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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】医療用穿刺装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20240109BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61M5/158 500B
A61M5/14 540
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023000456
(22)【出願日】2023-01-05
(62)【分割の表示】P 2019022453の分割
【原出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2023026611
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 宏人
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-161336(JP,A)
【文献】特開2016-112201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 5/14
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性樹脂で構成されており遠近方向に延在している外筒と、
該外筒の内腔に配置されており前記外筒に対して前記遠近方向に移動可能である内筒と、
該内筒の遠位部においてその内腔内に固定されており該内腔に連通している針管と、
を準備する工程と、
前記外筒を加熱し、樹脂中の残留応力を取り除く工程と、
前記加熱された外筒の内腔に、前記針管が挿通されている前記内筒を配置する工程と、
前記外筒を、前記外筒の長さ120cmにつき1回以上巻回された状態で収納容器に収納する工程と、
前記収納容器に収められた前記外筒を加熱し、前記収納容器内での巻回方向に従った湾曲形状を付与する工程と、
を有している医療用穿刺装置の製造方法であって、
前記湾曲形状を付与する工程の後、前記針管は、遠位端部において、前記針管の遠近方向に対して傾斜している開口縁を有しており、該開口縁は最遠位部と最近位部とを有しており、前記最遠位部は前記外筒の内腔内であって前記外筒の巻回中心側に位置しており、前記最近位部は前記外筒の内腔内であって前記外筒の巻回外方側に位置している医療用穿刺装置の製造方法。
【請求項2】
前記外筒を収納容器に収納する工程において、前記外筒は、前記外筒の長さ120cmにつき5回以下巻回された状態で前記収納容器に収められる請求項1に記載の医療用穿刺装置の製造方法。
【請求項3】
前記外筒は、遠位側の開口部における内径が、前記外筒の遠位端から3cm近位側における内径よりも小さい請求項1または2に記載の医療用穿刺装置の製造方法。
【請求項4】
前記湾曲形状を付与する工程の後、医療用穿刺装置の前記外筒を前記収納容器から取り出した状態において、前記外筒に対して前記内筒を遠位方向に前進させると、前記針管の前記最遠位部が前記外筒の前記開口部に当接することなく前記外筒の外部に露出する請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用穿刺装置の製造方法。
【請求項5】
前記湾曲形状を付与する工程の後、医療用穿刺装置の前記外筒を前記収納容器から取り出した状態において、前記外筒に対して前記内筒を遠位方向に前進させると、前記針管の前記最近位部は、前記外筒の前記開口部に当接した後に前記外筒の外部に突出する請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用穿刺装置の製造方法。
【請求項6】
前記湾曲形状を付与する工程の後、医療用穿刺装置の前記外筒を前記収納容器から取り出した状態において、前記外筒に対して前記内筒を遠位方向に前進させると、前記針管の前記最近位部が前記外筒の前記開口部に当接することなく前記外筒の外部に露出する請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用穿刺装置の製造方法。
【請求項7】
前記収納容器が管状体であり、該管状体は、該管状体の長さ120cmにつき1回以上巻回している請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用穿刺装置の製造方法。
【請求項8】
巻回されている前記外筒には、巻回の内側となる箇所を示す印または巻回の外側となる箇所を示す印のうち少なくとも一方が付されている請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用穿刺装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内管腔の組織部位に液体を注射するための医療用穿刺装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下で胃壁や腸壁等にできたポリープ下の粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸容器を注射針で注入し、ポリープを隆起させた後、スネアワイヤー等でポリープを捕捉、絞扼し、電気ナイフ等の高周波処置具を用いてポリープを切除することがある。生理食塩水等の注入には、内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネルを通って患者の体内管腔の処置対象部位まで送達される穿刺装置が使用される。穿刺装置は、針と、針を保持するインナーチューブ(内筒)と、針およびインナーチューブを処置対象部位まで送達するまで収容するためのアウターチューブ(外筒)から構成される。アウターチューブの遠位側への針とインナーチューブの移動を規制するために、アウターチューブの遠位端部の内径は狭くなっている。しかし、穿刺を容易にするために、一般に針の先端が斜めにカットされている結果、針の先端は針の長軸中心からずれているため、体腔内に配置された内視鏡の屈曲した鉗子チャンネルの中を通過した穿刺装置の針をアウターチューブの遠位側の開口から突出させるときにアウターチューブの内径が狭まっている部分に針が接触して突き刺さり、針がアウターチューブの外に出ないことがある。そこで、アウターチューブからの針の突出をスムーズに行うための方法が特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平3-64653号公報
【文献】実開昭63-003801号公報
【文献】特開2005-312828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された注射具は熱加工により内筒管を癖付けするため、内筒管の形状が不必要に変化する恐れがある。特許文献2に記載された注射器具では注射針を湾曲加工しているため、注射した時に湾曲部が組織内に入り込み、組織を押し広げて傷つけるおそれがある。また、内腔が狭い注射針を湾曲させることで針内を通る生理食塩水等の液体の流れに乱流が発生し、フロー性能が低下する。特許文献3に記載された穿刺針では、針の肉厚分しか針先端の位置をずらすことができない。そこで、本発明は針管を針管収納用のアウターチューブからの針の突出をスムーズに行うことができる医療用穿刺装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の外筒が収納容器に収められている医療用穿刺装置の一実施態様は、可撓性樹脂で構成されており遠近方向に延在している外筒と、外筒の内腔に配置されており外筒に対して遠近方向に移動可能である内筒と、内筒の遠位部においてその内腔内に固定されており内腔に連通している針管と、を有し、外筒が収納容器に収められている医療用穿刺装置であって、外筒は、外筒の長さ120cmにつき1回以上巻回された状態で収納容器に収められており、針管は遠位端部において、針管の遠近方向に対して傾斜している開口縁を有しており、開口縁は最遠位部と最近位部とを有しており、最遠位部は外筒の内腔内であって外筒の巻回中心側に位置しており、最近位部は外筒の内腔内であって外筒の巻回外方側に位置していることに特徴を有する。
【0006】
外筒が巻回された状態で収納容器に収められた後に取り出されると、内筒より太い外筒が弾性変形により内筒より強く元の収納状態の形状に戻ろうとする結果、外筒内の内筒および針管が全体として外筒の長軸中心から巻回外方側に偏心した位置に配置される。しかし、本発明では、外筒を収納容器内に収納している状態で針管の開口縁の最遠位部は外筒の巻回中心側に位置しており、開口縁の最近位部は外筒の巻回外方側に位置している。このため、外筒を収納容器から取り出した後、針管を外筒から突出させるときに、針管の開口縁の最遠位部が外筒に当接しにくくなり、針管を外筒の外に素早く突出させることができる。
【0007】
外筒は、外筒の長さ120cmにつき5回以下巻回された状態で収納容器に収められていることが好ましい。このように巻回回数を設定することで、医療用穿刺装置の歪み発生や負荷応力の付与を抑制することができる。
【0008】
外筒は、遠位側の開口部における内径が、外筒の遠位端から3cm近位側における内径よりも小さいことが好ましい。このように外筒の内径を設定することにより、内筒および針管が外筒の開口部から脱落することを防ぐことができる。
【0009】
外筒を収納容器から取り出した状態において、外筒に対して内筒を遠位方向に前進させると、針管の最遠位部が外筒の開口部に当接することなく外筒の外部に露出することが好ましい。これにより、外筒を取り出した状態において内筒が遠位方向に移動しても、針管の開口縁の最遠位部が外筒の開口部に当接しないため、針管や外筒の損傷を防ぐことができる。
【0010】
外筒を収納容器から取り出した状態において、外筒に対して内筒を遠位方向に前進させると、針管の最近位部は、外筒の開口部に当接した後に外筒の外部に突出することが好ましい。針管の開口縁の最近位部を外筒の開口部に当接するように配置することによって、開口縁の最遠位部が外筒の長軸中心の近傍に配置されやすくなり、最遠位部が外筒の開口部に当接しにくくなる。
【0011】
外筒を収納容器から取り出した状態において、外筒に対して内筒を遠位方向に前進させると、針管の最近位部が外筒の開口部に当接することなく外筒の外部に露出することが好ましい。このように針管の開口縁の最近位部が開口部に当接しないことにより、針管を外に素早く突出させることができる。
【0012】
収納容器が管状体であり、管状体は、管状体の長さ120cmにつき1回以上巻回していることが好ましい。このように巻回回数を設定することで、収納容器内に収められる外筒、内筒および針管の歪み発生や負荷応力の付与を抑制することができる。
【0013】
巻回されている外筒には、巻回の内側となる箇所を示す印または巻回の外側となる箇所を示す印のうち少なくとも一方が付されていることが好ましい。これにより、収納時に針管の先端をどの方向に向けるべきかがわかりやすくなる。
【0014】
外筒を収納容器内に収納している状態において、外筒に対して内筒を遠位方向に前進させると、針管の最遠位部が外筒の開口部に当接することが好ましい。これにより、外筒の収納時に針管の先端が誤って外筒の外部に出ることを防ぐことができる。
【0015】
本発明の医療用穿刺装置の製造方法の一実施態様は、上記製造方法は、可撓性樹脂で構成されている外筒を加熱し、樹脂中の残留応力を取り除く工程と、加熱された外筒の内腔に、針管が挿通されている内筒を配置する工程と、外筒を、外筒の長さ120cmにつき1回以上巻回された状態で収納容器に収納する工程と、収納容器に収められた外筒を加熱し、収納容器内での巻回方向に従った湾曲形状を付与する工程と、を含む点に要旨を有する。樹脂中の残留応力を取り除く工程を実施することにより、残留応力による外筒の変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の医療用穿刺装置によれば、外筒が巻回された状態で収納容器に収められた後に取り出されると、内筒より太い外筒が弾性変形により内筒より強く元の収納状態の形状に戻ろうとする結果、外筒内の内筒および針管が全体として外筒の長軸中心から巻回外方側に偏心した位置に配置される。しかし、本発明では、外筒を収納容器内に収納している状態で針管の開口縁の最遠位部は外筒の巻回中心側に位置しており、開口縁の最近位部は外筒の巻回外方側に位置している。このため、外筒を収納容器から取り出した後、針管を外筒から突出させるときに、針管の開口縁の最遠位部が外筒に当接しにくくなり、針管を外筒の外に素早く突出させることができる。
本発明の医療用穿刺装置の製造方法によれば、残留応力による外筒の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の一形態に係る医療用穿刺装置の平面図(一部断面図)を表す。
図2図1に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図であって、外筒を収納容器内に収納した状態で、針管の開口縁の最遠位部が外筒の開口部よりも近位側に配置されていることを表している。
図3図2に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図の変形例であって、外筒を収納容器内に収納した状態で、内筒を遠位方向に前進させても針管の開口縁の最遠位部が外筒の開口部に当接しないことを表している。
図4図2に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図の変形例であって、外筒を収納容器内に収納した状態で、内筒を遠位方向に前進させると針管の開口縁の最遠位部が外筒の開口部に当接することを表している。
図5図2に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図の変形例であって、外筒を収納容器から取り出した状態で、針管の開口縁の最遠位部が外筒の開口部よりも近位側に配置されていることを表している。
図6図2に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図の変形例であって、外筒を収納容器から取り出した状態で、内筒を遠位方向に前進させても針管の開口縁の最遠位部が外筒の開口部に当接しないことを表している。
図7図2に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図の変形例であって、外筒を収納容器から取り出した状態で、内筒を遠位方向に前進させると針管の開口縁の最近位部が外筒の開口部に当接した後で外筒の外部に突出することを表している。
図8図2に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図の変形例であって、外筒を収納容器から取り出した状態で、内筒を遠位方向に前進させると針管の開口縁の最近位部が外筒の開口部に当接することなく外筒の外部に露出することを表している。
図9図2に示した医療用穿刺装置の遠近方向に沿った断面図の変形例を表す。
図10図2に示した医療用穿刺装置の遠近方向に沿った断面図の他の変形例を表す。
図11図2に示した医療用穿刺装置の遠近方向に沿った断面図のさらに他の変形例を表す。
図12図11に示した医療用穿刺装置のXII-XII線に沿った断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0019】
1.医療用穿刺装置
図1図2を参照して、医療用穿刺装置の基本構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る医療用穿刺装置の平面図(一部断面図)を表し、図2は、図1に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図を表している。なお、発明の理解を容易にするため、図1では収納容器内に収められている外筒、内筒および針管を実線で示しており、図2では収納容器を省略して記載している。図2の上側が巻回外方側、下側が巻回中心側、右側が遠位側、左側が近位側を示している。
【0020】
本発明において、医療用穿刺装置は、内視鏡下手術において体腔内の組織部位に液体を注入するために用いられる装置であり、例えば内視鏡の鉗子口を介して体腔内に挿入されるものである。注入する液体としては、生理食塩水やヒアルロン酸溶液の他に、薬剤や細胞を含む液体であってもよい。医療用穿刺装置1は、外筒10と、内筒20と、針管30と、収納容器40とを有している。
【0021】
医療用穿刺装置1において、近位側とは外筒10の延在方向に対して使用者、つまり術者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側を指す。また、外筒10の近位側から遠位側への方向、または遠位側から近位側への方向を遠近方向と称する。また、医療用穿刺装置1の内方とは、外筒10の径方向において外筒10の長軸中心に向かう方向を指し、外方とは、内方とは反対方向の放射方向を指す。
【0022】
外筒10は、体内管腔の治療非対象組織部位や内視鏡の鉗子チャンネル内を傷つけないように内筒20および針管30を収納するために筒状に形成された部材である。外筒10は、可撓性樹脂で構成されており遠近方向に延在している。外筒10が可撓性樹脂で構成されていることにより、外筒10を収納容器40内に収納している状態では収納容器40の形状に応じて、外筒10を収納容器40から取り出した状態では体内管腔の形状に応じて、外筒10を弾性変形させることができる。
【0023】
図2に示すように、外筒10の内腔11は遠近方向に延在しており、外筒10の遠位側に設けられている開口部12を介して外部と連通している。対象組織に針管30を穿刺する際には、外筒10の開口部12から針管30を突出させる。なお、開口部12は、外筒10の遠位端10aを含む部分に形成されていることが好ましい。
【0024】
内筒20は、外筒10の内腔11に配置されており外筒10に対して遠近方向に移動可能なものである。内筒20の内腔21は、生理食塩水等の液体を流すための流路として機能する。内筒20の内腔21は、内筒20の遠位端部において針管30の内腔31と連通している。
【0025】
外筒10と内筒20は、円筒状、楕円筒状、または多角筒状であることが好ましい。外筒10と内筒20の形状は、同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。外筒10と内筒20はそれぞれ場所によって、例えば周方向の位置によって厚さが異なっていてもよいが、周方向において均一な厚さを有していることが好ましい。外筒10の肉厚と内筒20の肉厚は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、外筒10と内筒20は、1つの部材から構成されていてもよく、複数の部材から構成されていてもよい。
【0026】
内筒20は樹脂から構成されていることが好ましく、中でも可撓性樹脂から構成されていることがより好ましい。これにより、外筒10と同様に内筒20も収納容器40や体内管腔の形状に応じて弾性変形しやすくなる。
【0027】
外筒10および内筒20を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。外筒10と内筒20を構成する樹脂は異なっていても同じであってもよい。
【0028】
針管30は、内筒20の遠位部においてその内腔21内に固定されており、内腔21に連通している。針管30は、遠位側に針の先端が位置するように内筒20に固定される。針管30の先端を組織に穿刺できるように、針管30の先端(遠位端)は内筒20の遠位端よりも遠位側に配置されている。針管30は、内部に生理食塩水等の液体を流すことができるように円管状等の管状に形成されている。針管30を組織の対象部位(例えば、粘膜下層)に穿刺することにより、生理食塩水等の液体を注入することができる。液体が注入された組織は隆起する。隆起した組織をスネアワイヤー等の処置具で捕捉、絞扼し、組織を切除する、または電気ナイフ等の高周波処置具を用いて組織を切除することができる。なお、針管30が固定される内筒20の遠位部は、内筒20の遠近方向の中央よりも遠位側であり、内筒20の遠位端を含む部分であることが好ましい。
【0029】
内筒20の内側面と針管30の外側面は互いに直接接合されていてもよく、接着層を介して間接的に接合されていてもよい。内筒20の内側面と針管30の外側面は、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、シリコーン系の接着剤または熱溶着により固定することができる。
【0030】
図示していないが、内筒20の遠位端部において内筒20と針管30の間に隙間ができる場合、内筒20の遠位端部が封止されていることが好ましい。これにより、内筒20と針管30の隙間が埋められるため、内筒20の遠位側から液体が漏れることを防ぐことができる。例えば、医療用穿刺装置1には内筒20の遠位端部を封止している先端部材を設けることができる。また、内筒20の内側面と針管30の外側面を接合する接着層によって、内筒20と針管30の間の隙間が封止されていてもよい。
【0031】
針管30の内腔での液体の流れを良好にするために、針管30の長軸方向と垂直な断面の形状は、円形状または楕円形状であることが好ましい。
【0032】
針管30を構成する材料としては、外筒10および内筒20の好ましい材料として挙げた樹脂材料のほか、ステンレスやNi-Ti合金などの金属材料を用いることができる。
【0033】
収納容器40は、医療用穿刺装置1の運搬、販売または保管中に外筒10、内筒20および針管30が損傷しないように保護する容器である。このため、外筒10は収納容器40に収められている。医療用穿刺装置1の保護のため、さらに収納容器40が袋状または箱状の包装容器に収められていてもよい。
【0034】
収納容器40は、外筒10を巻回した状態で収納できればその形状は特に限定されないが、例えば管状体、袋状体、または箱状体に形成することができる。図1に示すように収納容器40が巻回されている管状体であれば、管状体の内腔に外筒10を挿通することによって外筒10を巻回した状態で収納することができる。これにより、外筒10の外表面どうしの接触を防ぐことができる。管状体は、任意の平面または曲面上で巻回されて渦巻き状に形成されていてもよい。収納容器40が袋状体または箱状体であれば、巻回されている外筒10をそのままの状態で収めることができる。外筒10は、外筒10の内腔に針管30、内筒20が配置された状態で収納容器40に収納される。
【0035】
収納容器40が管状体であり、管状体は、管状体の長さ120cmにつき1回以上巻回していることが好ましく、管状体の長さ120cmにつき3回以上巻回していることがより好ましい。管状体の巻回回数の上限は特に限定されないが、例えば5回以下とすることができる。このように巻回回数を設定することで、収納容器40内に収められる外筒10、内筒20および針管30の歪み発生や負荷応力の付与を抑制することができる。
【0036】
収納容器40が管状体である場合、管状体の遠近方向の長さは、外筒10の遠近方向の長さよりも長いことが好ましい。これにより、外筒10を遠近方向全体にわたって適切に保護することができる。
【0037】
収納容器40が管状体である場合、結束具により管状体の一部と他部が結束されていることが好ましい。結束具によって管状体の延在方向を規制することができるため、収納容器40に収納されている外筒10をさらに包装容器に収めやすくなる。
【0038】
収納容器40が袋状体または箱状体である場合、外筒10は、結束具により外筒10の一部と他部が結束されていることが好ましい。結束具によって外筒10の延在方向を規制することができるため、収納容器40内に外筒10を収めやすくなる。
【0039】
収納容器40や包装容器を構成する材料は、外筒10または内筒20の好ましい材料として挙げた樹脂材料やその他の樹脂材料、紙、不織布、布などを用いることができる。外筒10の歪み発生や変形を防ぐためには、収納容器40は外筒10よりも剛性が高いことが好ましい。
【0040】
図1に示すように、外筒10は、外筒10の長さ120cmにつき1回以上巻回された状態で収納容器40に収められており、針管30は遠位端部において、針管30の遠近方向に対して傾斜している開口縁32を有しており、開口縁32は最遠位部32aと最近位部32bとを有しており、最遠位部32aは外筒10の内腔11内であって外筒10の巻回中心5側に位置しており、最近位部32bは外筒10の内腔11内であって外筒10の巻回外方側に位置している。外筒10が巻回された状態で収納容器40に収められた後に、取り出されると、収納容器40に収納される前の状態に戻ろうとする結果、外筒10内の内筒20および針管30が全体として外筒10の長軸中心から巻回外方側に偏心した位置に配置される。なお、外筒10の収納容器40に収納される前の状態とは、収容状態の湾曲形状よりは湾曲の緩い湾曲形状や、略直線状の形状である。本発明では、外筒10を収納容器40内に収納している状態で針管30の開口縁32の最遠位部32aは外筒10の巻回中心5側に位置しており、開口縁32の最近位部32bは外筒10の巻回外方側に位置している。このため、外筒10を収納容器40から取り出した後、針管30を外筒10から突出させるときに、針管30の開口縁32の最遠位部32が外筒10に当接しにくくなり、針管30を外筒10の外に素早く突出させることができる。
【0041】
外筒10の巻回回数は特に制限されないが、外筒10は、外筒10の長さ120cmにつき5回以下巻回された状態で収納容器40に収められていることが好ましく、3回以下巻回された状態で収納容器40に収められていることがより好ましい。このように巻回回数を設定することで、医療用穿刺装置1の歪み発生や負荷応力の付与を抑制することができる。
【0042】
外筒10の内径は、遠近方向において均一であってもよいが、外筒10は遠位端に向かって内径が小さくなっている区間を有していてもよい。例えば、外筒10は、遠位側の開口部12における内径が、外筒10の遠位端から3cm近位側における内径よりも小さいことが好ましい。このように外筒10の内径を設定することにより、内筒20および針管30が外筒10の開口部12より遠位側へ移動することを規制することができる。図2に示すように、外筒10はその遠位端部に遠位端に向かって先細りになっているテーパー部13が形成されていることがより好ましい。テーパー部13の最小内径は、内筒20の遠位端の外径よりも小さく、針管30の外径よりも大きいことが好ましい。テーパー部13が形成されていることにより、外筒10の開口部12の最大内径は、外筒10の内腔の最大内径よりも小さくなっていることが好ましい。
【0043】
次に、図3図12を参照して、医療用穿刺装置の構成の変形例について説明する。図3図11は、図2に示した医療用穿刺装置の遠位端部の遠近方向に沿った断面図の変形例を表し、図12図11のXII-XII線に沿った断面図を表している。図2と同様に、図3図12では収納容器を省略しており、各図面の上側が巻回外方側、下側が巻回中心側を示している。また、図3図4は、外筒を収納容器内に収納した状態を、図5図12は外筒を収納容器から取り出した状態を示している。
【0044】
図3に示すように、外筒10を収納容器40内に収納している状態において、外筒10に対して内筒20を遠位方向に前進させても、針管30の最遠位部が外筒10の開口部12に当接しないことが好ましい。また、外筒10を収納容器40内に収納している状態において、外筒10に対して内筒20を遠位方向に前進させると、外筒10の開口部12で針管30の開口縁32の最遠位部32aが外筒10の長軸中心を通ることがより好ましい。これにより、外筒10を収納している状態において内筒20が意図せずに遠位方向に移動したとしても、針管30の開口縁32の最遠位部32aが外筒10の開口部12に当接しにくいため、収納中における針管30や外筒10の損傷を防ぐことができる。
【0045】
図4に示すように、外筒10を収納容器40内に収納している状態において、外筒10に対して内筒20を遠位方向に前進させると、針管30の最遠位部が外筒10の開口部12に当接してもよい。これにより、外筒10の収納時に針管30の先端が誤って外筒10の外部に出ることを防ぐことができる。
【0046】
図示していないが、外筒10を収納容器40内に収納している状態において、外筒10に対して内筒20を遠位方向に前進させると、針管30の開口縁32の最近位部32bが外筒10の開口部12よりも近位側の内側面に当接してもよい。外筒10を収納容器40内に収納している状態において、外筒10の内側面と針管30の最近位部32bが当接することで、針管30が遠位方向に意図せず移動しにくくなり、外筒10の収納時に針管30の開口縁32の最遠位部32aが誤って外筒10の外部に出ることを防ぐことができる。
【0047】
図5は、外筒10を収納容器40から取り出した状態であって、針管30の開口縁32の最遠位部32aを外筒10の遠位端よりも近位側に配置している状態を示している。図2および図5を比較して分かるように、外筒10を収納容器40内に収納している状態における外筒10の曲率半径は、収納容器40から取り出した状態における外筒10の曲率半径よりも小さいことが好ましい。このように外筒10を構成することにより、外筒10を収納容器40から取り出した後、針管30を外筒10から突出させるときに、針管30の開口縁32の最遠位部32が外筒10に当接しにくくなる。なお、外筒10の曲率半径は、外筒10の長軸中心により定めることができる。
【0048】
図6に示すように、外筒10を収納容器40から取り出した状態において、外筒10に対して内筒20を遠位方向に前進させると、針管30の最遠位部32aが外筒10の開口部12に当接することなく外筒10の外部に露出することが好ましい。これにより、外筒10を取り出した状態において内筒20が遠位方向に移動しても、針管30の開口縁32の最遠位部32aが外筒10の開口部12に当接しないため、針管30や外筒10の損傷を防ぐことができる。
【0049】
図7に示すように、外筒10を収納容器40から取り出した状態において、外筒10に対して内筒20を遠位方向に前進させると、針管30の最近位部32bは、外筒10の開口部12に当接した後に外筒10の外部に突出することが好ましい。針管30の開口縁32の最近位部32bを外筒10の開口部12に当接するように配置することによって、開口縁32の最遠位部32aが外筒10の長軸中心の近傍に配置されやすくなり、最遠位部32aが外筒10の開口部12に当接しにくくなる。
【0050】
図8に示すように、外筒10を収納容器40から取り出した状態において、外筒10に対して内筒20を遠位方向に前進させると、針管30の最近位部32bが外筒10の開口部12に当接することなく外筒10の外部に露出することが好ましい。このように針管30の開口縁32の最近位部32bが開口部12に当接しないことにより、針管30を外に素早く突出させることができる。
【0051】
図9図11に示すように、外筒10の内側面(内周面)、内筒20の内側面(内周面)、内筒20の外側面(外周面)の少なくともいずれか1つにスペーサー14が固定されていてもよい。スペーサー14を設けることにより、外筒10に対して針管30が偏心するように配置されるため、針管30の開口縁32の最遠位部32aと最近位部32bの位置を調整しやすくなる。スペーサー14は、例えば、中実の棒状、円筒、楕円筒、角筒等の筒状、塊状、平板状に形成することができる。厚みが同じまたは異なる複数のスペーサー14が積層されていてもよい。図9では外筒10の内側面にスペーサー14が設けられている例を示している。
【0052】
図9に示すように、針管30の長軸方向は外筒10の遠近方向と平行であってもよい。これにより、針管30が外筒10の遠近方向に沿って動きやすくなるため、外筒10に対して内筒20を遠近方向に前進させても、針管30の開口縁32の最遠位部32aが外筒10の開口部12に当接しにくくなる。
【0053】
図10に示すように、針管30の長軸方向は外筒10の遠近方向に対して傾いていてもよい。これにより、針管30の開口縁32の最遠位部32aの位置を調整することができるため、外筒10に対して内筒20を遠近方向に前進させても、針管30の開口縁32の最遠位部32aが外筒10の開口部12に当接しにくくなる。
【0054】
針管30は、長軸方向の全体が外筒10の遠近方向に対して傾いていることが好ましい。このように針管30を曲げるのではなく針管30全体を傾けることによって、針管30に対して負荷が掛かりにくいため、針管30の損傷を防ぐことができる。
【0055】
針管30の長軸方向は、外筒10の遠近方向に対して3度以上傾いていることが好ましく、5度以上傾いていることがより好ましく、10度以上傾いていることがさらに好ましい。このように傾きを設定することにより、針管30の最遠位部32aと外筒10の遠位端部との当接を回避しやすくなる。外筒10の遠近方向に対する針管30の長軸方向の傾きの角度の上限は特に限定されないが、例えば30度以下とすることができる。針管30の外筒10の遠近方向に対する傾きは、装置に必要な角度、針管30や中空部材のサイズに応じて適宜選択することができる。
【0056】
図10に示すように、内筒20は、長軸方向が外筒10の遠近方向に対して傾いている区間を有していてもよい。例えば、内筒20の遠位部が曲げられていることによって、内筒20に当該区間が形成されていてもよい。
【0057】
外筒10を収納容器40内に収納している状態において、外筒10の遠位側が巻回中心5側に位置しており、外筒10の近位側が巻回外方側に位置していることが好ましい。このように外筒10を収納容器40内に収めることによって、外筒10の近位側に接続されるハンドル(後述する)が巻回外方側に配置されるため、収納容器40への外筒10の出し入れを行いやすくなる。
【0058】
図示していないが、巻回されている外筒10には、巻回の内側となる箇所を示す印または巻回の外側となる箇所を示す印のうち少なくとも一方が付されていることが好ましい。これにより、収納時に針管30の先端をどの方向に向けるべきかがわかりやすくなる。
【0059】
外筒10に付される印として外筒10には着色層が配置されていてもよい。また、外筒10の最外層が着色されていてもよい。着色層は、エラストマーと着色剤とを含む材料から構成されていてもよい。着色層は、黒色または白色などの内視鏡の光源の光を透過しにくく、体腔壁面の色との違いが観察しやすい色の顔料を混ぜて形成することが好ましい。
【0060】
巻回されている外筒10に、巻回の内側となる箇所を示す第1の印と、巻回の外側となる箇所を示す第2の印が付されていてもよい。その場合、第1の印と第2の印としてそれぞれ着色層が設けられており、第1の印の着色層と第2の印の着色層の色が互いに異なっていることが好ましい。これにより、内視鏡下で針管30の先端の位置を視認しやすくなる。なお、色が互いに異なるとは、JIS Z8721で定める色相、明度、および彩度の少なくとも1つが異なっていることを意味する。
【0061】
医療用穿刺装置1を動かすための手元側の構成について説明する。図1に示すように、外筒10の近位側には第1ハンドル51が接続されている。第1ハンドル51は第2ハンドル52の外側に設けられており、第2ハンドル52は第1ハンドル51に対して長軸方向に移動可能に構成されている。内筒20の近位側には第2ハンドル52が接続されている。第1ハンドル51、第2ハンドル52は、内筒20および針管30を遠近方向に移動させるために術者が把持する部分である。第2ハンドル52は遠近方向に沿って移動可能に構成されている。第2ハンドル52を遠近方向に移動させることで、針管30が外筒10の遠位端部から露出したり、外筒10内に収納される。第2ハンドル52の近位側には液体が収納された容器が接続される。第1ハンドル51と外筒10、第2ハンドル52と内筒20は、熱圧着、接着剤による接着等の方法で接続することができる。第1ハンドル51と第2ハンドル52とは相対的に移動可能であればよく、第2ハンドル52が第1ハンドル51に対して長軸方向に移動可能であってもよく、第1ハンドル51が第2ハンドル52に対して長軸方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0062】
第2ハンドル52は、第1ハンドル51に対して回転しないことが好ましい。詳細には、第2ハンドル52は第2ハンドル52の長軸を中心として、第1ハンドル51に対して回転しないことがより好ましい。このようにハンドルの周方向への動きを規制することにより、針管30の外筒10に対する回転を規制することができるため、針管30の開口縁32の最遠位部32aと最近位部32bの位置を調整しやすくなる。
【0063】
外筒10に対する内筒20の回転を規制するために、図11図12に示すように外筒10の内側面に係合部15が設けられ、内筒20の外側面に該係合部15と係合する被係合部22が設けられていてもよい。係合部15や被係合部22は凹部または凸部であってもよい。図11図12には、外筒10の内側面の遠位端部に係合部15として凹部16が設けられており、内筒20の遠位端部の外側面に被係合部22として凸部23が設けられており、凹部16と凸部23が互いに係合している例を示した。図示していないが、外筒10の内側面に凸部が設けられ、内筒20の外側面に凹部が設けられていてもよい。また、外筒10の内側面に周方向に離間している2つの凸部が設けられており、周方向において外筒10の2つの凸部の間であって内筒20の外側面に凸部が設けられていてもよい。このように外筒10の内側面と内筒20の外側面にそれぞれ凸部を設けることによっても外筒10に対する内筒20の回転を規制することができる。外筒10の内側面や内筒20の外側面にスペーサーを固定することにより凸部が形成されていてもよい。
【0064】
遠近方向において、凹部16の遠位端は外筒10の内側面の遠位端と同じ位置にあることが好ましい。このように凹部16の位置を設定することによって、外筒10から針管30を突出させるときに針管30の開口縁32の最遠位部32aと最近位部32bの位置を安定させることができる。
【0065】
2.医療用穿刺装置の製造方法
次に、これまで説明した医療用穿刺装置1の製造方法の一実施形態について説明する。上記製造方法は、可撓性樹脂で構成されている外筒を加熱し、樹脂中の残留応力を取り除く工程と、加熱された外筒の内腔に、針管が挿通されている内筒を配置する工程と、外筒を、外筒の長さ120cmにつき1回以上巻回された状態で収納容器に収納する工程と、収納容器に収められた外筒を加熱し、収納容器内での巻回方向に従った湾曲形状を付与する工程と、を含む。樹脂中の残留応力を取り除く工程を実施することにより、残留応力による外筒の変形を防止することができる。
【0066】
可撓性樹脂で構成されている外筒を加熱し、樹脂中の残留応力を取り除く(工程1)。外筒は、例えば押出成形等の方法で作製することができる。押出成形時には、押し出しや引っ張りの力が掛かった状態で溶融樹脂が急冷されるため、樹脂に負荷がかかった状態で固化される。このため、滅菌時の加熱等、樹脂が溶融しない程度に加熱されると、残留応力により外筒の曲げや縮み等の変形が生じることがある。しかし、工程1のように樹脂中の残留応力を取り除くアニール処理を実施することにより、残留応力による外筒の変形を防止することができる。
【0067】
工程1において、外筒をストレート形状に伸ばした状態で加熱することが好ましい。このように曲げ癖が付いている外筒に軽いテンションをかけながら加熱することにより、加熱後の外筒の曲げや縮み等の変形をより一層防止することができる。これにより、残留応力が取り除かれたストレート形状の外筒を得ることができる。
【0068】
加熱された外筒の内腔に、針管が挿通されている内筒を配置する(工程2)。これにより、外筒、内筒および針管を有する組立品を製造することができる。
【0069】
外筒を、外筒の長さ120cmにつき1回以上巻回された状態で収納容器に収納する(工程3)。収納容器40は、外筒10を巻回した状態で収納できればその形状は特に限定されないが、例えば管状体、袋状体、または箱状体に形成することができる。管状体は、任意の平面または曲面上で巻回されて渦巻き状に形成されていてもよい。
【0070】
収納容器に収められた組立品全体を加熱し、収納容器内での巻回方向に従った湾曲形状を付与する(工程4)。加熱は組立品に対する加工工程として行っても良いし、組立後の滅菌処理工程の一部に加熱工程があるならば、その工程を利用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:医療用穿刺装置
5:巻回中心
10:外筒
10a:外筒の遠位端
11:外筒の内腔
12:開口部
13:テーパー部
14:スペーサー
15:係合部(凹部)
20:内筒
21:内筒の内腔
22:被係合部(凸部)
30:針管
31:内腔
32:開口縁
32a:開口縁の最遠位部
32b:開口縁の最近位部
40:収納容器
40a:収納容器の遠位端部
51:第1ハンドル
52:第2ハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12