(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】平面フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/203 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01P1/203
(21)【出願番号】P 2022508365
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010521
(87)【国際公開番号】W WO2021187457
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020046515
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】旭 保彰
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-212111(JP,A)
【文献】特開2011-061296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板上に設けられたフィルタ部と、
前記誘電体基板上に
設けられた入出力線路と、
前記誘電体基板上に設けられ、前記フィルタ部と前記入出力線路とをつなぐ接続線路と、
を備え、
前記誘電体基板は、前記フィルタ部、前記入出力線路
および前記接続線路が設けられた表面とは反対側の裏面から前記表面に向かう第1方向における第1厚を有する第1領域と、前記第1厚よりも厚い前記第1方向の第2厚を有する第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間に設けられた第3領域と、を含み、
前記第3領域は、前記第1領域との境界において前記第1厚を有し、前記第2領域との境界において前記第2厚を有し、
前記誘電体基板は、前記第3領域の前記裏面側に斜面を有することにより、前記第3領域の厚みは、前記第2領域から前記第1領域に近づくにつれて薄くなり、
前記フィルタ部は、前記第1領域に設けられ、前記入出力線路は、前記第2領域上に設けられ
、前記接続線路は、前記第1領域と前記第3領域にまたがって設けられた、平面フィルタ。
【請求項2】
前記入出力線路は、前記誘電体基板の前記表面に沿った第2方向に延在し、
前記フィルタ部は、前記誘電体基板の前記表面に沿った第3方向であって、前記第2方向と交差する第3方向に延在し、前記第3方向に順に並んだ第1端および第2端を有する第1線路と、前記第3方向に延在し、前記第1線路に対向し、且つ、離間して配置され、前記第3方向に順に並んだ第1端および第2端を有する
第2線路と、前記第2方向に延在し、前記第1線路の第2端および
前記第2線路の第2端に接続された第3線路と、を有する第1共振器を含む、請求項1記載の平面フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ部は、前記第3方向に延在し、前記第3方向に順に並んだ第1端および第2端とを有する第4線路と、前記第3方向に延在し、前記第4線路に対向し、且つ、離間して配置され、前記第3方向に順に並んだ第1端および第2端を有する第5線路と、前記第2方向に延在し、前記第4線路の第1端および前記第5線路の第1端に接続された第6線路と、を有する第2共振器をさらに含み、
前記第1共振器および前記第2共振器は、前記第2方向に並び、相互に離間して配置され、前記第1共振器の前記第2線路は、前記第2共振器の前記第4線路に対向して配置され、
前記第2方向において、前記第2線路の第1端は、前記第4線路の第1端に対向し、前記第2線路の第2端は、前記第4線路の第2端に対向する請求項2記載の平面フィルタ。
【請求項4】
前記第1線路および前記第2線路は、それぞれ、前記第2方向の第1幅および第2幅を有し、
前記第1幅および前記第2幅は、前記入出力線路の前記第3方向の幅よりも狭い、請求項2記載の平面フィルタ。
【請求項5】
前記第3線路は、前記第3方向の第3幅を有し、
前記第3幅は、前記入出力線路の前記第3方向の幅よりも狭い、請求項4記載の平面フィルタ。
【請求項6】
前記第4線路および前記第5線路は、それぞれ、前記第2方向の第4幅および第5幅を有し、
前記第4幅および前記第5幅は、前記入出力線路の前記第3方向の幅よりも狭い、請求項3記載の平面フィルタ。
【請求項7】
前記第6線路は、前記第3方向の第6幅を有し、
前記第6幅は、前記入出力線路の前記第3方向の幅よりも狭い、請求項6記載の平面フィルタ。
【請求項8】
前記第1共振器は、前記入出力線路と前記第2共振器との間に配置され、
前記フィルタ部は、前記第3方向に延在し、前記第3方向に順に並ぶ第1端および第2端を有する結合線路をさらに含み、
前記結合線路は、前記入出力線路と前記第1共振器との間に位置し、前記第1共振器の前記第1線路に対向し、且つ、離間して配置され、
前記結合線路の第1端は、前記入出力線路に接続され、前記第1線路の第1端に対向し、
前記結合線路の第2端は、前記第1線路の第2端に対向する請求項3記載の平面フィルタ。
【請求項9】
前記誘電体基板の前記表面に沿った方向であって、前記入出力線路から前記フィルタ部に向かう方向と交差する方向において、前記入出力線路は、第7幅を有し、
前記第1領域における前記接続線路は、前記第7幅よりも狭い第8幅を有する請求項1記載の平面フィルタ。
【請求項10】
前記誘電体基板の前記表面に沿った方向であって、前記入出力線路から前記フィルタ部に向かう方向と交差する前記方向において、前記第3領域における前記接続線路の幅は、前記第2領域から前記第1領域に近づくにつれて前記第7幅から前記第8幅に向けて狭くなる請求項9記載の平面フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、平面フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体基板上に設けられる平面フィルタは、数GHz以上の高周波帯で使用され、例えば、分布定数線路を組み合わせて構成される。このため、平面フィルタの小型化には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、小型化された平面フィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る平面フィルタは、誘電体基板と、前記誘電体基板上に設けられたフィルタ部と、前記誘電体基板上において、前記フィルタ部に接続された入出力線路と、を備える。前記誘電体基板は、前記フィルタ部および入出力線路が設けられた表面とは反対側の裏面から前記表面に向かう第1方向における第1厚を有する第1領域と、前記第1厚よりも薄い前記第1方向の第2厚を有する第2領域と、を含み、前記裏面側に前記第1厚と前記第2厚との差に相当する段差を有する。前記フィルタ部は、前記第1領域に設けられ、前記入出力線路は、前記第2領域上に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る平面フィルタを示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る平面フィルタを模式的に示す部分平面図である。
【
図3】実施形態に係る平面フィルタの特性を示すグラフである。
【
図4】実施形態の第1変形例に係る平面フィルタを示す模式図である。
【
図5】実施形態の第2変形例に係る平面フィルタを示す模式図である。
【
図6】比較例に係る平面フィルタを示す模式図である。
【
図7】比較例に係る平面フィルタの特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
図1(a)および(b)は、実施形態に係る平面フィルタ1を示す模式図である。
図1(a)は、誘電体基板DSの表面を示す平面図である。
図1(b)は、
図1(a)中に示すA-A線に沿った断面図である。
【0010】
図1(a)に示すように、平面フィルタ1は、誘電体基板DSと、フィルタ部FLPと、入出力線路IOL1と、入出力線路IOL2と、を含む。平面フィルタ1は、誘電体基板DSの表面上に設けられた複数の分布定数線路により構成される。
【0011】
誘電体基板DSは、第1領域TR1と、第2領域TR2と、を含む。フィルタ部FLPは、第1領域TR1上に設けられる。入出力線路IOL1およびIOL2は、第2領域TR2上に設けられる。誘電体基板DSは、例えば、PPE樹脂基板である。
【0012】
フィルタ部FLPは、入出力線路IOL1と入出力線路IOL2との間に設けられる。入出力線路IOL1、フィルタ部FLPおよび入出力線路IOL2は、誘電体基板DSの表面に沿った方向(例えば、X方向)に並べて配置される。入出力線路IOL1および入出力線路IOL2は、それぞれ、X方向に延在し、フィルタ部FLPに接続される。入出力線路IOL1および入出力線路IOL2は、それぞれ、誘電体基板DSの表面に沿った方向(例えば、Y方向)における線幅W0を有する。
【0013】
マイクロ波信号は、例えば、ヘアピン型フィルタを想定すると、入出力線路IOL1に入力され、フィルタ部FLPを介して、入出力線路IOL2から出力される。また、マイクロ波信号は、入出力線路IOL2に入力され、フィルタ部FLPを介して、入出力線路IOL1から出力されても良い。
【0014】
フィルタ部FLPは、例えば、共振器HR1と、共振器HR2と、共振器HR3と、第1結合線路CL1と、第2結合線路CL2と、接続線路IOLAと、接続線路IOLBと、を含む。共振器HR1~HR3は、相互に離間し、例えば、X方向に並べて配置される。共振器HR2は、共振器HR1と共振器HR3との間に設けられる。
【0015】
第1結合線路CL1は、接続線路IOLAと共振器HR1との間に設けられる。第1結合線路CL1は、接続線路IOLAに接続される。また、第1結合線路CL1は、共振器HR1から離間して配置される。
【0016】
第2結合線路CL2は、接続線路IOLBと共振器HR3との間に設けられる。第2結合線路CL2は、接続線路IOLBに接続される。また、第2結合線路CL2は、共振器HR3から離間して配置される。
【0017】
入出力線路IOLAは、第1結合線路CL1と入出力線路IOL1との間に設けられる。入出力線路IOLAは、第1領域TR1と第2領域TR2との境界において、入出力線路IOL1に接続される。また、入出力線路IOLAは、第1領域TR1上で、第1結合線路CL1に接続される。入出力線路IOLAは、例えば、Y方向の幅W0Aを有する。幅W0Aは、入出力線路IOL1のY方向の幅W0よりも狭い。
【0018】
入出力線路IOLAを設けることにより、線路のインピーダンスの不連続が減り、入出力線路IOL1と第1結合線路CL1との間のマイクロ波の反射を低減することができる。
【0019】
入出力線路IOLBは、第2結合線路CL2と入出力線路IOL2との間に設けられる。入出力線路IOLBは、第1領域TR1と第2領域TR2との境界において、入出力線路IOL2に接続される。また、入出力線路IOLBは、第1領域TR1上で、第2結合線路CL2に接続される。入出力線路IOLBは、例えば、Y方向の幅W0Bを有する。幅W0Bは、入出力線路IOL2のY方向の幅W0よりも狭い。
【0020】
入出力線路IOLBを設けることにより、線路のインピーダンスの不連続が減り、入出力線路IOL2と第2結合線路CL2との間のマイクロ波の反射を低減することができる。
【0021】
入出力線路IOL1、入出力線路IOL2、共振器HR1~HR3、第1結合線路CL1および第2結合線路LI2は、それぞれ、誘電体基板DS上に設けられた金属層であり、例えば、銅(Cu)を含む。
【0022】
図1(b)に示すように、誘電体基板DSは、その裏面BSから表面FSに向かう方向(例えば、Z方向)において、第1厚ST
1と、第2厚ST
2と、を有する。第1厚ST
1は、第2厚ST
2よりも薄い。誘電体基板DSは、第1領域TR1において、第1厚ST
1を有し、第2領域TR2において、第2厚ST
2を有する。また、誘電体基板DSは、例えば、その裏面BS側における第1領域TR1と第2領域TR2との境界において、第1厚ST
1と第2厚ST
2との差ΔTに相当する段差を有する。
【0023】
誘電体基板DSは、その裏面BSを覆う金属層10を含む。金属層10は、例えば、銅(Cu)を含む。金属層10は、誘電体基板DSの裏面BS側の段差も覆うように設けられる。
【0024】
図2は、実施形態に係る平面フィルタ1を模式的に示す部分平面図である。
図2は、フィルタ部FLPを示す模式図である。
【0025】
図2に示すように、第1共振器HR1は、第1線路13と、第2線路15と、第3線路17と、を含む。第1線路13および第2線路15は、それぞれ、誘電体基板DSの表面FSに沿った方向(例えば、Y方向)に延在する。第1線路13および第2線路15は対向し、且つ、相互に離間して配置される。
【0026】
第1線路13は、Y方向に順に並んだ第1端13aと第2端13bとを含む。第2線路15は、Y方向に順に並んだ第1端15aと第2端15bとを含む。第3線路17は、例えば、X方向に延在し、第1線路13の第2端13bおよび第2線路15の第2端15bに接続される。
【0027】
第2共振器HR2は、第4線路23と、第5線路25と、第6線路27と、を含む。第4線路23および第5線路25は、それぞれ、Y方向に延在する。第4線路23および第5線路25は対向し、且つ、相互に離間して配置される。
【0028】
第4線路23は、Y方向に順に並んだ第1端23aと第2端23bとを含む。第5線路25は、Y方向に順に並んだ第1端25aと第2端25bとを含む。第6線路27は、例えば、X方向に延在し、第4線路23の第1端23aおよび第5線路25の第1端25aに接続される。
【0029】
第3共振器HR3は、第7線路33と、第8線路35と、第9線路37と、を含む。第7線路33および第8線路35は、それぞれ、Y方向に延在する。第7線路33および第8線路35は対向し、且つ、相互に離間して配置される。
【0030】
第7線路33は、Y方向に順に並んだ第1端33aと第2端33bとを含む。第8線路35は、Y方向に順に並んだ第1端35aと第2端35bとを含む。第9線路27は、例えば、X方向に延在し、第7線路33の第2端33bおよび第8線路35の第2端25bに接続される。
【0031】
第1共振器HR1および第2共振器HR2は相互に離間してX方向に並び、第1共振器HR1の第2線路15は、第2共振器HR2の第4線路23に対向する。また、第2線路15の第1端15aは、第4線路23の第1端23aと対向し、第2線路15の第2端35bは、第4線路23の第2端23bと対向する。
【0032】
第2共振器HR2および第3共振器HR3は相互に離間してX方向に並び、第2共振器HR2の第5線路25は、第3共振器HR3の第7線路33に対向する。また、第5線路25の第1端25aは、第7線路33の第1端33aと対向し、第5線路25の第2端25bは、第7線路33の第2端33bと対向する。
【0033】
第1結合線路CL1は、Y方向に延在し、X方向において、第1共振器HR1の第1線路13に対向する。第1結合線路CL1は、Y方向に順に並んだ第1端CLaと第2端CLbとを有し、第1端CLaにおいて、接続線路IOLAに接続される。また、第1結合線路CL1の第1端CLaは、第1線路13の第1端13aに対向し、第1結合線路CL1の第2端CLbは、第1線路13の第2端13bに対向する。
【0034】
第2結合線路CL2は、Y方向に延在し、X方向において、第3共振器HR3の第8線路35に対向する。第2結合線路CL2は、Y方向に順に並んだ第1端CLaと第2端CLbとを有し、第1端CLaにおいて、接続線路IOLBに接続される。また、第2結合線路CL2の第1端CLaは、第8線路35の第1端35aに対向し、第2結合線路CL2の第2端CLbは、第8線路35の第2端35bに対向する。
【0035】
第1結合線路CL1は、接続線路IOLAのX方向の端に接続される。第1結合線路CL1は、接続線路IOLAの端の2つの角のうちの一方の角から第1端CLaをΔWだけY方向にシフトさせた位置において接続される。例えば、接続線路IOLAのY方向の幅がW0Aである時、第1結合線路CL1は、W0A-ΔWの接続幅を持って、接続線路IOLAに接続される。
【0036】
第2結合線路CL2は、接続線路IOLBのX方向の端に同様に接続される。すなわち、第2結合線路CL2は、接続線路IOLBの端の2つの角のうちの一方の角から第1端CLaをΔWだけY方向にシフトさせた位置において接続される。例えば、接続線路IOLBのY方向の幅がW0Bである時、第2結合線路CL2は、W0B-ΔWの接続幅を持って、接続線路IOLBに接続される。
【0037】
第1線路13のX方向の幅W1、第2線路15のX方向の幅W2、第4線路23のX方向の幅W4、第5線路25のX方向の幅W5、第7線路33のX方向の幅W7および第8線路のX方向の幅W8は、例えば、接続線路IOLAおよびIOLBのそれぞれのY方向の幅W0AおよびW0Bよりも狭い。例えば、幅W1、W2、W4、W5、W7およびW8は、略同一である。
【0038】
第3線路17のY方向の幅W3、第6線路27のY方向の幅W6および第9線路37のY方向の幅W9は、例えば、幅W0よりも狭い。例えば、幅W3、W6およびW9は、略同一である。
【0039】
実施形態では、第1線路13~第9線路37、第1結合線路CL1および第2結合線路CL2は、例えば、85Ωの特性インピーダンスをそれぞれ有する。また、第1接続線路IOLA、第2接続線路IOLB、入出力線路IOL1および入出力線路IOL2は、例えば、50Ωの特性インピーダンスをそれぞれ有する。このため、第1領域TR1上に設けられるフィルタ部FLPでは、第1線路13~第9線路37の幅W1~W9、第1結合線路CL1のX方向の幅WC1および第2結合線路CL2のX方向の幅WC2は、例えば、第1領域TR1を有しない誘電体基板上にフィルタ部FLPを設ける場合よりも狭い。さらに、X方向において隣り合う各線路間の距離を狭くすることができる。これにより、フィルタ部FLPのX方向の幅WF1は、例えば、第1領域TR1を有しない誘電体基板上に設ける場合に比べて狭くなる。結果として、平面フィルタ1は、第1領域TR1を有しない誘電体基板上に設けられる場合に比べて小型化される。なお、フィルタ部FLPのY方向の幅WF2は、例えば、λ/4(λ:マイクロ波の波長)と略同一である。
【0040】
例えば、誘電体基板を薄くすることにより、平面フィルタを小型することは可能である。しかしながら、誘電体基板を薄くすると、基板が反り易くなり、その機械的強度は低下する。実施形態では、第1領域TR1および第2領域TR2を設けることにより、誘電体基板DSの機械的強度を維持しながら、平面フィルタ1を小型することができる。
【0041】
図3は、実施形態に係る平面フィルタ1の特性を示すグラフである。横軸は、マイクロ波の周波数(GHz)であり、縦軸は、マイクロ波の透過係数(dB)および反射係数(dB)である。
【0042】
図3に示すように、平面フィルタ1は、20GHzの中心周波数を有するバンドパスフィルタである。通過特性は、約マイナス2.8dB、通過帯域幅は、約1.5GHzである。
【0043】
この例では、誘電体基板DSは、PPE樹脂基板である。第1領域TR1の第1厚ST1は、0.2mmであり、第2領域TR2の第2厚ST2は、0.4mmである。フィルタ部FLPのX方向の幅WF1は、2.95mmであり、Y方向の幅WF2は、2.25mmである。
【0044】
例えば、
図6に示す平面フィルタ4は、Z方向の厚さが0.4mmの誘電体基板上に設けられる。平面フィルタ4は、均一な厚さの誘電体基板上に設けられ、第1領域TR1を有しない。平面フィルタ4は、
図7に示すように、平面フィルタ1と同等の通過特性を有し、平面フィルタ4におけるフィルタ部FLPのX方向の幅は、4.3mmである。すなわち、実施形態に係る平面フィルタ1では、通過特性を変化させないで、誘電体基板の表面積を約35%縮小することが可能である。
【0045】
図4は、実施形態の第1変形例に係る平面フィルタ2を示す模式図である。平面フィルタ2は、誘電体基板DSの表面上に設けられたフィルタ部FLPと、入出力線路IOL1と、入出力線路IOL2と、を有する。フィルタ部FLPは、第1領域TR1上に設けられる。入出力線路IOL1およびIOL2は、第2領域TR2上に設けられる。
【0046】
この例では、フィルタ部FLPは、共振器HR1と、共振器HR2と、第1結合線路CL1と、第2結合線路CL2と、接続線路IOLAと、接続線路IOLBと、を含む。入出力線路IOL1、接続線路IOLA、第1結合線路CL1および共振器HR1の配置は、平面フィルタ1と同じである。
【0047】
第2結合線路CL2は、共振器HR2と接続線路IOLBとの間に設けられ、共振器HR2の第5線路25と対向するように配置される。第5線路25の第1端25aは、第2結合線路CL2の第1端CLaと対向する。第5線路25の第2端25bは、第2結合線路CL2の第2端CLbと対向する。接続線路IOLBは、第2結合線路CL2の第2端CLbに接続される。
【0048】
接続線路IOLBは、第1領域TR1と第2領域TR2との境界において、入出力線路IOL2に接続される。入出力線路IOL2は、誘電体基板DSの表面に沿ってX方向に延在する。
【0049】
このように、共振器HR1~HR2は、所望のフィルタ特性を得るために、第1結合線路CL1と第2結合線路CL2との間に適宜配置される。共振器の数は、これらの例に限定される訳ではなく、例えば、第1結合線路CL1と第2結合線路CL2との間に3つ以上の共振器が配置されても良い。
【0050】
図5(a)および(b)は、実施形態の第3変形例に係る平面フィルタ3を示す模式図である。
図5(a)は、誘電体基板DSの表面を示す平面図である。
図5(b)は、
図5(a)中に示すB-B線に沿った断面図である。
【0051】
平面フィルタ3は、誘電体基板DSの表面上に設けられたフィルタ部FLPと、入出力線路IOL1と、入出力線路IOL2と、を有する。フィルタ部FLPは、第1領域TR1上に設けられる。入出力線路IOL1およびIOL2は、第2領域TR2上に設けられる。
【0052】
図5(a)に示すように、誘電体基板DSは、第3領域TR3をさらに含む。第3領域TR3は、第1領域TR1と第2領域TR2との間に設けられる。平面フィルタ3は、第1領域TR1上および第3領域TR3上にまたがって設けられた接続線路IOLAおよび接続線路IOLBをさらに含む。
【0053】
接続線路IOLAは、第1結合線路CL1と入出力線路IOL1との間に設けられる。接続線路IOLAは、第2領域TR2と第3領域TR3との境界において、入出力線路IOL1に接続される。また、接続線路IOLAは、第1領域TR1において、第1結合線路CL1に接続される。
【0054】
接続線路IOLAは、例えば、第2領域TR2と第3領域TR3との境界において、Y方向の幅W0を有する。また、接続線路IOLAは、第1領域TR上において、Y方向の幅W0Aを有する。また、第1領域TR1と第3領域TR3との境界において、Y方向の幅W0Aを有する。幅W0Aは、幅W0よりも狭い。接続線路IOLAのY方向の幅は、第2領域TR2と第3領域TR3との境界から第1領域TR1と第3領域TR3との境界に近づくにつれて狭くなる。
【0055】
接続線路IOLBは、第2結合線路CL2と入出力線路IOL2との間に設けられる。接続線路IOLBは、第2領域TR2と第3領域TR3との境界において、入出力線路IOL2に接続される。また、接続線路IOLAは、第1領域TR1において、第2結合線路CL1に接続される。
【0056】
接続線路IOLBは、例えば、第2領域TR2と第3領域TR3との境界において、Y方向の幅W0を有する。また、接続線路IOLBは、第1領域TR1上において、Y方向の幅W0Bを有する。また、第1領域TR1と第3領域TR3との境界において、Y方向の幅W0Bを有する。幅W0Bは、幅W0よりも狭い。接続線路IOLBのY方向の幅は、第2領域TR2と第3領域TR3との境界から第1領域TR1と第3領域TR3との境界近づくにつれて狭くなる。
【0057】
図5(b)に示すように、誘電体基板DSは、例えば、第2領域TR2と第3領域TR3との境界において、第2厚ST
2を有する。また、誘電体基板DSは、第1領域TR1と第3領域TR3との境界において、第1厚ST
1を有する。すなわち、第3領域TR3の第3厚ST
3は、第1領域TR1に近づくにつれて薄くなる。
【0058】
例えば、誘電体基板DSは、第3領域TR3中の第1位置P1において、第3厚ST3Aを有し、第2位置P2において第3厚ST3Bを有する。第1位置P1は、第1領域TR1と第2位置P2との間に位置し、第3厚ST3Aは、第3厚ST3Bよりも薄い。
【0059】
上記の構成により、接続線路IOLAおよび接続線路IOLBは、例えば、特性インピーダンス50Ωをそれぞれ有するように設けられる。
【0060】
この例では、入出力線路IOL1と第1結合線路CL1との間、および、入出力線路IOL2と第2結合線路CL2との間のマイクロ波の反射をさらに低減することができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。