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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】移動経路描画装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20240109BHJP
   G05B 19/4069 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G05B19/18 C
G05B19/4069
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021570048
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2021000079
(87)【国際公開番号】W WO2021141019
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020003026
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 朋和
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-136340(JP,A)
【文献】特開2017-126199(JP,A)
【文献】特開2005-108185(JP,A)
【文献】特開平10-264058(JP,A)
【文献】特開2003-103491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 17/00 - 19/46
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の複数の系統について、複数の制御用プログラムのそれぞれがいずれかの前記系統を制御する場合において、複数の前記系統の可動部分の移動経路を描画する移動経路描画装置であって、
複数の前記制御用プログラムの各ブロックの実行時間を記憶する実行時間記憶部と、
複数の前記制御用プログラムを解析して移動指令データを作成するプログラム解析部と、
前記移動指令データに基づいて、前記可動部分の移動経路を作成する移動経路作成部と、
前記実行時間記憶部に記憶された前記制御用プログラムの各ブロックの実行時間と、前記移動経路作成部が作成した前記可動部分の移動経路とに基づいて、所定の時刻における複数の前記系統の可動部分の位置関係を示す移動経路の描画実行制御を行う描画実行制御部と、
前記描画実行制御部による制御に従って、複数の前記系統の可動部分の描画処理を実行する描画部と、
を備えた移動経路描画装置。
【請求項2】
前記描画実行制御部は、前記制御用プログラムのブロックの実行が切り替わる際に描画を一時停止するステップ実行に係る描画実行制御を行う、
請求項1に記載の移動経路描画装置。
【請求項3】
前記描画実行制御部は、前記移動経路作成部が作成した移動経路に基づいて、前記ステップ実行に用いる分割経路を作成し、前記実行時間記憶部に記憶された前記制御用プログラムの各ブロックの実行時間と、作成した前記分割経路に基づいて、前記所定の時刻における複数の前記系統の可動部分の位置関係を示した移動経路の描画実行制御を行う、
請求項2に記載の移動経路描画装置。
【請求項4】
前記描画実行制御部は、前記可動部分の移動速度をオーバライドする描画実行制御を行う、
請求項1に記載の移動経路描画装置。
【請求項5】
前記描画部による描画処理中に、前記描画部により描画される複数の前記系統の可動部分間の距離が予め定めた所定の閾値以内になった場合に、干渉の可能性があると判定し、前記描画処理を一時停止するように前記描画部に指令する干渉判定部を更に備える、
請求項1に記載の移動経路描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動経路描画装置に関し、特に複数の駆動部の移動経路を描画する移動経路描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の産業機械を制御する制御装置は、一つのワークを加工するために複数の系統を同時に制御する場合がある(例えば、特許文献1等)。図5は旋盤において系統1の可動部分と系統2の可動部分にそれぞれ工具を取り付けて、1つのワークを同時に加工する例を示している。このような場合、制御用プログラムは複数の系統を制御するためにそれぞれ用意する。そして、制御装置は、その複数の制御用プログラムによる制御動作を連携させることにより、各系統の可動部分の動作を連携させる。
【0003】
複数の系統の制御用プログラムに誤りがないかをチェックする場合、例えばオフラインの制御シミュレータで各系統の制御用プログラムによる制御動作をシミュレートしてチェックすることができる。一方、制御装置には、制御用プログラムを実行しつつ、オペレータが回転させた手動ハンドルの回転量に応じて、制御用プログラムで指令された移動経路に沿って各系統の可動部分をゆっくり移動させる手動ハンドルリトレース機能や、制御対象の機械の軸の移動を抑制した状態で運転を行うマシンロック運転機能がある。そこで、制御装置のこれらの機能を用いて制御用プログラムの動作を確認することで、ワークを実際に加工すること無く、各系統の制御用プログラムによる制御動作をチェックすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-122461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制御シミュレータは、制御用プログラムのブロックを解釈して、制御対象の機械の可動部分である刃物台や主軸ヘッドの移動経路を作成する。そして、作成した可動部分の移動経路及び加工されたワークの形状を描画しつつ、前記可動部分をブロック終点位置に描画する。制御シミュレータは、制御用プログラムの全ブロックについて、このような一連の処理を繰り返す。
【0006】
制御シミュレータは、上記処理を行う際には、一般に実際の動作制御において掛かるであろうと予測される各ブロックの実行時間を考慮しない。例えば、図5で示した2つの系統の可動部分に取り付けられた工具でワークを加工するための制御用プログラムをシミュレートすることを考える。図6は、系統1を制御する制御用プログラムと系統2を制御する制御用プログラムを制御装置で実行した場合と制御シミュレーションをした場合の処理時間を示す図である。図6に例示されるように、系統1の制御用プログラムと、系統2の制御用プログラムとを、それぞれ制御装置で実行した場合、それぞれのブロックの処理時間は指令の種類や内容により異なる。しかしながら、制御シミュレータで制御シミュレーションをした場合、それぞれのブロックの処理時間は基本的に同じとなる。そのため、制御シミュレータは、複数の系統の可動部分の時刻毎の位置関係を正確に表現することができない。
【0007】
その結果として、制御シミュレータを用いた場合、各系統の可動部分が互いに干渉しないか、ということを正確にチェックすることができなくなる。図7に例示されるように、系統1の可動部分が系統2の可動部分が存在する位置へと移動すると、系統1の工具が系統2の可動部分と干渉する可能性がある。しかしながら、系統1が図7に示す移動経路通りに移動した時刻に、系統2の可動部分が図に示される位置にあるのかどうかを、制御シミュレータは判断することができない。そのため、実際に干渉するかどうかをチェックすることは難しい。同様に、制御シミュレータは、系統間で制御動作の順番が正しいか、ということを正確にチェックすることができない。
【0008】
ここで、事前の干渉チェックを行うときは、制御装置において手動ハンドルリトレース機能やマシンロック運転機能を用い、可動部分の移動経路を描画させることにより系統間の工具の位置関係をチェックすることができる。しかしながら、手動ハンドルリトレース機能は、可動部分の位置を確認しながら制御用プログラムの各ブロックを順次実行する必要があるため、干渉チェックに時間がかかるという課題がある。また、マシンロック運転機能についても、少なくとも制御用プログラムを実際に実行する分の時間が掛かるので、制御シミュレータで動作の確認をする場合と比較するとチェックに掛ける時間が長くなるという課題がある。また、前記のいずれの機能を用いたとしても、チェックをしている間は制御装置と制御対象となる機械を専有するため、その間は当該機械を使用することができず機械の稼働率が低下するという別の課題も生じる。
そのため、機械の可動部分の移動経路を描画するシミュレータにおいて、制御用プログラムによる制御動作に掛かる時間を考慮した描画が行える技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、機械の複数の系統について、複数の制御用プログラムのそれぞれがいずれかの前記系統を制御する場合において、複数の前記系統の可動部分の移動経路を描画する移動経路描画装置であって、複数の前記制御用プログラムの各ブロックの実行時間を記憶する実行時間記憶部と、複数の前記制御用プログラムを解析して移動指令データを作成するプログラム解析部と、前記移動指令データに基づいて、前記可動部分の移動経路を作成する移動経路作成部と、前記実行時間記憶部に記憶された前記制御用プログラムの各ブロックの実行時間と、前記移動経路作成部が作成した前記可動部分の移動経路とに基づいて、所定の時刻における複数の前記系統の可動部分の位置関係を示した移動経路の描画実行制御を行う描画実行制御部と、前記描画実行制御部による制御に従って、複数の前記系統の可動部分の描画処理を実行する描画部と、を備えた移動経路描画装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様により、機械の複数の系統の可動部分の動作及び系統間での可部分の位置関係を時系列で把握できるようになる。そのため、系統間で可動部分の干渉がないか、また、系統間で加工の順番が正しいかを、実際の加工の前にオフラインでチェックすることが可能となる。これらのチェックに制御装置と機械を用いる必要がなくなるため、当該機械で加工を行っている最中に次のプログラムのチェックや修正を行うことが可能となり、機械の稼働率の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による移動経路描画装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】第1実施形態による移動経路描画装置の概略的な機能ブロック図である。
図3】各系統の制御用プログラムのブロックの実行時間の例である。
図4】第1実施形態による移動経路描画装置の概略的な機能ブロック図である。
図5】2つの系統の可動部分にそれぞれ工具を取り付けてワークを加工する例を示す図である。
図6】制御用プログラムを実行した場合と、従来技術による制御シミュレーションをした場合とのそれぞれの処理時間を示す図である。
図7】2つの系統の可動部分が干渉する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の一実施形態による移動経路描画装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本発明の移動経路描画装置1は、例えば産業機械を制御する制御装置として実装することができる。また、本発明の移動経路描画装置1は、産業機械を制御する制御装置に併設されたパソコンや、有線/無線のネットワークを介して制御装置と接続されたパソコン、フォグコンピュータ、クラウドサーバの上に実装することができる。本実施形態では、移動経路描画装置1を、産業機械を制御する制御装置とネットワークを介して接続されたパソコン上に実装した例を示す。
【0013】
本実施形態による移動経路描画装置1が備えるCPU11は、移動経路描画装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス22を介してROM12に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従って移動経路描画装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、及び外部から入力された各種データ等が一時的に格納される。
【0014】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)等で構成され、移動経路描画装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15を介して外部機器72から読み込まれたデータや制御用プログラム、入力装置71を介して入力されたデータや制御用プログラム、機械を制御する制御装置3やフォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等の他のコンピュータから取得される各データ等が記憶される。不揮発性メモリ14に記憶されたデータや制御用プログラムは、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、公知の解析プログラムなどの各種システム・プログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0015】
インタフェース15は、移動経路描画装置1のCPU11とUSB装置等の外部機器72と接続するためのインタフェースである。外部機器72側からは、例えば産業機械の制御に用いられる制御用プログラムや各パラメータ等を読み込むことができる。また、移動経路描画装置1内で編集した制御用プログラムや各パラメータ等は、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させたり、インタフェース20とネットワーク5を介して制御装置3や他のコンピュータに対して送信したりすることができる。
【0016】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、制御用プログラムやシステム・プログラム等が実行された結果として得られたデータ等がインタフェース18を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイス等から構成される入力装置71は、インタフェース19を介して作業者による操作に基づく指令,データ等をCPU11に渡す。
【0017】
インタフェース20は、移動経路描画装置1のCPUと有線乃至無線のネットワーク5とを接続するためのインタフェースである。ネットワーク5には、産業機械を制御する制御装置3やフォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等が接続され、移動経路描画装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態による移動経路描画装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態による移動経路描画装置1が備える各機能は、図1に示した移動経路描画装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、移動経路描画装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0019】
本実施形態の移動経路描画装置1は、実行時間予測部100、プログラム解析部110、移動経路作成部120、描画実行制御部130、描画部140を備える。また、移動経路描画装置1のRAM13乃至不揮発性メモリ14には、入力装置71、外部機器72等から取得した各系統を制御するための複数の制御用プログラム200が予め記憶される。
更に、移動経路描画装置1のRAM13乃至不揮発性メモリ14には、制御用プログラム200のブロックの予測実行時間を記憶するための実行時間記憶部210、制御用プログラム200のブロックの指令による移動経路を記憶する移動経路記憶部220、シミュレーション結果画面を表示するための描画データが記憶された描画データ記憶部230、各系統の可動部分の形状データを記憶する形状データ記憶部240が予め用意されている。
【0020】
実行時間予測部100は、図1に示した移動経路描画装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。実行時間予測部100は、制御用プログラム200の各ブロックの実行時間を予測し、予測した結果を実行時間記憶部210に記憶する。実行時間予測部100は、例えば特許第4980458号公報、特許第6050634号公報等の公知の加工時間予測に係る技術を用いて、制御用プログラム200の各ブロックの指令に掛かる実行時間を予測する。実行時間予測部100が予測した各ブロックの実行時間は、制御用プログラムの各ブロックと関連付けて実行時間記憶部210に記憶される。
【0021】
プログラム解析部110は、図1に示した移動経路描画装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。プログラム解析部110は、それぞれの制御用プログラム200のブロックを読み出して解析し、それぞれの制御用プログラム200が制御する系統毎の可動部分の移動指令データを作成する。プログラム解析部110は、制御用プログラム200のブロックにより指令される送り指令、補正指令やパラメータに基づくオフセット値等に基づいて、可動部分を移動させる軸に対するブロック毎の移動指令データを作成する。プログラム解析部110が作成した移動指令データは、移動経路作成部120へと出力される。
【0022】
移動経路作成部120は、図1に示した移動経路描画装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。移動経路作成部120は、プログラム解析部110が作成した移動指令データに基づいて、各系統の可動部分について制御用プログラム200のブロック毎の移動経路に係るデータを作成する。移動経路に係るデータは、可動部分の所定位置(例えば、可動部分に含まれる工具の刃先等)の移動経路を示すデータである。移動経路に係るデータは、所定の座標系(例えば制御対象の産業機械の機械座標系等)におけるベクトルデータであっても良い。移動経路作成部120が作成した移動経路に係るデータは、移動経路記憶部220に記憶される。
【0023】
描画実行制御部130は、図1に示した移動経路描画装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、インタフェース19を用いた入力処理とが行われることで実現される。描画実行制御部130は、実行時間予測部100が予測した予測実行時間に基づいて、移動経路作成部120が作成した移動経路に沿って各系統の可動部分が同期して移動する様子をシミュレーション(描画)する制御を行う。
【0024】
描画実行制御部130は、例えば各系統の制御用プログラム200の各ブロックの予測実行時間分の時間を掛けて移動経路の描画を連続的に実行するように描画部140に指令するようにしても良い。この場合、描画実行制御部130は、各系統の可動部分の移動経路とその移動時間(予測実行時間)を描画部140へと指令して、それぞれの可動部分の移動経路を描画させる。この時、描画部140は、指令された移動経路を描画空間上のベクトルへと変換し、当該ベクトル上を可動部分が予測実行時間を掛けて移動するように移動経路を描画する。移動時間の経過は、例えば移動経路描画装置1が備える図示しないRTC(Real Time Clock)における時間経過に従って進められる。この時、入力装置71からのオペレータの指令に基づいて、時間の経過速度に所定の倍率を設定するオーバライドができるようにしても良い。例えば、オペレータが、時間の経過速度の倍率を10倍に設定した場合、描画部140は、制御用プログラム200を普通に実行した場合と比べて、10倍の速度で各系統の可動部分が移動する様子を表示装置70に描画する。
【0025】
描画実行制御部130は、例えば移動経路作成部120が作成した各系統の移動経路を分割した分割経路を作成し、作成した分割経路に基づくステップ実行を行うように描画部140に指令するようにしても良い。ステップ実行では、描画実行制御部130は、各系統のブロックの実行が切り替わる時点で描画を一時停止するように描画部140に指令し、入力装置71からのオペレータの入力に応じて描画を再開するように描画部140に指令する。図3は、実行時間予測部100が予測した各系統の制御用プログラム200のブロックの予測実行時間の例である。描画実行制御部130は、例えば制御用プログラム200の実行を開始した時刻を基準時刻t0と設定する。そして、描画実行制御部130は、実行時間記憶部210に記憶された予測実行時間に基づいて、各系統の制御用プログラム200の実行において各ブロックの実行が切り替わる時刻を分割時刻として算出する。例えば図3では、系統2の制御用プログラムO2000においてN202ブロックの実行が終了してN203ブロックの実行が開始される分割時刻t3は2.0秒、N203ブロックの時刻が終了してN204ブロックの実行が開始される分割時刻t4は2.5秒、系統1の制御用プログラムO1000の実行においてN102ブロックの実行が終了してN103ブロックの実行が開始される分割時刻t5は3.0秒、…と算出される。そして、描画実行制御部130は、移動経路記憶部220に記憶された移動経路に係るデータに基づいて、各移動経路を分割時刻で分割した分割経路に係るデータを作成する。例えば図3の例では、描画実行制御部130は、系統1の制御用プログラムO1000のN102ブロックから作成された移動経路を、分割時刻t3、分割時刻t4、分割時刻t5の時点で分割した3つの分割経路を作成する。描画実行制御部130は、移動経路を時間で按分して分割経路を作成するようにしても良いし、当該移動経路の加減速を考慮して按分した分割経路を作成するようにしても良い。単純に時間で按分する場合には、例えばN102ブロックの移動経路から、その距離を(t3-t2):(t4-t3):(t5-t4)に按分した分割経路が作成される。なお、実行期間中に分割時刻が無いブロックに係る移動経路(図3の例では、N100、N101、N103、N105、N200、N201、N202、N203の各ブロック)については、分割されずにそのまま分割経路として扱われる。そして、描画実行制御部130は、分割経路と該分割経路の実行に掛かる時間を描画部140へと指令して、それぞれの可動部分の移動経路をステップ実行で描画させる。描画実行制御部130は、分割経路を逐次作成しても良いし、予めすべての分割経路を作成するようにしても良い。
【0026】
描画実行制御部130は、例えば制御用プログラム200を実行してから所定の経過時間が経過した時刻(以下、描画時刻とする)における各系統の可動部分を描画するように描画部140に指令するようにしても良い。この場合、描画実行制御部130は、実行時間記憶部210に記憶された各ブロックの予測実行時間と、移動経路記憶部220に記憶された各ブロックの移動経路に係るデータとに基づいて、当該描画時刻における各系統の可動部分の位置を算出する。そして、算出した位置に各系統の可動部分を描画する処理を実行するように描画部140に指令する。描画実行制御部130は、分割経路を作成する場合と同様の手法で描画時刻において実行されている各ブロックを分割し、描画時刻における各系統の可動部分の位置を算出するようにして良い。
【0027】
描画部140は、図1に示した移動経路描画装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、インタフェース18による出力処理とが行われることで実現される。描画部140は、描画実行制御部130による指令に基づいて、描画データ記憶部230に記憶される描画データと、形状データ記憶部240に記憶される形状データとを用いて、表示装置70に移動経路の描画(シミュレーション)を行う。描画データ記憶部230には、予め移動経路の描画に必要となる座標系に係る情報や、視点の位置、描画の倍率、各描画要素の色等を含む描画データが記憶されている。また、形状データ記憶部240には、予め初期のワーク、各系統における可動部分等の形状データが記憶されている。描画部140は、描画実行制御部130からの指令に基づいて、各系統の可動部分を描画する静止画乃至動画の画像データを作成し、表示装置70へと表示する。
【0028】
上記構成を備えた本実施形態による移動経路描画装置1は、複数の系統の可動部分の動作及び系統間での可部分の位置関係を時系列で把握できるようになる。そのため、系統間で可動部分の干渉がないか、また、系統間で加工の順番が正しいかを、実際の加工の前にオフラインでチェックすることが可能となる。移動経路描画装置1は、これらのチェックに制御装置と機械を用いる必要がなくなるため、当該機械で加工を行っている最中に次のプログラムのチェックや修正を行うことが可能となり、機械の稼働率の向上が期待できる。
【0029】
図4は、本発明の第2実施形態による移動経路描画装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態による移動経路描画装置1が備える各機能は、図1に示した移動経路描画装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、移動経路描画装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0030】
本実施形態の移動経路描画装置1は、第1実施形態による移動経路描画装置1が備える機能に加えて、更に干渉判定部150を備える。
干渉判定部150は、図1に示した移動経路描画装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。干渉判定部150は、描画部140による各系統の可動部分の移動経路の描画時に、各系統の可動部分が干渉する可能性があるか否かを判定する。干渉判定部150は、例えば描画部140が描画する各系統の可動部分の間の距離が予め定めた所定の閾値以内になった時に、その可動部分が干渉する可能性があると判定しても良い。干渉判定部150は、例えば描画部140が描画する各系統の可動部分の間の距離が予め定めた所定の閾値以内になり、且つ、その後、該可動部分の間の距離が縮まる方向に変化する場合に、その可動部分が干渉する可能性があると判定しても良い。干渉判定部150は、各系統の可動部分が干渉する可能性があると判定した時、描画処理(シミュレーション処理)を一時停止して干渉の可能性がある旨を表示装置70に表示するように、描画部140に対して指令するようにしても良い。
【0031】
上記構成を備えた本実施形態による移動経路描画装置1は、複数の系統の可動部分の動作及び系統間での可部分の位置関係を時系列で把握できるシミュレーション処理時に、可動部分間での干渉が発生する可能性がある場合にシミュレーション処理を一時停止してオペレータに知らせることができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
例えば、上記した実施形態では移動経路描画装置1は実行時間予測部100を含む構成となっているが、実行時間予測部100自体は移動経路描画装置1に必須の構成ではない。例えば、外部のパソコン等で制御用プログラム200の各ブロックの実行時間を予測した上で、予測された各ブロックの実行時間のデータをネットワーク5や外部機器72を介して取得できるのであれば、移動経路描画装置1の機能を活用することができる。また、各ブロックの実行時間は予測されたものである必要はない。例えば、各系統に係る制御用プログラム200を個別に実行して各ブロックの実行時間を計測し、計測した実行時間のデータをネットワーク5や外部機器72を介して取得して活用しても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 移動経路描画装置
3 制御装置
5 ネットワーク
6 フォグコンピュータ
7 クラウドサーバ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15,18,19,20 インタフェース
22 バス
70 表示装置
71 入力装置
72 外部機器
100 実行時間予測部
110 プログラム解析部
120 移動経路作成部
130 描画実行制御部
140 描画部
200 制御用プログラム
210 実行時間記憶部
220 移動経路記憶部
230 描画データ記憶部
240 形状データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7