(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】回転電機冷却フレーム及び回転電機冷却フレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20240109BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240109BHJP
H02K 15/14 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K9/19 A
H02K15/14 Z
(21)【出願番号】P 2022538629
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2021022526
(87)【国際公開番号】W WO2022019003
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2020125583
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597034440
【氏名又は名称】川俣精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】平手 利昌
(72)【発明者】
【氏名】望月 資康
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌明
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
(72)【発明者】
【氏名】福原 弘康
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-039726(JP,A)
【文献】特開2010-166710(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02731236(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0246933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 9/19
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフレーム本体と、
前記フレーム本体に設けられ
るとともに前記フレーム本体の軸方向に沿って設けられた1つの冷媒供給口と、
前記フレーム本体に設けられ
るとともに前記フレーム本体の軸方向に沿って設けられた1つの冷媒排出口と、
前記フレーム本体内に設けられ、前記冷媒供給口と前記冷媒排出口とに連通
し、前記フレーム本体の軸方向における両端で折り返すように蛇行している冷媒流路を有する
2つの流路系統と、
を備え
、
前記2つの流路系統は、
前記冷媒供給口と前記冷媒流路との接続部に形成された分岐流路と、
前記冷媒排出口と前記冷媒流路との接続部に形成された合流流路と、
によって設けられ、
前記分岐流路は、前記フレーム本体の軸方向における端面に近い位置で、かつ、前記冷媒供給口の直下の位置に配置されている、
回転電機冷却フレーム。
【請求項2】
前記冷媒供給口と前記冷媒排出口とは、前記フレーム本体の径方向における中央を挟むように対向して配置されている、
請求項1
に記載の回転電機冷却フレーム。
【請求項3】
前記冷媒供給口と前記冷媒排出口とは、前記フレーム本体の軸方向で同一の端面に配置されている、
請求項1
又は請求項
2に記載の回転電機冷却フレーム。
【請求項4】
前記冷媒供給口と前記冷媒排出口とは、前記フレーム本体の軸方向で互いに反対の端面に配置されている、
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の回転電機冷却フレーム。
【請求項5】
前記フレーム本体の軸方向における一端面に形成され、前記冷媒流路と連通する複数の孔を備える、
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の回転電機冷却フレーム。
【請求項6】
筒状のフレーム本体と、
前記フレーム本体に設けられた1つの冷媒供給口と、
前記フレーム本体に設けられた1つの冷媒排出口と、
前記フレーム本体内に設けられ、前記冷媒供給口と前記冷媒排出口とに連通する冷媒流路を有する複数の流路系統と、
前記フレーム本体の軸方向における一端面に形成され、前記冷媒流路と連通する複数の孔と、
を備える、
回転電機冷却フレーム。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の回転電機冷却フレームの製造方法であって、
前記冷媒流路を形成する中子を製造し、
前記中子を製造した後、鋳型内に前記中子を配置し、
前記中子を前記鋳型に配置した後、前記鋳型内に溶融金属を鋳込み、凝固させて、前記フレーム本体を製造し、
前記フレーム本体を製造した後、前記フレーム本体から前記中子を除去する、
を有する
回転電機冷却フレームの製造方法。
【請求項8】
前記中子は、砂型であり、
前記中子を除去する際には、
前記フレーム本体を振動させて前記中子を荒粉砕し、
前記中子を荒粉砕した後、前記フレーム本体の内部に気体を吹き付けて前記中子を形成する砂型材料を除去し、
前記砂型材料を除去した後、前記フレーム本体を加熱して、前記フレーム本体に残存する前記中子の残存砂型材料を粒子状にし、
前記フレーム本体を加熱した後、前記フレーム本体の前記内部に気体を吹き付けて前記残存砂型材料を除去する、
を有する、
請求項
7に記載の回転電機冷却フレームの製造方法。
【請求項9】
前記フレーム本体の軸方向における前記中子の端部に、複数の位置決め凸部を形成し、
前記フレーム本体を製造する際には、前記フレーム本体から前記位置決め凸部を露出させる請求項
7又は請求項
8に記載の回転電機冷却フレームの製造方法。
【請求項10】
前記位置決め凸部は、前記中子の前記軸方向の一端にのみ形成されている、
請求項
9に記載の回転電機冷却フレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機冷却フレーム及び回転電機冷却フレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジンと、回転電機としての電動機とを搭載したハイブリッド車用の駆動装置が知られている。このような駆動装置の構造として、円筒状の回転電機フレームの内周部に回転電機(電動機)の構成要素(固定子や回転子など)を収納してユニット化した構造が考えられている。このような回転電機ユニットを備えた駆動装置は、回転電機の駆動に伴う加熱防止のための冷却として、回転電機フレーム内に冷却水を供給する構造を備える場合がある。この構造によれば、回転電機フレームを冷却することにより、回転電機を冷却できる。
【0003】
ここで、機械加工によって、回転電機フレーム内に冷却水を流通させる流路を形成することが可能である。回転電機フレームの構成として、回転電機フレームを複数の部材に分割した分割構成を採用する場合がある。例えば、回転電機フレームの構成として、円筒状のフレーム本体と、フレーム本体の軸方向における端部に配置された環状のシール部材とが互いに分割可能な分割構成が採用されている。
【0004】
この構成において、フレーム本体には、フレーム本体を軸方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。複数の貫通孔は、周方向に並んで配置されている。シール部材は、複数の貫通孔の開口を閉塞するように設けられている。シール部材には、周方向で互いに隣り合う貫通孔を連通させる凹部が形成されている。このような構成を有する回転電機フレームにおいては、機械加工を施すことによってフレーム本体に形成された複数の貫通孔が連通し、フレーム本体の全体に冷却水を行き渡らせることができる。
【0005】
ところで、複数の貫通孔を冷却水が流通するうちに徐々に冷却水の温度が高くなってしまい、回転電機フレームの全体として温度ムラが発生する可能性があった。このため、回転電機フレームによって、回転電機を十分に冷却しきれない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、効果的に回転電機を冷却することができる回転電機冷却フレーム及び回転電機冷却フレームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の回転電機冷却フレームは、筒状のフレーム本体と、前記フレーム本体に設けられるとともに前記フレーム本体の軸方向に沿って設けられた1つの冷媒供給口と、前記フレーム本体に設けられるとともに前記フレーム本体の軸方向に沿って設けられた1つの冷媒排出口と、前記フレーム本体内に設けられ、前記冷媒供給口と前記冷媒排出口とに連通し、前記フレーム本体の軸方向における両端で折り返すように蛇行している冷媒流路を有する2つの流路系統と、を備え、前記2つの流路系統は、前記冷媒供給口と前記冷媒流路との接続部に形成された分岐流路と、前記冷媒排出口と前記冷媒流路との接続部に形成された合流流路と、によって設けられ、前記分岐流路は、前記フレーム本体の軸方向における端面に近い位置で、かつ、前記冷媒供給口の直下の位置に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の回転電機冷却フレームを示す斜視図。
【
図3】実施形態の第1変形例における流水路を示す斜視図。
【
図4】実施形態の第2変形例における流水路を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の回転電機冷却フレーム及び回転電機冷却フレームの製造方法を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、回転電機冷却フレーム1を示す斜視図である。
回転電機冷却フレーム1は、図示しない回転電機(固定子及び回転子)を収納する。
図1に示すように、回転電機冷却フレーム1は、円筒状のフレーム本体2と、フレーム本体2に設けられた吸水口3(冷媒供給口の一例)及び排水口4(冷媒排出口の一例)と、フレーム本体2内に形成されている流水路5(冷媒流路の一例)と、を備える。
なお、以下の説明では、フレーム本体2の軸方向を単に軸方向と称し、フレーム本体2の径方向を単に径方向と称し、フレーム本体2の周方向を単に周方向と称する。
【0012】
フレーム本体2は、例えば、アルミニウム合金により鋳造されている。なお、フレーム本体2を鋳造する方法の詳細は、後述する。フレーム本体2の内周面には、例えば、図示しない固定子の外周面が嵌合される。フレーム本体2の軸方向の長さL1は、図示しない固定子をフレーム本体2に嵌合して固定するのに十分な長さである。フレーム本体2の径方向における厚さT1は、フレーム本体2内に流水路5を形成するのに十分な厚さである。フレーム本体2は、フレーム本体2の軸方向において、第一端部2a(第一端面)と、第一端部2aとは反対側に位置する第二端部2b(第二端面)とを有する。
【0013】
このようなフレーム本体2の軸方向における第一端部2aには、吸水口3と排水口4とが一体に成形されている。吸水口3及び排水口4は、軸方向に沿って形成されている。吸水口3は、先端3aと、先端3aに形成された開口部3bと、先端3aとは反対側の基端3cとを有する。排水口4は、先端4aと、先端4aに形成された開口部4bと、先端4aとは反対側の基端4cとを有する。開口部3b,4bは、同一方向を向いている。また、吸水口3と排水口4とは、フレーム本体2の中心軸Cを挟むように対向して配置されている。換言すると、吸水口3と排水口4とを結ぶ直線は、フレーム本体2の径方向における中央(中心軸C)に交差する。
【0014】
また、フレーム本体2の軸方向における第一端部2aには、複数の孔6が形成されている。複数の孔6は、周方向に等間隔で配置されている。複数の孔6は、流水路5に連通されている。回転電機冷却フレーム1には、複数のキャップ7が設けられている。複数のキャップ7の各々は、軸方向に沿って回転電機冷却フレーム1の外側から孔6に挿入される。これによって、キャップ7は、孔6を閉塞する。キャップ7は、フレーム本体2に固定されている。
【0015】
図2は、流水路5を示す斜視図である。
図1、
図2に示すように、吸水口3と排水口4との間において、分岐流路11と、合流流路12と、2つの流水路5(2つの流路系統)とがフレーム本体2の内部に設けられている。流水路5の各々は、フレーム本体2の軸方向における両端側で折り返すように蛇行しながらフレーム本体2の全体に渡って形成されている。流水路5の各々は、複数の直線流路8と、複数の第1連結流路9と、複数の第2連結流路10と、を有する。
【0016】
複数の直線流路8と、複数の第1連結流路9と、複数の第2連結流路10が直列に接続されている直列流路が1つの流路系統を構成する。さらに、フレーム本体2は、流路を分岐する分岐流路11と、分岐された流路を合流する合流流路12とを備える。これによって、フレーム本体2の内部に、複数の流路系統が設けられている。本実施形態では、流路系統の数は、2つである。
【0017】
複数の直線流路8は、フレーム本体2の軸方向に延在している。複数の直線流路8は、周方向に等間隔で配置されている。軸方向において、複数の直線流路8の各々は、第一流路端と、第二流路端とを有する。第一流路端は、第一端部2aの近くであってフレーム本体2の内部に位置する。第二流路端は、第二端部2bの近くであってフレーム本体2の内部に位置する。
【0018】
複数の第1連結流路9の各々は、周方向において互いに隣り合う2つの直線流路8を連結する。第1連結流路9と直線流路8とが連結される部分は、後述する円弧流路9bである。
【0019】
複数の第2連結流路10の各々は、周方向において互いに隣り合う2つの直線流路8を連結する。第2連結流路10と直線流路8とが連結される部分は、第2連結流路10に形成された後述する傾斜面10bである。
【0020】
分岐流路11は、吸水口3の先端3aとは反対側の基端3cに形成されている。分岐流路11は、フレーム本体2の軸方向における第一端部2aに近い位置で、かつ、吸水口3の直下の位置に配置されている。
【0021】
合流流路12は、排水口4の先端4aとは反対側の基端4cに形成されている。合流流路12は、フレーム本体2の軸方向における第一端部2aに近い位置で、かつ、排水口4の直下の位置に配置されている。つまり、本実施形態では、分岐流路11及び合流流路12の両方は、フレーム本体2の第一端部2aに近い位置に配置されている。
【0022】
例えば、分岐流路11及び合流流路12の両方が、第一端部2aの反対側である第二端部2bに近い位置に配置されてもよい。
例えば、分岐流路11がフレーム本体2の第一端部2aに近い位置に配置された構成において、合流流路12がフレーム本体2の第二端部2bに近い位置に配置されてもよい。この場合においても、吸水口3と排水口4とは、フレーム本体2の中心軸Cを挟むように対向して配置されている。換言すると、吸水口3と排水口4とを結ぶ直線は、フレーム本体2の径方向における中央(中心軸C)に交差する。
【0023】
2つの流路系統の各々において、流路9~12は、直列に連通されている。
具体的に、互いに隣り合う2つの直線流路8の間には、1つの第1連結流路9が設けられており、2つの直線流路8と1つの第1連結流路9とが連通されている。同様に、互いに隣り合う2つの直線流路8の間には、1つの第2連結流路10が設けられており、2つの直線流路8と1つの第2連結流路10とが連通されている。
【0024】
分岐流路11は、吸水口3に連通されているとともに、吸水口3の隣りに位置する2つの直線流路8に連通されている。合流流路12は、排水口4に連通されているとともに、排水口4の隣りに位置する2つの直線流路8に連通されている。
分岐流路11は、吸水口3に配置された第1連結流路9と同一平面上に配置されている。
合流流路12は、排水口4に配置された第1連結流路9と同一平面上に配置されている。
複数の第1連結流路9は、吸水口3及び排水口4を避けるように配置されている。複数の第1連結流路9及び複数の第2連結流路10は、周方向において互い違いの位置に配置されている。
【0025】
また、第1連結流路9は、周方向に沿う横流路9aと、横流路9aの周方向における両端に形成され円弧状に屈曲する円弧流路9bとを有する。横流路9aの周方向における中央部と孔6とが連通されている。
第2連結流路10は、周方向に沿う横流路10aを有している。横流路10aの周方向における両端には、この横流路10aを平面取りした形状を有する傾斜面10bが形成されている。
【0026】
図2において、流水路5の軸方向における長さL2、つまり、軸方向における1つの直線流路8の長さ、軸方向における1つの第1連結流路9の幅、及び軸方向における1つの第2連結流路10の幅の合計の長さがフレーム本体2の軸方向の長さL1よりも短い。
流水路5の径方向における幅W1がフレーム本体2の径方向における厚さT1よりも薄い。このため、流水路5は、フレーム本体2の内部に収納され、フレーム本体2の外部に露出しない。
【0027】
次に、回転電機冷却フレーム1の製造方法について説明する。
回転電機冷却フレーム1は、鋳造により製造される。流水路5は、砂型となる中子20を用いて形成される。より具体的には、まず、流水路5を形成する中子20を製造する(中子製造工程)。中子20の形状は、
図2に示す流水路5の形状に対応する。中子20は、孔6を形成する凸部21(位置決め凸部の一例、
図2参照)を有している。
【0028】
次に、中子20を製造した後、図示しない鋳型内に中子20を配置する(中子配置工程)。この際、中子20の凸部21を用いて鋳型に対する中子20の位置決めを行う。すなわち、凸部21は、鋳型に対する中子20の位置決めを行う位置決め凸部として機能している。
【0029】
次に、図示しない鋳型内に溶融金属(例えば、溶融アルミニウム)を鋳込む。鋳型内において溶融金属を凝固させてフレーム本体2を製造する(フレーム製造工程)。この際、フレーム本体2の軸方向における第一端部2a(
図1参照)から凸部21の先端が露出されている。これにより、フレーム本体2に孔6が形成される。
【0030】
次に、フレーム本体2を鋳造した後、フレーム本体2から中子20を除去する(中子除去工程)。
中子除去工程では、まず、フレーム本体2に振動を加えて中子20を荒粉砕する(荒粉砕工程)。これにより、中子20を形成する砂型材料(粉砕物)は、複数の塊、粒子、粉塵となる。
【0031】
次に、フレーム本体2に形成された複数の孔6のうち、任意に選択された孔6を介してフレーム本体2の内部(流水路5の内部)に空気を吹き付ける(第1吹き付け工程)。すると、空気が吹き付けられた孔6以外の孔6や吸水口3の開口部3b及び排水口4の開口部4bから中子20を形成する材料である塊、粒子、粉塵が排出される。したがって、中子20を形成する材料がフレーム本体2から除去される。このように、フレーム本体2の孔6は、鋳型に対する中子20の位置決めを行うために形成される。さらに、フレーム本体2の製造後には、フレーム本体2の孔6は、フレーム本体2内から中子20を形成する材料を除去するために利用される。
【0032】
次に、フレーム本体2を加熱して、フレーム本体2に残存する中子20の残存砂型材料(残存材料)である塊を粒子状とする(加熱工程)。
次に、フレーム本体2に形成された複数の孔6のうち、任意に選択された孔6を介してフレーム本体2の内部(流水路5の内部)に再び空気を吹き付ける(第2吹き付け工程)。すると、空気が吹き付けられた孔6以外の孔6、吸水口3の開口部3b、及び排水口4の開口部4bから、中子20の残存砂型材料(残存材料)である粒子や粉塵が排出される。これにより、中子除去工程が完了する。
中子除去工程が完了した後、キャップ7によって孔6を閉塞する。これにより、回転電機冷却フレーム1の製造が完了する。
【0033】
次に、回転電機冷却フレーム1の機能について説明する。
回転電機冷却フレーム1の吸水口3及び排水口4には、図示しない配管又はホース等が接続される。そして、これら配管又はホース等から吸水口3に冷媒としての冷却水が供給される。吸水口3により流水路5に供給された冷却水は、分岐流路11を介して2つの直線流路8に分かれ、2つの直線流路8の各々に流通される(
図1における矢印Y1,Y2参照)。この後、複数の直線流路8、複数の第1連結流路9、及び複数の第2連結流路10に冷却水が流通され、分岐流路11で分岐された冷却水が合流流路12で合流される(
図1における矢印Y3,Y4参照)。そして、合流した冷却水は、合流流路12を介して排水口4から排水される。
【0034】
このように、回転電機冷却フレーム1は、2つの流水路5、すなわち、2つの流路系統を有している。つまり、回転電機冷却フレーム1は、第1流路系統R1と第2流路系統R2とを備える。
第1流路系統R1においては、吸水口3より矢印Y1に示す方向に向かって冷却水が流れ、矢印Y3に示す方向から排水口4を経て水が排水される。
第2流路系統R2においては、吸水口3より矢印Y2に示す方向に向かって冷却水が流れ、矢印Y4に示す方向から排水口4を経て冷却水が排水される。
【0035】
フレーム本体2に形成されている孔6は、キャップ7によって閉塞されている。このため、各流路8~12に流通される水がフレーム本体2の外部に漏れ出ることがない。また、第1連結流路9と直線流路8とが接続される接続部(角部)には、円弧流路9bが形成されている。第2連結流路10と直線流路8とが接続される接続部(角部)には、傾斜面10bが形成されている。このため、各接続部(角部)での流水抵抗の増大を抑制でき、各流路8~12の全体で冷却水をスムーズに流通させることができる。
【0036】
また、流水路5は、フレーム本体2の軸方向における両端側で折り返すように蛇行しながらフレーム本体2の全体に渡って形成されている。このため、フレーム本体2の全体に満遍なく冷却水が行き渡る。しかも、フレーム本体2は、2つの流水路5(2つの流路系統)を有している。
【0037】
このため、1つの流路系統によってフレーム本体2の全体に冷却水を行き渡らせる場合と比較して、2つの流路系統を用いる構造では、1つの流路系統あたりの流路長さを短くできる。つまり、複数の直線流路8と、複数の第1連結流路9と、複数の第2連結流路10との合計の流路長さを短くできる。
【0038】
この結果、フレーム本体2の内部で冷却水が滞在する時間を短くすることができ、フレーム本体2の内部において冷却水が温まってしまうことを抑制できる。したがって、冷却水によってフレーム本体2の全体を十分に冷却することができる。フレーム本体2の全体が十分に冷却されることにより、フレーム本体2の内周面に嵌合されている固定子が冷却される。
【0039】
このように、上述の回転電機冷却フレーム1におけるフレーム本体2は、2つの流路系統(第1流路系統R1,第2流路系統R2)を有している。このため、1つの流路系統あたりの流路の合計距離を短くすることができ、フレーム本体2の内部で冷却水が滞在する時間を短くすることができ、冷却水が温まってしまうことを抑制できる。よって、冷却水によってフレーム本体2の全体を、温度ムラを抑制しつつ、十分に冷却することができる。
【0040】
また、吸水口3の基端3cに分岐流路11が形成されている。排水口4の基端4cに合流流路12が形成されている。このため、吸水口3に供給された冷却水が直ちに分岐されて第1流路系統R1及び第2流路系統R2の各々に流通される。排水口4の直前に冷却水が到達するまで冷却水が合流せずに、フレーム本体2の全体に冷却水が行き渡る。よって、フレーム本体2の全体に行き渡る冷却水の温度ムラをさらに抑制できる。
【0041】
さらに、分岐流路11は、吸水口3に配置された第1連結流路9と同一平面上に配置されている。合流流路12は、排水口4に配置された第1連結流路9と同一平面上に配置されている。このため、吸水口3に供給された冷却水は、直ちに2つの第1連結流路9に分岐されて、第1流路系統R1及び第2流路系統R2の各々に流通される。このため、第1流路系統R1及び第2流路系統R2の各々にできる限り冷えた冷却水を供給することができる。
【0042】
換言すると、吸水口3から第1流路系統R1及び第2流路系統R2の各々に達するまでの距離が長い場合では、分冷却水が温まってしまう可能性がある。これに対し、吸水口3の直下(基端3c)に接続された第1流路系統R1及び第2流路系統R2の各々に水が供給されることにより、冷えたままの冷却水が第1流路系統R1及び第2流路系統R2の各々に行き渡る。
【0043】
また、吸水口3と排水口4とは、フレーム本体2の中心軸Cを挟むように対向して配置されている。このため、第1流路系統R1の長さと第2流路系統R2の長さとを同じにすることができる。このため、第1流路系統R1及び第2流路系統R2の各々の水の温度ムラを抑制でき、フレーム本体2の全体を均一に冷却することができる。
【0044】
さらに、吸水口3と排水口4とは、フレーム本体2の軸方向における同一の端面(軸方向における第一端部2a)に配置されている。このため、吸水口3や排水口4に接続される図示しない配管やホース等を纏めて引き回すことができる。このため、回転電機冷却フレーム1のレイアウト設計の自由度を向上できる。
【0045】
また、フレーム本体2の軸方向における第一端部2aには、複数の孔6が形成されている。本実施形態のように、回転電機冷却フレーム1を鋳造により製造する場合、中子20を除去するための孔6として利用できる。また、孔6を中子20の位置決め用の孔として利用できる。このように、孔6に2つの役割を持たせることができる。
また、孔6以外の吸水口3の開口部3bや排水口4の開口部4bも中子20を除去するための孔として利用できる。
さらに、流水路5は、フレーム本体2の軸方向における両端側で折り返すように蛇行しながらフレーム本体2の全体に渡って形成されている。このため、フレーム本体2の全体に満遍なく冷却水を行き渡らせることができ、フレーム本体2の全体を均一に冷却することができる。
【0046】
また、回転電機冷却フレーム1の製造方法は、中子製造工程と、中子配置工程と、フレーム製造工程と、中子除去工程と、を有する。このため、機械加工を施すことなく、フレーム本体2内に中子20を用いて容易に流水路5を形成することができる。
また、中子20として砂型を用いる。中子除去工程では、荒粉砕工程と、第1吹き付け工程と、加熱工程と、第2吹き付け工程と、を行う。これにより、フレーム本体2から中子20を確実に除去することができる。
【0047】
中子20は、凸部21を有している。この凸部21によってフレーム本体2に孔6を形成するとともに図示しない鋳型内での中子20の位置決めをしている。このため、凸部21によって、鋳型内での中子20の位置決めを容易に行うことができるとともに、フレーム本体2から中子20を容易に除去できる。
【0048】
凸部21は、中子20の第1連結流路9に対応する位置に形成されている。つまり、複数の凸部21は、中子20の全体のうち軸方向における一端にのみ形成されている。このため、フレーム本体2の軸方向における両端に孔6が形成されないので、キャップ7を取り付ける際にフレーム本体2の向きを変更する必要がない。このため、キャップ7の取り付ける作業の作業性を向上できる。また、中子20を形成するための砂型もできる限り簡素化でき、中子20の製造コストをできる限り低減できる。
【0049】
[変形例]
なお、上述の実施形態の流水路5において、直線流路8の周方向の間隔は、任意に設定することが可能である。周方向で隣り合う直線流路8の間の間隔を広げてもよいし、狭くしてもよい。周方向で隣り合う直線流路8の間の間隔に応じて、第1連結流路9、第2連結流路10、分岐流路11、及び合流流路12の周方向の長さを変更すればよい。
【0050】
上述の実施形態では、フレーム本体2の軸方向における第一端部2aに吸水口3と排水口4とが一体に成形されている場合について説明した。吸水口3及び排水口4の先端3a,4aに形成された開口部3b,4bが同一方向を向いている場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。吸水口3と排水口4とがフレーム本体2の軸方向で互いに反対側の端面に配置されてもよい。開口部3b,4bも同一方向を向いていなくてもよい。
【0051】
このように構成することで、吸水口3に接続される配管やホースの引き回し方向と、排水口4に接続される配管やホースの引き回し方向とを異ならせることができる。このため、吸水口3に接続される配管やホースと排水口4に接続される配管やホースとをできる限り離間させることができる。この結果、吸水口3に接続される配管やホースと排水口4に接続される配管やホースとの間で直接的に熱交換が行われてしまうことを防止でき、フレーム本体2をより確実に冷却できる。
【0052】
上述の実施形態では、吸水口3と排水口4とは、フレーム本体2の中心軸Cを挟むように対向して配置されている場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。吸水口3と排水口4とが軸方向から見て片寄った位置に配置されていてもよい。このように構成することで、吸水口3及び排水口4のレイアウト設計の自由度を向上できる。
【0053】
上述の実施形態では、冷媒として冷却水を用いた場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。冷却水以外の流体を冷媒として用いてもよい。例えば、油、空気等を冷媒として用い、フレーム本体2を冷却してもよい。
上述の実施形態では、流水路5が第1流路系統R1と第2流路系統R2を有している場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。吸水口3と排水口4とが1つずつフレーム本体2に設けられていれば、流路系統の数は、3以上であってもよい。
【0054】
上述の実施形態では、フレーム本体2の形状が円筒である場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。フレーム本体2の形状が筒状形状であればよく、図示しない固定子の外形に応じてフレーム本体2の形状を変更してもよい。例えば、フレーム本体2を多角筒形状としてもよい。
【0055】
上述の実施形態では、フレーム本体2は、例えば、アルミニウム合金により鋳造されている場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。熱伝導性を有する金属が採用されていれば、さまざまな金属を用いてフレーム本体2を鋳造してもよい。
【0056】
上述の実施形態に係る回転電機冷却フレーム1の製造方法において、流水路5は、砂型の中子20を用いて形成した場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。フレーム本体2を鋳造した後に中子20を除去できればよい。例えば、ロストワックス法を用いて流水路5を形成してもよい。
【0057】
図3は、第1変形例における流水路5を示す斜視図である。
上述の実施形態では、分岐流路11が吸水口3に配置された第1連結流路9と同一平面上に配置され、かつ、合流流路12が排水口4に配置された第1連結流路9と同一平面上に配置されている場合について説明した。そして、吸水口3の基端3cに分岐流路11が形成されている場合について説明した。また、排水口4の基端4cに合流流路12が形成されている場合について説明した。
しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。
図3に示すように、吸水口3とは反対側の第2連結流路10と同一平面上に分岐流路11を配置してもよいし、排水口4とは反対側の第2連結流路10と同一平面上に合流流路12を配置してもよい。この場合、吸水口3と分岐流路11とを第1延長流路13によって連通する。また、排水口4と合流流路12とを第2延長流路14によって連通する。
【0058】
第1変形例における第1連結流路9及び第2連結流路10の各々の形状は、上述の実施形態に係る第1連結流路9第2連結流路10の各々の形状と若干異なる。つまり、第1変形例における第1連結流路9及び第2連結流路10は、周方向に沿ってほぼ直線状に延びている。このように、流水路5(各流路8~12)の形状は、任意に選択することができる。
したがって、第1変形例によれば、前述の実施形態と同様又は類似の効果を奏する。
【0059】
図4は、第2変形例における流水路5を示す斜視図である。
上述の実施形態では、流水路5は、フレーム本体2の軸方向における両端側で折り返すように蛇行しながらフレーム本体2の全体に渡って形成されている場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。
図4に示すように、流水路5は、フレーム本体2の軸方向における第一端部2aから軸方向における第二端部2b(
図1参照)に向かって蛇行しながら引き回されていてもよい。
【0060】
より具体的には、流水路5は、吸水口3から分岐流路11を介して2つの流路に分岐されている。分岐流路11によって分岐された2つの流路の各々は、分岐流路11から周方向に沿って排水口4に向かって延びる複数の外周流路15を有している。第2変形例では、例えば、分岐された2つの流路の各々が、5本の外周流路15を有する。
【0061】
分岐流路11によって分岐された2つの流路の各々において、複数の外周流路15は、軸方向に沿って並んで配置されている。複数の外周流路15の各々の周方向における流路端は、折り返し流路16に連通している。互いに隣り合う2つの外周流路15の流路端は、折り返し流路16に連通されている。折り返し流路16は、分岐流路11及び合流流路12の近くに位置する。
【0062】
具体的には、分岐流路11の近くに位置する折り返し流路16は、軸方向から見て、折り返し流路16の一部が分岐流路11に重なるように配置されている。合流流路12の近くに位置する折り返し流路16は、周方向において、合流流路12に面している。第2変形例においては、合流流路12は、軸方向に延びる合流流路部材である。合流流路部材の軸方向における一端は、2つの外周流路15に連通している。合流流路部材の軸方向における他端は、排水口4に連通している。
【0063】
分岐流路11によって分岐された2つの流路の各々において、5本の外周流路15のうちの軸方向から見て分岐流路11から最も離れた外周流路15は、合流流路12に連通している。つまり、合流流路12は、分岐流路11によって分岐された2つの流路の外周流路15を合流させる。
【0064】
これにより、周方向に沿って吸水口3から排水口4に延びる2つの流路の各々は、軸方向から見てフレーム本体2の半周に相当する長さを有する外周流路15を有するように、かつ、折り返しながら軸方向に沿って蛇行する。これによって、第2変形例に係る流水路5は、第1流路系統R1と第2流路系統R2を有する。
このように構成した場合であっても、前述の実施形態と同様又は類似の効果を奏する。
【0065】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、回転電機冷却フレーム1は、2つの流路系統(第1流路系統R1,第2流路系統R2)を備える流水路5を有している。このため、1つの流路系統あたりの流路の合計距離を短くすることができる。このため、フレーム本体2の内部での冷却水が滞在する時間を短くすることができ、フレーム本体2の内部において冷却水が温まってしまうことを抑制できる。よって、冷却水によってフレーム本体2の全体を、温度ムラを抑制しつつ十分に冷却することができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1…回転電機冷却フレーム、2…フレーム本体、3…吸水口(冷媒供給口)、4…排水口(冷媒排出口)、5…流水路(冷媒流路)、6…孔、8…直線流路(冷媒流路)、9…第1連結流路(冷媒流路)、10…第2連結流路(冷媒流路)、11…分岐流路(冷媒流路)、12…合流流路(冷媒流路)、13…第1延長流路(冷媒流路)、14…第2延長流路(冷媒流路)、15…外周流路(冷媒流路)、16…折り返し流路(冷媒流路)、20…中子、21…凸部、R1…第1流路系統、R2…第2流路系統