(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】センサの配置構造
(51)【国際特許分類】
F16H 9/18 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
F16H9/18 B
(21)【出願番号】P 2023500638
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001500
(87)【国際公開番号】W WO2022176472
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2021026257
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】長岡 文一
(72)【発明者】
【氏名】金 暉
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-275017(JP,A)
【文献】特開2010-181018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/00-9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸回りに回転するプーリと、
前記プーリの回転を検出するセンサと、を有し、
前記プーリは、
固定プーリと、
前記回転軸方向で、前記固定プーリに対して相対変位可能な可動プーリと、
前記固定プーリに固定されて、前記可動プーリの背面に油室を形成するプランジャと、を有し、
前記プランジャでは、前記回転軸方向から視認可能な領域に被検出部が設けられており、
前記センサは、前記固定プーリを回転可能に支持する支持部で、前記回転軸に沿う向きで設けられて、前記被検出部が設けられた領域に対向
し、
前記可動プーリは、前記背面に前記回転軸を間隔を空けて囲む筒壁部を有しており、
前記プランジャの外径側は、前記筒壁部の内径側を前記回転軸の径方向に延びる平板部を有しており、
前記被検出部は、前記平板部に設けられている、センサの配置構造。
【請求項2】
請求項
1において、
前記被検出部は、前記回転軸方向に突出する凸部、または、前記回転軸方向に窪んだ凹部である、センサの配置構造。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2において、
前記プランジャは、前記平板部の外周にシール支持部を有しており、
前記プランジャは、前記シール支持部よりも内径側に、前記シール支持部よりも厚みが薄い薄肉領域を有する、センサの配置構造。
【請求項4】
請求項
3において、
前記被検出部は、前記シール支持部と前記薄肉領域との境界を避けて設けられている、センサの配置構造。
【請求項5】
回転軸回りに回転するプーリと、
前記プーリの回転を検出するセンサと、を有し、
前記プーリは、
固定プーリと、
前記回転軸方向で、前記固定プーリに対して相対変位可能な可動プーリと、
前記固定プーリに固定されて、前記可動プーリの背面に油室を形成するプランジャと、を有し、
前記プランジャでは、前記回転軸方向から視認可能な領域に被検出部が設けられており、
前記センサは、前記固定プーリを回転可能に支持する支持部で、前記回転軸に沿う向きで設けられて、前記被検出部が設けられた領域に対向し、
前記固定プーリは、ベアリングを介して前記支持部で回転可能に支持されており、
前記支持部には、前記ベアリングの前記回転軸方向の移動を規制するリテーナが取り付けられており、
前記回転軸方向から見て前記リテーナでは、
前記支持部との複数の連結部が前記回転軸周りの周方向に互いに間隔を空けて設けられており、
前記回転軸周りの周方向で隣接する前記連結部の間の外周は、前記連結部よりも前記回転軸側に位置しており、
前記回転軸方向から見て、前記リテーナの前記外周の外径側に、前記プランジャにおける前記被検出部が設けられた領域が視認可能に位置している、センサの配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機におけるセンサの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベルト式の無段変速機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のベルト式無段変速機は、プーリの回転速度を検知するためのセンサを有している。プーリの可動プーリは、プランジャを備える。
センサは、プーリの回転軸に直交する向きで設けられている。センサの検出部は、回転軸の径方向外側から、プランジャの外周に対向している。
【0005】
可動プーリは回転軸方向に変位可能であるため、センサは、可動プーリ側の部品との干渉を避けて設置される。
そのため、ベルト式の無段変速機おいて、センサを設けることができる場所には、制約がある。そこで、センサの設置における自由度をより高めることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様におけるセンサの配置構造は、
回転軸回りに回転するプーリと、
前記プーリの回転を検出するセンサと、を有し、
前記プーリは、
固定プーリと、
前記回転軸方向で、前記固定プーリに対して相対変位可能な可動プーリと、
前記可動プーリの背面に油室を形成するプランジャと、を有し、
前記プランジャでは、前記回転軸方向から視認可能な領域に被検出部が設けられており、
前記センサは、前記固定プーリを回転可能に支持する支持部で、前記回転軸に沿う向きで設けられて、前記被検出部が設けられた領域に対向し、
前記可動プーリは、前記背面に前記回転軸を間隔を空けて囲む筒壁部を有しており、
前記プランジャの外径側は、前記筒壁部の内径側を前記回転軸の径方向に延びる平板部を有しており、
前記被検出部は、前記平板部に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、センサの設置における自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、無段変速機の要部構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、無段変速機のプライマリプーリ周りの拡大図である。
【
図6】
図6は、ベアリングリテーナの平面図である。
【
図7】
図7は、ベアリングリテーナの一部を断面で示した斜視図である。
【
図8】
図8は、リテーナとプランジャとセンサとの位置関係を説明する図である。
【
図9】
図9は、リテーナとプランジャとセンサとの位置関係を説明する図である。
【
図10】
図10は、ベアリングリテーナの他の態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のある態様におけるセンサの配置構造を、車両用のベルト式の無段変速機1に適用した例を説明する。
図1は、無段変速機1の要部構成を説明する図である。
図2は、無段変速機1のプライマリプーリ3周りの拡大図である。
【0010】
図1に示すように、ベルト式の無段変速機1では、エンジン(図示せず)の回転駆動力が、トルクコンバータ(図示せず)を介して、前後進切替機構5に入力される。
前後進切替機構5は、遊星歯車組6と、前進クラッチ51と、後進ブレーキ52と、を有する。
前後進切替機構5では、前進クラッチ51が締結されると、トルクコンバータ側から入力された回転が、順回転でバリエータ2に出力される。後進ブレーキ52が締結されると、トルクコンバータ側から入力された回転が、逆回転でバリエータ2に出力される。
【0011】
バリエータ2は、一対のプーリ(プライマリプーリ3、セカンダリプーリ4)と、一対のプーリに巻き掛けられたベルトV(無端環状部材)と、を有する。
バリエータ2では、一対のプーリ(プライマリプーリ3、セカンダリプーリ4)におけるベルトVの巻き掛け半径を変更することで、前後進切替機構5側から入力された回転が、変速されて、終減速機構(図示せず)側に出力される。
【0012】
図2に示すように、プライマリプーリ3は、固定プーリ31と、可動プーリ32とを有する。
固定プーリ31は、回転軸X1に沿って配置された軸部311と、軸部311の外周から径方向外側に延びるシーブ部312とを、有している。
【0013】
軸部311の長手方向の一端311aと他端311bには、それぞれベアリング34A、34Bが外挿されて固定されている。
軸部311の一端311aは、ベアリング34Aを介してサイドカバー13の支持孔15で回転可能に支持されている。軸部311の他端311bは、ベアリング34Bを介して、変速機ケース10の支持部101で回転可能に支持されている。
【0014】
軸部311の他端311bには、遊星歯車組6(
図1参照)のキャリア64が備える連結部材641が相対回転不能に連結されている。
【0015】
可動プーリ32は、固定プーリ31の軸部311に外挿された環状基部321と、環状基部321の外周から径方向外側に延びるシーブ部322と、を有している。
可動プーリ32の環状基部321は、シーブ部322側の大径部321aと、大径部321aよりも外径が小さい小径部321bとを有する。環状基部321は、シーブ部322に向かうにつれて、回転軸X1の径方向の厚みが厚くなっている。
【0016】
可動プーリ32の環状基部321は、軸部311の外周にスプライン嵌合している。可動プーリ32は、固定プーリ31との相対回転が規制された状態で、軸部311の軸方向(回転軸X1方向)に移動可能に設けられている。
【0017】
固定プーリ31のシーブ部312と、可動プーリ32のシーブ部322は、回転軸X1方向で間隔をあけて対向している。
プライマリプーリ3では、固定プーリ31のシーブ面312aと、可動プーリ32のシーブ面322aの間に、ベルトVが巻き掛けられるV溝33が形成されている。
【0018】
シーブ部322の外径側では、シーブ面322aとは反対側の背面322b(受圧面)に、円筒状のシリンダ部323が設けられている。
シリンダ部323は、回転軸X1に沿う向きで設けられている。シリンダ部323は、シーブ部322から離れる方向に長さL1で形成されている。
【0019】
ここで、サイドカバー13の支持壁部131は、ベアリング34Aよりも可動プーリ32側(図中、右側)に位置している。さらに、支持壁部131は、ベアリング34Aよりも外径側で、回転軸X1の径方向外側に向けて延びている。支持壁部131は、後記するセンサ120の支持部となっている。
【0020】
図2に示すように、可動プーリ32のシリンダ部323の先端323aは、支持壁部131の内周131aに回転軸X1方向から対向している。可動プーリ32のシーブ部322が、固定プーリ31のシーブ部312から最も離れた位置に配置された際に、先端323aと内周131aとの間に隙間が確保される。この状態において、シリンダ部323の先端323aは、サイドカバー13の支持壁部131の近傍に位置している。
【0021】
シリンダ部323は、回転軸X1を、間隔を空けて囲む筒壁部である。シリンダ部323の内側には、プランジャ7の外周70a側が位置している。プランジャ7は、シーブ部322の背面322bとの間に油室R1を形成するために設けられている。
【0022】
プライマリプーリ3では、可動プーリ32に設けられた油室R1への供給圧を調節することで、可動プーリ32が回転軸X1方向に変位する。油室R1への供給圧に応じて、シーブ面312a、322aの間のV溝33の溝幅が変更されて、プライマリプーリ3におけるベルトVの巻き掛け半径が変更される。
【0023】
図1に示すように、セカンダリプーリ4は、固定プーリ41と、可動プーリ42とを有している。
固定プーリ41は、回転軸X2に沿って配置された軸部411と、軸部411の外周から径方向外側に延びるシーブ部412とを、有している。
可動プーリ42は、固定プーリ41の軸部411に外挿された環状基部421と、環状基部421の外周から径方向外側に延びるシーブ部422と、を有している。
【0024】
固定プーリ41のシーブ部412と、可動プーリ42のシーブ部422は、回転軸X2方向で間隔をあけて対向している。
セカンダリプーリ4では、固定プーリ41のシーブ面412aと、可動プーリ42のシーブ面422aとの間に、ベルトVが巻き掛けられるV溝43が形成されている。
【0025】
固定プーリ41の軸部411には、回転軸X2方向の一方の端部411aと他方の端部411bに、ベアリング44A、44Bが外挿されている。
回転軸X2方向における軸部411の他方の端部411bは、ベアリング44Bを介して、変速機ケース10側の支持部102で回転可能に支持されている。
回転軸X2方向における軸部411の一方の端部411aは、ベアリング44Aを介して、サイドカバー13側の支持孔16で回転可能に支持されている。
【0026】
可動プーリ42のシーブ部422では、シーブ面422aとは反対側の背面422bに、シリンダ部423が設けられている。
シリンダ部423は、回転軸X2に沿う向きで設けられている。
【0027】
シリンダ部423の内周には、プランジャ45の外周部45aが、径方向の隙間をあけて対向している。
プランジャ45の外周部45aには、Dリング8が取り付けられている。シリンダ部423の内周と外周部45aとの隙間がDリング8で封止されている。
【0028】
プランジャ45の内径側には、筒状の嵌合部451が設けられている。嵌合部451は、固定プーリ41の軸部411の外周にスプライン嵌合している。プランジャ45の嵌合部451は、ベアリング44Bと、軸部411の段部411cとの間で、回転軸X2方向に位置決めされている。
【0029】
プランジャ45は、嵌合部451に隣接する領域を有する。この領域は、可動プーリ42の環状基部421の外径側を、シーブ部422に近づく方向(図中、左方向)に延びたのち、外径側に屈曲している。
プランジャ45の、この外径側に屈曲した領域452に、スプリングSpの一端が、回転軸X2方向から当接している。スプリングSpの他端は、シーブ部422の背面422b(受圧面)に当接している。スプリングSpは回転軸X2方向に圧縮された状態で設けられている。可動プーリ42は、スプリングSpから作用する付勢力で、V溝43の溝幅を狭める方向(バリエータ2の変速比をHigh側にする方向)に押圧されている。
【0030】
セカンダリプーリ4では、可動プーリ42に設けられた油室R3への供給圧を調節することで、可動プーリ42が回転軸X2方向に変位する。油室R3への供給圧に応じて、シーブ面412a、422aの間のV溝43の溝幅が変更されて、セカンダリプーリ4におけるベルトVの巻き掛け半径が変更される。
【0031】
本実施形態では、プライマリプーリ3の回転速度をセンサ120で検出する。センサ120を設置するにあたり、センサ120の設置の自由度を高めるために、以下の構成を有するセンサの配置構造100を採用している。
(a)センサ120を、固定プーリ31を回転可能に支持するサイドカバー13で、回転軸X1に沿う向きで設置する。
(b)プランジャ7の回転軸X1方向から視認可能な領域に、センサ120によって検出される被検出部(後記する凸部73)を設ける。
【0032】
以下、センサの配置構造100を具体的に説明する。
図3は、プランジャ7周りの拡大図である。
図4は、プランジャ7をサイドカバー13側から見た平面図である。なお、
図4における拡大図では、凸部73の位置を判りやすくするために、凸部73の部分にハッチングを付して示している。
図5は、プランジャ7を、
図4におけるA-A線に沿って切断した断面を示す斜視図である。
【0033】
図3に示すように、プランジャ7は、プレス成形品である。プランジャ7は、固定プーリ31の軸部311の外周で位置決めされている。プランジャ7は、固定プーリ31に対して相対回転不能に設けられている。
図4および
図5に示すように、回転軸X1方向から見て、プランジャ7の外形は円形形状である。回転軸X1方向から見てプランジャ7は、リング状を成す基部70を有している。
基部70の中央には、貫通孔71が設けられている。貫通孔71は、基部70を厚み方向(回転軸X1方向)に貫通している。
【0034】
図3に示すように、固定プーリ31の軸部311には、プランジャ7が外挿される嵌合部313が設けられている。基部70の貫通孔71は、嵌合部313の外径と整合する内径D71で形成されている。
プランジャ7は、嵌合部313の外周に圧入され、嵌合部313に設けた段部314に当接している。
【0035】
嵌合部313には、ベアリング34Aがさらに圧入されている。軸部311においてプランジャ7は、段部314とベアリング34Aとの間に挟まれた状態で設けられている。
図2に示すように、ベアリング34Aは、嵌合部313の外周に螺合したナットNで、回転軸X1方向に位置決めされている。プランジャ7の、可動プーリ32から離れる方向への移動は、ベアリング34AとナットNにより規制されている。
【0036】
図3に示すように、軸部311に固定されたプランジャ7の、基部70の外周70a側が、回転軸X1に直交する向きで設けられたフランジ部701を有する。基部70の内周70b側が、回転軸X1に直交する向きで設けられた円板部702を有する。
フランジ部701の回転軸X1方向の厚みW701は、円板部702の回転軸X1方向の厚みW702よりも厚くなっている(W701>W702)。
【0037】
プランジャ7は、一枚の金属板をプレス成形により形成したものである。フランジ部701と円板部702は、回転軸X1方向に位置をずらして設けられている。
【0038】
基部70におけるフランジ部701と円板部702との間の領域は、可動プーリ32の環状基部321(大径部321a、小径部321b)との干渉を避けるために、円板部702からフランジ部701に向かうにつれて、内径が段階的に大きくなっている。
プランジャ7は、フランジ部701と円板部702との間の領域に、円板部702側から順番に、第1筒壁部703、第1接続部704、第2筒壁部705、第2接続部706を有する。
【0039】
第1筒壁部703と、第1接続部704と、第2筒壁部705と、第2接続部706は、前記した円板部702の厚みW702とほぼ同じ厚みで形成されている。すなわち、プランジャ7では、フランジ部701よりも内径側に、フランジ部701よりも薄い厚みで形成された薄肉領域を有する。
【0040】
第1筒壁部703は、回転軸X1を間隔を空けて囲む筒状を成している。第1筒壁部703におけるベアリング34A側(図中、左側)の端部は、円板部702の外周に接続している。円板部702と第1筒壁部703との接続部分は、ベアリング34Aから離れる方向に湾曲している。そのため、プランジャ7は、ベアリング34Aのインナレース34A1とのみ接触している。
【0041】
第1筒壁部703は、可動プーリ32の小径部321bの外径よりも大きい内径で形成されている。第1筒壁部703は、ベアリング34Aのアウタレース34A2の側方を、回転軸X1に沿ってベアリング34Aから離れる方向に延びている。
第1接続部704は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。第1接続部704は、第1筒壁部703における第2筒壁部705側(図中、右側)の端部から径方向外側に延びている。
【0042】
第2筒壁部705は、回転軸X1を間隔を空けて囲む筒状を成している。第2筒壁部705は、第1筒壁部703よりも大きい内径で形成されている。さらに、第2筒壁部705は、可動プーリ32の大径部321aの外径よりも大きい内径で形成されている。
第2筒壁部705におけるベアリング34A側(図中、左側)の端部は、第1接続部704に接続している。第2筒壁部705は、回転軸X1に沿ってベアリング34Aから離れる方向に延びている。
【0043】
第2接続部706は、第2筒壁部705におけるフランジ部701側(図中、右側)の端部から、ベアリング34Aから離れる方向(図中、右方向)に延びている。
第2接続部706は、ベアリング34Aから離れて、フランジ部701側に向かうにつれて内径が大きくなる向きで傾いている。
【0044】
フランジ部701は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。フランジ部701は、第2接続部706の端部から径方向外側に延びている。
フランジ部701の外周には、Dリング8の収容溝72が開口している。収容溝72は、フランジ部701の厚み方向(回転軸X1方向)における中央部で、外径側を向いて開口している。収容溝72は、回転軸X1周りの周方向の全周に亘って設けられている(
図5参照)。
【0045】
収容溝72には、Dリング8が外嵌して取り付けられている。Dリング8は、プランジャ7の外周70aから外径側に突出している。
【0046】
プランジャ7は、内周70b側の円板部702が、固定プーリ31の軸部311で位置決めされている。
プライマリプーリ3では、可動プーリ32のシーブ部322が、固定プーリ31のシーブ部312から最も離れた位置(
図3)に配置されると、プランジャ7の第1接続部704よりもフランジ部701側(図中、右側)が、シリンダ部323の内側に位置する。
【0047】
この状態において、シリンダ部323の内周323bには、プランジャ7の外周70aが、回転軸X1の径方向に隙間をあけて設けられている。シリンダ部323の内周323bと、プランジャ7の外周70aとの隙間は、Dリング8で封止されている。Dリング8は、フランジ部701の外周に設けられると共に、シリンダ部323の内周323bに弾発的に接触する。
さらに、プランジャ7と、シーブ部322との間に、作動油圧が供給される油室R1が形成されている。
【0048】
フランジ部701は、回転軸X1方向におけるサイドカバー13側から視認可能な領域である。前記したように、サイドカバー13の支持壁部131は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。支持壁部131とフランジ部701は、互いに平行となる位置関係で、回転軸X1方向に間隔をあけて設けられている。
【0049】
支持壁部131では、センサ120の取付孔131bが、支持壁部131を回転軸X1方向に貫通して設けられている。センサ120は、サイドカバー13の外側から取付孔131bに挿入されて、サイドカバー13に組み付けられている。この状態においてセンサ120は、回転軸X1に沿う向きで設けられている。センサ120の先端の検出部120aは、センサ120の中心線C120上で、プランジャ7のフランジ部701に、間隔を空けて対向配置される。
【0050】
フランジ部701における支持壁部131側の面に、センサ120の検出部120aで検出される被検出部が設けられている。
具体的には、フランジ部701における支持壁部131側(図中、左側)の面に、被検出部として機能する凸部73が設けられている。
【0051】
本実施形態では、フランジ部701は、プランジャ7のプレス成形時に形成される。フランジ部701の凸部73は、フランジ部701に対する半抜き加工により形成する。
そのため、フランジ部701には、フランジ部701の内側に窪んだ凹部74が形成されている。凹部74は、フランジ部701の厚み方向における凸部73とは反対側に形成されている。凸部73の突出高さd1と、凹部74の深さd2は、ほぼ同じとなっている。
【0052】
なお、フランジ部701における支持壁部131側(図中、左側)の面に、凹部が形成されるように、半抜き加工を行うようにしても良い。
この場合には、支持壁部131側(図中、左側)の面に形成された凹部が、被検出部として用いられることになる。
また、支持壁部131側(図中、左側)の面にのみ、凸部73または凹部74を設けた構成としても良い。この場合には、フランジ部701における支持壁部131とは反対側の面は平坦面となる。
【0053】
図4に示すように、凸部73は、回転軸X1方向から見て略矩形形状を成している。凸部73は、径方向の長さLaの方が、周方向の長さLbよりも長くなっている。複数の凸部73が、回転軸X1周りの周方向の全周に亘って設けられている。複数の凸部73は、互いに間隔Wxを空けて配置されている。
フランジ部701の複数の凸部73は、総て同じ形状である。
【0054】
図2に示すように凸部73は、プランジャ7からサイドカバー13側(図中、左側)に突出している。支持壁部131で支持されたセンサ120の検出部120aと、プランジャ7における凸部73が設けられた領域とが、センサ120の中心線C120上で、間隔を空けて対向配置される。
そのため、プライマリプーリ3が回転軸X1回りに回転すると、センサ120の検出部120aの正面を、被検出部である凸部73が、回転速度に応じた周期で通過する。これによりセンサ120は、凸部73の通過周期に応じたパルスを出力する。
【0055】
サイドカバー13の、センサ120が設けられる支持壁部131の内径側に、ベアリング34Aの支持孔15が開口している。支持孔15の中央部には、固定プーリ31の軸部311との干渉を避けるための凹部151が形成されている。
【0056】
サイドカバー13では、支持壁部131の内径側にベアリングリテーナ9(リテーナ)が設けられている。
前記したセンサ120との干渉を避けるために、回転軸X1方向から見たベアリングリテーナ9の外形が、略三角形形状を成している(
図6参照)。
【0057】
図6は、ベアリングリテーナ9の平面図である。
図7は、
図6におけるA-A線に沿ってベアリングリテーナ9を切断した断面図である。
【0058】
図6および
図7に示すように、ベアリングリテーナ9は、板状の基部90を有している。基部90の中央部には、略円形の開口91が設けられている。基部90における開口91を囲む内周は、回転軸X1を間隔を空けて囲む仮想円Im4上に位置している。
【0059】
基部90では、回転軸X1周りの周方向に120度間隔で、連結片901が設けられている。連結片901は、仮想円Im4の中心(回転軸X1)を通る直線Lm1に沿って、基部90の外周90aから径方向外側に延びている。言い換えると、連結片901は、基部90の外周90aから径方向外側に張り出している。連結片901の外周901bは、回転軸X1を間隔を空けて囲む仮想円Im1上に位置している。
【0060】
連結片901の各々には、ボルト孔901aが設けられている。ボルト孔901aは、連結片901を厚み方向(回転軸X1方向)に貫通している。回転軸X1方向から見て、ボルト孔901aの中心Cは、回転軸X1を間隔を空けて囲む仮想円Im2上に位置している。仮想円Im2は、仮想円Im1よりも小径である(Im1>Im2)。
ボルト孔901aの各々は、回転軸X1周りの周方向に120度間隔で位置する直線Lm1上に位置している。ここで、直線Lm1は、仮想円Im1、Im2、Im3、Im4の直径線に相当する。
【0061】
図7に示すように、連結片901の、基部90の厚み方向(回転軸X1方向)における一方の面に、筒部902が設けられている。筒部902は、ボルト孔901aを全周に亘って囲んでいる。筒部902は、連結片901から、連結片901の厚み方向の一方側に突出している。
【0062】
基部90では、回転軸X1周りの周方向で隣接する連結片901、901の間の領域の外周90aが、連結片901よりも回転軸X1側に位置している。
回転軸X1方向から見て外周90aは、弧状を成している。外周90aは、直線Lm1との交点Pを基準とした両側の領域が、仮想円Im3の接線Lxよりも外側に位置している。そして、外周90aにおける連結片901、901の近傍の領域は、接線Lxよりも内側(回転軸X1側)に位置している。仮想円Im3は、仮想円Im2よりも小径で、直線Lm1と外周90aとの交点Pを通る仮想円である。
【0063】
基部90では、直線Lm1と交差する領域に、開口91に連絡する凹部910が設けられている。凹部910は、直線Lm1に直交する方向に幅W910で形成されている。凹部910は、開口91から径方向外側に延びている。凹部910の外径側は、仮想円Im3を越えて連結片901の近傍まで及んでいる。
【0064】
基部90の内径側に、ベアリング34Aのアウタレース34A2(
図3参照)を支持する支持片903が設けられている。支持片903は、周方向で隣接する凹部910、910の間の領域に形成されている。
支持片903は、周方向の両側に凹部910、910が設けられていることにより、支持片903の内周側(回転軸X1側)が、回転軸X1方向に僅かに弾性変位可能となっている。
【0065】
図2に示すように、サイドカバー13の支持孔15にベアリング34Aが装着される。それから、ベアリングリテーナ9が、サイドカバー13における可動プーリ32側(図中、右側)の面に、プランジャ7を利用して位置決めされる。
そして、サイドカバー13に設けたボルト孔17aにボルトBが螺入される。ボルトBの軸部B1が、ベアリングリテーナ9の連結片901に設けたボルト孔901aと筒部902を貫通する。これにより、ベアリングリテーナ9が、ボルトBの締結力で、サイドカバー13側に引き寄せられる。ベアリングリテーナ9の支持片903が、ベアリング34Aのアウタレース34A2を支持する位置に配置される(
図3参照)。
【0066】
この状態において、ベアリングリテーナ9の外周90aの径方向外側に、サイドカバー13の支持壁部131と、支持壁部131で支持されたセンサ120が位置している。
そして、センサ120の検出部120aと、プランジャ7の被検出部である凸部73が対向配置される。
【0067】
図8および
図9は、ベアリングリテーナ9とプランジャ7と、センサ120との位置関係を説明する図である。
図8では、ベアリングリテーナ9と、プランジャ7と、センサ120、ボルトBを回転軸X1方向に離間させて配置した状態が示されている。
図9では、ベアリングリテーナ9と、プランジャ7と、センサ120を回転軸X1方向から見た状態が示されている。
【0068】
図8および
図9に示すように、回転軸X1方向から見たプランジャ7の外形は円形形状を成している。回転軸X1方向から見たベアリングリテーナ9の外形が、略三角形形状を成している。
そのため、回転軸X1から見て、基部90の外周90aの径方向外側に、空間的な余裕がある(
図9において、ハッチングを付した領域R参照)。この空間は、センサ120を配置することが可能な大きさを有している。
【0069】
図9に示すように、回転軸X1方向から見て、プランジャ7のフランジ部701に形成された凸部73が、仮想円Im1上に位置している。
前記したように、ベアリングリテーナ9の連結片901の外周901bは仮想円Im1上に位置するが、基部90の外周90aは、仮想円Im1よりも、径方向内側に位置する。すなわち、基部90の外周90aの径方向外側の仮想円Im1に囲まれた領域Rは、ベアリングリテーナ9に干渉されずにセンサ120を配置できる領域である。領域Rは、回転軸X1方向のサイドカバー13(
図3参照)側から見て、プランジャ7に形成された凸部73を視認可能な領域である。回転軸X1方向から見た場合、領域Rにおいて、ベアリングリテーナ9は、プランジャ7にオーバーラップしていない。
【0070】
ここで、比較例として、回転軸方向から見て円形を成すベアリングリテーナの場合、
図9中仮想円Im1よりも内側がベアリングリテーナの領域となる。
本実施形態のベアリングリテーナ9は、比較例のベアリングリテーナから、図中符号Rで示した領域を切り欠いたものに相当する。
すなわち、領域Rは、ベアリングリテーナ9の外周90aが、比較例の円形のベアリングリテーナの外周(仮想円Im1)よりも中心側(回転軸X1側)を通るように、比較例のベアリングリテーナの外周側の領域を一部切り欠いた部分に相当する。言い換えると、領域Rは、比較例のベアリングリテーナの外周側の領域を、連結片901を残して切り欠いた部分に相当する。
【0071】
領域Rは、回転軸X1の径方向と、回転軸X1の軸方向の両方に、空間的な余裕を持たせることができる。
センサ120は、外周90aの径方向外側の領域Rを利用して配置されている。
【0072】
具体的には、
図3に示すように、支持壁部131が、ベアリングリテーナ9よりもプランジャ7の近くに配置されている。この支持壁部131がセンサ120を支持している。
【0073】
支持壁部131にセンサ120を設けることで、センサ120は、ベアリングリテーナ9よりもプランジャ7側に配置される。これにより、無段変速機1の筐体におけるセンサ120を設ける領域を、回転軸X1方向に小型化できる。
【0074】
また、回転軸X1方向から見て円形を成す比較例のベアリングリテーナの場合、センサ120は、ベアリングリテーナ9への干渉を避けるため、
図9における仮想円Im1よりも外側に配置する必要がある。
そうすると、無段変速機1の筐体におけるセンサ120を設ける領域が、回転軸X1の径方向に大型化する。
【0075】
本実施形態では、回転軸X1方向から見て、ベアリングリテーナ9が略三角形形状を成している。回転軸X1方向から見て、外周90aの外側にセンサ120を配置可能な領域Rが確保される。
そのため、プランジャ7の凸部73が設けられた領域に、センサ120を対向配置することができる。
よって、回転軸X1方向から見て円形を成す比較例のベアリングリテーナに比べて、無段変速機1の筐体におけるセンサ120を設ける領域が、回転軸X1の径方向に大型化することを好適に防止できる。
【0076】
特に、センサ120は、領域R内の凸部73に対向する領域であれば、どの凸部73に対向する領域に配置しても良い。例えば、
図9では、センサ120はハッチングで示した位置に配置されるが、図中、破線の円で囲った位置に配置することもできる。よって、センサ120の配置における自由度が高くなる。
【0077】
さらに、比較例として、センサを、プーリの回転軸に直交する向きで設けた場合には、センサは、回転軸方向に変位する可動プーリ側の部品との干渉を避けて設置する必要がある。
そのため、ベルト式の無段変速機おいてセンサを設けることができる場所に制約が生じる。
これに対して本実施形態では、以下の構成を採用している。
(a)センサ120を、固定プーリ31を回転可能に支持するサイドカバー13で、回転軸X1に沿う向きで設置する。
(b)プランジャ7における回転軸X1方向から視認可能な領域に、センサ120によって検出される被検出部である凸部73を設ける。
【0078】
そのため、回転軸X1方向に変位する可動プーリの移動範囲を考慮することなく、センサ120を配置することができる。よって、センサ120の設置における自由度をより高めることができる。
【0079】
以下に、本発明のある態様におけるセンサの配置構造100の例を列挙する。
(1)センサの配置構造100は、
回転軸X1回りに回転するプライマリプーリ3(プーリ)と、
プライマリプーリ3の回転を検出するセンサ120と、を有する。
プライマリプーリ3は、
固定プーリ31と、
回転軸X1方向で、固定プーリ31に対して相対変位可能な可動プーリ32と、
固定プーリ31に固定されて、可動プーリ32の背面322bに油室R1を形成するプランジャ7と、を有する。
プランジャ7では、回転軸X1方向から視認可能な領域であるフランジ部701に、被検出部である凸部73が設けられている。
センサ120は、固定プーリ31を回転可能に支持するサイドカバー13の支持壁部131(支持部)で、回転軸X1に沿う向きで設けられて、プランジャ7における凸部73が設けられた領域に対向している。
【0080】
比較例として、センサをプーリの回転軸に直交する向きで設ける場合、センサは、回転軸方向に変位する可動プーリ側の部品との干渉を避けて設置する必要がある。これによって、無段変速機の回転軸方向の大きさが大きくなる。
上記のように、実施形態は、油室R1の形成に用いられるプランジャ7を利用してセンサ120を配置している。プランジャ7における回転軸X1方向から視認可能な領域であるフランジ部701に、被検出部である凸部73が設けられる。これによって、可動プーリ32側の部品との干渉を考慮して、センサ120を配置する必要が無い。よって、無段変速機1の回転軸X1方向の大きさが大きくなることを好適に防止できる。
これにより、センサ120の設置における自由度をより高めることができる。
【0081】
(2)可動プーリ32は、シーブ部322の背面322bに、回転軸X1を間隔を空けて囲むシリンダ部323(筒壁部)を有している。
プランジャ7の外周70a側(外径側)は、シリンダ部323の内径側を回転軸X1の径方向に延びるフランジ部701(平板部)を有している。
被検出部である凸部73は、フランジ部701に設けることができる。
【0082】
このように、無段変速機1の既存の部品であるプランジャ7に、被検出部である凸部73を設けたので、センシング用の別部品、例えばパルスギアを別途設ける必要が無い。
センシング用の別部品を設けると、別部品の分だけ無段変速機1の回転軸X1方向の長さが長くなる。別部品を用いないことで、無段変速機1が回転軸X1方向に大きくなることを好適に防止できる。また、センシングのために、部品点数を増やす必要が無いので、部品点数の増加に起因する作製コストの増大を好適に防止できる。
また、部品点数が増えると、公差の積み上げの影響が懸念される。本実施形態は、部品点数を増やさないので、かかる懸念を低減することができる。
【0083】
(3)被検出部は、回転軸X1方向に突出する凸部73、または回転軸X1方向に窪んだ凹部74とすることができる。
【0084】
このように構成すると、プランジャ7のフランジ部701に、例えば半抜き加工を施すことで、回転軸X1方向に突出する凸部73、または回転軸X1方向に窪んだ凹部74を簡単に作成できる。
【0085】
(4)プランジャ7は、フランジ部701(平板部)の外周に、Dリング8の収容溝72(シール支持部)を有している。収容溝72に外嵌したDリング8は、可動プーリ32のシリンダ部323の内周323bと、フランジ部701の外周70aとの隙間をシールする。
プランジャ7は、フランジ部701よりも内径側に、収容溝72が形成されたフランジ部701よりも厚みが薄い薄肉領域を有することができる。
薄肉領域は、フランジ部701の内径側の第1筒壁部703と、第1接続部704と、第2筒壁部705と、第2接続部706と、が設けられた領域である。
【0086】
このように構成すると、フランジ部701において、Dリング8の支持強度を確保してシール性を高めることができる。さらに、フランジ部701以外を薄肉で形成することで、プランジャ7の軽量化が可能となる。すなわち、シール性の向上と、プランジャ7の軽量化の両立を図ることができる。
【0087】
また、薄肉領域は、フランジ部701側に向かうにつれて段階的に拡径する形状で形成されている。よって、薄肉領域の厚みを、フランジ部701の厚みから一割程度薄くしても、プランジャ7の剛性を確保できる。よって、プランジャ7の剛性を確保しつつ、軽量化できる。
【0088】
(5)被検出部である凸部73は、シール支持部である収容溝72が形成されたフランジ部701と、フランジ部701よりも厚みが薄い薄肉領域との境界を避けて設けることができる。
【0089】
比較例として、凸部73をフランジ部701と薄肉領域との境界を跨いで形成した場合、凸部73の形状が、設計上の形状から崩れる可能性がある。凸部73の形状が崩れると、センサ120による凸部73の検出に影響が及び、センサ120の出力パルスが、予定されていた形状とは異なる可能性がある。かかる場合、プライマリプーリ3の回転速度を適切に検出できなくなる可能性がある。
凸部73を、フランジ部701と薄肉領域との境界を避けて、フランジ部701に設けると、凸部73を適切な形状で形成することができる。これにより、プライマリプーリ3の回転速度を適切に検出できる。
【0090】
(6)固定プーリ31は、ベアリング34Aを介して、サイドカバー13(支持部)で回転可能に支持されている。
サイドカバー13には、ベアリング34Aの回転軸X1方向の移動を規制するベアリングリテーナ9(リテーナ)が設けられている。
回転軸X1方向から見てベアリングリテーナ9では、
サイドカバー13との連結部である複数の連結片901が、回転軸X1周りの周方向に互いに間隔を空けて設けられている。
回転軸X1周りの周方向で隣接する連結片901、901の間の外周90aは、連結片901よりも回転軸X1側に位置している。
回転軸X1方向から見てベアリングリテーナ9の外周90aの外径側に、プランジャ7における凸部73(被検出部)が設けられた領域が視認可能に位置している。
【0091】
このように構成すると、回転軸X1方向から見て、外周90aの外側にセンサ120を配置可能な領域Rが確保される。
そのため、プランジャ7の凸部73が設けられた領域に、センサ120を対向配置することができる。
よって、比較例の回転軸X1方向から見て円形を成すベアリングリテーナに比べて、無段変速機1の筐体におけるセンサ120を設ける領域が、回転軸X1の径方向に大型化することを好適に防止できる。
【0092】
前記した実施形態では、回転軸X1方向から見たベアリングリテーナ9の外形が、センサ120との干渉を避けるために、略三角形形状である場合を例示した。
ベアリングリテーナの形状は、センサ120との干渉を避けることができる形状であれば良い。例えば、
図10に示すように、略四角形形状のベアリングリテーナ9Aであっても良い。
【0093】
図10は、変形例にかかるベアリングリテーナ9A(リテーナ)を説明する図である。
図10は、ベアリングリテーナ9Aと、センサ120と、プランジャ7とを重畳して示している。
【0094】
図10に示すように、ベアリングリテーナ9Aの外形は、回転軸X1方向から見て、略四角形形状を成している。
ベアリングリテーナ9Aの基部90では、回転軸X1周りの周方向に90度間隔で、連結片901が設けられている。回転軸X1周りの周方向で隣り合う連結片901、901の間の領域の外周90aが、連結片901よりも回転軸X1側に位置している。
ベアリングリテーナ9Aでは、回転軸X1方向から見たベアリングリテーナ9Aの外形が、略四角形形状を成している。
そのため、回転軸X1から見て、基部90の外周90aの径方向外側に、センサ120を配置することが可能な空間的な余裕がある(
図10において、ハッチングを付した領域R参照)。
【0095】
図10に示すように、ベアリングリテーナ9Aの連結片901の外周901bは仮想円Im1上に位置するが、基部90の外周90aは、仮想円Im1よりも、径方向内側に位置する。すなわち、基部90の外周90aの径方向外側の、仮想円Im1に囲まれた領域Rは、ベアリングリテーナ9Aに干渉されずにセンサ120を配置できる領域である。領域Rは、回転軸X1方向のサイドカバー13(
図3参照)側から見て、プランジャ7に形成された凸部73を視認可能な領域である。回転軸X1方向から見た場合、領域Rにおいて、ベアリングリテーナ9Aは、プランジャ7にオーバーラップしていない。
【0096】
領域Rは、回転軸X1の径方向と、回転軸X1の軸方向の両方に、空間的な余裕を持たせることができる。
よって、ベアリングリテーナ9Aを採用した場合であっても、無段変速機1の筐体におけるセンサ120を設ける領域が、回転軸X1方向と、回転軸X1の径方向に大型化することを好適に防止できる。
【0097】
本発明のある態様として、センサの配置構造を車両に適用する例を説明した。本発明は、この態様に限定されない。センサの配置構造は、車両以外にも適用することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0099】
13 :サイドカバー(支持部)
131 :支持壁部
3 :プライマリプーリ(プーリ)
31 :固定プーリ
32 :可動プーリ
322 :シーブ部
322b :背面
323 :シリンダ部(筒壁部)
34A、34B :ベアリング
7 :プランジャ
701 :フランジ部(平板部701)
72 :収容溝(シール支持部)
73 :凸部(被検出部)
9、9A :ベアリングリテーナ(リテーナ)
90a :外周
901 :連結片
100 :センサの配置構造
120 :センサ
R :領域
R1 :油室
X1 :回転軸