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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】組立システム
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20240109BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B23P21/00 307Z
B23P19/00 301K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022517693
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016321
(87)【国際公開番号】W WO2021220938
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2020078156
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】篠原 達夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】山口 直毅
(72)【発明者】
【氏名】水野 拓海
(72)【発明者】
【氏名】小倉 誉史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 光
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-265433(JP,A)
【文献】特開2019-155538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339456(US,A1)
【文献】特開2015-176389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
B23P 19/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して複数種類の部品を順番に配置し、固定しながら完成品を組み立てるための組立システムにおいて、
作業者と協働する協働ロボットと、
前記ワークに配置された前記部品に表示された識別情報を読み取る識別情報読取部と、
前記読み取られた識別情報に基づいて、前記ワークに配置された前記部品の種類の正誤を判定するとともに、前記正誤結果に従って前記協働ロボットを制御する制御装置と、
を具備し、
前記作業者は前記部品の配置作業を担当し、
前記協働ロボットは前記作業者により配置された前記部品の固定作業を担当し、
前記制御装置は、前記ワークに配置された前記部品の種類が正しいと判定したときに前記協働ロボットに対して前記部品の固定作業の開始を許可する、組立システム。
【請求項2】
前記識別情報読取部は前記協働ロボットに取り付けられる、請求項1記載の組立システム。
【請求項3】
前記ワークに対して固定された前記部品を撮像する撮像部をさらに具備し、
前記協働ロボットの動作は、前記撮像された部品画像に基づく前記ワークに固定された前記部品の固定状態の良否結果に従って継続され、又は停止される、請求項1又は2に記載の組立システム。
【請求項4】
前記協働ロボットは、前記部品画像に基づいて前記ワークに固定された前記部品の固定状態の良否を判定するとともに、前記良否結果を前記制御装置に送信する、請求項3記載の組立システム。
【請求項5】
前記正誤結果、前記良否結果、前記完成品の種類、前記完成品の製造数量、及び前記協働ロボットの状態、少なくとも一を表示する表示部をさらに具備する、請求項3又は4に記載の組立システム。
【請求項6】
前記協働ロボットはネジ締め部を有し、
前記制御装置は、前記正誤結果として前記ワークに配置された前記部品の種類が正しいとき、前記協働ロボットに対してネジ締め動作の開始を許可する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組立システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ワークに配置された前記部品の種類が誤っていると判定したときに前記協働ロボットに対して前記部品の固定作業の開始を許可しない、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組立システム。
【請求項8】
前記ワークを移動自在に支持するコンベア装置をさらに備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組立システム。
【請求項9】
前記コンベア装置を挟んで両側に前記協働ロボットと前記作業者の立ち位置とが設置され、前記協働ロボットの手先の可動範囲と前記作業者の作業範囲とがオーバーラップする位置に前記コンベア装置が配置される、請求項8記載の組立システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記作業者から入力された作業完了を示す信号を受信したとき、又は前記協働ロボットから作業完了を示す信号を受信したとき、前記ワークを移動させるために前記コンベア装置を制御する、請求項8又は9に記載の組立システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記読み取られた識別情報を内部のデータメモリに登録するか、又は外部のデータサーバに送信する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の組立システム。
【請求項12】
前記協働ロボットは複数の動作プログラムを記憶する記憶部を有し、
前記制御装置は、外部システムと通信可能に接続され、前記外部システムから受信した前記完成品を特定する完成品情報に基づいて、前記協働ロボットに前記複数の動作プログラムのうち一の動作プログラムを指示する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の組立システム。
【請求項13】
前記完成品を特定する完成品情報の入力を作業者から受け付けるための入力部を具備し、
前記協働ロボットは複数の動作プログラムを記憶する記憶部を有し、
前記制御装置は、前記入力された前記完成品情報に基づいて、前記協働ロボットに前記複数の動作プログラムのうち一の動作プログラムを指示する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の組立システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立システムに関する。
【背景技術】
【0002】
労働人口の減少に伴って、製造分野にロボットの導入が進んでいる。ロボットと作業者とが製造に係る作業を協調して行うロボットシステムが開示されている(例えば、特許文献1)。このようなロボットシステムにおいて、製造された製品の検査は不良品の流出を防ぐために重要なものとなっている。
【0003】
従来、製品の組立工程において、実装された部品の種類や部品の組付け状態を確認するために、作業者は、予め指定された手順に従って、目視検査を実施していた。しかしながら、作業者による目視検査では、通常の組立作業時間に検査時間が追加されるため1つの工程における作業時間が長くなる、作業者の熟練度、体調などによって目視検査の質にバラつきが発生してしまう、などの課題があった。作業者の目視検査に代わって検査専用の装置を導入することで、検査の質のバラつきや部品の誤実装や組立ミスといった不具合の流出リスクを低減することができる。しかし、この場合、組立作業の途中あるいは組立完了後に新しく検査専用の工程を設ける必要があり、全体の組立作業効率を低下させる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-209401公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、不良品の流出リスクを低減するとともに、組立作業の作業効率を向上させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る組立システムは、ワークに対して複数種類の部品を順番に配置し、固定しながら完成品を組み立てるためのシステムであ。組立システムは、作業者と協働する協働ロボットと、ワークに配置された部品に表示された識別情報を読み取る識別情報読取部と、読み取られた識別情報に基づいて、ワークに配置された部品の種類の正誤を判定するとともに、正誤結果に従って協働ロボットを制御する制御装置と、を具備する。作業者は部品の配置作業を担当し、協働ロボットは作業者により配置された部品の固定作業を担当し、制御装置は、ワークに配置された部品の種類が正しいと判定したときに協働ロボットに対して部品の固定作業の開始を許可する。
【発明の効果】
【0007】
本態様によれば、不具合の流出リスクを低減するとともに、組立作業の作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る組立システムの構成を示す平面図である。
図2図2は、図1の組立システムのシステム構成図である。
図3図3は、図2の記憶装置に記憶される製品管理表の一例を示す図である。
図4図4は、図2のタッチパネルディスプレイに表示される確認画面の一例を示す図である。
図5図5は、図1の組立システムを使用した組立作業の作業手順を示す工程図である。
図6図6は、図5の工程1-工程4を説明するための補足説明図である。
図7図7は、図5の工程5-工程7を説明するための補足説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る組立システムを説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
(組立システムの概要)
本実施形態に係る組立システムは、作業者と協働ロボットとが協働して、完成品の組立作業を行うためのシステムである。ここでの完成品とは、この組立システムで組み立てられた最終物を表すものであって、必ずしも、最終的に販売される製品を表すものではない。
【0011】
本実施形態に係る組立システムの特徴の1つは、完成品を組み立てる複数の作業工程のうち、部品の種類の確認作業、ワーク(ベース部品)に対する部品の固定作業を協働ロボットに担当させることができるように構成した点にある。協働ロボットが得意とする単純な作業を協働ロボットに担当させ、比較的複雑な作業を作業者に担当させ、それぞれの作業時間を均一化することにより、全体の製造効率を向上するとともに、品質のバラつきを抑えられる。例えば、協働ロボットは、作業者では時間のかかってしまう部品の確認作業、作業者による作業ミスが多く身体的な負担が大きい部品の固定作業を担当する。作業者は、全体の工程の中で、テンプレートや治具を用いる比較的複雑なワークに対する部品の配置作業を担当する。
【0012】
(組立システムの構成)
本実施形態に係る組立システムは、ライン生産方式に対応するように構成されている。複数の作業者と複数の協働ロボットとは、コンベア装置の脇の所定の位置に配置され、コンベア装置によって搬送されるワークに対して予め決められた作業を行い、それにより完成品が組み立てられる。組立システムは、1つの作業工程を1人の作業者に担当させるように構成している。しかしながら、複数の工程を1人の作業者に担当させるように構成してもよいし、1人の作業者と1台の協働ロボットとが協働して完成品を組み立てるように構成してもよい。
【0013】
図1に示すように、組立システム10はコンベア装置30を有する。コンベア装置30を挟んで一方側に複数、ここでは3台の協働ロボット20A、20B,20Cがコンベア装置30に沿って並設されている。3台の協働ロボット20A,20B,20Cに近接して、協働ロボット20A,20B,20Cにネジを供給するネジ供給機80A,80B,80Cが設置されている。ネジ供給機80は協働ロボット20からの指示に従って、協働ロボット20にネジを供給する。コンベア装置30を挟んで他方側には、複数の作業者100A,100B,100C,100D,100E,100F、100Gの立ち位置が決められている。コンベア装置30には、タッチパネルディスプレイ60と複数の完了ボタン37A,37B,37C,37D,37E,37F,37Gが取り付けられている。複数の完了ボタン37A,37B,37C,37D,37E,37F,37Gは、複数の作業者100A,100B,100C,100D,100E,100F、100Gの立ち位置にそれぞれ対応する位置に配置される。以下の説明において、特に区別する必要がない場合、協働ロボット20、完了ボタン37、及び作業者100と表記する。
【0014】
(統括制御装置70)
統括制御装置70は、組立システム10を統括して制御する。図2に示すように、統括制御装置70は、プロセッサ71を有する。プロセッサ71には、データ・制御バスを介して、記憶装置73、通信装置75が接続される。
【0015】
記憶装置73は、組立対象の完成品に応じてコンベア装置30及び協働ロボット20を制御するための複数の組立プログラムを記憶する。組立プログラムは、協働ロボット20の動作タイミング、コードリーダ27による識別情報の読取動作、コンベア装置30の駆動タイミングを記述したプログラムである。プロセッサ71により、組立プログラムが実行されることで、協働ロボット20及びコンベア装置30は、規定の動作を実行する。組立プログラムには、部品種類判定プログラムが関連付けされている。
【0016】
部品種類判定プログラムは、コードリーダ27により読み取られた識別情報に基づいて、ワークに配置された部品の種類の正誤を判定するプログラムである。プロセッサ71により部品種類判定プログラムが実行されることで、例えば、外部制御システム90から提供される正しい種類の部品の部品仕様(部品コード)を参照コードとして、ワークに配置された部品の識別情報から特定した部品コードを参照コードに対して比較することによって、ワークに配置された部品の正誤が判定される。
【0017】
記憶装置73は、コードリーダ27により読み取られたワークの識別情報が登録された完成品管理表のデータを記憶する。図3に示すように、完成品管理表では、製造日時に対して、設備番号、製品種類、基幹番号、部品仕様、部品IDが関連付けられている。例えば、製造日時は、完成品が製造された日時を示すものであって、例えば、最後に識別情報が読み取られた日時が登録される。設備番号は、完成品が製造された設備を示すものであって、例えば、タッチパネルディスプレイ60に表示された設定画面上の作業者の操作により入力された生産ライン番号が登録される。製品種類は、完成品の種類を示すものであって、例えば、タッチパネルディスプレイ60に表示された設定画面上の作業者の操作により入力された完成品の種類の名称またはその名称に対応するコードが登録される。基幹番号は、完成品を識別するためのシリアル番号であって、本実施形態では、ワークとしての台座に貼付された台座識別情報の読み取り結果が登録される。部品仕様は、部品の種類を示すものであって、部品に表記された識別情報の読取結果が登録される。部品IDは、部品を個々に識別するためのシリアル番号又は部品をロット単位で識別するためのロット番号であり、部品に表記された識別情報の読取結果が登録される。
【0018】
コードリーダ27によりワーク及び部品に表記された識別情報を読み取るだけで、上記のような完成品管理表で完成品を個別に管理することができるため、チェックシートへの入力作業などの作業者の手作業が不要となり、検査を簡単に行うことができるとともに、不良品がいつどこで発生したかを簡単に特定することができる。
【0019】
統括制御装置70は、通信装置75を介して、協働ロボット20、タッチパネルディスプレイ60、及び外部制御システム90に通信可能に接続されている。また、統括制御装置70には、各種インターフェースを介して、コンベア装置30が接続されている。
【0020】
例えば、プロセッサ71は、通信装置75を介して協働ロボット20から受信した識別情報を完成品管理表に登録するとともに、部品の正誤の判定処理を実行する。部品が「正しい」と判定されたとき、プロセッサ71は、通信装置75を介して協働ロボット20に動作許可信号を送信する。完成品管理表は外部制御システム90で管理されていてもよい。この場合、プロセッサ71は、協働ロボット20から受信した識別情報を、通信装置75を介して、外部制御システム90に転送する。
【0021】
プロセッサ71は、通信装置75を介して外部制御システム90から受信した完成品を特定する完成品情報に従って、複数の組立プログラムから一の組立プログラムを選択するとともに、完成品情報を協働ロボット20に転送する。完成品情報は、後述のタッチパネルディスプレイ60を介して作業者により入力されてもよい。
【0022】
(協働ロボット20)
協働ロボット20は、人と同じ空間で一緒に作業を行えるように安全対策がなされた産業用ロボットである。例えば、協働ロボット20としては、ロボットの各関節の可動範囲が物理的に又はソフトウェアによって制限された産業用ロボット、人の接近を検知して減速することができる産業用ロボット、人の接触を検知して停止することができる産業用ロボット等を使用することができる。
【0023】
図2に示すように、協働ロボット20は、複数の関節を有するロボットアーム25を有する。ロボットアーム25の先端には、エンドエフェクタとして、ワークに固定された部品を撮像するカメラ(撮像部)26と、ワーク及び部品に表示されたQRコード(登録商標)、バーコード等の識別情報を読み取るためのコードリーダ(識別情報読取部)27と、ワークに配置された部品をワークに固定するための電動ドライバ(ネジ締め部)28と、が装着されている。カメラ26とコードリーダ27とは、典型的には、それぞれの光軸が電動ドライバ28の軸方向と平行になるように取り付けられている。多くの場合、ワークの同一の面に、ネジ孔があけられ、また識別情報が表示されているため、上記のように電動ドライバ28の軸とコードリーダ27の光軸とカメラ26の光軸とを揃えることで、コードリーダ27による識別情報の読取作業、電動ドライバ28によるネジ締め作業、カメラ26によるワークに固定された部品の撮影作業を行う毎に、ロボットアーム25を大きく動かす必要がなくなるため、作業時間を短くするとともに、作業者の安全性を向上させることができる。
【0024】
ロボットアーム25にカメラ26とコードリーダ27とを装備させることによって、ワークに対して様々な角度からカメラ26とコードリーダ27とを向けることができるため、ワーク及び部品の向きに柔軟に対応することができる。しかしながら、これらは必ずしもロボットアーム25に装着されていなくてもよい。上記のように、コードリーダ27は、ワークに配置された部品に表示された識別情報を読み取り可能な位置に取り付けられればよい。同様に、カメラ26は、ワークに固定された部品を撮影可能な位置に取り付けられればよい。例えば、カメラ26とコードリーダ27とは、ベルト33を上方から俯瞰する位置に取り付けられる。カメラ26がコードリーダ27を兼用してもよい。
【0025】
ロボットアーム25、カメラ26、コードリーダ27及び電動ドライバ28は、ロボット制御装置21により制御される。ロボット制御装置21は、プロセッサ22と記憶装置23と通信装置24とを有する。
【0026】
記憶装置23は、組立対象の完成品に応じた組立作業を協働ロボット20に実行させるための複数のロボット制御プログラムを記憶する。ロボット制御プログラムは、ロボットアーム25の手先基準点の移動、電動ドライバ28によるネジ締め動作、カメラ26による部品の撮影動作に関する一連の動作を記述したプログラムである。プロセッサ22により、ロボット制御プログラムが実行されることで、ロボットアーム25、カメラ26、及び電動ドライバ28は、ロボット制御プログラムに記述された順序で動作する。ロボット制御プログラムには、部品固定状態判定プログラムが関連付けされている。
【0027】
部品固定状態判定プログラムは、カメラ26により撮影された部品画像に基づいて、ワークに固定された部品の固定状態の良否を判定するプログラムである。固定状態「良」とは、部品の位置及び部品の向きが正しい状態をいう。部品の固定状態の判定処理は、部品の配置状態の判定処理として、ワークに部品を固定する前に行ってもよい。ワークに固定される前に部品の位置及び向きを判定できることで、異常が発生した場合でも、部品の位置及び向きを変えるだけでよく、ネジを外す必要がないため、復帰作業が容易であるとともに部品の廃棄数を抑えられる。ワークに部品を固定した後に実施する部品の固定状態の判定には、ネジの締め忘れ、ネジの緩み、ネジの噛み込みなどのネジ締め関連の異常判定が含まれてもよい。プロセッサ22により、部品工程状態判定プログラムが実行されることで、例えば、ワークに固定された部品の固定状態が「良」であるときの部品画像を参照画像として、ワークに固定された部品の部品画像を参照画像に対して比較することによって、ワークに固定された部品の固定状態の良否が判定される。
【0028】
協働ロボット20は、通信装置24を介して、統括制御装置70と通信可能に接続されている。例えば、プロセッサ22は、通信装置24を介して統括制御装置70から受信した完成品を特定する完成品情報に従って、複数のロボット制御プログラムから一のロボット制御プログラムを選択する。また、プロセッサ22は、通信装置24を介して、ワークに固定された部品の固定状態の良否結果、コードリーダ27により読み取られた識別情報のデータを統括制御装置70に送信する。
【0029】
、協働ロボット20は、通信装置24を介して、直接的に後述の外部制御システム90に接続されるように構成し、上記の完成品情報を、統括制御装置70を経由せずに受信してもよい。
【0030】
(コンベア装置30)
図1図2に示すように、コンベア装置30は、ワークが載置されるベルト33を有する。ベルト33は、図示しないモータが統括制御装置70の制御に従って駆動されることで予め設定された速度で移動され、ベルト33上に載置されたワークを次の工程の作業位置まで搬送する。コンベア装置30には、作業者または協働ロボット20の組立作業の作業性を向上させるため、各工程の作業位置にワークを位置決めする機構(図示しない)が装備される。
【0031】
上記の作業位置と、協働ロボット20の設置位置と、作業者100の立ち位置とは、次のような関係になるように決められる。すなわち、作業者100の立ち位置は、作業者100の手先の作業範囲内に作業位置が含まれるように決められている。協働ロボット20の設置位置は、その手先の可動範囲内に作業位置が含まれ、且つその手先の可動範囲内に作業者100の立ち位置が含まれないように決められている。それにより、ベルト33に載置されたワークに対する作業を作業者100と協働ロボット20とで協働して行うことができる上、協働ロボット20の手先は作業者100の立ち位置まで届かないため、大きなケガにつながる作業者100の頭部、胴体部への接触を物理的に回避することができ、安全性を向上させることができる。
【0032】
、本実施形態では、ベルト33は、工程1,工程2の作業位置に順にワークを搬送するベルト33Aと、ベルト33Aにより工程2の作業位置から搬送されたワークを、工程3、工程4の作業位置に順に搬送するベルト33Bと、ベルト33Bにより工程4の作業位置から搬送されたワークを、工程5、工程6の順に搬送するベルト33Cと、ベルト33Cにより工程6の作用位置から搬送されたワークを工程7の作業位置に搬送するベルト33Dとからなる。各ベルト33A,33B,33C,33Dは個別に駆動される。もちろん、コンベア装置30は、工程毎で独立したベルトを有する構成でもよい。
【0033】
(タッチパネルディスプレイ60)
タッチパネルディスプレイ60は、組立作業に関する種々の情報を表示する表示装置として機能するとともに、作業者から所定の入力を受け付けるための入力装置としても機能する。もちろん、組立システム10は、入力装置と表示装置とを個別に有する構成とすることができる。タッチパネルディスプレイ60には、統括制御装置70の制御に従って、各種設定画面、組立作業の作業状況の確認画面等が表示される。ユーザは、タッチパネルディスプレイ60に表示された画面上を操作して、各種設定の変更等を行うことができる。
【0034】
例えば、タッチパネルディスプレイ60には、図4に示すような組立作業の作業状況の確認画面が表示される。図4に示すように、確認画面には、組立システム10を識別する「設備番号」、完成品の種類を示す「製品種類」、その日に製造する完成品の予定数とともに、現時点での製造された完成品の数を示す「計画数/実績数」、各工程の共通のタクトタイムが表示される。また、協働ロボット20の状況として、「原位置」、「運転準備完了」、「運転中」の3つの状況から少なくとも1つが表示される。コンベア装置30の状況として、「原位置」、「運転準備完了」、「運転中」の3つの状況から少なくとも1つの状況が表示される。組立システム10は、協働ロボット20及びコンベア装置30がともに原位置であるときに、再起動及び起動ができるため、タッチパネルディスプレイ60にこれを表示することで、組立作業の責任者は、協働ロボット20及びコンベア装置30が原位置に配置された状態であるのかを一見して把握することができる。それにより、上記の起動、再起動を早く行うことができる。これも直接的ではないが、作業効率を向上させる1つの要素である。
【0035】
確認画面には、各工程の状況を示す情報として、ワークの有無を示す情報、作業の進捗状況を示す情報が工程毎に表示される。作業の進捗状況は、「作業完了」、「ワーク搬送完了」、「ネジ締め作業中」、「ネジ締め完了」、「種類検査合格」、「組付検査合格」などの工程の各手順を示す情報を含む。組立作業の責任者は、タッチパネルディスプレイ60に表示された、各工程の状況を確認して、工程毎の作業の進捗状況やワークの搬送状況をリアルタイムに確認することができるため、作業が進んでいない工程の作業者のフォロー、作業の教示等を行うことで、全体の製造効率を上げることができる。
【0036】
確認画面にはアラーム情報が表示される。アラーム情報は、アラーム発生日時、異常内容を含む。異常内容は、例えば、協働ロボット20によるネジ締め異常、協働ロボット20と統括制御装置70との間の通信異常、統括制御装置70と外部制御システム90との間の通信異常などを含む。組立作業の責任者は、どの工程でどのような内容の異常が発生しているのかをすぐに確認できるため、その異常内容に応じた対策を講じることができる。
【0037】
、確認画面には、各工程の作業状況として「遅い」、「やや遅い」、「通常」、「やや早い」、「早い」の5つの状況から1つの状況が表示されてもよい。上記の状況は、タクトタイムに対する作業時間の時間差に応じて変更される。例えば、「遅い(早い)」はタクトタイムから10秒以上遅いとき(早いとき)に表示され、「やや遅い(早い)」はタクトタイムから5秒以上10秒未満遅いとき(早いとき)に表示され、「通常」はタクトタイムから5秒未満遅い又は早いときに表示される。組立作業の責任者は、タッチパネルディスプレイ60に表示された、各工程の作業状況を確認して、作業の遅い作業者へのフォロー、作業の教示等を行うことで、全体の製造効率を上げることができる。
【0038】
(組立作業の手順)
本実施形態に係る組立システム10を活用した完成品の組立作業の一例を図5図6及び図7を参照して説明する。図5に示すように、完成品の組立作業は複数、ここでは7つの工程からなる。工程1、工程2、工程5及び工程7は作業者100が単独で作業を行う工程であり、工程3、工程4及び工程6は、協働ロボット20と作業者100とが協働して作業を行う工程である。各工程においても、作業手順が決められている。協働ロボット20A,20B,20Cは、工程3、工程4、工程6にそれぞれ対応するロボット制御プログラムに従って、動作する。
【0039】
図6に示すように、工程1では、作業者100Aは、台座(ワーク)をベルト33に載置し(S11)、トレーサビリティ用の識別情報1(QRコード(登録商標))が印字されたシールを台座に貼り付ける(S12)。作業者100Aは上記作業が完了したとき、作業完了ボタン37Aを押す。それにより、工程1の作業完了が統括制御装置70に入力される。
【0040】
工程2では、作業者100Bは、部品位置出し用のテンプレートを台座にセットし、テンプレートに沿って部品1、部品2を配置する(S21、S22)。作業者100Bは上記作業が完了したとき、作業完了ボタン37Bを押す。それにより、工程2の作業完了が統括制御装置70に入力される。
【0041】
工程3では、ロボット制御装置21Aは、工程1で台座に貼付された台座識別情報をコードリーダ27Aで読み取り可能な位置にロボットアーム25Aを移動させる。統括制御装置70は、コードリーダ27Aを制御して、台座識別情報を読み取らせ、読み取られた台座識別情報を内部のデータメモリ、ここでは完成品管理表に登録する(S31)。
【0042】
次に、ロボット制御装置21Aは、台座に配置された部品1、部品2の識別情報1,2をコードリーダ27Aで読み取り可能な位置にロボットアーム25Aを順次移動させる。統括制御装置70は、コードリーダ27Aを制御して、部品1、部品2の識別情報1,2を順次読み取らせ、読み取られた識別情報1,2を完成品管理表に登録するとともに、識別情報1,2に基づいて、台座に配置された部品1,2の正誤を判定する。統括制御装置70は、部品1,2が正しい種類の部品であると判定したとき、ロボット制御装置21Aに動作許可信号を送信する。ロボット制御装置21Aは、動作許可信号を受信したのを契機に(S32)、ロボットアーム25Aの制御を再開する。
【0043】
ロボット制御装置21Aは、電動ドライバ28Aを制御して、部品1、部品2を台座にネジ締めさせ(S33)、カメラ26Aを制御して、台座に固定された部品1、部品2を撮影させる。ロボット制御装置21Aは、撮影された部品1,2の部品画像に基づいて、台座に固定された部品1,部品2の固定状態の良否を判定する(S34)。ロボット制御装置21Aは、部品1、2の固定状態が「良」であると判定したとき、動作を継続させるためにロボットアーム25Aの制御を継続する。一方、ロボット制御装置21Aは、部品1、2の固定状態が「不良」であると判定したとき、ロボットアーム25Aの動作を一時停止させるためにロボットアーム25Aの制御を停止し、部品1,2の固定状態が「不良」であることを示す信号を統括制御装置70に送信する。
【0044】
作業者100Cは、部品位置出し用のテンプレートを台座から取り外し、部品3を台座に配置し、作業完了ボタン37Cを押す(S35)。
【0045】
作業完了ボタン37Cが押されたのを契機に、ロボット制御装置21Aは、台座に配置された部品3の識別情報3をコードリーダ27Aで読み取り可能な位置にロボットアーム25Aを移動させる。統括制御装置70は、コードリーダ27Aを制御して、部品3の識別情報3を読み取らせ、読み取られた識別情報3を完成品管理表に登録するとともに、識別情報3に基づいて、台座に配置された部品3の正誤を判定する。統括制御装置70は、部品3が正しい種類の部品であると判定したとき、ロボット制御装置21Aに動作許可信号を送信する。ロボット制御装置21Aは、動作許可信号を受信したのを契機に(S36)、ロボットアーム25Aの制御を再開する。
【0046】
ロボット制御装置21Aは、電動ドライバ28Aを制御して、部品3を台座にネジ締めさせ(S37)、ロボットアーム25Aを初期位置に戻し、作業完了を示す作業完了信号を統括制御装置70に送信する。工程3の作業をタクトタイム以内に収めるために、ステップS37では、全てのネジがネジ締めされていない。
【0047】
工程4では、ロボット制御装置21Bは、電動ドライバ28Bを制御して、部品3を台座に固定するための残りのネジをネジ締めさせ(S41)、カメラ26Bを制御して、台座に固定された部品3を撮影させる。ロボット制御装置21Bは、撮影された部品3の部品画像に基づいて、台座に固定された部品3の固定状態の良否を判定する(S42)。ロボット制御装置21Bは、部品3の固定状態が「良」であると判定したとき、動作を継続させるためにロボットアーム25Bの制御を継続する。一方、ロボット制御装置21Bは、部品3の固定状態が「不良」であると判定したとき、ロボットアーム25Bの動作を一時停止させるためにロボットアーム25Bの制御を停止し、部品3の固定状態が「不良」であることを示す信号を統括制御装置70に送信する。
【0048】
作業者100Dは、治具を用いて取付具を台座に配置し、作業完了ボタン37Dを押す(S43)。作業完了ボタン37Dが押されたのを契機に、ロボット制御装置21Bは、電動ドライバ28Bを制御して、台座に取付具をネジ締めさせ(S44)、ロボットアーム25Bを初期位置に戻し、作業完了信号を統括制御装置70に送信する。
【0049】
図7に示すように、工程5では、作業者100Eは台座から治具を取り外し、部品4を台座に配置する(S51)。作業者100Eは上記作業が完了したとき、作業完了ボタン37Eを押す。それにより、工程5の作業完了が統括制御装置70に入力される。
【0050】
工程6では、ロボット制御装置21Cは、工程1で台座に貼付された台座識別情報をコードリーダ27Cで読み取り可能な位置にロボットアーム25Cを移動させる。統括制御装置70は、コードリーダ27Cを制御して、台座識別情報を読み取らせ、読み取られた台座識別情報を内部のデータメモリ、ここでは完成品管理表に登録する(S61)。
【0051】
次に、ロボット制御装置21Cは、台座に配置された部品4の識別情報4をコードリーダ27Cで読み取り可能な位置にロボットアーム25Cを移動させる。統括制御装置70は、コードリーダ27Cを制御して、部品4の識別情報4を読み取らせ、読み取られた識別情報4を完成品管理表に登録するとともに、識別情報4に基づいて、台座に配置された部品4の正誤を判定する。統括制御装置70は、部品4が正しい種類の部品であると判定したとき、ロボット制御装置21Cに動作許可信号を送信する。ロボット制御装置21Cは、動作許可信号を受信したのを契機に(S62)、ロボットアーム25Cの制御を再開する。
【0052】
ロボット制御装置21Cは、電動ドライバ28Cを制御して、部品4を台座にネジ締めさせ(S63)、カメラ26Cを制御して、台座に固定された部品4を撮影させる。ロボット制御装置21Cは、撮影された部品4の部品画像に基づいて、台座に固定された部品4の固定状態の良否を判定する(S64)。ロボット制御装置21Cは、部品4の固定状態が「良」であると判定したとき、動作を継続させるためにロボットアーム25Cの制御を継続する。一方、ロボット制御装置21Cは、部品4の固定状態が「不良」であると判定したとき、ロボットアーム25Cの動作を一時停止させるためにロボットアーム25Cの制御を停止し、部品4の固定状態が「不良」であることを示す信号を統括制御装置70に送信する。
【0053】
作業者100Fは、部品5を台座に配置し、作業完了ボタン37Fを押す(S65)。作業完了ボタン37Fが押されたのを契機に、ロボット制御装置21Cは、台座に配置された部品5の識別情報5をコードリーダ27Cで読み取り可能な位置にロボットアーム25Cを移動させる。統括制御装置70は、コードリーダ27Cを制御して、部品5の識別情報5を読み取らせ、読み取られた識別情報5を完成品管理表に登録するとともに、識別情報5に基づいて、台座に配置された部品5の正誤を判定する。統括制御装置70は、部品5が正しい種類の部品であると判定したとき、ロボット制御装置21Cに動作許可信号を送信する。ロボット制御装置21Cは、動作許可信号を受信したのを契機に(S66)、ロボットアーム25Cの制御を再開する。
【0054】
ロボット制御装置21Cは、電動ドライバ28Cを制御して、部品5を台座にネジ締めさせ(S67)、カメラ26Cを制御して、台座に固定された部品5を撮影させる。ロボット制御装置21Cは、撮影された部品5の部品画像に基づいて、台座に固定された部品5の固定状態の良否を判定する(S68)。ロボット制御装置21Cは、部品5の固定状態が「良」であると判定したとき、ロボットアーム25Cを初期位置に戻すとともに、作業完了信号を統括制御装置70に送信する。一方、ロボット制御装置21Cは、部品5の固定状態が「不良」であると判定したとき、ロボットアーム25Cの動作を一時停止させるためにロボットアーム25Cの制御を停止し、部品5の固定状態が「不良」であることを示す信号を統括制御装置70に送信する。
【0055】
工程7では、作業者100Gは、前工程6で組立が完了した完成品の最終外観検査を行い(S71)、完成品を完成品格納ラックへ格納する(S72)。作業者100Gは上記作業が完了したとき、作業完了ボタン37Gを押す。それにより、工程7の作業完了が統括制御装置70に入力される。作業完了ボタン37Gが押されることにより、統括制御装置70で管理されている製造の実績数が加算される。それにより、製造実績の管理を容易にすることができる。
【0056】
統括制御装置70は、予め決められた搬送条件に従って、コンベア装置30の各ベルト33A,33B,33C、33Dを駆動する。例えば、特定の工程の作業が完了し、且つ搬入先となる後工程の作業が完了してワークが搬出済みである場合、特定の工程に対応するベルト及びその後工程に対応するベルトを駆動する。それにより、特定の工程において作業が完了したワークが後工程に搬送される。特定の工程の作業状況とその後工程の作業状況に応じて各ベルト33A,33B,33C、33Dを個別に駆動することができるため、全体の作業効率を向上させることができる。
【0057】
統括制御装置70は、工程3及び工程6において、ワークに配置された部品の種類が正しくないと判定したとき、ロボットアーム25の動作を停止させるために、ロボット制御装置21への動作許可信号の送信を保留する。また、コンベア装置30に取り付けられたランプ(図示しない)を異常が発生したことを通知する態様で点灯させ、タッチパネルディスプレイ60に、異常の発生内容を表記する。
【0058】
同様に、統括制御装置70は、工程3、工程4及び工程6において、ワークに固定された部品の固定状態が「不良」であることを示す信号をロボット制御装置21から受信したとき、コンベア装置30に取り付けられたランプ(図示しない)を異常が発生したことを通知する態様で点灯させ、タッチパネルディスプレイ60に、異常の発生内容を表記する。
【0059】
このように、ワークに配置された部品が正しくない、ワークに固定された部品の固定状態が不良であるなどの、作業エラーが発生したときに、協働ロボット20(組立システム10)の動作は停止されるとともに、異常が発生したことを作業者に通知する処理が実行される。作業者は、コンベア装置30に取り付けられたランプの点灯により、いち早く異常の発生を知ることができ、また、タッチパネルディスプレイ60に表示された異常内容を確認して、復帰作業に即座に取り掛かることができる。作業者は、復帰作業が完了した後、例えば、異常が発生した工程の作業完了ボタン37を押すことで、組立システム10による組立作業を途中から再開させることができる。
【0060】
上記のように、異常が発生する度に組立システム10を停止させることによって、その異常の発生要因をすぐに特定することができる。それにより、例えば、ある時間帯に製造した完成品が全て不良品となってしまうなどの、不良品の発生数を低減するとともに不良品の発生による部品の廃棄などを抑えられる。
【0061】
完成品の製造効率という観点においては、異常が発生する度に組立システム10を停止させるのではなく、異常が発生したワークに対して、これ以上の組立作業を行わないようにマーカを付与するようにしてもよい。例えば、異常が発生したワークであることを示す札を用意しておき、異常が発生したときに、協働ロボット20が、上記の札をワークの上に載置するようにしてもよい。下流の工程に配置された作業者は異常が発生したワークであることを確認して、作業を行わないまま作業完了ボタン37を押せばよい。もちろん、どのワークに異常が発生しているのかを統括制御装置70は把握できているため、下流の工程に配置された協働ロボット20も、異常が発生したワークに対する作業を行わないようにすることができる。最終工程の作業者は、異常が発生したワークを不良品用の格納ラックへ格納する。このように、異常が発生しても組立システム10を停止しないことによって、完成品の製造効率を向上させることができる可能性がある。
【0062】
異常発生時に組立システム10を停止させるのか否かは、作業者により選択できることが望ましい。例えば、既に熟練されている信頼度の高い組立作業であれば、そもそも異常の発生頻度が少ないことから、異常発生時に組立システム10を停止させない方が全体の製造効率を上げることができる。一方、新規に立ち上げる組立作業であれば、異常の発生頻度が高く、また、どのような異常が発生しているのかを即時に把握する必要があるため、異常発生時に組立システム10を停止させた方がよい。
【0063】
また、ワークに部品を固定する前段階の、ワークに部品を配置した時点で部品の正誤を判定するため、万が一、部品が誤っていて組立システム10を停止させた場合でも、部品はワークに固定されていないため、誤った部品を正しい部品に交換するだけでよく、停止させた組立システム10をすぐに再開させることができる。すなわち、ワークに対して部品を固定する前に部品の正誤を判定することで、ワークに対して部品を固定した後に部品の正誤を判定する場合に比べて部品が誤っていたときの復帰作業を容易にし、作業効率を向上することができる。
【0064】
同様に、ワークに固定した部品の固定状態を、他の部品が配置される前に判定するため、万が一、部品の固定状態が不良で組立システム10を停止させた場合でも、作業者は、不良となった部品の固定作業をやり直すだけでよく、停止させた組立システム10をすぐに再開させることができる。もちろん、部品の固定状態が不良で、その部品を廃棄して新しい部品を固定しなければならない事態も想定されるが、その場合であっても、固定状態が不良であった部品だけを廃棄するだけでよく、他の部品を廃棄しなければならない事態を回避することができる。
【0065】
このように、ワークに部品を配置する毎に部品の種類を検査し、ワークに部品を固定する毎に部品の固定状態を検査することにより、検査不合格により組立システム10を停止させてしまう時間を短くすることができるとともに、部品の廃棄を最小限に抑えられる。
【0066】
本実施形態に係る組立システム10によれば、ロボットアーム25にカメラ26、コードリーダ27を装備することによって、工程毎に検査をすることができる。しかも、その検査は作業者の目を介さずに自動的に行われるため、作業者100が検査を行う場合に比べて、検査品質を一定に保つことができる。
【0067】
組み立てられた状態では部品が見にくいような完成品の場合、完成品に取り付けられた部品をまとめて検査するには多くの時間が必要になるが、工程毎に検査を行うことで、1つの部品を検査する時間を短くすることができ、検査効率を向上することができる。
【0068】
検査だけの作業工程を設けるのではなく、協働ロボット20と作業者100とで協働して行う工程に検査作業を含めることで、協働ロボット20が検査している間に作業者100が次の作業の準備を行うことができるため、協働ロボット20による検査時間が無駄になることなく、完成品の組立作業及び検査作業を効率的に行うことができ、完成品の製造効率を向上することができる。もちろん、検査用の工程を設ける必要がないため、検査用の工程のスペースを確保する必要がなく、組立システム10を省スペースに構成することができる。
【0069】
工程毎に検査をするため、異常の発生をすぐに検知することができ、これ以上、異常が発生しないように組立システム10を停止させて対策を講じることができる。それにより、異常の発生頻度を抑えられるとともに、部品の廃棄も抑えられる。この効果は、多くの工程を有する完成品の組立作業において、特に顕著に表れる。例えば、最終工程で検査を行うシステムでは、最終工程で異常を発見してシステムを一時停止させても、異常が発生した工程から最終工程までの間の全てのワークが同様の異常が生じている可能性が高い。そのため、部品を取り外して、交換し、再度固定するなどの復帰作業の対象となるワークが多くなってしまう。本実施形態のように工程毎に検査できることで、異常が発生した時点で組立システム10を停止することができるため、上記のような事態を回避することができる。
【0070】
また、本実施形態では、カメラ26でワークに固定後の部品を撮影し、撮影した部品画像に基づいて、ワークに固定された部品の固定状態の良否(部品の位置及び向き)を判定することができる。この判定には、ネジ締め関連の異常(締め忘れ、緩み、噛み込み)を含んでもよい。それにより、電動ドライバ28による部品の固定作業時の作業不良が発生する可能性を低減するとともに、作業者の熟練度に依らず、品質を確保することができる。また、ワークに配置された部品の部品画像に基づいて、部品自体の良品、不良品を判定するようにしてもよい。
【0071】
、本実施形態では、部品画像に基づく部品の固定状態の良否判定処理を協働ロボット20で行っていたが、部品画像がロボット制御装置21から統括制御装置70に提供され、統括制御装置70において部品の固定状態の良否判定処理を行うようにしてもよい。また、識別情報に基づく部品の種類の正誤判定処理を統括制御装置70で行っていたが、ロボット制御装置21で実施するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態に係る組立システム10は、コードリーダ27とカメラ26とを備え、部品の種類の正誤と部品の固定状態の良否との両方を検査していた。しかしながら、少なくとも一方の検査を行うことができれば、不良品の流出リスクを低減するとともに、組立作業の作業効率を向上させることができる。したがって、組立システム10は、コードリーダ27とカメラ26との一方を備える構成としてもよい。
【0073】
また、本実施形態に係る組立システム10では、ワークはベルト33上に載置され、各工程の作業が全て完了したのを契機に、次の工程の作業位置に搬送される構成としたが、コンベア装置30の構成はこれに限定されない。例えば、ベルト33を作業者が手動で動かす構成であってもよい。また、コンベア装置30は、ワークを載置するための複数の作業台(パレット)を有し、各作業台が独立して駆動するように構成してもよい。
【0074】
また、本実施形態に係る組立システム10では、安全性及び応用性の観点から、協働ロボット20を使用したが、作業者100と協働する装置として、一般的な産業用ロボットを使用してもよい。また、ネジ締め作業などの単純な作業だけを担当させるのであれば、作業者100と協働する装置は、エアシリンダなどのロボット以外の作業機械を使用することができる。協働ロボット20以外の動作機構を採用した場合、動作機構が作業者に接触することを物理的に回避するための仕切り、安全柵を設けることが望ましい。このように構成された組立システム10も、本実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
10…組立システム、20…協働ロボット、21…ロボット制御装置、23…ロボットアーム、25…カメラ、27…コードリーダ、29…電動ドライバ、30…コンベア装置、33…ベルト、37…完了ボタン、60…タッチパネルディスプレイ、70…統括制御装置、71…プロセッサ、73…記憶装置、75…通信装置、90…外部制御システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7