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特許7414853熱伝導-電気絶縁性塗料組成物及びこれを含む太陽電池用外装材鋼板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】熱伝導-電気絶縁性塗料組成物及びこれを含む太陽電池用外装材鋼板
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240109BHJP
   H01L 31/049 20140101ALI20240109BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240109BHJP
   C09D 177/00 20060101ALI20240109BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20240109BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240109BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240109BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240109BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240109BHJP
【FI】
C09D201/00
H01L31/04 562
C09D175/04
C09D177/00
C09D133/04
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/63
C09D7/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021574819
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2020006951
(87)【国際公開番号】W WO2020256307
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0073545
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ヤン-ジュン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107043591(CN,A)
【文献】特開2008-091440(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1969151(KR,B1)
【文献】国際公開第2011/132748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に放熱層が形成された鋼板;及び
前記鋼板の他面に熱可塑性樹脂、熱伝導性フィラー及び高分子分散剤を含む熱伝導-電気絶縁性コーティング層を含み、
前記熱伝導性フィラーは高分子分散剤で囲まれた形態でコーティング層に分散され、
前記高分子分散剤は、Solsperse 5000S(登録商標)、Solsperse 12000(登録商標)及びSolsperse 22000(登録商標)からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記放熱層は、鋼板の厚さ方向に外部に向かって突出したしわを有し、前記突出したしわ内に異方性フィラーを含み、前記異方性フィラーは、鋼板の厚さ方向に外部に向かって配向されている、太陽電池用外装材鋼板。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、Vicat軟化点試験(ASTM D1525)で測定した軟化点が100~150℃である、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリウレタン、ポリアミド及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラーは、カーボンブラック、窒化ホウ素及びグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂及び前記熱伝導性フィラーの重量比は99:1~95:5である、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【請求項6】
前記高分子分散剤は、前記熱伝導性フィラー100重量部当たり1~3重量部である、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【請求項7】
前記熱伝導-電気絶縁性コーティング層は厚さが5~10μmである、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【請求項8】
前記放熱層は、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するオリゴマー及びアミノ硬化剤を含む第2混合物、酸触媒及び前記異方性フィラーを含むものである、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【請求項9】
前記異方性フィラーは、前記しわの突出方向に追従して配向されているものである、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【請求項10】
前記放熱層は厚さが10~30μmである、請求項1に記載の太陽電池用外装材鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導-電気絶縁性塗料組成物及びこれを含む太陽電池用外装材鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、特にステンレス基板を含むCIGS(Copper indium gallium selenid)薄膜型太陽電池は柔軟で軽く、建物の外装材(例えば、屋根材又は外壁体)と結合させてBIPV(Building integrated photovoltaic)用として利用が拡大している。
【0003】
このとき、建物の外装材と一体化した太陽電池は、太陽光を受けて電気を生産するだけでなく、光エネルギーの一部は熱に変換されて太陽電池の温度が上昇するようになる。温度が上昇すると、太陽電池の効率が低下するため、発生した熱は外部に効果的に放出されなければならない。
【0004】
しかし、ステンレス基板を含むCIGS太陽電池は、ステンレス基板の下部にプラスチック材料のバックシート(Back sheet)により発生した熱が効果的に放出されにくく、夏季には太陽電池表面の温度が最高70~80℃まで上昇し、太陽電池の発電効率が急速に低下することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国登録特許第10-1782441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のように太陽電池の発電効率が急速に低下することを解決するためのものであって、熱伝導度及び電気絶縁性に優れた熱伝導-電気絶縁性塗料組成物及び耐食性に優れたMg含有亜鉛めっき鋼板の一面に上記塗料組成物で形成されたコーティング層と、他面には放熱層が形成された鋼板を提供して、太陽電池で発生する熱を効果的に放出できる太陽電池用外装材鋼板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面において、本発明は、熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを含む第1混合物;高分子分散剤;及び第1炭化水素系溶剤を含む熱伝導-電気絶縁性塗料組成物を提供するものである。
本発明の他の側面において、本発明は、一面に放熱層が形成された鋼板;及び上記鋼板の他面に熱可塑性樹脂、熱伝導性フィラー及び高分子分散剤を含む熱伝導-電気絶縁性コーティング層が形成され、上記熱伝導性フィラーは、高分子分散剤で囲まれた形態でコーティング層に分散された太陽電池用外装材鋼板を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるコーティング組成物で製造された熱伝導-電気絶縁性塗料組成物を放熱性のある鋼板に処理して太陽電池と一体化する場合、太陽電池の熱を効果的に伝導し放出して太陽電池の温度上昇を抑制し、電気絶縁効果を提供することにより、太陽電池の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例により製造された太陽電池用外装材鋼板が接着された太陽電池の断面図を示す。
図2】亜鉛めっき鋼板上に本発明の放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層の表面を3次元粗度計で観察した写真であり、(a)は比較例1、(b)は実施例2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な異なる形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明は、太陽電池で発生した電気の流れを遮断し、熱のみを放出することができる太陽電池用外装材を提供するための熱伝導-電気絶縁性塗料組成物を提供する。
【0012】
詳細に、本発明は、熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを含む第1混合物、高分子分散剤及び第1炭化水素系溶剤を含む熱伝導-電気絶縁性塗料組成物を提供する。
【0013】
このとき、上記第1混合物は、第1混合物の重量を基準にして、熱可塑性樹脂95~99重量%及び熱伝導性フィラー1~5重量%を含むことができる。上記熱可塑性樹脂の含量が95重量%未満の場合には、熱伝導-電気絶縁性塗料組成物で形成されたコーティング層の接着力が減少するという問題が生じる可能性があり、99重量%を超える場合には、熱伝導度が著しく減少する可能性がある。また、上記熱伝導性フィラーの含量が1重量%未満の場合には、熱伝導度が著しく減少する可能性があり、5重量%を超える場合には、熱伝導-電気絶縁性塗料組成物で形成されたコーティング層の接着力が減少するという問題がある。
【0014】
上記熱可塑性樹脂は、熱伝導-電気絶縁性塗料組成物で形成されたコーティング層に接着力を提供するためのものであって、軟化点が100~150℃のものを使用する。このとき、上記軟化点の測定は、Vicat軟化点試験(ASTM D1525)で測定されたものである。熱可塑性樹脂の軟化点が100℃より低い場合、夏季に太陽電池の温度が80℃以上に上昇すると、太陽電池層と接着層との剥離が発生する可能性があり、150℃より高い場合には、太陽電池用外装材鋼板を加熱して太陽電池に取り付ける際に必要なエネルギーが過度に消耗される可能性があり、高い熱により上記太陽電池用外装材に形成されている放熱性コーティング層が加熱され、上記放熱性コーティング層の劣化及びしわの変化により放熱性が低下する可能性がある。
【0015】
さらに、上記熱可塑性樹脂は、ポリウレタン、ポリアミド及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1つであってよいが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、単独又は2種以上併用してよい。
【0016】
また、上記熱伝導性フィラーは、カーボンブラック、窒化ホウ素(boron nitride)及びグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つであってよいが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、単独又は2種以上併用してよい。
【0017】
一方、上記高分子分散剤(polymeric dispersant)は、熱伝導性フィラーの表面に付着してフィラー同士が直接接触することを妨げることにより、電気が通らないようにするものであり、熱伝導性フィラー100重量部当たり1~3重量部で含まれてよく、高分子分散剤の含量が1重量部未満の場合には、熱伝導性フィラー同士が集まって電気絶縁効果が減少するという問題が生じる可能性があり、3重量部を超える場合には、過剰な高分子分散剤が熱可塑性樹脂と分離されて異なる相を形成させるようになり、熱可塑性樹脂の鋼板接着力が低下するという問題が生じる可能性がある。
【0018】
このとき、上記高分子分散剤(polymeric dispersant)はAntiterra-U、P104、Disperbyk 110、Disperbyk 130、Disperbyk 160、Disperbyk 170 Family、EFKA 776、EFKA 4050、EFKA 4063、EFKA 4051、Solsperse 24000、Solsperse 36600、Solsperse 32600、 Solsperse 22000、Solsperse 12000、及びSolsperse 5000sからなる群から選択される少なくとも1つであってよいが、これらに限定されず、例えば、Lubrizol社のSolsperse 5000S、Solsperse 12000またはSolsperse22000を使用することができる。上記Solsperse 5000S、Solsperse 12000またはSolsperse22000分散剤は、熱伝導性フィラーに吸着して溶剤内に上記フィラーを分散させる効果以外にも分子構造をバルキー(bulky)にして、上記フィラーがコーティング層内で互いに接触しないようにすることで、電気絶縁性を向上させる効果を著しく高めることができる。
【0019】
上記分散剤のうち、Solsperse 5000Sは、C70H95CuN9O3Sの分子式を有しており、重量平均分子量は約1200(1206.1728)の高分子物質であり、下記化学式1のような構造を有している。Solsperse 12000及びSolsperse 22000はSolsperse 5000Sの類似化合物であって、分子量がSolsperse 5000Sに比べて高い。
【0020】
【化1】
【0021】
上記第1炭化水素系溶剤は、シクロヘキサン、トルエン及びキシレンからなる群から選択される少なくとも1つであってよいが、これに限定されず、好ましくは、シクロヘキサンを使用することができる。さらに、上記第1炭化水素系溶剤は、熱可塑性樹脂100重量部当たり50~70重量部で含まれてよく、上記熱可塑性樹脂の含量が50重量部未満の場合、粘度が高く鋼板の表面にコーティングされにくいという問題が生じる可能性があり、70重量部を超える場合、相対的に熱可塑性樹脂、熱伝導性フィラー及び高分子分散剤の含量が小さくなり、上記塗料組成物で形成されたコーティング層の接着力、熱伝導度及び電気絶縁性が著しく減少するという問題が発生する可能性がある。
【0022】
一方、本発明は、上記熱伝導-電気絶縁性塗料組成物で形成されたコーティング層を含む太陽電池用外装材鋼板を提供する。
【0023】
詳細に、本発明は、一面に放熱層が形成された鋼板;及び上記鋼板の他面に熱可塑性樹脂、熱伝導性フィラー及び高分子分散剤を含む熱伝導-電気絶縁性コーティング層が形成され、上記熱伝導性フィラーは高分子分散剤で囲まれた形態でコーティング層に分散された、太陽電池用外装材鋼板を提供する。
【0024】
このとき、上記コーティング層は、本発明の熱伝導-電気絶縁性塗料組成物で形成されてよい。
【0025】
さらに、上記コーティング層において、上記熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーの重量比は99:1~95:5であってよく、上記高分子分散剤は熱伝導性フィラー100重量部当たり1~3重量部で含まれてよい。
【0026】
上記鋼板は、Mgを含有するめっき層を含む亜鉛めっき鋼板であってよく、このとき、上記Mgの含量はめっき層に対して0.5~5重量%であってよく、上記鋼板の耐食性を向上させるために、上記Mgの含量はめっき層の総重量を基準にして、0.5~5重量%、好ましくは1.5~3重量%含まれてよい。上記Mgの含量が0.5重量%未満の場合、鋼板の耐食性改善効果が僅かであり、5重量%を超える場合、めっき浴(plating bath)表面の酸化によりめっき浴の製造が不可能となる可能性がある。
【0027】
このとき、めっき層の残部は、当業界で知られている任意の組成であってよく、例えば、上記残部はZnまたはAlであってよいが、これに限定されない。
【0028】
上記Mgをめっき層に含有する亜鉛めっき鋼板は、具体的に、めっき層がMg/Al/Znから構成される三元系亜鉛めっき鋼板であってよい。より具体的に、上記めっき層は、Mgが0.5重量%~5重量%、好ましくは1.5重量%~3重量%、Alは1.5重量%~11重量%、及び残部Znであってよい。
【0029】
さらに、上記放熱層は、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するオリゴマー及びアミノ硬化剤を含む第2混合物、酸触媒及び異方性フィラーを含むコーティング層であってよい。
【0030】
このとき、上記コーティング層は、ヒドロキシ基またはカルボキシル基を有するオリゴマー及びアミノ硬化剤を含む第2混合物、酸触媒、異方性フィラー及び第2炭化水素系溶剤を含む放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層であってよい。
【0031】
上記ヒドロキシ基またはカルボキシル基を有するオリゴマーは、硬化剤と反応してコーティング層を形成し、その過程で異方性フィラーを垂直方向に配向させる役割をし、例えば、上記オリゴマーのうちヒドロキシ基を含むオリゴマーは、BASF社のJONCRYL(登録商標)500、507、508、550または963のうちいずれか1つを使用することができ、上記オリゴマーのうちカルボキシル基を含むオリゴマーは、BASF社のJONCRYL(登録商標)586、611、または67のうちいずれか1つを使用することができるが、これらに限定されず、必要に応じて、上記オリゴマーを単独又は2種以上併用してよい。
【0032】
このとき、上記オリゴマーは、重量平均分子量が1,000~3,000g/molであってよく、第2混合物を基準にして65~75重量%含まれてよい。
【0033】
上記オリゴマーの重量平均分子量が1,000g/mol未満の場合、放熱層の柔軟性及び鋼板との密着性が低下する可能性があり、3,000g/molを超える場合、粘度が高く鋼板にロールコーティングを行うことが難しく、生産の連続性が低下するという問題が生じる可能性がある。また、上記オリゴマーの含量が65重量%未満の場合、必要以上に硬化して放熱層の柔軟性が低下する可能性があり、上記オリゴマーの含量が75重量%を超えると、放熱層の硬化度が低下して耐溶剤性、耐食性等が低下し、十分な密着性の確保が難しいという問題が生じる可能性がある。
【0034】
上記アミノ硬化剤は、鋼板に放熱性塗料組成物をコーティングするときに、オリゴマーと反応してオリゴマーを硬化させる役割を果たすものであって、当業界で使用されるアミノ硬化剤を使用することができ、例えば、Ineos社のResimene1 745、747、またはAllnex社のCymel 301、303LF、またはBASF社のLuwipal 066を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
上記硬化剤は、第2混合物の総重量を基準にして、25~35重量%含まれてよい。上記硬化剤の含量が25重量%未満の場合、放熱層の硬化度が低下して耐溶剤性、耐食性等が低下し、十分な密着性の確保が難しいという問題が生じる可能性があり、35重量%を超える場合には、必要以上に硬化して放熱層の柔軟性が低下するという問題が生じる可能性がある。
【0036】
一方、上記酸触媒は、コーティング層の硬化速度を速める役割を果たすものであって、上記酸触媒はパラトルエンスルホン酸(paratoluenesulfonic acid, King Industries社のNacure 2500又は2547)を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
このとき、上記酸触媒は、第2混合物100重量部当たり0.5~1.5重量部含まれてよく、このとき、上記酸触媒の含量が0.5重量部未満の場合、放熱層の硬化速度が低く、ロールコーティングを行っても放熱層が硬化せず、大量生産ができないという問題が生じる可能性があり、1.5重量%を超える場合には、放熱性塗料組成物の貯蔵安定性が低下して、長期間の保管時に上記組成物がゲル化(gelation)し得るという問題が生じる可能性がある。
【0038】
さらに、上記異方性フィラーは、放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層にしわを形成させる役割であって、グラファイト、六方晶系窒化ホウ素(hexagonal boron nitride)を使用することができるが、これに限定されるものではなく、上記異方性フィラーの長さ方向のサイズは、上記放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層のしわの高さを考慮して、アスペクト比が3以上のフィラーを使用することができる。
【0039】
このとき、上記異方性フィラーは、第2混合物100重量部当たり1~4重量部含むことができる。異方性フィラーの含量が1重量部未満である場合、十分な放熱性能を発揮できないという問題が生じる可能性があり、4重量部を超える場合、必要以上のフィラーにより塗膜の密着性、耐食性などが低下するという問題が生じる可能性がある。
【0040】
また、上記第2炭化水素系溶剤は、シクロヘキサン、トルエン及びキシレンからなる群から選択される少なくとも1つであってよいが、これに限定されず、好ましくは、シクロヘキサンを使用することができ、さらに、必要に応じて鋼板コーティング組成物に一般的に配合可能な付着増進剤、防錆剤、潤滑剤、消泡剤などの添加剤を含むことができる。このとき、上記第2炭化水素系溶剤は、第2混合物100重量部当たり20~30重量部で含むことができる。
【0041】
一方、上記太陽電池用外装材鋼板は、前述した鋼板に上記熱伝導-電気絶縁性塗料組成物及び放熱性塗料組成物をコーティングすることで提供することができ、上記熱伝導-電気絶縁性塗料組成物で形成されるコーティング層の厚さは5~10μmであってよく、放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層(放熱層)の厚さは10~30μmであってよい。このとき、上記放熱層は、鋼板の厚さ方向に外部に向かって突出したしわを有し、上記突出したしわ内に異方性フィラーを含み、上記異方性フィラーは鋼板の厚さ方向に外部に向かって配向されていてよい。
【0042】
例えば、放熱性塗料組成物に含まれる異方性フィラーは、上記放熱性塗料組成物が鋼板にコーティングされた後、硬化する過程で、しわの形成によって鋼板の垂直方向に配向され、放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層にしわを形成させることができる。
【0043】
したがって、上記放熱層の異方性フィラーは、上記しわの突出方向に追従して配向されたものであってよく、例えば、上記異方性フィラーは、鋼板の表面に対して厚さ方向に30度~90度の角度、好ましくは50~90度の角度、さらに好ましくは60~90度の角度で配向されて、上記異方性フィラーはコーティング層の表面で起立した状態で存在することができる。
【0044】
このとき、熱伝導-電気絶縁性塗料組成物で形成されたコーティング層の厚さが5μm未満の場合、十分な接着力を発揮しにくく、太陽電池と鋼板を固定しにくい可能性があり、10μmを超える場合には、熱抵抗性が増加して、太陽電池から発生した熱を鋼板に伝導しにくくなるという問題が発生する可能性がある。さらに、放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層の厚さが10μm未満の場合、十分なしわが形成できず、放熱性能が低くなる可能性があり、屋外に長時間露出する場合、コーティング層の劣化により塗膜の脱落、腐食が発生しやすくなり、30μmを超える場合、コーティング層の乾燥が難しく、熱抵抗性が増加して放熱性能が低下する可能性がある。
【0045】
一方、本発明は、上記太陽電池用外装材鋼板が取り付けられた太陽電池を提供することができる。
上記太陽電池は、ステンレス基板で製造されたCIGS薄膜太陽電池、熱伝導-電気絶縁性コーティング層、鋼板及び放熱性コーティング層で形成されてよく、上記太陽電池に熱伝導-電気絶縁性コーティング層が接着される形態で太陽電池が製造されてよいが、上記太陽電池はこれに限定されない。
【0046】
図1は、本発明の熱伝導-電気絶縁性コーティング層及び放熱性コーティング層を含む太陽電池の断面図を示し、このうち、保護フィルム1は100μm以下の厚さ、CIGSが含まれる太陽電池層2は100~300μmの厚さ、ステンレス基板は50~100μmの厚さ、熱伝導-電気絶縁性コーティング層は5~10μmの厚さ、めっき鋼板5は0.5~1mmの厚さ、そして放熱コーティング層は10~30μmの厚さであってよい。
【実施例
【0047】
以下では、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
(1)熱伝導-電気絶縁性塗料組成物の製造
シクロヘキサン66gに高分子分散剤としてSolsperse 5000S 0.02gを投入して攪拌した後、平均粒子サイズが3~5μmのカーボンブラック1gを添加して攪拌し、カーボンブラックの表面が高分子分散剤で囲まれた状態を製造する。その後、ここにポリアミド樹脂99gを添加した後、均一に攪拌し、接着性のある熱伝導-電気絶縁性塗料組成物を得た。
【0049】
(2)放熱性塗料組成物の製造
ヒドロキシ基を含むオリゴマー(JONCRYL(登録商標)611、BASF社)80gとアミノ硬化剤(Luwipal 066、BASF社)20g及びシクロヘキサン25gが混合された混合物に平均粒子が8~10μmであり、アスペクト比が4.5であるグラファイトフィルター1gを添加した後、均一に攪拌する。その後、酸触媒(Nacure 2547、King Industries社)1gを添加した後、攪拌して放熱性塗料組成物を得た。
【0050】
(3)太陽電池用外装材鋼板の製造
Mgを含む亜鉛めっき鋼板の一面に上記のように製造された熱伝導-電気絶縁性塗料組成物をロールコーターでコーティングし、他面には放熱性塗料組成物をコーティングした後、鋼板の温度が200~250℃になるように加熱して太陽電池用外装材鋼板を製造した。
このとき、上記熱伝導-電気絶縁性塗料組成物で形成されたコーティング層の厚さは7~8μm、放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層の厚さは25~28μmになるようにコーティングした。
【0051】
(4)熱伝導性及び放熱性に優れた太陽電池の製造
(3)で製造された太陽電池用外装材鋼板のうち、熱伝導-電気絶縁性塗料組成物がコーティングされた面がCIGS薄膜太陽電池のステンレス基板側を相対するように密着させ、放熱性塗料組成物でコーティングされた面が大気に曝されるように上記太陽電池用外装材鋼板をCIGS薄膜太陽電池に取り付けた。
その後、上記太陽電池用外装材鋼板が太陽電池に接着されるように誘導加熱(induction heating)してコーティング鋼板の温度を100~150℃で加熱すると同時に一定の圧力を加えた。
【0052】
実施例2
上記実施例1において、熱伝導-電気絶縁性塗料組成物の製造時に熱可塑性樹脂としてポリウレタン、熱伝導性フィラーとして窒化ホウ素を使用し、放熱性コーティング組成物の製造時にヒドロキシオリゴマーの代わりにカルボキシオリゴマーを使用した点を除いては、実施例1と同様に太陽電池を製造した。
【0053】
比較例1及び2
上記実施例1において、下記表1に記載のように、熱可塑性樹脂、熱伝導性フィラー及び高分子分散剤を変更した熱伝導-電気絶縁性塗料組成物及びオリゴマー、アミノ硬化剤及び異方性フィラーを変更した放熱性塗料組成物を使用し、上記熱伝導-電気絶縁性塗料組成物及び放熱性塗料組成物がコーティングされる鋼板としてAl-Mg-Znが含まれた三元系めっき鋼板を使用することを除いては、実施例1と同様に太陽電池を製造した。
【0054】
【表1】
【0055】
[物性評価]
1)熱伝導度の測定
実施例1及び2、比較例1及び2で製造された太陽電池の熱伝導度をレーザーフラッシュ(laser flash)法(NETZSCH社のLFA457)で測定した。
【0056】
2)放熱性の測定
実施例1及び2、比較例1及び2で製造された太陽電池の放熱性を評価するために上記太陽電池を温度25℃の恒温器に装入し、1,000Wの赤外線電球を使用して太陽電池に熱エネルギーを加えて、放熱性塗料組成物がコーティングされた一面の温度をリアルタイムで測定した。
温度変化のない平衡に達する温度を採用し、その温度が低いほど上記太陽電池の放熱性に優れていると判断した。
【0057】
3)表面粗度及び表面積の測定
製造された太陽電池において、放熱性塗料組成物で形成されたコーティング層の表面粗度及び表面積を三次元粗度計(Vecco社、モデル名:Wyko NT 9380)を使用して測定した。
上記1)、2)、3)の結果を下記表2にまとめた。
【0058】
【表2】
【0059】
太陽電池の効率はsolar simulatorで測定し、関連する詳細はKS C IEC 60904:2005に基づいて行われた。上記表2に示されたように、実施例1及び2で製造された太陽電池は、太陽電池用外装材鋼板が接着された部分で熱伝導度が高く、放熱コーティング層の表面積が広くて放熱効果に優れ、太陽電池の温度上昇が著しく低くなり、電気絶縁効果があり、太陽電池の効率に優れることが確認できた。これに対し、比較例1及び2の場合、電気絶縁効果が示されず、太陽電池で発生した電気が全て放電され、太陽電池の効率が急減することが確認できた。
【0060】
さらに、放熱層のみの効果を測定するために、熱伝導-電気絶縁性塗料組成物の熱可塑性樹脂としてウレタン樹脂を使用し、放熱性塗料組成物のオリゴマーをエポキシ樹脂として、硬化剤をイソシアネート硬化剤として使用し、異方性フィラーとしてカーボンブラックを使用したことを除いては、実施例1と同様に熱伝導-電気絶縁性塗料組成物及び放熱性塗料組成物を使用し、実施例1と同様に太陽電池を製造した。
【0061】
この場合、上記[物性評価]と同様に熱伝導度、放熱性及び表面積を測定し、本発明の熱伝導-電気絶縁性塗料組成物により形成されたコーティング層の熱伝導度は25℃で22.9W/m・Kが測定され、電気絶縁性のあることが測定されたが、放熱性塗料組成物により形成されたコーティング層の熱伝導度は25℃で16.6W/m・Kと著しく低くなり、ヒドロキシまたはカルボキシ基を含むオリゴマーを使用しなかったため、表面積は18.5mmと著しく減少し、上記放熱層の温度が48.2と著しく高くなって、太陽電池の効率が14.2%と減少し、上記効率が1%も減少していることが確認できた。
【0062】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは当該技術分野における通常の知識を有する者には自明なものである。
【符号の説明】
【0063】
1:太陽電池保護フィルム
2:CIGS太陽電池が含まれた太陽電池層
3:ステンレス基板
4:熱伝導-電気絶縁性コーティング層
5:めっき鋼板
6:放熱層
図1
図2(a)】
図2(b)】