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特許7415042プラコフィリン2遺伝子治療の方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】プラコフィリン2遺伝子治療の方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240109BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240109BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240109BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
C12N15/864 100Z
A61P9/00
A61K48/00
A61K35/76
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022560498
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 US2021053908
(87)【国際公開番号】W WO2022076648
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】63/089,951
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/172,053
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/216,322
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/227,801
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521087782
【氏名又は名称】テナヤ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジホン・ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジャクリン
(72)【発明者】
【氏名】ライド,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジン
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/205889(WO,A1)
【文献】特表2017-514813(JP,A)
【文献】国際公開第2021/187380(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/053222(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0104679(US,A1)
【文献】国際公開第2019/052057(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/060619(WO,A1)
【文献】 Cell ,2015年,160,1111-1124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/17
C12N 15/864
A61P 9/00
A61K 35/76
A61K 48/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)の処置を必要とする個体への該処置において使用するための、少なくとも1つの心臓特異的プロモーターに作動可能に連結されたプラコフィリン2(PKP2)ポリペプチドをコードする核酸を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療用ベクター、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物であって、前記核酸が配列番号2に対する少なくとも90%の同一性を有する配列を有し、前記AAVが、AAV6、AAV8、AAVrh74およびAAV9からなる群から選択される、(i)線維脂肪組織置換、心筋委縮、顕著な右室拡張、心室性不整脈、心臓突然死、または運動が引き起こす心イベントの少なくとも1つを好転させる、低下させる、または予防する;(ii)デスモソームの構造および/または機能を回復させる;および/または(iii)PKP2タンパク質および活性のレベルを回復させる、前記組成物。
【請求項2】
前記AAVが、AAV9である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記AAVが、配列番号7に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有するAAV9である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
静脈内、心臓内、心膜、または動脈内に投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記心臓特異的プロモーターが、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記遺伝子治療用ベクターがさらに、心臓特異的エンハンサーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
PKP2誘導性遺伝子発現を回復させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
2型リアノジン受容体(Ryr2)、アンキリンB(Ank2)、Cacna1c(CaV1.2)、トリアジン(Trdn)、またはカルセクエストリン2(Casq2)の1つまたは複数の発現を回復させる、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記個体が、デスモソームタンパク質中に少なくとも1つの変異を有すると同定される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記デスモソームタンパク質がPKP2である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記変異が、欠失、挿入、一塩基変異、またはコピー数多型を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記PKP2ポリペプチドをコードする核酸が配列番号2に対して少なくとも95%の同一性を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記PKP2ポリペプチドをコードする核酸が配列番号2に対して同一である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記PKP2ポリペプチドが配列番号8の配列を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001]本出願は、参照によりその各々の全体が本明細書に組み込まれている、2020年10月9日に出願した米国仮出願第63/089,951号明細書、2021年4月7日に出願した同第63/172,053号明細書、2021年6月29日に出願した同第63/216,322号明細書、および2021年7月30日に出願した同第63/227,801号明細書の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)は、2000人に1人~5000人に1人に見出される遺伝性心疾患である。ARVCは、心筋中での線維脂肪組織置換、心筋委縮、顕著な右室拡張、心室性不整脈、および心臓突然死を特徴とする(Wang等、2018)。本疾患は、特にその初期には、その不顕性症状ゆえ従来のイメージングおよびECGによる診断が困難である。後期には、本疾患は、より明白な徴候、例えば、心室性不整脈および心室での形態異常へと進行する。若年およびアスリートでの突然心停止は、ARVCおよび運動関連の心臓壁ストレスと関連することが分かっている。これまでのところ、ARVCの効果的な処置は存在しない(Wang等、2018)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]一態様では、心疾患または心障害の処置を必要とする個体において心疾患または心障害を処置するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、該方法が、(a)プロモーターに作動可能に連結された、プラコフィリン2(PKP2)ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸、および3’エレメントを含む遺伝子治療用ベクター;ならびに(b)薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターが、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターがアデノ随伴ウイルスである。いくつかの実施形態では、該アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8およびAAV9からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、該アデノ随伴ウイルスが、配列番号7に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有するAAV9である。いくつかの実施形態では、該心疾患または心障害が、不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)である。いくつかの実施形態では、該プロモーターが、心臓を含む組織中での発現を引き起こすプロモーターまたは心臓特異的プロモーターである。いくつかの実施形態では、該プロモーターが、心筋、心外膜または両方での発現を引き起こす。いくつかの実施形態では、該心臓特異的プロモーターが、PKP2プロモーター、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである。いくつかの実施形態では、該PKP2プロモーターが、配列番号4に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、該トロポニンプロモーターが、配列番号3に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、該3’エレメントが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHポリA)配列、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターがさらに、心臓特異的エンハンサーを含む。いくつかの実施形態では、該PKP2遺伝子をコードする該核酸が、配列番号1または配列番号2に対する少なくとも95%の同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、該核酸が、約4.7kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該薬学的に許容可能な担体または賦形剤が、緩衝液、ポリマー、塩、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、該方法が、線維脂肪組織置換;心筋委縮;顕著な右室拡張;心室性不整脈;心臓突然死;運動が引き起こす心イベント;右室心筋症、右室拡張または右心不全;左室心筋症、左室拡張または左心不全;心房性不整脈;失神;動悸;息切れ;または胸痛の少なくとも1つを好転させる、低下させる、または予防する。いくつかの実施形態では、該方法が、心筋、心外膜、または両方での線維脂肪組織置換を好転させる、低下させる、または予防する。いくつかの実施形態では、該方法が、デスモソームの構造および/または機能を回復させる。いくつかの実施形態では、該方法が、PKP2 mRNAの発現および/またはPKP2タンパク質および活性のレベルを回復させる。いくつかの実施形態では、該方法が、該心疾患の1つまたは複数の症状に対する直接的または間接的な効果を有する1つまたは複数の遺伝子の発現を回復させる。いくつかの実施形態では、該遺伝子が、2型リアノジン受容体(Ryr2)、アンキリンB(Ank2)、Cacna1c(CaV1.2)、トリアジン(Trdn)、またはカルセクエストリン2(Casq2)の1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、該個体が、デスモソームタンパク質中に少なくとも1つの変異を有すると同定される。いくつかの実施形態では、該デスモソームタンパク質がPKP2である。いくつかの実施形態では、該変異が、欠失、挿入、一塩基変異、またはコピー数多型を含む。
【0004】
[0004]一態様では、心疾患または心障害の処置を必要とする個体において心疾患または心障害を処置するための方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、該方法が、少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結された、プラコフィリン2(PKP2)ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸を含む遺伝子治療用ベクターおよび薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターがウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、該ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターがアデノ随伴ウイルスである。いくつかの実施形態では、該アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8およびAAV9からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、該アデノ随伴ウイルスが、AAV9またはその誘導体である。いくつかの実施形態では、該AAV9が、配列番号7に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、該心疾患または心障害が、不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)である。いくつかの実施形態では、該組成物を、静脈内、心臓内、心膜、または動脈内に投与する。いくつかの実施形態では、該プロモーターが心臓特異的プロモーターである。いくつかの実施形態では、該プロモーターが、心筋、心外膜または両方での発現を引き起こす。いくつかの実施形態では、該心臓特異的プロモーターが、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである。いくつかの実施形態では、該トロポニンプロモーターが、配列番号3に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、該プロモーターがPKP2プロモーターである。いくつかの実施形態では、該PKP2プロモーターが、配列番号4に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、該プロモーターが構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、該構成的プロモーターがベータアクチンプロモーターである。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターがさらに、心臓特異的エンハンサーを含む。いくつかの実施形態では、該PKP2遺伝子をコードする該核酸が、配列番号1または配列番号2に対する少なくとも95%の同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、該薬学的に許容可能な担体または賦形剤が、緩衝液、ポリマー、塩、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、該方法が、線維脂肪組織置換;心筋委縮;顕著な右室拡張;心室性不整脈;心臓突然死;運動が引き起こす心イベント;右室心筋症、右室拡張または右心不全;左室心筋症、左室拡張または左心不全;心房性不整脈;失神;動悸;息切れ;または胸痛の少なくとも1つを好転させる、低下させる、または予防する。いくつかの実施形態では、該方法が、心筋、心外膜、または両方での線維脂肪組織置換を好転させる、低下させる、または予防する。いくつかの実施形態では、該方法が、デスモソームの構造および/または機能を回復させる。いくつかの実施形態では、該方法が、PKP2 mRNAの発現および/またはPKP2タンパク質および活性のレベルを回復させる。いくつかの実施形態では、該方法が、PKP2誘導性遺伝子発現を回復させる。いくつかの実施形態では、該方法が、該心疾患の1つまたは複数の症状に対する直接的または間接的な効果を有する1つまたは複数の遺伝子の発現を回復させる。いくつかの実施形態では、該方法が、2型リアノジン受容体(Ryr2)、アンキリンB(Ank2)、Cacna1c(CaV1.2)、トリアジン(Trdn)、またはカルセクエストリン2(Casq2)の1つまたは複数の発現を回復させる。いくつかの実施形態では、該個体が、デスモソームタンパク質中に少なくとも1つの変異を有すると同定される。いくつかの実施形態では、該デスモソームタンパク質がPKP2である。いくつかの実施形態では、該変異が、欠失、挿入、一塩基変異、またはコピー数多型を含む。
【0005】
[0005]他の態様では、少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されたプラコフィリン2遺伝子を含む遺伝子治療用ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターがウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、該ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターがアデノ随伴ウイルスである。いくつかの実施形態では、該アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8およびAAV9からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、該アデノ随伴ウイルスが、AAV9またはその誘導体である。いくつかの実施形態では、該AAV9が、配列番号7に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、該プロモーターが心臓特異的プロモーターである。いくつかの実施形態では、該プロモーターが、心筋、心外膜または両方での発現を引き起こす。いくつかの実施形態では、該心臓特異的プロモーターが、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである。いくつかの実施形態では、該トロポニンプロモーターが、配列番号3に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、該プロモーターがPKP2プロモーターである。いくつかの実施形態では、該PKP2プロモーターが、配列番号4に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、該プロモーターが構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、該構成的プロモーターがベータアクチンプロモーターである。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターがさらに、心臓特異的エンハンサーを含む。いくつかの実施形態では、該PKP2遺伝子をコードする該核酸が、配列番号1または配列番号2に対する少なくとも95%の同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターが、緩衝液、ポリマー、塩、またはそれらの組合せを含む薬学的に許容可能な担体または賦形剤中で製剤してある。
【0006】
参照による組込み
[0006]本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照によって組み込まれていると具体的かつ個別に示されるのと同程度に参照によって本明細書に組み込まれている。
【0007】
[0007]本特許または本出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公報の複写は、要請および必要な手数料の納付があった場合、官庁から提供される。
【0008】
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結された、プラコフィリン2(PKP2)ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸を含む遺伝子治療用ベクターならびに薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物を投与する工程を含む、心疾患または心障害の処置を必要とする個体において心疾患または心障害を処置するための方法。
[2]前記遺伝子治療用ベクターがウイルスベクターを含む、[1]に記載の方法。
[3]前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択される、[2]に記載の方法。
[4]前記遺伝子治療用ベクターがアデノ随伴ウイルスである、[2]または[3]に記載の方法。
[5]前記アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8およびAAV9からなる群から選択される、[4]に記載の方法。
[6]前記アデノ随伴ウイルスがAAV9またはその誘導体である、[5]に記載の方法。
[7]前記AAV9が、配列番号7に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する、[6]に記載の方法。
[8]前記遺伝子治療用ベクターが、心筋、心外膜または両方の細胞を標的とする、[1]から[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記心疾患または心障害が、不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)である、[1]から[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記組成物を、静脈内、心臓内、心膜、または動脈内に投与する、[1]から[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記プロモーターが心臓特異的プロモーターである、[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記心臓特異的プロモーターが、心筋、心外膜または両方での遺伝子発現を導く、[11]に記載の方法。
[13]前記心臓特異的プロモーターが、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである、[11]または[12]に記載の方法。
[14]前記トロポニンプロモーターが、配列番号3に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する、[13]に記載の方法。
[15]前記プロモーターがPKP2プロモーターである、[1]から[12]のいずれかに記載の方法。
[16]前記PKP2プロモーターが、配列番号4に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する、[15]に記載の方法。
[17]前記プロモーターが構成的プロモーターである、[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[18]前記構成的プロモーターがベータアクチンプロモーターである、[17]に記載の方法。
[19]前記遺伝子治療用ベクターがさらに、心臓特異的エンハンサーを含む、[1]から[18]のいずれかに記載の方法。
[20]前記遺伝子治療用ベクターがさらに、3’エレメントを含む、[1]から[19]のいずれかに記載の方法。
[21]前記3’エレメントが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHポリA)配列、またはそれらの組合せを含む、[20]に記載の方法。
[22]前記PKP2遺伝子をコードする前記核酸が、配列番号1または配列番号2に対する少なくとも95%の同一性を有する配列を有する、[1]から[21]のいずれかに記載の方法。
[23]前記遺伝子治療用ベクターが、配列番号5に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む、[1]から[22]のいずれかに記載の方法。
[24]前記薬学的に許容可能な担体または賦形剤が、緩衝液、ポリマー、塩、またはそれらの組合せを含む、[1]から[23]のいずれかに記載の方法。
[25]線維脂肪組織置換、心筋委縮、顕著な右室拡張、心室性不整脈、心臓突然死、または運動が引き起こす心イベントの少なくとも1つを好転させる、低下させる、または予防する、[1]から[24]のいずれかに記載の方法。
[26]心筋、心外膜、または両方での線維脂肪組織置換を好転させる、低下させる、または予防する、[25]に記載の方法。
[27]デスモソームの構造および/または機能を回復させる、[1]から[26]のいずれかに記載の方法。
[28]PKP2タンパク質および活性のレベルを回復させる、[1]から[27]のいずれかに記載の方法。
[29]PKP2誘導性遺伝子発現を回復させる、[1]から[28]のいずれかに記載の方法。
[30]2型リアノジン受容体(Ryr2)、アンキリンB(Ank2)、Cacna1c(CaV1.2)、トリアジン(Trdn)、またはカルセクエストリン2(Casq2)の1つまたは複数の発現を回復させる、[1]から[29]のいずれかに記載の方法。
[31]前記個体が、デスモソームタンパク質中に少なくとも1つの変異を有すると同定される、[1]から[30]のいずれかに記載の方法。
[32]前記デスモソームタンパク質がPKP2である、[31]に記載の方法。
[33]前記変異が、欠失、挿入、一塩基変異、またはコピー数多型を含む、[32]に記載の方法。
[34]少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されたプラコフィリン2遺伝子を含む遺伝子治療用ベクター。
[35]ウイルスベクターを含む、[34]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[36]前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択される、[35]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[37]アデノ随伴ウイルスである、[35]または[36]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[38]前記アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8およびAAV9からなる群から選択される、[37]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[39]前記アデノ随伴ウイルスがAAV9またはその誘導体である、[38]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[40]前記AAV9が、配列番号7に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する、[39]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[41]心筋、心外膜または両方の細胞を標的とする、[34]から[40]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[42]前記プロモーターが心臓特異的プロモーターである、[34]から[41]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[43]前記心臓特異的プロモーターが、心筋、心外膜または両方での遺伝子発現を導く、[42に記載の遺伝子治療用ベクター。
[44]前記心臓特異的プロモーターが、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである、[42]または[43]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[45]前記トロポニンプロモーターが、配列番号3に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する、[43]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[46]前記プロモーターがPKP2プロモーターである、[34]から[45]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[47]前記PKP2プロモーターが、配列番号4に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する、[46]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[48]前記プロモーターが構成的プロモーターである、[34]から[41]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[49]前記構成的プロモーターがベータアクチンプロモーターである、[48]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[50]さらに心臓特異的エンハンサーを含む、[34]から[49]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[51]さらに3’エレメントを含む、[34]から[50]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[52]前記3’エレメントが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHポリA)配列、またはそれらの組合せを含む、[51]に記載の遺伝子治療用ベクター。
[53]前記PKP2遺伝子をコードする前記核酸が、配列番号1または配列番号2に対する少なくとも95%の同一性を有する配列を有する、[34]から[52]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[54]配列番号5に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む、[34]から[53]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[55]緩衝液、ポリマー、塩、またはそれらの組合せを含む、薬学的に許容可能な担体または賦形剤中で製剤してある、[34]から[54]のいずれかに記載の遺伝子治療用ベクター。
[56](a)プロモーターに作動可能に連結された、プラコフィリン2(PKP2)ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸および3’エレメントを含む遺伝子治療用ベクター;ならびに(b)薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物を投与する工程を含む、心疾患または心障害の処置を必要とする個体において心疾患または心障害を処置するための方法。
[57]前記遺伝子治療用ベクターが、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターを含む、[56]に記載の方法。
[58]前記遺伝子治療用ベクターがアデノ随伴ウイルスである、[56]に記載の方法。
[59]前記アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8およびAAV9からなる群から選択される、[58]に記載の方法。
[60]前記アデノ随伴ウイルスが、心筋、心外膜または両方の細胞を標的とする、[59]に記載の方法。
[61]前記アデノ随伴ウイルスが、配列番号7に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有するAAV9である、[59]に記載の方法。
[62]前記心疾患または心障害が、不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)である、[56]に記載の方法。
[63]前記プロモーターが、心臓を含む組織中での発現を引き起こすプロモーターまたは心臓特異的プロモーターである、[56]に記載の方法。
[64]前記心臓特異的プロモーターが、心筋、心外膜または両方での遺伝子発現を導く、[63]に記載の方法。
[65]前記心臓特異的プロモーターが、PKP2プロモーター、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである、[63]に記載の方法。
[66]前記PKP2プロモーターが、配列番号4に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する、[65]に記載の方法。
[67]前記トロポニンプロモーターが、配列番号3に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する、[65]に記載の方法。
[68]前記3’エレメントが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHポリA)配列、またはそれらの組合せを含む、[56]に記載の方法。
[69]前記遺伝子治療用ベクターがさらに、心臓特異的エンハンサーを含む、[56]に記載の方法。
[70]前記PKP2遺伝子をコードする前記核酸が、配列番号1または配列番号2に対する少なくとも95%の同一性を有する配列を有する、[56]に記載の方法。
[71]前記遺伝子治療用ベクターが、配列番号5に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む、[56]に記載の方法。
[72]前記核酸が、約4.7kb以下のサイズを有する、[56]に記載の方法。
[73]前記薬学的に許容可能な担体または賦形剤が、緩衝液、ポリマー、塩、またはそれらの組合せを含む、[56]に記載の方法。
[74]線維脂肪組織置換;心筋委縮;顕著な右室拡張;心室性不整脈;心臓突然死;運動が引き起こす心イベント;右室心筋症、右室拡張または右心不全;左室心筋症、左室拡張または左心不全;心房性不整脈;失神;動悸;息切れ;または胸痛の少なくとも1つを好転させる、低下させる、または予防する、[56]に記載の方法。
[75]心筋、心外膜、または両方での線維脂肪組織置換を好転させる、低下させる、または予防する、[74]に記載の方法。
[76]デスモソームの構造および/または機能を回復させる、[56]に記載の方法。
[77]PKP2 mRNAの発現および/またはPKP2タンパク質および活性のレベルを回復させる、[56]に記載の方法。
[78]前記心疾患の1つまたは複数の症状に対する直接的または間接的な効果を有する1つまたは複数の遺伝子の発現を回復させる、[56]に記載の方法。
[79]前記遺伝子が、2型リアノジン受容体(Ryr2)、アンキリンB(Ank2)、Cacna1c(CaV1.2)、トリアジン(Trdn)、またはカルセクエストリン2(Casq2)の1つまたは複数を含む、[78]に記載の方法。
[80]前記個体が、デスモソームタンパク質中に少なくとも1つの変異を有すると同定される、[56]に記載の方法。
[81]前記デスモソームタンパク質がPKP2である、[80]に記載の方法。
[82]前記変異が、欠失、挿入、一塩基変異、またはコピー数多型を含む、[81]に記載の方法。
[0008]本開示の特徴および利点の理解は、本開示の原理を利用する例示的実施形態を記載する以下の詳細な説明およびその添付図面の参照により深まる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009]心臓デスモソームが細胞をつなぎ合わせる様子を例証する。
図2】[0010]ARVC疾患の徴候および可能な疾患機序の概要を示す。
図3A】[0011]図3A~3Cは、iPSCM中でのPKP2の急性サイレンシングの8日目の結果を示す。図3Aは、細胞膜からのDSPの消失を示す。図3Bは、サルコメア密度の低下を例証するグラフを示す。図3Cは、パターン化されたiPSCMにおける細胞コンパクションの錯綜配列を示す。
図3B図3A~3Cは、iPSCM中でのPKP2の急性サイレンシングの8日目の結果を示す。図3Aは、細胞膜からのDSPの消失を示す。図3Bは、サルコメア密度の低下を例証するグラフを示す。図3Cは、パターン化されたiPSCMにおける細胞コンパクションの錯綜配列を示す。
図3C図3A~3Cは、iPSCM中でのPKP2の急性サイレンシングの8日目の結果を示す。図3Aは、細胞膜からのDSPの消失を示す。図3Bは、サルコメア密度の低下を例証するグラフを示す。図3Cは、パターン化されたiPSCMにおける細胞コンパクションの錯綜配列を示す。
図4】[0012]PKGとの共局在により特定された、DSP膜局在の定量分析を示す。
図5】[0013]主に不溶性画分中に検出される、PKP2がサイレンシングされた細胞中では低下したDSPタンパク質の総量を例証する免疫ブロットを示す。
図6A】[0014]図6A~6Bは、AAVによるPKP2形質導入の結果を示す。図6Aは、AAV構築物のベクターマップを示す。図6Bは、DSP膜局在の回復の免疫蛍光画像を示す。図6Cは、PKP2サイレンシングおよびAAV-PKP2導入遺伝子レスキューに続くDSP総強度の定量を示す。
図6B図6A~6Bは、AAVによるPKP2形質導入の結果を示す。図6Aは、AAV構築物のベクターマップを示す。図6Bは、DSP膜局在の回復の免疫蛍光画像を示す。図6Cは、PKP2サイレンシングおよびAAV-PKP2導入遺伝子レスキューに続くDSP総強度の定量を示す。
図6C図6A~6Bは、AAVによるPKP2形質導入の結果を示す。図6Aは、AAV構築物のベクターマップを示す。図6Bは、DSP膜局在の回復の免疫蛍光画像を示す。図6Cは、PKP2サイレンシングおよびAAV-PKP2導入遺伝子レスキューに続くDSP総強度の定量を示す。
図7A】[0015]図7A~7Bは、収縮速度を用いた、AAVによるPKP2形質導入の結果を示す。図7Aは、実験時系列を示す。図7Bは、PKP2サイレンシング後に低下した速度の機能的レスキューを実証する2つの収縮性アッセイを示す。
図7B図7A~7Bは、収縮速度を用いた、AAVによるPKP2形質導入の結果を示す。図7Aは、実験時系列を示す。図7Bは、PKP2サイレンシング後に低下した速度の機能的レスキューを実証する2つの収縮性アッセイを示す。
図8】[0016]ヒトおよびマウスのPKP2αのAAV発現カセットの第2世代の略図を示す。左図は、発現カセット中のエレメントのすべてを示す。右図は、発現カセット中のエレメントの構成を示す。
図9A】[0017]図9Aおよび図9Bは、iPSC心筋細胞中でのPKP2サイレンシングに続く収縮速度の第2世代AAV-hPKP2αレスキューの結果を示す。図9Aは、異なる感染多重度で形質導入された細胞中での可溶性画分および不溶性画分における発現を示す。図9Bは、PKP2サイレンシング後の細胞中での収縮速度のレスキューを示す。
図9B図9Aおよび図9Bは、iPSC心筋細胞中でのPKP2サイレンシングに続く収縮速度の第2世代AAV-hPKP2αレスキューの結果を示す。図9Aは、異なる感染多重度で形質導入された細胞中での可溶性画分および不溶性画分における発現を示す。図9Bは、PKP2サイレンシング後の細胞中での収縮速度のレスキューを示す。
図10】[0018]野生型マウスでの第2世代AAV-PKP2αの発現を示す。
図11A】[0019]図11A~11Gは、野生型マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験の結果を示す。図11Aは、AAV9注入前および注入後の体重を示す。図11Bは、AAV9ヒトまたはマウスPKP2αで処置したマウスでの駆出分画を示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径により測定したLV構造を示す。図11E図11Fおよび図11Gは、QRS(11E)、QT時間(11F)およびP/R振幅(11G)による電気生理学的活性を示す。
図11B図11A~11Gは、野生型マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験の結果を示す。図11Aは、AAV9注入前および注入後の体重を示す。図11Bは、AAV9ヒトまたはマウスPKP2αで処置したマウスでの駆出分画を示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径により測定したLV構造を示す。図11E図11Fおよび図11Gは、QRS(11E)、QT時間(11F)およびP/R振幅(11G)による電気生理学的活性を示す。
図11C図11A~11Gは、野生型マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験の結果を示す。図11Aは、AAV9注入前および注入後の体重を示す。図11Bは、AAV9ヒトまたはマウスPKP2αで処置したマウスでの駆出分画を示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径により測定したLV構造を示す。図11E図11Fおよび図11Gは、QRS(11E)、QT時間(11F)およびP/R振幅(11G)による電気生理学的活性を示す。
図11D図11A~11Gは、野生型マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験の結果を示す。図11Aは、AAV9注入前および注入後の体重を示す。図11Bは、AAV9ヒトまたはマウスPKP2αで処置したマウスでの駆出分画を示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径により測定したLV構造を示す。図11E図11Fおよび図11Gは、QRS(11E)、QT時間(11F)およびP/R振幅(11G)による電気生理学的活性を示す。
図11E図11A~11Gは、野生型マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験の結果を示す。図11Aは、AAV9注入前および注入後の体重を示す。図11Bは、AAV9ヒトまたはマウスPKP2αで処置したマウスでの駆出分画を示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径により測定したLV構造を示す。図11E図11Fおよび図11Gは、QRS(11E)、QT時間(11F)およびP/R振幅(11G)による電気生理学的活性を示す。
図11F図11A~11Gは、野生型マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験の結果を示す。図11Aは、AAV9注入前および注入後の体重を示す。図11Bは、AAV9ヒトまたはマウスPKP2αで処置したマウスでの駆出分画を示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径により測定したLV構造を示す。図11E図11Fおよび図11Gは、QRS(11E)、QT時間(11F)およびP/R振幅(11G)による電気生理学的活性を示す。
図11G図11A~11Gは、野生型マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験の結果を示す。図11Aは、AAV9注入前および注入後の体重を示す。図11Bは、AAV9ヒトまたはマウスPKP2αで処置したマウスでの駆出分画を示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径により測定したLV構造を示す。図11E図11Fおよび図11Gは、QRS(11E)、QT時間(11F)およびP/R振幅(11G)による電気生理学的活性を示す。
図12】[0020]PKP2-cKOマウスのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。
図13A】[0021]図13A~13Bは、PKP2-cKOマウスの右室(RV)拡張型心筋症を示す。図13A(左図)は、PKP2-cKOマウスにおけるRV拡張末期内径(RVIDd)の増加を例証する画像を示す。図13A(右図)は、PKP2-cKOマウスにおける経時的なRVIDdのグラフを示す。図13B(左図)は、PKP2-cKOマウスにおけるRV面積の増加を例証する画像を示す。図13B(右図)は、PKP2-cKOマウスにおける経時的なRV面積のグラフを示す。
図13B図13A~13Bは、PKP2-cKOマウスの右室(RV)拡張型心筋症を示す。図13A(左図)は、PKP2-cKOマウスにおけるRV拡張末期内径(RVIDd)の増加を例証する画像を示す。図13A(右図)は、PKP2-cKOマウスにおける経時的なRVIDdのグラフを示す。図13B(左図)は、PKP2-cKOマウスにおけるRV面積の増加を例証する画像を示す。図13B(右図)は、PKP2-cKOマウスにおける経時的なRV面積のグラフを示す。
図14A】[0022]図14A~14Bは、対照と比べた、PKP2-cKOマウスの左室(LV)拡張型心筋症の発現を示す。図14A(左図)は、PKP2-cKOマウスにおけるLV収縮末期内径(RVIDs)およびLV拡張末期内径(LVIDd)の増加の画像を示す。図14A(右図)は、PKP2-cKOマウスにおけるLVIDsおよびLVIDdの経時的な増加を示すグラフを示す。図14Bは、経時的な駆出分画パーセントにより測定したLVパフォーマンスのグラフを示す。
図14B図14A~14Bは、対照と比べた、PKP2-cKOマウスの左室(LV)拡張型心筋症の発現を示す。図14A(左図)は、PKP2-cKOマウスにおけるLV収縮末期内径(RVIDs)およびLV拡張末期内径(LVIDd)の増加の画像を示す。図14A(右図)は、PKP2-cKOマウスにおけるLVIDsおよびLVIDdの経時的な増加を示すグラフを示す。図14Bは、経時的な駆出分画パーセントにより測定したLVパフォーマンスのグラフを示す。
図15】[0023]対照と比べたPKP2-cKOマウスの重度の電気生理学的表現型の発現、特にPKP2-cKOマウスにおけるQRS時間の延長およびP/R振幅比の上昇を示す。上図は、対照およびPKP2-cKOマウスの例示的心電図を示す。下図は、対照と比べたPKP2-cKOマウスにおけるQRS時間の増加およびP/R振幅の増加に関するグラフを示す。
図16A】[0024]図16A~16Cは、線維症遺伝子、組織リモデリング遺伝子、および心不全マーカーの発現の上昇を示す。図16Aは、対照と比べたPKP2-cKOマウスの、RVおよびLVでのPKP2 RNA発現(上図)ならびにデスモソームおよびCx43のタンパク質発現(下図)を示す。図16Bは、線維症遺伝子:TGFβ1、Col1a1およびCol3a1;ならびに組織リモデリング遺伝子:Timp1およびMmp2の、対照と比べたPKP2-cKOマウスでの発現の上昇を示す。図16Cは、対照マウスと比べたPKP2-cKOマウスでの、心不全マーカー、NPPAおよびNPPBの発現の上昇を示す。
図16B図16A~16Cは、線維症遺伝子、組織リモデリング遺伝子、および心不全マーカーの発現の上昇を示す。図16Aは、対照と比べたPKP2-cKOマウスの、RVおよびLVでのPKP2 RNA発現(上図)ならびにデスモソームおよびCx43のタンパク質発現(下図)を示す。図16Bは、線維症遺伝子:TGFβ1、Col1a1およびCol3a1;ならびに組織リモデリング遺伝子:Timp1およびMmp2の、対照と比べたPKP2-cKOマウスでの発現の上昇を示す。図16Cは、対照マウスと比べたPKP2-cKOマウスでの、心不全マーカー、NPPAおよびNPPBの発現の上昇を示す。
図16C図16A~16Cは、線維症遺伝子、組織リモデリング遺伝子、および心不全マーカーの発現の上昇を示す。図16Aは、対照と比べたPKP2-cKOマウスの、RVおよびLVでのPKP2 RNA発現(上図)ならびにデスモソームおよびCx43のタンパク質発現(下図)を示す。図16Bは、線維症遺伝子:TGFβ1、Col1a1およびCol3a1;ならびに組織リモデリング遺伝子:Timp1およびMmp2の、対照と比べたPKP2-cKOマウスでの発現の上昇を示す。図16Cは、対照マウスと比べたPKP2-cKOマウスでの、心不全マーカー、NPPAおよびNPPBの発現の上昇を示す。
図17】[0025]PKP2-cKO ARVCマウスモデルにおける遺伝子治療としてのPKP2の有効性を評価するための実験計画を示す。
図18】[0026]図18Aは、ヒトおよびマウスのPKP2αのAAV発現カセットの略図を示す。図18Bは、AAV9:PKP2で処置したマウスに由来するマウスおよびヒトPKP2αのタンパク質発現の免疫ブロットを示す。
図19】[0027]AAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。
図20A】[0028]図20A~20Cは、RVおよびLVの拡張の低下ならびに心機能の維持における、PKP2-cKOマウスのAAV9:PKP2処置の有効性を示す。図20Aは、AAV9:PKP2処置マウスにおける駆出分画の改善を例証するグラフを示す。図20Bは、AAV9:PKP2処置マウスにおけるRV拡張の低下を例証するグラフを示す。図20Cは、LVIDd(上図)およびLVIDs(下図)における改善を例証するグラフを示す。
図20B図20A~20Cは、RVおよびLVの拡張の低下ならびに心機能の維持における、PKP2-cKOマウスのAAV9:PKP2処置の有効性を示す。図20Aは、AAV9:PKP2処置マウスにおける駆出分画の改善を例証するグラフを示す。図20Bは、AAV9:PKP2処置マウスにおけるRV拡張の低下を例証するグラフを示す。図20Cは、LVIDd(上図)およびLVIDs(下図)における改善を例証するグラフを示す。
図20C図20A~20Cは、RVおよびLVの拡張の低下ならびに心機能の維持における、PKP2-cKOマウスのAAV9:PKP2処置の有効性を示す。図20Aは、AAV9:PKP2処置マウスにおける駆出分画の改善を例証するグラフを示す。図20Bは、AAV9:PKP2処置マウスにおけるRV拡張の低下を例証するグラフを示す。図20Cは、LVIDd(上図)およびLVIDs(下図)における改善を例証するグラフを示す。
図21A】[0029]図21A~21Bは、AAV:PKP2で処置されたPKP2-cKOマウスのECGパラメータの改善を示す。図21Aは、対照、ならびにAAV9:mPKP2および緩衝液で処置したPKP2-cKOマウスの例示的な未処理のECGトレースを示す。図21Bは、緩衝液での処置と比べたAAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスにおけるP/R比、QT時間、およびQRS時間の改善を例証するグラフを示す。
図21B図21A~21Bは、AAV:PKP2で処置されたPKP2-cKOマウスのECGパラメータの改善を示す。図21Aは、対照、ならびにAAV9:mPKP2および緩衝液で処置したPKP2-cKOマウスの例示的な未処理のECGトレースを示す。図21Bは、緩衝液での処置と比べたAAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスにおけるP/R比、QT時間、およびQRS時間の改善を例証するグラフを示す。
図22A】[0030]図22A~22Bは、PKP2-cKOマウスにおける不整脈でのAAV9:PKP2処置による改善を示す。図22A(上図)は、不整脈の重症度の分類の表を示す。図22A(下図)は、AAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスの不整脈スコアの、対照と比べた改善をまとめるグラフを示す。図22Bは、AAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスにおける不整脈の重症度の、対照と比べた改善を示す分布グラフを示す。各々の点は、1匹の動物を表す。
図22B図22A~22Bは、PKP2-cKOマウスにおける不整脈でのAAV9:PKP2処置による改善を示す。図22A(上図)は、不整脈の重症度の分類の表を示す。図22A(下図)は、AAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスの不整脈スコアの、対照と比べた改善をまとめるグラフを示す。図22Bは、AAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスにおける不整脈の重症度の、対照と比べた改善を示す分布グラフを示す。各々の点は、1匹の動物を表す。
図23】[0031]PKP2-cKO ARVCマウスモデルを用いて、遺伝子治療としてのヒトPKP2の有効性を評価するために使用した実験計画を示す。
図24A】[0032]図24A~24Dは、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2遺伝子治療処置の結果を示す。図24Aは、駆出分画の結果を示す。図24Bは、右室サイズの結果を示す。図24Cは、LVIDdにより測定したLV拡張を示す。図24Dは、LVIDsにより測定したLV拡張を示す。
図24B図24A~24Dは、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2遺伝子治療処置の結果を示す。図24Aは、駆出分画の結果を示す。図24Bは、右室サイズの結果を示す。図24Cは、LVIDdにより測定したLV拡張を示す。図24Dは、LVIDsにより測定したLV拡張を示す。
図24C図24A~24Dは、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2遺伝子治療処置の結果を示す。図24Aは、駆出分画の結果を示す。図24Bは、右室サイズの結果を示す。図24Cは、LVIDdにより測定したLV拡張を示す。図24Dは、LVIDsにより測定したLV拡張を示す。
図24D図24A~24Dは、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2遺伝子治療処置の結果を示す。図24Aは、駆出分画の結果を示す。図24Bは、右室サイズの結果を示す。図24Cは、LVIDdにより測定したLV拡張を示す。図24Dは、LVIDsにより測定したLV拡張を示す。
図25】[0033]PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2遺伝子治療処置の結果を、QT時間(上図)、P/R比(中央図)、および不整脈スコア(下図)に関して示す。
図26A】[0034]図26A~26Bは、右室(図26A)および左室(図26B)での心不全マーカー、線維症マーカー、および組織リモデリングマーカーの発現の低下における、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置の結果を示す。
図26B図26A~26Bは、右室(図26A)および左室(図26B)での心不全マーカー、線維症マーカー、および組織リモデリングマーカーの発現の低下における、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置の結果を示す。
図27A】[0035]図27A~27Bは、線維症発症の低下における、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置の結果を示す。図27Aは、対照、ならびにAAV9:hPKP2処置を伴うおよび伴わないPKP2-cKOマウスに由来する筋肉の組織学的画像を示す。図27Bは、対照、ならびにAAV9:hPKP2処置を伴うおよび伴わないPKP2-cKOマウスに由来するコラーゲン陽性組織のグラフを示す。
図27B図27A~27Bは、線維症発症の低下における、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置の結果を示す。図27Aは、対照、ならびにAAV9:hPKP2処置を伴うおよび伴わないPKP2-cKOマウスに由来する筋肉の組織学的画像を示す。図27Bは、対照、ならびにAAV9:hPKP2処置を伴うおよび伴わないPKP2-cKOマウスに由来するコラーゲン陽性組織のグラフを示す。
図28A】[0036]図28A~28Bは、可溶性画分(図28A)および不溶性画分(図28B)中でのPKP2および他のデスモソームタンパク質の発現を示す。
図28B図28A~28Bは、可溶性画分(図28A)および不溶性画分(図28B)中でのPKP2および他のデスモソームタンパク質の発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0037]不整脈原性右室心筋症(ARVC)の最も一般的な遺伝的根拠は、デスモソームのタンパク質をコードする遺伝子中の突然変異である。機能的に、デスモソームは、インターカレートされた(intercalated)心筋細胞を結束する接着性細胞間接続である。デスモソーム遺伝子の1つであるプラコフィリン2(PKP2)は、ARVCの要因として最も頻繁に同定されている。膜に位置する複合体の内部で、PKP2は、デスモソームのタンパク質であるプラコグロビン(PKG)およびデスモプラキン(DSP)と相互作用する。DSPは、心細胞の収縮単位であるサルコメア、および他の細胞小器官を安定化させるために絡み合ったネットワークを形成する、中間径フィラメントであるデスミンを固定する(図1、Brodehl等、2018;Moncayo-ArlandiおよびBrugada、2017)。デスモソームの損失は、細胞接着、シグナル伝達、および心筋細胞の電気的結合に影響を与えると見られている(Wang等、2018)。さらに、シグナル伝達および電気的結合の損失は、コネキシンを含有するギャップ結合(GJ)のさらなる崩壊による、併発する異常結果である。GJは、細胞の電気的結合において本質的であり、かつ細胞間での小分子の流れを可能にすることで同期鼓動を促進する(Green等、2019)(図2、ARVC疾患の徴候および可能な機序に関する概要)。さらに、心外膜分化が、ARVC患者またはACM患者において認められた線維脂肪リモデリングに寄与し得る(Kohela等、2021)。
【0011】
[0038]デスモソームの機能性を明らかにするために、遺伝的マウス株および患者由来iPSCMモデルを生成した。PKP2の心臓ノックアウトマウスモデル(Delmarマウスモデル、Cerrone等、2017)は、両心室拡張、線維症、およびCa2+ホメオスタシスを調節する遺伝子の著しい低下に関する重大な初期発症を示し、明白な構造変化が起きる前の不整脈の発症機序を明らかにする可能性がある。PKP2突然変異を含有するいくつかの患者由来iPSCM株は、PKP2発現の低下、Ca2+ハンドリングの欠陥、および脂質生成誘導培地中での培養により誘導される脂肪滴蓄積を示した(Brodehl等、2019)。
【0012】
[0039]mRNAおよびタンパク質の両方のレベルでのPKP2の低下が、PKP2突然変異を有するARVC患者心臓試料中で報告された(Akdis等、2016;Asimaki等、2009)。PKP2突然変異を含むいくつかのデスモソーム遺伝子突然変異に関して、ナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)が提案され、変異した転写物およびタンパク質の発現の平衡を保つほとんど知られていない細胞機序が示唆される(GerullおよびBrodehl、2020;Mura等、2003)。それらの観察は、心臓中でのWT PKP2の発現レベルを回復させることによる、遺伝子治療ベースのARVCの介入の可能性を示唆する。
【0013】
処置の方法
[0040]本明細書の種々の態様で提供されるPKP2遺伝子治療用ベクターは、心臓の疾患または状態を有する個体の処置に有用である。「処置」または「処置を必要とする状態または対象の処置」は、(1)臨床結果、例えば症状の軽減を含む、有益なもしくは所望の結果を得るための工程を行うこと;(2)該疾患を予防すること、例えば、該疾患にかかりやすい、例えば、デスモソーム遺伝子、例えばPKP2における遺伝子突然変異のキャリアであるがまだ該疾患の症状を経験しても、示してもいない患者において該疾患の臨床症状が発症しないようにさせること;(3)該疾患を抑制すること、例えば、該疾患もしくはその臨床症状の発症を阻止するもしくは軽減すること;(4)該疾患を緩和させること、例えば、該疾患もしくはその臨床症状を後退させること;または(5)該疾患を遅延させることに関する。一態様では、心疾患または心障害の処置を必要とする個体において心疾患または心障害を処置するための方法が、本明細書で提供される。いくつかの場合、該方法が、少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結された、プラコフィリン2(PKP2)ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸を含む遺伝子治療用ベクター、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物を投与する工程を含む。いくつかの場合、該心疾患または心障害が、不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)である。いくつかの場合、本明細書中の処置の方法が、不整脈原性心筋症の少なくとも1つの症状を軽減し、線維脂肪組織置換;心筋委縮;顕著な右室拡張;心室性不整脈;心臓突然死;運動が引き起こす心イベント;右室心筋症、右室拡張または右心不全;左室心筋症、左室拡張または左心不全;心房性不整脈;失神;動悸;息切れ;または胸痛の少なくとも1つを好転させる、低下させる、または予防する方法を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、該方法が、心筋、心外膜、または両方での線維脂肪組織置換を好転させる、低下させる、または予防する。いくつかの場合、該方法が、デスモソームの構造および/または機能を回復させる。いくつかの場合、該方法が、PKP2 mRNAの発現および/またはPKP2タンパク質および活性のレベルを回復させる。いくつかの場合、該方法が、PKP2誘導性遺伝子発現を回復させる。いくつかの場合、PKP2誘導性遺伝子発現は、その遺伝子の発現が1つまたは複数の疾患表現型をもたらす直接的または間接的な要因である遺伝子の発現を含む。いくつかの実施形態では、該方法が、該心疾患の1つまたは複数の症状に対する直接的または間接的な効果を有する1つまたは複数の遺伝子の発現を回復させる。いくつかの場合、該方法が、2型リアノジン受容体(Ryr2)、アンキリンB(Ank2)、Cacna1c(CaV1.2)、トリアジン(Trdn)、またはカルセクエストリン2(Casq2)の1つまたは複数の発現を回復させる。
【0014】
[0041]本明細書で提供される処置の方法のいくつかの実施形態では、遺伝子治療用ベクターがウイルスベクターを含む。任意の適切なウイルスベクターが、本明細書の方法での使用に予定され、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターを含むがこれらに限定されない。いくつかの場合、遺伝子治療用ベクターがアデノ随伴ウイルスである。いくつかの場合、該アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8およびAAV9、またはそれらの誘導体からなる群から選択される。いくつかの場合、該アデノ随伴ウイルスが、AAV9またはその誘導体である。いくつかの場合、該AAV9が、配列番号7に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの場合、心筋または心外膜、例えば心筋細胞中の病的細胞の形質導入を改善するために、該アデノ随伴ウイルスが修飾されており、例えば、いくつかの場合、該アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8、またはAAV9の誘導体である。いくつかの場合、該誘導体が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願第63/012,703号明細書に記載される任意のAAVである。
【0015】
[0042]本明細書で提供される処置のいくつかの実施形態または方法では、遺伝子治療用ベクターを含む組成物を、病的細胞に到達するための任意の適切な経路を介して投与する。例えば、いくつかの場合、組成物を、静脈内、心臓内、心膜、または動脈内に投与する。
【0016】
[0043]本明細書で提供される処置の方法のいくつかの実施形態では、PKP2を、心筋または心外膜中の病的な細胞および組織、例えば心筋細胞中での発現に適切な任意のプロモーターにより発現させる。例えば、いくつかの場合、該プロモーターが心臓特異的プロモーターである。いくつかの場合、該心臓特異的プロモーターが、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである。いくつかの場合、該プロモーターがPKP2プロモーターである。いくつかの場合、心臓特異的エンハンサーを、該プロモーターと組み合わせる。いくつかの場合、該トロポニンプロモーターが、配列番号3に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの場合、該PKP2プロモーターが、配列番号4に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの場合、該プロモーターが構成的プロモーターである。いくつかの場合、該構成的プロモーターがベータアクチンプロモーターである。
【0017】
[0044]本明細書で提供される処置の方法のいくつかの実施形態では、PKP2遺伝子をコードする核酸が、例えばPKP2ポリペプチドをコードする任意の適切な配列、配列番号8の配列を有するポリペプチドをコードする任意の核酸を有する。例えば、いくつかの場合、PKP2遺伝子が、配列番号1に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する配列を有する。いくつかの場合、PKP2遺伝子が、配列番号2に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する配列を有する。いくつかの場合、PKP2遺伝子をコードする核酸配列が、コドン最適化されている。
【0018】
[0045]本明細書で提供される処置の方法のいくつかの実施形態では、遺伝子治療用ベクターが、約3kb~約5kbのサイズを有する遺伝子発現カセットを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4kb~約5kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.2kb~約4.8kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.5kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約5kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.9kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.8kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.7kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.6kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.5kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.4kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.3kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.2kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.1kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.9kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.8kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.7kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.6kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.5kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.1kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.3kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.5kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.7kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.9kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.1kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.2kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.3kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.4kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.5kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.6kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.7kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.8kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.9kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約5kbのサイズを有する。
【0019】
[0046]本明細書での方法の種々の実施形態では、PKP2遺伝子を含む遺伝子治療用ベクターが、薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物中で製剤してある。例えば、いくつかの場合、該薬学的に許容可能な担体または賦形剤が、緩衝液、ポリマー、塩、またはそれらの組合せを含む。
【0020】
[0047]本明細書で提供される処置の方法のいくつかの実施形態では、個体が、デスモソームタンパク質中に少なくとも1つの変異を有すると同定される。いくつかの場合、該デスモソームタンパク質がPKP2である。いくつかの場合、該変異が、欠失、挿入、一塩基変異、またはコピー数多型を含む。いくつかの場合、DNAシーケンシング、PCR、qPCR、in situハイブリダイゼーション、または個体中の遺伝子変異を同定する他の適切な方法を介して、個体が、デスモソームタンパク質中に少なくとも1つの変異を有すると同定される。
【0021】
遺伝子治療用ベクター
[0048]他の態様では、少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されたプラコフィリン2遺伝子を含む遺伝子治療用ベクターを提供する。いくつかの場合、該遺伝子治療用ベクターがウイルスベクターを含む。いくつかの場合、該ウイルスベクターが、心臓の疾患または状態を処置するための任意の適切なウイルスベクターである。いくつかの場合、該ウイルスベクターが、心筋、心外膜、または両方の細胞へと遺伝子を送達するために適切である。いくつかの場合、該ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスからなる群から選択される。いくつかの場合、該遺伝子治療用ベクターがアデノ随伴ウイルスである。いくつかの場合、該アデノ随伴ウイルスが、AAV6、AAV8およびAAV9、またはそれらの誘導体からなる群から選択される。いくつかの場合、該アデノ随伴ウイルスが、AAV9またはその誘導体である。いくつかの場合、該AAV9が、配列番号7に対する少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの場合、該アデノ随伴ウイルスが、本明細書中の処置の方法により細胞に形質導入するために最適化された、AAV6、AAV8、またはAAV9の誘導体である。いくつかの場合、該誘導体が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願第63/012,703号明細書に記載される任意のAAVである。
【0022】
[0049]本明細書で提供される遺伝子治療用ベクターのいくつかの実施形態では、PKP2を、病的な細胞および組織、例えば心筋細胞中での発現に適切な任意のプロモーターにより発現させる。いくつかの場合、PKP2を、心筋、心外膜、または両方の細胞中で活性であるプロモーターにより発現させる。例えばいくつかの場合、該プロモーターが心臓特異的プロモーターである。いくつかの場合、該心臓特異的プロモーターが、トロポニンプロモーターまたはアルファミオシン重鎖プロモーターである。いくつかの場合、該プロモーターがPKP2プロモーターである。いくつかの場合、心臓特異的エンハンサーを、該プロモーターと組み合わせる。いくつかの場合、該トロポニンプロモーターが、配列番号3に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの場合、該PKP2プロモーターが、配列番号4に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの場合、該プロモーターが構成的プロモーターである。いくつかの場合、該構成的プロモーターがベータアクチンプロモーターである。
【0023】
[0050]本明細書で提供される遺伝子治療用ベクターのいくつかの実施形態では、PKP2遺伝子をコードする核酸が、例えばPKP2ポリペプチドをコードする任意の適切な配列、配列番号8の配列を有するポリペプチドをコードする任意の核酸を有する。例えば、いくつかの場合、PKP2遺伝子が、配列番号1に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する配列を有する。いくつかの場合、PKP2遺伝子が、配列番号2に対する少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する配列を有する。いくつかの場合、PKP2遺伝子をコードする核酸配列が、コドン最適化されている。
【0024】
[0051]本明細書で提供される遺伝子治療用ベクターのいくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターが3’エレメントを含む。いくつかの実施形態では、該3’エレメントが、該遺伝子治療用ベクターの転写産物(例えばPKP2転写物)を安定化させる。いくつかの実施形態では、該3’エレメントが、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化配列を含む。いくつかの実施形態では、該3’エレメントが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。
【0025】
[0052]本明細書で提供される遺伝子治療用ベクターのいくつかの実施形態では、該遺伝子治療用ベクターが、約3kb~約5kbのサイズを有する遺伝子発現カセットを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4kb~約5kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.2kb~約4.8kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.5kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約5kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.9kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.8kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.7kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.6kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.5kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.4kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.3kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.2kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4.1kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約4kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.9kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.8kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.7kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.6kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、約3.5kb以下のサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.1kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.3kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.5kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.7kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約3.9kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.1kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.2kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.3kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.4kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.5kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.6kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.7kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.8kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約4.9kbのサイズを有する。いくつかの実施形態では、該遺伝子発現カセットが、少なくとも約5kbのサイズを有する。
【0026】
[0053]本明細書で提供される遺伝子治療用ベクターの種々の実施形態では、PKP2遺伝子を含む該遺伝子治療用ベクターが、薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物中で製剤してある。例えば、いくつかの場合、該薬学的に許容可能な担体または賦形剤が、緩衝液、ポリマー、塩、またはそれらの組合せを含む。
【0027】
[0054]いくつかの実施形態では、本明細書の遺伝子治療用ベクターが、下記の表1中で提供される核酸配列を含む。
【0028】
【表1-1】
【0029】
【表1-2】
【0030】
【表1-3】
【0031】
【表1-4】
【0032】
【表1-5】
【0033】
【表1-6】
【0034】
【表1-7】
【0035】
【表1-8】
【0036】
【表1-9】
【0037】
【表1-10】
【0038】
【表1-11】
【0039】
【表1-12】
【0040】
ウイルスベクター
[0055]本明細書で提供される方法および遺伝子治療用ベクターに適切なウイルスベクターは、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li等(1994)Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543~2549;Borras等(1999)Gene Ther 6:515~524;LiおよびDavidson、(1995)Proc. Natl. Acad. Sci. 92:7700~7704;Sakamoto等(1999)Hum Gene Ther 5:1088~1097;国際公開第94/12649号;同93/03769号;同93/19191号;同94/28938号;同95/11984号および同95/00655号);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali等(1998)Hum Gene Ther 9(l):81~86、1998、Flannery等(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. 94:6916~6921;Bennett等(1997)Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857~2863;Jomary等(1997)Gene Ther 4:683~690;Rolling等(1999)、Hum Gene Ther 10:641~648;Ali等(1996)Hum Mol Genet. 5:591~594;国際公開第93/09239号、Samulski等(1989)J. Vir. 63:3822~3828;Mendelson等(1988)Virol. 166:154~165;ならびにFlotte等(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. 90:10613~10617;SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi等(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. 94:10319~10323;Takahashi等(1999)J Virol 73:7812~7816);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにレトロウイルス由来ベクター、例えば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、鶏白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳癌ウイルス);等を含むがそれらに限定されない。多数の適切なベクターが当業者に公知であり、多くは市販入手可能である。例として次のベクターを提供する。真核細胞用のpXTl、pSG5(Stratagene社)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVLSV40(Pharmacia社)、およびpAd(Life Technologies社)。しかしながら、本開示の方法と適合性である限り、任意の他のベクターが、使用に予定される。
【0041】
[0056]細胞に感染するまたは受容体介在性エンドサイトーシスを介して細胞内に入りウイルス遺伝子を安定かつ効率よく発現する、特定のウイルスの能力が理由で、それらのウイルスは、細胞(例えば哺乳類細胞)内への外来核酸の導入用の興味深い候補となっている。ウイルスベクターは、制御配列、例えば、目的のポリペプチドの発現用プロモーターを含むと予定される。多くのウイルスベクターは、宿主細胞ゲノム内に組み込まれるものの、望ましければ、そのような組込みを妨げるために、そのような組込みを可能にする断片を除去または変更してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、該ベクターが、哺乳類の複製開始点を含有しない。選択した細胞内への、PKP2をコードする核酸の送達における使用に予定されるウイルスベクターの非限定的な例を後記する。いくつかの実施形態では、該ウイルスベクターが、複製欠損ウイルスに由来する。
【0042】
[0057]概して、他の有用なウイルスベクターは、非必須遺伝子が目的のポリペプチドで置換された非細胞変性性真核生物ウイルスに基づく。非細胞変性性ウイルスは、その生活環が、ゲノムウイルスRNAからDNAへの逆転写に続く宿主細胞DNAへのプロウイルス組込みを含む特定のレトロウイルスを含む。概して、該レトロウイルスは、複製欠損である(例えば、所望の転写物の合成を導けるものの、感染粒子を生産できない)。そのように遺伝子改変させたレトロウイルス発現ベクターは、ポリヌクレオチドの高効率のin vivo形質導入に向けて一般的な有用性を有する。
【0043】
[0058]いくつかの実施形態では、PKP2をコードするポリヌクレオチドが、特異的結合リガンドを発現するように操作された感染性ウイルス内に収容されている。したがって、ウイルス粒子が、標的細胞のコグネート受容体に対し特異的に結合し、内容物を細胞へと送達する。いくつかの実施形態では、特定のウイルス指向性をもたらすようにウイルスが修飾されており、例えば、ウイルスが、好ましくは、線維芽細胞、心細胞、または特に心臓線維芽細胞(CF)に感染する。AAVに関していくつかの場合、ウイルスベクターの指向性を変更するために、カプシドタンパク質を変異させてある。例えば、レンチウイルス指向性は、頻繁に、異なるエンベロープタンパク質を使用して修飾されており、「シュードタイピング」として知られる。
【0044】
[0059]いくつかの実施形態では、ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである。レトロウイルスは頻繁に、その遺伝子を宿主ゲノムへと組み込み、大量の外来遺伝物質を導入し、広範囲の種および細胞型に感染し、頻繁に、特殊な細胞株内にパッケージされる(Miller等、Am. J. Clin. Oncol.、15(3):216~221、1992)。いくつかの実施形態では、レトロウイルスベクターが、宿主細胞ゲノム内に組み込まれないように変更されている。
【0045】
[0060]いくつかの実施形態では、標的細胞内への侵入を援助するために、組換えレトロウイルスが、ウイルスポリペプチド(例えばレトロウイルスenv)を含む。そのようなウイルスポリペプチドは、当該技術分野で確立されており、例えば、米国特許第5,449,614号明細書である。いくつかの実施形態では、該ウイルスポリペプチドが、両種指向性ポリペプチド、例えば、オリジナル宿主種外の細胞を含む複数種由来の細胞内への侵入を援助する両種指向性envである。いくつかの実施形態では、該ウイルスポリペプチドが、オリジナル宿主種外の細胞内への侵入を援助する異種指向性ウイルスポリペプチドである。いくつかの実施形態では、該ウイルスポリペプチドが、同種指向性ポリペプチド、例えば、オリジナル宿主種の細胞内への侵入を援助する同種指向性envである。
【0046】
[0061]細胞内へのレトロウイルスの侵入を援助できるウイルスポリペプチドの例は、MMLV両種指向性env、MMLV同種指向性env、MMLV異種指向性env、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-g)、HIV-1 env、テナガザル白血病ウイルス(GALV)env、RD114、FeLV-C、FeLV-B、MLV 10A1 env遺伝子、およびキメラを含むそれらのバリアントを含むが、それらに限定されない。Yee等(1994)Methods Cell Biol、A部:99~l 12(VSV-G);米国特許第5,449,614号明細書。いくつかの場合、該ウイルスポリペプチドは、発現、または受容体への結合の上昇を促進するために遺伝子修飾されている。
【0047】
[0062]実施形態では、レトロウイルス構築物が、様々なレトロウイルス、例えば、MMLV、HIV-1、SIV、FIV、または本明細書に記載される他のレトロウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、レトロウイルス構築物が、特定ウイルスの2周期以上の複製に必要なすべてのウイルスポリペプチドをコードする。いくつかの場合、ウイルス侵入の効率を、他の要素または他のウイルスポリペプチドの添加により改善する。他の場合、レトロウイルス構築物によってコードされるウイルスポリペプチドが、2周期以上の複製を支持しない、例えば、米国特許第6,872,528号明細書。そのような場合、他の要素または他のウイルスポリペプチドの添加が、頻繁に、ウイルス侵入の促進に役立つ。一例示的実施形態では、組換えレトロウイルスが、VSV-gポリペプチドを含むが、HIV1 envポリペプチドは含まないHIV-1ウイルスである。
【0048】
[0063]いくつかの実施形態では、レトロウイルス構築物が、プロモーター、マルチクローニングサイト、および/または耐性遺伝子を含む。プロモーターの例は、CMV、SV40、EFla、β-アクチン;レトロウイルスLTRプロモーター、および誘導性プロモーターを含むがそれらに限定されない。いくつかの実施形態では、レトロウイルス構築物が、パッケージングシグナル(例えば、MFGベクター由来のパッケージングシグナル、psiパッケージングシグナル)を含む。当該技術分野で公知のいくつかのレトロウイルス構築物の例は、pMX、pBabeXまたはそれらの誘導体を含むがそれらに限定されない。Onishi等(1996)Experimental Hematology、24:324~329。いくつかの場合、レトロウイルス構築物が、自己不活化レンチウイルスベクター(SIN)である。Miyoshi等(1998)J. Virol 72(10):8150~8157。いくつかの場合、レトロウイルス構築物が、LL-CG、LS-CG、CL-CG、CS-CG、CLGまたはMFGである。Miyoshi(1998)J. Virol 72(10):8150~8157;Onishi等(1996)Experimental Hematology、24:324~329;Riviere等(1995)Proc. Natl. Acad. Sci.、92:6733~6737。
【0049】
[0064]いくつかの実施形態では、複製欠損のウイルスを産生するために、ウイルスゲノム内のいくつかのウイルス配列の位置に核酸(例えば、目的のポリペプチドをコードするものまたはRNA)を挿入することにより、レトロウイルスベクターを構築する。ビリオンを産生するために、gag遺伝子、pol遺伝子、およびenv遺伝子を含有するが、LTRおよびパッケージング成分は含まないパッケージング細胞株を構築する(Mann等、Cell 33:153~159、1983)。cDNAを含有する組換えプラスミドを、レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と共に、特殊な細胞株内に導入すると(例えば、リン酸カルシウム沈殿または脂質トランスフェクションにより)、パッケージング配列が、組換えプラスミドのRNA転写物を、ウイルス粒子内へとパッケージングさせ、そのウイルス粒子が次いで、培養培地中へと分泌される(NicolasおよびRubinstein、In:Vectors:A survey of molecular cloning vectors and their uses、RodriguezおよびDenhardt編、Stoneham:Butterworth、494~513ページ、1988;Temin、In:Gene Transfer、Kucherlapati(編)、New York:Plenum Press、149~188ページ、1986;Mann等、Cell、33:153~159、1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含有する培地を捕集し、場合により濃縮し、遺伝子導入に使用する。レトロウイルスベクターは、幅広い種類の細胞型を感染できる。しかしながら、組込みおよび安定発現は、典型的に、宿主細胞の分裂を含む(Paskind等、Virology、67:242~248、1975)。
【0050】
[0065]いくつかの実施形態では、ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである。レンチウイルスは、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、およびenvに加えて、調節機能または構造機能を有する他の遺伝子を含有する複雑なレトロウイルスである。レンチウイルスベクターに関する情報は、例えば、参照によりその各々の全体が本明細書に組み込まれている、Naldini等、Science 272(5259):263~267、1996;Zufferey等、Nat Biotechnol 15(9):871~875、1997;Blomer等、J Virol. 71(9):6641~6649、1997;米国特許第6,013,516号明細書および同第5,994,136号明細書で提供される。レンチウイルスのいくつかの例は、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1、HIV-2およびサル免疫不全ウイルス:SIVを含む。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子の弱毒化により生成され、例えば、ベクターを生物学的に安全にするために遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefを欠失させる。使用したレンチウイルスは、複製および/または組込み欠損であることもある。
【0051】
[0066]組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、in vivoおよびex vivoの両方の遺伝子導入および核酸配列の発現に使用されることもある。例えば、パッケージング機能、つまりgag、polおよびenv、同じくrevおよびtatを有する2つ以上のベクターで適切な宿主細胞をトランスフェクトする、非分裂細胞に感染することができる組換えレンチウイルスは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第5,994,136号明細書に記載される。いくつかの実施形態では、該組換えウイルスが、特定の細胞型の受容体へと標的化するための抗体または特定のリガンドと、エンベロープタンパク質の結合により、標的化される。例えば、目的の核酸断片(調節領域を含む)を、特定の標的細胞型上にある受容体のリガンドをコードする他の遺伝子と共にウイルスベクター内へと挿入することにより、標的特異的ベクターを生成することもある。
【0052】
[0067]レンチウイルスベクターは、当該技術分野で公知であり、参照によりすべて本明細書に組み込まれているNaldini等(1996および1998);Zufferey等(1997);Dull等、1998、米国特許第6,013,516号明細書;および同第5,994,136号明細書を参照のこと。概して、これらのベクターは、プラスミドベースまたはウイルスベースであり、かつ外来核酸の組込み、選択、および宿主細胞への核酸の導入のための必須配列を有するように構成されている。いくつかの場合、レンチウイルスベクターは、1つまたは複数のレンチウイルスパッケージングプラスミドと共に細胞内に導入され、そのプラスミドは、制限なしにpMD2.G、pRSV-rev、pMDLG-pRRE、およびpRRL-GOIを含む。レンチウイルスベクター単独またはレンチウイルスパッケージングプラスミドとの組合せでの、細胞内への導入は、いくつかの実施形態では、該レンチウイルスベクターの、レンチウイルス粒子内へのパッケージングをもたらす。いくつかの実施形態では、該レンチウイルスベクターが、非組込み型レンチウイルス(NIL)ベクターである。NILベクターを生成するための例示的方法、例えば、インテグラーゼ遺伝子中でのD64V置換は、米国特許第8,119,119号明細書中で提供される。
【0053】
[0068]いくつかの実施形態では、ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである。アデノウイルスの遺伝子構成は、およそ36kbの線状二本鎖DNAウイルスを含み、その構成が、7kbまでの外来配列による、アデノウイルスDNAの大型片の置換を可能にする(Grunhaus等、Seminar in Virology 200(2):535~546、1992))。いくつかの場合、アデノウイルス支援トランスフェクションを使用して、PKP2を細胞内に導入する。アデノウイルスとカップルされたシステム(adenovirus coupled system)を使用する細胞系において、トランスフェクション効率の上昇が報告された(KelleherおよびVos、Biotechniques、17(6):1110~7、1994;Cotten等、Proc Natl Acad Sci USA、89(13):6094~6098、1992;Curiel、Nat Immun、13(2~3):141~64、1994)。
【0054】
[0069]いくつかの実施形態では、ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。AAVは、組込みの頻度が低く、かつ非分裂細胞を感染できるため、興味深いベクター系であり、したがって、例えば組織培養(Muzyczka、Curr Top Microbiol Immunol、158:97~129、1992)またはin vivoでの哺乳類細胞内へのポリヌクレオチドの送達用に有用にする。rAAVベクターの生成および使用に関する詳細は、参照により各々の全体が本明細書に組み込まれている米国特許第5,139,941号明細書および同第4,797,368号明細書に記載される。
【0055】
[0070]AAVは、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、2つの145ヌクレオチドの逆方向末端反復(ITR)を含む長さ約4.7kbである。AAVの複数の血清型が存在する。該AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV-1の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_002077で提供され;AAV-2の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_001401およびSrivastava等、J. Virol.、45:555~564(1983)で提供され;AAV-3の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_1829で提供され;AAV-4の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_001829で提供され;AAV-5ゲノムは、GenBank登録番号AF085716で提供され;AAV-6の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_00 1862で提供され;AAV-7ゲノムおよびAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれ、GenBank登録番号AX753246およびAX753249で提供され;AAV-9ゲノムは、Gao等、J. Virol.、78:6381~6388(2004)で提供され;AAV-10ゲノムは、Mol. Ther.、13(1):67~76(2006)で提供され;AAV-11ゲノムは、Virology、330(2):375~383(2004)で提供される。AAV rh.74ゲノムの配列は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第9,434,928号明細書で提供される。ウイルスDNA複製(rep)、カプシド形成/パッケージングおよび宿主細胞染色体組込みを導くシス作用配列は、AAV ITR内に含有される。3つのAAVプロモーター(その相対的マップ位置からp5、pl9、およびp40と命名される)が、rep遺伝子およびcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。2つのrepプロモーター(p5およびpi9)は、単一AAVイントロンの(ヌクレオチド2107および2227での)差次的スプライシングと合わさって、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、およびrep40)の産生をもたらす。Repタンパク質は、ウイルスゲノムの複製を最終的に担う複数の酵素特性を有する。cap遺伝子は、p40プロモーターによって発現し、3つのカプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3をコードする。選択的スプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位が、3つの関連カプシドタンパク質の産生を担う。単一コンセンサスポリアデニル化部位が、AAVゲノムのマップ上の95位に位置する。AAVの生活環および遺伝的特徴は、Muzyczka、Current Topics in Microbiology and Immunology、158:97~129(1992)に概説される。
【0056】
[0071]AAVは、例えば遺伝子治療における、外来DNAを細胞へと送達するためのベクターとして興味深い独自の特徴をもつ。培養中の細胞のAAV感染は非細胞変性性であり、かつヒトおよび他の動物の自然感染は、無症状および無症候性である。さらに、AAVは多数の哺乳類細胞に感染し、in vivoで多数の異なる組織を標的化する機会を可能にする。さらに、AAVは、ゆっくり分裂する細胞および非分裂細胞に形質導入し、かつ頻繁に、転写的に活性の核エピソーム(染色体外エレメント)として、本質的に、それらの細胞の生涯にわたり存続する。本開示にとって特に重要であるのは、AAV、特にAAV9が、心臓、例えば、心筋、心外膜、または両方の細胞に感染できることである(Prasad等、2011;Piras等、2016;Ambrosi等、2019)。AAVプロウイルスゲノムは、クローンDNAとしてプラスミド内に挿入されることが、組換えゲノムの構築を実現可能にする。さらに、AAV複製およびゲノムカプシド形成を導くシグナルが、AAVゲノムのITR内に含有されているため、いくつかの場合、ゲノム(複製および構造カプシドタンパク質、rep-capをコードする)の内部のおよそ4.3kbの一部または全部が、外来DNAで置換されている。AAVベクターを生成するために、いくつかの場合、repタンパク質およびcapタンパク質がトランスで提供される。AAVの他の重要な特徴は、極めて安定かつ頑強なウイルスであることである。AAVは、アデノウイルスを不活性化するために使用される条件(56℃~65℃で数時間)に耐えるので、AAVの低温保存はあまり重要でない。いくつかの場合、AAVは、凍結乾燥さえ可能である。最後に、AAV感染細胞は、重感染に対して耐性でない。本開示のAAVベクターは、自己相補性二本鎖AAVベクター、合成ITR、および/またはパッケージング密度(compacity)の上昇したAAVベクターを含む。例示的方法が、参照によりその各々の全体が組み込まれている米国特許第8,784,799号明細書;同第8,999,678号明細書;同第9,169,494号明細書;同第9,447,433号明細書;および同第9,783,824号明細書で提供される。
【0057】
[0072]rAAVゲノム中のAAV DNAは、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型からであり得ると予定され、AAV血清型のAAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13およびAAV rh74を含むがこれに限定されない。シュードタイプrAAVの産生は、例えば国際公開第01/83692号に開示される。rAAVバリアントの他の型、例えば、カプシド突然変異を有するrAAVも予定される。例えば、Marsic等、Mol. Therapy. 22):1900~09(2014)を参照。種々のAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が当該技術分野で公知である。本開示のAAVベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV39、AAV43、AAV.rh74、およびAAV.rh8のAAVベクターを含む。例示的AAVベクターは、参照によりその各々の全体が組み込まれている米国特許出願第63/012,703号明細書、米国特許第7,105,345号明細書;米国特許出願第15/782,980号明細書;米国特許第7,259,151号明細書;同第6,962,815号明細書;同第7,718,424号明細書;同第6,984,517号明細書;同第7,718,424号明細書;同第6,156,303号明細書;同第8,524,446号明細書;同第7,790,449号明細書;同第7,906,111号明細書;同第9,737,618号明細書;米国特許出願第15/433,322号明細書;米国特許第7,198,951号明細書で提供される。
【0058】
[0073]いくつかの実施形態では、標的化を増強するために、AAV発現ベクターがシュードタイプである。遺伝子導入を促進し、心筋細胞中での発現を維持するために、AAV6、AAV8、およびAAV9が、使用に予定される。いくつかの場合、Balaji等、J Surg Res. 184:691~98(2013)に記載されるように、AAV2ゲノムはそれぞれ、シュードタイプベクターAAV2/5、AAV2/7、およびAAV2/8を産生するカプシド内にパッケージングされる。いくつかの実施形態では、Piras等、Gene Therapy 23:469~478(2016)に記載されるように、筋線維芽細胞様系統での発現を標的化するためにAAV9を使用する。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV6、またはAAV9を使用し、いくつかの実施形態では、Asokari等、Hum Gene Ther. 24:906~13(2013);Pozsgai等、Mol Ther. 25:855~69(2017);Kotterman等、Nature Reviews Genetics 15:445~51(2014);およびSchaffer等の米国特許出願公開第20160340393号明細書に記載されるようにAAVを操作する。いくつかの実施形態では、米国特許出願公開第20180066285号明細書に記載されるように、標的細胞の感染性を高めるために、ウイルスベクターがAAV操作されている。
【0059】
[0074]いくつかの実施形態では、本開示のAAVベクターが、特に、in vivoもしくはex vivoでの心細胞、特に心筋細胞の形質導入を向上もしくは促進させるために操作されたカプシドとしての、または対象の免疫系を逃れる、または体内分布を改善する修飾カプシドを含む。例示的なAAVカプシドが、参照によりその各々の全体が組み込まれている米国特許第7,867,484号明細書;同第9,233,131号明細書;同第10,046,016号明細書;国際公開第2016/133917号;同第2018/222503号;および同第20019/060454号明細書で提供される。AAVカプシド(または特にAAV9カプシド)では、心筋、心外膜または両方における細胞に対する感染性を高めるために、1つまたは複数の置換が予定される。特に、いくつかの実施形態では、本開示のAAVベクター、場合によりAAV9ベースのベクターが、そのカプシドタンパク質中に1つまたは複数の置換を含む。いくつかの実施形態では、本開示のAAVベクターが、AAV-A9のカプシドおよび/または血清型を含む。それらの置換および挿入は、本開示において有用な種々のカプシドタンパク質を生成するために組み合わされることが予定されると理解される。
ウイルスベクター産生の方法
[0075]概して、ウイルスベクターは、ウイルスDNAまたはRNAの構築物を産生細胞に導入することで産生される。いくつかの場合、該産生細胞は外来遺伝子を発現しない。他の場合、該産生細胞は、1つまたは複数の外来遺伝子、例えば、1つまたは複数のgag、polまたはenvポリペプチド、および/または1つまたは複数のレトロウイルスgag、polまたはenvポリペプチドをコードする遺伝子を含む「パッケージング細胞」である。いくつかの実施形態では、該レトロウイルスパッケージング細胞が、ウイルスポリペプチド、例えば、標的細胞への侵入を援助するVSV-gをコードする遺伝子を含む。いくつかの場合、該パッケージング細胞が、1つまたは複数のレンチウイルスタンパク質、例えば、gag、pol、env、vpr、vpu、vpx、vif、tat、revまたはnefをコードする遺伝子を含む。いくつかの場合、該パッケージング細胞が、アデノウイルスタンパク質、例えば、El AもしくはEl B、または他のアデノウイルスタンパク質をコードする遺伝子を含む。例えば、いくつかの場合、パッケージング細胞により供給されるタンパク質が、レトロウイルス由来タンパク質、例えば、gag、pol、およびenv;レンチウイルス由来タンパク質、例えば、gag、pol、env、vpr、vpu、vpx、vif、tat、rev、およびnef;ならびにアデノウイルス由来タンパク質、例えば、El AおよびE1 Bである。多くの例では、該パッケージング細胞が、該ウイルスベクターの由来先であるウイルスとは異なるウイルスに由来するタンパク質を供給する。パッケージング細胞から組換えウイルスを産生する方法およびその使用は確立されている;例えば、米国特許第5,834,256号明細書;同第6,910,434号明細書;同第5,591,624号明細書;同第5,817,491号明細書;同第7,070,994号明細書;および同第6,995,009号明細書を参照。
【0060】
[0076]パッケージング細胞株は、トランスフェクションが容易な任意の細胞株を含むがそれらに限定されない。パッケージング細胞株は頻繁に、293T細胞、NIH3T3細胞株、COS細胞株、またはHeLa細胞株に基づく。パッケージング細胞は頻繁に、ウイルスパッケージングに必要なタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子が欠けているウイルスベクタープラスミドをパッケージングするために使用される。そのようなウイルスベクターまたはプラスミドによりコードされるタンパク質から欠けているタンパク質またはポリペプチドを供給する任意の細胞が、パッケージング細胞としての使用に予定される。パッケージング細胞株の例は、プラチナ-E(Plat-E)、プラチナ-A(Plat-A)、BOSC23(ATCC CRL 11554)およびBing(ATCC CRL 11270)を含むがそれらに限定されない。Morita等(2000)Gene Therapy 7(12):1063~1066;Onishi等(1996)Experimental Hematology、24:324~329;米国特許第6,995,009号明細書。市販パッケージング株、例えば、Ampho-Pak 293細胞株、Eco-Pak 2-293細胞株、RetroPack PT67細胞株、およびRetro-Xユニバーサルパッケージングシステム(すべてClontech社から入手可能)も有用である。
【0061】
[0077]ウイルスベクタープラスミド(または構築物)は、pMXs、pMxs-IB、pMXs-puro、pMXs-neo(pMXs-IBは、pMXs-puroのピューロマイシン耐性遺伝子の代わりにブラストサイジン耐性遺伝子を有するベクターである)Kimatura等(2003)Experimental Hematology 31:1007~1014;MFG Riviere等(1995)Proc. Natl. Acad. Sci.、92:6733~6737;pBabePuro;Morgenstern等(1990)Nucleic Acids Research 18:3587~3596;LL-CG、CL-CG、CS-CG、CLG Miyoshi等(1998)J. Vir. 72:8150~8157等をレトロウイルス系として含み、pAdexl Kanegae等(1995)Nucleic Acids Research 23:3816~3821等をアデノウイルス系として含む。例示的実施形態では、レトロウイルス構築物が、ブラストサイジン(例えばpMXs-IB)、ピューロマイシン(例えば、pMXs-puro、pBabePuro)、またはネオマイシン(例えばpMXs-neo)を含む。Morgenstern等(1990)Nucleic Acids Research 18:3587~3596。
プロモーターおよびエンハンサー
[0078]いくつかの実施形態では、PKP2の発現を促進するために、PKP2をコードする核酸が、プロモーターおよび/またはエンハンサーに作動可能に連結されている。使用する宿主/ベクター系に応じて、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネータ等を含む多数の適切な転写・翻訳調節エレメントのいずれかが、発現ベクターでの使用に適切である(例えば、Bitter等(1987)Methods in Enzymology、153:516~544)。
【0062】
[0079]適切な真核生物プロモーター(真核生物中で機能するプロモーター)の非限定的な例は、CMV、CMV最初期、HSVチミジンキナーゼ、SV40初期および後期、レトロウイルスからの長い末端反復(LTRs)、およびマウスメタロチオネイン-Iを含む。いくつかの実施形態では、心臓特異的発現をもたらすことができるプロモーターを使用し、心筋、心外膜、または両方での発現をもたらすプロモーターを含むがこれに限定されない(Prasad等、2011)。適切な心臓特異的プロモーターの非限定的な例は、アルファミオシン重鎖(a-MHC)、ミオシン軽鎖2(MLC-2)、心臓トロポニンT(cTnT)、および心臓トロポニンC(cTnC)を含む。いくつかの実施形態では、PKP2またはデスミンプロモーターを使用する。いくつかの場合、心臓特異的発現を有するキメラプロモーターを使用する。いくつかの場合、心臓特異的エンハンサーを、該プロモーターと組み合わせる。
【0063】
[0080]PKP2発現を駆動するために適切なプロモーターの例は、レトロウイルスの長い末端反復(LTR)エレメント;構成的プロモーター、例えば、CMV、HSV1-TK、SV40、EF-la、β-アクチン、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)(phosphoglycerol kinase);誘導性プロモーター、例えば、Tet-オペレーターエレメントを含有するようなもの;および心臓特異的プロモーター、例えば、アルファミオシン重鎖(a-MHC)、ミオシン軽鎖2(MLC-2)、心臓トロポニンT(cTnT)、および心臓トロポニンC(cTnC)を含むがそれらに限定されない。いくつかの実施形態では、PKP2またはデスミンプロモーターを使用する。いくつかの実施形態では、心臓特異的発現を有するキメラプロモーターを使用する。いくつかの場合、心臓特異的エンハンサーを、該プロモーターと組み合わせる。
【0064】
[0081]いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、細胞型特異的な転写制調節エレメント(TRE)に作動可能に連結されており、TREは、プロモーターおよびエンハンサーを含む。適切なTREは、以下の遺伝子:ミオシン軽鎖-2、α-ミオシン重鎖、AE3、心臓トロポニンC、および心臓アクチン由来のTREを含むがそれらに限定されない。Franz等(1997)Cardiovasc. Res. 35:560~566;Robbins等(1995)Ann. N. Y. Acad. Sci. 752:492~505;Linn等(1995)Circ. Res. 76:584~591;Parmacek等(1994)Cell. Biol. 14:1870~1885;Hunter等(1993)Hypertension 22:608~617;およびSartorelli等(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4047~4051。
【0065】
[0082]その代わりに、ある核酸の自然環境において通常その核酸と関連するわけではないプロモーターを意味する組換えプロモーターまたは異種プロモーターの調節下に、コードする核酸断片を配置することにより、特定の利点が得られる。組換えエンハンサーまたは異種エンハンサーも、ある核酸配列の自然環境において通常その核酸配列と関連するわけではないエンハンサーを意味する。そのようなプロモーターまたはエンハンサーは頻繁に、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および任意の他の原核細胞、ウイルス性細胞、もしくは真核細胞から単離したプロモーターまたはエンハンサー、および「天然」でない、すなわち異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を変化させる突然変異を含有するプロモーターまたはエンハンサーを含む。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列の人工的な産生に加えて、配列は、本明細書に開示される組成物と関連して、組換えクローニング、および/またはPCRを含む核酸増幅技術を使用して産生されることもある(参照により各々が本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,202号明細書、同第5,928,906号明細書を参照)。
【0066】
[0083]いくつかの実施形態では、本開示のベクターが、1つまたは複数のポリAシグナルを含む。本開示のベクター中で有用な例示的ポリAシグナルは、短いポリAシグナルおよびbGHポリAシグナルを含む。いくつかの実施形態では、本開示のベクターが、1つまたは複数の3’エレメントを含む。例示的3’エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。
【0067】
遺伝子治療用ベクター組成物
[0084]組成物を調製するために、ベクターおよび/または細胞を生成し、必要に応じてまたは望みどおりに、ベクターまたは細胞を精製する。ベクターおよび/または他の薬剤は、薬学的に許容可能な担体中に懸濁されることもある。いくつかの実施形態では、組成物を凍結乾燥する。それらのコンパウンドおよび細胞は頻繁に、適切な濃度に調整してあり、場合により他の薬剤と組み合わせる。単位用量中に含まれる任意のコンパウンドおよび/または他の薬剤の絶対重量は、広範囲にわたって変わる。投与用量および投与数は、当業者により最適化されると予定される。
【0068】
[0085]例えば、いくつかの実施形態では、約10~1010ベクターゲノム(vg)を投与する。いくつかの実施形態では、用量が、少なくとも約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約1010vg、またはそれ以上のベクターゲノムである。いくつかの実施形態では、用量が、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約1010vg、またはそれ以上のベクターゲノムである。
【0069】
[0086]コンパウンドの1日量も同じく様々である。そのような1日量は頻繁に、例えば、少なくとも約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約1010vg/日、または日当たりそれ以上のベクターゲノムの範囲である。
【0070】
[0087]いくつかの実施形態では、本開示の方法が、心内注射、心筋内注射、心内膜注射、心内カテーテル挿入、または全身投与により、本開示のベクターまたはベクター系(例えば、rAAVベクター)を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、心内注射、心筋内注射、心内膜注射、心内カテーテル挿入、または全身投与により、約1x10~約1x1015GCの間のベクター(例えば、AAVベクターまたはレンチウイルスベクター)を投与して対象(例えばヒト)を処置する。いくつかの実施形態では、約1x10~約1x1015GCの間、約1x10~約1x1015GCの間、約1x10~約1x1014GCの間、約1x1010~約1x1013GCの間、約1x1011~約1x1012GCの間、または約1x1012~約1x1013GCの間のベクターを投与して対象を処置する。いくつかの実施形態では、約1x10~約1x1010GCの間、約1x10~約1x1011GCの間、約1x1010~約1x1012GCの間、約1x1011~約1x1013GCの間、約1x1012~約1x1014GCの間、または約1x1013~約1x1015GCの間のベクターを投与して対象を処置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1x10、少なくとも約1x10、少なくとも約1x1010、少なくとも約1x1011、少なくとも約1x1012、少なくとも約1x1013、または少なくとも約1x1015GCのベクターを投与して対象を処置する。いくつかの実施形態では、最高で1x10、最高で約1x10、最高で約1x1010、最高で約1x1011、最高で約1x1012、最高で約1x1013、または最高で約1x1015GCのベクターを投与して対象を処置する。いくつかの実施形態では、心内注射によるか全身的に、約1x10~約1x1015GC/kgの間のベクター(例えば、AAVベクターまたはレンチウイルスベクター)を投与して対象(例えばヒト)を処置する。いくつかの実施形態では、約1x10~約1x1015GC/kgの間、約1x10~約1x1015GC/kgの間、約1x10~約1x1014GC/kgの間、約1x1010~約1x1013GC/kgの間、約1x1011~約1x1012GC/kgの間、または約1x1012~約1x1013GC/kgの間のベクターを投与して対象を処置する。いくつかの実施形態では、約1x10~約1x1010GC/kgの間、約1x10~約1x1011GC/kgの間、約1x1010~約1x1012GC/kgの間、約1x1011~約1x1013GC/kgの間、約1x1012~約1x1014GC/kgの間、または約1x1013~約1x1015GC/kgの間のベクターを投与して対象を処置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1x10、少なくとも約1x10、少なくとも約1x1010、少なくとも約1x1011、少なくとも約1x1012、少なくとも約1x1013、または少なくとも約1x1015GC/kgのベクターを投与して対象を処置する。いくつかの実施形態では、最高で1x10、最高で約1x10、最高で約1x1010、最高で約1x1011、最高で約1x1012、最高で約1x1013、または最高で約1x1015GC/kgのベクターを投与して対象を処置する。ベクターの量および処置で用いる量は、選択される特定の担体のみならず、投与の経路、処置される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても異なると理解される。最終的に、いくつかの実施形態では、付添いの医療提供者が、適切な用量を特定する。医薬組成物は、投与用の単一単位剤形(single unit dosage form)における各コンパウンドの適切な比率で製剤されると予定される。
【0071】
[0088]組成物は、徐放性に製剤されていることもある(例えば、マイクロカプセル化を使用、国際公開第94/07529号、および/または米国特許第4,962,091号明細書を参照)。製剤は、適切な場合、都合よく、個別の単位剤形で与えられており、いくつかの実施形態では、製薬分野では周知の方法のいずれかにより調製される。そのような方法は頻繁に、治療剤を液体担体、固体マトリクス、半固体担体、微細固体担体、またはそれらの組合せと混合する工程、次いで必要であれば、生成物を、所望の送達システムへと導入または成形する工程を含む。
【0072】
[0089]いくつかの実施形態での、コンパウンドを含有する1つまたは複数の適切な単位剤形は、非経口(皮下、静脈内、筋肉内、および腹腔内を含む)、心臓内、心膜、経口、直腸、真皮、経皮、胸腔内、肺内、および鼻腔内(呼吸)の各経路を含む、様々な経路により投与される。
【0073】
[0090]本明細書で提供される遺伝子治療用ベクターは、水溶液、懸濁液、錠剤、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセル、およびリポソーム、および他の緩効性製剤、例えば、成形型高分子ゲル(shaped polymeric gel)を含む多くの形で調製される。遺伝子治療用ベクターの投与は頻繁に、水溶液での非経口投与または局所投与を含む。同様に、遺伝子治療用ベクターを含有する組成物は、装置、スキャフォールドにおいて、または徐放性製剤として投与されることもある。異なる種類の製剤法は、米国特許第6,306,434号明細書およびその明細書に含まれる参考文献に記載される。
【0074】
[0091]いくつかの実施形態では、ベクターが、非経口投与(例えば注入、例えば、ボーラス注入または持続注入による)用に製剤されており、かつ頻繁に、アンプル、プレフィルドシリンジ、小容量輸液容器、または複数回投与用容器中の防腐剤を加えた単位剤形で与えられている。医薬組成物は頻繁に、油性または水性のビヒクル中での懸濁液、溶液または乳液の形を取り、製剤用薬剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含有することもある。適切な担体は、生理食塩水溶液、リン酸緩衝生理食塩水、および当該技術分野で一般的に使用される他の材料を含む。
【0075】
[0092]組成物はさらに、他の材料、例えば、心臓の疾患、状態および負傷の処置に有用な薬剤、例えば、抗凝血剤(例えばダルテパリン(フラグミン)、ダナパロイド(オルガラン)、エノキサパリン(ロベノックス)、ヘパリン、チンザパリン(イノヘップ)、および/またはワルファリン(クマジン))、抗血小板剤(例えば、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、またはジピリダモール)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、ベナゼプリル(ロテンシン)、カプトプリル(カポテン)、エナラプリル(バソテック)、フォシノプリル(モノプリル)、リシノプリル(プリニビル、ゼストリル)、モエキシプリル(ウニバスク)、ペリンドプリル(アセオン)、キナプリル(アクプリル)、ラミプリル(アルテース)、および/またはトランドラプリル(マビック))、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(例えば、カンデサルタン(アタカンド)、エプロサルタン(テべテン)、イルベサルタン(アバプロ)、ロサルタン(コザール)、テルミサルタン(ミカルディス)および/またはバルサルタン(ディオバン)、β遮断薬(例えば、アセブトロール(セクトラール)、アテノロール(テノーミン)、ベタキソロール(ケルロン)、ビソプロロール/ヒドロクロロチアジド(ジアック)、ビソプロロール(ゼベタ)、カルテオロール(カルトロール)、メトプロロール(ロプレッサー、トプロールXL)、ナドロール(コルガード)、プロプラノロール(インデラル)、ソタロール(ベタペース)、および/またはチモロール(ブロカドレン))、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、アムロジピン(ノルバスク、ロトレル)、ベプリジル(バスコール)、ジルチアゼム(カルジゼム、チアザック)、フェロジピン(プレンジル)、ニフェジピン(アダラート、プロカルディア)、ニモジピン(ニモトップ)、ニソルジピン(Sular)、ベラパミル(カラン、イソプチン、ベレラン))、利尿剤(例えば、アミロリド(ミダモル)、ブメタニド(ブメックス)、クロロチアジド(ジウリル)、クロルタリドン(ハイグロトン)、フロセミド(ラシックス)、ヒドロクロロチアジド(エシドリックス、ヒドロジウリル)、インダパミド(ロゾール)、および/またはスピロノラクトン(アルダクトン))、血管拡張剤(例えば、二硝酸イソソルビド(イソルジル)、ネシリチド(ナトレコル)、ヒドララジン(アプレソリン)、硝酸塩、および/またはミノキシジル))、スタチン、ニコチン酸、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、ジゴキシン、ジギトキシン、ラノキシン、またはそれらの任意の組合せを含有することもある。
【0076】
[0093]さらなる薬剤、例えば、抗菌剤、抗微生物剤、抗ウイルス剤、生体応答調節剤、増殖因子、免疫調節剤、モノクローナル抗体、および/または防腐剤を含むこともある。本明細書で提供される組成物は、他の形の治療と関連して使用されることも予定される。
【0077】
[0094]本明細書に記載されるウイルスベクターは、疾患または障害を処置する目的での対象への投与に適切である。いくつかの実施形態では、そのような組成物が、例えば、受容者の生理的状態、投与の目的が外傷性損傷に対するのか、またはより持続性の治療目的のためか、および熟練の実務者に公知の他の要素に応じて、連続的または間欠的な単一用量、複数用量である。本明細書で提供されるコンパウンドおよび組成物の投与は、いくつかの実施形態では、予め選択した時間にわたり連続的に行うか、またはその代わりに、間隔をあけた一連の用量で行う。局所投与および全身投与の両方が予定される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターの局所的送達が達成される。いくつかの実施形態では、心臓内で細胞の集団を生成するために、細胞および/またはベクターの局所的送達を使用する。いくつかの実施形態では、そのような局所的集団が、心臓の「ペースメーカー細胞」として機能する。
【0078】
定義
[0095]本明細書で使用する「心筋症」という用語は、心臓が異常に肥大、肥厚および/または硬直した、心筋のいずれかの疾患または機能障害に関する。その結果、血液を圧送する心筋の能力が習慣的に弱まっている。疾患または障害の病因は、いくつかの場合、炎症性、代謝性、毒性、浸潤性、線維形成性、血液学的、遺伝性、または原因不明である。心筋症の2つの一般型が存在し、虚血性(酸素不足に起因)および非虚血性である。いくつかの場合、心筋症が、不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)である。
【0079】
[0096]「心不全(HF)」は、いずれかの構造上または機能上の心臓血管障害に頻繁に起因する複雑な臨床症候群であり、左室充満圧を過剰に上昇させることなしに身体の代謝需要に見合うには不十分な全身灌流を引き起こす。特定の症状、例えば、呼吸困難および疲労、および兆候、例えば、体液貯留を特徴とする。本明細書で使用する「慢性心不全」または「うっ血性心不全」または「CHF」は交換可能に、進行性または持続性の心不全に関する。CHFの一般的な危険因子は、高齢、糖尿病、高血圧、および太りすぎを含む。CHFは、左室の収縮機能により、駆出分画が低下したHFまたは駆出分画が保たれたHF(HFrEFおよびHFpEF)に大きく分類される。「心不全」という用語は、心臓が完全に停止したことまたは停止していることを意味するのではなく、心臓が、健康な人での正常よりも弱いことを意味する。いくつかの場合、状態は軽度であり、運動すると目立つ症状を引き起こし、他の場合、状態はより重度であり、安静中でさえ生命を脅かす場合もある症状を引き起こす。慢性心不全の最も一般的な症状は、息切れ、疲れ、脚および足首のむくみ、胸痛、およびせきを含む。いくつかの実施形態では、本開示の方法が、CHF(例えば、HFrEF)を患うまたはCHF(例えば、HFrEF)の危険性がある対象において、CHF(例えば、HFrEF)の1つまたは複数の症状を減少、予防、または改善する。いくつかの実施形態では、本開示が、CHF、およびCHFをもたらすことがある状態を処置する方法を提供する。
【0080】
[0097]本明細書で使用する「急性心不全」または「非代償性心不全」は交換可能に、心臓が、正常充満圧において、身体の要求に見合うペースで血液を圧送することができないことを反映する兆候および症状の悪化の症候群に関する。AHFは典型的に、数日から数週にわたって徐々に発症してから、その兆候または症状の重症度ゆえに緊急治療または救急治療を必要とする代償不全になる。いくつかの場合、AHFは、心臓の収縮機能もしくは拡張機能における一次的障害、または異常な静脈血管収縮もしくは動脈血管収縮の結果であるが、概して、容量負荷を含む複数の要素の相互作用である。AHF患者の大多数は、慢性心不全(CHF)の代償不全を有し、したがって、CHFの病態生理、症状(presentation)および診断に関する考察のかなりは、AHFの理解に直接に関連する。他の場合、AHFは、心臓への損傷、または心機能を損なう事象、例えば、急性心筋梗塞、重度の高血圧、心臓弁の損傷、心拍リズムの異常、心臓の炎症または感染、毒素および投薬に起因する。いくつかの実施形態では、本開示の方法が、AHFを患うまたはAHFの危険性がある対象において、AHFの1つまたは複数の症状を減少、予防、または改善する。いくつかの実施形態では、本開示が、AHF、およびAHFをもたらすことがある状態を処置する方法を提供する。いくつかの場合、AHFは、心筋梗塞と関連する虚血の結果である。
【0081】
[0098]本明細書で使用する「対象」または「個体」という用語は、任意の動物、例えば、飼い慣らした動物、動物園の動物、またはヒトに関する。いくつかの場合、「対象」または「個体」は、イヌ、ネコ、ウマ、家畜、動物園の動物またはヒトのような哺乳類である。その代わりにまたは組み合わせて、対象または個体は、飼い慣らした動物、例えば、トリ、ペット、または家畜である。「対象」および「個体」の具体的な例は、心臓疾患または心臓障害を有する個体、および心臓障害関連の特徴または症状、例えば、不整脈原性右室心筋症(ARVC)または不整脈原性心筋症(ACM)を有する個体を含むがそれらに限定されない。
【0082】
[0099]本開示の実践は、異なる指定がない限り、当該分野の技術範囲内にある、組織培養、免疫学、分子生物学、細胞生物学、および組換えDNAの従来技術を使用する。例えば、Sambrook and Russell編(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版;the series Ausubel等編(2007)Current Protocols in Molecular Biology;the series Methods in Enzymology(Academic Press, Inc., N.Y.);MacPherson等(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press);MacPherson等(1995)PCR 2:A Practical Approach;Harlow and Lane編(1999)Antibodies、A Laboratory Manual;Freshney(2005)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第5版;Gait編(1984)Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号明細書;Hames and Higgins編(1984)Nucleic Acid Hybridization;Anderson(1999)Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins編(1984)Transcription and Translation;IRL Press(1986)Immobilized Cells and Enzymes;Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos編(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides編(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker編(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press、London);Herzenberg等編(1996)Weir’s Handbook of Experimental Immunology;Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、第3版(2002)Cold Spring Harbor Laboratory Press;Sohail(2004)Gene Silencing by RNA Interference:Technology and Application(CRC Press);Sell(2013)Stem Cells Handbookを参照。
【0083】
[00100]文脈が異なる指定をしない限り、本明細書に記載される開示の種々の特徴は、任意の組合せで使用可能であると明確に意図される。さらに、本開示は同じく、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の特徴または特徴の組合せが除外可能または省略可能であることを予定する。例示に、本明細書が、複合体は成分A、BおよびCを含むと記載する場合、A、BもしくはCのいずれか、またはその組合せが、単一または任意の組合せで省略および除外されてもよいことを明確に意図する。
【0084】
[00101]範囲を含めすべての数字表示、例えば、pH、温度、時間、濃度および分子量は近似であり、1.0または0.1の単位で(+)または(-)に変動し、必要に応じて、またはその代わりに、+/-15%、その代わりに10%、その代わりに5%、その代わりに2%の差異で変動する。常に明示的には記載されないが、すべての数字表示は、「約」という用語が先行すると理解される。そのような範囲形式は、便宜上および簡潔さのために使用されると理解され、範囲の限界と明示的に特定される数値を含むと同様に、その範囲内に含まれる個々の数値または部分範囲も、各々の数値および部分範囲が明示的に特定されているかのように含むと柔軟に理解されるものである。例えば、約1~約200の範囲内の割合は、明示的に言及される、約1および約200の限界を含むと同時に、個々の割合、例えば、約2、約3、および約4、ならびに部分範囲、例えば、約10~約50、約20~約100等も含むと理解されるものである。同じく、常に明示的には記載されないが、本明細書に記載される試薬は、単に例示的にすぎず、その均等物が当該技術分野では公知であると理解される。
【0085】
[00102]本明細書および添付クレームで使用する単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、複数の指示対象も含むと明記する。したがって、例えば、「1つの心筋細胞」への言及は、複数の心筋細胞を含む。
【0086】
[00103]同じく、本明細書で使用する「および/または」は、関連して列挙される項目の1つまたは複数のあらゆる可能な組合せに関し、かつそれらを含むと同様に、代替的に解釈される場合(「または」)、組合せの欠如に関し、かつ組合せの欠如を含む。
【0087】
[00104]「投与(Administration)」および「投与(administering)」等は、本明細書で提供される遺伝子治療用ベクターまたはその組成物との関連で使用する場合、非心筋細胞へのin vitro投与、非心筋細胞へのin vivo投与、または医療従事者による対象への投与もしくは対象による自己投与による対象への投与を含むこともある直接投与、および/または本明細書で提供される遺伝子治療用ベクターを含む組成物の処方行為であることもある間接投与の両方に関する。本明細書で細胞に関して使用する場合、組成物の、細胞への導入に関する。典型的に、有効量を投与し、その量は頻繁に、当業者によって特定される必要がある。任意の適切な投与法が、使用に予定される。いくつかの場合、例えば、細胞培養培地への遺伝子治療用ベクターの添加、または心外傷の部位へのin vivo注入により、該遺伝子治療用ベクターを細胞に投与する。いくつかの場合、対象への投与は、例えば、血管内注射、心筋内送達等により達成される。
【0088】
[00105]本明細書で使用する「心細胞」という用語は、心機能、例えば、心収縮または血液供給を提供するか、または心臓の構造の維持に役立つ、心臓に存在する任意の細胞に関する。本明細書で使用する心細胞は、心臓の心外膜、心筋、または心内膜中に存在する細胞を含む。心細胞はさらに、例えば心筋細胞、および心臓血管構造の細胞、例えば、冠動脈または冠静脈の細胞を含む。心細胞の他の非限定的な例は、心筋、血管、および心細胞支持構造を構成する、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、心筋幹細胞、心筋前駆細胞、心臓刺激伝導細胞(cardiac conducting cell)、および心臓ペースメーカー細胞を含む。いくつかの場合、心細胞は、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)または人工多能性幹細胞を含む、幹細胞に由来する。
【0089】
[00106]本明細書で使用する「cardiomyocyte(心筋細胞)」または「cardiomyocytes(心筋細胞)」という用語は、骨格筋細胞とは対照的に、哺乳類の心臓に天然に見出されるサルコメア含有横紋筋細胞に関する。心筋細胞は、特化分子、例えば、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、心臓α-アクチニンのようなタンパク質の発現を特徴とする。本明細書で使用する「心筋細胞」という用語は、任意の心筋細胞亜集団または心筋細胞亜型、例えば、心房心筋細胞、心室心筋細胞およびペースメーカー心筋細胞を含む総称である。
【0090】
[00107]「培養」または「細胞培養」という用語は、人工的なin vitro環境での細胞の維持を意味する。「細胞培養系」は、本明細書で、細胞の集団を単層としてまたは懸濁液中で増殖させる培養条件に関して使用する。「培養培地」は、本明細書で、細胞の培養、成長または増殖用の栄養液に関して使用する。培養培地は、いくつかの場合、機能特性、例えば、これに限定されないが、特定の状態(例えば、多能性状態、静止状態等)に細胞を維持する能力、または細胞を成熟させる能力、例えば、いくつかの実施形態では、前駆細胞の、特定の系統の細胞(例えば、心筋細胞)への分化を促進する能力を特徴とする。
【0091】
[00108]本明細書で使用する「発現(expression)」または「発現する(express)」という用語は、核酸またはポリヌクレオチドがmRNAに転写される過程および/または転写されたmRNAが、続いてペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳される過程に関する。該ポリヌクレオチドまたは核酸が、ゲノムDNAに由来する場合、発現が、真核細胞中でのmRNAのスプライシングを含むこともある。いくつかの場合、遺伝子のレベルの発現は、細胞試料または組織試料中でのmRNAまたはタンパク質の量の測定により特定される。
【0092】
[00109]本明細書で使用する「発現カセット」は、タンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドもしくは核酸を含む、または宿主細胞中で該ポリヌクレオチドを発現するように構成された核酸を含むDNAポリヌクレオチドである。典型的に、該ポリヌクレオチドの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメント、およびエンハンサーを含む特定の調節エレメントの制御下に置かれている。そのようなポリヌクレオチドは、該調節エレメント(例えば、プロモーター)に「作動可能に連結している(operably linked to)」または「作動可能に連結している(operatively linked to)」と言われる。
【0093】
[00110]「薬学上許容される」という表現は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織との接触に用いるために適切である、過剰の毒性、炎症、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症を伴わない、妥当な利益/リスク比に応じたコンパウンド、材料、組成物、および/または剤形に言及するために使用する。
【0094】
[00111]「処置(Treatment)」、「処置(treating)」および「処置する(treat)」は、疾患、障害または状態に対する、該疾患、障害、状態および/またはそれらの症状の有害または任意の他の望ましくない効果を軽減または改善するための、薬剤を用いた行為と定義される。
【0095】
[00112]本明細書で使用する「有効量」等という用語は、所望の生理学的転帰(例えば、疾患の処置)を誘導するために十分な量に関する。有効量は、1回または複数回の投与、適用または投薬によることもある。そのような送達は、個々の単位剤形を使用する期間、組成物のバイオアベイラビリティ、投与の経路等を含む多数の変数に依存する。しかしながら、任意の特定対象に対する組成物(例えば、遺伝子治療用ベクター)の特定量は、使用する特定薬剤の活性、年齢、体重、健康全般、性別、および対象の食事、投与の時間、排出の速度、組成物組合せ、処置される特定疾患の重症度、および投与の形を含む様々な要素に依存すると理解される。
【0096】
[00113]本明細書でポリペプチドまたは核酸の配列に関して使用する「その均等物」という用語は、比較ポリペプチドまたは比較核酸の配列と異なるが本質的特性(例えば、生物活性)を維持するポリペプチドまたは核酸に関する。ポリヌクレオチドの典型的なバリアントは、ヌクレオチド配列の点で他の比較ポリヌクレオチドと異なる。該バリアントのヌクレオチド配列における変化は、該比較ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させることもある。いくつかの場合、ヌクレオチド変化は、該比較配列によってコードされるポリペプチドにおけるアミノ酸の置換、欠失、付加、融合、およびトランケーションをもたらす。概して、差異は限定されているため、該比較ポリペプチドおよび該バリアントの配列は、全体的に酷似し、多くの領域では同一である。
【0097】
[00114]本明細書で使用する「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は交換可能に使用され、かつデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー型に関する。ポリヌクレオチドの非限定的な例は、線状および環状の核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、およびプライマーを含む。本明細書で使用する、遺伝子名が先行する「ポリヌクレオチド」または「核酸」という単語(例えば「PKP2核酸」)は、対応するタンパク質(例えば「PKP2タンパク質」)をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0098】
[00115]「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、かつ遺伝的にコードされた(genetically coded)アミノ酸、遺伝的にコードされていない(non-genetically coded)アミノ酸、化学的もしくは生化学的に修飾されたアミノ酸、または誘導体化アミノ酸、および修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含むこともある、任意の長さのアミノ酸のポリマー型に関する。この用語は融合タンパク質を含み、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種および同種のリーダー配列を有する融合(N末端メチオニン残基を含む、または含まない)、免疫学的なタグ付きタンパク質等を含むがこれに限定されない。本明細書で使用する、遺伝子名が先行する「タンパク質」という単語(例えば「PKP2タンパク質」)は、天然タンパク質またはその機能的バリアントのいずれか一方に関する。「天然タンパク質」は、好ましくはそれ用にベクターが意図される生物(例えば、ヒト、げっ歯類、霊長類、または獣医目的の動物)の遺伝子のゲノムコピーによって、該遺伝子の機能的アイソフォームまた機能的対立遺伝子変異のいずれかでコードされるタンパク質である。
【0099】
[00116]本明細書で使用する、タンパク質の「機能的バリアント」または「バリアント」は、例えば該タンパク質の、他の要素と共同してデスモソームの形成を誘導する能力を含む、該タンパク質の機能的属性を維持するアミノ酸の任意の数の置換、挿入、トランケーション、または内部欠失を有するバリアントである。いくつかの場合、機能的バリアントは、計算的に同定される、例えば、保存的置換のみを有するバリアント、またはin vitroもしくはin vivoのアッセイを使用して実験的に同定される。
【0100】
[00117]本明細書で使用する、ポリヌクレオチド配列の「コドンバリアント」は、比較ポリヌクレオチドと同じタンパク質をコードする、1つまたは複数の同義コドン置換を有するポリヌクレオチド配列である。同義コドンの選択は、当業者の技能の範囲内にあり、符号化は、遺伝暗号として公知である。いくつかの場合、様々な計算ツール(GENSMART(商標)コドン最適化ツールがwww.genscript.comから入手可能)を使用してコドン最適化を行う。概して、コドン最適化は、異種系における、例えば、ヒトのコード配列を細菌系で発現させる場合に、タンパク質の発現を高めるために使用する。「コドンバリアント」という用語は、そのやり方で最適化される配列、ならびに他の目的、例えば、CpGアイランドおよび/または潜在的開始部位の除去ために最適化される配列の両方を含む。
【0101】
[00118]「ベクター」という用語は、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞へと送達されるポリヌクレオチドまたはタンパク質を含む、高分子または分子の複合体に関する。ベクターは、修飾RNA、脂質ナノ粒子(DNAもしくはRNAのいずれかを封入)、トランスポゾン、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルス、レトロウイルス、組込み型レンチウイルス(LVV)、または非組込み型LVVであることもある。したがって、本明細書で使用する「ベクター」という用語は、形質転換に使用される裸のポリヌクレオチド(例えばプラスミド)と同様に、ポリヌクレオチドを細胞へと送達するために使用する任意の他の組成物を含み、細胞に形質導入できるベクターおよび細胞のトランスフェクションに有用なベクターを含んだ。
【0102】
[00119]本明細書で使用する「ウイルスベクター」という用語は、典型的に核酸分子の導入もしくは細胞のゲノムへの組込みを促進するウイルス由来核酸エレメントを含む核酸分子、または核酸の導入を媒介するウイルス粒子のいずれか一方に関する。ウイルス粒子は、典型的に種々のウイルス成分を含み、さらには核酸に加えて細胞成分を含むこともある。
【0103】
[00120]「遺伝子修飾」という用語は、新しい核酸(すなわち、細胞に対して外来の核酸)の導入に続いて、細胞内で誘導される永続的または一過性の遺伝子変化に関する。遺伝子変化は頻繁に、心細胞のゲノムへの、新しい核酸の組込みにより、または染色体外エレメントとしての新しい核酸の一過性または安定性の維持により成し遂げられる。細胞が真核細胞である場合、永続的な遺伝子変化は頻繁に、細胞のゲノムへの核酸の導入により達成される。適切な遺伝子修飾法は、ウイルス感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション等を含む。
【0104】
[00121]図1は、心臓デスモソームが細胞をつなぎ合わせることを示す(Brodehl等、2018;Moncayo-ArlandiおよびBrugada、2017)。上図中の赤色線は、サルコメアおよび他の細胞小器官を安定化させるネットワークを形成する、中間径フィラメントであるデスミンを描く。デスモソームのEM写真を左端に示す。
【0105】
[00122]図2は、ARVC疾患の徴候および可能な疾患機序の概要を示す。
[00123]図3A~3Cは、iPSCM中でのPKP2の急性サイレンシングの8日目の結果が、著しい細胞表現型を示したことを示す。図3Aおよび図3C中、PKP2は緑色、DSPは赤色、および核は青色である。図3B中、サルコメアタンパク質Actn2は緑色で、MyBPCはマゼンタ色である。
【0106】
[00124]図4は、様々な用量のsiPKP2に応じて、サイレンシングの8日目に、DSP膜局在の定量測定が、他のデスモソームのタンパク質であるPKGとの共局在により見積もられたことを示す。
【0107】
[00125]図5は、PKP2がサイレンシングされた細胞では、サイレンシングの対照、siNegと比べて、PKP2のサイレンシングが、主に不溶性画分中に検出される、デスモソームからのDSPタンパク質の総量の低下をもたらすことを示す免疫ブロットを例証する。
【0108】
[00126]図6Aは、AAV-PKP2遺伝子治療用のベクターマップを示す。図6Bは、iPSCMへのAAV媒介遺伝子送達を使用した、PKP2導入遺伝子の発現による、PKP2サイレンシングの10日目およびAAV形質導入の8日目における、DSP膜局在の回復を示す。GFPが、flagタグ付きPKP2と共発現する。Flagタグは青緑色、DSPは赤色、および核は青色である。図6Cは、iPSC心筋細胞中でのPKP2サイレンシング後の総DSPの発現のAAV-PKP2導入遺伝子回復を示す。免疫蛍光シグナルでの総DSP強度の定量を、PKP2サイレンシング後にAAV-PKP2導入遺伝子レスキューの存在下または非存在下に示す。
【0109】
[00127]図7A~7Bは、PKP2サイレンシング後に、AAV PKP2導入遺伝子発現が、iPSCMの収縮速度をレスキューしたことを示す。図7Aは、PKP2サイレンシング、AAV形質導入、および収縮性記録スケジュールを示す。図7Bは、PKP2サイレンシング後に、AAV-PKP2導入遺伝子が収縮速度を部分的に回復することを示す。核の数(nuclear count)に対して正規化した収縮速度を、PKP2サイレンシング後のAAV-PKP2導入遺伝子レスキューの存在下または非存在下に示す。
【0110】
[00128]図8は、ヒトおよびマウスのPKP2αの第2世代AAV発現カセットの略図を示す。左表は、発現カセット中のすべてのエレメントを示す。右図は、マウスおよびヒトの発現カセットを示す。
【0111】
[00129]図9A図9Bは、第2世代AAV-hPKP2αが、iPSC心筋細胞中でのPKP2サイレンシング後の収縮速度を部分的にレスキューする予備的結果を示す。図9Aは、ヒトPKP2α導入遺伝子が、iPSC心筋細胞中で用量依存性に発現したことを示す。図9Bは、PKP2サイレンシング後に、ヒトPKP2α導入遺伝子が、30K MOIにおいて収縮速度の部分的な回復を示したことを示す。
【0112】
[00130]図10は、12週齢C57BL/6マウス中での第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの発現解析を示す。上図は、HBSS対照マウス中での内在性マウスPKP2αの発現、および2つのAAV9注入用量、それぞれ1E13および5E13における、内在性および形質導入されたマウスPKP2α両方の発現を示す。下図は、形質導入された、いくぶん大きいホモログであるヒトPKP2αの、対応する発現解析を示す。
【0113】
[00131]図11A~11Gは、12週齢のC57BL/6マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験を示す。図11Aは、AAV9注入前の体重、およびAAV9注入から3週間後の体重を示す。図11Bは、マウスまたはヒトのPKP2αのいずれかのAAV9注入から3週間後に、駆出分画の百分率により心機能を測定したことを示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径の両方により測定したLV構造を示す。図11E~11Gは、QRS時間(図11E)、QT時間(図11F)、およびP/R振幅(図11G)により測定した電気生理学的活性を示す。
【0114】
[00132]図12は、タモキシフェン誘導後のPKP2-cKOマウスのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。曲線は、PKP2-cKOマウスが、誘導から3週間後に減少し始め、(7匹のうちの)1匹のみが6週間後まで生存したことを示す。
【0115】
[00133]図13A~13Bは、PKP2-cKOマウスの右室(RV)拡張型心筋症を示す。図13A(左図)は、タモキシフェン誘導から3週間後のPKP2-cKOマウスにおける、対照マウスと比べたRV拡張末期内径(RVIDd)の増加を例証する画像を示す。図13A(右図)は、対照マウスと比べた、PKP2-cKOマウスにおける経時的なRVIDdのグラフを示す。図13B(左図)は、PKP2-cKOマウスにおけるRV面積の増加を例証する画像を示す。RV面積は点線で示され、面積が、誘導後1週間から、3週間、および4週間において増加することを示す。図13B(右図)は、対照マウスと比べた、PKP2-cKOマウスにおける経時的なRV面積のグラフを示す。
【0116】
[00134]図14A~14Bは、対照と比べた、PKP2-cKOマウスの左室(LV)拡張型心筋症の発現を示す。図14A(左図)は、対照と比べた、PKP2-cKOマウスにおけるLV収縮末期内径(RVIDs)およびLV拡張末期内径(LVIDd)の増加の画像を示す。LVIDsは、左側に黄色線で示され、LVIDdは、右側に赤色線で示される。図14A(右図)は、対照マウスと比べた、PKP2-cKOマウスにおけるLVIDsおよびLVIDdの経時的な増加を示すグラフを示す。図14Bは、経時的な駆出分画パーセントにより測定した、対照マウスと比べたLVパフォーマンスのグラフを示す。
【0117】
[00135]図15は、対照と比べたPKP2-cKOマウスの重度の電気生理学的表現型の発現、特にPKP2-cKOマウスにおけるQRS時間の延長およびP/R振幅比の上昇を示す。上のパネルは、対照(上図)およびPKP2-cKOマウス(下図)の例示的心電図を示す。対照と比べてPKP2-cKOマウスでは、P波の振幅の増加が示される。心電図はさらに、対照と比べたPKP2-cKOマウスにおけるR波の振幅の減少を示す。さらに、QRS時間が、PKP2-cKOマウスでは対照と比べて延長している。下のパネルは、対照と比べたPKP2-cKOマウスにおけるQRS時間の増加およびP/R振幅の増加に関するグラフを示す。
【0118】
[00136]図16A~16Cは、線維症遺伝子、組織リモデリング遺伝子、および心不全マーカーの発現の上昇を示す。図16Aは、対照と比べたPKP2-cKOマウスのRVおよびLVでのPKP2 RNA発現(上図)ならびにデスモソームおよびCx43のタンパク質発現(下図)を示す。PKP2-cKOマウスは、LVおよびRVの両方において、対照と比べて約半分のPKP2の発現を示す。下のパネルは、PKP2、DSP、およびデスモソーム内のPKG、およびギャップ結合内のCx43に関して、LVタンパク質レベルの低下を示す免疫ブロットを示す。図16Bは、線維症遺伝子:TGFβ1、Col1a1およびCol3a1;ならびに組織リモデリング遺伝子:Timp1およびMmp2の、対照と比べたPKP2-cKOマウスでの発現の上昇を示す。ここでは、TGFβ1およびTimp1の発現が、対照とPKP2-cKOマウスとの間で、RVおよびLVの両方で上昇している。Col1a1およびCol3a1も同じく、対照と比べてPKP2-cKOマウスでは大幅に上昇しており、RVと比べてLVでは発現の上昇がいくぶん大きい。Mmp2は、対照と比べてPKP2-cKOマウスでは上昇することが示され、LVと比べてRVでは発現の上昇がいくぶん大きい。Mmp9は、対照とPKP2-cKOマウスとの間で、発現の差異は示されなかった。図16Cは、対照マウスと比べたPKP2-cKOマウスでの、心不全マーカー、NPPAおよびNPPBの発現の上昇を示す。NPPAおよびNPPBの発現の両方、PKP2-cKOマウスでは、RVと比べてLVにおいて、上昇がいくぶん大きい。
【0119】
[00137]図17は、PKP2-cKO ARVCマウスモデルにおける遺伝子治療としてのPKP2の有効性を評価するための実験計画を示す。計6つの個々の処置群が試験に含まれ、すべての群を、3日間続けてタモキシフェンで処置した。それらは以下である:WTマウス6匹をHBSS緩衝液で処置;PKP2-cKO ARVCマウス10匹をHBSS緩衝液で処置;PKP2-cKO ARVCマウス10匹を、タモキシフェン誘導の3週間前に3E13vg/kgのAAV9:ヒトPKP2で処置;PKP2-cKO ARVCマウス10匹を、タモキシフェン誘導の3週間前に5E13vg/kgのAAV9:マウスPKP2で処置;PKP2-cKO ARVCマウス10匹を、タモキシフェン誘導直後に5E13vg/kgのAAV9:マウスPKP2で処置;およびPKP2-cKO ARVCマウス10匹を、タモキシフェン誘導から1週間後に5E13vg/kgのAAV9:マウスPKP2で処置。体重、心エコー検査、およびEKGのベースライン読取りは、タモキシフェン誘導前に収集した。タモキシフェン誘導後のすべての読取りは、Bモード、Mモード(RV、LV)の心エコー検査、および構造(LV内径)、ならびに30分ECGを含めて、不整脈を定量および電気生理学的パラメータを評価するために毎週記録した。
【0120】
[00138]図18Aは、ヒトおよびマウスのPKP2αのAAV発現カセットの略図を示す。AAV-pTnT600-mPKP2-WPREは、4199塩基対を有し、5’末端および3’末端の逆方向末端反復(ITR)、pcTNTプロモーター、それに続くマウスPKP2αのコード配列、続くWPRE、ならびに3’ITR前方の3’末端にあるbGHを含む。AAV-pTnT600-hPKP2op-WPREは、4324塩基対を有し、5’末端および3’末端の逆方向末端反復(ITR)、pcTNTプロモーター、それに続くコドン最適化された、ヒトPKP2αのコード配列、続くWPRE、ならびに3’ITR前方の3’末端にあるbGHを含む。図18Bは、AAV9:PKP2で処置した野生型マウスに由来するマウスおよびヒトPKP2αのタンパク質発現の免疫ブロットを示す(図10の全ブロットを参照)。緩衝液処置マウスが左パネルにある。中央パネルが、kg当たり1E13ウイルスゲノムで処置したマウスに由来する免疫ブロットを示し、上図の免疫ブロットではAAV9:mPKP2を用い、下図の免疫ブロットではAAV9:hPKP2(コドン最適化)を用いた。右パネルが、kg当たり5E13ウイルスゲノムで処置したマウスに由来する免疫ブロットを示し、上図の免疫ブロットではAAV9:mPKP2を用い、下図の免疫ブロットではAAV9:hPKP2(コドン最適化)を用いた。
【0121】
[00139]図19は、AAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。緩衝液で処置したマウスを赤色線で示し、タモキシフェン誘導から3週間後に減少し始め、タモキシフェン誘導から6週間後では、生存確率がほぼゼロである。処置群のすべては、タモキシフェン誘導から6週間後に90%以上の生存確率を有する。
【0122】
[00140]図20A~20Cは、RVおよびLVの拡張の低下ならびに心機能の維持における、PKP2-cKOマウスのAAV9:PKP2処置の有効性を示す。図20Aは、AAV9:PKP2処置マウスにおける駆出分画の改善を例証するグラフを示す。このグラフ中、緩衝液処置PKP2-cKOマウスは、野生型およびAAV9:PKP2処置マウスの両方と比べて、駆出分画の34%の低下を有する。図20Bは、野生型およびAAV9:PKP2処置マウスと比べて上昇している赤色線で示される緩衝液処置マウスと比べた、AAV9:PKP2処置マウスにおけるRV拡張の低下を例証するグラフを示す。図20Cは、LVIDd(上図)およびLVIDs(下図)における改善を例証するグラフを示す。各処置群を別個の棒グラフで例証し、野生型および緩衝液処置PKP2-cKOマウスを左側に示す。
【0123】
[00141]図21A~21Bは、AAV:PKP2で処置されたPKP2-cKOマウスのECGパラメータの改善を示す。図21Aは、対照、ならびにAAV9:PKP2および緩衝液で処置したPKP2-cKOマウスの例示的な未処理のECGトレースを示す。緩衝液処置した対照およびPKP2-cKOマウスのECGトレースを、上側の2パネルに示す。AAV9:PKP2処置PKP2-cKOマウスは、下側の2つのトレースに示す。図21Bは、緩衝液での処置と比べたAAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスにおけるP/R比(上側グラフ)、QT時間(中央グラフ)、およびQRS時間(下側グラフ)の改善を例証するグラフを示す。どの場合も、緩衝液処置PKP2-cKOマウスは、処置マウスおよび野生型マウスに対する外れ値である。
【0124】
[00142]図22A~22Bは、PKP2-cKOマウスにおける不整脈でのAAV9:PKP2処置による改善を示す。図22A(上図)は、不整脈の重症度の分類の表を示す。グレード5はS-VT/VF/心臓突然死を意味し;4はNSVTを意味し;3は>100PVC、2連発および3連発を意味し;2は>50、<100のPVCを意味し;1は<50のPVC、PJC、およびAVブロックを意味し;0は<10のPVCを意味する。図22A(下図)は、AAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスの不整脈スコアの、対照と比べた改善をまとめるグラフを示す。緩衝液処置PKP2-cKOマウスは、タモキシフェン誘導から3週間後に始まる心室性不整脈スコアの上昇を伴う。図22Bは、AAV9:PKP2で処置したPKP2-cKOマウスにおける不整脈の重症度の、対照と比べた改善を示す分布グラフを示す。野生型マウスを一番左側の棒グラフに示し、続いて平均スコア3を示す緩衝液処置PKP2-cKOマウスを示す。処置マウスを4つの棒グラフで表し、それらは、平均して、劇的なスコアの低下を示す。
【0125】
[00143]図23は、PKP2-cKO ARVCマウスモデルを用いて、遺伝子治療としてのヒトPKP2の有効性を評価するために使用した実験計画を示す。PKP2-cKOマウスを、3日間続けてタモキシフェンで処置してから、種々の用量のAAV9:hPKP2またはHBSSで処置した。
【0126】
[00144]図24A~24Dは、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2遺伝子治療処置の結果を示す。図24Aは、駆出分画の結果を示し、対照マウスは高い駆出分画を示し、その駆出分画は、タモキシフェン誘導により低下し、かつHBSS処置により影響を受けない。AAV9:hPKP2の用量を増加させた処置は、処置マウスでの駆出分画を著しく高める(P<0.05)。図24Bは、右室サイズの結果を示す。対照マウスは、比較的小さいRVサイズを有し、そのRVサイズは、タモキシフェン誘導により増大し、かつHBSS処置により影響を受けない。AAV9:hPKP2処置は、用量関連(dose related)のRVサイズの低下を示す(低い方の2用量はP<0.05、最高の用量はP<0.01)。図24Cは、LVIDdにより測定したLV拡張を示す。図24Dは、LVIDsにより測定したLV拡張を示す。AAV9:hPKP2処置は、LVIDd(P<0.05)およびLVIDs(P<0.05、1e14用量の場合のみ)で測定して、左室拡張の増大を著しく低下させた。
【0127】
[00145]図25は、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2遺伝子治療処置結果を、QT時間(上図)、P/R比(中央図)、および不整脈スコア(下図)に関して示す。AAV9:hPKP2処置は、タモキシフェン誘導から4週間後に、PKP2-cKOマウスでは、赤色バーで示すHBSSで処置したPKP2-cKOマウスと比べて、QT時間の著しい減少(P<0.05)、P/R比の低下傾向、および不整脈の低下傾向を示した。
【0128】
[00146]図26A~26Bは、右室(図26A)および左室(図26B)での心不全マーカー、線維症マーカー、および組織リモデリングマーカーの発現の低下における、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置の結果を示す。PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置は、タモキシフェン誘導から4週間後に、右室および左室の両方で、心不全マーカー、線維症遺伝子および組織リモデリング遺伝子の発現の低下において有効性を示した。PKP2の内在性および導入遺伝子のmRNAレベルを、WT対照、PKP2-cKO、およびAAV9:hPKP2形質導入した心臓のぞれぞれで評価した。NPPAおよびNPPBは心不全マーカーである。Col1a1およびCol3a1は線維症遺伝子である。Timp1は組織リモデリング遺伝子である。
【0129】
[00147]図27A~27Bは、タモキシフェン誘導から4週間後の右室および左室の両方での線維症発症の低下における、PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置の結果を示す。図27Aは、筋肉染色を赤色で、および線維症のトリクローム染色を青色で示す。黄色矢印は、PKP2-cKOマウスの心臓における著しい線維症の領域を強調する。図27Bは、対照、ならびにAAV9:hPKP2による処置を伴うおよび伴わないPKP2-cKOマウス中でのコラーゲン陽性組織を定量するグラフを示す。未処置PKP2-cKOマウスは、最も大量のコラーゲン陽性組織を有し、1e13で処置したマウスは、約半分だけ低下したレベルを有する。3e13または1e14で処置したマウスは、対照マウスに近いコラーゲンレベルを有する。
【0130】
[00148]図28A~28Bは、可溶性画分(図28A)および不溶性画分(図28B)中でのPKP2および他のデスモソームタンパク質の発現を示す。可溶性画分中にはDSPは検出されない。注釈:このマウスは心エコー検査前に死亡が認められた。**PKP2タンパク質強度は、同じウエスタンブロット上でのチューブリン強度に対して正規化。見やすくするため、ここでは2つのチューブリンブロットのうちの1つのみを示す。PKP2は、2つのバンド、内在性マウスPKP2およびより大きいヒトPKP2として示される。
【実施例
【0131】
[00149]以下の実施例は、本開示の種々の実施形態を説明する目的のために与えられており、任意のやり方で本開示を限定するとは意図されない。本実施例は、本明細書に記載される方法と共に、好ましい実施形態をここで代表し、例示的であり、かつクレームの範囲に対する限定とは意図されない。当業者であれば、クレームの範囲により定義される本開示の範囲内に含まれる、その中での変更および他の使用に想到する。
【0132】
実施例1:PKP2欠失の細胞モデル
[00150]発想の最初の証明として、siRNAを使用して、PKP2の欠失の細胞モデルを創生した。PKP2を、人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPSCM)中で欠失させた。siRNAによる、PKP2の急性サイレンシングは、siPKP2および陰性対照siRNAの両方を含む、Invitrogen社から購入したsiRNAを使用して行った(4390843 Silencer Select陰性対照No.1 siRNA;4392420 Assay Id s531202 Silencer Select Pre-Designed siRNA #1;4392420 Assay Id s531203 Silencer Select Pre-Designed siRNA#2;4392420 Assay Id s531204 Silencer Select Pre-Designed siRNA #3;および4392420 Assay Id s10585 Silencer Select Pre-Designed siRNA #4)。このサイレンシングは、図3Aの免疫蛍光が示すように、8日目に、細胞膜からDSPを消失させた。DSP膜局在を定量測定し(図4)、DSP-PKG共局在の著しい低下を例証した。サルコメア密度の低下が同じく、免疫蛍光により観察された(図3B)。さらに、パターン化されたiPSCMにおける細胞コンパクションの錯綜配列が、免疫蛍光により認められた(図3C)。
【0133】
[00151]siPKP2 iPSCM溶解物の免疫ブロットを行い、デスモソームからのDSPタンパク質の総量の低下が、主に、PKP2がサイレンシングされた細胞の不溶性画分で検出された(図5)。
【0134】
実施例2:AAV9-PKP2はPKP2欠失表現型をレスキューする
[00152]形質導入細胞を同定するためのGFPを伴う、600 nt心臓トロポニン(TnT)プロモーターによって駆動されるAAV9バリアントCR9-01 flagタグ付きPKP2発現の送達により(図6A)、PKP2サイレンシングされたiPSCM中での膜へのDSPの再局在が認められ(図6B)、その際、デスモソーム構造が回復された。PKP2導入遺伝子は、siRNA媒介性サイレンシングに抵抗するためにコドン最適化された。技術的な困難さゆえ、どれだけのDSPが、細胞間結合が起こりデスモソームが存在する膜へと特異的に局在するかを正確に定量することは不可能であった。したがって、膜に局在したDSPの量の代わりに、細胞DSPの総強度を定量した。
【0135】
[00153]PKP2導入遺伝子が、心筋細胞の収縮性を機能的に回復し得ることを実証するために、SONYイメージングによりiPSCMの明視野ベースの収縮を記録し、かつビデオは、DANA Solutionsのパルス解析ソフトウェアにより解析した。実験時系列を図7Aに示す。この実験では、iPSCM細胞中での内在性PKP2の発現を下げるために、1日目にsiRNAを使用した。siRNA陰性対照またはsiPKP2のいずれか一方に関して、2つのsiRNA濃度、5nMおよび1.25nMを使用した。転写物をサイレンシングするために、2つのsiPKP2 #3および#4を組み合わせた。3日目に、欠失させた細胞に形質導入するためにAAV PKP2を使用し、PKP2導入遺伝子の発現に応じて、iPSCM中で収縮速度のレスキューが認められた(図7B)。AAV形質導入から3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、および8日目に収縮性を記録した。収縮速度は、3つの96ウェルプレート、および5nMおよび1.25nMのsiRNAの両方において、それぞれAAV 300K MOIまたは100K MOIのいずれか一方で形質導入した細胞から平均化した。速度値はさらに、それぞれ300Kまたは100K MOIに対応する平均の核の数に対して正規化した。
【0136】
実施例3:第2世代PKP2α AAV9を用いた処置
[00154]ヒトまたはマウスのPKP2αの発現用に、第2世代AAV発現カセットを開発した。該第2世代カセットは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)およびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(bGHポリ(A))を含んだ。該第2世代ベクターを図8に示す。
【0137】
[00155]導入遺伝子レスキュー試験は、PKP2サイレンシングしたiPSC心筋細胞中で行った。予備的結果は、第2世代AAV-hPKP2αが、iPSC心筋細胞中でのPKP2サイレンシング後の収縮速度を部分的にレスキューしたことを示唆した。図9Aは、異なるMOI(感染多重度、各細胞に感染するウイルス粒子の平均数)により、ヒトPKP2α導入遺伝子を、iPSC心筋細胞中で用量依存性に発現させた結果を示す。PKP2およびDSP(デスモプラキン)の発現は、AAV形質導入から3日後の細胞の可溶性画分および不溶性画分の両方において評価した。図9Bは、ヒトPKP2α導入遺伝子が、30K MOIにおいて、スチューデントのt検定により示されるように、AAV PKP2導入遺伝子なしの<0.0001のp値と比べて0.0103のp値により、PKP2サイレンシング後の収縮速度の部分的なレスキューを示したことを示す。
【0138】
[00156]12週齢C57BL/6マウス中での第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの発現解析を調査する実験を行った。その実験の結果を図10に示す。後眼窩静脈内に、AAV9-PKP2αを、それぞれ1E13および5E13vg/kgで投与した。心臓LV組織を、注入から3.5週間後に採取した。LV組織の可溶性画分を、ウエスタンブロットで解析した。上図は、HBSS対照マウス中での内在性マウスPKP2αの発現、および2つのAAV9注入用量、それぞれ1E13および5E13における、内在性および形質導入されたマウスPKP2α両方の発現を示す。下図は、形質導入された、いくぶん大きいホモログであるヒトPKP2αの、対応する発現解析を示す。このヒトホモログは、コドン最適化されている。AAV注入から3.5週間後に、心エコー図により、有害な心イベントは認められなかった。
【0139】
[00157]図11A~11Gは、12週齢のC57BL/6マウスでの、第2世代AAV9のヒトおよびマウスのPKP2αの予備的発現安全性試験が、AAV注入から3週間後に、心エコー図により、いずれかの有害な心イベントを示さなかったことを示す。後眼窩静脈内に、AAV9-PKP2αを、それぞれ1E13および5E13vg/kgで投与した。図11Aは、AAV9注入前の体重、およびAAV9注入から3週間後の体重を示す。図11Bは、マウスまたはヒトのPKP2αのいずれかのAAV9注入から3週間後に、駆出分画の百分率により測定した心機能を示す。図11Cおよび図11Dは、拡張末期内径および収縮末期内径の両方により測定したLV構造を示す。図11E~11Fは、QRS時間、QT時間、およびP/R振幅により測定した電気生理学的活性を示す。
【0140】
実施例4:PKP2-cKO ARVCマウスモデルの特徴づけ
[00158]およそ3月齢の野生型マウス4匹およびPKP2-cKO ARVCマウス、αMYHC-Cre-ER(T2),PKP2fl/fl7匹に、タモキシフェン(20mg/mlトウモロコシ油100μl/マウス(およそ75mg/kg))を、4日間続けて腹腔内注射した。体重、心エコー検査、およびEKGのベースライン読取りは、タモキシフェン誘導前に収集した。タモキシフェン誘導後のすべての読取りは、Bモード、Mモード(RV、LV)の心エコー検査、および構造(LV内径)、ならびに30分ECGを含めて、不整脈を定量および電気生理学的パラメータを評価するために毎週記録した。心臓および肺を含む末端組織(terminal tissue)を、試験の終了時に収集した。
【0141】
[00159]マウスを用いて生存時間解析を行った(図12)。カプラン・マイヤー生存曲線は、タモキシフェン誘導から3週間後に、PKP2-cKOマウスの生存の急激な減少を示し、1匹のみがタモキシフェン誘導から6週間に達した。誘導から3週間後、マウスは、突然死、浮腫、活性の低下、およびイソフルランに対する耐性の低下を含む重度の臨床症状を示した。
【0142】
[00160]PKP2-cKOマウスは、タモキシフェン誘導から早くも1週間後にRV拡張型心筋症を発現した。図13Aの左図は、タモキシフェン誘導から3週間後に、PKP2-cKOマウスが、RV拡張末期内径(RVIDd)の増加を発現したことを示す。図13Aの右図は、タモキシフェン誘導の4週間中の、体重に対して正規化したRVIDdの連続的な増加をまとめる。図13Bの左図は、RV面積の毎週の増加の画像を示し、RV拡張を示唆する。図13Bの右図は、RV面積が、体重に対して正規化して増加することをまとめる。P値:スチューデントのt検定。エラーバー:s.e.m.対照と比較してP<0.05、**P<0.01。
【0143】
[00161]PKP2-cKOマウスは、タモキシフェン誘導後にLV拡張型心筋症を発現した。図14Aの左図は、タモキシフェン誘導から3週間後に、PKP2-cKOが、LV収縮末期内径(RVIDs)およびLV拡張末期内径(RVIDd)の増加を発現したことを示す。図14Aの右図は、タモキシフェン誘導の4週間中の、体重に対して正規化したLVIDsおよびLVIDdの連続的な増加をまとめる。図14Bは、駆出分画%により測定したLVパフォーマンスが、タモキシフェン誘導から2週間後に急激に減少したことを示す。P値:スチューデントのt検定。エラーバー:s.e.m.対照と比較してP<0.05、**P<0.01、***P<0.01。
【0144】
[00162]PKP2-cKOマウスは、QRS時間の延長およびP/R振幅比の上昇を発現し、心室伝導障害および心室内ブロックを示唆する。図15の上図は、タモキシフェン誘導から3週間後に、PKP2-cKOマウスが、P波振幅の増加およびR波振幅の減少を発現したことを示す。図15の左下のグラフは、QRS時間の連続的な増加を示し、右下のグラフは、タモキシフェン誘導の4週間中の、P/R振幅比の上昇を示す。P値:スチューデントのt検定。エラーバー:s.e.m.対照と比較してP<0.05、**P<0.01、***P<0.01。
【0145】
[00163]PKP2-cKOマウスは、自発性心室性期外収縮(PVC)を発現した。表2は、30分間の連続記録中に得られたデータを示し、1週時はPVCがほぼ不在であるのに対して、2週時は、すべてのPKP2-cKOマウスにおいて時折の期外収縮が検出された。PVCの発生は、後の時間にはさらに増加し、マウスの大半が100超のPVCを示す。3週時を起点に、PKP2-cKOマウスにおいて心臓突然死が認められた。
【0146】
【表2】
【0147】
[00164]PKP2-cKOマウスは、線維症遺伝子、組織リモデリング遺伝子、および心不全マーカーの発現の上昇を示した。図16Aの上図は、野生型およびPKP2-cKOマウスのRVおよびLVの両方におけるPKP2 mRNAの発現を示す。赤色および青色の点が、個々のマウスを表す。図16Aの下図は、PKP2、DSP、およびデスモソーム内のPKG、およびギャップ結合内のCx43に関して、LVタンパク質レベルの低下の代表的な免疫ブロットを示す。図16Bは、PKP2-cKOマウスが、線維症遺伝子、TGFβ1、Col1a1およびCol3a1、ならびに組織リモデリング遺伝子、Timp1およびMmp2の発現の上昇を示したことを示す。図16Cは、PKP2-cKOマウスが、心不全マーカー、NPPAおよびNPPBの発現の上昇を示したことを示す。
【0148】
実施例5:PKP2-cKO ARVCマウスモデルにおけるPKP2遺伝子治療の有効性
[00165]図17は、PKP2-cKO ARVCマウスモデルを用いて、遺伝子治療標的としてのPKP2の有効性を評価するために使用した実験計画を示す。計6つの個々の処置群が試験に含まれ、すべての群を、3日間続けてタモキシフェンで処置した。処置群は次のとおり:HBSS緩衝液で処置した野生型マウス6匹;HBSS緩衝液で処置したPKP2-cKO ARVCマウス10匹;タモキシフェン誘導の3週間前に3E13vg/kgのAAV9:ヒトPKP2で処置したPKP2-cKO ARVCマウス10匹;タモキシフェン誘導の3週間前に5E13vg/kgのAAV9:マウスPKP2で処置したPKP2-cKO ARVCマウス10匹;タモキシフェン誘導直後に5E13vg/kgのAAV9:マウスPKP2で処置したPKP2-cKO ARVCマウス10匹;およびタモキシフェン誘導から1週間後に5E13vg/kgのAAV9:マウスPKP2で処置したPKP2-cKO ARVCマウス10匹。
【0149】
[00166]体重、心エコー検査、およびEKGのベースライン読取りは、タモキシフェン誘導前に収集した。タモキシフェン誘導後のすべての読取りは、Bモード、Mモード(RV、LV)の心エコー検査および構造(LV内径)、ならびに30分ECGを含めて、不整脈を定量および電気生理学的パラメータを評価するために毎週記録した。末端組織(心臓および肺)を、試験の終了時に採取する。
【0150】
[00167]AAV9:PKP2タンパク質の発現が、野生型マウスのLV心臓組織中で検出された。図18Aは、ヒトおよびマウスのPKP2αの第2世代AAV発現カセットの略図を示す。図18Bは、AAV9:PKP2の後眼窩注射から3週間後におけるマウスおよびヒトのPKP2の発現を示すために行った代表的な免疫ブロットを示す(全ブロットは図10に示す)。計5匹の8週齢のC57BL6野生型マウスに、各処置に関して、HBSS、1E13vg/kg、または5E13vg/kgを注入した。
【0151】
[00168]カプラン・マイヤー生存曲線は、タモキシフェン誘導から6週間後に、すべてのAAV9:PKP2処置群において、AAV9:PKP2が、PKP2-cKOマウスの寿命を延長したことを示した。ヒトおよびマウスのPKP2の両方、処置されたPKP2-cKOマウスの寿命の延長において有効性を実証した。図19中、赤色線は、HBSS緩衝液で処置されたPKP2-cKOマウスであり、タモキシフェン誘導から3週間後に急激な低下を示す。それに対して、すべてのAAV9-PKP2処置マウスは、タモキシフェン誘導から20週間後まで生存した。
【0152】
[00169]PKP2-cKOマウスのAAV9:PKP2処置は、RVおよびLVの拡張の低下ならびに心機能の維持における有効性を示した。図20Aは、AAV9:PKP2処置が、HBSS処置マウス(赤色線で示す)と比べて、駆出分画パーセントの低下を妨げたことを示す。図20Bは、AAV9:PKP2処置が、毎週、体重に対して正規化したRV面積により評価して、RV拡張の低下を示したことを示す。図20Cは、タモキシフェン誘導から4週間後に、AAV9:PKP2処置が、LV拡張末期内径(LVIDd)(上側グラフ)およびLV収縮末期内径(LVIDs)(下側グラフ)の両方により測定して(いずれも体重で正規化)、PKP2-cKOマウスのLV拡張を著しく低下させたことを示す。エラーバー:s.e.m.対照と比較してP<0.05、**P<0.01、***P<0.01。
【0153】
[00170]AAV9:PKP2処置はさらに、PKP2-cKOマウスのECGパラメータを著しく改善した。図21Aは、AAV9:PKP2処置したPKP2-cKOマウスの心臓の電気生理学的挙動の著しい改善を示した未処理のECGトレースの例を示す。図21Bは、AAV9:PKP2処置が、赤色線で示される、HBSSで処置したPKP2-cKOマウスと比べて、P/R比(上側グラフ)、QT時間(中央グラフ)、およびQRS時間(下側グラフ)の著しい改善を示したことを示す。
【0154】
[00171]AAV9:PKP2処置はさらに、PKP2-cKOマウスでの不整脈を著しく軽減した。図22A(上図)は、麻酔PKP2-cKOマウスにおける30分の記録中の自発性不整脈の重症度を分類するレベルチャートの表を示す。心室性期外収縮(IPVC)、房室結節性期外収縮(PJC)、AVブロック(房室ブロック)、非持続性心室頻拍(NSVT)、上室性頻拍(S-VT)、および心室細動。図22A(下図)は、レベルチャートに基づく平均スコアをまとめ、AAV9:PKP2処置したPKP2-cKOマウスでの不整脈の改善を示す。図22Bは、タモキシフェン誘導から4週間後における各処置群での個々のマウスの分布を示す。AAV9:PKP2処置は、赤色バーで示される、HBSS緩衝液で処置したPKP2-cKOマウスと比べた場合に不整脈スコアの改善で示されるように、不整脈イベントの頻度および重症度の両方の低下を示した。
【0155】
実施例6:PKP2-cKO ARVCマウスモデルにおいてAAV9:hPKP2を使用したPKP2遺伝子治療有効性試験
[00172]PKP2-cKO ARVCマウスモデルを使用して、遺伝子治療標的としてのヒトPKP2の有効性を特定した。計5つの個々の処置群を試験に含めた。すべての群を、3日間続けてタモキシフェンで処置した。群は以下を含んだ:HBSS緩衝液で処置した野生型マウス4匹;HBSS緩衝液で処置したPKP2-cKO ARVCマウス4匹;タモキシフェン誘導から1週間後に1E13vg/kgのAAV9:ヒトPKP2で処置したPKP2-cKO ARVCマウス4匹;タモキシフェン誘導から1週間後に3E13vg/kgのAAV9:ヒトPKP2で処置したPKP2-cKO ARVCマウス3匹;およびタモキシフェン誘導から1週間後に1E14vg/kgのAAV9:ヒトPKP2で処置したPKP2-cKO ARVCマウス3匹。体重、心エコー検査、およびEKGのベースライン読取りは、タモキシフェン誘導前に収集した。タモキシフェン誘導後のすべての読取りは、Bモード、Mモード(RV、LV)の心エコー検査、および構造(LV内径)、ならびに30分ECGを含めて、不整脈を定量および電気生理学的パラメータを評価するために毎週記録した。タモキシフェン誘導から4週間後に、末端心臓組織を採取した。図23は、実験計画を示す。
【0156】
[00173]PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置は、タモキシフェン誘導から4週間後に、右室(RV)および左室(LV)の拡張の低下ならびに心機能の維持における有効性を示した。図24A~24Dは、このアッセイの結果を示す。AAV9:hPKP2処置は、HBSS処置マウスと比べて、駆出分画パーセントの低下を妨げた(図24A)。AAV9:hPKP2処置は、体重に対して正規化したRV面積により評価して、RV拡張の低下を示した(図24B)。AAV9:hPKP2処置は、LV拡張末期内径(LVIDd)(図24C)およびLV収縮末期内径(LVIDs)(図24D)の両方により測定して(いずれも体重で正規化)、PKP2-cKOマウスのLV拡張を著しく低下させた。P値は、スチューデントのt検定により特定した、エラーバー:s.e.m.対照と比較してP<0.05、**P<0.01。
【0157】
[00174]AAV9:hPKP2処置は、タモキシフェン誘導から4週間後に、PKP2-cKOマウスでは、HBSSで処置したPKP2-cKOマウスと比べて、QT時間の著しい減少(図25の上図)、P/R比の低下傾向(図25の中央図)、および不整脈の低下傾向(図25の下図)を示した。P値は、スチューデントのt検定により特定した、エラーバー:s.e.m.対照と比較してP<0.05。この試験に含めたマウスの数が少ないため、P/R比および不整脈スコアは、統計的有意性を達成しなかった。さらに、HBSS処置群中の1匹のマウスは、タモキシフェン誘導から4週間後に、ECG記録後、人道的エンドポイントに達した。1e13用量群中の1匹のマウスは、心エコー検査前に死亡が判明した。全体的に、この試験の結果は、最適有効量が、3e13vg/kgであることを示唆する。
【0158】
[00175]PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置は、タモキシフェン誘導から4週間後に、右室(図26A)および左室(図26B)の両方で、心不全マーカー、線維症遺伝子および組織リモデリング遺伝子の発現の低下において有効性を示した。PKP2の内在性および導入遺伝子のmRNAレベルを、野生型対照、PKP2-cKO、およびAAV9:hPKP2形質導入した心臓のぞれぞれで評価した。NPAAおよびNPPBは心不全マーカーである。Col1a1およびCol3a1は線維症遺伝子である。Timp1は組織リモデリング遺伝子である。
【0159】
[00176]PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置は、タモキシフェン誘導から4週間後に、右室および左室の両方で、線維症発症の低下における有効性を示した(図27A)。筋肉染色を赤色で、および線維症のトリクローム染色を青色で示す。矢印は、PKP2-cKOマウスの心臓における著しい線維症の領域を強調する。図27Bではコラーゲンを定量し、AAV9:hPKP2による処置が、コラーゲンをほぼ対照レベルに低下させたことを示す。
【0160】
[00177]PKP2-cKOマウスのAAV9:hPKP2処置は、ヒトPKP2導入遺伝子の用量依存性の発現を示した。PKP2、ならびに他のデスモソームタンパク質DSPおよびPKGの総発現レベルを、タモキシフェン誘導から4週間後に、LV組織の可溶性画分(図28A)および不溶性画分(図28B)の両方において評価した。可溶性画分中にはDSPは検出されない。注釈:このマウスは心エコー検査前に死亡が認められた。**PKP2タンパク質強度は、同じウエスタンブロット上でのチューブリン強度に対して正規化。見やすくするため、図28A~Bでは2つのチューブリンブロットのうちの1つのみを示す。PKP2は、2つのバンド、内在性マウスPKP2およびより大きいヒトPKP2として示される。
【0161】
[00178]本開示の好ましい実施形態を、本明細書に示して記載したが、そのような実施例は、単に例として提供されるのみであることが当業者には明らかである。当業者であれば、本開示を逸脱することなく、多数の変形形態、変更および代用に想到する。本明細書に記載される実施形態の種々の代案が使用され得ると理解される。以下のクレームが本開示の範囲を定義する、かつそれらのクレームの範囲内の方法および構造ならびにその均等物が網羅されると意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図22A
図22B
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
図25
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
【配列表】
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