索に関する。本発明はまた、かかる係留索の一部分を構成するために提供される合成繊維ロープに関する。
【背景技術】
【0002】
海面の生産ステーションを保持するために係留索の重量を利用するワイヤ及びチェーンの係留システムとは異なり、合成繊維ロープの係留システムは、必要な復元力を提供するために、ロープの弾性を用いる。合成繊維ロープは、軽量であるため、自重でのたるみが少ないという利点を有する。最も一般的に使用される合成繊維は、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、アラミド及びHMPE(高分子量ポリエチレン)である。
【0003】
かかる合成繊維ロープは、従来技術により既知のものであり、ロープ心とそのロープ心の周りに編組されたシェルとを備えている。大多数の合成繊維ロープは海水に自然に浮かないため、その合成繊維ロープに取り付けるための外付けの浮揚要素が必要になる。例えば紐固定式や管状の浮きが、合成繊維ロープに必要な水面浮揚性を提供するために使用される。しかしながら、これらの外付けの浮揚要素は、使用中に簡単に損傷する可能性があり、損傷すれば、オフテイク・サービスにおいてロープの設置時や撤去時に中断が生じるだけでなく、修理にも費用がかかる。
【0004】
さらにまた、水中係留索の用途は、他の海洋ロープの用途とは異なっている。水中係留索の用途とは、長期間、典型的には30年間、一定の荷重がかかる用途である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、既知の係留索を改良することであり、かかる係留索の一部分を構成するために合成繊維ロープが提供されるかどうかである。
【0006】
本発明の他の目的は、リールに容易に巻き取り/繰り出すことができる係留索を提供することであり得る。本発明の他の目的は、曲げ特性を向上させることであり得る。本発明の他の目的は、海中浮揚性を向上させることであり得る。
【0007】
さらに、本発明の一目的は、熱及びUV放射による損傷、並びに/又は機械的損傷に対する保護を提供することであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、例えば常設の係留索や係留ラインなど海中係留に使用するための係留索、又はそれのほぼ合成繊維のロープによって達成される。上記合成繊維ロープは、ロープ心とそのロープ心の周りに配置された層状のシェルとを備え、上記シェルは編組された外側シェル層を含む。このシェルが、径方向Rに、上記ロープ心と上記外側シェルとの間の高さhにまたがって、海中又は水中環境での使用に適した、剛性をかなり有する水面下浮揚要素を含む。したがって、この浮揚要素は極めて高い水圧に耐えて、水中用途における圧縮を抑える。
【0009】
上記水面下浮揚要素は、係留索の構造に組み込まれてその索の一体的な部分になっているため、その浮揚要素を係留索の運用耐用年数中に交換する必要がなくなる。この構造によって、係留索はより頑丈になり長持ちするようになる。さらに、上記浮揚要素は水中環境での使用に適しているため、この係留索は、水面より下/海底より上の所定の深さに浮くように設計でき、それによって最大3000mまでの水中係留に適するようになる。
【0010】
さらに、上記合成繊維ロープの構造により、水面下浮揚性能が向上し、耐衝撃性が高まり、耐磨耗性が高まり、紫外線に対する耐性が向上し、係留索の寿命が延び、予備の係留索とコストのかかる保守員の必要性がなくなる。
【0011】
好ましい一実施形態では、上記浮揚要素はブロック形をしている。他の好ましい実施形態では、上記ブロック形の要素は、ロープ心の周りに螺旋状に配置される。好ましくは、上記高さは1cmよりも大きく、より好ましくは10cmより小さく、よりいっそう好ましくは約2.5cmである。上記要素は、好ましくは、長さ10~30cm且つ/又は幅2~10cmを有する。
【0012】
シェル内に浮揚要素が存在するため、各浮揚要素の特性の調整又は配置の変更を行うことにより、係留索の特性を特定の要件に適合させることが可能になる。このことは、合成繊維ロープしたがって係留索の、所定の特性を容易に実現できるという利点を有する。上記浮揚要素は、例えば、係留索の浮揚性、曲げ特性、又は保護特性に影響を及ぼし得る。他の利点は、様々な特性を有する係留索を同様に製造できることである。
【0013】
第1の態様では、本発明は、上述の係留索であって、上記浮揚要素がほぼ、発泡材料、詳細には実質的に独立気泡構造の発泡材料からなる、係留索に関する。好ましくは、上記浮揚要素は、海中係留に使用するための耐圧性の海中発泡体からなる。任意選択で、上記浮揚要素は、保護用の表皮内に封入された独立気泡発泡材料からなる。独立気泡発泡体は、中心部の密度がはるかに高いため剛性をかなり有するが、連続気泡発泡体は、非常に小さな力を受けても変形する傾向がある。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、上述の係留索であって、上記浮揚要素が、水圧圧潰点が30barよりも大きい発泡材料からなる、係留索に関する。「水圧圧潰点」という用語は、1~2bar/秒で次第に増加する圧力を受けた材料が、その初期体積の5%を失ったときの圧力(単位はbar)として定義される。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、上述の係留索であって、上記浮揚要素が、圧縮強さが試験方法ASTMD1621によると310kPaよりも大きく、好ましくは4.5MPaよりも大きく、引張強さが試験方法ASTMD1623によると520kPaよりも大きく、好ましくは6.3MPaよりも大きく、せん断強さが試験方法ASTMC273によると280kPaよりも大きく、好ましくは3.2MPaよりも大きく、且つ/又はせん断弾性率が試験方法ASTMC273によると45MPaよりも大きい、発泡材料からなる、係留索に関する。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、上述の係留索であって、上記浮揚要素が、密度が試験方法ISO845又はASTMD1622によると48kg/mよりも大きい発泡材料からなる、係留索に関する。詳細には、上記浮揚要素は、密度が180kg/mよりも大きく、且つ/又は230kg/mより小さく、好ましくは約200kg/mである発泡材料からなり得る。
【0017】
第2の態様では、本発明は、上述の係留索であって、上記要素が長手方向Lに間隔を空けて配置され、長手方向に連続する要素間の距離が上記高さの2分の1よりも大きく、好ましくは上記高さよりも大きい、係留索に関する。一実施形態では、本発明は、上述の係留索であって、長手方向に連続する要素間の上記距離が上記高さの2倍より小さく、好ましくは上記高さよりも小さい、係留索に関する。
【0018】
上記要素が互いに十分な距離をとって配置されているため、上記合成繊維ロープを、輸送のためにリールに巻き取る(又は容器に入れる)ことができるように、曲げることが可能になる。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、上述の係留索であって、上記要素が周方向つまり接線方向Tに間隔を空けて配置され、接線方向に連続する要素間の距離が上記高さの4分の1よりも大きく、好ましくは上記高さの2分の1よりも大きい、係留索に関する。
【0020】
第3の態様では、本発明は、上述の係留索であって、上記ロープ心が少なくとも1本のサブロープを備え、その少なくとも1本のサブロープの周りに、内側シェルが編組される、係留索に関する。好ましくは、上記ロープ心はさらに、上記少なくとも1本のサブロープと上記内側シェルとの間に設けられた、フィルタ材からなる第1のフィルタカバーを備える。
【0021】
他の好ましい実施形態では、本発明は、上述の係留索であって、上記中間シェルが、上記ロープ心と上記浮揚要素との間に設けられた、上記浮揚要素を担持するための少なくとも1つの要素シースを備える、係留索に関する。好ましくは、上記ロープ心がさらに、上記要素と上記外側シェルとの間に設けられた、フィルタ材からなる第2のフィルタカバーを備える。
【0022】
幾つかの実施形態では、本発明は、上述の係留索であって、上記外側シェルがほぼ円筒形、即ちほぼ一定の断面積を有し、好ましくは円形の断面積を有する、係留索に関する。上記合成繊維ロープは、どの位置でも同じ断面を有するため、長手方向にほぼ平坦な外側表面を有する。このことは、上記合成繊維ロープをリールに容易に巻き取り/繰り出すことができるという利点を有する。
【0023】
一実施形態では、本発明は、上述の係留索であって、上記合成繊維ロープが上記係留索の長さの少なくとも10%にわたって長手方向に延びる、係留索に関する。上記合成繊維ロープは、好ましくは上記係留索の長さの少なくとも25%にわたって延び、より好ましくは上記係留索の長さの少なくとも50%又は75%にわたって延びる。上記合成繊維ロープが両端を除いて係留索の大部分にまたがって延びているので、上記係留索の形状は主に合成繊維ロープによって決まる。上記合成繊維ロープがほぼ均一な構造を有するならば、上記係留索もやはり、おそらくは両端を除いて、ほぼ均一な構造を有する。これにより、係留索全体の巻き上げ及び/又は繰り出しが容易になる。
【0024】
本発明はさらに、上述の係留索に使用するための合成繊維ロープに関し、並びに、浮揚要素を担持する少なくとも1つの要素シースを上記ロープ心の周りに巻くことによって上記係留索を製造する方法に関する。
【0025】
以下に、本発明について、その例示的な実施形態が示されている図面を参照して詳細に説明する。これらの実施形態は、例示のみを目的としており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態による、係留索に使用するための合成繊維ロープの一部切り取り概略図である。
図2図1に示した係留索の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
当業者には明らかなことだが、本発明の概念の範囲内で、本発明の他の代替形態及び等価な実施形態が考案可能である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定される。
【0028】
本発明については、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明するが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲のみによって限定される。記載されている図面は概略図にすぎず、本発明を限定するものではない。各図面では、要素によってはその大きさが場合により説明の目的で誇張され、縮尺どおりに描かれていない。寸法及び相対的な大きさは、必ずしも本発明の現実の実施化に対応するわけではない。
【0029】
さらに、本明細書の説明及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順次的又は時系列的な順序を説明するために使用されるわけではない。これらの用語は、適切な状況下で入れ替え可能であり、本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示されている以外の順序で実施され得る。
【0030】
さらに、本明細書の説明及び特許請求の範囲における上、下、上方、下方などの用語は、説明の目的で使用され、必ずしも相対的な位置を説明するために使用されるわけではない。これらの用語は、適切な状況下で入れ替え可能であり、本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示されている以外の向きで実施され得る。
【0031】
さらに、各種実施形態を「好ましい」と称しているが、これらは本発明の範囲を限定するものとしてではなく、本発明を実施できる例示的な方法として解釈されるべきである。
【0032】
特許請求の範囲で使用している「備える」という用語は、それ以降に列挙される要素又はステップに限定されると解釈されるべきではなく、他の要素やステップを除外するものではない。この用語は、記載の特徴、完全体、ステップ又は構成要素の存在を明示するものとして解釈される必要があるが、他の1つ又は複数の特徴、完全体、ステップ又は構成要素、或いはそれらのグループの存在又は追加を除外するものではない。したがって、「AとBを備える装置」という表現の範囲は、構成要素AとBのみで構成される装置に限定されるべきではなく、むしろ本発明に関して、唯一列挙された装置の構成要素がAとBなのであり、さらに特許請求の範囲は、それらの構成要素の均等物を含むものと解釈されるべきである。
【0033】
本発明による係留索の好ましい一実施形態において、図1に示されている合成繊維ロープ1には、少なくとも一方の端に、ループ又はアイが装備されている。かかるアイは従来技術により既知のものであり、ここではそれについてこれ以上説明しない。
【0034】
この好ましい実施形態の一部分を構成する合成繊維ロープ1は、図2に示されているように、径方向Rに、ロープ心10と、内側シェル層21、中間シェル層22及び外側シェル層26を含んだシェル20とを備える。
【0035】
ロープ心10は、6層のフィルタ材からなる第1のフィルタカバー12が巻き付けられた少なくとも1本のサブロープ11で構成される。少なくとも1本のロープ11は、3、4もしくは6本のストランドの撚りロープ又は8もしくは12本のストランドの編組ロープ、或いは二重編組ロープとして設計され得る。特定の一実施形態では、ロープ心10は、第1のフィルタライニング12が巻き付けられた一束の複数のサブロープ11で構成され得る。この複数のサブロープはそれぞれが、3、4もしくは6本のストランドの撚りロープ、又は8もしくは12本のストランドの編組ロープとして形成され得る。このロープ心10が、上記合成繊維ロープの長手方向L、径方向R及び接線方向Tを規定する。ロープ心10の周りに、複数のストランドが編組されて、連続して継目の無い内側シェル層20が形成される。この内側のロープ構造体、即ちロープ心10と内側シェル層21に、中間シェル層22が巻き付けられる。中間シェル層22は、浮揚要素24を含んだシース23と、単層又は多層のフィルタ材からなる第2のフィルタカバー25とで構成される。この中間シェル層22の周りに、複数のストランドが編組されて、連続して継目の無い外側シェル層26が形成される。好ましくは、上記合成繊維ロープ1はポリエステルから作られるが、別の合成繊維、又は様々な合成繊維の組合せからも同様に、適切に作られ得る。
【0036】
フィルタカバー12、25は、ロープ1が大水深の海底に位置する場合であっても、5μmを超える砂粒又は他の研磨粒子がストランドの間に落ち込むのを防止する。水は上記フィルタコーティングを通過することができる。これは、このフィルタコーティングが静水圧の影響を受けて割れないようにするためである。上記フィルタ材は、適切な透水性及びフィルタ効果を有する限り、例えば不織布又はジオテキスタイルであっても、その他の適当な材料であってもよい。
【0037】
多層のフィルタ材からなるフィルタカバー12、25は、重ねて巻物状にした1本のフィルタ材の帯で形成されても、或いは、ほとんど又は全く重なり合わないように長手方向にずらしてそれぞれ巻物状にした複数のフィルタ材の帯で形成されてもよい。これらの帯を、例えば螺旋状に巻くことができる。
【0038】
浮揚要素24は水中用途に適したものである。こういった水中浮揚要素は、水中用途での歪みを防止するために、極めて高い水圧に耐え、したがって圧縮強さが大きくなければならない。水中用途において、浮揚要素24は浮揚性を提供する。
【0039】
好ましくは、浮揚要素24は、独立気泡構造の、水圧圧縮強さを有する、水圧圧潰点が30barよりも大きい発泡材料からなる。
【符号の説明】
【0040】
1 合成繊維ロープ
10 ロープ心
11 サブロープ
12 第1のフィルタカバー、フィルタライニング、フィルタコーティング
20 シェル
21 内側シェル層
22 中間シェル層
23 要素シース、要素シート
24 浮揚要素
25 第2のフィルタカバー、フィルタライニング、フィルタコーティング
26 外側シェル層
図1
図2