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  • 特許-二次電池正極材の製造方法 図1
  • 特許-二次電池正極材の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】二次電池正極材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240109BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240109BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022538301
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2020018387
(87)【国際公開番号】W WO2021125759
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0172484
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(73)【特許権者】
【識別番号】523180436
【氏名又は名称】ポスコヒューチャーエム株式会社
【氏名又は名称原語表記】POSCO FUTURE M CO. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 キ ソン
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-121780(JP,A)
【文献】特開2005-276502(JP,A)
【文献】特開2006-190556(JP,A)
【文献】特開2016-121860(JP,A)
【文献】特開2019-175699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiCO粉末からCOを分離してLiO粉末を製造する段階;
前記LiO粉末をNCM(ニッケル-コバルト-マンガン)前駆体粉末と混合して混合粉末を成形する段階;および
前記混合粉末をロータリーキルンを利用して焼成する段階
を含み、
前記混合粉末を成形する段階は、窒素雰囲気の密閉空間で行われる、二次電池正極材の製造方法。
【請求項2】
前記LiO粉末を製造する段階は、
前記LiCO粉末を高温雰囲気の焼成炉内部に装入する段階;および
前記焼成炉内部に空気または酸素を供給して前記LiCO粉末から前記COを分離する段階
を含む、請求項1に記載の二次電池正極材の製造方法。
【請求項3】
前記混合粉末を成形する段階は、
前記LiO粉末を粉砕する段階;
前記LiO粉末を前記NCM前駆体粉末と混合する段階;および
前記混合粉末をグラニュール(granule)またはブリケット(briquette)形態で成形する段階
を含む、請求項1または2に記載の二次電池正極材の製造方法。
【請求項4】
前記混合粉末をロータリーキルンを利用して焼成する段階は、
内面に耐火物コーティング層が形成され、内部に螺旋状バッフル(spiral baffle)が設けられた高温雰囲気の前記ロータリーキルンの内部に前記混合粉末を装入する段階;および
前記ロータリーキルンの内部で前記混合粉末を焼成する段階
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の二次電池正極材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、二次電池正極材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二次電池正極材の製造方法は、正極活物質である正極材を製造する方法である。
【0003】
従来の二次電池正極材の製造方法のうち、LiNiMnCO(1-x-y)成分のNCM(ニッケル-コバルト-マンガン)正極材焼成工程において、ニッケルの含有量が70%以下である場合には、LiCOをNCM(ニッケル-コバルト-マンガン)前駆体と混合して焼成温度が高い焼成炉に投入し、ニッケルの含有量が70%以上である場合には、LiOHをNCM前駆体と混合して焼成温度が低い焼成炉に投入する。
【0004】
ニッケルの含有量が70%以上であるHigh Nickel NCM正極材を製造する従来の二次電池正極材の製造方法は、LiOHがLiCOに比べて価格が高いため、製造費用削減および単位体積当たりの充電容量を増加させるために、コバルトの含有量を減らし、ニッケルの容量を増やしたHigh Nickel NCM正極材を製造する製造費用が増加する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、LiOHを使用せずに、LiCOを使用しても、ニッケルの含有量が70%以上であるHigh Nickel NCM正極材を製造して二次電池正極材の製造費用を削減した二次電池正極材の製造方法を提供することにその目的がある。
【0006】
また、一実施形態は、ロータリーキルン(rotary kiln)を利用して二次電池正極材を製造することによって、二次電池正極材を大量に製造する二次電池正極材の製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面は、LiCO粉末からCOを分離してLiO粉末を製造する段階、前記LiO粉末をNCM(ニッケル-コバルト-マンガン)前駆体粉末と混合して混合粉末を成形する段階、および前記混合粉末をロータリーキルンを利用して焼成する段階を含む二次電池正極材の製造方法を提供する。
【0008】
前記LiO粉末を製造する段階は、前記LiCO粉末を高温雰囲気の焼成炉内部に装入する段階、および前記焼成炉内部に空気または酸素を供給して前記LiCO粉末から前記COを分離する段階を含むことができる。
【0009】
前記混合粉末を成形する段階は、前記LiO粉末を粉砕する段階、前記LiO粉末を前記NCM前駆体粉末と混合する段階、および前記混合粉末をグラニュール(granule)またはブリケット(briquette)形態で成形する段階を含むことができる。
【0010】
前記混合粉末を成形する段階は、窒素雰囲気の密閉空間で行われてもよい。
【0011】
前記混合粉末をロータリーキルンを利用して焼成する段階は、内面に耐火物コーティング層が形成され、内部に螺旋状バッフル(spiral baffle)が設けられた高温雰囲気の前記ロータリーキルンの内部に前記混合粉末を装入する段階、および前記ロータリーキルンの内部で前記混合粉末を焼成する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
一実施形態によれば、LiOHを使用せずに、LiCOを使用しても、ニッケルの含有量が70%以上であるHigh Nickel NCM正極材を製造して二次電池正極材の製造費用を削減した二次電池正極材の製造方法が提供される。
【0013】
また、一実施形態によれば、ロータリーキルン(rotary kiln)を利用して二次電池正極材を製造することによって、二次電池正極材を大量に製造する二次電池正極材の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態による二次電池正極材の製造方法を示すフローチャートである。
図2】二次電池正極材の製造方法に利用されるロータリーキルンを示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0016】
本発明を明確に説明するために、説明上不要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。
【0017】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除外せず、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
以下、図1図2を参照して一実施形態による二次電池正極材の製造方法を説明する。
【0019】
図1は一実施形態による二次電池正極材の製造方法を示すフローチャートである。
【0020】
図1を参照すれば、まず、LiCO粉末からCOを分離してLiO粉末を製造する(S100)。
【0021】
具体的には、LiOH粉末に比べて価格が低いLiCO粉末を高温雰囲気の焼成炉内部に装入し、焼成炉内部に空気または酸素(O)ガスを供給してLiCO粉末からCOガスを分離してLiO粉末を製造する。
【0022】
ここで、焼成炉は、ロータリーキルン(rotary kiln)であってもよいが、これに限定されない。
【0023】
焼成の前段階において、LiCO粉末に空気あるいは酸素ガスを投入すれば高温の雰囲気でLiCO粉末が空気中の酸素あるいは酸素ガスの酸素と反応してLiO粉末に変換され、反応物は二酸化炭素(CO)ガスが発生する。このとき、二酸化炭素と酸素の分圧と温度により反応速度が決定するため、工程の温度を400℃~800℃で一定に維持し、一定の分圧を維持するために空気あるいは酸素ガスを供給しながら一定量の二酸化炭素ガスを排出してもよい。
【0024】
次に、LiO粉末をNCM(ニッケル-コバルト-マンガン)前駆体粉末と混合して混合粉末を成形する(S200)。
【0025】
具体的には、LiO粉末を粉砕し、LiO粉末をNCM前駆体粉末と混合し、混合粉末をグラニュール(granule)またはブリケット(briquette)形態で成形して混合粉末を成形する。混合粉末を成形するための全ての段階は、LiO粉末がCOと反応してLiCOに還元されることを防止するために、窒素雰囲気の密閉空間で行われてもよい。
【0026】
ここで、NCM前駆体は、ニッケル-コバルト-マンガン水酸化物である[NiMnCO](OH)を含むことができるが、これに限定されない。
【0027】
LiCO粉末からCOを分離してLiO粉末を製造した後、LiO粉末の一部で凝集(aggregation)が発生してかたまった塊状態になり、この状態でLiO粉末をNCM(ニッケル-コバルト-マンガン)前駆体粉末と混合すれば、焼成工程でLiO粉末のLiOが均一にNCM前駆体粉末のNCM前駆体内に浸透し難いため、LiO粉末を粉砕する。
【0028】
LiO粉末を粉砕後、NCM前駆体粉末と1:1以上のモル比で混合する。
【0029】
LiO粉末が高温状態で空気中の二酸化炭素と反応して再び炭酸リチウム(LiCO)に還元されることを防止するために、前述した粉砕と混合は窒素雰囲気の密閉空間で行われる。
【0030】
LiO粉末とNCM前駆体粉末の混合後、ロータリーキルン(rotary kiln)に投入する前に1mm~100mmの大きさのグラニュールまたはブリケット形態の混合粉末を成形する。従来のサヤ(saggar)を利用するRHK(roller hearth kiln)焼成炉とは異なり、一実施形態による二次電池正極材の焼成方法は、ロータリーキルンの焼成炉を利用して正極材を焼成するため、混合粉末をグラニュールまたはブリケット形態で成形することによって、焼成炉であるロータリーキルン内部で先入れおよび先出しを実現して焼成時間の偏差を最小化し、ロータリーキルン内部の反応物生成による汚染を防止し、ロータリーキルン内部にクリンカー(clinker)が発生する問題を抑制する。
【0031】
次に、混合粉末を、ロータリーキルンを利用して焼成する(S300)。
【0032】
図2は二次電池正極材の製造方法に利用されるロータリーキルンを示した図面である。図2の(A)は、二次電池正極材の製造方法に利用されるロータリーキルンRKを示した図面であり、(B)はロータリーキルンRKの内面IWに形成された耐火物コーティング層CLを示す断面図であり、(C)はロータリーキルンRKの内部に設けられた螺旋状バッフルSBを示す写真である。
【0033】
図2を参照すれば、具体的には、内面IWに耐火物コーティング層CLが形成され、内部に螺旋状バッフル(spiral baffle)SBが設けられた高温雰囲気のロータリーキルンRKの内部に混合粉末を装入し、ロータリーキルンRKの内部で混合粉末を正極活物質である二次電池正極材として焼成する。
【0034】
ロータリーキルンRKは、原料装入部、原料排出部、加熱部、冷却部を含む。
【0035】
ロータリーキルンRKの原料装入部を通じて混合粉末がロータリーキルンRKの内部に装入され、ロータリーキルンRK内部に装入された混合粉末は、加熱部で焼成され、冷却部で冷却されてロータリーキルンRKの原料排出部を通じて外部に排出される。ロータリーキルンRK内部で混合粉末から焼成された正極活物質である二次電池正極材が原料排出部を通じて外部に排出される。
【0036】
ブリケットあるいはグラニュール形態で成形された混合粉末は、従来のRHK焼成炉で使用されるサヤ(Saggar)なしに内部に螺旋状バッフルSBが設けられた耐火物コーティング層CLを有するロータリーキルンRKである焼成炉に窒素雰囲気下で投入される。ロータリーキルンRKは低速で回転し、400℃~1000℃の目標焼成温度を維持したまま混合粉末を焼成する。
【0037】
ロータリーキルンRKの加熱部の内部は順次に連通する温度昇温区間、温度維持区間、冷却区間に分けて制御されてもよい。冷却区間が必要な理由は、急激な温度変化による二次反応および残留リチウム生成を防止するためである。
【0038】
次の段階で、ロータリーキルンRKである焼成炉で焼成されたブリケットあるいはグラニュール形態の正極活物質である二次電池正極材を粉砕し、粉砕された正極活物質を分級し、分級された正極活物質に対して脱鉄工程を行うことができる。その後、正極活物質に残留リチウムが多い場合は、水洗および乾燥過程を経て、正極活物質に残留リチウムが基準値内に入る場合は、水洗および乾燥過程なしにコーティングおよび熱処理を経て、最終的に正極活物質を包装する工程を行うことができる。
【0039】
ロータリーキルンRKで焼成された正極活物質である二次電池正極材は、LiNiMnCO(1-x-y)成分のNCM(ニッケル-コバルト-マンガン)正極材であり、ニッケルの含有量が70%以上であるHigh Nickel NCM正極材である。
【0040】
従来の二次電池正極材の製造方法は、ニッケルの含有量が70%以上であるHigh Nickel NCM正極材を製造するとき、NCM前駆体にLiCOを混合する場合、Oと反応させるための高い焼成温度による正極材の特性低下を解決するために、NCM前駆体にLiOHを混合して低い焼成温度でOと反応させる。
【0041】
しかし、従来の二次電池正極材の製造方法は、LiOHの価格がLiCOに比べて高いため、二次電池正極材の製造費用が上昇する問題がある。
【0042】
これを解決するために、一実施形態による二次電池正極材の製造方法は、LiOHおよびOを使用せずに、LiCOをLiOに変換してNCM前駆体と混合し、低い焼成温度でロータリーキルンRKを用いて焼成することによって、正極材の特性低下を解決すると同時に、ニッケルの含有量が70%以上であるHigh Nickel NCM正極材を製造する。
【0043】
つまり、LiOHを使用せずに、LiCOを使用しても、ニッケルの含有量が70%以上であるHigh Nickel NCM正極材を製造して二次電池正極材の製造費用を低減した二次電池正極材の製造方法が提供される。
【0044】
また、ロータリーキルンRKを利用して二次電池正極材を製造することによって、二次電池正極材を大量に製造する二次電池正極材の製造方法が提供される。
【0045】
以上により、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0046】
RK ロータリーキルン
CL 耐火物コーティング層
SB 螺旋状バッフル
図1
図2