(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】アシルチオウレア化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 215/48 20060101AFI20240109BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240109BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240109BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C07D215/48
A61K31/47
A61P35/00
A61P19/10
(21)【出願番号】P 2022500471
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005272
(87)【国際公開番号】W WO2021162096
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020023754
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020086940
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020157815
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020157816
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 悦光
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/125597(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/082855(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175305(WO,A1)
【文献】STEPPELER F. et al.,Chiral Thioureas-Preparation and Significance in Asymmetric Synthesis and Medicinal Chemistry.,Molecules,2020年01月18日,Vol.25, No.2, Article No. 401,pages 1 to 56,https://doi.org/10.3390/molecules25020401
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 215/48
A61K 31/47
A61P 35/00
A61P 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドと2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを
反応させる工程を含む、4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドの製造方法。
【請求項2】
メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートからアミノリシスにより前記4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドを得る工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
2-フェニルアセチルクロリド
とチオシアン酸カリウムとを反応させて前記2-フェニルアセチルイソチオシアネートを得る工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記
請求項1に記載の反応させる工程においてトルエン及びエタノールを含む溶媒を用いる、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法で得られた4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドからメシル酸塩を製造する工程を含む、4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドのメシル酸塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアシルチオウレア化合物の製造方法、特に、大量製造可能なアシルチオウレア化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品有効成分(Active Pharmaceutical Ingredients;以下、APIとも言う)を工業的に製造する場合、原料からAPIを製造する工程は、工程数が少なく、かつ高い収率が求められる。さらに、APIの製造は大量に製造できることが要求されるため、大量製造に適さない操作は採用できない。そして、このような工程により製造されたAPIの品質は、医薬品規制調和国際会議(以下、ICHとも言う)の定める基準等に合致しなければならず、基準となる対象は、APIに含まれる不純物、残留溶媒、残留金属などが挙げられる。
【0003】
特許文献1では、4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミド(以下、化合物1とも言う)は、抗腫瘍効果を有する化合物であることが開示されている。また、特許文献2及び3では、かかる化合物1が、骨粗鬆症及び線維症に治療効果を示すことが開示されている。そして特許文献4では、化合物1をヒトに投与する際に、メシル酸塩を形成してから投与することが開示されており、さらに特許文献5では、化合物1の製剤処方の例が開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、4-ヒドロキシ-7-メトキシキノリン-6-カルボン酸からtert-ブチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートへの誘導が記載されている。そして、当該tert-ブチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートにニトロフェノールを導入した後、ニトロ基の還元、アニリンのアシルチオウレアへの誘導、カルボン酸の脱保護、及びメチルアミンの導入の工程を順に経て、化合物1が合成されている。
【0005】
また、特許文献1によれば、アシルチオウレア誘導体の前駆体の1つとして、4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミド(以下、類縁物質1とも言う)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2009/125597号
【文献】国際公開第2015/046484号
【文献】国際公開第2016/208744号
【文献】国際公開第2016/175305号
【文献】国際公開第2018/151177号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
APIを製造する際には、工程数が少なく、かつ高い収率で中間体及びAPIが得られる工程からなる製造方法が求められる。さらに、これらの工程は、容易な操作のみが含まれ、かつ大量製造が不可能な操作は含まれないことが求められる。その上、製造されたAPIは医薬品としての高い品質に合致することが求められる。
【0008】
これに対し、特許文献1によれば、化合物1の製造にはtert-ブチルによるカルボン酸の保護及び脱保護工程が含まれ、より工程数の少ない製造方法が求められる。しかし、tert-ブチルの保護及び脱保護工程を含まない化合物1の合成方法は見出されていなかった。さらに、特許文献1に記載の化合物1を製造するための工程は、カラムクロマトグラフィーによる精製が含まれており、大量製造に適したものではない。
【0009】
また、特許文献1には、4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミド(以下、類縁物質1とも言う)が記載されているが、類縁物質1から化合物1の部分構造であるアシルチオウレア基を導入して化合物1に直接誘導した例はない。また、かかる類縁物質1がAPIに含まれうることについて記載されていない。
【0010】
上記事情を鑑みて、本発明では、APIとしての化合物1のメシル酸塩を製造するにあたり、大量製造可能な、特定構造を有するアシルチオウレア化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題に対して鋭意検討した結果、大量製造可能なAPIとして有用な化合物1の新たな製造方法を見出した。さらに、この製造方法により、医薬品として適した品質のAPIである化合物1のメシル酸塩が得られることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]から[5]を提供するものである。
[1] 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドと2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程を含む、4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドの製造方法。
[2] メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートからアミノリシスにより前記4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドを得る工程を含む、前記[1]に記載の製造方法。
[3] 2-フェニルアセチルクロリドから誘導して前記2-フェニルアセチルイソチオシアネートを得る工程を含む、前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記連結する工程においてトルエン及びエタノールを含む溶媒を用いる、前記[1]~[3]のいずれか1に記載の製造方法。
[5] 前記[1]~[4]のいずれか1に記載の製造方法で得られた4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドからメシル酸塩を製造する工程を含む、4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドのメシル酸塩の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、類縁物質1から1工程で化合物1のフリー体を合成することができ、医薬品として適した品質のAPIの大量製造が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪化合物1の製造方法≫
本発明の実施形態の1つは、4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドから4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドを製造する方法に関するものであり、以下の反応を伴う。すなわち、4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドと2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程を採用することにより、類縁物質1から化合物1を製造することができる。なお、本明細書における構造式中、Meとはメチル基を表す。
【0015】
【0016】
本実施形態にて製造される4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドは、以下の構造を持つアシルチオウレア化合物であり、本明細書において「化合物1」と表す。
【0017】
【0018】
本実施形態における化合物1のフリー体は、特許文献1に記載された化合物であり、通常公知の方法によって製造することができる。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、抗腫瘍剤、骨粗鬆症治療剤、及び線維症治療剤として有用である。そして、化合物1はフリー体からメシル酸塩に誘導され、そのメシル酸塩がAPIとして用いられる。なお、当該APIはそのまま患者に投与されるのではなく、通常公知の方法等により適切に製剤を製造し、その製剤を患者に投与する。
【0019】
本実施形態における化合物1はAPIとして用いられる際には塩であることが好ましく、メシル酸塩が上記理由より好ましいが、その他の塩であることをなんら排除するものではない。
その他の塩としては、下記に示すような無機塩基の塩、有機塩基の塩、無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩、塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。
【0020】
無機塩基の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が例示でき、また、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が例示できる。
有機塩基の塩としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルピリジン、N-メチルピロリジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン等が例示できる。
【0021】
無機酸の例としては、塩酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸等が例示できる。
有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、マンデル酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、アスパラギン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、馬尿酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メシル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が例示できる。
【0022】
酸性アミノ酸の例としては、グルタミン酸、アスパラギン酸等が例示できる。塩基性アミノ酸の例としては、リジン、アスパラギン、オルニチン等が例示できる。
【0023】
本実施形態における4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドは、以下の構造を持つ化合物であり、本明細書において「類縁物質1」と表す。
【0024】
【0025】
本実施形態において、類縁物質1は、アシルチオウレアを導入することにより化合物1に誘導される出発物質である。
【0026】
製品又は化合物の製造に際して用いられるバッチ生産は、一定量の原料を仕込み、各工程を逐次的に進みながら、ある一定の決まった量の製品又は化合物を一度に生産する方法である。
【0027】
バッチ生産において、1バッチと呼ばれる1回の製造での原料の仕込み量が例えば1kg以上であること、すなわち、所望する化合物を1回製造する際に使用する原料が例えば1kg以上であることを、本実施形態においては大量製造と言う。なお、所望する化合物とはAPIの他、APIの製造で用いられる中間体も含まれる。
【0028】
本実施形態において、類縁物質1から化合物1を製造するに際し、アシルチオウレア基の導入に用いられる試薬は、通常公知のものであれば、特に制限はなく、2-フェニルアセチルイソチオシアネートなどが挙げられる。中でも、類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結することが好ましい。
【0029】
2-フェニルアセチルイソチオシアネートは以下の構造を有し、2-フェニルアセチルクロリドから誘導して得ることが好ましい。具体的には、2-フェニルアセチルクロリドとチオシアン酸カリウムとを反応させることで製造できる。また、2-フェニルアセチルイソチオシアネートは、他の方法で製造してもよく、市販品でもよい。
【0030】
【0031】
本実施形態において、2-フェニルアセチルイソチオシアネートは、出発物質としての類縁物質1に対して1.0~100モル当量用いることができ、好ましくは1.2モル当量以上であり、特に好ましくは1.5モル当量以上である。また、当量数は20モル当量以下が好ましく、より好ましくは10モル当量以下であり、さらに好ましくは5.0モル当量以下であり、よりさらに好ましくは3.0モル当量以下であり、ことさらに好ましくは2.5モル当量以下であり、特に好ましくは2.2モル当量以下である。
【0032】
本実施形態において、反応時間は特に制限はなく、例えば0.5~500時間が挙げられるが、好ましくは6時間以上であり、また、好ましくは20時間以下である。
【0033】
本実施形態において、反応温度は採用される溶媒の沸点以下であれば特に制限はなく、例えば0~100℃が挙げられるが、好ましくは15℃以上であり、より好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは30℃以下である。
【0034】
本実施形態において、採用される溶媒としては、類縁物質1、化合物1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートを著しく分解する溶媒でなければ特に制限はない。例えば、水、C5~C10炭化水素、C6~C14芳香族炭化水素、C1~C6アルコール、C3~C10脂肪族カルボン酸エステル、C3~C10ケトン、C4~C10エーテル、C3~C5非プロトン性極性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。なお、本明細書においてC数字で表される記載は炭素数を意味し、かかる化合物に含まれる炭素の総数を意味する。
【0035】
C5~C10炭化水素は、炭素数が5~10の炭化水素であり、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等が挙げられる。
【0036】
C6~C14芳香族炭化水素は、炭素数が6~14の芳香族炭化水素であり、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、トルエン、キシレン、クメン、スチレン、フェナントレン等が挙げられる。
【0037】
C1~C6アルコールは、炭素数が1~6のアルコールであり、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノールなど挙げられる。
【0038】
C3~C10脂肪族カルボン酸エステルは、炭素数が3~10の脂肪族カルボン酸エステルであり、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチルなどが挙げられる。
【0039】
C3~C10ケトンは、炭素数が3~10のケトンであり、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0040】
C4~C10エーテルとは、炭素数が4~10のエーテルであり、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0041】
C3~C5非プロトン性極性有機溶媒とは、炭素数が3~5の非プロトン性極性有機溶媒であり、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0042】
本実施形態において、採用される溶媒としては、好ましくは、C6~C14芳香族炭化水素、C1~C6アルコール、及びこれらの混合溶媒であり、特に好ましくはトルエン、エタノール及びこれらの混合溶媒である。
【0043】
本実施形態における溶媒として、トルエン及びエタノールを含む溶媒(混合溶媒)が採用された場合、トルエンの量はエタノールの量に対して容量比0.01~100倍量を用いることができるが、好ましくは0.1倍量以上、より好ましくは0.5倍量以上、さらに好ましくは1.0倍量以上、よりさらに好ましくは2.0倍量以上、ことさらに好ましくは3.0倍量以上、特に好ましくは4.0倍量以上である。また、トルエンの量はエタノールの量に対して容量比で、好ましくは50倍量以下、より好ましくは25倍量以下、さらに好ましくは10倍量以下、よりさらに好ましくは8.0倍量以下、ことさらに好ましくは7.0倍量以下、特に好ましくは6.0倍量以下である。
【0044】
本実施形態に係る化合物1の製造方法は、類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程を含むことを特徴とする。
好ましくは、類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程を含むことを特徴とし、2-フェニルアセチルクロリドから誘導して2-フェニルアセチルイソチオシアネートを得る工程を含む、化合物1の製造方法である。
より好ましくは、トルエン及びエタノールを含む溶媒中で、類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程を含むことを特徴とし、2-フェニルアセチルクロリドから誘導して2-フェニルアセチルイソチオシアネートを得る工程を含む、化合物1の製造方法である。
さらに好ましくは、トルエンの量がエタノールの量に対して容量比0.01~100倍量であるトルエン及びエタノールを含む溶媒中で、類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程を含むことを特徴とし、2-フェニルアセチルクロリドから誘導して2-フェニルアセチルイソチオシアネートを得る工程を含む、化合物1の製造方法である。
特に好ましくは、トルエンの量がエタノールの量に対して容量比0.01~100倍量であるトルエン及びエタノールを含む溶媒中で、類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程を含むことを特徴とし、かかる工程で用いられる2-フェニルアセチルイソチオシアネートの量は、類縁物質1の1.0~5.0モル当量であり、2-フェニルアセチルクロリドから誘導して2-フェニルアセチルイソチオシアネートを得る工程を含む、化合物1の製造方法である。
【0045】
本実施形態に係る化合物1の製造方法では、類縁物質1がメチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートのアミノリシスにより得られることが好ましい。すなわち、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートからアミノリシスにより類縁物質1を得る工程をさらに含むことが好ましい。アミノリシスはエステルからアミドを構築する方法の1つであり、エステルとアミンを作用する工程が含まれる。
【0046】
類縁物質1の製造に際し、その原料としては、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートの他に、4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドが考えられる。
しかしながら本発明者が検討した結果、4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドを得るために、メチル 4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートをアミノリシスすると、フルオロニトロフェノールの脱離が示唆された。その結果、4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドから類縁物質1を得て化合物1を製造するルートは、収率が低くなり大量製造には適さないことが示唆された。
【0047】
上記の他、本発明者は、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートのアミノ基を先にアシルチオウレアへと誘導してメチル 4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートを合成し、その後アミノリシスすることで化合物1を得るルートも検討を行った。しかし、アミノリシスにおいてアシルチオウレア部分が分解してしまい、高収率で化合物1を得ることができなかった。
【0048】
これに対し、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートをアミノリシスすると、上記のようなフルオロニトロフェノールの脱離は起こらず、高収率で類縁物質1を得られることが判明した。
従って、本実施形態に係る製造方法は、類縁物質1から化合物1を得ることを特徴とするが、好ましくは、類縁物質1から化合物1を得、かつ当該類縁物質1はメチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートから得られる方法である。より好ましくは、類縁物質1から化合物1を得、当該類縁物質1はメチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートから得、かつ当該メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートはメチル 4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートから得られる方法である。
なお、ここでのアミノリシスは公知の条件で行うことができ、例えばN-メチル-2-ピロリドンと水の混合溶媒中で高濃度のメチルアミンを反応させる方法では80%以上の収率で類縁物質1が得られた。
【0049】
さらに、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートは、メチル 4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートのニトロ基を還元することで得られる。この還元反応も公知の条件で行うことができるが、例えば鉄と、塩酸とメタノールの混合溶媒とを用いる方法では、90~98%もの収率で還元体が得られた。例えば炭素担持白金と水素を用いた接触還元ではほぼ100%の収率で還元体が得られた。
【0050】
以上の結果より、化合物1の製造に際し、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートからアミノリシスにより類縁物質1を得る工程を含むことが好ましいことが見出された。
また化合物1の大量製造に際し、類縁物質1に2-フェニルアセチルイソチオシアネートを連結する工程を含む製造方法は、工程数が少ないため好ましい。さらに、カラムクロマトグラフィーが不要である点も大量製造に好適であるといえる。その他、得られた化合物1の収率及び品質の再現性がよいこと、少量合成の際より反応中の撹拌能力が低下しても製造可能であること、少量合成の際より原料や試薬の投入に要する時間が長くても製造可能であること、製造コストの抑制できること等の点からも、大量製造に好適である。
【0051】
≪化合物1のメシル酸塩の製造方法≫
【0052】
このようにして得られた化合物1は、必要に応じて精製された後、特許文献4に記載の方法などによりメシル酸塩へと誘導され、APIとして使用される。
化合物1から化合物1のメシル酸塩へ誘導される際に使用される溶媒としては特に制限はないが、好ましくは、水、アルコール、脂肪族カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、炭化水素、非プロトン性極性溶媒などが挙げられ、これらの混合溶媒も用いることが出来る。
【0053】
アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられ、好ましくはエタノール、イソプロパノールである。
脂肪族カルボン酸エステルは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどが挙げられ、好ましくは酢酸エチルである。
ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられ、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンである。
エーテルは、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどが挙げられる。
炭化水素は、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、石油エーテルなどが挙げられる。
非プロトン性極性溶媒は、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0054】
溶媒は、水、アルコール、脂肪族カルボン酸エステル、ケトン、又はこれらの混合溶媒が好ましく、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はアセトン-水の混合溶媒がより好ましく。アセトン-水の混合溶媒が特に好ましい。
【0055】
アセトン-水の混合溶媒におけるそれぞれの溶媒の比は、水1容量に対してアセトンが0.1~100容量が好ましく、0.5容量以上がより好ましく、1容量以上がさらに好ましく、5容量以上がよりさらに好ましく、また、20容量以下がより好ましく、10容量以下がさらに好ましく、5容量以下がよりさらに好ましい。
【0056】
本実施形態のメシル酸塩の製造方法において使用できる溶媒量は、化合物1の0.1~100(容量/重量)倍である。好ましくは1~50(容量/重量)倍であり、より好ましくは5~30(容量/重量)倍である。
【0057】
本実施形態のメシル酸塩を析出させる工程における温度は、用いる溶媒によって適宜設定され、0℃から溶媒の沸点の間で設定される。また、析出させる工程における温度は一定である必要はなく、0℃から溶媒の沸点の間で加熱又は冷却することができる。
【0058】
本実施形態のメシル酸塩を析出させる工程における撹拌は、撹拌機、撹拌羽根、マグネチックスターラーなど、溶媒量や反応釜の大きさに応じて適宜用いて行う。撹拌速度は1~600rpmであり、好ましくは10~300rpmである。
また、一般的に塩の析出における撹拌時間は、短すぎると析出が十分に進まず、高収率で塩や結晶が得られない。一方、長すぎると有効成分の分解が起こり、収率が低下するため、適切な時間が設定される。本実施形態のメシル酸塩を析出させる工程における撹拌時間は、1分~120時間が挙げられ、好ましくは1時間~72時間であり、より好ましくは3時間~48時間である。
【0059】
本実施形態のメシル酸塩を析出させる工程において、種晶として化合物1のメシル酸塩を加えてもよい。加える種晶は、結晶化における化合物1のメシル酸塩の理論収量の0.1~10重量%であり、好ましくは1~3重量%である。
【0060】
溶媒中に析出した本実施形態に係るメシル酸塩は、例えば、濾取、有機溶媒による洗浄、減圧乾燥等の公知の分離精製手段によって、単離精製することができる。洗浄に使用される有機溶媒としては、上記製造に使用可能な溶媒と同じ溶媒が挙げられる。
【0061】
≪化合物1の精製方法≫
本発明において、化合物1の化学純度を向上するために、化合物1の製造における各工程において精製を行ってもよく、製造後の化合物1に対して精製を行ってもよい。当該精製は特に限定されず当該分野で使用される種々の精製方法を用いることができる。本発明の一実施形態では、具体的には、化合物1のフリー体から類縁物質を除去する精製工程を行う。
【0062】
本実施形態において、精製に用いられる化合物1のフリー体は、通常公知の方法により製造されたものでもよく、類縁物質1及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導されたものでもよいが、好ましくは類縁物質1及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導されたものである。なお、類縁物質1及びフェニルアセチルイソチオシアネートから誘導されたものとは、上記≪化合物1の製造方法≫に記載の類縁物質1とフェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程により得られるものと同義であり、その好ましい態様も同記載の好ましい態様と同様である。
【0063】
本実施形態において、精製する工程は、精製後の化合物1の化学純度が向上することを目的とする。ここでいう化学純度は、高速液体クロマトグラフィーにより算出される純度を言う。
本実施形態において、精製する工程は、再結晶、加熱懸濁などの方法を用いる工程が挙げられるが、好ましくは再結晶する工程を含む。
【0064】
本実施形態において、精製により除去される不純物は、化合物1以外の化合物等であれば特に制限はないが、好ましくは類縁物質1~5及びその塩、より好ましくは類縁物質1~3及び5及びその塩である。
【0065】
本実施形態において、精製に用いられる溶媒は特に制限はないが、N,N-ジメチルアセトアミド(以下DMAとも言う)、及びプロトン性極性溶媒を含む溶媒が好ましい。プロトン性極性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。より好ましくはDMA及びエタノールを含む溶媒、又は、DMA及び2-プロパノールを含む溶媒であり、さらに好ましくはDMA及びエタノールを含む溶媒である。なお、DMA及びプロトン性極性溶媒を含む溶媒を用いる場合、それらを予め混合して混合溶媒としたものを用いてもよいが、DMA及びプロトン性極性溶媒を順に用いた結果、それら溶媒が混合されることとなってもよい。
【0066】
本実施形態において、精製に用いられる溶媒量とは、化合物1を濾取する際に化合物1が分散している溶媒の量であり、濾取後の洗浄に用いる溶媒は含まれない。精製に用いられる溶媒量は、精製ができれば特に制限はないが、好ましくは精製する化合物1の0.5~100倍量(容量/重量)であり、より好ましくは2~50倍量(容量/重量)であり、さらに好ましくは5~20倍量(容量/重量)である。
【0067】
本実施形態において、精製に再結晶を採用した場合、化合物1が溶媒に溶解することが求められる。その際に採用される溶媒としては特に制限はないが、DMAのみ又は、DMA及びプロトン性極性溶媒を含む溶媒が好ましく、より好ましくはDMA及びプロトン性極性溶媒を含む溶媒であり、さらに好ましくはDMA及びエタノールを含む溶媒である。予めDMA及びプロトン性極性溶媒が混合された混合溶媒を用いてもよいし、DMAに化合物1を溶解させた後にプロトン性極性溶媒を混合し、結果として溶媒が混合されてもよい。中でも、高純度の化合物1を得る点から、DMAに化合物1を溶解する工程の後に、プロトン性極性溶媒を投入する工程を経ることが好ましく、DMAに化合物1を溶解する工程の後に、エタノールを投入する工程を経ることがより好ましい。
【0068】
なお、本発明者は、再結晶に際し、DMA以外の種々の溶媒についても検討を行った。例えばジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた化合物1の溶解が考えられる。しかしながら、DMSOを用いて溶解のために加熱すると、化合物1のアシルチオウレア構造におけるチオケトン(C=S)部分がケトン(C=O)になり、構造が崩れることが示唆された。
これに対しDMAは、化合物1の構造を維持したまま、良好に加熱して溶解できることが判明したことから、溶解する工程に用いる溶媒として好ましいことが示唆された。
【0069】
本実施形態において、精製に再結晶を採用した場合、化合物1が溶媒に溶解する温度は特に制限はないが、好ましくは40~100℃であり、より好ましくは50~80℃である。またDMAに溶解する場合には、溶解する温度は70~80℃がさらに好ましい。
【0070】
本実施形態において、化合物1を溶媒に溶解した後、溶解した化合物1を析出する温度は特に制限はないが、例えばエタノールを投入して析出させる場合、エタノールを投入する温度は50~80℃が好ましい。その後、析出(晶析)させる温度は、好ましくは45~55℃である。
【0071】
本実施形態において、精製に再結晶を採用した場合、化合物1が溶媒に溶解してから析出して濾取するまでの時間は、化合物1の析出量が一定になれば特に制限はないが、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは1~100時間であり、さらに好ましくは1~72時間である。
【0072】
本実施形態において、精製に再結晶を採用した場合、化合物1を濾取するときの温度は、用いる溶媒の融点以上であれば特に制限はないが、好ましくは-10~50℃であり、より好ましくは0~30℃である。
【0073】
本実施形態において、再結晶の溶媒にDMA及びエタノールを含む溶媒を用いた場合、DMAとエタノールの混合比(容量比)は、DMA:エタノール=1:0.01~1:100が好ましく、1:0.01~1:10又は1:0.1~1:100がより好ましく、1:0.1~1:10がさらに好ましく、1:1~1:10がよりさらに好ましい。
【0074】
再結晶する工程には、化合物1を溶媒に溶解する工程と溶解した化合物1を晶析(析出)させる工程を含む。
本実施形態において、再結晶の溶媒にDMA及びエタノールを含む溶媒を用いる場合、化合物1のフリー体を溶解させる工程に用いられる溶媒としては、DMA、又はDMAとプロトン性極性溶媒の混合溶媒が好ましく挙げられるが、より好ましくはDMAである。そして、化合物1のフリー体を溶解させるには、溶媒量及び温度を上記の通り設定することができる。
【0075】
次いで溶解した化合物1を析出させる工程では、上記溶媒に化合物1を溶解させた後、例えば、プロトン性極性溶媒を投下する、又は、それと共に若しくはそれに代えて温度を下げることにより、化合物1のフリー体を析出させることができる。プロトン性極性溶媒はエタノールが好ましい。
【0076】
このようにして得られた化合物1のフリー体が、APIの品質として十分満たしているかどうかの判断は、化合物1のメシル酸塩を分析することによって行われる。その判断は、ICHに記載の基準等に従うが、その際に基準となる化学純度は、高速液体クロマトグラフィーなどで測定することにより算出される。
【0077】
従って、本実施形態における化合物1を精製する工程は、特に化合物1のフリー体から類縁物質を除去する精製方法に関し、好ましくは化合物1のフリー体から類縁物質を除去する精製方法であって、より好ましくは再結晶する工程を含む精製方法である。
さらに好ましくは、化合物1のフリー体から類縁物質を除去する精製方法であって、溶媒にN,N-ジメチルアセトアミド及びエタノールを含む溶媒を用いた再結晶する工程を含む精製方法である。
【0078】
別の実施形態において、より好ましくは、化合物1のフリー体から類縁物質を除去する精製する工程が、75±5℃(70~80℃)で化合物1をDMAに溶解する工程、次いで65±15℃(50~80℃)にてエタノールを投入する工程、及び、その後50±5℃(45~55℃)で晶析する工程を含む精製方法である。
よりさらに好ましくは、化合物1のフリー体から類縁物質を除去する精製方法であって、75±5℃(70~80℃)で化合物1をDMA:エタノールの容量比が1:1~1:100.1~1倍量となるDMAに溶解する工程、次いで65±15℃(50~80℃)にてエタノールを投入する工程、及び、その後50±5℃(45~55℃)で晶析する工程を含む精製方法である。
【0079】
≪化合物1の類縁物質≫
製造された化合物1は、分解することで、類縁物質1や、下記に示す類縁物質2及び3といった化合物が生じる。また、特定の工程を含む方法により製造された化合物1には下記に示す類縁物質4や5が含まれうる。
【0080】
類縁物質2は、N-((3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)カーバモチオニル)-2-フェニルアセタミドであり、下記の構造を有する。
【0081】
【0082】
類縁物質3は、4-ヒドロキシ-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドであり、下記の構造を有する。
【0083】
【0084】
類縁物質4は、7-メトキシ-N-メチル-4-(4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)キノリン-6-カルボキサミドであり、下記の構造を有する。
【0085】
【0086】
類縁物質5は、4-(2-フルオロ-4-(2-フェニルアセタミド)フェノキシ)-7-メトキシ-N-メチルキノリン-6-カルボキサミドであり、下記の構造を有する。
【0087】
【0088】
上述したように、類縁物質1~3はいずれも、化合物1が分解することにより生じる化合物である。従って、類縁物質1~3とそれらの塩は、化合物1のAPI及び製剤に含まれうる不純物であると言える。
【0089】
類縁物質4は、以下の工程を含む方法により製造された化合物1に含まれうる化合物である。
【0090】
【0091】
すなわち、メチル 4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートを得る工程である、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、及び2-フルオロ-4-ニトロフェノールの連結(特許文献1の実施例39aに記載)において、2-フルオロ-4-ニトロフェノールに含まれる4-ニトロフェノールなどに由来する化合物である。
【0092】
類縁物質5は、上記の類縁物質1と、2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結する工程で得られる化合物1の副生成物である。
【0093】
類縁物質4及び5はいずれも、化合物1の製造工程で生じる化合物である。従って、類縁物質4及び5とそれらの塩は、化合物1のAPI及び製剤に含まれうる不純物であると言える。
【0094】
類縁物質1~5又はそれらの塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、本実施形態においては、いずれも「化合物又はその塩」に包含される。また、類縁物質1~5には、これらの互変異性体も含まれる。
【0095】
化合物の塩としては、特に限定するものではないが、メシル酸塩の他、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、又は硫酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はベンゼンスルホン酸などのアルキル硫酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等の有機酸との付加塩、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩、エチルアミン塩、アルギニン塩等の有機塩基との塩等が挙げられる。
【0096】
本明細書において、「類縁物質1」、「類縁物質2」、「類縁物質3」、「類縁物質4」、「類縁物質5」との記載は、当該類縁物質の「塩」及び「溶媒和物」を含めることを意図し得る。
【0097】
上記類縁物質1~5若しくはそれらの塩の組み合わせも化合物1のAPI及び製剤に含まれうる。
組み合わせは、2以上の上記類縁物質1~5又はその塩が含まれている。組み合わせ中のすべてが上記類縁物質1~5のうち2つ以上である場合、一部が上記類縁物質1~5のうち1つ以上であり残りが上記類縁物質1~5のうち1つ以上の塩である場合、すべてが上記類縁物質1~5のうち2つ以上の塩である場合のいずれもが包含される。組み合わせ中に、上記類縁物質1~5のうち1つ及び当該類縁物質1~5の塩を含んでもよい。
【0098】
また、本発明は、APIとしての化合物1またはその塩であって、類縁物質1~5及びそれらの塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である化合物1またはその塩を含む。
【0099】
類縁物質1~5及びそれらの塩の各含有量をAPI全体の0.2質量%未満とする、化合物1またはその塩の製造方法は、たとえば上記に記載したメチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導される化合物1またはその塩の製造方法が挙げられる。また、出発原料、試薬、溶媒などに由来する場合は、上記製造方法に使用される出発原料などを制御することにより、類縁物質1~5とそれらの塩のそれぞれの含有量を、API全体の0.2質量%未満とすることができる。類縁物質1~5とそれらの塩のそれぞれの含有量は、例えば、上記に記載した類縁物質の分析方法により決定することができる。
【0100】
上記実施形態は、好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導される、類縁物質1~5及びそれらの塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である化合物1またはその塩である。
より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造された、類縁物質1~5とそれらの塩の各含有量が、API全体の0.2質量%未満である化合物1またはその塩である。
さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上である、類縁物質1~5とそれらの塩の各含有量が、API全体の0.2質量%未満である化合物1のメシル酸塩である。
【0101】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質1及びそれらの塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導される、類縁物質1及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造された、類縁物質1及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上である、類縁物質1及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩である。
【0102】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質2及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質2及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、類縁物質2及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質2及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩である。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質3及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質3及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、類縁物質3及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質3及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩である。
【0104】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質4及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質4及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、類縁物質4及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質4及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩である。
【0105】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質5及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質5及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、類縁物質5及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含む製造方法により製造され、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質5及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩である。
【0106】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質1~5及びそれらの塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質1~5及びそれらの塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、類縁物質1~5及びそれらの塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質1~5及びそれらの塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0107】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質1及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質1及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、類縁物質1及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質1及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0108】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質2及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質2及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、類縁物質2及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質2及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0109】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質3及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質3及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、類縁物質3及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質3及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0110】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質4及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質4及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、類縁物質4及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質4及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0111】
別の実施形態において、本発明は、類縁物質5及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。好ましくは、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、2-フルオロ-4-ニトロフェノール、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートから誘導され、類縁物質5及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1またはその塩の製造方法である。より好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、類縁物質5及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。さらに好ましくは、類縁物質1、及び2-フェニルアセチルイソチオシアネートの連結工程を含み、かつ、1回の製造での類縁物質1の仕込み量が1kg以上であり、類縁物質5及びその塩の各含有量がAPI全体の0.2質量%未満である、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0112】
本発明の実施形態の1つは、類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結して化合物1を製造する工程、及び前記工程で得られた化合物1からそのメシル酸塩を製造する工程を含む、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0113】
さらに本発明の実施形態の1つは、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートからアミノリシスにより類縁物質1を製造する工程、前記工程で得られた類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結して化合物1を製造する工程、及び前記工程で得られた化合物1からそのメシル酸塩を製造する工程を含む、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0114】
さらに本発明の実施形態の1つは、類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結して化合物1を製造する工程、前記工程で得られた化合物1を精製する工程、及び前記工程で精製された化合物1からそのメシル酸塩を製造する工程を含む、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0115】
さらに本発明の実施形態の1つは、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートからアミノリシスにより類縁物質1を製造する工程、前記工程で得られた類縁物質1と2-フェニルアセチルイソチオシアネートとを連結して化合物1を製造する工程、前記工程で得られた化合物1を精製する工程、及び前記工程で精製された化合物1からそのメシル酸塩を製造する工程を含む、化合物1のメシル酸塩の製造方法である。
【0116】
さらに本発明の実施形態の1つは、化合物1を再結晶する工程を含む、化合物1の精製方法である。
【0117】
さらに本発明の実施形態の1つは、化合物1をN,N-ジメチルアセトアミド及びエタノールを含む溶媒を用いて再結晶する工程を含む、化合物1の精製方法である。
【実施例】
【0118】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例及び比較例で用いた各種試薬は、特に記載の無い限り市販品を使用した。
なお、化合物1のフリー体またはメシル酸塩に含まれる類縁物質1の含有量の測定は、高速液体クロマトグラフィーを用いて求めた。
【0119】
[参考例1]類縁物質1の合成:
特許文献1の実施例46を参考にして類縁物質1(特許文献1の化合物46a)を合成した。
【0120】
[実施例1]類縁物質1から化合物1のフリー体の合成:
窒素雰囲気下、トルエン(571.6mL)にエタノール(114.6mL)及び類縁物質1(27.50g)を投入し、撹拌した。そこに、2-フェニルアセチルイソチオシアネート(21.42g)を滴下した後に、内温20~30℃(目標25℃)にて20時間攪拌した。反応終了を確認後、析出物を濾取後、トルエンで洗浄した。
これを40~50℃で減圧乾燥することにより、化合物1のフリー体(収量39.40g,収率94.8%)を得た。
【0121】
[比較例1]メチル 4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートのアミノリシス:
【0122】
【0123】
キノリンの6位のカルボン酸またはエステルからメチルアミドを構築する適切な基質を探す目的で、上記スキームに示すような、メチル 4-(2-フルオロ-4-(3-(2-フェニルアセチル)チオウレイド)フェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート(以下、化合物2とも言う)に対してメチルアミンを用いたアミノリシスを試みた。
【0124】
化合物2は、実施例1の条件と同様に、類縁物質1の代わりに特許文献1の化合物39bの化合物を用いて合成した。
しかし、化合物2にメチルアミンを用いたアミノリシスを行っても化合物1は得られなかった。
また、化合物2を加水分解してカルボン酸を得たのちに、メチルアミンと縮合させる方法も検討した。しかし、加水分解の際に目的とするカルボン酸が得られなかった。
よって、化合物2よりメチルアミドを構築した後に、化合物1を得るのは不適であると判断した。
【0125】
[実施例2]N,N-ジメチルアセトアミド及びエタノールを含む溶媒による化合物1の再結晶(精製する工程1)及びメシル酸塩の製造(工程2):
(工程1)
実施例1で得られた化合物1のフリー体(3g)をN,N-ジメチルアセトアミド(12mL)に投入し、75℃に昇温させ、化合物1を溶解させた。そこにエタノール(24mL)を滴下し、50℃で30分撹拌した後に、5℃に冷却して1時間撹拌することで晶析させた。そして、析出物を濾取し、化合物1のフリー体(2.5g)を得た。
(工程2)
特許文献4の実施例1を参照し、化合物1のフリー体から化合物1のメシル酸塩を得た。
そして、当該化合物1のメシル酸塩に含まれる類縁物質1及びその塩の合計の含量を測定したところ、当該化合物1のメシル酸塩全体の0.05質量%未満に減少していた。従って、実施例1に示す化合物1を再結晶により精製する(工程1)はAPIの精製に適していると判断した。
【0126】
[参考例2]ジメチルスルホキシドによる化合物1のフリー体の再結晶(精製する工程):
実施例1で得られた化合物1のフリー体をジメチルスルホキシドに投入し、85℃にて加熱したが、化合物1が分解する傾向にあり、再結晶による精製が困難であった。
【0127】
[実施例3]化合物1のフリー体の製造:
(工程1) メチル 4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートの合成
特許文献1の実施例39(化合物39a)に記載の方法に従い、メチル 4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート、及び2-フルオロ-4-ニトロフェノールから、メチル 4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートを得た。
(工程2) メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートの合成
ジメトキシエタン(DME;70mL)に工程1で得たメチル 4-(4-ニトロ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-N-メチルキノリン-6-カルボキシレート(7.00g)、1%炭素担持白金(Pt/C;0.7g)を投入し、攪拌した。窒素ガスにより0.2~0.3MPaへ加圧し放圧する操作を3回実施した後、水素ガスにより0.2~0.3MPaへ加圧し放圧する操作を3回実施した。水素ガスにより0.2~0.3MPaへ加圧し内温70±5℃に加温後、同温度で2時間以上攪拌した。反応終了を確認後、内温40±5℃に冷却した。同温度で反応液をろ過後、DMEで洗浄した。ろ液を70mLまで減圧濃縮した後、内温25±5℃に調温後、水(105mL)を30分以上かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間以上攪拌した。結晶をろ取後、DME/水(1/4)(35mL)で洗浄した。得られた結晶を外温45±5℃で減圧乾燥し、メチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレート(6.53g、収率101.5%)を得た。
(工程3) 類縁物質1の合成
特許文献1の実施例46(46a)に記載の方法に従い、工程2で得たメチル 4-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキシレートから類縁物質1を得た。
(工程4)
窒素雰囲気下、トルエン(477.1L)にエタノール(95.75L)及び類縁物質1(22.96kg)を投入し、撹拌した。そこに、2-フェニルアセチルイソチオシアネート(純分量17.88kg)を滴下した後に、内温20~30℃(目標25℃)にて6時間攪拌した。反応終了を確認後、同温度でさらに1時間攪拌し、析出物を濾取後、トルエンで洗浄した。
これを40~50℃で減圧乾燥することにより、化合物1のフリー体(収量34.22kg,収率98.1%)を得た。
かかる製造方法は工程数が少なく、またシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行わなくても不純物量の少ない化合物1を得られることから、医薬品の品質を維持でき、かつ大量製造に好適であると判断した。
【0128】
[実施例4]化合物1のメシル酸塩の大量製造:
特許文献4の実施例1を参照し、実施例3で得られた化合物1のフリー体(11.95kg)から化合物1のメシル酸塩を得た(収量11.50kg,収率81.2%)。化合物1のメシル酸塩に対する類縁物質1~5又はその塩の各含有量は0.2質量%未満であった。
かかる製造方法は実施例3と同様に工程数が少なく、またシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行わなくても不純物量の少ない化合物1のメシル酸塩を得られることから、医薬品の品質を維持でき、かつ大量製造に好適であると判断した。
【0129】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2020年2月14日出願の日本特許出願(特願2020-023754)、2020年5月18日出願の日本特許出願(特願2020-086940)、2020年9月18日出願の日本特許出願(特願2020-157815)、2020年9月18日出願の日本特許出願(特願2020-157816)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。