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特許7414826フレネルレンズを有する照光式レチクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】フレネルレンズを有する照光式レチクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F41G 1/38 20060101AFI20240109BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20240109BHJP
   G02B 23/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F41G1/38
G02B3/08
G02B23/10
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021535084
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2019067236
(87)【国際公開番号】W WO2020132106
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】62/781,390
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/799,993
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516181882
【氏名又は名称】ルポルド アンド スティーブンズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Leupold & Stevens, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】マーティン コーンニーフ
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0267327(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0280040(US,A1)
【文献】国際公開第2012/057010(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0150189(US,A1)
【文献】再公表特許第03/047833(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41G 1/38
G02B 3/08
G02B 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学観察装置においてレチクルを表示するための光学システムであって、
光源と、
レチクルを支持する透明基板と、前記光源からの光が照射ビーム経路に沿って前記透明基板内及び前記レチクル上に伝播する入射面であって、前記光の少なくとも一部を、前記基板の第1の主表面を通って前記光学観察装置の光路に沿って観察者に再指向する入射面と、
前記光源と前記入射面との間の前記ビーム経路に挿入されるフレネルレンズであって、前記フレネルレンズは、前記光源からの光が前記レチクルに向かって収束するように正の光パワーを有する、フレネルレンズと、
を備え
前記入射面は前記フレネルレンズで屈折された光を受けるように構成され、且つ、前記入射面は前記第1の主表面に対して斜角で形成される、光学システム。
【請求項2】
前記レチクルは、回折格子を含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記第1の主表面を通る前記回折格子によって再指向された光は、発散して前記光学観察装置の出射瞳を満たす、請求項2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記入射面は、前記透明基板に直接形成された研磨された平坦面である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項5】
前記入射面は、前記透明基板の側面に光学的に接合される結合プリズムに形成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項6】
前記透明基板の前記第1の主表面は、前記光学観察装置の前記光路と交差し、前記入射面は、前記光学観察装置で観察可能な前記基板の一部の外側に配置されるように、前記光学観察装置の前記光路からオフセットされる、請求項1乃至5の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項7】
前記透明基板は、平行な主表面を有する第1のガラス板を含み、一方は前記第1の主表面であり、他方は第2の主表面であり、前記第1及び第2の主表面は、前記第1及び第2の主表面の表面積の合計よりも小さい表面積を有する略円筒形の側面によって接続され、前記第1及び第2の主表面は、前記光学観察装置の前記光路に実質的に垂直に配向され、前記光学観察装置の前記光路と交差する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項8】
前記透明基板は、前記第1のガラス板に光学的に接合された第2のガラス板を含み、前記第2のガラス板は、平行な第3及び第4の主表面を有し、前記第3の主表面は、前記第1のガラス板の前記第2の主表面に光学的に接合され、前記レチクルは、前記第2の主表面又は前記第3の主表面に形成される、請求項7に記載の光学システム。
【請求項9】
前記レチクルは、前記第2の主表面に形成された回折格子を含む、請求項7又は8に記載の光学システム。
【請求項10】
前記レチクルは、前記第3の主表面に形成された回折格子を含む、請求項8に記載の光学システム。
【請求項11】
前記入射面は、前記第2のガラス板に形成される、請求項8に記載の光学システム。
【請求項12】
前記入射面は、前記第1のガラス板に少なくとも部分的に形成される、請求項7又は8に記載の光学システム。
【請求項13】
前記入射面は、前記フレネルレンズの光軸に垂直である、請求項1乃至12の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項14】
前記入射面は、前記フレネルレンズの光軸に対して垂直ではない、請求項1乃至12の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項15】
前記光源は、前記フレネルレンズの光軸から外れて配置される、請求項1乃至14の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項16】
前記透明基板に入射する前記光は、前記レチクルに向かって収束する前に、TIRを介して前記透明基板の前記第1の主表面から反射される、請求項1乃至15の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項17】
前記フレネルレンズは、1mmと5mmとの間の有効焦点距離を有する、請求項1乃至16の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項18】
前記フレネルレンズは、固定共役を有する、請求項1乃至17の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項19】
前記フレネルレンズは、直径が3mm超えであり、厚さが3mm未満である、請求項1乃至18の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項20】
前記フレネルレンズは、f/1.0未満のf値を有する、請求項1乃至19の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項21】
前記フレネルレンズは、集光レンズである、請求項1乃至20の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項22】
前記フレネルレンズは、前記レチクルに前記光を集束させる、請求項1乃至21の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項23】
前記フレネルレンズは、非球面である、請求項1乃至22の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項24】
前記フレネルレンズは、前記光源に向かって面する第1のフレネルレンズ表面と、前記入射面に向かって面する第2のフレネルレンズ表面とを含む、請求項1乃至23の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項25】
前記第1及び第2のフレネルレンズ表面のそれぞれは、複数の円形溝を含み、前記第1のフレネルレンズ表面の円形溝の量は、前記第2のフレネルレンズ表面の円形溝の量とは異なる、請求項24に記載の光学システム。
【請求項26】
前記第2のフレネルレンズ表面の円形溝の前記量は、前記第1のフレネルレンズ表面の円形溝の前記量よりも大きい、請求項25に記載の光学システム。
【請求項27】
前記光学観察装置は、ライフルスコープであり、前記レチクルは、前記ライフルスコープが取り付けられる武器を照準するための可視照準マークを提供する、請求項1乃至26の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項28】
前記斜角は、第1の斜角を含み、前記フレネルレンズは少なくとも一つの光軸を含み、前記フレネルレンズは、前記少なくとも一つの光軸の一つの光軸を前記基板の前記入射面に対して第2の斜角で配置される、請求項1乃至27の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項29】
前記フレネルレンズは少なくとも一つの光軸を有し、前記光源の放射軸に対して、前記少なくとも一つの光軸の一つの光軸がオフセットされた状態で配置される、請求項1乃至27の何れか一項に記載の光学システム。
【請求項30】
前記第1のフレネルレンズ表面および前記第2のフレネルレンズ表面は非平行である、請求項24乃至26の何れか一項に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、照光式レチクル又は照準マークを生成するための光学システム、照光式レチクルシステム、並びに当該照光式レチクルシステムを含むライフルスコープ、観察光学系、及び他の光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照光式レチクルは、ライフルスコープに一般的に使用され、他の種類の光学照準装置、スポッティングスコープ、双眼鏡、並びに他のスポーツ光学系及び観察光学系にも使用され得る。いくつかの異なる装置、システム、及び方法がレチクルフィーチャを照射するために使用されてきた。出力効率の程度は何れも様々である。
【0003】
図1は、対物レンズ16とそのエレクタレンズシステム18との間のライフルスコープ10の前方焦点面14に位置する、従来技術による照光式レチクルシステム12を有する例示的なライフルスコープ10の光学システムを示す断面立面図である。図2に、照光式レチクルシステム12の拡大断面詳細図が示される。
【0004】
ライフルスコープ用の最も一般的な照光式レチクルは、エッチング及びフィリング方法で作成される。このシステムは、スコープの内部焦点面の1つに取付けられるガラス基板ディスクの表面においてエッチングされたレチクルフィーチャを含む。エッチングされたレチクルフィーチャは、白色の拡散反射材料(酸化チタン)で充填される。フィーチャを照らす光源の散乱光は、ライフルスコープの射出瞳を満たし、適度に明るい照準フィーチャを生成するが、明るい背景に対して目立つほど十分に明るくはない。
【0005】
明るさを増加させる1つの公知の方法は、特許文献1(欧州特許出願公開第0 886 163 A1号)によって教示されているように、「エッチング及びフィリング」レチクルフィーチャを、入射光を異なる次数に回折する周期構造からなる回折格子で置き換えることである。規定された波長で回折格子を照射し、特定の角度で、次数の1つがライフルスコープの光軸下に進み、明るい照準機能を作り出し得る。
【0006】
回折格子の重要な特性の一つは、回折光の出力角度が入力角度と光の波長とに依存することである。これは、単一波長の光源からの光の発散コーンから、ごく一部のみがライフルスコープを下ってユーザに向かって進むことを意味する。また、光線の回折束は、光の集束が格子に提示されないので、発散しない。この状況は、図2の光学素子の拡大図である図3に示される。図3を参照して、光源32から発する光30の発散コーンは、互いに光学的に接合されるか又は光学的に結合される2つのガラスレチクルディスク38、40の1つの表面上に形成された格子34に向けられる。小さなプリズム42は、レチクルディスク38、40の側辺に光学的に接合されるか又は光学的に結合されて、光源32からの光30のための入射面44を提供する。光30は、全内部反射(TIR)を介してレチクルディスク40の裏面46から回折格子34に向かって反射される。入力光が発散しているため、格子34は、非常に狭い出射ビーム経路48に沿って照明をライフルスコープ10の接眼レンズ50(図1)に向けて回折させる。これにより、ライフルスコープの射出瞳がレチクル照明によって満たされなくなり、ユーザの目が射出瞳の中心から離れるように動く際に照明が遮断されているかのようにユーザに見えることになる。この状況は、低い光強度(低倍率)及び大きな射出瞳を有するライフルスコープを使用する場合に問題であり、明るい照準ドット又は他の照明された照準レチクルがターゲットの迅速な捕捉のために使用される。ユーザが眼を射出瞳の中心に置き、照光式レチクルを視覚的に再取得するのに要する時間は、低い強度のスコープを使用する場合(例えば、隊舎近くの戦術的使用)には受け入れられず、大きな射出瞳を有する利点を損なう。
【0007】
特許文献2(米国特許出願公開第2006/0092507 A1号)は、レチクルディスクの縁部に接合された楕円体ミラー鏡を含む照光式レチクルを記載している。楕円体ミラーは2つの焦点を有し、一方は光源が配置される場所に、他方は回折格子に位置し、光は格子に向かって収束する。楕円体ミラーはコストが高く、光源がレチクルシリンダー(及びライフルスコープの光軸に平行)に軸方向に取り付けられているにもかかわらず、パッケージ全体は比較的大きい。このタイプのレチクルシステムがライフルスコープの前方焦点面で使用され、ライフルスコープの旋回エレクタチューブの遠位端に取り付けられる場合、照明システムパッケージのサイズは、仰角及び偏流調整のための旋回エレクタチューブの移動を望ましくないほど制限することがある。
【0008】
特許文献3(欧州特許出願公開第2 548 073 A1号)は、ガラスレチクル基板上に形成された格子に向けて収束する光ビームを生成するために、単純な結合プリズムを有する非球面レンズを使用することを記載している。この設計は、楕円体ミラーの使用を回避するが、レチクル基板と正確に整列させなければならない追加の精密光学素子を必要とし、その結果、特許文献2(米国特許出願公開第2006/0092507 A1号)によって開示されたものよりも更に大きく重いパッケージとなる。
【0009】
特許文献4(米国特許出願公開第2017/0248798 A1号)は、特許文献2(米国特許出願公開第2006/0092507A1号)の照光式レチクルシステムの変形例を記載しており、レチクルを形成する回折格子に迷光を反射させるためにガラスレチクル基板の光出射面に沿って配置された再帰反射器を含む。特許文献4の図9及び図12には、ガラスレチクル基板ディスクの横方向のマージン内に研削され、光源の光軸に垂直であり、他の実施形態の楕円体ミラーの代わりに使用されるレンズであって、回折格子上に光を集束させる角度を有する光入射面が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第0 886 163 A1号
【文献】米国特許出願公開第2006/0092507 A1号
【文献】欧州特許出願公開第2 548 073 A1号
【文献】米国特許出願公開第2017/0248798 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、照明強度又は品質を犠牲にすることなく、照光式レチクルシステムのサイズ、重量、及びコストを更に低減する必要性を認識し、本明細書に記載の改善を発明した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示による光学観察装置においてレチクルを表示するための光学システムは、光源と、レチクルを支持する透明基板と、前記光源からの光が照射ビーム経路に沿って前記透明基板内及び前記レチクル上に伝播する入射面であって、前記光の少なくとも一部を、前記基板の第1の主表面を通って前記光学観察装置の光路に沿って観察者に再指向する入射面と、を含む。正の光パワーを有するフレネルレンズは、前記光源と前記透明基板との間の前記照射ビーム経路に挿入され、これにより前記光源から発散する光を前記レチクルに向かって収束させる。
【0013】
レチクルは、好ましくは前記透明レチクル基板の表面上の回折格子によって形成されるが、エッチング及びフィリング型のレチクル等の他の方法で形成されてもよい。前記レチクルに向けられる照明ビームの前記収束は、好ましくは前記フレネルレンズの慎重な処方によって調整され、その結果、前記第1の主表面を通って前記レチクルによって再指向される光は、発散して前記光学観察装置の射出瞳を満たす。
【0014】
前記透明基板は、可視光に対して透明であり、平行な主表面を有する材料でできた1つ又は複数の板を含んでもよく、そのうちの1つは前記第1の主表面であって、前記レチクル照明はそれを通って出る。前記透明基板の前記主表面は、前記光学観察装置の前記光路によって交差され、それに対して実質的に垂直に配向されることが好ましい。前記入射面は、好ましくは前記光学観察装置と共に観察可能な前記基板の一部の外側に位置するように、前記光学観察装置の前記光路からオフセットされ、前記主表面に対して斜角で前記透明基板に直接形成された研磨された平坦面から成ってもよい。代替的に、前記入射面は、前記平行な主表面を接続する前記透明基板の側面に形成された平坦な表面に光学的に接合される結合プリズムに形成されてもよい。前記透明基板の前記平行な主表面は、前記平行な主表面の表面積の合計よりも小さい表面積を有する略円筒形の側面によって接続されてもよい。
【0015】
前記透明基板は、互いに光学的に接合されたガラス又は他の透明材料のうちの2つの透明板を含んでもよい。このような実施形態では、回折格子等の前記レチクルは、前記板が互いに接合される前に、前記板の2つの向かい合う主表面のうちの1つに形成されてもよい。2つの透明板が使用される場合、前記入射面は、前記ガラス板の何れか一方、又は前記ガラス板の両方に形成されてもよい。
【0016】
前記フレネルレンズは、好ましくは前記光源及び前記レチクルまでの前記経路距離に固定共役を有する集光レンズとして構成される。前記フレネルレンズは、その光軸が前記入射面に垂直であり、且つ前記光源の中心に位置するように配置されてもよい。代替的に、前記フレネルレンズは、前記光が前記レチクルに到達する前に前記透明基板の前記第1の主表面からの全内部反射(TIR)及び前記レチクルにおける入射角によって与えられる成形効果を少なくとも部分的に相殺する成形ビームを達成するために、前記光源の前記放出軸に対して光軸がオフセットされた状態で、或いは前記入射面に対して斜角の状態で、或いはその両方で配置されてもよく、それによって、前記レチクルにおける前記照明スポットのサイズ及び形状を改善する。
【0017】
前記フレネルレンズは、前記光源に向いている第1のフレネルレンズ表面と、前記入射面に向いている第2のフレネルレンズ表面とを含み、前記第1及び第2のフレネル表面上に異なる数の溝を有してもよい。典型的なライフルスコープレチクルの実施態様では、前記フレネルレンズは、約1mm~約5mmの有効焦点距離、約3mm超えの直径、及び、約3mm未満又は約1.5mm未満、好ましくは0.5mm~1.0mmの厚さを有してもよい。前記フレネルレンズは、好ましくはf/1.0未満、より好ましくはf/0.3とf/0.8との間、又は約f/0.5未満のf値を有し、非常に「高速」なレンズとなる。前記フレネルレンズは、球面収差を減少させるために非球面であってもよい。
【0018】
追加の態様及び利点は、好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになり、添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】前方焦点面に位置するレチクルを含むライフルスコープの側面断面図であり、本発明の1つの可能な使用環境を示す。
図2図1の細部2-2として識別される図1のライフルスコープの照光式レチクルシステムの拡大詳細断面図である。
図3】照光式レチクルシステム及び光路を示す断面概略図であり、システムのレチクルを形成する回折格子に向けられた発散照明の効果を示す図である。
図4図5の切断線4-4に沿った、本発明の一実施形態による照光式レチクルシステムを示す概略断面図である。
図5】照光式レチクルが取付けられるライフルスコープの光軸に沿ってレチクルシステムの対物面側から見た図4の照光式レチクルシステムの概略立面図である。
図6図4及び図5の照光式レチクルの例示的なフレネルレンズコンポーネントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ライフルスコープの対物レンズ16とエレクタレンズシステム18との間の前方焦点面14に位置するレチクル12を有する例示的なライフルスコープ10の側面断面図を示す。幾つかの他のライフルスコープ(図示せず)では、レチクル12は、エレクタレンズシステム18とライフルスコープ10の接眼レンズ50との間の後方焦点面22に配置されてもよい。更に他のライフルスコープ(図示せず)では、第1のレチクルが前方焦点面14に位置されてもよく、第2のレチクルが後方焦点面22に位置されてもよく、代替目的のために又は組合せ/調整で使用されてもよい。エレクタレンズシステム18は、ライフルスコープ10の管状ハウジング20に旋回自在に取り付けられ、当技術分野で周知のように、焦点面に形成された遠方のターゲットの画像に対して、レチクル12の垂直及び/又は水平位置を調整するために、仰角調整ノブ21及び偏流調整ノブ(図示しないが、ページの平面内に軸に沿って延在するであろう)の調整に応じて移動可能である。
【0021】
図1を参照して、ライフルスコープ10の光路25に沿って伝搬する光線24の軸上の束は、上及び下の周辺光線26並びに対物レンズ16の光軸と一致する中心光線28として表される。遠くの物体(図示せず)からの光は、対物レンズ16によって屈折され、第1の焦点面(前方焦点面14)で焦点に達する光線24のコリメートされた束として右からライフルスコープ10に入り、次いで、エレクタレンズシステム18を通って進み、第2の焦点面(後方焦点面22)で再び焦点に達する。その後、後方焦点面22から発散する光は、接眼レンズ50によってコリメートされ、スコープから出て、接眼レンズ50の後方に離間する射出瞳52を形成する。
【0022】
前述したように、レチクル12は、前方及び後方焦点面14、22の何れに位置されてもよく、ユーザは、レチクルマーク及び焦点面に形成された遠方の物体の画像を同時に観察することができる。レチクルマーキングは、ライフルスコープ10が従来通りに取り付けられている武器(図示せず)を照準するために、所望のターゲット位置上に重ね合わせるための照準点として機能してもよい。照準装置ではない光学観察装置等のいくつかの光学装置では、照光式レチクルは、範囲推定等の他の目的のために、又はターゲットに対するヒットの偏差をスポットするために利用されてもよい。レチクルマーキングは、単純な中心ドット又は十字線から、線、ドット、グラフィックス、及び、弾丸降下補正、風ホールド(wind hold)補正、情報表示、又は範囲推定等の機能に使用される他の特徴といったより複雑な範囲に及び得る。
【0023】
ライフルスコープ10の出射瞳52を満たすために、照光式レチクルフィーチャから出力される光束の発散は、レチクル12を出射する際に、光線24の束の発散と略一致するか、或いはそれを超える必要がある。回折格子から出力された光の発散を達成し、出射瞳52を満たすために、回折格子に向けられた光は、以下に詳細に説明する図4に示されるように、収束しなければならない。
【0024】
しかしながら、照光式レチクルシステムにおいて典型的に利用される発光ダイオード(LED)光源は、上述した図3に例示されているように、光の発散ビームを生成する。このようなLED光源からの発散光を収集し、それらをレチクルにおける焦点に向けて収束させるためには、強い正の表面及び比較的大きな直径を有するレンズ又はミラーシステムの使用を必要とする。このような従来のレンズ又はミラーのサイズ及びコストは、先に述べた理由のため禁止的である。
【0025】
本発明者は、集光レンズシステムのリレー光学系を単一のフレネルレンズに折り畳む(collapse)ことが有利であることを発見した。これにより、比較的大きな直径を有する非常に強力な正のレンズを非常に小さな空間に嵌め込むことが可能になり、それにより、より小さな直径を有する、及び/又は光源からより遠くに離間されたレンズ又はミラーを使用する場合に可能であるよりも、光源から発する光の束の量をより多く使用することが可能になる。
【0026】
図4は、図5の切断線4-4に沿った好ましい実施形態による照光式レチクルシステム100の概略断面図であり、レチクルシステム100の対物面側から見た照光式レチクルシステム100の概略立面図であり、照光式レチクルシステム100が内部に取付けられ得るライフルスコープ10の光軸28(図1)に沿って現れる。図4及び図5を参照して、照光式レチクルシステム100は、単色若しくは狭帯域LED、アイセーフ・レーザ・ダイオード、又はライフルスコープ10のハウジング20内でほとんど体積を占有しない他の適切な光源等の光源110を含む。図示の実施形態では、光源110は、ダイオードからの光を収集し、光源110とレチクルシステム100の透明基板130との間のビーム経路内に挿入されたフレネルレンズ120に向けて光の発散ビーム118を向けるためのドームレンズ114を有するLEDを含む。他の実施形態では、LEDは、表面実装LED(SMD LED)、チップオンボード(COB LED)、又はドームレンズを欠いた他の光源であってもよく、これにより、光源をフレネルレンズ120のより近くに配置し、パッケージ全体のサイズを更に小さくすることができる。光源110は、電動発光装置を構成する必要はない。例えば、光源110は、代替的にライフルスコープ10の外側に位置するライトパイプ又はコイルと、フレネルレンズ120に向けられた光ファイバの端部と共にハウジング20を通って延在するセグメントとを含むファイバ光コレクタ等の受動的な周囲光コレクタから本質的に成ってもよい。ファイバ光コレクタによって集められた周囲光は、光ファイバの下方に伝搬され、フレネルレンズ120に近接する光ファイバの端部で放射される。
【0027】
光源110から発する光の発散ビーム118は、光源110に面しているフレネルレンズ120の第1のフレネルレンズ表面134に入射し、透明基板130の入射面140に面している第2のフレネルレンズ表面136に向けて屈折される。フレネルレンズ120は、光源110からの光がフレネルレンズ120を出て入射面140を通って透明基板130に入る照明ビーム経路160に沿って伝搬するにつれて、光源110からの光を収束させる。
【0028】
透明基板130は、ガラス、プラスチック、又は他の透明材料の1つ又は複数の板を含んでもよく、用語「透明」は、材料が可視光に対して透明であり、有意な散乱又は拡散を引き起こさないことを意味する。図4に示す実施形態では、透明基板130は、平行な第1及び第2の主表面172、174をそれぞれ有する第1のガラス板170と、平行な第3及び第4の主表面182、184を有する第2のガラス板180とを含む。第1のガラス板170の第2の主表面174は、好ましくは第1及び第2のガラス板170、180と実質的に同一又は類似の屈折率を有する光学接合材料で、第2のガラス板180の第3の主表面182に光学的に接合される。好適な光学接合材料は、第1及び第2のガラス板170、180をそれぞれ第2及び第3の主表面174及び182において光学的に結合する接着剤、接合剤、又は他の手段を含んでもよい。
【0029】
第1及び第2の主表面172、174は、第1の側面176によって結合され、第3及び第4の主表面182、184は、第2の側面186によって結合される。第1及び第2の側面176、186は、好ましくは略円筒形であり、一方又は両方が透明基板130への照明の透過を容易にするために、平面入射面140又はその中に形成された別の平坦な表面によって中断されてもよいことが理解される。第1の側面176は、好ましくは第1及び第2の主表面172、174の表面積の合計よりも実質的に小さい表面積を有する。同様に、第2の側面186は、好ましくは第3及び第4の主表面182、184の表面積の合計よりも実質的に小さい表面積を有する。第1及び第2の側面176、186は、2つのレチクル板が利用され、且つ同じ大きさの主表面を有する場合には、共に透明基板130の組み合わされた側面190を形成してもよく、組み合わされた側面190の全表面積は、第1及び第4の主表面172及び184の合計よりも小さくてもよい。透明基板130の主表面172、174、182、及び184は、ライフルスコープ10又は他の光学観察装置の光路(図1では光線24によって示される)によって交差されることが好ましく、主表面172、174、182、及び184は、光路に対して実質的に垂直に配向され、図1に例示されるように、照光式レチクルシステム100が取付けられてもよい旋回エレクタレンズシステム18のピボットチューブと共に照光式レチクルシステム100の旋回運動による垂直偏差を可能にする。
【0030】
回折格子(例えば、反射格子、ルールド格子、又はブレーズド格子)、エッチング及びフィリングレチクル構造、ホログラフィック回折格子、又は他の構造を含んでもよいレチクル200は、第2の主表面174上又は第3の主表面182上に形成されてもよく、或いはその両方に形成されてもよく、或いは透明材料の単一のキャリア板内等の透明基板130内に埋め込まれてもよい。本明細書で使用される用語「レチクル」は、照明された時(及びいくつかの実施形態では照明されていない時も)、ライフルスコープ10又は他の光学観察装置のユーザによって見ることができる1つ又は複数のマークの表示を生成し、レチクル照明を反射させるか、回折させるか、そうでなければ再指向させるかして、観察者の眼にマークの画像を形成する要素を含んでもよい様々な構造又は光学素子の何れかを包含するものとして広く理解されたい。したがって、用語「レチクル」は、透明基板130の表面上で直接見ることができるフィーチャに限定されない。図5に示されているように、照光式レチクル200は、不透明レチクルの十字線又はスタジア線等の1つ又は複数の非照明レチクルマーク210と整列されてもよく、その結果、照光式レチクル200及び非照明レチクル210は、共に明るい昼光状態及び低光状態の両方で良好な可視性を得るための複合レチクルを形成する。図4及び図5のレチクル200のサイズ、及び図5のレチクル200を描く格子線は、説明のために大きく誇張されている。
【0031】
照明の収束ビーム160は、TIRを介して第1の主表面172で反射し、レチクル200における又は非常に近い焦点に収束する。入射角、照明の波長、回折格子の周期、及び設計の潜在的な他の態様は、回折格子に関連する周知の光学原理を利用して選択され、ライフルスコープ10又は別の光学装置(例えば、接眼レンズ50を通る)を介して見るための出力光240の束によって表される出力経路に沿って伝播する出力角度を有する格子から1次回折を生成し、それによって照光式レチクル又は照準マークとして現れる。1次回折を含む出力光240の束は、好ましくは第1の主表面172に対して実質的に垂直であり、ライフルスコープ10の射出瞳52(図1)を満たす発散角θを有する発散ビーム経路を有するか、そうでなければ、例えば、接眼レンズ50等のレチクルシステム100と視聴者の眼との間に位置する場合、ライフルスコープ10の絞りを満たすのに十分な大きさである。ユーザによって知覚されるレチクルフィーチャの輝度を最大化するために、照光式レチクル200によって生成される出力光240の束の発散は、レチクルシステム100と視聴者の目との間に位置する場合、光線24の発散又は絞りのサイズを大きく超えてはならない。出力光240の出力発散角θは、入力照明ビーム160の収束角度の関数である。例えば、出力発散角θは、入力照明ビーム160の収束角度αと同じであってもよい。出力光240の発散束は、それが設計された射出瞳52を満たすのに十分な大きさであるため、(例えば、射出瞳52内の眼の中心を合わせることによって)射出瞳52内の照光式フィーチャを視覚的に取得する必要性を排除し、ターゲットの取得をより迅速にする。
【0032】
入射面140は、ライフルスコープ10を介して見ることができる透明基板130の領域の外側に配置されるように、光路25からオフセットされることが好ましい。入射面140は、例えば米国特許出願公開第2017/0248798 A1号に教示されているように、様々な方法で形成されてもよく、透明基板130上の様々な場所に配置されてもよい。例えば、入射面140は、主表面に対して斜角で透明基板130内に直接形成された研磨された平坦な表面からなってもよい。入射面140は、第2のガラス板180の第2の側面186の頂部に沿って研削及び研磨された平坦な表面であってもよい。別の実施形態(図示せず)では、入射面140は、第1の主表面172に対して斜角で第1の側面176に形成され、レチクル200に直接向けられ、主表面172、174、182、184の何れにも反射しない照明ビーム経路に対して角度が付けられた平坦な表面であってもよい。代替的に、入射面は、透明基板130の側面176、186、又は190に形成された平坦部に光学的に接合された結合プリズム(図3の結合プリズム42等)に形成されてもよい。
【0033】
フレネルレンズ120は、好ましくは光源110において、且つレチクル200までの経路距離において、固定共役を有する集光レンズとして構成される。例示的なフレネルレンズ120は、図6に示されており、同心溝のセットを含む対向する第1及び第2のフレネルレンズ表面134、136を有する。対向する第1及び第2のフレネルレンズ表面134、136は、(溝及び隆起の形状を除いては)互いに略平行であってもよく、フレネルレンズ120の光軸150によって示される、一致する光軸を有してもよい。代替的に、第1及び第2のフレネルレンズ表面134、136は、例えば、照明のビーム160を整形するために、例えばくさびとして角度を付ける等、非平行であってもよく、その結果、レチクル200での所望の照明スポットのサイズ及び形状を達成し、第1の主表面172でのTIR反射及びレチクル200での照明の入射角のスポット成形効果を少なくとも部分的に相殺することを含んでもよい。
【0034】
フレネルレンズ120は、ガラス、プラスチック、他の透明な材料から形成されてもよく、種々の方法の何れかによって作成されてもよい。例えば、フレネルレンズ120は、ポリカーボネート、アクリル、又は他のポリマー、及びそれらの組合せ等の光学材料のブランク材をダイヤモンド旋削又は成形することによって形成されてもよい。他の製造方法も可能である。フレネルレンズ120は、形状が円形であってもよく、或いは、光源110又は照光式レチクルシステム100の他の要素に対してレンズホルダ(図示せず)内にフレネルレンズ120を正確に配向及び位置するのに役立ってもよい正方形又は台形等のノッチ、平坦部、又は多角形形状を含むように、形成、切断、研削、又は他の方法で成形されてもよい。
【0035】
フレネルレンズ120は、その光軸150が入射面140に対して垂直であり、光源の中心に位置するように配置されてもよい。しかしながら、図4に示すように、フレネルレンズ120は、その光軸150が入射面140に対して1~10度の傾斜角Aになるように位置決めされて、レチクル200における照明スポットのサイズ及び/又は形状の形状(本質的に光源110の投影像の形状)を調整して、照光式レチクルフィーチャの明度を最大化してもよい。レチクル200における照明スポットのサイズ及び形状を改善するために、フレネルレンズ120の光軸150は、第1の主表面172からのTIR及びレチクル200が形成される主表面174又は182の平面に対するレチクル200上への光の入射の結果として生じる角度によって与えられる伸長又は成形効果を補償及び/又は少なくとも部分的に相殺する僅かに楕円の形をした照明ビーム160を達成するために、光源110の放射軸に対して僅かにオフセットされてもよい。
【0036】
図4及び図6に示されているように、フレネルレンズ120は、光源110の方に面している第1のフレネルレンズ表面134と、入射面140の方に面している第2のフレネルレンズ表面136とを含んでもよい。フレネルレンズ120は、第1及び第2のフレネルレンズ表面134及び136上に異なる数の溝を有してもよい。いくつかの実施形態では、第1のフレネルレンズ表面134よりも多数の溝が第2のフレネルレンズ表面136に形成され、又はその逆も同様である。例えば、フレネルレンズ120は、第1のフレネルレンズ表面134上に13個の溝を有してもよく、第2のフレネルレンズ表面136内に39個の溝を有してもよい。一実施形態では、第2のフレネルレンズ表面136上の溝の数は、第1のフレネルレンズ表面134上の溝の数よりも多くてもよい。いくつかの代替的な実施形態では、拡散器(図示せず)が、光源110とフレネルレンズ120との間に配置されてもよく、レチクル200で結像される光のスポットを拡散し、均質化し、拡大し、これは、U字型レチクル等の比較的大きな照光式レチクルで有用であり得る。更に他の代替的な実施形態(図示せず)では、フレネルレンズ構造は、フレネルレンズ120の一方の表面のみに形成されてもよく、他方の表面は平坦な表面であってもよい。更に別の実施形態では、フレネルレンズ120は、入射面140に直接形成されてもよい。
【0037】
典型的なライフルスコープの実施態様では、フレネルレンズ120は、約1mm~約5mmの有効焦点距離、約3mm超えの直径、及び、約3mm未満又は約1.5mm未満、好ましくは0.5mm~1.0mmの厚さを有してもよい。フレネルレンズ120は、例えば、約f/1.0未満、より好ましくはf/0.3とf/0.8との間のf値を有する、比較的大きな直径の非常に短いパッケージ内の非常に「高速」なレンズとして設計されてもよい。フレネルレンズ120は、球面収差を相殺するために非球面を有するように設計されてもよい。フレネルレンズ120の高速設計は、光収集を改善し、レチクル200又はその近傍で光を集束させながら、光源110をフレネルレンズ120に非常に近接して(例えば、第1のフレネルレンズ表面136から約5mm未満、より好ましくは、第1のフレネルレンズ表面136から約1mm~約4mmの間)配置することを可能にする。
【0038】
当業者にとって、多くの変更が本発明の根本原理から逸脱することなく上述した実施形態の細部に行われてもよいことが自明であろう。従って、本発明の範囲は、以下の請求項によってのみ規定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6