(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】アンモニアを用いた高純度水素の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20240109BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
(21)【出願番号】P 2022176173
(22)【出願日】2022-11-02
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0112877
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512278205
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ エナジー リサーチ
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF ENERGY RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ウン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ク、ギ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン ハ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-075841(JP,A)
【文献】特開2020-040860(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099143(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2020-0049995(KR,A)
【文献】国際公開第2017/084876(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア分解反応を通じてアンモニアを分解し、前記アンモニア分解反応から生成された水素、窒素及び未反応アンモニアを含む反応生成物を排出する分解反応部と、
第1のアンモニア供給部から供給されたアンモニアを燃焼させて、前記分解反応部を加熱する燃焼部と、
第2のアンモニア供給部から供給された液状アンモニアを気化させる気化器と、前記気化器から中間連結ラインを介して供給されたアンモニアを予熱(preheating)する予熱器と、を有する気化予熱部と、
前記中間連結ラインに水素を供給する水素供給部と、
前記反応生成物から高純度水素を分離・精製する吸着精製部と、を備える
ことを特徴とするアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項2】
前記水素供給部は、前記分解反応部の後端と、前記吸着精製部の前端もしくは後端と、分離・精製された高純度水素が貯留された水素貯留部と、のうちのいずれか一つに配置される内部供給部、及び前記反応生成物、前記アンモニア及び前記高純度水素が通過する連結ラインの外部に配置された外部供給部のうちの少なくとも一方を備える
請求項1に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項3】
前記内部供給部は、
前記分解反応部から排出された反応生成物の一部を前記中間連結ラインに供給する第1の供給部と、前記吸着精製部に供給される反応生成物の一部を前記中間連結ラインに供給する第2の供給部と、前記吸着精製部において分離・精製されて排出される高純度水素の一部を前記中間連結ラインに供給する第3の供給部と、前記水素貯留部に貯留された高純度水素の一部を前記中間連結ラインに供給する第4の供給部と、のうちの少なくとも一つを備える
請求項2に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項4】
前記水素供給部は、前記中間連結ラインとは異なる位置に配置された水素流入地点に水素を供給する
請求項1に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項5】
前記水素流入地点は、互いに異なる複数に配備され、
前記水素供給部は、複数の前記水素流入地点のうちの少なくとも一つに水素を供給する
請求項4に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項6】
前記水素流入地点は、
前記第2のアンモニア供給部と前記気化器とをつなぐ第1の供給ラインと連結される第1の流入地点と、前記予熱器と前記分解反応部とをつなぐ第2の供給ラインと連結される第2の流入地点と、のうちの少なくとも一方を備える
請求項5に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項7】
気化器が、第2のアンモニア供給部から供給された液状アンモニアを気化させて気相アンモニアを生成するステップと、
水素供給部が、前記気化器と予熱器とをつなぐ中間連結ラインに水素を供給するステップと、
前記予熱器が、前記気相アンモニアを予熱して分解反応部に供給するステップと、
燃焼部が、第1のアンモニア供給部から供給されたアンモニアを燃焼させて、前記分解反応部を加熱するステップと、
前記分解反応部が、アンモニア分解反応を通じてアンモニアを分解して水素、窒素及び未反応アンモニアを含む反応生成物を排出するステップと、
吸着精製部が、前記反応生成物から窒素及び未反応アンモニアを吸着して取り除いて、高純度水素を分離・精製するステップと、を含む
ことを特徴とするアンモニアを用いた高純度水素の製造方法。
【請求項8】
内部供給部が、前記中間連結ラインに反応生成物または水素を供給するステップをさらに含む
請求項7に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造方法。
【請求項9】
前記内部供給部は、
前記分解反応部から排出された反応生成物の一部を前記中間連結ラインに供給する第1の供給部と、前記吸着精製部に供給される反応生成物の一部を前記中間連結ラインに供給する第2の供給部と、前記吸着精製部において分離・精製された高純度水素の一部を前記中間連結ラインに供給する第3の供給部と、水素貯留部に貯留された高純度水素の一部を前記中間連結ラインに供給する第4の供給部と、のうちの少なくとも一つを備える
請求項8に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造方法。
【請求項10】
前記水素供給部が、前記中間連結ラインとは異なる位置に配置された水素流入地点に水素を供給するステップをさらに含む
請求項7に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造方法。
【請求項11】
前記水素流入地点は、
前記第2のアンモニア供給部と前記気化器とをつなぐ第1の供給ラインと連結される第1の流入地点と、前記予熱器と前記分解反応部とをつなぐ第2の供給ラインと連結される第2の流入地点と、のうちの少なくともどちらか一方を備える
請求項10に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造方法。
【請求項12】
アンモニア分解反応を通じてアンモニアを分解し、前記アンモニア分解反応から生成された水素、窒素及び未反応アンモニアを含む反応生成物を排出する分解反応部と、
第1のアンモニア供給部から供給されたアンモニアを燃焼させて、前記分解反応部を加熱する燃焼部と、
第2のアンモニア供給部から供給された液状アンモニアを気化させる気化器と、前記気化器から中間連結ラインを介して供給されたアンモニアを予熱(preheating)する予熱器と、を有する気化予熱部と、
予熱されたアンモニアの一部を触媒反応を通じて分解して、水素を産生する触媒反応部と、
前記反応生成物から高純度水素を分離・精製する吸着精製部と、を備える
ことを特徴とするアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項13】
前記触媒反応部において産生された水素は、前記分解反応部に供給される
請求項12に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項14】
前記触媒反応は、前記予熱器により加熱されたアンモニアに含まれている熱エネルギーを用いて行われる
請求項12に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【請求項15】
前記触媒反応は、電気加熱方式を用いて行われる
請求項12に記載のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置及び方法に係り、さらに詳しくは、アンモニアを用いて高純度水素を製造するための製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア分解反応は、2つのアンモニア分子が1つの窒素分子及び3つの水素分子に分解される反応(NH3→N2+3H2)であり、吸熱反応であって、約46kJ/molの熱量を必要とする。このようなアンモニア分解反応を通じた水素の製造方式が、通常のガス関係の産業分野または半導体及びLCD工場において所要の高純度水素を製造するために広く用いられている。
【0003】
一般に、アンモニア分解反応を通じて水素を製造するに際して、常温のアンモニアが熱交換を通じて高温に予熱された後に分解反応器に供給されるが、このようにして加熱されたアンモニアは、窒化反応を通じて金属製の配管及び分解反応器を腐食させ、その結果、製造装置の寿命が短くなってしまうという不都合が存在する。さらに、予熱器と、予熱器の後端から分解反応器までをつなぐ配管及び分解反応器が高温のアンモニアに晒され続けることにより、窒化が行われる場合に深刻な腐食の問題が生じてしまう虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、アンモニア分解反応を用いた水素の産生工程において、高温のアンモニアにより、予熱器及び予熱器と分解反応器とをつなぐ配管における腐食の発生を防ぐだけではなく、このような配管を介して高温のアンモニアが流れ込む分解反応器において起こる腐食の問題(すなわち、分解反応器を構成する金属製の反応器本体、分解反応器内の充填物及び触媒などの腐食)を解決することのできる、アンモニアを用いた高純度水素の製造装置及び製造方法を提供することである。
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上述した技術的課題に何ら制限されるものではなく、未言及の他の技術的課題は、次の記載から本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって明らかに理解できる筈である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を達成するために、本発明の一実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置は、アンモニア分解反応を通じてアンモニアを分解し、前記アンモニア分解反応から生成された水素、窒素及び未反応アンモニアを含む反応生成物を排出する分解反応部と、第1のアンモニア供給部から供給されたアンモニアを燃焼させて、前記分解反応部を加熱する燃焼部と、第2のアンモニア供給部から供給された液状アンモニアを気化させる気化器と、前記気化器から中間連結ラインを介して供給されたアンモニアを予熱(preheating)する予熱器と、を有する気化予熱部と、前記中間連結ラインに水素を供給する水素供給部と、前記反応生成物から高純度水素を分離・精製する吸着精製部と、を備えていてもよい。
【0007】
本発明の実施形態において、前記水素供給部は、前記分解反応部の後端と、前記吸着精製部の前端もしくは後端と、分離・精製された高純度水素が貯留された水素貯留部と、のうちのいずれか一つに配置される内部供給部、及び前記反応生成物、前記アンモニア及び前記高純度水素が通過する連結ラインの外部に配置された外部供給部のうちの少なくとも一方を備えていてもよい。
【0008】
本発明の実施形態において、前記内部供給部は、前記分解反応部から排出された反応生成物の一部を前記中間連結ラインに供給する第1の供給部と、前記吸着精製部に供給される反応生成物の一部を前記中間連結ラインに供給する第2の供給部と、前記吸着精製部において分離・精製されて排出される高純度水素の一部を前記中間連結ラインに供給する第3の供給部と、前記水素貯留部に貯留された高純度水素の一部を前記中間連結ラインに供給する第4の供給部と、のうちの少なくとも一つを備えていてもよい。
【0009】
本発明の実施形態において、前記水素供給部は、前記中間連結ラインとは異なる位置に配置された水素流入地点に水素を供給してもよい。
【0010】
本発明の実施形態において、前記水素流入地点は、互いに異なる複数に配備され、前記水素供給部は、複数の前記水素流入地点のうちの少なくとも一つに水素を供給してもよい。
【0011】
本発明の実施形態において、前記水素流入地点は、前記第2のアンモニア供給部と前記気化器とをつなぐ第1の供給ラインと連結される第1の流入地点と、前記予熱器と前記分解反応部とをつなぐ第2の供給ラインと連結される第2の流入地点と、のうちの少なくとも一方を備えていてもよい。
【0012】
上記の技術的課題を達成するために、本発明の一実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造方法は、気化器が、第2のアンモニア供給部から供給された液状アンモニアを気化させて気相アンモニアを生成するステップと、水素供給部が、前記気化器と予熱器とをつなぐ中間連結ラインに水素を供給するステップと、前記予熱器が、前記気相アンモニアを予熱して分解反応部に供給するステップと、燃焼部が、第1のアンモニア供給部から供給されたアンモニアを燃焼させて、前記分解反応部を加熱するステップと、前記分解反応部が、アンモニア分解反応を通じてアンモニアを分解して水素、窒素及び未反応アンモニアを含む反応生成物を排出するステップと、吸着精製部が、前記反応生成物から窒素及び未反応アンモニアを吸着して取り除いて、高純度水素を分離・精製するステップと、を含んでいてもよい。
【0013】
本発明の実施形態において、内部供給部が、前記中間連結ラインに反応生成物または水素を供給するステップをさらに含んでいてもよい。
【0014】
本発明の実施形態において、前記内部供給部は、前記分解反応部から排出された反応生成物の一部を前記中間連結ラインに供給する第1の供給部と、前記吸着精製部に供給される反応生成物の一部を前記中間連結ラインに供給する第2の供給部と、前記吸着精製部において分離・精製された高純度水素の一部を前記中間連結ラインに供給する第3の供給部と、水素貯留部に貯留された高純度水素の一部を前記中間連結ラインに供給する第4の供給部と、のうちの少なくとも一つを備えていてもよい。
【0015】
本発明の実施形態において、前記水素供給部が、前記中間連結ラインとは異なる位置に配置された水素流入地点に水素を供給するステップをさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明の実施形態において、前記水素流入地点は、前記第2のアンモニア供給部と前記気化器とをつなぐ第1の供給ラインと連結される第1の流入地点と、前記予熱器と前記分解反応部とをつなぐ第2の供給ラインと連結される第2の流入地点と、のうちの少なくともどちらか一方を備えていてもよい。
【0017】
上記の技術的課題を達成するために、本発明の別の実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置は、アンモニア分解反応を通じてアンモニアを分解し、前記アンモニア分解反応から生成された水素、窒素及び未反応アンモニアを含む反応生成物を排出する分解反応部と、第1のアンモニア供給部から供給されたアンモニアを燃焼させて、前記分解反応部を加熱する燃焼部と、第2のアンモニア供給部から供給された液状アンモニアを気化させる気化器及び前記気化器から中間連結ラインを介して供給されたアンモニアを予熱(preheating)する予熱器を有する気化予熱部と、予熱されたアンモニアの一部を触媒反応を通じて分解して、水素を産生する触媒反応部と、前記反応生成物から高純度水素を分離・精製する吸着精製部と、を備えていてもよい。
【0018】
本発明の実施形態において、前記触媒反応部において産生された水素と窒素は、未反応アンモニアとともに前記分解反応部に供給されてもよい。
【0019】
本発明の実施形態において、前記触媒反応は、前記予熱器により加熱されたアンモニアに含まれている熱エネルギーを用いて行われてもよい。
【0020】
本発明の実施形態において、前記触媒反応は、前記触媒反応は、電気加熱方式を用いて行われてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に実施形態に係る高純度水素の製造装置及び製造方法は、分解反応部の後端、吸着精製部の前端もしくは後端、及び水素貯留部から気化器と予熱器との間へと水素をさらに供給することにより、高温の気相アンモニアによる、予熱器、分解反応部及び予熱器の後端と分解反応部とをつなぐ配管における腐食の発生を抑えることができる。なお、気化器と予熱器との間の他に、水素流入地点に水素をさらに供給することにより、高温の気相アンモニアによる、分解反応部の腐食を防ぐことができる。
【0022】
また、本発明の実施形態に係る高純度水素の製造装置及び製造方法は、分解反応部に供給される前に、予熱済みの気相アンモニアの一部を触媒分解して水素を産生し、これを気相アンモニアとともに分解反応部に供給することにより、高温の気相アンモニアによる分解反応部の腐食を防ぐことができる。
【0023】
本発明の効果は、上記の効果に何ら限定されることはなく、本発明の詳細な説明の欄または特許請求の範囲に記載の発明の構成から推論可能なあらゆる効果を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を示すブロック図である。
【
図2】本発明の別の実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を示すブロック図である。
【
図3】本発明のさらに別の実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を示すブロック図である。
【
図4】
図1から
図3のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を用いて高純度水素を製造する手順を示すブロック図である。
【
図5】中間連結ラインに水素が供給されない場合において、高温のアンモニアによる分解反応部における腐食発生の前後の状態を示す図である。
【
図6】中間連結ラインに水素が供給される場合において、高温のアンモニアによる分解反応部における腐食発生の前後の状態を示す図である。
【
図7】本発明のさらに別の実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を示すブロック図である。
【
図8】
図7のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置により高純度水素を製造する手順を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、添付図面に基づいて、本発明を詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、したがって、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。なお、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、明細書の全般に亘って、類似の部分には類似の図面符号を付している。
【0026】
明細書の全般に亘って、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されているとしたとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、これらの間に他の部材を挟んで「間接的に連結」されている場合も含む。なお、ある部分がある構成要素を「備える」としたとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するわけではなく、他の構成要素をさらに備えていてもよいということを意味する。
【0027】
本明細書において用いた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。本明細書において、「備える」または「有する」などの用語は、明細書に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものに過ぎず、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しない。
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を示すブロック図である。
図2は、本発明の別の実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を示すブロック図である。
図3は、本発明のさらに別の実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を示すブロック図である。
【0030】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置(以下、高純度水素の製造装置と称する。)10は、アンモニア(NH
3)をアンモニア分解反応を通じて分解した後、この分解反応から生成された分解反応生成物から窒素(N
2)及び未反応アンモニア(NH
3)を取り除いて高純度水素(H
2)を製造するための装置であってもよい。
【0031】
高純度水素の製造装置10は、燃焼部100と、第1のアンモニア供給部P10と、気化予熱部200と、第2のアンモニア供給部P20と、分解反応部300と、吸着精製部400と、水素供給部500と、を備えていてもよい。なお、高純度水素の製造装置10は、水素貯留部S10をさらに備えていてもよい。
【0032】
水素貯留部S10には、後述する吸着精製部400において分離・精製された高純度水素が貯留されてもよい。このとき、水素貯留部S10は、高純度水素の製造装置10に組み込まれる構成要素として記載されているが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、水素貯留部S10は、高純度水素の製造装置10の外部に配置される別途の水素貯留インフラであってもよい。
【0033】
燃焼部100は、アンモニアを分解するために必要な温度に分解反応部300を加熱することができる。燃焼部100は、第1のアンモニア供給部P10と連結されて、第1のアンモニア供給部P10からアンモニアを供給されることができる。燃焼部100は、外部から供給された空気を用いてアンモニアを燃焼させ、これから生じた反応熱を用いて分解反応部300を加熱することができる。なお、燃焼部100は、後述する吸着精製部400から排出されたオフガス(off-gas)を供給されることができる。このような場合、燃焼部100は、第1のアンモニア供給部P10から供給されたアンモニアをオフガスとともに燃焼させて分解反応部300を加熱することができる。
【0034】
燃焼部100は、分解反応部300を予め設定された温度に加熱することができる。ここで、予め設定された温度は、分解反応部300内におけるアンモニア分解反応が始まって定常状態(steady state)に達するために必要な温度を意味することがあり、分解反応部300の内部温度を基準として測定されてもよい。このとき、予め設定された温度は、例えば、400℃以上であってもよい。
【0035】
気化予熱部200は、分解反応部300に供給される前に、アンモニアを気化させ、かつ予熱(preheating)することができる。気化予熱部200は、第2のアンモニア供給部P20と連結されてもよい。このとき、第2のアンモニア供給部P20には、液状アンモニアが貯留されてもよい。気化予熱部200は、第2のアンモニア供給部P20から液状アンモニアを供給されることができる。このとき、気化予熱部200は、気化器210と予熱器220とを備えていてもよい。
【0036】
気化器210は、液状アンモニアを気化させることにより、気相アンモニアに相変化させることができる。このとき、気化器210は、分解反応部300から排出される高温の反応生成物に含まれている熱エネルギーを供給されて、液状アンモニアを気化させてもよい。
【0037】
予熱器220は、気化器210により気化された気相アンモニアを昇温または予熱することができる。このとき、予熱器220は、中間連結ラインICを介して気化器210と連結されてもよい。このような場合、気化器210から排出された気相アンモニアは、中間連結ラインICを介して予熱器220に移動してもよい。予熱器220は、一実施形態を挙げると、燃焼部100から排出された後、分解反応部300を通って予熱器220に移動した排ガスから熱を供給されて、気相アンモニアを予熱することができる。予熱済みの気相アンモニアは、予熱器220から排出された後、分解反応部300に供給されてもよい。
【0038】
分解反応部300は、気化予熱部200からアンモニアを供給され、供給されたアンモニアを分解して生じた反応生成物を排出することができる。このとき、反応生成物は、アンモニア分解反応から生成された窒素、水素及び未反応アンモニアを含んでいてもよい。分解反応部300から排出された反応生成物は、吸着精製部400に移動してもよい。
【0039】
吸着精製部400は、上述したアンモニア分解反応の反応生成物から高純度水素を分離・精製することができる。吸着精製部400は、吸着剤(adsorbent)を含んでいてもよい。吸着精製部400は、吸着剤を用いて、反応生成物に含まれている窒素及び未反応アンモニアを取り除くことにより、高純度水素を精製することができる。吸着剤は、例えば、活性炭(active carbon)またはゼオライト(zeolite)であってもよいが、これに何ら限定されるものではなく、気体や液体を吸着する性質が強い各種の物質を含んでいてもよい。
【0040】
一実施形態を挙げると、吸着精製部400は、圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption;PSA)方式を用いて、高純度水素を分離・精製することができる。このような場合、吸着精製部400は、内部に吸着剤を含み、反応生成物は、このような吸着精製部400の内部を通過してもよい。反応生成物の通過に際して、吸着精製部400の内圧は、予め設定された圧力に調節されてもよい。予め設定された圧力は、約8気圧であってもよいが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【0041】
このように、反応生成物が予め設定された圧力に上昇した吸着精製部400を通過する間に、吸着剤により窒素及びアンモニアが吸着されて取り除かれてもよい。これにより、反応生成物から高純度水素が分離・精製されることが可能になる。分離・精製された高純度水素は、水素貯留部S10に貯留されてもよい。
【0042】
上述したように、反応生成物から水素を分離・精製した後、吸着精製部400の内部圧力が再び減少してもよい。このような場合、吸着剤に吸着された窒素とアンモニアが再び分離されることになり、これにより、窒素、アンモニア、及び吸着精製部400内に残存する水素を含むオフガスが生成されることが可能になる。オフガスは、吸着精製部400から排出されて燃焼部100に供給されてもよい。このように、燃焼部100に供給されたオフガスは、前述したように、燃焼部100内においてアンモニアとともに燃焼されて、分解反応部300を加熱する上で利用可能である。
【0043】
水素供給部500は、気化器210と予熱器220との間に水素を供給することができる。より具体的に、水素供給部500は、中間連結ラインICに水素を供給することができる。このとき、水素供給部500は、外部供給部510と、内部供給部520と、のうちの少なくとも一方を備えていてもよい。
【0044】
外部供給部510は、反応生成物、アンモニア及び高純度水素が通過する連結ラインの外部に配置されてもよい。外部供給部510は、内部に水素が貯留された水素供給タンクであってもよい。外部供給部510は、内部に貯留された水素を供給ラインを介して中間連結ラインICに供給することができる。
【0045】
内部供給部520は、分解反応部300の後端、吸着精製部400の前端もしくは後端、水素貯留部S10のうちのいずれか一つに配置されて、中間連結ラインICに水素を供給することができる。ここで、「前端」及び「後端」は、高純度水素の製造装置10内において、アンモニア、反応生成物、または高純度水素が移動する方向を基準として、構成要素[例えば、分解反応部300または吸着精製部400]の上流側及び下流側をそれぞれ意味することがある。
【0046】
具体的に、内部供給部520は、分解反応部300と気化器210とをつなぐ第1の連結ラインC1と、気化器210と吸着精製部400とをつなぐ第2の連結ラインC2と、吸着精製部400から排出された高純度水素を水素貯留部S10へと導く第3の連結ラインC3、または水素貯留部S10と、のうちのいずれか一つに配置されてもよい。以下では、第1の連結ラインC1に配置された内部供給部を第1の供給部521と称し、第2の連結ラインC2に配置された内部供給部を第2の供給部522と称し、第3の連結ラインC3に配置された内部供給部を第3の供給部523と称し、かつ、水素貯留部S10に配置された内部供給部を第4の供給部524と称する。
【0047】
第1の供給部521は、第1の連結ラインC1に配置されて、分解反応部300から排出された反応生成物の一部を中間連結ラインICに供給することができる。これにより、分解反応部300から排出された反応生成物に含まれている水素、窒素及び未反応アンモニアの一部が中間連結ラインICに移動することにより、気相アンモニアとともに予熱器220に供給されることが可能になる。
【0048】
第2の供給部522は、第2の連結ラインC2に配置されて、吸着精製部400に供給される反応生成物の一部を中間連結ラインICに供給することができる。これにより、吸着精製部400に流れ込む反応生成物に含まれている水素、窒素及び未反応アンモニアの一部が中間連結ラインICに移動することにより、気相アンモニアとともに予熱器220に供給されることが可能になる。
【0049】
第3の供給部523は、第3の連結ラインC3に配置されて、吸着精製部400において精製されて排出された高純度水素の一部を中間連結ラインICに供給することができる。これにより、精製された高純度水素が気相アンモニアとともに予熱器220に供給されることが可能になる。
【0050】
第4の供給部524は、水素貯留部S10に配置されて、水素貯留部S10に貯留された高純度水素の一部を中間連結ラインICに供給することができる。これにより、貯留された高純度水素の一部が気相アンモニアとともに予熱器220に供給されることが可能になる。
【0051】
一方、本発明は、第1の供給部521、第2の供給部522、第3の供給部523または第4の供給部524のうちのいずれか一つの内部供給部520のみを備えることに何ら限定されるものではなく、第1乃至第4の供給部521、522、523、524のうちの2つ以上の内部供給部を同時に備えていてもよい。なお、図示はしないが、前述した供給部521、522、523、524の他に、追加の内部供給部をさらに備えていてもよいということはいうまでもない。
【0052】
前述したように、外部供給部510または内部供給部520を介して中間連結ラインICに水素(または、反応生成物)を供給することにより、気化器210から排出された気相アンモニアが水素(または、反応生成物)とともに予熱器220に供給されることが可能になる。これにより、予熱器220により予熱された後、分解反応部300に供給される高温のアンモニアにより、分解反応部300が腐食されることを低減することができる。
【0053】
図2を参照すると、本発明の別の実施形態に係る高純度水素の製造装置20は、燃焼部100と、第1のアンモニア供給部P10と、気化予熱部200と、第2のアンモニア供給部P20と、分解反応部300と、吸着精製部400と、水素供給部500と、を備えていてもよい。なお、高純度水素の製造装置10は、水素貯留部S10をさらに備えていてもよい。このとき、燃焼部100と、第1のアンモニア供給部P10と、気化予熱部200と、第2のアンモニア供給部P20と、分解反応部300と、吸着精製部400及び水素供給部500の具体的な特徴は、前述した実施形態と同一もしくは類似であるため、重複する説明は省略する。以下では、前述した実施形態10との相違点に重点をおいて説明する。
【0054】
高純度水素の製造装置20は、水素流入地点Bを備えていてもよい。水素流入地点Bは、水素供給部500から排出された水素が流れ込む位置であってもよい。このとき、水素流入地点Bは、高純度水素の製造装置20内において、中間連結ラインICとは異なる位置に配置されてもよい。
【0055】
水素流入地点Bは、少なくとも一つ備えられてもよい。一実施形態を挙げると、水素流入地点Bは、複数備えられてもよい。複数の水素流入地点Bは、互いに異なる位置に配置されてもよい。このような場合、外部供給部510は、中間連結ラインICに供給する水素の他に、複数の水素流入地点Bのうちのいずれか一つに水素を供給してもよい。
【0056】
複数の水素流入地点Bは、第1の流入地点B10と、第2の流入地点B20と、を備えていてもよい。本発明は、これに何ら限定されるものではなく、高純度水素の製造装置20は、追加の流入地点(図示せず)をさらに備えていてもよい、説明のしやすさのために、高純度水素の製造装置20が、第1及び第2の流入地点B10、B20を備えている実施形態に重点をおいて説明する。
【0057】
第1の流入地点B10は、第2のアンモニア供給部P20と気化器210との間に配置されてもよい。より具体的に、第1の流入地点B10は、第2のアンモニア供給部P20から排出されたアンモニアを気化器210へと導く第1の供給ラインPAに配置されてもよい。これにより、外部供給部510から第1の流入地点B10を介して第1の供給ラインPAへと流れ込んだ水素は、第2のアンモニア供給部P20から供給されたアンモニアとともに気化器210に供給されることが可能になる。
【0058】
第2の流入地点B20は、予熱器220と分解反応部300との間に配置されてもよい。より具体的に、第2の流入地点B20は、予熱器220から排出された予熱済みの気相アンモニアを分解反応部300へと導く第2の供給ラインPBに配置されてもよい。これにより、外部供給部510から第2の流入地点B20を介して第2の供給ラインPBへと流れ込んだ水素は、予熱器220から排出されたアンモニアとともに分解反応部300に供給されることが可能になる。
【0059】
前述したように、外部供給部510は、中間連結ラインICに水素を供給することに加えて、第1の流入地点B10及び第2の流入地点B20のうちのどちらか一方に水素を供給することができる。これにより、気化器210、予熱器220または分解反応部300への水素の供給量を増やすことにより、気化予熱部200を通りながら加熱された高温のアンモニアにより分解反応部300が腐食されてしまうことを低減することができる。
【0060】
図3を参照すると、本発明のさらに別の実施形態に係る高純度水素の製造装置30は、燃焼部100と、第1のアンモニア供給部P10と、気化予熱部200と、第2のアンモニア供給部P20と、分解反応部300と、吸着精製部400と、水素供給部500と、を備えていてもよい。また、高純度水素の製造装置10は、水素貯留部S10をさらに備えていてもよい。このとき、燃焼部100と、第1のアンモニア供給部P10と、気化予熱部200と、第2のアンモニア供給部P20と、分解反応部300と、吸着精製部400及び水素供給部500の具体的な特徴は、前述した実施形態と同一または類似であるため、重複する説明は省略する。以下では、前述した実施形態10との相違点に重点をおいて説明する。
【0061】
高純度水素の製造装置30は、内部供給部520と、水素流入地点Bと、を両方とも備えていてもよい。このとき、前述したように、内部供給部520は、第1の供給部521と、第2の供給部522と、第3の供給部523及び第4の供給部524を備えていてもよい。なお、水素流入地点Bは、第1の流入地点B10と、第2の流入地点B20と、を備えていてもよい。
【0062】
このような場合、外部供給部510は、中間連結ラインICに水素を供給し、これに加えて、第1の流入地点B10と第2の流入地点B10のうちのどちらか一方にも水素を供給してもよい。
【0063】
内部供給部520は、第1乃至第4の供給部521、522、523、524のうちのいずれか一つから中間連結ラインICへと水素(または、反応生成物)を供給し、これに加えて、第1の流入地点B10と第2の流入地点B10のうちのどちらか一方にも水素(または、反応生成物)を供給することができる。
【0064】
例えば、第1の供給部521を介して反応生成物を供給する場合、第1の供給部521は、分解反応部300から排出された反応生成物の一部を中間連結ラインICに供給し、これに加えて、第1の流入地点B10と第2の流入地点B10のうちのどちらか一方にも反応生成物を供給することができる。別の例を挙げると、第2の供給部522を介して反応生成物を供給する場合、第2の供給部522は、吸着精製部400に流れ込む反応生成物の一部を中間連結ラインICに供給し、これに加えて、第1の流入地点B10と第2の流入地点B10のうちのどちらか一方にも反応生成物を供給することができる。さらに別の例を挙げると、第3の供給部523は、吸着精製部400から排出された高純度水素の一部を中間連結ラインICに供給し、これに加えて、第1の流入地点B10と第2の流入地点B10のうちのどちらか一方にも高純度水素を供給することができる。さらに別の例を挙げると、第4の供給部524は、水素貯留部S10に貯留された高純度水素の一部を中間連結ラインICに供給し、これに加えて、第1の流入地点B10と第2の流入地点B10のうちのどちらか一方にも高純度水素を供給することができる。
【0065】
このように、外部供給部510のみならず、内部供給部520から中間連結ラインICへと水素を供給するだけではなく、第1の流入地点B10または第2の流入地点B20に水素を供給することにより、高温のアンモニアによる「予熱器220」、「分解反応部300」及び「予熱器220の後端から分解反応部300までをつなぐ配管」における腐食の発生を防ぐことができる。
【0066】
図4は、
図1から
図3のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を用いて高純度水素を製造する手順を示すブロック図である。
【0067】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造方法S10は、下記の通りである。
【0068】
まず、気化器210が、第2のアンモニア供給部P20から供給された液状アンモニアを気化させて気相アンモニアに相変化させることができる(S110)。このとき、気化器210は、分解反応部300から排出される高温の反応生成物に含まれている熱エネルギーを供給されてアンモニアを気化させてもよい。
【0069】
次いで、水素供給部500が、中間連結ラインICに水素を供給することができる(S120)。具体的に、水素供給部500は、外部供給部510または内部供給部520のうちのどちらか一方を介して中間連結ラインICに水素を供給することができる。
【0070】
一実施形態を挙げると、外部供給部510が中間連結ラインICに水素を供給することができる。このような場合、外部供給部510により供給された水素は、気化器210から排出された気相アンモニアとともに予熱器220に供給されてもよい。次いで、予熱器220においては、供給された気相アンモニア及び水素を加熱して、分解反応部300に供給される前に、気相アンモニアを予熱することができる。予熱器220は、予熱済みの気相アンモニアを分解反応部300に供給することができる(S130)。
【0071】
別の実施形態を挙げると、内部供給部520が中間連結ラインICに水素を供給することができる。このとき、内部供給部520は、例えば、第1の供給部521、第2の供給部522、第3の供給部523及び第4の供給部524を備え、第1乃至第4の供給部521、522、523、524のうちのいずれか一つの供給部を介して、中間連結ラインICに水素(または、反応生成物)を供給してもよい。このように、第1乃至第4の供給部521、522、523、524のうちのいずれか一つから供給された水素(または、反応生成物)は、中間連結ラインICを介して気相アンモニアとともに予熱器220に供給されてもよい。
【0072】
さらに別の実施形態を挙げると、水素供給部500は、中間連結ラインICとは異なる位置に配置された水素流入地点Bに水素を供給することができる。このとき、水素流入地点Bは、例えば、第1の流入地点B10及び第2の流入地点B20を備えていてもよい。また、水素供給部500は、外部供給部510や、第1乃至第4の供給部521、522、523、524のうちのいずれか一つを介して、第1の流入地点B10または第2の流入地点B20に水素(または、反応生成物)を供給することができる。これにより、水素供給部500から供給された水素(または、反応生成物)は、予熱済みの気相アンモニアとともに分解反応部300に供給されることや、第2のアンモニア供給部P20から供給されたアンモニアとともに気化器210に供給されることが可能になる。
【0073】
一方、燃焼部100は、第1のアンモニア供給部P10から供給されたアンモニアを燃焼させて、分解反応部300を予め設定された温度に加熱することができる(S100)。具体的に、燃焼部100は、アンモニア燃焼反応を通じて生じた燃焼熱を用いて、分解反応部300を予め設定された温度(例えば、400℃以上)まで加熱することができる。このとき、燃焼部100は、吸着精製部400から供給されたオフガスをアンモニアとともに燃焼させて燃焼熱を生じさせてもよい。これにより、分解反応部300において、アンモニア分解反応が始まることが可能になる。燃焼部100は、アンモニア燃焼反応から生成された燃焼排ガスを燃焼部100の外部に排出することができる。
【0074】
次いで、分解反応部300がアンモニアを分解し、これから生成された反応生成物を排出することができる(S140)。具体的に、分解反応部300は、気化予熱部200[または、予熱器220]から供給されたアンモニアを燃焼部100の加熱による熱エネルギーを用いて分解することができる。なお、分解反応部300は、アンモニア分解反応から生成された反応生成物を吸着精製部400に供給することができる。このとき、反応生成物は、アンモニア分解反応から生成された水素、窒素及び未反応アンモニアが含まれている「アンモニア分解ガス」であってもよい。
【0075】
次いで、吸着精製部400が、反応生成物から高純度水素を分離・精製することができる(S150)。具体的に、吸着精製部400は、分解反応部200から反応生成物を受け取り、反応生成物に含まれている窒素及び未反応アンモニアを取り除くことができる。このとき、吸着精製部400は、内部に含まれている吸着剤を用いて、圧力スイング吸着(PSA)方式を用いて、窒素とアンモニアのみを選択的に吸着して取り除いてもよい。次いで、分離・精製された高純度水素は排出されて水素貯留部S10に収容されてもよい。
【0076】
吸着及び精製の過程において生成されたオフガス(すなわち、窒素、水素及び未反応アンモニアが混合された混合ガス)は、燃焼部100に供給されてもよい。これにより、燃焼部100は、第1のアンモニア供給部P10から供給されたアンモニアと、オフガスに含まれている水素及び微量の未反応アンモニアを混焼させて分解反応部300を加熱することができる。このような過程を通じて、分解反応部300におけるアンモニア分解反応及び吸着精製部400における吸着・精製が行われ続けることが可能になる。
【0077】
図5は、中間連結ラインに水素が供給されない場合において、高温のアンモニアによる分解反応部における腐食発生の前後の状態を示す図である。
図6は、中間連結ラインに水素が供給される場合において、高温のアンモニアによる分解反応部における腐食発生の前後の状態を示す図である。
【0078】
図5を参照すると、
図5(a)は、中間連結ラインIC及び水素流入地点Bに水素(または、反応生成物)を供給しない場合において、分解反応部300に高温のアンモニアが供給される前、あるいは、供給が始まった時点の分解反応部300の初期の表面状態を示している。また、
図5(b)は、中間連結ラインIC及び水素流入地点Bに水素(または、反応生成物)を供給しなかった状態で、分解反応部300に高温のアンモニアが供給されて所定の時間(例えば、24時間)が経った後の分解反応部300の表面状態を示している。このように、
図5(a)と
図5(b)とを比較すると、高温のアンモニアの流れ込みにより、分解反応部300の表面において腐食が生じ、表面粗さが高くなったことを確認することができる。
【0079】
これに比べて、
図6を参照すると、
図6(a)は、本発明の実施形態において、分解反応部300に高温のアンモニアが供給される前、あるいは、供給が始まった時点の分解反応部300の初期の表面状態を示している。そして、
図6(b)は、中間連結ラインIC及び水素流入地点Bに水素(または、反応生成物)が供給される状態で、分解反応部300に高温のアンモニアが供給されて所定の時間(例えば、24時間)が経った後の分解反応部300の表面状態を示している。このように、
図6(a)と
図6(b)とを比較すると、水素(または、反応生成物)を供給する場合、高温のアンモニアによる分解反応部300の表面における腐食の発生が抑えられて、分解反応部300の表面状態が初期の表面状態に保たれるということを確認することができる。
【0080】
図7は、本発明のさらに別の実施形態に係るアンモニアを用いた高純度水素の製造装置を示すブロック図である。
【0081】
図7を参照すると、本発明のさらに別の実施形態に係る高純度水素の製造装置30は、燃焼部100と、第1のアンモニア供給部P10と、気化予熱部200と、第2のアンモニア供給部P20と、分解反応部300と、吸着精製部400と、触媒反応部600と、を備えていてもよい。また、高純度水素の製造装置10は、水素貯留部S10をさらに備えていてもよい。このとき、燃焼部100と、第1のアンモニア供給部P10と、気化予熱部200と、第2のアンモニア供給部P20と、分解反応部300及び吸着精製部400の具体的な特徴は、前述した実施形態と同一または類似であるため、重複する説明は省略する。以下では、前述した実施形態10、20との相違点に重点をおいて説明する。
【0082】
触媒反応部600は、予熱器220から排出されたアンモニアを分解して、水素を産生することができる。このとき、触媒反応部600は、予熱器220とは別途に配備されて、予熱器220と分解反応部300との間に配置されてもよい。但し、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、図示はしないが、触媒反応部600は、予熱器220の内部空間を触媒で充填する形態に構成されてもよく、予熱器220の内部の触媒コーティング層の形態に構成されてもよい。
【0083】
触媒反応部600は、予熱器220から排出された予熱済みの気相アンモニアの一部を触媒分解反応させて分解することにより水素を産生することができる。このとき、アンモニアの触媒分解反応に用いられる触媒としては、例えば、ペレット触媒(pellet catalyst)、モノリス触媒(monolithic catalyst)及びメタルフォーム触媒(metal form catalyst)が挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
【0084】
一実施形態を挙げると、触媒反応部600においては、予熱器220により予熱された気相アンモニアに含まれている熱エネルギーを用いて、アンモニア触媒分解反応が行われることができる。別の実施形態を挙げると、触媒反応部600は、電気加熱部(図示せず)を備えていてもよい。このような場合、電気加熱部は、触媒反応部600の本体(図示せず)の外部または内部に配設されてもよく、熱を発するための熱源(図示せず)と、熱源から発せられた熱を触媒分解部600の本体に届けるための伝熱部(例えば、熱線)と、を備えていてもよい。このような電気加熱部の熱源及び伝熱部により触媒反応部600が加熱されることにより、触媒分解部600の内部の温度は、アンモニアの触媒分解反応のために必要とされる温度まで上がることにより、アンモニアが分解されて、アンモニア、窒素及び水素の「混合物」が生成されることが可能になる。
【0085】
このように、触媒反応部600から分解反応部300へと供給される気相アンモニアの一部を触媒分解して、水素を産生して分解反応部300に供給することにより、第2のアンモニア供給部P20から供給されたアンモニアは、触媒反応部600により産生された水素とともに分解反応部300に供給されることができる。これにより、分解反応部300においてアンモニア分解反応が行われることに伴う、分解反応部300における腐食の発生を抑えることができる。
【0086】
図8は、
図7のアンモニアを用いた高純度水素の製造装置により高純度水素を製造する手順を示すブロック図である。
【0087】
図8を参照すると、本発明の別の実施形態に係る、アンモニアを用いた高純度水素の製造方法S20は、下記の通りである。
【0088】
まず、気化器210が、第2のアンモニア供給部P20から供給された液状アンモニアを気化させて気相アンモニアに相変化させることができる(S210)。このとき、気化器210は、分解反応部300から排出される高温の反応生成物に含まれている熱エネルギーを供給されてアンモニアを気化させてもよい。
【0089】
次いで、気化器210から排出された気相アンモニアは、予熱器220に供給されてもよい。予熱器220においては、供給された気相アンモニアを加熱して、分解反応部300に供給される前に、気相アンモニアを予熱することができる。予熱器220は、予熱済みの気相アンモニアを分解反応部300に供給することができる(S220)。
【0090】
一方、燃焼部100は、第1のアンモニア供給部P10から供給されたアンモニアを燃焼させて、分解反応部300を予め設定された温度に加熱することができる(S100)。具体的に、燃焼部100は、アンモニア燃焼反応を通じて生じた燃焼熱を用いて、分解反応部300を予め設定された温度(例えば、400℃以上)まで加熱することができる。このとき、燃焼部100は、吸着精製部400から供給されたオフガスをアンモニアとともに燃焼させて燃焼熱を生じさせてもよい。これにより、分解反応部200において、アンモニア分解反応が始まることができる。燃焼部100は、アンモニア燃焼反応から生成された燃焼排ガスを燃焼部100の外部に排出することができる。
【0091】
次いで、触媒反応部600が、予熱済みの気相アンモニアを分解して水素を産生することができる(S230)。具体的に、触媒反応部600は、予熱器220から排出された予熱済みの気相アンモニアの一部を触媒分解反応を通じて分解して、水素を産生することができる。これにより、予熱器220から排出された「未反応アンモニア」と、触媒反応部600により生成された「窒素及び水素」が、分解反応部300に供給されることが可能になる。
【0092】
次いで、分解反応部300が、アンモニアを分解し、これから生成された反応生成物を排出することができる(S240)。具体的に、分解反応部300は、予熱器220から排出された後、触媒反応部600を通って供給されたアンモニアを分解することができる。このとき、分解反応部300は、燃焼部100の加熱による熱エネルギーを用いて行われるアンモニア分解反応を通じて、アンモニアを分解してもよい。なお、分解反応部300は、アンモニア分解反応から生成された反応生成物を吸着精製部400に供給することができる。このとき、反応生成物は、アンモニア分解反応から生成された水素、窒素及び未反応アンモニアが含まれている「アンモニア分解ガス」であってもよい。
【0093】
次いで、吸着精製部400が、反応生成物から高純度水素を分離・精製することができる(S250)。具体的に、吸着精製部400は、分解反応部200から反応生成物を受け取り、反応生成物に含まれている窒素及び未反応アンモニアを取り除くことができる。このとき、吸着精製部400は、内部に含まれている吸着剤を用いて、圧力スイング吸着(PSA)方式を用いて、窒素とアンモニアのみを選択的に吸着して取り除いてもよい。次いで、分離・精製された高純度水素は排出されて水素貯留部S10に収容されてもよい。
【0094】
吸着及び精製の過程において生成されたオフガス(すなわち、窒素、水素及び未反応アンモニアが混合された混合ガス)は、燃焼部100に供給されてもよい。これにより、燃焼部100は、第1のアンモニア供給部P10から供給されたアンモニアと、オフガスに含まれている水素及び微量の未反応アンモニアを混焼させて分解反応部300を加熱することができる。このような過程を通じて、分解反応部300におけるアンモニア分解反応及び吸着精製部400における吸着・精製が行われ続けられるということは、前述した実施形態と同一または類似である。
【0095】
前述したように、本発明に実施形態に係る高純度水素の製造装置10、20、30、40及び製造方法S10は、水素供給部500に加えて、分解反応部300の後端、吸着精製部400の前端もしくは後端、及び水素貯留部S10に内部供給部520を備え、ここから中間連結ラインICへと水素をさらに供給することにより、高温の気相アンモニアによる、「予熱器220」、「分解反応部300」及び「予熱器220後端と分解反応部300とをつなぐ配管」における腐食の発生を抑えることができる。なお、中間連結ラインICに加えて、水素供給部500から水素が供給される水素流入地点Bをさらに備え、これらの流入地点に水素をさらに供給することにより、高温の気相アンモニアによる、分解反応部300において起こる腐食の問題[すなわち、分解反応部300を構成する金属製の反応部本体、分解反応部300内の充填物及び触媒などの腐食]を解消することができる。
【0096】
また、本発明の実施形態に係る高純度水素の製造装置30及び製造方法S20は、分解反応部300に供給される前に、予熱済みの気相アンモニアの一部を触媒分解して水素を産生して、気相アンモニアとともに分解反応部300に供給することにより、高温の気相アンモニアによる、分解反応部300における上述した腐食の問題を防ぐことができる。
【0097】
上述した本発明の説明は、単なる例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態へと容易に変形できる。よって、上述した実施形態は、あらゆる面において例示的なものに過ぎず、限定的ではない。例えば、単一型であると説明されている各構成要素は、分散されて実施されてもよく、同様に、分散されていると説明されている構成要素も、組み合わせられた形態に実施されてもよい。
【0098】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって表わされ、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導き出されるあらゆる変更または変形された形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
10、20、30、40 高純度水素の製造装置
100 燃焼部
200 気化予熱部
210 気化器
220 予熱器
300 分解反応部
400 吸着精製部
500 水素供給部
510 外部供給部
520 内部供給部
600 触媒反応部
P10 第1のアンモニア供給部
P20 第2のアンモニア供給部
S10 水素貯留部
IC 中間連結ライン
B 水素流入地点
【要約】 (修正有)
【課題】アンモニア分解反応を用いた水素の産生工程において、分解反応器において起こる腐食の問題を解決するアンモニアを用いた高純度水素の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】アンモニア分解反応を通じてアンモニアを分解し、前記アンモニア分解反応から生成された水素、窒素及び未反応アンモニアを含む反応生成物を排出する分解反応部と、第1のアンモニア供給部から供給されたアンモニアを燃焼させて、前記分解反応部を加熱する燃焼部と、第2のアンモニア供給部から供給された液状アンモニアを気化させる気化器及び前記気化器から中間連結ラインを介して供給されたアンモニアを予熱(preheating)する予熱器を有する気化予熱部と、前記中間連結ラインに水素を供給する水素供給部と、前記反応生成物から高純度水素を分離・精製する吸着精製部と、を備える。
【選択図】
図1