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特許7414860電気医療デバイス制御システムおよび電気医療デバイスシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電気医療デバイス制御システムおよび電気医療デバイスシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022007069
(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公開番号】P2023105990
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 久生
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-196753(JP,A)
【文献】特表2022-502196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0070359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61F 2/01
A61N 7/00
A61M 5/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気医療デバイスの流路に供給される流体の圧力値と、前記流体の流量の設定値に応じて設定される圧力閾値と、前記圧力値の時間変化量と、に基づいて、前記流路の少なくとも一部分が閉塞状態であるのか否かの判定を行う判定部を備え、
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合において
前記圧力値の時間変化量が、正の値ではないと判定した場合には、
前記圧力値が前記圧力閾値以上となっている時間が、時間閾値以上であるのか否かの判定を行う
電気医療デバイス制御システム。
【請求項2】
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合において、
前記圧力値の時間変化量が、正の値であると判定した場合には、
所定の対処動作が実行されるように制御する
請求項1に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項3】
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上となっている時間が、前記時間閾値以上であると判定した場合には、所定の対処動作が実行されるように制御し、
前記圧力値が前記圧力閾値以上となっている時間が、前記時間閾値未満であると判定した場合には、前記所定の対処動作が実行されないように制御する
請求項1または請求項2に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項4】
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合において、
前記圧力値の時間変化量が、正の値ではないと判定した場合には、
前記所定の対処動作が実行されないように制御する
請求項2に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項5】
前記所定の対処動作が、
外部への警告を行う動作と、
前記流体の供給を停止させる動作と、
前記電気医療デバイスに対する電力の供給を停止させる動作と、
のうちの少なくとも1つの動作を、含んでいる
請求項2ないし請求項のいずれか1項に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項6】
前記所定の対処動作は、前記流路の少なくとも一部分が閉塞状態であると判定された場合における対処動作を含む
請求項2ないし請求項のいずれか1項に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項7】
前記判定部は、
前記圧力値に含まれるノイズに対して、所定の低減処理が実行された後に、
前記圧力値と前記圧力値の時間変化量とを用いた判定を行う
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項8】
前記流体の流量の設定値が増加した場合には、前記圧力閾値の増加量が0以上となるように、前記圧力閾値が設定されると共に、
前記流体の流量の設定値が減少した場合には、前記圧力閾値の減少量が0以上となるように、前記圧力閾値が設定される
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項9】
前記電気医療デバイスの前記流路に対して前記流体を供給する、流体供給部を更に備え、
前記流体供給部および前記判定部がそれぞれ、単一の装置内に設けられている
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項10】
前記電気医療デバイスの前記流路に対して前記流体を供給する、流体供給部を更に備え、
前記流体供給部が、流体供給装置内に設けられていると共に、
前記判定部が、前記流体供給装置とは別体である電源装置内に設けられている
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項11】
前記電気医療デバイスが、前記流体を用いて灌注を行う灌注機構を有する
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項12】
電気医療デバイスの流路に供給される流体の圧力値と、前記流体の流量の設定値に応じて設定される圧力閾値と、前記圧力値の時間変化量と、に基づいて、前記流路の少なくとも一部分が閉塞状態であるのか否かの判定を行うこと
を含み、
前記流路の少なくとも一部分が閉塞状態であるのか否かの判定を行うことは、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合において
前記圧力値の時間変化量が、正の値ではないと判定した場合には、
前記圧力値が前記圧力閾値以上となっている時間が、時間閾値以上であるのか否かの判定を行うことを含む
電気医療デバイスシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気医療デバイス制御システムおよび電気医療デバイスシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーションカテーテル等の電気医療デバイスを備えたシステム(電気医療デバイスシステム)、および、電気医療デバイスを制御するシステム(電気医療デバイス制御システム)が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1では、電気医療デバイスの流路に対して、所定の流体(灌注用の液体)が供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5737765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気医療デバイス制御システムでは、流体が流れる流路における閉塞状態について、誤判定等を抑制して、精度良く判定することが求められている。流路の閉塞状態の判定精度を向上させることが可能な、電気医療デバイス制御システムおよび電気医療デバイスシステムの制御方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイス制御システムは、電気医療デバイスの流路に供給される流体の圧力値と、流体の流量の設定値に応じて設定される圧力閾値と、圧力値の時間変化量と、に基づいて、流路の少なくとも一部分が閉塞状態であるのか否かの判定を行う判定部を備えている。判定部は、圧力値が圧力閾値以上であると判定した場合において、圧力値の時間変化量が正の値ではないと判定した場合には、圧力値が圧力閾値以上となっている時間が、時間閾値以上であるのか否かの判定を行う。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイスシステムの制御方法は、電気医療デバイスの流路に供給される流体の圧力値と、流体の流量の設定値に応じて設定される圧力閾値と、圧力値の時間変化量と、に基づいて、流路の少なくとも一部分が閉塞状態であるのか否かの判定を行うことを含んでいる。流路の少なくとも一部分が閉塞状態であるのか否かの判定を行うことは、圧力値が圧力閾値以上であると判定した場合において、圧力値の時間変化量が、正の値ではないと判定した場合には、圧力値が圧力閾値以上となっている時間が、時間閾値以上であるのか否かの判定を行うことを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイス制御システムを有する電気医療デバイスシステムの全体構成例を模式的に表すブロック図である。
図2図1に示したアブレーションカテーテルの概略構成例を表す模式図である。
図3】流体の流量動作と圧力閾値との対応関係の一例を表す模式図である。
図4】流路の閉塞時における流体の圧力値の時間変化の一例を表す図である。
図5】定常状態における流体流量と流体の圧力値との対応関係の一例を表す図である。
図6図4に示した圧力値の時間変化と圧力閾値の大きさとの対応関係の一例を表す図である。
図7】流体流量の設定値を変更させた場合における流体の圧力値の時間変化の一例を表す図である。
図8】実施の形態に係る流路の閉塞状態の判定処理の一例を表す流れ図である。
図9】実施の形態に係る流体の圧力値および圧力閾値の時間変化の一例を表す図である。
図10】変形例1に係る流体の圧力値および圧力閾値の時間変化の一例を表す図である。
図11】変形例1に係る流体の圧力値および圧力閾値の時間変化の他の例を表す図である。
図12】変形例1に係る流路の閉塞状態の判定処理の一例を表す流れ図である。
図13】変形例2に係るノイズの低減処理について説明するための模式図である。
図14】変形例3に係る電気医療デバイス制御システムを有する電気医療デバイスシステムの全体構成例を模式的に表すブロック図である。
図15】変形例4に係る電気医療デバイス制御システムを有する電気医療デバイスシステムの全体構成例を模式的に表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(判定部を流体供給装置内に設けた場合の例)
2.変形例
変形例1(流路の閉塞状態の判定処理に関する他の処理例)
変形例2(流体の圧力値に含まれるノイズの低減処理を行う場合の例)
変形例3(判定部を電源装置内に設けた場合の例)
変形例4(判定部および流体供給部等を単一の制御装置内に設けた場合の例)
3.その他の変形例
【0009】
<1.実施の形態>
[カテーテルシステム5の構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイスシステムとしての、カテーテルシステム5の全体構成例を、模式的にブロック図で表したものである。カテーテルシステム5は、患者9の体内における患部を治療する際に用いられるシステムであり、患部に対して所定のアブレーション(焼灼)を行う。カテーテルシステム5は、アブレーションカテーテル1、流体供給装置2および電源装置3を備えている。すなわち、本実施の形態のカテーテルシステム5では、流体供給装置2と電源装置3とが、別体として構成されている。カテーテルシステム5を用いたアブレーションの際には、例えば図1に示した対極板4も、適宜使用される。
【0010】
なお、流体供給装置2および電源装置3により構成される制御システム(カテーテル制御システム)は、本開示における「電気医療デバイス制御システム」の一具体例に対応している。本開示における「電気医療デバイスシステムの制御方法」は、本開示の電気医療デバイスシステムにおいて具現化されるため、以下併せて説明する。
【0011】
(アブレーションカテーテル1)
アブレーションカテーテル1は、血管を通して患者9の体内に挿入され、患部をアブレーションすることで不整脈等の治療を行うための電極カテーテルである。アブレーションカテーテル1は、アブレーションの際に所定の流体(例えば生理食塩水等の、灌注用の流体(液体))を先端P1側から流し出す(噴射させる)、灌注機構を有している。換言すると、カテーテルシステム5は、所定の流体を用いて灌注を行う灌注機構付きのカテーテルシステムである。
【0012】
なお、アブレーションカテーテル1は、本開示における「電気医療デバイス」の一具体例に対応している。
【0013】
図2は、アブレーションカテーテル1の概略構成例を、模式的に表したものである。アブレーションカテーテル1は、カテーテル本体としてのシャフト11(カテーテルシャフト)と、シャフト11の基端に装着された操作部12とを有している。
【0014】
シャフト11は、可撓性を有する管状構造(管状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延在している。シャフト11は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン等の合成樹脂により構成されている。シャフト11は、1つのルーメン(細孔,貫通孔)が内部に形成された、いわゆるシングルルーメン構造を有している。あるいは、シャフト11は、複数(例えば4つ)のルーメンが内部に形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有している。なお、シャフト11の内部において、シングルルーメン構造からなる領域と、マルチルーメン構造からなる領域と、の双方が設けられていてもよい。ルーメンには、図示しない各種の細線(導線や操作用ワイヤ等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。
【0015】
シャフト11の内部には、各種の細線を挿通させるためのルーメンに加え、灌注用の流体Lを流すためのルーメン(流路)が、軸方向に沿って形成されている。なお、シャフト11の先端P1付近に、先端P1付近(患部周辺)の温度を測定するための機構(温度測定機構)が、設けられていてもよい。その場合、測定された先端P1付近の温度を示す情報(測定温度情報)は、アブレーションカテーテル1から電源装置3へと供給される。
【0016】
シャフト11の先端P1付近には、図2中の先端P1付近の拡大図に示したように、複数の電極(ここでは、3つのリング状電極111a,111b,111cおよび1つの先端電極112)が設けられている。このような電極と後述する対極板4との間で、アブレーションが行われる。
【0017】
具体的には、先端P1付近において、リング状電極111a,111b,111cおよび先端電極112が、シャフト11の最先端側に向かって、この順で所定の間隔をおいて配置されている。リング状電極111a,111b,111cはそれぞれ、シャフト11の外周面上に固定配置される。一方、先端電極112は、シャフト11の最先端に固定配置されている。これらの電極は、シャフト11のルーメン内に挿通された複数の導線を介して、操作部12と電気的に接続されている。
【0018】
先端電極112の先端付近からは、図2中の矢印で示したように、灌注用の流体Lが流れ出る。アブレーションカテーテル1の内部には、流体Lを流すための樹脂チューブ(流路)が引き通されており、操作部12から外部につながるポートが形成されている。アブレーションカテーテル1は、ポートと接続される他の接続チューブを介して、後述する流体供給装置2と接続されており、流体供給装置2から送り出される流体Lを、先端P1側から灌注することができる。
【0019】
リング状電極111a,111b,111cおよび先端電極112はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。アブレーションカテーテル1の使用時におけるX線に対する造影性を良好にするためには、白金またはその合金により構成されていることが好ましい。
【0020】
操作部12は、シャフト11の基端に装着されており、ハンドル121(把持部)および回転板122を有している。
【0021】
ハンドル121は、アブレーションカテーテル1の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。回転板122は、シャフト11の先端付近を湾曲させる際の操作が行われる部材である。例えば図2中の矢印で示したように、回転方向d1に沿って回転板122を回転させる操作が、可能となっている。
【0022】
(流体供給装置2)
流体供給装置2は、アブレーションカテーテル1に対して、灌注用の流体Lを供給する装置である。流体供給装置2は、図1に示したように、流体供給部21、圧力センサ22および判定部23を有している。つまり、流体供給装置2内には、流体供給部21および判定部23がそれぞれ設けられており、流体供給装置2は、本開示における「単一の装置」の一具体例に対応している。
【0023】
流体供給部21は、後述する制御信号CTL2により規定される流量の流体Lを、アブレーションカテーテル1内の流路に対して、随時供給する。流体供給部21は、例えば、流体ポンプおよび樹脂チューブ等を含んで構成されている。
【0024】
圧力センサ22は、流路を流れる流体Lの圧力値Prを測定するセンサである。圧力センサ22によって測定された流体Lの圧力値Prは、図1に示したように、判定部23へと供給される。なお、圧力センサ22が、例えば、流体供給装置2の外部に別途設けられているようにしてもよく、後述する各変形例においても同様である。
【0025】
判定部23は、圧力センサ22によって測定された流体Lの圧力値Prと、圧力値Prに関する圧力閾値Prthと、圧力値Prの時間変化量(後述する圧力勾配ΔPr)とに基づいて、所定の判定を行う。具体的には、判定部23は、流体Lが流れる流路における閉塞状態の判定処理(流路の少なくとも一部分が閉塞状態であるのか否かの判定処理)等を行う。判定部23による判定結果等は、図1に示したように、電源装置3内の後述する制御部33へと供給される。なお、判定部23による判定処理等の詳細については、後述する(図8図9等)。
【0026】
(電源装置3)
電源装置3は、アブレーションカテーテル1における前述した電極と対極板4との間に、アブレーションを行うための電力Pout(例えば高周波(RF;Radio Frequency)の電力)を供給する装置である。つまり、電源装置3は、電力Poutをアブレーションカテーテル1に対して供給する。また、電源装置3は、流体供給装置2における流体Lの供給動作を制御する。電源装置3は、図1に示したように、入力部31、電源部32、制御部33および表示部34を有している。
【0027】
入力部31は、各種の設定値や、所定の動作を指示するための指示信号(操作信号)を入力する部分である。各種の設定値としては、例えば、電力Poutの設定電力、後述する各種の流量動作の際の流体Lの流量、後述する各種の閾値(圧力閾値Prth、時間閾値Δtth)等が、挙げられる。操作信号は、電源装置3の操作者(例えば技師等)による操作に応じて、入力部31から入力される。ただし、各種の設定値が、操作者による操作に応じて入力されるのではなく、例えば、製品の出荷時等に予め電源装置3内で設定されているようにしてもよい。入力部31により入力された設定値は、制御部33へと供給される。入力部31は、例えば所定のダイヤルおよびボタン、タッチパネル等を用いて構成されている。
【0028】
電源部32は、制御部33から供給される制御信号CTL1に従って、電力Poutを出力する部分である。電源部32は、所定の電源回路(例えばスイッチングレギュレータ等)を用いて構成されている。例えば、電力Poutが高周波電力からなる場合、電力Poutの周波数は、450kHz~550kHz程度(好適には500kHz)である。
【0029】
制御部33は、電源装置3全体を制御すると共に所定の演算処理を行う部分であり、例えばマイクロコンピュータ等を用いて構成されている。制御部33は、例えば図1に示したように、制御信号CTL1を用いて、電源部32における電力Poutの供給動作を制御する。また、制御部33は、制御信号CTL2を用いて、流体供給部21における流体Lの供給動作を制御する。具体的には、制御部33は、例えば制御信号CTL2を用いて、流体Lの流量(流体流量F)を制御する。
【0030】
図3は、流体流量F(流体Lの流量動作)の一例について、後述する圧力閾値Prthとの対応関係の一例も含めて、模式的に表したものである。
【0031】
制御部33は、制御信号CTL2において規定される、流体流量Fの値(流体供給部21における流量動作の種類)を設定する。図3に示した例では、流体流量Fの値(流量動作の種類)として、以下のようなものが挙げられる。
【0032】
・流体流量Fが設定範囲内での最大流量付近の流量Fmaxである、大流量動作(F=Fmaxである「Max」流量動作(「Flush」流量動作))
・流体流量Fが相対的に少ない流量Frfであり、電力Poutの供給動作(アブレーション動作)の実行期間中における小流量動作(F=Frf(<Fmax)である「RF」流量動作)
・流体流量Fが微量(流量Fst)である、スタンバイ流量動作(F=Fst(0<Fst≦Frf)である「Standby」流量動作)
【0033】
なお、流量Fmax,Frf,Fstの値の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
・Fmax=40~50(mL/min)
・Frf=2~30(mL/min)(電力Poutの設定値(ワット数)に応じて変化)
・Fst=2(mL/min)
【0034】
本実施の形態では、流体流量Fの値(流量動作の種類)が、任意に変更可能となっている。また、例えば図3に示したように、流体流量Fの設定値に応じて、圧力閾値Prth(後述する流路の閉塞状態の判定処理の際に用いられる、圧力値Prに関する閾値)が設定される。具体的には、流体流量Fの設定値が増減するのに応じて、圧力閾値Prthも、基本的には増減する傾向となるように設定される。詳細には、流体流量Fの設定値が増加した場合には、圧力閾値Prthの増加量が0(ゼロ)以上となるように、圧力閾値Prthが設定されると共に、流体流量Fの設定値が減少した場合には、圧力閾値Prthの減少量が0以上となるように、圧力閾値Prthが設定される。なお、例えば、圧力閾値Prthの増加量および減少量のうちの少なくとも一方において、0が含まれない(圧力閾値Prthの増加量および減少量の少なくとも一方が0超過となるように、圧力閾値Prthが設定される)ようにしてもよい。
【0035】
具体的には、図3に示した例では、上記した各流量動作に対応して、圧力閾値Prthが以下のように設定される。なお、例えばPrth2に関して、Frf=2~30(mL/min)の各流量において、別個の値が設定されてもよい。つまり、Frf=2(mL/min)の場合と、Frf=30(mL/min)の場合とで、Prth2の設定値が異なってもよい。この点については、例えばPrth3に関しても同様である。
・「Max」流量動作(「Flush」流量動作)時の圧力閾値Prth=Prth3
・「RF」流量動作時の圧力閾値Prth=Prth2(<Prth3)
・「Standby」流量動作時の圧力閾値Prth=Prth1(≦Prth2)
【0036】
なお、このような流体流量F(流体Lの流量動作)と圧力閾値Prthとの対応関係の詳細等については、後述する(図4図9)。
【0037】
表示部34は、各種の情報を表示して外部へと出力する部分(モニター)である。表示部34は、各種の方式によるディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、または、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなど)を用いて構成されている。
【0038】
(対極板4)
対極板4は、例えば図1に示したように、アブレーションの際に患者9の体表に装着された状態で用いられる。アブレーションの際に、アブレーションカテーテル1における電極と対極板4との間で、高周波通電がなされる(電力Poutが供給される)。
【0039】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
カテーテルシステム5では、不整脈等の治療の際に、アブレーションカテーテル1のシャフト11における先端P1側が、血管を通して患者9の体内に挿入される。このとき、操作者による操作部12の操作に応じて、体内に挿入されたシャフト11の先端P1付近の形状が、例えば片方向あるいは両方向に変化する。具体的には、操作者の指によって、例えば図2中の矢印で示した回転方向d1に沿って回転板122が回転されると、シャフト11内で図示しない操作用ワイヤが、基端側へ引っ張られる。その結果、シャフト11の先端P1付近が、図1中の矢印で示した方向d2に沿って湾曲する。
【0040】
そして、シャフト11における先端P1付近の電極と対極板4との間に、電源装置3から電力Pout(例えば高周波電力)が供給されることで、患者9の体内の患部に対して、ジュール発熱によるアブレーションが行われる。高周波通電によって、患者9における治療対象の部位(処置部分)が選択的にアブレーションされ、不整脈等の経血管的治療がなされる。
【0041】
アブレーションの際に、流体供給装置2からアブレーションカテーテル1に対し、灌注用の流体Lが供給される。また、電源装置3内の制御部33は、制御信号CTL2を用いて、流体供給装置2における流体Lの供給動作を制御する。これにより、アブレーションカテーテル1における先端電極112の先端付近から、灌注用の流体Lが噴出する(図2中の矢印参照)。その結果、アブレーションの際の処置部分の温度が上昇しすぎて損傷が起こったり、処置部分に血栓がこびりついたりすることが、回避される(血液滞留が改善される)。
【0042】
ところが、処置部分へ放出される流体Lの流量が多過ぎる場合、処置部分の温度が低下し、治療の際の処置に支障(十分に焼灼されず、焼灼領域が小さくなってしまうことなど)が生じてしまうおそれがある。また、流体Lが体内に入り過ぎると、患者9への負担が大きくなってしまうおそれもある。一方、逆に流体Lの流量が少な過ぎる場合には、処置部分の冷却および血液滞留の改善の効果が、不十分となってしまうおそれがある。特に、アブレーションの際の電力Poutが高い場合には、過度のアブレーションによる組織の損傷および血栓が生じやすいため、上記の傾向が高くなる。
【0043】
これらのことから、灌注機構付きのカテーテルシステム5においては、使用状況に応じて流体Lの流量(流体流量F)を調整し、適切な灌注動作を実現することが求められる。
【0044】
(B.流路の閉塞状態について)
また、灌注機構を有するアブレーションカテーテル1では、アブレーションの際に、灌注用の開口が、血栓などによって塞がれてしまうおそれがある。更に、灌注用の流体Lの流路に異物が浸入し、流路を塞いでしまうおそれもある。このようにして、灌注用の流体Lが流れる流路において、少なくとも一部分が閉塞状態(完全閉塞または部分閉塞の状態)になると、以下のようになる。すなわち、例えば、処置部分の冷却および血液滞留の改善の効果が不十分となってしまったり、アブレーションカテーテル1が破損したりするおそれがある。
【0045】
そこで本実施の形態では、後述するように、流体Lの圧力値Prと圧力閾値Prthとを比較することで、流路の閉塞状態の判定等が行われる。ただし、本実施の形態では、流体Lの流量(流体流量F)の設定値の変更に応じて、圧力閾値Prthの設定値も変更される(図3参照)。このため、例えば、流体流量Fの設定値を減少させる変更の場合、圧力値Prと圧力閾値Prthとの比較だけで判定すると、以下説明するように、流路の閉塞状態の判定の際に、誤判定等が生じるおそれがある。
【0046】
図4は、流路の閉塞時(完全閉塞時)における流体Lの圧力値Prの時間変化の一例を、表したものである。図5は、定常状態における流体流量Fと流体Lの圧力値Prとの対応関係の一例を、表したものである。図6は、図4に示した圧力値Prの時間変化と圧力閾値Prthの大きさとの対応関係の一例を、表したものである。図7は、流体流量Fの設定値を変更させた場合(流体流量Fの設定値を減少させる変更の場合)における、流体Lの圧力値Prの時間変化の一例を、表したものである。なお、図4図7においては、横軸は時間tを示していると共に、圧力閾値Prthの具体例、および、圧力閾値Prthまでの圧力値Prの到達時間(閉塞状態の検出時間に相当)について、適宜破線で示している。
【0047】
まず、例えば図4に示したように、完全閉塞時の検出時間は、流体流量Fが増加するのに従って、短くなっていることが分かる。また、例えば図5に示したように、流体流量Fが増加するのに従って、定常状態における圧力値Prも増加することが分かる。
【0048】
ここで、閉塞状態の検出時間を短縮させるには、流体流量Fの各設定値の場合において、圧力閾値Prthをなるべく下げることが考えられる。具体的には、図6に示した例では、F=2[mL/min]の場合において、圧力閾値Prth1の設定値を、0.428[MPa]から0.180[MPa]まで下げた場合、閉塞状態の検出時間が、120[sec]から50[sec]まで短縮されている。
【0049】
ただし、上記したように、流体流量Fを減少させる変更の場合、アブレーションカテーテル1内の流路などでは一般に、圧力が残存し易い構造であることから、流体流量Fの変更の際に、圧力値Prが定常状態へと収束するまでに、時間を要する。具体的には、図7に示した例では、F=10~50[mL/min]の各設定値から、F=2[mL/min]まで、流体流量Fの設定値をそれぞれ減少させた場合、以下のようになる。この場合において、F=2[mL/min]の際の圧力閾値Prth1=0.1[MPa]に設定した場合、上記したような、流体流量Fを減少させる変更の際の残圧に起因して、閉塞状態の検出時間が、最大で10[sec]程度も要する(図7中のタイミングt1参照)。言い換えると、流体流量Fを減少させる変更の際に、圧力値Prが圧力閾値Prthを超えた状態となっている期間が、最大で10[sec]程度も続くことになる。
【0050】
このようにして、流体流量Fを減少させる変更の場合、流路が実際には閉塞していないにも関わらず、圧力値Prが圧力閾値Prthを超えた状態となっている期間が続くことで、閉塞しているとの誤判定(誤検出)が生じるおそれがある。したがって、流体Lが流れる流路における閉塞状態について、流体流量Fの設定値の変更(流体流量Fの設定値を減少させる変更の場合)に起因した誤判定等を抑制して、精度良く判定することが求められると言える。
【0051】
(C.閉塞状態の判定処理)
そこで本実施の形態では、判定部23が、例えば以下のようにして、流体Lが流れる流路における閉塞状態の判定処理を行う。
【0052】
図8は、本実施の形態に係る流路の閉塞状態の判定処理の一例を、流れ図で表したものである。図9は、本実施の形態に係る流体Lの圧力値Prおよび圧力閾値Prthの時間変化の一例を、表したものである。具体的には、この図9の例では、前述した「Max」流量動作(F=Fmax,Prth=Prth3)から、「Standby」流量動作(F=Fst,Prth=Prth1)を介して、「RF」流量動作(F=Frf,Prth=Prth2)へと移行する際における、圧力値Prの時間変化例を示している。つまり、図9に示した移行例は、流体流量Fの設定値を、開始時を基準として、最終的に減少させる変更の場合に対応している。
【0053】
図8に示した一連の処理では、まず、例えば図3に示したように、アブレーションの際の流体流量Fが設定される(ステップS11)と共に、流体流量Fの設定値に応じて、圧力閾値Prthが設定される(ステップS12)。次いで、流体流量Fおよび圧力閾値Prthを用いて、流体供給装置2による流体Lの供給(流量動作)が開始される(ステップS13)。
【0054】
続いて、圧力センサ22が、流体Lの圧力値Prを測定する(ステップS14)。そして、判定部23は、圧力値Prが、ステップS12にて設定された圧力閾値Prth以上である(Pr≧Prth)のか否かについて、判定を行う(ステップS15)。ここで、圧力値Prが圧力閾値未満である(Pr<Prth)と判定された場合には(ステップS15:N)、判定部23は、流路が閉塞状態になってはいないと判定し、ステップS14へと戻る。具体的には、例えば図9中に符号P21で示した場合のように、F=FmaxからF=Frfまで、最終的に流体流量Fを減少させた場合において、流路が閉塞状態になっていなければ、圧力値Prが圧力閾値Prthを超えずに、徐々に収束していく。
【0055】
一方、圧力値Prが圧力閾値Prth以上である(Pr≧Prth)と判定された場合には(ステップS15:Y)、判定部23は、流路が閉塞状態になっている可能性があると判定し、更に以下の判定を行う。すなわち、判定部23は、圧力値Prの時間変化量(圧力勾配ΔPr)が、正の値である(ΔPr>0)のか否かの判定を行う(ステップS16)。ここで、圧力勾配ΔPrが正の値ではない(ΔPr≦0)と判定された場合には(ステップS16:N)、判定部23は、圧力値Prが圧力閾値Prth以上であったとしても、流路が閉塞状態になってはいないと判定し、ステップS14へと戻ることになる。つまり、この場合には、後述する所定の対処動作(ステップS18)が実行されない。
【0056】
一方、圧力勾配ΔPrが正の値である(ΔPr>0)と判定された場合には(ステップS16:Y)、判定部23は、流路の少なくとも一部分が閉塞状態(完全閉塞または部分閉塞の状態)になっていると判定する(ステップS17)。具体的には、例えば図9に示した場合のように、F=FmaxからF=Frfまで、最終的に流体流量Fを減少させた場合において、例えば、途中のF=FstからF=Frfへの切替時(タイミングt2)に、流路が完全閉塞の状態になったとすると、以下のようになる。このような場合には、例えば図9中に矢印P22で示したように、圧力値Prが圧力閾値Prth以上になると共に、圧力勾配ΔPrが正の値になることから、流路が完全閉塞の状態になったと判定される(完全閉塞の状態が検知される)ことになる。
【0057】
次いで、判定部23は、閉塞状態と判定された場合における所定の対処動作が実行されるように、閉塞状態との判定結果を示す情報信号を、電源装置3内の制御部33へと出力する(ステップS18)。これにより制御部33は、所定の対処動作が実行されるように制御する。所定の対処動作としては、一例として、以下の各動作のうちの少なくとも1つの動作が、含まれている。
・カテーテルシステム5の外部に対する所定の警告を行う動作(例えば、表示部34上へのエラーメッセージの表示動作、所定の音声出力動作、または、所定の点灯動作など)
・流体供給装置2による流体Lの供給を停止させる動作(例えば、流体供給部21における流体ポンプの回転を停止させる動作など)
・電源装置3によるアブレーションカテーテル1に対する電力Poutの供給を停止させる動作(アブレーションを停止させる動作)
【0058】
以上により、図8に示した一連の処理が終了となる。
【0059】
(D.作用・効果)
このようにして本実施の形態では、流体Lの圧力値Prが圧力閾値Prth以上であると判定された場合に、圧力値Prの時間変化量(圧力勾配ΔPr)が、正の値であるのか否かの判定を行うようにしたので、以下のようになる。すなわち、流体Lが流れる流路における閉塞状態について、前述したような、流体流量Fの設定値の変更(流体流量Fの設定値を減少させる変更の場合)に起因した誤判定等を抑制して、精度良く判定することができる。その結果、本実施の形態では、流路の閉塞状態の判定精度を、向上させることが可能となる。
【0060】
本実施の形態では、圧力値Prが圧力閾値Prth以上であると判定された場合において、圧力勾配ΔPrが正の値であると判定した場合には、前述した所定の対処動作が実行されるようにしたので、以下のようになる。すなわち、流路の少なくとも一部分が閉塞状態であると判定された場合において、実際に対処動作を実行させることができ、利便性を向上させることが可能となる。
【0061】
本実施の形態では、圧力値Prが圧力閾値Prth以上であると判定された場合において、圧力勾配ΔPrが正の値ではないと判定した場合には、前述した所定の対処動作が実行されないようにしたので、以下のようになる。すなわち、流路の少なくとも一部分が閉塞状態ではないと判定された場合においては、前述した所定の対処動作は非実行となるため、不必要な対処動作の実行を回避することができ、利便性を向上させることが可能となる。
【0062】
本実施の形態では、流体供給装置2と電源装置3とが、別体として構成されているようにしたので、使用状況に応じて各装置を個別に配置することが可能となるため、カテーテルシステム5全体としての利便性を向上させることができる。具体的には、例えば図1に示したように、流体供給装置2を相対的に患者9の近くに配置させることで、流体供給装置2とアブレーションカテーテル1とを繋ぐ、流体供給用のチューブが短くて済むため、医師が操作し易いようになる。また、電源装置3を相対的に患者9から遠方に配置させることで、技師等が操作し易いようになる。このようにして本実施の形態では、使用状況に応じた装置配置が可能となる。
【0063】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~4)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0064】
[変形例1]
図10図11はそれぞれ、変形例1に係る流体Lの圧力値Prおよび圧力閾値Prthの時間変化の一例を、表したものである。
【0065】
具体的には、図10の例では、前述した「Max」流量動作(F=Fmax,Prth=Prth3)から、「Standby」流量動作(F=Fst,Prth=Prth1)を介して、「RF」流量動作(F=Frf,Prth=Prth2)へと移行する際における、圧力値Prの時間変化例を示している。つまり、図10に示した移行例は、流体流量Fの設定値を、開始時を基準として、最終的に減少させる変更の場合に対応している。
【0066】
図11の例では、前述した「Max」流量動作(F=Fmax,Prth=Prth3)から、「Standby」流量動作(F=Fst,Prth=Prth1)へと直接移行する際における、圧力値Prの時間変化例を示している。つまり、図11に示した移行例も、流体流量Fの設定値を、開始時を基準として、最終的に減少させる変更の場合に対応している。
【0067】
図10図11の例では、実施の形態での図9(符号P21)の場合と同様に、最終的に流体流量Fを減少させた場合において、流路が閉塞状態になっていなければ、以下のようになる。すなわち、例えば図10図11中の符号P31,P41でそれぞれ示したように、圧力値Prが圧力閾値Prthを超えずに、徐々に収束していく。
【0068】
一方、例えば図10図11中に示したタイミングt3,t4にてそれぞれ、流路が(完全閉塞ではなく)部分閉塞の状態になったとすると、以下のような場合が生じ得る。すなわち、例えば図10図11中の矢印P32,P42でそれぞれ示したように、(Pr≧Ptth)であったとしても、圧力勾配ΔPrが正の値にはならず(ΔPr≦0)、部分閉塞の状態が検知されない場合が生じ得る。つまり、流路が部分閉塞の状態になった場合に、閉塞状態の誤判定(検出漏れ)が生じるおそれがあると言える。
【0069】
(閉塞状態の判定処理)
そこで変形例1では、上記したような、流路の閉塞状態の誤判定(検出漏れ)を回避するため、実施の形態の判定処理(図8)とは異なり、以下のような判定処理が行われる。
【0070】
図12は、変形例1に係る流路の閉塞状態の判定処理の一例を、流れ図で表したものである。図12に示した変形例1の判定処理例は、図8に示した実施の形態の判定処理例において、以下説明するステップS19の処理を追加したものに対応しており、他の処理については、基本的には同等となっている。したがって、以下では基本的には、このステップS19の処理を抜粋して、説明する。
【0071】
図12に示した一連の処理では、前述したステップS16において、圧力勾配ΔPrが正の値ではない(ΔPr≦0)と判定された場合(ステップS16:N)、図8に示した一連の処理の場合とは異なり、以下のようになる。
【0072】
すなわち、次に判定部23は、圧力値Prが圧力閾値Prth以上となっている時間Δt(例えば図10図11参照)が、所定の時間閾値Δtth以上である(Δt≧Δtth)のか否かの判定を、更に行う(ステップS19)。なお、時間閾値Δtthの値としては、一例として、20~60[sec]程度が挙げられる。
【0073】
ここで、時間Δtが、時間閾値Δtth未満である(Δt<Δtth)と判定された場合には(ステップS19:N)、以下のようになる。この場合には、判定部23は、(Pr≧Prth)であったとしても、流路が閉塞状態(完全閉塞または部分閉塞の状態)になってはいないと判定し、ステップS14へと戻ることになる。つまり、この場合には、前述した所定の対処動作(ステップS18)が実行されないことになる。
【0074】
一方、そのような時間Δtが、時間閾値Δtth以上である(Δt≧Δtth)と判定された場合には(ステップS19:Y)、以下のようになる。すなわち、この場合には判定部23は、流路の少なくとも一部分が閉塞状態(完全閉塞または部分閉塞の状態)になっていると判定する(ステップS17)。具体的には、例えば上記した図10図11に示した場合のように、最終的に流体流量Fを減少させた場合において、上記したタイミングt3またはタイミングt4に、流路が部分閉塞の状態になったとすると、以下のようになる。すなわち、図10図11中の矢印P32,P42でそれぞれ示したように、(Pr≧Ptth)かつ(ΔPr≦0)であったとしても、(Pr≧Prth)である時間Δtが、時間閾値Δtth以上であることから、流路が部分閉塞の状態になったと判定される(部分閉塞の状態が検知される)。
【0075】
そして、判定部23は、前述した所定の対処動作が実行されるように、閉塞状態との判定結果を示す情報信号を、電源装置3内の制御部33へと出力する(ステップS18)。
【0076】
以上で、図12に示した一連の処理が、終了となる。
【0077】
(作用・効果)
変形例1では、圧力値Prが圧力閾値Prth以上であると判定した場合において、圧力値Prの時間変化量(圧力勾配ΔPr)が正の値ではないと判定した場合には、圧力値Prが圧力閾値Prth以上となっている時間Δtが、時間閾値Δtth以上であるのか否かの判定を行うようにしたので、以下のようになる。すなわち、流路が部分閉塞の状態になった場合においても、閉塞状態の誤判定(検出漏れ)を回避することができる。その結果、変形例1では実施の形態と比べ、流路の閉塞状態の判定精度を、更に向上させることが可能となる。
【0078】
[変形例2]
図13は、変形例2に係るノイズNrの低減処理について説明するための模式図である。図13において、横軸は時間tを示し、縦軸は流体Lの圧力値Prを示している。
【0079】
変形例2では、例えば図13に示したように、判定部23は、流体Lの圧力値Prに含まれるノイズNrに対して、所定の低減処理(フィルタ処理等)が実行された後に、これまでに説明した各種の判定処理(流路の閉塞状態の判定処理等)を行う。つまり、判定部23は、ノイズNrが含まれる圧力値Prに対して、所定の低減処理が実行された後の圧力値Pr’を用いて、各種の判定処理を行うようになっている。
【0080】
ノイズNrは、流体供給部21における流体Lの供給動作の際に生ずる脈動(例えば、流体ポンプによるポンプ動作に伴う脈動)に起因して、流体Lの圧力値Prに含まれるノイズである。上記した所定の低減処理の対象となるノイズNrの具体例としては、周波数が0.5~30[Hz]程度のノイズNrが挙げられる。
【0081】
変形例2では、圧力値Prに含まれるノイズNrに対して、所定の低減処理が実行された後に、各種の判定処理を行うようにしたので、以下のようになる。すなわち、ノイズNrに起因した誤判定等を抑制することができる結果、流路の閉塞状態の判定精度を、更に向上させることが可能となる。
【0082】
[変形例3]
図14は、変形例3に係る電気医療デバイスシステムとしての、カテーテルシステム5Aの全体構成例を、模式的にブロック図で表したものである。カテーテルシステム5Aは、実施の形態のカテーテルシステム5(図1)において、流体供給装置2の代わりに流体供給装置2Aを設けると共に、電源装置3の代わりに電源装置3Aを設けるようにしたものであり、他の構成は同様である。
【0083】
なお、流体供給装置2Aおよび電源装置3Aにより構成される制御システム(カテーテル制御システム)は、本開示における「電気医療デバイス制御システム」の一具体例に対応している。
【0084】
流体供給装置2Aは、図14に示したように、流体供給装置2(図1)において、判定部23を設けないようにした(省いた)ものとなっており、他の構成は同様である。電源装置3Aは、図14に示したように、電源装置3(図1)において、判定部23を追加で設けたものとなっており、他の構成は同様である。つまり、変形例3のカテーテルシステム5Aでは、実施の形態のカテーテルシステム5において、判定部23の配置位置を変更している。
【0085】
変形例3においても、基本的には、実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0086】
特に変形例3では、判定部23が、流体供給装置2Aとは別体である、電源装置3A内に設けられるようにしたので、流体供給装置2Aの構成を簡素化する(既存の構成のものを使用する)ことが可能となる。
【0087】
[変形例4]
図15は、変形例4に係る電気医療デバイスシステムとしての、カテーテルシステム5Bの全体構成例を、模式的にブロック図で表したものである。カテーテルシステム5Bは、実施の形態のカテーテルシステム5(図1)において、互いに別体として構成された流体供給装置2および電源装置3の代わりに、単一の装置である制御装置6を設けるようにしたものであり、他の構成は同様である。
【0088】
なお、制御装置6により構成される制御システム(カテーテル制御システム)は、本開示における「電気医療デバイス制御システム」の一具体例に対応している。
【0089】
制御装置6は、図15に示したように、流体供給装置2内に設けられていた、流体供給部21、圧力センサ22および判定部23と、電源装置3内に設けられていた、入力部31、電源部32、制御部33および表示部34とを、それぞれ有している。つまり、制御装置6内には、流体供給部21および判定部23がそれぞれ設けられており、制御装置6は、本開示における「単一の装置」の一具体例に対応している。
【0090】
変形例4においても、基本的には、実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0091】
特に変形例4では、流体供給装置2および電源装置3の代わりに、単一の装置である制御装置6を設けるようにしたので、カテーテルシステム5B全体の構成を、簡素化することが可能となる。
【0092】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0093】
例えば、上記実施の形態等では、カテーテルシステムおよびカテーテル制御システムの全体構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての装置を備える必要はなく、また、他の装置を更に備えていてもよい。具体的には、例えば、圧力センサおよび流体供給部の少なくとも一方が、カテーテルシステム(カテーテル制御システム)の内部に設けられているのではなく、カテーテルシステム(カテーテル制御システム)の外部に設けられているようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、アブレーションカテーテル(シャフト)の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えばシャフトの内部に、首振り部材として、湾曲方向に変形可能な板バネが設けられているようにしてもよい。また、シャフトにおける電極の構成(リング状電極および先端電極の配置や形状、個数等)は、上記実施の形態等で挙げたものには限られない。
【0094】
上記実施の形態等では、シャフトにおける先端付近の形状が操作部の操作に応じて片方向に変化するタイプのアブレーションカテーテルを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、シャフトにおける先端付近の形状が操作部の操作に応じて両方向に変化するタイプのアブレーションカテーテルであってもよく、この場合には操作用ワイヤを複数本用いることとなる。また、シャフトにおける先端付近の形状が固定となっているタイプのアブレーションカテーテルであってもよく、この場合には、操作用ワイヤや回転板等が不要となる。
【0095】
上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0096】
上記実施の形態等では、電気医療デバイスの具体例として、アブレーションデバイス(アブレーションカテーテル)を挙げて説明したが、この例には限られず、他の電気医療デバイスを適用してもよい。また、アブレーションデバイスとしても、例えば、マイクロ波または高電圧パルスなどの他の電磁波を使用したアブレーションを行う、アブレーションデバイスであってもよい。なお、高電圧パルスを使用したアブレーションとは、不可逆電気穿孔法(IRE:Irreversible Electroporation)を用いたアブレーションであってもよい。
【0097】
上記実施の形態等では、アブレーションカテーテル上の電極と対極板(他の電極)との間でアブレーションを行う、モノポーラ型の例を挙げて説明したが、この例には限られない。例えば、アブレーションカテーテル上における複数の電極間でアブレーションを行う、バイポーラ型であってもよい。
【0098】
上記実施の形態等では、流路を流れる流体が、灌注用の流体(液体)である場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、他の流体を用いるようにしてもよい。
【0099】
上記実施の形態等では、流体流量(流体の流量動作)と圧力閾値との対応関係の例について、具体的に説明したが、上記実施の形態等で挙げた例には限られない。例えば、流量動作や圧力閾値の種類や個数については、上記実施の形態等で挙げた例には限られない。また、圧力閾値を連続的(シームレス)に変更させるのではなく、例えば、非連続的(離散的,段階的)に変更させるようにしてもよい。
【0100】
上記実施の形態等では、流体流量の設定を、電源装置内の制御部によって変更可能に制御する場合(オートモード)の例について説明したが、この例には限られない。例えば、流体供給装置や制御装置に対する手動操作に応じて、流体流量が変更可能に設定される場合(マニュアルモードの場合)であってもよい。
【0101】
上記実施の形態等では、流体の流路が閉塞状態であると判定された場合における対処動作(所定の対処動作)について、具体例を挙げて説明したが、実施の形態等で挙げた例には限られず、他の対処動作を行うようにしてもよい。
【0102】
上記実施の形態等では、流路の閉塞状態の判定処理や、圧力値に含まれるノイズの低減処理等について、具体的に説明した。しかしながら、判定処理やノイズの低減処理等の手法については、上記実施の形態等で挙げた手法には限られず、他の手法を用いるようにしてもよい。
【0103】
上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、ソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0104】
また、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0105】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0106】
本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
電気医療デバイスの流路に供給される流体の圧力値と、前記流体の流量の設定値に応じて設定される圧力閾値と、前記圧力値の時間変化量と、に基づいて所定の判定を行う判定部を備え、
前記流体の流量が変更可能に設定されており、
前記流体の流量の設定値が増加するのに応じて、前記圧力閾値も増加すると共に、
前記流体の流量の設定値が減少するのに応じて、前記圧力閾値も減少するように設定されており、
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合に、
前記圧力値の時間変化量が、正の値であるのか否かの判定を行う
電気医療デバイス制御システム。
(2)
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合において、
前記圧力値の時間変化量が、正の値であると判定した場合には、
所定の対処動作が実行されるように制御する
上記(1)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(3)
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合において、
前記圧力値の時間変化量が、正の値ではないと判定した場合には、
前記圧力値が前記圧力閾値以上となっている時間が、時間閾値以上であるのか否かの判定を行う
上記(1)または(2)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(4)
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上となっている時間が、前記時間閾値以上であると判定した場合には、所定の対処動作が実行されるように制御し、
前記圧力値が前記圧力閾値以上となっている時間が、前記時間閾値未満であると判定した場合には、前記所定の対処動作が実行されないように制御する
上記(3)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(5)
前記判定部は、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合において、
前記圧力値の時間変化量が、正の値ではないと判定した場合には、
前記所定の対処動作が実行されないように制御する
上記(2)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(6)
前記所定の対処動作が、
外部への警告を行う動作と、
前記流体の供給を停止させる動作と、
前記電気医療デバイスに対する電力の供給を停止させる動作と、
のうちの少なくとも1つの動作を、含んでいる
上記(2)、(4)および(5)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(7)
前記所定の対処動作は、前記流路の少なくとも一部分が閉塞状態であると判定された場合における対処動作を含む
上記(2)ないし(6)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(8)
前記判定部は、
前記圧力値に含まれるノイズに対して、所定の低減処理が実行された後に、
前記圧力値と前記圧力値の時間変化量とを用いた判定を行う
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(9)
前記流体の流量の設定値が増加した場合には、前記圧力閾値の増加量が0以上となるように、前記圧力閾値が設定されると共に、
前記流体の流量の設定値が減少した場合には、前記圧力閾値の減少量が0以上となるように、前記圧力閾値が設定される
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(10)
前記電気医療デバイスの前記流路に対して前記流体を供給する、流体供給部を更に備え、
前記流体供給部および前記判定部がそれぞれ、単一の装置内に設けられている
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(11)
前記電気医療デバイスの前記流路に対して前記流体を供給する、流体供給部を更に備え、
前記流体供給部が、流体供給装置内に設けられていると共に、
前記判定部が、前記流体供給装置とは別体である電源装置内に設けられている
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(12)
前記電気医療デバイスが、前記流体を用いて灌注を行う灌注機構を有する
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(13)
電気医療デバイスの流路に供給される流体の圧力値と、前記流体の流量の設定値に応じて設定される圧力閾値と、前記圧力値の時間変化量と、に基づいて所定の判定を行うことを含み、
前記所定の判定を行うことは、
前記圧力値が前記圧力閾値以上であると判定した場合に、
前記圧力値の時間変化量が、正の値であるのか否かの判定を行うことを含む
電気医療デバイスシステムの制御方法。
【符号の説明】
【0107】
1…アブレーションカテーテル、11…シャフト、111a~111c…リング状電極、112…先端電極、12…操作部、121…ハンドル、122…回転板、2,2A…流体供給装置、21…流体供給部、22…圧力センサ、23…判定部、3,3A…電源装置、31…入力部、32…電源部、33…制御部、34…表示部、4…対極板、5,5A,5B…カテーテルシステム、6…制御装置、9…患者、Pout…電力、L…流体、Pr,Pr’…圧力値、Prth,Prth1,Prth2,Prth3…圧力閾値、ΔPr…圧力勾配(圧力値の時間変化量)、F…流体流量、Fmax,Frf,Fst…流量、CTL1,CTL2…制御信号、t…時間、t1~t4…タイミング、Δt…時間、Δtth…時間閾値、Nr…ノイズ。
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