(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物組成物及びその応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/415 20060101AFI20240109BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240109BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61K31/415
A61P31/20
A61K31/522
(21)【出願番号】P 2022522823
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2021134100
(87)【国際公開番号】W WO2022142945
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】202011575396.4
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522152267
【氏名又は名称】中以海▲徳▼人工智能▲薬▼物研▲発▼股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HOLY HAID LAB CORP
【住所又は居所原語表記】Room 1602,Building 10,Shenzhen Biomedical Innovation Industrial Park,14 Jinhui Road,Jinsha,Community,Kengzi Street,Pingshan District,Shenzhen,Guangdong 518000 China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】李 瑛穎
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 明▲鍵▼
(72)【発明者】
【氏名】仇 思念
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/069854(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0298797(US,A1)
【文献】特表2005-519061(JP,A)
【文献】Chinese Journal of Difficult and Complicated Cases,2012年,Vol.11, No.7,p.522-523
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のHBVの負荷、HBsAgのレベル及びHBeAgのレベルから選択される1種又は複数種を低減するためのB型ウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物であって、前記薬物は以下の式1:
【化1】
で表される化合物、その誘導体又はその薬学的に許容される塩を含み、前記式1で表される化合物の誘導体は、その重水素化生成物、アミノ基が保護された化合物及びハロゲン置換の生成物
から選択される、薬物。
【請求項2】
前記患者は、肝炎ウイルスに感染している、請求項1に記載の薬物。
【請求項3】
前記肝炎ウイルスは、HBVである、請求項2に記載の薬物。
【請求項4】
前記患者は、ウイルス複製が活発である患者である、請求項3に記載の薬物。
【請求項5】
前記患者において、HBVの負荷を低減することができる、請求項4に記載の薬物。
【請求項6】
前記患者において、HBVの負荷、HBsAgのレベル及び/又はHBeAgのレベルを低減することができる、請求項5に記載の薬物。
【請求項7】
前記患者は、ウイルス複製が不活発である患者である、請求項3に記載の薬物。
【請求項8】
前記患者において、HBsAgのレベル及び/又はHBeAgのレベルを低減することができる、請求項7に記載の薬物。
【請求項9】
前記薬学的に許容される塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ブタン酸塩、クエン酸塩、カンフル酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプト酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びエタノールアミン塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の薬物。
【請求項10】
前記誘導体は、化合物1-2乃至化合物1-4から選択される、請求項1に記載の薬物。
【化2】
(式中、「AA」とは、アミノ酸残基を意味し、即ち、20種類の天然アミノ酸からカルボキシル基を除去した後の残り部分を意味する。)
【請求項11】
前記薬物は、B型肝炎ウイルス(HBV)の負荷を低減することができる、請求項1に記載の薬物。
【請求項12】
前記薬物は、HBsAgのレベルを効果的に低減することができる、請求項1に記載の薬物。
【請求項13】
前記薬物は、1種又は複数種の他の治療剤又は予防剤をさらに含み、
前記他の治療剤又は予防剤は、インターフェロン、PEG化インターフェロン、又はニタゾキサニド、以下の式A:
【化3】
で表される化合物又はヌクレオシド類似体から選択される少なくとも1種であって、
前記ヌクレオシド類似体は、エンテカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ラミブジン、ファムシクロビル、アシクロビル(acyclovir)、アデホビル、ホスカルネットナトリウム、ネビラピン、テノホビルジソプロキシル、ジドブジン、エファビレンツ、スタブジン、デラビルジン、エムトリシタビン、ジダノシン、ザルシタビン、ネララビン、アザシチジン(5-アザシチジン)、アシクロビル(aciclovir)、シクロシチジン塩酸塩、ペンシクロビル、ガンシクロビルナトリウム、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、モルヌピラビル(EIDD-2801)、2’-デオキシシュードイソシチジン(2’-deoxypseudoisocytidine)、6-チオ-2’-デオキシグアノシン、アバカビル、AzddMeC、Azt-pmap、センサブジン(censavudine)、クレブジン、CNDAC、ダピビリン、エノシタビン(enocitabine)、エチニルシチジン、ホジブジンチドキシル(fozivudine tidoxil)、ガンシクロビル、オマシクロビル(omaciclovir)、レムデシビル、サパシタビン、スタンピジン(stampidine)、スタブジンナトリウム、テルビブジン、テザシタビン及びトリアザビリンから選択される、
請求項1に記載の薬物。
【請求項14】
前記薬物は、経口、直腸、経鼻、経肺、局所、口腔及び舌下、腟、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外から選択される経路により投与される、請求項1に記載の薬物。
【請求項15】
前記式1の化合物、その誘導体又はその薬学的に許容される塩は、毎日1.67~13.33mg/kg体重の量で投与される、請求項1に記載の薬物。
【請求項16】
前記式1の化合物、その誘導体又はその薬学的に許容される塩は、毎日100mg~800mgの量で投与される、請求項1に記載の薬物。
【請求項17】
前記式1の化合物、その誘導体又はその薬学的に許容される塩は、毎日2回で投与される、請求項16に記載の薬物。
【請求項18】
患者のHBVの負荷、HBsAgのレベル及びHBeAgのレベルから選択される1種又は複数種を低減するためのB型ウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物組成物であって、
治療有効量の式1:
【化4】
で表される化合物、その誘導体又はその薬学的に許容される塩、場合によっては、1種又は複数種の他の治療剤又は予防剤及び薬学的に許容される担体を含み、
前記他の治療剤又は予防剤は、インターフェロン、PEG化インターフェロン、ニタゾキサニド、式A:
【化5】
で表される化合物又はヌクレオシド類似体から選択される少なくとも1種であり、
前記誘導体は、以下の化合物1-2乃至化合物1-4:
【化6】
(式中、「AA」とは、アミノ酸残基を意味し、即ち、20種類の天然アミノ酸からカルボキシル基を除去した後の残り部分を意味する)
から選択され、
前記ヌクレオシド類似体は、エンテカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル、テノホビルアラフェナミド、ラミブジン、ファムシクロビル、アシクロビル(acyclovir)、アデホビル、ホスカルネットナトリウム、ネビラピン、テノホビルジソプロキシル、ジドブジン、エファビレンツ、スタブジン、デラビルジン、エムトリシタビン、ジダノシン、ザルシタビン、ネララビン、アザシチジン(5-アザシチジン)、アシクロビル(aciclovir)、シクロシチジン塩酸塩、ペンシクロビル、ガンシクロビルナトリウム、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、モルヌピラビル(EIDD-2801)、2’-デオキシシュードイソシチジン(2’-deoxypseudoisocytidine)、6-チオ-2’-デオキシグアノシン、アバカビル、AzddMeC、Azt-pmap、センサブジン(censavudine)、クレブジン、CNDAC、ダピビリン、エノシタビン(enocitabine)、エチニルシチジン、ホジブジンチドキシル(fozivudine tidoxil)、ガンシクロビル、オマシクロビル(omaciclovir)、レムデシビル、サパシタビン、スタンピジン(stampidine)、スタブジンナトリウム、テルビブジン、テザシタビン及びトリアザビリンから選択される、患者のHBVの負荷、HBsAgのレベル及びHBeAgのレベルから選択される1種又は複数種を低減するための薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願人が2020年12月28日に中華人民共和国国家知識産権局に提出した特許出願番号202011575396.4、発明の名称が「ウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物組成物及びその応用」である先の出願に基づく優先権を主張する。本願に、その先の出願の全てを援用する。
【0002】
本発明は、抗ウイルス薬物の技術分野に関し、具体的には、ウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物組成物及びその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)感染は、世界範囲内の重大な公共健康問題である。急性B型肝炎ウイルスに感染した後に、8%程度は、慢性B型肝炎感染に発展し、持続的なHBV感染は、肝硬変、さらには肝癌につながっていく。中国は、B型肝炎感染者が多い国であり、1.3億人近くのB型肝炎ウイルスキャリアがおり、総人口の約9%を占めている。B型肝炎ワクチンの大範囲の普及により、新たなB型肝炎感染率が効果的に制御されているにも関わらず、B型肝炎ウイルスキャリアの人口基数は大きいため、B型肝炎の予防と治療は中国の公共健康問題の最優先事項になっている。B型肝炎の感染経路は、主に垂直感染と水平感染に介して感染する。垂直感染は、母子感染を指し、水平感染は、主に血液を介して感染することを指す。
【0004】
B型肝炎の治療は、長期的な過程でもあり、治療目標は、HBVを最大限で抑制又は消除し、肝細胞の炎症壊死及び肝繊維化を軽減し、病気の進展を遅延と阻止し、肝代償不全、肝硬変、肝細胞性肝癌及びその合併症の発生を低減と防止し、それにより生活の質を改善し、生存期間を延長する。
【0005】
現在、市場では多くのB型肝炎治療薬があり、主にインターフェロン又はヌクレオシド類似体を使用することにより、抗ウイルス治療をしている。インターフェロンでは、組換えDNA白血球インターフェロン(IFN-α)がHBVの複製を抑制することが可能である。しかしながら、インターフェロンは、B型肝炎の治療する時に、骨髄抑制、甲状腺機能への影響、及びうつ病等を含む強い副作用を伴いことが多い。
【0006】
ヌクレオシド類似体は、主にHBV複製過程中の逆転写酵素活性を抑制することにより、HBVの発生を抑制し、臨床的に利用可能な薬物は、ラミブジン、ファムシクロビル、例えばアシクロビル、アデホビル、エンテカビル、テノホビル、ホスカルネットナトリウム等の類別を含み、これらの薬物はいずれもHBVに対して一定な抑制効果がある。
【0007】
これらの逆転写酵素阻害剤は、HBV DNAのレベルを効果的に低減させ、患者にB型肝炎ウイルスのレベルを制御することが可能であるが、その作用ターゲットポイントがRNAを逆転写してDNAになる過程であるため、HBV cccDNAとHBsAgの除去に対して直接的な作用がない。従って、ヌクレオシド類似体の単剤療法では、HBsAgセロコンバージョンを発生する確率が非常に低く、実際にB型肝炎を治癒することはできず、患者は長期間又は生涯にわたって薬物を服用する必要がある。
【0008】
現在、肝炎及びその関連疾患、病症への臨床治療には、例えば、肝保護作用を有する薬物、疾患の重症度を緩和するための抗炎慢性治療薬等の様々な薬物に関するが、抗HBV薬物、HBsAg及び/又はHBeAgを低下させる薬物は、肝炎を治療するための特定の種類の薬物であり、肝炎の原因となるウイルスに対して直接に抑制と除去することができる。
【0009】
既存のヌクレオシド類似体薬物及びその他の慢性治療薬を長期間服用する条件下では、生じた薬物耐性、高額な医療費、薬物の深刻な副作用等の問題は、B型肝炎患者にとって大きな負担である。重要なのは、現在、ウイルスを完全に除去し、B型肝炎を機能的に治癒することを達成できる薬物が未だに存在していないことである。従って、この分野では、直接にB型肝炎ウイルス(HBV)の負荷(viral load)、HBsAg及び/又はHBeAgのレベルを低減することができる抗HBV薬物を提供することが急務となっている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、人工知能システムにより、複数のターゲットポイントとビッグデータ分析に基づいて、B型肝炎の治療効果のある式1の化合物を選別し、さらに生物学的な実験によって検証し、HBsAg及びHBeAgを除去する効果のある式1の化合物を得て、B型肝炎を機能的に治癒し、B型肝炎ウイルスを除去することが期待される。
【0011】
一実施形態において、本発明は、ウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物の製造における、式1の化合物、その誘導体又はその薬学的に許容される塩の用途を提供する。
【0012】
【化1】
好ましくは、前記薬学的に許容される塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ブタン酸塩、クエン酸塩、カンフル酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプト酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びエタノールアミン塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0013】
好ましい一実施形態において、前記式1の化合物の誘導体は、その重水素化生成物、アミノ基が保護された化合物及びハロゲン置換の生成物を含む。
【0014】
好ましい一実施形態において、前記誘導体は、化合物1-2乃至化合物1-4から選ばれるものを含む。
【0015】
【化2】
ここで、化合物1-3において、「AA」とは、アミノ酸残基を意味し、即ち、20種類の天然アミノ酸からカルボキシル基を除去した後の残り部分を意味する。
【0016】
好ましい一実施形態において、前記ウイルス性肝炎は、B型肝炎又はD型肝炎である。
【0017】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、B型肝炎ウイルス(HBV)の負荷、HBsAg及び/又はHBeAgのレベルを低減することができる。
【0018】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、B型肝炎ウイルス(HBV)の負荷を低減することができる。好ましい一実施形態において、前記薬物は、HBsAg及び/又はHBeAgのレベルを低減することができる。好ましい一実施形態において、前記薬物は、HBsAgレベルを低減することができる。好ましい一実施形態において、前記薬物は、HBeAgのレベルを低減することができる。
【0019】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、1種又は複数種の他の治療剤又は予防剤を含み、好ましくは、前記他の治療剤又は予防剤は、インターフェロン、PEG化インターフェロン、ニタゾキサニド又はその類似体、式Aで示す化合物又はヌクレオシド類似体から選択される少なくとも1種である。
【0020】
式Aは、以下の:
【0021】
【化3】
で表され、好ましくは、前記ヌクレオシド類似体は、エンテカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル及びテノホビルアラフェナミドから選択される。
【0022】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、製造された後に、経口、直腸、経鼻、経肺、局所、口腔及び舌下、腟、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外から選択される経路により投与されるが、経口投与が好ましく、錠剤又はカプセルの形態がより好ましい。
【0023】
本発明は、治療有効量の式1の化合物、その誘導体又はその薬学的に許容される塩、任意の1種又は複数種の他の治療剤又は予防剤及び薬学的に許容される担体を含むウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物組成物であって、好ましくは、前記他の治療剤又は予防剤は、インターフェロン、PEG化インターフェロン、ニタゾキサニド又はその類似体、式Aで示す化合物又はヌクレオシド類似体から選択される少なくとも1種であり、前記誘導体は、以下の化合物1-2乃至化合物1-4:
【0024】
【化4】
(式中、化合物1-3において、「AA」とは、アミノ酸残基を意味し、即ち、20種類の天然アミノ酸からカルボキシル基を除去した後の残り部分を意味する)
から選択されるウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物組成物をさらに提供する。
【0025】
本発明の技術案は、以下の有益な効果を有する。
【0026】
1.エンテカビルは、既知のヌクレオシド類似体である抗HBV薬物であるが、HBV DNAを低減することしかできず、しかも、投薬を中止すると再発してリバウンドすることがある。発明者は、式1の化合物(セレコキシブ)又はその薬学的に許容される塩が、B型肝炎ウイルス(HBV)の負荷、HBsAg及び/又はHBeAgのレベルを同時に効果的に低減できることを予期せず発見して、より効果的な抗HBV薬物になり、B型肝炎ウイルスを除去し、B型肝炎を治癒し、生涯にわたって薬物を服用する苦痛を回避する可能性が期待されている。
【0027】
2.HBeAg陰性の慢性B型肝炎患者は、HBV患者の中で一定数量を占めており、HBeAgのレベルを持続的且つ効果的に低減し、特に臨床応用では、HBsAg持続低減指標を同時に達成できる薬物は、この種の患者をより効果的に治癒することができる。
【0028】
3.既に市販している薬物として、式1の化合物であるセレコキシブ又はその薬学的に許容される塩は、良い臨床的安全性と薬物動態学的特性を有し、比較的良好な創薬可能性を有する。
【0029】
4.式1の化合物又はその薬学的に許容される塩は、任意に1種又は複数種の他の治療剤又は予防剤と組み合わせることができ、その後の併用投与設計に幅広い構想を提供し、相乗効果の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】HepG2-NTCP細胞のHBV DNAに対する本発明の実施例の化合物の抑制結果である。
【
図2】HepG2-NTCP細胞のHBsAgに対する本発明の実施例の化合物の抑制結果である。
【
図3】HepG2-NTCP細胞のHBeAgに対する本発明の実施例の化合物の抑制結果である。
【
図4】AAV-HBVのマウスの血漿中のHBV DNAの含有量の変化値の模式図である。
【
図5】AAV-HBVのマウスの血漿中のHBsAgの含有量の変化値の模式図である。
【
図6】細胞実験を繰り返して検証した、HepG2-NTCP細胞のHBV DNA、HBsAg及びHBeAgに対する本発明の実施例の化合物の抑制結果である。
【
図7】HepG2-NTCP細胞に対する本発明の実施例の化合物の細胞毒性テスト結果である。 注:図面に記載の「HD042」は、セレコキシブ(式1の化合物)を表している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一形態において、本発明は、ウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物の製造における、式1:
【0032】
【化5】
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の用途を提供する。
【0033】
好ましくは、前記薬学的に許容される塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ブタン酸塩、クエン酸塩、カンフル酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプト酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びエタノールアミン塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0034】
好ましい一実施形態において、前記式1の化合物の誘導体は、その重水素化生成物、アミノ基が保護された化合物、及びハロゲン置換の生成物を含む。
【0035】
好ましい一実施形態において、前記誘導体は、以下の、化合物1-2、化合物1-3及び化合物1-4:
【0036】
【化6】
(式中、化合物1-3において、「AA」とは、アミノ酸残基を意味し、即ち、20種類の天然アミノ酸からカルボキシル基を除去した後の残り部分を意味し、例えば、アラニン、グリシン等である)
から選択されるものを含む。
【0037】
好ましい一実施形態において、前記ウイルス性肝炎は、B型肝炎又はD型肝炎である。
【0038】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、B型肝炎ウイルス(HBV)の負荷、HBsAg及び/又はHBeAgのレベルを低減することができる。好ましい一実施形態において、前記薬物は、1種又は複数種の他の治療剤又は予防剤をさらに含み、好ましくは、前記他の治療剤又は予防剤は、インターフェロン、PEG化インターフェロン、ニタゾキサニド又はその類似体、式Aで示す化合物又はヌクレオシド類似体から選択される少なくとも1種である。式Aは、以下の、
【0039】
【化7】
であり、好ましくは、前記ヌクレオシド類似体は、エンテカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル及びテノホビルアラフェナミドから選択される。
【0040】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、製造された後に、経口、直腸、経鼻、経肺、局所、口腔及び舌下、腟、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外から選択される経路により投与されるが、経口投与が好ましく、錠剤又はカプセルの形態がより好ましい。
【0041】
本発明は、治療有効量の式1の化合物、その誘導体又はその薬学的に許容される塩、任意の1種又は複数種の他の治療剤又は予防剤及び薬学的に許容される担体を含むウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物組成物であって、好ましくは、前記他の治療剤又は予防剤は、インターフェロン、PEG化インターフェロン、ニタゾキサニド又はその類似体、式Aで示す化合物又はヌクレオシド類似体から選択される少なくとも1種であり、前記誘導体は、以下の、化合物1-2、化合物1-3、化合物1-4
【0042】
【化8】
から選択されるウイルス性肝炎を治療又は予防するための薬物組成物を提供する。
【0043】
ここで、化合物1-3において、「AA」とは、アミノ酸残基を意味し、即ち、20種類の天然アミノ酸からカルボキシル基を除去した後の残り部分を意味する。
【0044】
他の好ましい実施形態において、前記化合物は、重水素で置換されるか、又は同位体標識される。重水素で置換された化合物は、元の化合物の活性を複製しながら、当該化合物の半減期を向上することができる。
【0045】
好ましい一実施形態において、前記ウイルス性肝炎は、B型肝炎である。好ましい一実施形態において、前記薬物は、B型肝炎ウイルス(HBV)の負荷、HBsAg及び/又はHBeAgのレベルを低減することができる。式1の化合物は、既知の薬物であるセレコキシブであり、セレコキシブは、変形性関節症の症状と徴候を緩解し、成人関節リウマチの症状と徴候を緩解し、成人急性疼痛を治療するための薬物である。これまで、これをB型肝炎治療に使用する報告は未だにない。
【0046】
本願の発明者は、人工知能システムにより、薬物構造及びターゲットポイントのビッグデータを分析と研究した後、この一連の化合物がB型肝炎の治療において潜在的な活性を有することを予期せず発見した。一連の生物学的な実験によって検証された後、当該B型肝炎を治療する治療効果を有する式1の化合物が得られた。
【0047】
より特別なのは、セレコキシブ及びその誘導体は、HBsAg及び/又はHBeAgのレベルを低減させることができることが検証され、これは従来の普通薬であるヌクレオシド類似体では達成できない効果である。これにより、セレコキシブとヌクレオシド類似体とを併用することにより、B型肝炎ウイルスを機能的に治癒するばかりでなく、完全に除去することが可能である。
置換基の定義
本文で使用された「重水素化」とは、元の水素原子が水素元素の同位体である重水素原子によって置き換えられる置換方式を意味する。本文で使用された「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の中の少なくとも1種を意味する。本文で使用された「アミノ基が保護された」とは、-NH2基がアミド結合を形成することによって保護され、代謝過程中に、インビボにおける酵素による分解によって、活性アミノ基を形成して、機能してもよいことを意味する。例えば、アラニン等のアミノ酸のカルボキシル基とアミノ基とを脱水反応させて形成されたアミド結合である。「AA」とは、アミノ酸残基を意味し、即ち、20種類の天然アミノ酸からカルボキシル基を除去した後の残り部分を意味する。即ち、アミノ酸が活性-NH2基とアミド結合を形成することで、元の活性アミノ基を保護することを意味する。
【0048】
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎の病因学的な分類は、現在A型、B型、C型、D型及びE型の5種類の肝炎ウイルスが公認されており、それぞれHAV、HBV、HCV、HDV、HEVと記載されており、B型肝炎ウイルスがDNAウイルスであることを除いて、その他はいずれもRNAウイルスである。
【0049】
B型肝炎は、B型肝炎ウイルスによって引き起こされた、主に肝臓病変を伴う伝染病である。臨床では、主な症状は、食欲減退、吐き気、上腹部の不快感、肝臓部の痛み、無力感である。一部の患者は、黄疸、発熱及び肝機能障害を伴う肝腫大を患っている可能性がある。一部の患者は、慢性化し、肝硬変に発展することさえあり、少数の患者は、肝癌に発展する可能性がある。
【0050】
B型ウイルス性肝炎の病原体は、B型肝炎ウイルスであり、HBVと略され、B型肝炎ウイルスがDNAウイルスである。ゲノムは、二本鎖、環状、不完全閉鎖のDNAである。ウイルスの最外層は、ウイルスの外膜又は衣膜であり、その内層は、コア部分であり、核タンパク質は、コア抗原(HBcAg)であり、血清では検出できない。HBsAg陽性者の血清は、電子顕微鏡で直径22nmの円形及び糸状の粒子、並びに、比較的に少ない直径が42オングストロームの球形粒子(Dane氏粒子とも呼ばれ、完整なHBV粒子である)の3種類の粒子が見られる。
【0051】
B型肝炎の標識は、次のように検出される。(1)HBsAgと抗-HBs:HBsAg陽性は、HBVが現在感染段階にあることを示し、抗-HBsが免疫保護性抗体陽性であることは、HBVに対する免疫力が生じたことを示している。慢性HBsAgキャリアの診断基準は、臨床症状と徴候がなく、肝機能が正常で、HBsAg持続陽性が6ヶ月以上である者。(2)HBeAgと抗-HBe:HBeAg陽性は、HBVの活発な複製及び強い感染力の指標であり、被検血清がHBeAg陽性から抗-HBe陽性に変化することは、病気が緩解し、感染性が弱まっていることを示している。(3)HBcAgと抗-HBc:HBcAg陽性は、完全なHBV粒子の直接反応の存在を示し、HBVが活発に複製しており、検出方法が複雑であるため、臨床的に使用されることは少ない。抗-HBcは、HBV感染の標識であり、抗-HBc IgM陽性は、感染初期にあり、体内でウイルスを複製することを示している。慢性の軽度B型肝炎及びHBsAgキャリアでは、HBsAg、HBeAg及び抗-HBcのすべてが陽性で、高度な感染力があり、指標を陰性にすることは困難である。
【0052】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、1種又は複数種の他の治療剤又は予防剤をさらに含む。好ましい一実施形態において、前記他の治療剤又は予防剤は、インターフェロン又はヌクレオシド類似体から選択される。好ましい一実施形態において、前記ヌクレオシド類似体がエンテカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル及びテノホビルアラフェナミドから選択される。
【0053】
他の治療剤又は予防剤
何らかの実施形態において、前記他の治療剤又は予防剤は、エンテカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル及びテノホビルアラフェナミドから選択される1種又は複数種であり、例えば、エンテカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル及びテノホビルアラフェナミドから選択される1種であり、或いは、エンテカビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル及びテノホビルアラフェナミドから選択される少なくとも2種である。
【0054】
エンテカビル(Entecavir)は、化学名が2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[(1S,3R,4S)-4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-2-メチレンシクロペンタン]-6H-プリン-6-オンであり、その構造式が次の通りである。
【0055】
【化9】
米国特許US5206244には、エンテカビル及びそのB型肝炎ウイルス治療の用途が開示されている。WO9809964には、新たなエンテカビルの合成方法が開示されている。WO0164421には、低用量のエンテカビルの固形製剤が開示されている。
【0056】
エンテカビルは、米国スクイブ社が20世紀90年代に開発した、強い抗HBV効果が有する有効にな抗ウイルス剤である。それは、リン酸化によって活性がある三リン酸塩になることができ、細胞内の三リン酸塩の半減期が15hである。エンテカビル三リン酸塩は、HBVポリメラーゼの天然基質である三リン酸デオキシグアノシンと競合することにより、ウイルスポリメラーゼ(逆転写酵素)の3つの活性:(1)HBVポリメラーゼの開始と、(2)プレゲノムmRNAの逆転写負鎖の形成と、(3)HBV DNA正鎖の合成とをすべて抑制することができる。
【0057】
フマル酸テノホビルジソプロキシル(英文名:Tenofovir disoproxil fumarate、TDF、化学名が(R)-[[2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-1-メチルエトキシ]メチル]ホスホン酸ジイソプロポキシカルボニルメチルエステルフマル酸塩である)は、新規のヌクレオシド酸類の逆転写酵素阻害剤に属する、HBVウイルス活性を抑制する作用を有する、テノホビルのエステル類の前駆体である。
【0058】
TDFは、米国ギリアド社がアデホビルエステルに続いて開発に成功した他の新規の開環ホスホン酸ヌクレオシド類の化合物であり、2001年10月に初めて米国で販売されており、現在すでにヨーロッパ、オーストラリア及びカナダ等の国で販売されている。
【0059】
TDFは、体内で、天然のデオキシリボース基質に競合的に結合することによって、ウイルスポリメラーゼを抑制し、DNAに挿入することによってDNA鎖の合成を終了することができる。その主なメカニズムは、経口投与後にテノホビルに加水分解され、テノホビルが細胞キナーゼによってリン酸化され、薬理学的な活性のある代謝物であるテノホビル二リン酸を生成し、後者は5’-三リン酸デオキシアデニル酸と競合し、ウイルスDNAの合成を参与し、ウイルスDNAに入った後、3’-OH基が欠如しているため、DNAの延長が妨げられ、ウイルスの複製を遮断する。臨床応用には、TDFが有意な抗HBVウイルス治療効果を持ち、毒性と副作用が少ないことを示しているので、大きな臨床応用の将来性がある。
【0060】
テノホビルアラフェナミド(Tenofovir Alafenamide)は、米国ギリアドサイエンシズ社によって開発された新規なヌクレオシド類の逆転写酵素阻害剤(NRTI)であるテノホビル(Tenofovir)の前駆体薬物である。前代の抗B型肝炎類似薬物であるテノホビルジソプロキシルTDFと比べて、テノホビルアラフェナミドは、抗ウイルス活性が10倍であり、血漿中での安定性が200倍であり、半減期が225倍に高められた。TDFと比べて、テノホビルアラフェナミドは、TDFと同じ抗ウイルス治療効果を達成するためには、TDFの10分の1の投与剤量しか必要としない。従って、テノホビルアラフェナミドは、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の予防又は/及び治療に使用することで、より良い治療効果、より高い安全性及びより低い薬剤耐性を有する。
【0061】
上記の活性薬物に加えて、本文に記載された薬物又は薬物組成物は、任意にHBVを治療するための1種又は複数種の他の薬物を含んでもよく、例えば、3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、標的ウイルスmRNAのアンチセンスオリゴヌクレオシド酸、アポリポプロテインA1調整剤、アルギナーゼ阻害剤、B-及びT-リンパ球減毒剤阻害剤、Brutonチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、CCR2ケモカインアンタゴニスト、CD137阻害剤、CD160阻害剤、CD305阻害剤、CD4作動薬と調整剤、標的HBcAgの化合物、標的B型肝炎コア抗原(HBcAg)の化合物、共有閉鎖環状DNA(cccDNA)阻害剤、シクロフィリンタンパク質阻害剤、サイトカイン、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(ipi4)阻害剤、DNAポリメラーゼ阻害剤、エンドヌクレアーゼ調整剤、エピジェネティック修飾剤、ファルネソイドX受容体作動薬、遺伝子修飾剤又はエディター、HBsAg阻害剤、HBsAg分泌又は組立阻害剤、HBV抗体、HBV DNAポリメラーゼ阻害剤、HBV複製阻害剤、HBV RNA酵素阻害剤、HBVワクチン、HBVウイルス侵入阻害剤、HBx阻害剤、B型肝炎大きなエンベロープタンパク質調整剤、B型肝炎大きなエンベロープタンパク質刺激剤、B型肝炎構造タンパク質調整剤、B型肝炎表面抗原(HBsAg)阻害剤、B型肝炎表面抗原(HBsAg)分泌又は組立阻害剤、B型肝炎ウイルスE抗原阻害剤、B型肝炎ウイルス複製阻害剤、肝炎ウイルス構造タンパク質阻害剤、HIV-1逆転写酵素阻害剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、IAP阻害剤、IL-2作動薬、IL-7作動薬、免疫グロブリン作動薬、免疫グロブリンG調整剤、免疫調整剤、インドールアミン-2、リボースヌクレオシド酸レダクターゼ阻害剤、インターフェロン作動薬、インターフェロンα1配位子、インターフェロンα2配位子、インターフェロンα5配位子調整剤、インターフェロンα配位子、インターフェロンα配位子調整剤、インターフェロンα受容体配位子、インターフェロンβ配位子、インターフェロン配位子、インターフェロン受容体調整剤、インターロイキン-2配位子、ipi4阻害剤、リジンデメチラーゼ阻害剤、ヒストンデメチラーゼ阻害剤、KDM5阻害剤、KDM1阻害剤、キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーGメンバー1阻害剤、リンパ球活化遺伝子3阻害剤、リンパ毒素β受容体激活剤、マイクロRNA(miRNA)遺伝子治療剤、Axl調整剤、B7-H3調整剤、B7-H4調整剤、CD160調整剤、CD161調整剤、CD27調整剤、CD47調整剤、CD70調整剤、GITR調整剤、HEVEM調整剤、ICOS調整剤、Mer調整剤、NKG2A調整剤、NKG2D調整剤、OX40調整剤、SIRPα調整剤、TIGIT調整剤、Tim-4調整剤、Tyro調整剤、Na+-タウリン共輸送ポリペプチド(NTCP)阻害剤、天然キラー細胞受容体2B4阻害剤、NOD2遺伝子刺激剤、核タンパク質阻害剤、核タンパク質調整剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PEG-インターフェロンλ、ペプチジルプロリルイソメラーゼ阻害剤、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、組換えスカベンジャー受容体A(SRA)タンパク質、組換えチモシンα-1、レチノイン酸誘導遺伝子1刺激物、逆転写酵素阻害剤、リボヌクレアーゼ阻害剤、RNADNAポリメラーゼ阻害剤、短干渉RNA(siRNA)、短合成ヘアピンRNA(sshRNA))、SLC10A1遺伝子阻害剤、SMAC模倣体、Srcチロシンキナーゼ阻害剤、インターフェロン遺伝子刺激物(STING)作動薬、NOD1刺激物、T細胞表面糖タンパク質CD28阻害剤、T細胞表面糖タンパク質CD8調整剤、チモシン作動薬、チモシンα1配位子、Tim-3阻害剤、TLR-3作動薬、TLR-7作動薬、TLR-9作動薬、TLR9遺伝子刺激剤、toll様受容体(TLR)調整剤、ウイルスリボースヌクレオシド酸レダクターゼ阻害剤、ジンクフィンガーヌクレアーゼ又は合成ヌクレアーゼ(TALEN)及びその組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本文で使用されるように、「治療有効量」又は「有効量」とは、その剤量で有効であり、所要の時間周期を持続することによって、所望の治療結果を達成するための量を意味する。B型肝炎治療剤の治療有効量は、障害又は症状の性質及び特定の試薬に依存し、当業者に知られている標準的な臨床技術によって決定されてもよい。
【0063】
治療結果は、例えば、症状の軽減、生存の延長、生活質量の改善等であってもよい。治療結果は、「治癒」である必要はない。治療結果は、予防性であってもよい。最も好ましい治療効果は、機能的な治癒及びB型肝炎ウイルスの除去である。
【0064】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、製造された後に、経口、直腸、経鼻、経肺、局所、口腔及び舌下、腟、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外から選択される経路により投与される。
【0065】
好ましい一実施形態において、前記薬物は、製造された後に、経口投与により投与されるが、錠剤又はカプセルの形態が好ましい。
【0066】
投与経路
本開示の薬物又は薬物組成物は、治療を待っている病症に適するいずれの経路によって投与される。好適な経路は、経口、直腸、鼻、肺、局所(口腔及び舌下を含む)、腟及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外を含む)等を含む。
【0067】
何らかの実施形態において、本文に開示された薬物又は薬物組成物は、静脈内注射によって投与される。好ましい経路は、例えば、被験者の状態に応じて変化してもよいことが理解される。本開示の薬物又は薬物組成物の1つの利点は、それらが経口バイオアベイラビリティであり、そして経口投与してもよいことである。
【0068】
薬物組成物
何らかの実施形態において、薬物組成物において、式1の化合物、化合物1-2乃至1-4又はその薬学的に許容される塩が使用される。本開示の薬物組成物は、通常の担体及び賦形剤を用いて(通常の慣行に従って選択する)製造してもよい。錠剤には、賦形剤、流動促進剤、充填剤、接着剤等が含まれる。水性製剤は、無菌形態で製造され、非経口投与によって送達に使用される場合、通常は等張性である。すべての製剤には、任意に賦形剤、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(1986)に記載された賦形剤を任意にを含む。賦形剤には、アスコルビン酸及びその他の抗酸化剤、EDTAのようなキレート剤、デキストラン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸のような炭水化物を含む。製剤のpH範囲は、約3乃至約11であるが、通常は約7乃至10である。何らかの実施形態において、製剤のpH範囲は、約2乃至約5であるが、通常は約3乃至4である。
【0069】
製剤には、前述の投与経路に適した製剤が含まれる。製剤は、便宜上単位剤型で存在してもよく、薬学の分野でよく知られている任意の方法によって製造されてもよい。技術と製剤は、一般的には、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA)から見られる。このような方法は、活性成分を1種又は複数種の補助成分からなる担体と結合するステップを含む。一般的には、製剤は、活性成分を液体担体又は細かく分割された固形担体又は両者と均一且つ密接に結合させ、次いで必要に応じて製品を成形することによって製造される。
【0070】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれ所定量の活性成分を含むディスクリートユニット、例えばカプセル剤又は錠剤;粉末又は粒子;水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液;或いは、水中油型液体乳剤又は油中水型液体乳剤の形態として存在してもよい。
【0071】
錠剤は、任意に1種又は複数種の補助成分と共に、加圧又は成形によって製造される。加圧錠剤は、適切な機械の中で、粉末又は粒子等の自由流動形態の活性成分を加圧し、任意に接着剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤又は分散剤と混合することによって製造してもよい。成形錠剤は、適切な機械の中で、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末状活性成分の混合物を成形することによって製造してもよい。錠剤は、任意にコーティング又はスコアリングされてもよく、そして、活性成分の徐放又は制御放出を提供するように任意に製造されてもよく。
【0072】
経口使用のための製剤は、ハードゼラチンカプセルとして示されでもよい(ここで、活性成分は、リン酸カルシウム又は高嶺土等の不活性固形希釈剤と混合される)。或いは、ソフトゼラチンカプセルとして示されでもよい(ここで、活性成分は、水性媒体又は落花生油、流動パラフィン、オリーブ油等の油性媒体と混合される)。
【0073】
本開示の薬物組成物は、無菌の注射可能な製剤の形態、例えば、無菌の注射可能な水性又は油性懸濁液であってもよい。当該懸濁液は、既知の技術に従って、上記の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して製造してもよい。無菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液、又はフリーズドライ粉末に製造してもよい。使用可能な許容される担体及び溶媒は、水、リンゲル液及び等張性塩化ナトリウム溶液を含む。また、無菌固定油は、一般的に溶媒又は懸濁媒体として使用してもよい。この目的のために、合成のモノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の温和の固定油を使用してもよい。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、同様に注射剤の製造に使用してもよい。使用可能な許容される担体及び溶媒は、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液及び高張性塩化ナトリウム溶液を含む。
【0074】
以下の実施例を検討した後、本発明の他の目的、利点及び新規の特徴は、当業者にとって明らかになる。
【0075】
実施例
実施例1-HepG2-NTCP細胞を応用した式1の化合物のインビトロ抗HBV活性の評価
化合物の製造方法は、次の通りである。
【0076】
20mM濃度の貯蔵液の製造を例として、溶媒DMSOの体積(μL)=サンプル質量(mg)×純度÷分子量÷20×106
対照化合物は、Shanghai Titan Scientific社から購入したETV(ロット番号:P1214012;99.0%の純度)を含む。陽性対照化合物RG7834(ロット番号:ET25747-14-P1;99.5%の純度)は、Shangha WuXi AppTec社から購入した。
【0077】
上記の対照化合物の母液濃度は、いずれも20mMであり、-20℃下で保存した。
【0078】
【表1】
実験方案
細胞の培養と化合物の処理
0日目に、HepG2-NTCPを48穴プレートに培養した(7.5×10
4個細胞/穴)。1日目に、2%DMSOを含む培地に変更した。
【0079】
2日目に、まず、化合物を添加して細胞を1時間予処理し、その後、D型HBVを添加してHepG2-NTCP細胞に感染させた(感染と同時に化合物を加えた)。被験化合物は、3つの単一薬物濃度、1つの聨合薬物濃度を希釈した後、ダブルホールで検出した。対照化合物は、ETVである。化合物の濃度の設定については、表2を参照した。
【0080】
3日目、5日目及び7日目に、化合物を含む新鮮な培地を交換した。
【0081】
9日目に、上清液を収集し、収集した細胞の上清液をELISA法でHBeAg及びHBsAgを検出し、qPCR法でHBV DNAのレベルを検出した。同時に、CellTiter-Gloで細胞活力を検出し、細胞を収集して凍結保存した(バックアップ)。実験手順については、表3を参照した。
【0082】
【0083】
【表3】
サンプルの検出
1)qPCR法による細胞培養上清液中のHBV DNAの含有量の検出
QIAamp 96 DNA Blood Kitの説明書を参照して、細胞培養上清液の中からDNAを抽出した。HBV特異的プライマーqPCRによって、HBV DNAの含有量を検出した。PCR反応:95℃、10min;95℃、15sec、60℃、1min、40サイクル。
【0084】
2)ELISA法による細胞培養上清液中のHBeAg及びHBsAgの含有量の検出方法は、キットの説明書を参照するが、この方法は、簡単に説明すると以下の通りである。
【0085】
それぞれ50μLの標準品を取り、サンプルと対照物質を検出プレートに加え、次に、各穴に50μLの酵素結合物を加え、37℃で60分間インキュベートし、プレートを洗浄液で洗浄した後、吸引乾燥し、次に、50μLの予備混合発光基質を加え、室温で10分間暗所インキュベートし、最後にマイクロプレートリーダーで発光値を測定した。
【0086】
3)CellTiter-Gloによる細胞活力の検出
CellTiter-Gloキットの説明書を参照して、細胞活力を測定したが、この方法は、簡単に説明すると以下の通りである。細胞培養上清液を収集した後、各穴にCellTiter-Glo(培地と1対1で希釈する)を加え、室温で10分間インキュベートし、マイクロプレートリーダーで発光値を測定した。
【0087】
データの分析
HBV DNA抑制率(%)=(1-化合物群サンプルのHBVコピー数/DMSO群のHBVコピー数)×100%
Hbe/sAg抑制率(%)=(1-サンプルのHBe/sAg値/DMSO対照組HBe/sAg値)×100%
結果の分析
検出結果については、表4~6及び
図1~7を参照した。
【0088】
【0089】
【0090】
【表6】
上記の試験結果は、空白対照群と比べて、式1の化合物がHBVウイルスの負荷を効果的に低減することができ、HBV DNAを73.01%に低減させる場合、同時にHBsAg及びHBeAgを46.12%及び78.13%に低減させることができることを示した。上記の細胞試験を並行して繰り返しすことにより(
図6を参照)、式1の化合物は、HBV DNA、HBsAg及びHBeAgに対する抑制作用を示し、そして明らかな剤量依存性を示した。
【0091】
エンテカビルは、文献で報告されているように、HBV DNAを低減させるだけで、HBeAg及びHBsAgの低減にはほとんど効果がない。しかし、エンテカビルと比べて、式1の化合物は、HBeAg及びHBsAgを効果的に低減することができ、B型肝炎ウイルスを除去し、機能的に治癒することを達成できることが期待される。
【0092】
式1の化合物であるセレコキシブとエンテカビルとを併用する場合、HBV DNA及びHBeAgを低減する点において、さらに相乗効果を発生することができ、抑制率がそれぞれ80.69%(HBV DNA)及び80.46%(HBeAg)と増加することができるため、既知の薬物と併用することによって、組成物のHBVの負荷を低減し、HBsAg及び/又はHBeAgのレベルを低減する薬物効果を増強して、式1の化合物は幅広い応用の将来性がある。
【0093】
HepG2-NTCP細胞に対する異なる濃度のセレコキシブの細胞毒性のテスト結果(
図7を参照)は、セレコキシブが細胞毒性ではなくウイルスへの作用があることをさらに示した。
実施例2-マウスのインビボ試験
実験方法:AAV-HBVマウスモデルでは、強制経口投与によって1日1回で、投与した。ここで、投与群(G10 HD042、即ち、セレコキシブ):セレコキシブの投与剤量は、60mpkであり、空白群(G1溶媒対照群):10% DMSO+40% PEG400+5% Tween 80+45% Saline(V/V)溶液を投与した。
【0094】
投与の90日間の期間中において、6日目、13日目、20日目、27日目、34日目、41日目、48日目、55日目、62日目、69日目、77日目、83日目、90日目にそれぞれ採血し、マウスの血漿中のHBV DNA、HBsAg、HBeAg、anti-HBsの含有量を検出し、結果を
図4~5に示したが、これは、セレコキシブを投与した後、マウスの血漿中のHBV DNA、HBsAg、HBeAgが大幅に低減し、それぞれ0.72Log10copy/mL、0.76Log10IU/mL、0.34Log10PEIU/mLと低減したことを示した。
本発明は、特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の趣旨と範囲を逸脱せずに、前記実施方案に対して変更又は改良が可能であることは当業者にとって明らかであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。