(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】支援装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4069 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
G05B19/4069
(21)【出願番号】P 2021575776
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2021003483
(87)【国際公開番号】W WO2021157510
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020018620
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】三好 高史
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-314104(JP,A)
【文献】特表2009-510574(JP,A)
【文献】特開2012-236267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18- 19/416,
19/42- 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械に関する複数の形態のシミュレーションの実施を支援する支援装置であって、
シミュレーションを実行するためのシミュレーション条件の変更を検知する検出部と、
前記シミュレーション条件の変更
及び前記産業機械による加工のシミュレーション
に関する加工関係情報を記憶する加工関係情報記憶部と、
前記シミュレーション条件の変更及び前記加工関係情報に基づいて、シミュレーションの複数の形態のうち、前記シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に基づいて、前記シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を選択する選択部と、
を備える支援装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記産業機械の加工プログラムの実行時及び/又は保存時に前記シミュレーション条件の変更を検知する、請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記シミュレーション条件の変更は、前記産業機械のパラメータ設定値の変更又は前記産業機械の加工プログラムの変更を含む、請求項1又は2に記載の支援装置。
【請求項4】
前記シミュレーションの複数の形態は、切削加工シミュレーション、衝突防止シミュレーション、加工時間予測シミュレーションのうち、少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項5】
前記産業機械による加工のシミュレーション結果への影響は、ワークの加工時間、前記ワークの加工面の品質及び前記産業機械の可動部の位置関係のうち、少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項6】
前記加工関係情報記憶部は、前記加工関係情報として、前記シミュレーション条件の変更内容と、前記シミュレーションの形態とを関連付けて記憶する、請求項1から5のいずれか一項に記載の支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、CNC(computerized numerical control)工作機械等のような産業機械について、加工を実施するための様々な形態のシミュレーションが存在する。産業機械を使用するオペレータは、必要に応じてシミュレーションを実施する。このような産業機械において加工を実施するためのシミュレーションが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、産業機械の加工条件や設定変更等により、オペレータは、適切なシミュレーションを選択できない場合がある。この場合、オペレータの作業負担が増大し、作業時間が長くなってしまうという問題があった。そのため、シミュレーションを実施する際の作業負担を低減することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る支援装置は、産業機械に関する複数の形態のシミュレーションの実施を支援する支援装置であって、シミュレーションを実行するためのシミュレーション条件の変更を検知する検出部と、前記シミュレーション条件の変更に対して前記産業機械による加工のシミュレーション結果への影響を示す加工関係情報を記憶する加工関係情報記憶部と、前記シミュレーション条件の変更及び前記加工関係情報に基づいて、シミュレーションの複数の形態のうち、前記シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を判定する判定部と、前記判定部による判定結果に基づいて、前記シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を選択する選択部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シミュレーションを実施する際の作業負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る支援装置の概要を示す図である。
【
図2】支援装置により判定されるシミュレーションの例を示す図である。
【
図3】支援装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る支援装置1の概要を示す図である。支援装置1は、CNC工作機械等の産業機械に関する複数の形態のシミュレーションの実行を支援する。支援装置1は、産業機械に組み込まれてもよく、産業機械とは独立したコンピュータ装置であってもよい。
【0009】
CNC工作機械等の産業機械は、加工及び動作に関する様々なシミュレーション機能(検証機能)を有している。産業機械は、必要に応じてこれらのシミュレーション機能を実行する。
図1に示すように、支援装置1は、制御部11と、記憶部12と、を備える。
【0010】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部23に記憶されたプログラムを実行することによって検出部111、判定部112、選択部113及び提示部114として機能する。
【0011】
記憶部12は、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の各種情報を格納するハードディスクドライブやSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
また、記憶部12は、加工関係情報記憶部121を備える。加工関係情報記憶部121は、シミュレーション条件の変更に対して産業機械による加工のシミュレーション結果への影響を示す加工関係情報を記憶する。
【0012】
なお、支援装置1が産業機械とは独立したコンピュータ装置の場合、支援装置1は、ネットワークを介して産業機械と有線又は無線通信するための通信部(図示せず)を備える。通信部は、通信を実行するためのプロセッサ、コネクタ、電気回路等を含む。通信部は、産業機械から受信した通信信号に所定の処理を行ってデータを取得し、取得したデータを制御部11に入力する。また、通信部は、制御部11から入力されたデータに所定の処理を行って通信信号を生成し、生成した通信信号を産業機械に送信する。
【0013】
検出部111は、シミュレーションを実行するためのシミュレーション条件の変更を検知する。
具体的には、検出部111は、産業機械の加工プログラムの実行時及び/又は保存時にシミュレーション条件の変更を検知する。
例えば、産業機械がCNCであり、支援装置1が当該CNCに内蔵されている又はCNCと通信接続されている場合、検出部111は、CNCの加工プログラムの実行時及び/又は保存時にシミュレーション条件の変更を検知する。
【0014】
ここで、シミュレーション条件の変更は、産業機械のパラメータ設定値の変更又は産業機械の加工プログラムの変更を含む。
具体的には、産業機械のパラメータ設定値の変更又は産業機械の加工プログラムの変更は、例えば、CNCの切削パラメータ値の変更、早送り時のプログラムの変更、切削送り動作に関するプログラムの変更、工具の姿勢に関するパラメータの変更等を含む。
【0015】
判定部112は、検出部111により検出されたシミュレーション条件の変更及び加工関係情報記憶部121に記憶された加工関係情報に基づいて、シミュレーションの複数の形態のうち、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を判定する。
【0016】
ここで、シミュレーションの複数の形態は、切削加工シミュレーション、衝突防止シミュレーション、加工時間予測シミュレーションのうち、少なくとも1つを含む。
【0017】
また、産業機械による加工のシミュレーション結果への影響は、産業機械によって加工されるワークの加工時間、ワークの加工面の品質及び産業機械の可動部の位置関係のうち、少なくとも1つを含む。
【0018】
また、加工関係情報記憶部121は、加工関係情報として、シミュレーション条件の変更内容と、シミュレーションの形態とを関連付けて記憶する。
【0019】
図2は、支援装置1により判定される、CNC工作機械による加工のシミュレーションの例を示す図である。
条件例1において、シミュレーション条件の変更は、早送り時のプログラム及び/又はパラメータの変更である。早送り時のプログラム及び/又はパラメータが変更された場合、判定部112は、加工関係情報記憶部121において早送り時のプログラム及び/又はパラメータの変更と関連付けられた加工時間予測シミュレーションを、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態として判定する。
【0020】
また、切削加工シミュレーション及び衝突防止シミュレーションは、加工関係情報記憶部121において早送り時のプログラム及び/又はパラメータの変更と関連付けられていない。そのため、判定部112は、切削加工シミュレーション及び衝突防止シミュレーションを、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響しないシミュレーションの形態として判定する。
【0021】
条件例2において、シミュレーション条件の変更は、切削送り動作に関するプログラム及び/又はパラメータの変更である。切削送り動作に関するプログラム及び/又はパラメータが変更された場合、判定部112は、加工関係情報記憶部121において切削送り動作に関するプログラム及び/又はパラメータの変更と関連付けられた切削加工シミュレーションを、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態として判定する。
【0022】
また、加工時間予測シミュレーション及び衝突防止シミュレーションは、加工関係情報記憶部121において切削送り動作に関するプログラム及び/又はパラメータの変更と関連付けられていない。そのため、判定部112は、加工時間予測シミュレーション及び衝突防止シミュレーションを、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響しないシミュレーションの形態として判定する。
【0023】
条件例3において、シミュレーション条件の変更は、工具又はテーブルの姿勢及び位置に関するプログラム及び/又はパラメータの変更である。工具又はテーブルの姿勢及び位置に関するプログラム及び/又はパラメータの変更が変更された場合、判定部112は、加工関係情報記憶部121において工具又はテーブルの姿勢及び位置に関するプログラム及び/又はパラメータの変更と関連付けられた衝突防止シミュレーションを、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態として判定する。
【0024】
また、加工時間予測シミュレーション及び切削加工シミュレーションは、加工関係情報記憶部121において工具又はテーブルの姿勢及び位置に関するプログラム及び/又はパラメータの変更と関連付けられていない。そのため、判定部112は、加工時間予測シミュレーション及び切削加工シミュレーションを、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響しないシミュレーションの形態として判定する。
【0025】
図1に戻り、選択部113は、判定部112による判定結果に基づいて、産業機械による加工に適したシミュレーションの形態を選択する。
例えば、判定部112が、加工時間予測シミュレーションを、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態として判定した場合、選択部113は、加工時間予測シミュレーションを、産業機械による加工に適したシミュレーションの形態として選択する。
【0026】
なお、選択部113は、判定部112が複数のシミュレーションを、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態として判定した場合、選択部113は、当該複数のシミュレーションを、産業機械による加工に適したシミュレーションの形態として選択する。
【0027】
提示部114は、選択部113によって選択されたシミュレーションの形態を産業機械に提示する。
例えば、提示部114は、選択部113によって選択されたシミュレーションの形態の名称をCNCの表示部に表示する。これにより、産業機械のオペレータは、産業機械による加工に適したシミュレーションの形態を把握することができる。
【0028】
図3は、支援装置1の処理を示すフローチャートである。
ステップS1において、検出部111は、産業機械の加工プログラムの実行時及び/又は保存時にシミュレーション条件の変更を検知する。
【0029】
ステップS2において、判定部112は、検出部111により検出されたシミュレーション条件の変更及び加工関係情報記憶部121に記憶された加工関係情報に基づいて、シミュレーションの複数の形態のうち、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を判定する。
【0030】
ステップS3において、選択部113は、判定部112による判定結果に基づいて、産業機械による加工に適したシミュレーションの形態を選択する。
ステップS4において、選択部113によって選択されたシミュレーションの形態を産業機械に提示する。
【0031】
本実施形態によれば、支援装置1は、シミュレーションを実行するためのシミュレーション条件の変更を検知する検出部111と、シミュレーション条件の変更に対して産業機械による加工のシミュレーション結果への影響を示す加工関係情報を記憶する加工関係情報記憶部121と、シミュレーション条件の変更及び加工関係情報に基づいて、シミュレーションの複数の形態のうち、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を判定する判定部112と、判定部112による判定結果に基づいて、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を選択する選択部113と、を備える。
【0032】
これにより、オペレータは、シミュレーション条件の変更の度に全ての形態のシミュレーションを実行する必要がなくなり、更にどのシミュレーションを実行すればよいか判断する必要がなくなる。したがって、本実施形態に係る支援装置1は、シミュレーションを実施する際の作業負担を低減することができる。
【0033】
また、検出部111は、産業機械の加工プログラムの実行時及び/又は保存時にシミュレーション条件の変更を検知する。これにより、支援装置1は、加工プログラムを使用する際に、加工プログラムに適したシミュレーションの形態を選択することができる。
【0034】
また、シミュレーション条件の変更は、産業機械のパラメータ設定値の変更又は産業機械の加工プログラムの変更を含む。これにより、支援装置1は、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を適切に判定することができる。
【0035】
また、シミュレーションの複数の形態は、切削加工シミュレーション、衝突防止シミュレーション、加工時間予測シミュレーションのうち、少なくとも1つを含む。これにより、支援装置1は、これらのシミュレーションの形態から適切なシミュレーションを選択することができる。
【0036】
また、産業機械による加工のシミュレーション結果への影響は、ワークの加工時間、ワークの加工面の品質及び産業機械の可動部の位置関係のうち、少なくとも1つを含む。これにより、支援装置1は、産業機械による加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を適切に選択することができる。
【0037】
また、加工関係情報記憶部121は、加工関係情報として、シミュレーション条件の変更内容と、シミュレーションの形態とを関連付けて記憶する。これにより、支援装置1は、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を判定することができる。
【0038】
なお、加工関係情報記憶部121は、例えば、加工関係情報として、シミュレーション条件の変更内容と、産業機械による加工のシミュレーション結果への影響と、シミュレーションの形態とを関連付けて記憶してもよい。これにより、支援装置1は、産業機械による加工のシミュレーション結果への影響を考慮して、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を判定することができる。
【0039】
また、判定部112は、シミュレーション条件の変更が複数存在する場合、シミュレーション条件の変更毎に、シミュレーション条件の変更が加工のシミュレーション結果に影響するシミュレーションの形態を判定してもよい。
【0040】
この場合、選択部113は、シミュレーション条件の変更毎に、判定されたシミュレーションの形態を選択する。また、選択部113は、同一のシミュレーションの形態を重複して選択してもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 支援装置
11 制御部
12 記憶部
111 検出部
112 判定部
113 選択図
114 提示部
121 加工関係情報記憶部