(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電子機器の冷却装置および冷却方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240109BHJP
H05K 7/18 20060101ALI20240109BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20240109BHJP
G11B 33/02 20060101ALI20240109BHJP
G11B 33/14 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H05K7/18 K
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G11B33/02 301A
G11B33/14 501A
(21)【出願番号】P 2022103367
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】西山 毅
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-76716(JP,A)
【文献】特開2010-191660(JP,A)
【文献】国際公開第2020/218059(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 7/18
G06F 1/20
G11B 33/02
G11B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
六面体状をなし、六面体を構成する平面の少なくとも一部に空気の流通孔を有し、サーバラック内に重ねて設けられる筐体と、
該筐体の前記流通孔を覆って前記平面に着脱可能に取り付けられる塞ぎ板と、
前記平面の少なくとも一部と重なる平面内で回転することにより、該平面と交差する方向へ空気を流通させ、前記平面に着脱可能に取り付けられるファンと、
を備え、
前記塞ぎ板が取り付けられる平面と、
ファンが取り付けられる平面とが、前記筐体を流れる空気の流入方向および流出方向を規制する流通規制機構を構成
し、
前記塞ぎ板は、前記平面全体を単独で覆う第1の塞ぎ板と、前記平面に沿って複数枚並べることによって該平面全体を覆うことが可能な第2の塞ぎ板と、
を有する、
電子機器の冷却装置。
【請求項2】
前記ファンは、該ファンの回転中心軸方向視において、前記平面に沿って複数基並べることによって該平面全体を覆うことが可能な形状を有する、
請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項3】
前記流通規制機構は、前記ファンが設けられた一の平面を除く他の平面における前記塞ぎ板の取り付け範囲によって空気の流出方向を規制する、
請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項4】
前記平面の少なくとも一部と重なる平面形状を有する電源ユニットを備える、
請求項1
~3のいずれか1項に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項5】
六面体状をなし、六面体を構成する平面の少なくとも一部に空気の流通孔を有し、サーバラック内に重ねて設けられる筐体と、
該筐体の前記流通孔を覆って前記平面に着脱可能に取り付けられる塞ぎ板と、
前記平面の少なくとも一部と重なる平面内で回転することにより、該平面と交差する方向へ空気を流通させ、前記平面に着脱可能に取り付けられるファンと、
を
組み合わせることにより、前記六面体を構成する平面のうちできるだけ低温の空気を吸引することができる平面を吸い込み方向として、前記筐体への空気の吸い込み方向および排出方向を決定する工程と、
決定された吸い込み方向および排出方向と、前記筐体に収容される発熱部品の位置および発熱量とから、前記筐体内の温度を推定する工程と、
前記塞ぎ板およびファンの取り付け位置の組み合わせ毎に算出された筐体内の温度から、前記塞ぎ板およびファンの取り付け位置の組み合わせのいずれかを選択する工程と、
を有し、
前記塞ぎ板は、前記平面全体を単独で覆う第1の塞ぎ板と、前記平面に沿って複数枚並べることによって該平面全体を覆うことが可能な第2の塞ぎ板と、
を有する、
電子機器の冷却方法。
【請求項6】
異なる仕様の電子機器を識別する識別番号毎に当該電子機器の熱移動状態を特定するパラメータを記憶する工程と、
前記識別番号を入力することにより、該識別番号に紐付けられたパラメータを読み出す工程と、
をさらに有し、
前記パラメータは、前記電子機器の筐体を構成する六面体についての前記塞ぎ板、ファンの有無を含む、
請求項5に記載の電子機器の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の冷却装置および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ等の電子機器を上下に複数段にわたって積み重ねて格納したサーバラックにあっては、各電子機器に設けられたファンにより、サーバルーム内の空気を吸入し、機器内の発熱部品等から熱を吸収した後、サーバルームへ放出する冷却方式が採用される。この冷却方式にあっては、一般に、空調されたサーバルームのいわゆるコールドアイルへサーバラックの前面から低温の空気を吸い込み、サーバラックの背面側のホットアイルへ排出することにより、電子機器の筐体内に低温の空気を流通させて冷却している。
本発明に関連する特許文献1には、サーバラック内に重ねて格納された筐体がなす六面体を構成するいずれの平面を塞ぎ、いずれの平面を開放するかによって冷却空気の吸い込み方向と排出方向とを選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載されたサーバラックは、単に冷却空気の吸い込み方向と排出方向とを変更することができるに過ぎず、筐体に収容されたサーバ等の電子機器の発熱状況に応じて適切に冷却空気の流通経路を設定することができるものではない。
【0005】
この発明は、電子機器へ効率良く冷却空気を流通させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明にかかる電子機器の冷却装置は、六面体状をなし、該六面体を構成する平面の少なくとも一部に空気の流通孔を有し、サーバラック内に重ねて設けられる筐体と、該筐体の前記流通孔を覆って前記平面に着脱可能に取り付けられる塞ぎ板と、前記平面の少なくとも一部と重なる平面内で回転することにより、該平面と交差する方向へ空気を流通させ、前記平面に着脱可能に取り付けられるファンとを備え、前記塞ぎ板が取り付けられる平面と、ファンが取り付けられる平面とが、前記筐体を流れる空気の流入方向および流出方向を規制する流通規制機構を構成する。
【0007】
本発明にかかる電子機器の冷却方法は、六面体状をなし、該六面体を構成する平面の少なくとも一部に空気の流通孔を有し、サーバラック内に重ねて設けられる筐体と、該筐体の前記流通孔を覆って前記平面に着脱可能に取り付けられる塞ぎ板と、前記平面の少なくとも一部と重なる平面内で回転することにより、該平面と交差する方向へ空気を流通させ、前記平面に着脱可能に取り付けられるファンとを組み合わせて、前記筐体への空気の吸い込み方向および排出方向を決定する工程と、決定された吸い込み方向および排出方向と、前記筐体に収容される発熱部品の位置および発熱量とから、前記筐体内の温度を推定する工程と、前記塞ぎ板およびファンの取り付け位置の組み合わせ毎に算出された筐体内の温度から、前記塞ぎ板およびファンの取り付け位置の組み合わせのいずれかを選択する工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子機器に効率良く冷却空気を流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明にかかる冷却装置の最小構成例を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態にかかる冷却装置を構成する要素となる部品の構成を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態にかかる冷却装置の組立て状態における外観および分解状態における内部の斜視図である。
【
図5】冷却装置を備えたサーバラックの比較例の外観を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態にかかる冷却装置の組み立て状態における外観および分解状態における内部の斜視図である。
【
図8】第3実施形態にかかる冷却装置の組み立て状態における外観よび分解状態における内部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る構成について
図1を参照して説明する。
この冷却装置の筐体1は、六面体状をなし、該六面体を構成する平面2の少なくとも一部に空気の流通孔3を有し、サーバラック内に重ねて設けられる。該筐体1の前記流通孔3を覆って前記平面に着脱可能に取り付けられる塞ぎ板4と、前記平面2の少なくとも一部と重なる平面内で回転することにより、該平面と交差する方向へ空気を流通させ、前記平面2に着脱可能に取り付けられるファン5とを備える。前記塞ぎ板4が取り付けられる平面2と、ファン5が取り付けられる平面2とが、前記筐体1を流れる空気の流入方向および流出方向を規制する流通規制機構を構成する。
【0011】
上記構成の冷却装置によれば、前記筐体1に塞ぎ板4およびまたはファン5を取り付けて流通孔3を塞ぐことにより、六面体状をなす筐体1の平面2のうち、任意の面を塞ぐことによって、任意の平面2に設けたファン5から筐体1内に取り込んだ空気を塞ぎ板4のない任意の平面2の流通孔3から流出させることができる。したがって、筐体1の設置条件、例えば、六つの平面のいずれが開口し、いずれが他のサーバラック等によって塞がれているか、に応じて、遮蔽物のない方向から筐体1内に空気を流入させ、また、電子部品等から発生した熱を吸収した空気を遮蔽物のない方向へ流出させることができ、電子機器をその設置条件に応じて効率的に冷却することができる。
【0012】
また、本発明にかかる電子機器の冷却方法の最小構成は、六面体状をなし、該六面体を構成する平面2の少なくとも一部に空気の流通孔3を有し、サーバラック内に重ねて設けられる筐体1と、該筐体1の前記流通孔3を覆って前記平面2に着脱可能に取り付けられる塞ぎ板4と、前記平面2の少なくとも一部と重なる平面内で回転することにより、該平面2と交差する方向へ空気を流通させ、前記平面2に着脱可能に取り付けられるファン5と、を組み合わせて、前記筐体1への空気の吸い込み方向および排出方向を決定する工程と、決定された吸い込み方向および排出方向と、前記筐体1に収容される発熱部品の位置および発熱量とから、前記筐体1内の温度を推定する工程と、前記塞ぎ板4およびファン5の取り付け位置の組み合わせ毎に算出された筐体1内の温度から、前記塞ぎ板4およびファン5の取り付け位置の組み合わせのいずれかを選択する工程とを有する。
【0013】
上記構成によれば、前記筐体1を構成する六つの平面2へ塞ぎ板4、ファン5を様々な態様で取り付けてその取り付け状態における吸い込み空気、排出空気の温度を推定し、効率良く筐体1の内部を冷却することができる態様を選択して、筐体1内の電子機器を効率良く冷却することができる。
【0014】
図1を具体化した本発明の第1実施形態に係る構成について
図2~4を参照して説明する。
図2(a)は回路基板、電子部品等を格納して電子機器を構成する筐体10、(b)はファン50、(c)は塞ぎ板40、(d)は塞ぎ板41、(e)は電源ユニット60の外観をそれぞれ示している。第1実施形態にあっては、1基の筐体10に対して、塞ぎ板40を3枚、塞ぎ板41を2枚、ファン50を5基、電源ユニット60を1基準備し、塞ぎ板40、41、ファン50を必要に応じた数だけ筐体10に取り付けるものとする。
前記筐体10は、前面21およびこれと平行な背面21’、上面22およびこれと平行な下面22’、側面23およびこれを平行な側面23’をなす金属板等により構成された長方体状をなす。
前記筐体10は、六面体の各面に相当する板材を互いに組み合わせることによって、あるいは、六面体の各辺に相当する枠体に板材を張りつけることによって構成されている。なお筐体10の開放すべき平面については、必ずしも、図示例のような流通孔を備えた板材により構成することが必須ではなく、閉塞すべき面にのみ塞ぎ板40、41を設け、開放すべき平面、あるいは、ファン50を設けるべき平面が枠材により囲まれた構成を採用しても良い。
前記上面22と背面21’との間の稜線の長さはL1、前記上面22と側面23’との間の稜線の長さはL2、前記前面21と側面23との間の稜線の長さはL3に設定されている。
前記前面21およびこれと平行な背面21’、上面22およびこれと平行な下面22’、側面23およびこれを平行な側面23’は、それぞれ、複数の流通孔3を有し、これらの流通孔3を介して外気が流入、流出することができる。
なお前記筐体10を構成する各平面は、筐体10に取り付けられるコネクタ、ディスクドライブ等へのアクセスを目的として、前記流通孔3以外にも、必要に応じて開口を有する。
【0015】
前記塞ぎ板40は、長さL5の短辺、長さL6の長辺を有する長方形の板状をなす。前記短辺の長さL5は、前記前面21の幅L3と略一致し、また、長辺の長さL6は、前記上面22の長さL1またはL2と略一致するよう設定されている。
前記塞ぎ板41は、辺の長さL7×L8の長方形もしくは正方形の板状をなし、前記L7は前記上面の長さL1と一致し、前記L8は前記上面の長さL2と一致するよう設定されている。
また前記幅L3は、L1,L2に対して、
L3=L1/m=L2/n (m、nは自然数)に設定されている。
すなわち、塞ぎ板40は、前面21、背面21’または側面23、23’と一致する形状に設定されることにより、前面21、背面21’、または、側面23、23’を覆うことができ、また、単独で上面22、下面22’の一部を覆い、mまたはn枚並べることによって前記上面22、下面22’の全部を覆う外形形状を有する。
なお前記塞ぎ板40、41の寸法は、前記L6、L7、L8に限られるものではなく、これらL6、L7、L8の1/n (nは自然数)の寸法に設定して、複数枚並べることにより、筐体10、10A等の六面体を構成する平面の一部を覆うことができれば足りるものである。
【0016】
前記ファン50は、ファン本体51をダクト52に収容した構成を有する。前記ダクト52は、軸方向視において、一辺の長さL4の正方形状をなし、この長さL4は、前記前面21の幅L3と略一致する。また長さL4は、前記前面22の長さL1、側面23の長さL2に対して、L4=L1/m=L2/n (m、nは自然数)に設定されている。すなわちファン50は、単独で前記前面21,上面22、側面23の一部を覆い、一列に複数基並べることによって前記前面21、側面23の全体を覆うことができる外形を有する。
なお、前記塞ぎ板40、41、ファン50は、ボルトナット等の固着部品、凹凸嵌合、溝へのスライド挿入等の公知の構成によって筐体10へ着脱可能に取り付けることができるものとする。
【0017】
前記電源ユニット60は、前記筐体10内に格納された電子機器、前記ファン50等に電源を供給するもので、筐体61に収容された電源回路と、該電源回路に交流を供給する交流ケーブル62と、該電源回路で整流された直流を筐体10内の電子機器やファン50へ供給する直流ケーブル63とを備える。前記筐体61は、前記筐体10の高さL3と略等しい高さを有し、前記筐体10の長さL1,L2より小さい長さを有する。また前記筐体61は、前記電源回路で発生した熱の放熱を促進すべく流通孔を有する構成を有するが、前記塞ぎ板40、41に代わって筐体10の一の面を塞ぐ趣旨で、流通孔のない構成としても良い。
【0018】
前記筐体10は、例えば、
図3に示すように、塞ぎ板40によって六面体の所定の面を覆った状態で使用される。
図3(a)(b)に示すように、筐体10は、塞ぎ板40によって背面21’と左右の側面23とを塞ぎ、塞ぎ板41によって下面22’を塞いだ状態で使用される。また筐体10の前面21の内側には、
図3(b)に示すように、前記ファン50が横方向に並べて5基配置されている。また筐体10の側面23の内側には、筐体10内の電子機器や前記ファン50へ電源を供給する電源ユニット60が配置されている。
このように塞ぎ板40、41によって所定の面を塞ぐことにより、
図3(a)に矢印Aで示すように、筐体10の前面21から吸い込んだ空気を上面22へ案内することができる。
【0019】
前記筐体10は、例えば、
図4に示すように、枠状のサーバラック70に水平に支持された図示しないレール等によって水平方向へ引き出し可能に支持されている。
図4(a)(b)に示す例にあっては、
図3に示す筐体10は最上段に配置されている。
また筐体10の下には、6基の筐体10Aが配置されており、これらの筐体10Aは、前記筐体10と異なる塞ぎ板の配置とされている。
すなわち筐体10Aは、上下に重ねて配置され、かつ最上部が前記筐体10で塞がれていることから、前面21と背面21’とを開放し、他の面を塞ぎ板40によって覆って構成されている。また前面21の内側には、筐体10と同様、5基の前記ファン50が配置されていて、前面21から吸い込んだ空気を背面21’から排気する構成となっている。
【0020】
上記のように構成された第1実施形態の作用、効果の前提となる比較例にかかる電子機器の冷却装置について、
図5を参照して説明する。
比較例の装置は、サーバラック70内に、複数の筐体10Aを重ねて収容した構成を有する。前記筐体10Aは全体として六面体状をなし、前面21と背面21’とが開口し、他の面(上面、下面、左右の側面)が開口のない板材により構成されていて、前面21から
図5の矢印A方向へ吸い込んだ空気によって筐体10A内の電子部品等の熱を吸収して背面21’から矢印A’方向へ排出することにより、電子機器等を冷却する。また前記各筐体10A内の電子機器等の熱は、矢印D方向へ上昇して自然放熱する。
一方、サーバルーム等におけるサーバラック70の設置条件は多様であり、例えば、背面21’が壁や他のサーバラック等に接近している場合には、前記筐体10Aの背面21’から放出された空気が、矢印A’に示すように、前方へ廻り込み、前面21から高温の空気が再度矢印A方向へ筐体10Aに吸い込まれて、各筐体10A内の冷却が不充分になることがあり得る。
【0021】
第1実施形態にあっては、六面体状をなす筐体10,10Aの前面21、背面21’、上面22、下面22’、側面23、23’のうち、冷却空気の排出方向に障害物等が存在する面を閉じ、存在しない面を開放するように塞ぎ板40、41を取り付けることができる。したがって、排気の回り込み等が生じ易い面を塞ぎ板40、41によって閉じ、できるだけ低温の冷却空気を吸い込むことができる面にファン50を設け、障害物等がない面に塞ぎ板40、41を取り付けないことにより、筐体10、10A内にできる低温の空気を吸い込んで効率良く電子機器を冷却することができる。
【0022】
図4(a)の例では、
図3(a)(b)に示すように、最上部の筐体10の前面21の内側にファン50を設けて空気を吸い込み、上面22から排出するとともに、2段目より下の筐体10Aでは、前面21から吸引した空気を背面21’から排出することができる。なお各筐体10、10Aの間、例えば、最上段の筐体10の下面と二段目の筐体10Aの上面との間では、いずれか一方のみを塞ぎ板41によって覆うことにより、上下方向への空気の流通を止めて所定方向へ気流を確立することができる。すなわち、上下に重なる筐体10、10Aの間では、いずれか一の筐体の下面を構成する板材と、その下に位置する筐体の上面を構成する板材とのいずれを省略することができる。
【0023】
また
図4(b)の例では、最上段の筐体10の上面を塞ぎ板41で塞ぎ、また、その上の筐体10’の前面21を閉じ、側面23、23’を開放するように塞ぎ板40を取り付けることにより、最上段の筐体10から図中Aで示すように自然対流によって上昇する熱の矢印C方向への吸い込みを避けて、筐体10より小型の筐体10’への高温の空気の吸い込みを抑制し、側面23、23’から、背面21’側の排気の影響が少ない側面側の空気を矢印C’方向へ吸い込むことができる。
前記筐体10’は、例えばネットワークスイッチのような小型の筐体であって、サーバラック70の幅方向への寸法が筐体10と一致するものの、奥行き方向への寸法が小さいため、前面21がサーバラック70内に開口することとなって、最上段の筐体10から矢印A方向へ発生する自然対流による放熱を矢印C方向へ吸い込む懸念がある。
図4(b)の例にあっては、筐体10’の前面21を塞ぎ板41により閉塞し、側面23を開放することによって、サーバラック70により囲まれた領域の外から冷却空気を吸い込むことができる。なお、図示されたサーバラック70の設置条件、例えば、隣接して他のサーバラックが近接して配置され、かつ最上段の筐体10の上面からの矢印A方向への放熱が少ない場合には、側面23を塞ぎ、前面21から冷却空気を吸い込むようにしても良い。
【0024】
以上説明したように、第1実施形態にあっては、
図5の比較例に示すように、全ての筐体10Aで前面から吸い込んだ冷却空気を背面から排出し、また、最上段の筐体10Aから自然対流によって矢印D方向への放熱が生じる気流の条件において、同図矢印A’に示すように背面側へ放出された高温の冷却空気が前面側へ廻り込んで再度筐体10Aへ吸い込まれることによる冷却能力の低下を
防止することができる。
【0025】
図6、7を参照して、第2実施形態を説明する。
この第2実施形態は、筐体10Bの上面22と下面22’とを開口させ、前面21、背面21’、側面23、23’を塞ぎ板40によって閉塞した構成を有する。前記上面22の外側(または筐体10Bの内面となる内側)には、ファン50が取り付けられていて、
図6(a)に矢印Aで示すように、下面22’から吸い込んだ冷却空気を上面22から排出することにより、筐体10Bの内部を冷却している。
【0026】
第2実施形態に示すように、下面22’から上面22へ冷却空気を流通させる冷却は、例えば、サーバルームの天井に排気設備を備える設置条件に好適に採用されて、サーバとしての筐体10Bで発生した熱を自然対流に逆らうことなく、上方へ排出して、天井の排気設備に吸い込ませ、効率的にサーバルームを冷却することができる。
【0027】
図8、9を参照して、第3実施形態を説明する。
この第3実施形態は、筐体10Cの下面22’と一方の側面23’とを開口させ、前面21、背面21’、上面22、他の側面23、を塞ぎ板40閉塞した構成を有する。前記側面23’の内側には、ファン50が取り付けられていて、
図8(a)に矢印Eで示すように、下面22’から吸い込んだ冷却空気を側面23’から排出することにより、筐体10Cの内部を冷却している。
【0028】
第3実施形態にあっては、下面22’から一方の側面23’へ冷却空気を流通させる冷却により、例えば、複数基のサーバラック70が密集して複数並べられた配置の場合(前面21、背面21’、側面23の近くに他のサーバラックが存在する場合)に、下に配置された筐体10Cからの熱の上の筐体10Cへの影響を抑制すべく側方へ排出して、効率的に冷却することができる。
また、塞ぎ板40、41によって塞ぐ平面を変更することが可能であるから、サーバラック70の増設、配置変え等に応じて冷却空気の排気方向を適切な方向へ変更することができる。
【0029】
図10を参照して、第4実施形態を説明する。
この第4実施形態は、サーバラック70内に筐体10Aを複数段にわたって格納し、最上部に、奥行き方向の寸法が小さい筐体10’を前後に並べて2基配置した構成を有する。
ここで、前側の筐体10’は、前面21と一の側面23’とを開口させ、後側の筐体10’は、一の側面23と他の側面23’を開口させ、他の面は塞ぎ板40または41によって閉塞した構成を有する。
【0030】
この第4実施形態にあっては、前後に並べて同一の高さに配置された二つの筐体10’のうち、前側では前面21から吸い込んだ冷却空気を矢印E方向へ一の側面23’から排出し、後側では、一の側面23から吸い込んだ冷却空気を矢印F方向へ他の側面23’から矢印G方向へ排出することができる。したがって、二つの筐体10’が同一高さに配置されているにもかかわらず、一の筐体10’内に吸い込まれて内部の発熱部品の熱を吸収して温度上昇した空気が他の筐体10’に吸い込まれて該他の筐体10’の冷却能力の低下を招く現象を防止することができる。
【0031】
図11を参照して、第5実施形態を説明する。
この第5実施形態は、サーバラック70内に筐体10Cを複数段にわたって格納し、それぞれ、矢印Eで示すように、下面22’から吸い込んだ冷却空気を一の側面23’から排出するよう塞ぎ板を設けた構成を有する。
また一の筐体10Cと他の筐体10Cとは、それぞれ温度センサ(図示略)を備え、内部の温度を測定することができるとともに、通信ライン71により接続されて、それぞれの内部のファン(図示略)の回転を制御し、以て送風量を調整することができるよう構成されている。
【0032】
例えば、上側の筐体10Cの温度が上昇した場合、自身の温度と下側の筐体10Cの温度とを比較し、両方の筐体10Cの温度が上昇している場合には、両方の筐体10C内のファンの回転数を上昇させて冷却能力を高め、自身の温度のみが上昇している場合には、自身のファンの回転数のみを上昇させるよう、上下の筐体10Cのファンの冷却能力を制御することにより、効率的な冷却を行うことができる。
【0033】
図12は、本発明の第6実施形態にかかる冷却方法の各工程を示すものである。
この冷却方法は、冷却条件を特定するためのパラメータを入力する工程SP1と、入力されたパタメータに基づいて熱移動状況をシミュレーションする工程SP2と、シミュレーション結果から、最良のパラメータを選択し、選択したパラメータを実現することができる冷却装置の構成、具体的には、筐体のいずれの面を開口し、閉塞し、ファンを配置するかを決定する工程SP3とを有する。
【0034】
上記工程SP1にあっては、各搭載装置(例えば、筐体内に回路基板、電子部品を実装したサーバ)の型番(機種の種別、あるいはシリアル番号等、当該機器を他の機器と区別して識別することができる番号をいう)に紐付けて、その冷却仕様である、吸気位置、排気位置、電子部品等の発熱量、電子部品等の動作可能温度に関するパラメータをデータベースに記憶しておき、当該型番を選択キーとして、その機器についての熱移動シミュレーションに必要なパラメータを選択する。また、例えば、当該型番の機種の、筐体10を構成する6つの平面の各々について、塞ぎ板40、ファン50を設けるか否かの条件、すなわち、いずれの面を冷却空気の吸い込みのための開口とし、いずれの面を排出のための開口とするか等のパラメータを設定する。
また、各搭載装置のサーバラックへの取り付け位置(何段目か)を設定し、サーバラックの設置条件である、サーバルームの空気調和装置の冷却容量、吸排気条件、一のサーバラックの周囲の壁、天井、他のサーバラックの配置等の設置条件(例えば、ある面が壁や他の機器等の遮蔽物により覆われているか否か)を設定する。
上記工程SP2にあっては、上記工程SP1において設定されたパラメータを変更しながら様々な吸気位置、排気位置、電子部品の位置、発熱量、吸排気方向、吸排気流量等の組み合わせについて熱移動状況をシミュレーションし、目的とする熱移動状況となるパラメータを有する型番の機器を決定する。なお、目的とする熱移動状況とは、吸い込まれる冷却空気の温度、筐体10内の電子部品等の温度(当該電子部品等の使用可能温度範囲)が目標とする温度範囲にあるか否か等の指標に基づいて判断されるものである。
上記工程SP3にあっては、SP2において選択された吸排気状況を実現することができる、筐体10への塞ぎ板40、41、およびファン50の取り付け状態(いずれの平面を開放し、閉塞し、いずれの平面にファンを設けるかの組み合わせ)となる機器を選択する。
なお上記熱移動状況の評価に際し、同一の熱移動状況(筐体内の所定個所の温度条件)を実現することができる場合には、できるだけファンの台数、あるいは回転数(消費電力)を小さくすることができる組み合わせを選択することが望ましい。
【0035】
なお熱移動状況のシミュレーションに代え、筐体内における空気の流通状況に基づき、以下の手順により筐体内の温度を推定して塞ぎ板との取り付けを評価しても良い。
前記筐体10内を流れる空気の流量は、ファン50の送風量、送風圧力、流入口の開口面積、流出口の開口面積、流入口から流出口に到る流路の横断面積、横断面形状および横断面の面積、形状の変化の態様、曲がり個所の数等のパラメータによって特定されることから、前記筐体10を構成する各平面21、22、23への塞ぎ板4、41の取り付けの有無(塞いだ範囲)を特定することにより、冷却空気の流入個所から流出個所までの流路の長さ、流路の断面積(およびその形状)、流路の曲がりの有無、等の要因から流路抵抗を算出することができる。この流路抵抗に基づき筐体内の冷却空気の流量を算出し、様々な塞ぎ板、ファンの配置についての組み合わせにおける流量に基づく温度の算出結果から、最も流路抵抗の小さい流入口、流出口を選択し、選択された流入口、流出口を実現すべく塞ぎ板、ファンの位置を決定しても良い。
【0036】
前記筐体を構成する六面体の各面の形状、流通孔の数、大きさ、あるいは、ファン、サーバラックの構成が実施形態に限定されるものでないのはもちろんである。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、電子機器の冷却装置および冷却方法に関する。
【符号の説明】
【0039】
1 筐体
2 平面
3 流通孔
4 塞ぎ板
5 ファン
10、10A、10B、10C 筐体
21 前面(平面)
21’ 背面(平面)
22 上面(平面)
22’ 下面(平面)
23、23’ 側面(平面)
50 ファン
51 ファン本体
52 ダクト
40 塞ぎ板
41 塞ぎ板
60 電源ユニット
61 筐体
62 交流ケーブル
63 直流ケーブル
70 サーバラック
71 通信ライン
【要約】
【課題】本発明は、サーバ等の筐体に冷却空気を効率的に供給する技術に関する。
【解決手段】冷却装置の筐体1は、六面体状をなし、該六面体を構成する平面2の少なくとも一部に空気の流通孔3を有し、サーバラック内に重ねて設けられる。該筐体1の前記流通孔3を覆って前記平面に着脱可能に取り付けられる塞ぎ板4と、前記平面2の少なくとも一部と重なる平面内で回転することにより、該平面と交差する方向へ空気を流通させ、前記平面2に着脱可能に取り付けられるファン5とを備える。
【選択図】
図1