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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20240109BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20240109BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240109BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/207
B60R21/2338
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022540078
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024059
(87)【国際公開番号】W WO2022024620
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020127516
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松下 徹也
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012495(JP,A)
【文献】特開2019-051859(JP,A)
【文献】特開2006-088714(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が車両用シートの上部及び下部に夫々固定され、前記シートに着座する乗員の側部で膨張展開するエアバッグを前記乗員に向けて寄せ付ける張力布を備える乗員拘束装置において、
前記エアバッグには、膨張展開の際に、前記張力布を保持する保持溝が形成され
前記保持溝は前記エアバッグの下部に形成され、
膨張展開したエアバッグの下端部に、前記保持溝と連続する凹部が形成されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
前記張力布は、前記エアバッグの表面に少なくとも一箇所の結合部で結合されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記保持溝は、膨張展開したエアバッグの上下方向に延びることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗員拘束装置。
【請求項4】
前記張力布は
前記エアバッグの膨張展開の際、前記保持溝内に受容され、
前記保持溝の長さ方向に沿って摺動可能であり、
前記保持溝は
前記張力布が前記保持溝の幅方向への移動することを制限することを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の乗員拘束装置。
【請求項5】
前記エアバッグは
膨張展開の際に、前記張力布と接触する接触部及び該接触部と対向する非接触部と
前記接触部及び前記非接触部の間に架設され、前記エアバッグの形状を規制する内部テザーとを備えており、
前記保持溝は、前記接触部において前記内部テザーに対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の乗員拘束装置。
【請求項6】
前記張力布が膨張展開する前記エアバッグを前記乗員に向けて寄せ付けるために接触すべき位置に、前記保持溝が設けられていることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の乗員拘束装置。
【請求項7】
前記内部テザーは、シート形状であり、下方に向かって縮幅していることを特徴とする請求項に記載の乗員拘束装置。
【請求項8】
前記シートに設けられ、前記張力布に張力を付与する張力付与機構を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを有する乗員拘束装置に関する。
本出願は、2020年7月28日出願の日本出願第2020-127516号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エアバッグ装置が広く普及している。エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する装置であって、ガス圧でエアバッグが膨張展開して乗員を受け止めて拘束することによって保護する。エアバッグ装置には、設置箇所又は用途に応じて様々な種類がある。
【0003】
特許文献1には、車両座席の両側の側部に設けられ、乗員の脇で膨張展開するサイドエアバッグ装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-034356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、エアバッグが膨張展開して乗員を受け止めるためには、エアバッグが想定された位置に位置する必要がある。
これに対しては、張力布を用いて、膨張展開するエアバッグの位置を調整する技術が知られている。斯かる技術においては、エアバッグが膨張展開する際、張力布がエアバッグの外側を囲んで保持して乗員側に寄せ付ける。
【0006】
一方、張力布が膨張展開するエアバッグを乗員側に寄せ付ける場合、エアバッグが想定された位置から離脱すると、張力布がエアバッグの位置調整を適確に行うことができなくなることがあり得る。
しかしながら、上述したような特許文献1に係る技術では、このような問題を解決できない。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エアバッグが膨張展開する際、張力布がより適確にエアバッグの位置調整を行うことができる乗員拘束装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗員拘束装置は、両端が車両用シートの上部及び下部に夫々固定され、前記シートに着座する乗員の側部で膨張展開するエアバッグを前記乗員に向けて寄せ付ける張力布を備える乗員拘束装置において、前記エアバッグには、膨張展開の際に、前記張力布を保持する保持溝が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エアバッグが膨張展開する際、より適確にエアバッグの位置調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る乗員拘束装置が車両のシートに取り付けられた状態を示す図である。
図2】乗員拘束装置においてエアバッグが膨張展開した状態を示す模式図である。
図3】膨張展開したエアバッグの拡大図である。
図4図3のIV‐IV線によるエアバッグの横断面図である。
図5図3のV‐V線によるエアバッグの縦断面図である。
図6図5のVI‐VI線によるエアバッグの縦断面図である。
図7】実施の形態2に係る乗員拘束装置においてエアバッグが膨張展開した状態を示す模式図である。
図8】膨張展開したエアバッグの拡大図である。
図9図8のIX‐IX線によるエアバッグの横断面図である。
図10図8のX‐X線によるエアバッグの縦断面図である。
図11図10のXI‐XI線によるエアバッグの縦断面図である。
図12】実施の形態3に係る乗員拘束装置においてエアバッグが膨張展開した状態を示す模式図である。
図13】実施の形態4に係る乗員拘束装置においてエアバッグが膨張展開した状態を示す模式図である。
図14】実施の形態5に係る乗員拘束装置においてエアバッグが膨張展開した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態に係る乗員拘束装置について、図面に基づいて詳述する。
本発明の実施の形態に係る乗員拘束装置は、車両のシートに装着される。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る乗員拘束装置100が車両のシート5に取り付けられた状態を示す図である。図1においては、エアバッグが膨張展開する前の状態が示されている。以下においては、便宜上、図にて定義する前後、左右、上下の各方向を用いて説明を行う。
【0013】
シート5は、乗員が着座するシートクッション8と、シートクッション8の後側から立ち上がり、乗員の背を支えるシートバック4とを有する。シートバック4の下端部がシートクッション8の後端部に設けられ、左右方向に延びるシャフト6によって回動可能に保持されている。従って、シートバック4はシャフト6を軸として前後方向に回動して角度を調節できる。
【0014】
シートバック4の上部には、左右方向の中央部から立ち上がるように、ヘッドレスト部7が設けられている。ヘッドレスト部7はシートクッション8に着座する乗員の頭部を支える。
【0015】
乗員拘束装置100は、筐体内にエアバッグを収容しているエアバッグモジュール1a,1bと、膨張展開するエアバッグの位置調整を行う張力布2a,2bを含む。
エアバッグモジュール1aはシートバック4の左側部に設けられ、エアバッグモジュール1bはシートバック4の右側部に設けられている。シートバック4の内部のフレーム(図示せず)と該フレームを覆うカバーとの間にエアバッグモジュール1a,1bが配置されている。
【0016】
図1においては、シートバック4の右側部にエアバッグモジュール1bが設けられ、シートバック4の左側部にエアバッグモジュール1aが設けられている状態を図示しているが、これに限定されるものではなく、エアバッグモジュール1a,1bの何れか一方のみが設けられても良い。
【0017】
各エアバッグモジュール1a,1bは、袋体であるエアバッグ3(図2参照)と、エアバッグ3内にガスを噴出するインフレータ(図示せず)等を備えている。
【0018】
エアバッグ3は、2枚のパネルの周縁を縫い合わせて形成されており、例えばエアバッグ3の内部に前記インフレータが配設されている。車両が衝突した時、乗員拘束装置100は前方向にエアバッグ3を膨張展開させて乗員を受け止めて保護する。
【0019】
図1においては、便宜上、張力布2a,2bを一点鎖線にて示している。張力布2a,2bは所定の幅を有する帯状であり、張力布2aはシートバック4の左側の側部に設けられ、張力布2bはシートバック4の右側に設けられている。
【0020】
張力布2aの上端部21aは、シートバック4の上面41であって、ヘッドレスト部7の左側にて、シートバック4の前記フレームの固定位置F1に固定されている。張力布2bの上端部21bは、シートバック4の上面41であって、ヘッドレスト部7の右側にて、シートバック4の前記フレームの固定位置F2に固定されている。
【0021】
一方、張力布2aの下端部22a及び張力布2bの下端部22bは、シートクッション8の前部の中央側に設けられた下側固定部81に保持されている。下側固定部81は、例えば、二枚の金属プレートを含み、張力布2a,2bの下端部22a,22bは斯かる金属プレートの間に挟まれる。
【0022】
張力布2a,2bは、シートバック4からシートクッション8に亘ってこれらの側部の内側に配置されている。張力布2aはシートバック4の左側の側部からシートクッション8の左側の側部に亘って配置され、張力布2bはシートバック4の右側の側部からシートクッション8の右側の側部に亘って配置されている。
【0023】
各張力布2a,2bは、その中間部分がエアバッグモジュール1a,1b内を夫々通り、エアバッグモジュール1a,1b内の各エアバッグ3に、後述するように、結合されている。
【0024】
実施の形態1に係る乗員拘束装置100においては、車両が衝突した場合、又は大きな衝撃を受けた場合、瞬時にエアバッグ3がシートバック4のカバーを破ってシート5の前側に膨張展開する。また、エアバッグ3の膨張展開と同時に、張力布2a,2bが対応するエアバッグ3と共にシート5の両側部から飛び出て膨張展開するエアバッグ3を保持し、エアバッグ3をシートバック4の中心側、即ち、シートクッション8の乗員側に配置させることができる。
【0025】
図2は、乗員拘束装置100においてエアバッグ3が膨張展開した状態を示す模式図である。図2では、便宜上、シートクッション8に着座する乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の様子のみを示している。しかし、実質、乗員Pの左右両側にて同様にエアバッグ3が膨張展開し、左側のエアバッグ3は張力布2aによって位置調整が行われ、右側のエアバッグ3は張力布2bによって位置調整が行われる(図3参照)。
以下においては、図2を用いて、シート5の左側の張力布2aの作用、動作を説明し、右側の張力布2bについては説明を省略する。
【0026】
車両が衝突した場合、図2に示すように、左側のエアバッグ3はシートバック4の側面42の内側からカバーを破ってシート5の前側に向かって膨張展開する。また、エアバッグ3の膨張展開と同時に、張力布2aも飛び出て、膨張展開するエアバッグ3の外側を囲んでシートバック4の中央側、即ち、シートクッション8に座っている乗員P側に配置させ、乗員Pを受け止めて拘束することによって、保護する。
【0027】
この際、必然として、張力布2aはエアバッグ3の外側面と部分的に接触することになる。実施の形態1に係る乗員拘束装置100においては、エアバッグ3と張力布2aとの接触部のうち、所定の箇所にて張力布2aをエアバッグ3に縫い付けて結合させてある。
【0028】
図2の例においては、張力布2aは、「X」印で示す2箇所の結合部23a,24aでエアバッグ3に縫い付けられている。結合部23aが結合部24aより下方に位置する。
【0029】
また、乗員拘束装置100では、結合部23aよりも下方であって、エアバッグ3の下部に、張力布2aを保持する保持溝9aが後述するように形成されている。保持溝9aは、エアバッグ3が膨張展開する際、張力布2aを受容して保持し、エアバッグ3が正規の位置から離脱することを防ぐ。
【0030】
ここで、エアバッグ3の下部とは、膨張展開したエアバッグ3の下端部からエアバッグ3の車両幅方向に最も膨らむ部位までをいう。概ね、エアバッグ3の上下方向の中間部分よりも下側の部分を示すが、必ずしもそれに限定されるものではない。
【0031】
また、エアバッグ3の上部とは、膨張展開したエアバッグ3の上端部からエアバッグ3の車両幅方向に最も膨らむ部位までをいう。概ね、エアバッグ3の上下方向の中間部分よりも上側部分を示すが、必ずしもそれに限定されるものではない。
【0032】
なお、エアバッグ3の車両幅方向に最も膨らむ部位とは、膨張展開したエアバッグ3が張力布2a,2bと接触する接触領域のうちでもっとも膨らむ部位であり、エアバッグ3全体の中で最も膨らむ部位とは異なる場合がある。
【0033】
図3は、膨張展開したエアバッグ3の拡大図であり、図4は、図3のIV‐IV線によるエアバッグ3の横断面図であり、図5は、図3のV‐V線によるエアバッグ3の縦断面図である。図4は、下方から見た図であり、図5では、説明の便宜上、乗員Pを二点鎖線にて示している。また、図3及び図4においては、便宜上、張力布2aを二点鎖線にて示している。
【0034】
図6は、図5のVI‐VI線によるエアバッグ3の縦断面図である。図6においては、便宜上、張力布2aを破線にて示している。
【0035】
エアバッグ3は、略同形の第1パネル3a(接触部)と第2パネル3b(非接触部)とを、周縁の縫い合わせにより結合させて形成された袋体である。第1パネル3a及び第2パネル3bは例えば円形である。よって、エアバッグ3は、膨張展開の際、縫い目34によって膨張が制限され、膨張展開の完了時、エアバッグ3は縦断面視及び横断面視略楕円形状をなす。
【0036】
エアバッグ3が膨張展開した場合、第1パネル3aと第2パネル3bとは互いに対向しており、第1パネル3aは上述のように張力布2aと結合しており、第2パネル3bは乗員Pと面する。図4及び図5においては、エアバッグ3の縫い目34を一点鎖線にて示している。
【0037】
また、エアバッグ3は、膨張展開の際にエアバッグ3の形状を規制する内部テザー32を備えている。更に、エアバッグ3の下部には、後述するように、第1パネル3aに保持溝9aが形成されており、第2パネル3bに溝9bが形成されている。保持溝9a及び溝9bは、内部テザー32によって形成されている。
以下では、説明の便宜上、エアバッグ3が膨張展開した場合を用いて説明する。
【0038】
上述の如く、内部テザー32は、エアバッグ3の内側に設けられている。内部テザー32は略台形のシート形状を有しており、略平行する2つの辺のうち短辺を下側にし、長辺を上側にして、エアバッグ3の下部に設けられている(図5参照)。内部テザー32は、エアバッグ3の下端部から所定の間隔をおいて設けられている。
【0039】
内部テザー32は、第1パネル3aと第2パネル3bとの間に架設されている。内部テザー32の前記短辺と隣り合う2つの辺のうち、一方は第1パネル3aの下部に縫い付けられ、他方は第2パネル3bの下部に縫い付けられている。これによって、第1パネル3aには縫い目35aが形成され、第2パネル3bには縫い目35bが形成されている(図3及び図4参照)。
【0040】
また、上述の如く、第1パネル3a及び第2パネル3bの内側が内部テザー32に拘束されているので、膨張展開の際、エアバッグ3は、第1パネル3a及び第2パネル3bの対向方向(以下、エアバッグ3の厚み方向)における膨張が制限される。
【0041】
特に、第1パネル3aは下部の縫い目35aにて内部テザー32と結合され、第2パネル3bは下部の縫い目35bにて内部テザー32に結合されている。よって、第1パネル3aにおいては、縫い目35aに対応する部分を除く他の部分が相対的に自由に膨張でき、第2パネル3bにおいては、縫い目35bに対応する部分を除く他の部分が相対的に自由に膨張できる。
【0042】
即ち、エアバッグ3の膨張展開の際、第1パネル3aの下部及び第2パネル3bの下部が内部テザー32を介して互いに引っ張り合うので、第1パネル3aにおいては縫い目35aに係る部分及び縫い目35aの周囲が、第2パネル3bにおいては縫い目35bに係る部分及び縫い目35bの周囲が凹む。これによって、第1パネル3aには保持溝9aが形成され、第2パネル3bには溝9bが形成される。
【0043】
換言すれば、第1パネル3aにおいては、内部テザー32(縫い目35a)に対応する部分に保持溝9aが形成されている。また、第2パネル3bにおいても、内部テザー32(縫い目35b)に対応する部分に、溝9bが形成されている(図4参照)。図5において、破線で囲まれた領域の外側が保持溝9a及び溝9bに該当する。
【0044】
また、上述の如く、内部テザー32は略台形であり、高さ方向に所定の寸法を有する。よって、縫い目35a及び縫い目35bは、上下方向に、所定範囲に亘って形成されている。従って、保持溝9a及び溝9bは、上下方向に、所定範囲に亘って延びる。更に、内部テザー32が略台形であるので、前記高さ方向と交差する方向(以下、幅方向)における寸法が、下方に向かって徐々に減少している。
【0045】
更に、上述の如く、第1パネル3aにおいては縫い目35aの周囲が、第2パネル3bにおいては縫い目35bの周囲が凹んでおり、内部テザー32は、幅方向における寸法が、下方に向かって徐々に減少している。これにより、エアバッグ3の下部では第1パネル3aの保持溝9a及び第2パネル3bの溝9bが連結され、エアバッグ3の下端部に凹部36が形成されている。
【0046】
以上のように、実施の形態1の乗員拘束装置100においては、エアバッグ3の膨張展開の際、張力布2aに接触する第1パネル3aの下部に、上下方向に延びるように保持溝9aが形成される。エアバッグ3の膨張展開の際、張力布2aは保持溝9a内に受容される(図4参照)。この際、張力布2aでは幅方向の両端部が保持溝9a内で第1パネル3aと当接しているのに対し、両端部を除く中央部と第1パネル3aとの間には間隔が存在する。
【0047】
従って、張力布2aは、保持溝9a内にて、第1パネル3a上を保持溝9aの長さ方向に沿って摺動可能である(図6参照)。また、張力布2aは保持溝9aの幅方向への移動が制限される。
よって、膨張展開の際、エアバッグ3の下部が張力布2aから離れ、想定の位置から逸脱することを抑制でき、張力布2aが確実にエアバッグ3を乗員P側に付勢して位置調整を行うことができる。
【0048】
内部テザー32の位置は、図4図6に例示された位置に限定されるものではない。張力布2aが膨張展開するエアバッグ3を乗員Pに向けて適確に寄せ付けるために接触すべき位置に、保持溝9aが形成されるよう、内部テザー32が設けられている。
【0049】
また、上述の如く、内部テザー32は略台形であり、その幅方向における寸法が、下方に向かって徐々に減少している。一方、張力布2aの下端部22aは、シートクッション8の前部の中央側に設けられた下側固定部81に保持されている(図1参照)。
即ち、保持溝9aは、エアバッグ3の下端部に近い程、張力布2aの下端部22a(下側固定部81)に近接している。よって、エアバッグ3の膨張展開の際、張力布2aが保持溝9aに受容されやすい。
【0050】
更に、保持溝9aがエアバッグ3の下部に設けられており、エアバッグ3の下端部に凹部36が形成されているので、エアバッグ3が膨張展開する際、保持溝9a及び凹部36に張力布2aがはまり込んでエアバッグ3を持ち上げて乗員Pの頭部に近接した希望の位置により適確に配置させる。
【0051】
そして、上述の如く、エアバッグ3及び張力布2aを結合部23a,24aにて予め結合しておくことによって、膨張展開するエアバッグ3の位置調整をより安定的に調整することができる。
【0052】
以上においては、張力布2aが2箇所の結合部23a,24aを有する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。結合部23a,24aは必須ではなく、省略しても良い。
【0053】
また、以上においては、張力布2aが2箇所の結合部23a,24aを有する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。張力布2aにおいて結合部は、一箇所であっても良く、3箇所以上であっても良い。
【0054】
以上においては、張力布2aにおいて、2箇所の結合部23a,24aがピンポイントの狭小領域に設けられた場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各結合部23a,24aが、張力布2aの長手方向に沿って所定範囲に亘って設けられても良い。
【0055】
以上においては、張力布2a,2bがエアバッグ3に縫い付けられている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、接着剤によって張力布2aがエアバッグ3に固定されても良く、面ファスナー等を用いて固定されても良い。
【0056】
なお、以上においては、張力布2a,2bが帯状である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。張力布2a,2bはその幅が広い布であっても良く、面積の広い布であっても良い。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、各エアバッグ3に対して張力布2a,2bが一本ずつ設けられた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0058】
図7は、実施の形態2に係る乗員拘束装置100においてエアバッグ3が膨張展開した状態を示す模式図である。図7では、便宜上、乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の様子のみを示しているが、実質、乗員Pの左右両側において同様にエアバッグ3が夫々膨張展開する。
【0059】
実施の形態2の乗員拘束装置100においては、左側のエアバッグ3に対しては張力布2a,2cによって位置調整が行われ、右側のエアバッグ3に対しては張力布2b,2dによって位置調整が行われる(図8参照)。
以下においては、図7を用いて乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の例のみを説明する。
【0060】
張力布2aの上端部21a及び張力布2cの上端部21cはシートバック4の上部に固定されている。また、張力布2aの下端部22a及び張力布2cの下端部22cはシートクッション8の前部中央側の下側固定部81に保持されている(図1参照)。張力布2a,2cは、シート5の左側の側部に共に配置される。
【0061】
実施の形態2の乗員拘束装置100においては、張力布2aが2つの結合部23a,24aを有し、張力布2cが2つの結合部23c,24cを有する。結合部23a及び結合部24aのうち、結合部23aが結合部24aより下方に位置し、結合部23c及び結合部24cのうち、結合部23cが結合部24cより下方に位置する。
【0062】
また、乗員拘束装置100では、張力布2aの結合部23aよりも下方であって、エアバッグ3の下部に、エアバッグ3の膨張展開時に張力布2aを受容して保持する保持溝9cが設けられ、張力布2cの結合部23cよりも下方であって、エアバッグ3の下部に、エアバッグ3の膨張展開時に張力布2cを受容して保持する保持溝9dが設けられている。保持溝9c,9dは、エアバッグ3が膨張展開する際、張力布2a,2cを夫々受容して保持し、エアバッグ3が想定の位置から逸脱することを防ぐ。
【0063】
図8は、膨張展開したエアバッグ3の拡大図であり、図9は、図8のIX‐IX線によるエアバッグ3の横断面図であり、図10は、図8のX‐X線によるエアバッグ3の縦断面図である。図9は、下方から見た図であり、図10では、説明の便宜上、乗員Pを二点鎖線にて示している。また、図11は、図10のXI‐XI線によるエアバッグ3の縦断面図である。便宜上、張力布2a,2cを、図8及び図9においては二点鎖線にて示し、図11においては、破線にて示している。
【0064】
エアバッグ3は、略同形の第1パネル3aと第2パネル3bとを、周縁の縫い合わせにより結合させて形成された袋体である。第1パネル3a及び第2パネル3bは例えば円形である。よって、エアバッグ3は、膨張展開の際、縫い目34によって膨張が制限され、膨張展開の完了時、エアバッグ3は縦断面視及び横断面視略楕円形状をなす。
【0065】
エアバッグ3が膨張展開した場合、第1パネル3aと第2パネル3bとは互いに対向しており、第1パネル3aは張力布2a,2cと結合し、第2パネル3bは乗員Pと面する。図9及び図10においては、エアバッグ3の縫い目34を一点鎖線にて示している。
【0066】
また、エアバッグ3は、内部テザー32a,32bを備えており、エアバッグ3の下部には、後述するように、第1パネル3aに保持溝9c,9dが形成されており、第2パネル3bに溝9e,9fが形成されている。保持溝9c,9d及び溝9e,9fは、内部テザー32a,32bによって形成されている。
以下では、説明の便宜上、エアバッグ3が膨張展開した場合を用いて説明する。
【0067】
上述の如く、内部テザー32a,32bは、エアバッグ3の内側に設けられている。内部テザー32a,32bは略台形のシート形状を有しており、略平行する2つの辺のうち短辺を下側にし、長辺を上側にして、エアバッグ3の下部に設けられている(図10参照)。内部テザー32a,32bは、エアバッグ3の下端部から所定の間隔を隔てて設けられている。内部デザー32a,32bは前後方向において所定間隔を隔てて設けられている。
【0068】
内部テザー32a,32bは、第1パネル3aと第2パネル3bとの間に架設されている。内部テザー32a,32bの前記短辺と隣り合う2つの辺のうち、一方は第1パネル3aの下部に縫い付けられ、他方は第2パネル3bの下部に縫い付けられている。第1パネル3aには縫い目35c,35dが形成され、第2パネル3bには縫い目35e,35fが形成されている(図8及び図9参照)。
【0069】
また、上述の如く、第1パネル3a及び第2パネル3bの内側が内部テザー32a,32bに拘束されているので、膨張展開の際、エアバッグ3は厚み方向における膨張が制限される。
【0070】
特に、第1パネル3aは下部の縫い目35c,35dにて内部テザー32a,32bと結合され、第2パネル3bは下部の縫い目35e,35fにて内部テザー32a,32bに結合されている。よって、第1パネル3aにおいては、縫い目35c,35dに対応する部分を除く他の部分が相対的に自由に膨張でき、第2パネル3bにおいては、縫い目35e,35fに対応する部分を除く他の部分が相対的に自由に膨張できる。
【0071】
即ち、エアバッグ3の膨張展開の際、第1パネル3aの下部及び第2パネル3bの下部が内部テザー32a,32bを介して互いに引っ張り合うので、第1パネル3aにおいては縫い目35c,35dに係る部分及び縫い目35c,35dの周囲が、第2パネル3bにおいては縫い目35e,35fに係る部分及び縫い目35e,35fの周囲が凹む。これによって、第1パネル3aには保持溝9c,9dが形成され、第2パネル3bには溝9e,9fが形成される。
【0072】
換言すれば、第1パネル3aにおいては、内部テザー32a,32b(縫い目35c,35d)に対応する部分に保持溝9c,9dが夫々形成されている。また、第2パネル3bにおいても、内部テザー32a,32b(縫い目35e,35f)に対応する部分に、溝9e,9fが形成されている(図9参照)。また、図10においては、破線で囲まれた領域A,Cの外側が夫々保持溝9c,9dに該当し、破線で囲まれた領域B,Dの外側が夫々溝9e,9fに該当する。
【0073】
また、上述の如く、各内部テザー32a,32bは略台形であるので、縫い目35c,35d及び縫い目35e,35fは、上下方向に、所定範囲に亘って形成されている。よって、保持溝9c,9d及び溝9e,9fは、上下方向に、所定範囲に亘って延びる。更に、内部テザー32a,32bが略台形であるので、幅方向における寸法が、下方に向かって徐々に減少している。
【0074】
更に、上述の如く、第1パネル3aにおいては縫い目35c,35dの周囲が、第2パネル3bにおいては縫い目35e,35fの周囲が凹んでおり、内部テザー32a,32bは、幅方向における寸法が、下方に向かって徐々に減少している。これにより、エアバッグ3の下部では第1パネル3aの保持溝9c,9d及び第2パネル3bの溝9e,9fが連結され、エアバッグ3の下端部には2箇所に凹部36a,36bが形成されている。
【0075】
以上のように、実施の形態2の乗員拘束装置100においては、エアバッグ3の膨張展開の際、第1パネル3aに、上下方向に延びるように保持溝9c,9dが形成される。エアバッグ3の膨張展開の際、張力布2a,2cは保持溝9c,9d内に受容される(図9参照)。この際、張力布2aでは幅方向の両端部が保持溝9c内で第1パネル3aと当接しているのに対し、両端部を除く中央部と第1パネル3aとの間には間隔が存在する。また、張力布2cでも幅方向の両端部が保持溝9d内で第1パネル3aと当接しているのに対し、両端部を除く中央部と第1パネル3aとの間には間隔が存在する(図9参照)。
【0076】
従って、張力布2aは、保持溝9c内にて、第1パネル3a上を保持溝9cの長さ方向に沿って摺動可能であり、張力布2cは、保持溝9d内にて、第1パネル3a上を保持溝9dの長さ方向に沿って摺動可能である(図11参照)。
また、張力布2aは保持溝9cの幅方向への移動が制限され、張力布2cは保持溝9dの幅方向への移動が制限される。
【0077】
よって、膨張展開の際、エアバッグ3の下部が張力布2a,2cから離れ、想定の位置から逸脱することを抑制でき、張力布2a,2cが確実にエアバッグ3を乗員P側に付勢して位置調整を行うことができる。
【0078】
また、張力布2a,2cが膨張展開するエアバッグ3を乗員Pに向けて適確に寄せ付けるために接触すべき位置に、保持溝9c,9dが形成されるよう、内部テザー32a,32bが夫々設けられている。
【0079】
また、上述の如く、内部テザー32a,32bは略台形であり、その幅方向における寸法が、下方に向かって徐々に減少している。即ち、保持溝9c,9dは、エアバッグ3の下端部に近い程、張力布2aの下端部22a及び張力布2cの下端部22c、即ち下側固定部81に近接している。よって、エアバッグ3の膨張展開の際、張力布2a,2cが保持溝9c,9dに受容されやすい。
【0080】
更に、保持溝9c,9dがエアバッグ3の下部に設けられており、エアバッグ3の下端部に凹部36a,36bが形成されているので、エアバッグ3が膨張展開する際、保持溝9c及び凹部36aに張力布2aがはまり込み、保持溝9d及び凹部36bに張力布2cがはまり込んでエアバッグ3を持ち上げて乗員Pの頭部に近接した希望の位置により適確に配置させる。
【0081】
そして、上述の如く、エアバッグ3及び張力布2aを結合部23a,24aにて予め結合しておき、エアバッグ3及び張力布2cを結合部23c,24cにて予め結合しておくことによって、膨張展開するエアバッグ3の位置調整をより安定的に調整することができる。
【0082】
そして、上述の如く、1つのエアバッグ3に対して2本の張力布2a,2cが位置調整を行い、且つエアバッグ3及び2本の張力布2a,2cを、結合部23a,24a、23c,24cで予め結合しておくことによって、膨張展開するエアバッグ3の位置調整を一層安定的に調整することができる。
【0083】
以上においては、1つのエアバッグ3に対して2本の張力布2a,2cが設けられた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、1つのエアバッグ3に対して3本以上の張力布を設けても良い。
【0084】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0085】
(実施の形態3)
図12は、実施の形態3に係る乗員拘束装置100においてエアバッグ3が膨張展開した状態を示す模式図である。図12では、乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の様子のみを示している。実際は、乗員Pの左右両側において同様にエアバッグ3が膨張展開するので、以下においては、図12を用いて乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の例のみを説明する。
【0086】
実施の形態3の乗員拘束装置100においては、左側の一つのエアバッグ3に対して張力布2a及び張力布2cが設けられている。張力布2aの上端部21a及び張力布2cの上端部21cはシートバック4の固定位置F1(図1参照)に固定されている。
【0087】
また、張力布2aの下端部22a及び張力布2cの下端部22cはシートクッション8の前部中央側の下側固定部81(図1参照)に保持されている。張力布2a,2cは、シート5の左側の側部に共に配置される。
【0088】
張力布2aが2つの結合部23a,24aを有し、結合部23aが結合部24aより下方に位置する。また、張力布2cが2つの結合部23c,24cを有し、結合部23cが結合部24cより下方に位置する。
【0089】
実施の形態3の乗員拘束装置100において、張力布2a及び張力布2cは上側の部分が一体化されている。即ち、張力布2aの上端部21aと、張力布2cの上端部21cが、例えば所定範囲に亘って縫い合わされ、一体化部2eが形成されている。一体化部2eは、張力布2aの結合部24a及び張力布2cの結合部24cと、シートバック4上部の固定位置F1との間に形成されている。また、一体化部2eは接着剤を用いて形成されても良い。
【0090】
また、乗員拘束装置100では、実施の形態2と同様に、張力布2aの結合部23aよりも下方であって、エアバッグ3の下部に、張力布2aを受容して保持する保持溝9cが設けられている。張力布2cの結合部23cよりも下方であって、エアバッグ3の下部には、張力布2cを受容して保持する保持溝9dが設けられている。保持溝9c,9dは、エアバッグ3が膨張展開する際、エアバッグ3が想定の位置から離脱しないように、エアバッグ3を張力布2a,2cに拘束させる。
【0091】
保持溝9c,9dの構成については、実施の形態2と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0092】
以上の如く、実施の形態3の乗員拘束装置100では、膨張展開の際、エアバッグ3に保持溝9c,9dが形成され、保持溝9c,9dに張力布2a,2cが保持されるので、エアバッグ3が張力布2a,2cに拘束される。従って、エアバッグ3の下部が張力布2a,2cから離れ、想定の位置から逸脱することを抑制できる。よって、張力布2a,2cが確実にエアバッグ3を乗員P側に寄せ付けて配置させることができる。
【0093】
また、張力布2a,2cが膨張展開するエアバッグ3を乗員Pに向けて適確に寄せ付けるために接触すべき位置に、保持溝9c,9dが形成されている。よって、エアバッグ3が膨張展開する際、張力布2a,2cが保持溝9c,9dへ受容されやすい。
【0094】
更に、実施の形態3の乗員拘束装置100においては、上述したように、張力布2aの上端部21aと、張力布2cの上端部21cが所定範囲に亘って縫い合わされ、一体化部2eをなしている。
【0095】
従って、張力布2a及び張力布2cをシートバック4の側部に配置させる作業が容易になる。また、エアバッグ3が膨張展開する際、張力布2aの上端部21a及び張力布2cの上端部21cが共に飛び出るので、より早期にエアバッグ3の位置を調整することができる。
【0096】
なお、以上においては、張力布2aの上端部21a及び張力布2cの上端部21cのみが一体化された場合について説明したが、これに限定されるものではない。張力布2aの下端部22a及び張力布2cの下端部22cを共に一体化しても良い。
【0097】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0098】
(実施の形態4)
図13は、実施の形態4に係る乗員拘束装置100においてエアバッグ3が膨張展開した状態を示す模式図である。図13では、便宜上、乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の様子のみを示している。実際は、乗員Pの左右両側において同様にエアバッグ3が膨張展開するので、以下においては、図13を用いて乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の例のみを説明する。
【0099】
実施の形態4の乗員拘束装置100においては、左側の一つのエアバッグ3に対して張力布2a及び張力布2cが設けられている。張力布2aの上端部21a及び張力布2cの上端部21cはシートバック4の上部に固定されている。
【0100】
一方、張力布2aの下端部22a及び張力布2cの下端部22cはプリテンショナ機構25a,25b(張力付与機構)を介して夫々シートクッション8の下側固定部81(図1参照)に保持されている。プリテンショナ機構25a,25bは夫々張力布2a,2cに張力を与える。
【0101】
プリテンショナ機構25aは、張力布2aの下端部22aとシートクッション8の下側固定部81との間に設けられ、プリテンショナ機構25bは、張力布2cの下端部22cとシートクッション8の下側固定部81との間に設けられている。
【0102】
プリテンショナ機構25a,25bは、衝撃に応じて車両用シートベルトのバックルを引き込むために用いられるバックルプリテンショナと同様な構成を有している。プリテンショナ機構25a,25bは、エアバッグ3の膨張展開時に、張力布2a,2cを下側固定部81側に引っ張ることによって、張力を与える。
【0103】
実施の形態2と同様に、実施の形態4の乗員拘束装置100では、張力布2aが2つの結合部23a,24aを有し、張力布2cが2つの結合部23c,24cを有する。
また、実施の形態2と同様に、実施の形態4の乗員拘束装置100では、エアバッグ3の膨張展開の際、エアバッグ3の下部に、張力布2a,2cを夫々受容して保持する保持溝9c,9dが形成される。張力布2aの結合部23aよりも下方に、張力布2aを保持する保持溝9cが形成され、張力布2cの結合部23cよりも下方に、張力布2cを保持する保持溝9dが形成される。
【0104】
以上の構成を有することから、実施の形態4の乗員拘束装置100では、エアバッグ3の下部が張力布2a,2cから離れ、想定の位置から逸脱することを抑制でき、張力布2a,2cが適確にエアバッグ3を乗員P側に寄せ付けて配置させることができる。
【0105】
また、実施の形態4の乗員拘束装置100においては、エアバッグ3の膨張展開時に、プリテンショナ機構25a,25bが張力布2a,2cを下側固定部81側に夫々引っ張るので、張力布2a,2cがエアバッグ3を乗員P側に付勢する力を強めることができる。よって、より迅速、且つ確実にエアバッグ3を乗員P側に配置させ、乗員Pを保護できる。
【0106】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0107】
(実施の形態5)
図14は、実施の形態5に係る乗員拘束装置100においてエアバッグ3が膨張展開した状態を示す模式図である。図14では、便宜上、乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の様子のみを示している。実際は、乗員Pの左右両側において同様にエアバッグ3が膨張展開するので、以下においては、図14を用いて乗員Pの左側におけるエアバッグ3の膨張展開の例のみを説明する。
なお、図14においては、便宜上、シートクッション8のみを縦断面視にて示す。
【0108】
実施の形態5の乗員拘束装置100においては、左側の一つのエアバッグ3に対して張力布2a及び張力布2cが設けられている。張力布2aの上端部21a及び張力布2cの上端部21cはシートバック4の上部に固定されている。
また、張力布2aの下端部22a及び張力布2cの下端部22cはシートクッション8の下側固定部81(図1参照)に保持されている。
【0109】
実施の形態2と同様に、実施の形態5の乗員拘束装置100では、張力布2aが2つの結合部23a,24aを有し、張力布2cが2つの結合部23c,24cを有する。
また、実施の形態2と同様に、実施の形態5の乗員拘束装置100では、エアバッグ3の膨張展開の際、エアバッグ3の下部に、張力布2a,2cを夫々受容して保持する保持溝9c,9dが形成される。張力布2aの結合部23aよりも下方に、保持溝9cが形成され、張力布2cの結合部23cよりも下方に、保持溝9dが形成される。
保持溝9c,9dの構成については、実施の形態2と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0110】
一方、シートクッション8は、クッションパッド82と、クッションパッド82の下側に配置されてクッションパッド82を支持するパネル部材86とを含む。クッションパッド82は衝撃を吸収する緩衝材からなり、パネル部材86はシートクッション8の底部を構成する。
【0111】
また、シートクッション8は、内部に、エアバッグ装置83(張力付与機構)を備えている。エアバッグ装置83は、クッションパッド82及びパネル部材86の間に介在している。また、エアバッグ装置83は、例えば2枚のパネルの周縁を縫い合わせて形成された袋体であるエアバッグ85と、エアバッグ85内にガスを噴出するインフレータ84とを備えている。
【0112】
膨張展開前、エアバッグ85は乗員Pの大腿部からお尻に対応する位置に、パネル部材86上へ扁平に敷設されている。車両の衝突が検知された場合、インフレータ84が動作してエアバッグ85内にガスを供給し、エアバッグ85は上側に向かって膨張展開する。
【0113】
以上の構成を有することから、実施の形態5の乗員拘束装置100でも、エアバッグ3の下部が張力布2a,2cから離れ、想定の位置から逸脱することを抑制でき、張力布2a,2cが適確にエアバッグ3を乗員P側に寄せ付けて配置させることができる。
【0114】
また、実施の形態5の乗員拘束装置100においては、シートクッション8の内部にエアバッグ装置83が設けられており、車両の衝突が発生した場合、エアバッグ85がパネル部材86からクッションパッド82に向かって膨張展開する。この際、エアバッグ85は、クッションパッド82を介して乗員Pの大腿部からお尻までの部位を上方側へ押し上げる。これによって、張力布2a及び張力布2cにかかる負荷が増え、張力布2a及び張力布2cに張力が付与される。
【0115】
従って、乗員Pがシートベルトから抜けてシート5から滑り落ち、足元の空間にもぐり込んでしまう、所謂、サブマリン現象を効果的に抑制することができる。従って、一層確実に、エアバッグ3を乗員P側に配置させて乗員Pを受け止めて保護できる。
【0116】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0117】
実施の形態1-7で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
なお、請求の範囲には、理解を助けるために参照符号を付している。本発明の範囲は、斯かる参照符号によって特定される明細書の記載に限定されず、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0118】
1a,1b エアバッグモジュール
2a,2b,2c,2d 張力布
2e 一体化部
3 エアバッグ
3a 第1パネル
3b 第2パネル
4 シートバック
5 シート
7 ヘッドレスト部
8 シートクッション
9a,9c,9d 保持溝
23a,24a,23c,24c 結合部
25a,25b プリテンショナ機構
32,32a,32b 内部テザー
36,36a,36b 凹部
41 上面
42,43 側面
83 エアバッグ装置
100 乗員拘束装置
F1,F2 固定位置
P 乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14