(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】インセルタッチパネル
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240110BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240110BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240110BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240110BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240110BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240110BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240110BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G06F3/041 412
G02F1/133 550
G02F1/1333
G02F1/1335 505
G02F1/1368
G06F3/041 512
G06F3/044 129
G09G3/20 691D
G09G3/20 621K
G09G3/36
(21)【出願番号】P 2022070434
(22)【出願日】2022-04-21
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2021133885
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸輔
(72)【発明者】
【氏名】木田 和寿
(72)【発明者】
【氏名】北川 大二
【審査官】遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】特許第6857563(JP,B2)
【文献】特開2021-67852(JP,A)
【文献】特開2020-148869(JP,A)
【文献】特許第6640613(JP,B2)
【文献】特許第5513933(JP,B2)
【文献】特許第6848043(JP,B2)
【文献】特開2018-142270(JP,A)
【文献】特許第5382658(JP,B2)
【文献】特許第6050728(JP,B2)
【文献】特許第6375223(JP,B2)
【文献】特開2018-181151(JP,A)
【文献】特開2018-190347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041 - 3/047
G02F 1/133 - 1/1368
G09G 3/20 - 3/26
G09G 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサ基板と、
前記タッチセンサ基板に形成された画素電極と、
前記タッチセンサ基板に形成されたタッチセンサ電極と、
前記タッチセンサ基板に対向して配置された対向基板と、
前記対向基板に形成された対向基板電極であって、タッチ検出に使用されない対向基板電極と、
前記タッチセンサ基板と前記対向基板との間に配置された液晶層と、
前記タッチセンサ電極に駆動信号を供給する駆動制御回路と、
前記画素電極に表示用信号を供給する表示制御回路と、
前記表示制御回路により前記表示用信号を前記画素電極に供給する表示モードと、前記駆動制御回路により前記駆動信号を前記タッチセンサ電極に供給するタッチ検出モードとを、時分割で実行するモード切替制御回路と、
前記タッチ検出モードが実行されている期間に、前記駆動信号と同期した信号でかつ前記駆動信号と同じ極性の信号を前記対向基板電極に供給するか、または、前記タッチ検出モードが実行されている期間に、前記対向基板電極の電位をフローティングの状態にする、対向基板電極制御回路と、を備える、インセルタッチパネル。
【請求項2】
前記対向基板に配置されたブラックマトリクスを、さらに備え、
前記対向基板電極は、平面視で前記ブラックマトリクスと重なる位置に配置されている、請求項1に記載のインセルタッチパネル。
【請求項3】
前記対向基板に配置されたカラーフィルタを、さらに備え、
前記対向基板電極は、平面視で前記カラーフィルタと重ならない位置に配置されている、請求項1に記載のインセルタッチパネル。
【請求項4】
前記対向基板電極制御回路は、前記表示モードが実行されている期間に、視野角を変更するための視野角制御信号を前記対向基板電極に供給する、請求項1~3のいずれか1項に記載のインセルタッチパネル。
【請求項5】
前記対向基板電極制御回路は、
前記表示モードが実行されている期間に、前記視野角が狭視野角に設定されている場合には、第1の視野角制御信号を前記対向基板電極に供給することにより、前記対向基板電極と前記タッチセンサ電極との電位差を生じさせ、
前記表示モードが実行されている期間に、前記視野角が広視野角に設定されている場合には、前記第1の視野角制御信号よりも小さい振幅を有する第2の視野角制御信号を前記対向基板電極に供給するか、または前記電位差をゼロにする、請求項4に記載のインセルタッチパネル。
【請求項6】
前記対向基板電極制御回路は、前記タッチ検出モードが実行されている期間に、前記駆動信号と同期した信号でかつ前記駆動信号と同じ極性の信号を、前記視野角制御信号に重畳させて前記対向基板電極に供給する、請求項4に記載のインセルタッチパネル。
【請求項7】
前記対向基板電極制御回路は、前記タッチ検出モードが実行されている期間に、視野角を変更するための視野角制御信号から所定の電圧を低下させた第1のベース電圧を前記対向基板電極に供給し、前記第1のベース電圧に前記駆動信号と同期しかつ同じ極性を有しかつ同じ振幅のパルス状の電圧を前記対向基板電極に供給する、請求項
4に記載のインセルタッチパネル。
【請求項8】
前記対向基板電極制御回路は、前記タッチ検出モードが実行されている期間に、視野角を変更するための視野角制御信号と同一の第2のベース電圧を前記対向基板電極に供給し、前記第2のベース電圧に前記駆動信号と同期しかつ正の極性のパルス電圧を重畳した電圧を前記対向基板電極に供給する、請求項
4に記載のインセルタッチパネル。
【請求項9】
前記対向基板電極制御回路は、
前記タッチ検出モードが実行されている期間で、かつ、視野角を変更するための視野角制御信号の電圧が前記タッチセンサ電極の電圧に対して正の極性となる期間に、前記視野角制御信号と同一の第2のベース電圧を前記対向基板電極に供給し、
前記タッチ検出モードが実行されている期間で、かつ、前記視野角制御信号の電圧が前記タッチセンサ電極の電圧に対して負の極性となる期間に、前記視野角制御信号の電圧から前記駆動信号の振幅と同一の値低下させた第3のベース電圧を前記対向基板電極に供給する、請求項
4に記載のインセルタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インセルタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インセルタッチパネルが知られている。このようなインセルタッチパネルは、薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタ基板と、タッチセンサ電極と、対向基板と、を備える。薄膜トランジスタ及びタッチセンサは、薄膜トランジスタ基板上に形成されている。そして、このインセルタッチパネルは、1つのフレーム期間において、薄膜トランジスタが駆動する表示モードと、タッチセンサが駆動するタッチ検出モードとを交互に実行する。
【0003】
また、従来、対向基板上に視野角切替用の電極が形成された液晶表示装置が知られている。このような液晶表示装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
上記特許文献1の液晶表示装置では、視野角切替用の電極に、視野角の切替を制御するための交流電圧が出力され、広視野角で画像が表示されるモードと、狭視野角で画像が表示されるモードとが切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインセルタッチパネルに、上記特許文献1に記載されているような対向基板上にタッチ検出に使用されない電極を形成した場合、タッチセンサ電極と対向基板上の電極との間で負荷となる容量が生じる。このため、タッチセンサ電極と対向基板上の電極との間の負荷となる容量に起因して、タッチセンサ電極と指示体(指又はペン等)との間の容量の形成が妨げられる。この結果、インセルタッチパネルにおけるタッチ検出の性能が低下するという問題点がある。
【0007】
そこで、本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、対向基板上にタッチ検出に使用されない電極を形成する場合でも、タッチ検出の性能の低下を防止することが可能なインセルタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一の態様に係るインセルタッチパネルは、タッチセンサ基板と、タッチセンサ基板に形成された画素電極と、タッチセンサ基板に形成されたタッチセンサ電極と、タッチセンサ基板に対向して配置された対向基板と、対向基板に形成された対向基板電極であって、タッチ検出に使用されない対向基板電極と、タッチセンサ基板と対向基板との間に配置された液晶層と、タッチセンサ電極に駆動信号を供給する駆動制御回路と、画素電極に表示用信号を供給する表示制御回路と、表示制御回路により表示用信号を画素電極に供給する表示モードと、駆動制御回路により駆動信号をタッチセンサ電極に供給するタッチ検出モードとを、時分割で実行するモード切替制御回路と、タッチ検出モードが実行されている期間に、駆動信号と同期した信号でかつ駆動信号と同じ極性の信号を対向基板電極に供給するか、または、タッチ検出モードが実行されている期間に、対向基板電極の電位をフローティングの状態にする、対向基板電極制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のインセルタッチパネルによれば、対向基板電極とタッチセンサ電極との間の負荷となる容量を低減することができるので、タッチセンサ電極と指示体との間の容量の形成が妨げられない。この結果、対向基板上にタッチ検出に使用されない電極を形成する場合でも、タッチ検出の性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態におけるインセルタッチパネル装置100のブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、対向基板電極23の配置位置を示す平面図である。
【
図2B】
図2Bは、ブラックマトリクス22の配置位置を説明するための平面図である。
【
図3A】
図3Aは、
図2Aにおける1000-1000線に沿ったパネルモジュール1の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、狭視野角モードで白表示を行う場合のパネルモジュール1の状態を示す断面図である。
【
図3C】
図3Cは、狭視野角モードで黒表示を行う場合のパネルモジュール1の状態を示す断面図である。
【
図3D】
図3Dは、広視野角モードで白表示を行う場合のパネルモジュール1の状態を示す断面図である。
【
図3E】
図3Eは、広視野角モードで黒表示を行う場合のパネルモジュール1の状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、タッチセンサ基板10に形成された回路の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、対向基板電極23とタッチセンサ電極12との配置関係を示す模式図である。
【
図6】
図6は、タッチパネル制御回路3の機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、タッチパネル制御回路3から視野角制御回路2に供給される信号及び視野角制御回路2からパネルモジュール1に供給される信号の波形の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態による対向基板電極23における負荷となる容量の低減の原理を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、第1比較例の電極123及び第2比較例の電極123aによる負荷となる容量の発生の原理を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の第1変形例によるインセルタッチパネル装置200のブロック図である。
【
図11】
図11は、タッチパネル制御回路3から視野角制御回路202に供給される信号及び視野角制御回路202からパネルモジュール1に供給される信号の波形の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の第2変形例によるインセルタッチパネル装置300のブロック図である。
【
図13】
図13は、タッチパネル制御回路3から視野角制御回路302に供給される信号及び視野角制御回路302からパネルモジュール1に供給される信号の波形の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態のインセルタッチパネル装置400のブロック図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態のタッチパネル制御回路403のブロック図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態による対向基板電極423における負荷となる容量低減の原理を説明するための模式図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態によるインセルタッチパネル装置400における信号の波形の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、対向基板電極423の構成を示す模式図である。
【
図20】
図20は、第1及び第2実施形態の変形例によるパネルモジュール501の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態におけるインセルタッチパネル装置100のブロック図である。
図1に示すように、インセルタッチパネル装置100は、パネルモジュール1と、視野角制御回路2と、タッチパネル制御回路3とを含む。なお、
図1では、視野角制御回路2と、タッチパネル制御回路3とを、別個の回路として図示しているが、単一の回路(集積回路)により、視野角制御回路2及びタッチパネル制御回路3の両方の機能が実現されてもよい。
【0013】
図2Aは、対向基板電極23の配置位置を示す平面図である。
図2Bは、ブラックマトリクス22の配置位置を説明するための平面図である。
図3Aは、
図2Aにおける1000-1000線に沿ったパネルモジュール1の断面図である。
図3Aに示すように、パネルモジュール1は、タッチセンサ基板10と、対向基板20と、タッチセンサ基板10と対向基板20とに挟持された液晶層30とを有する。また、パネルモジュール1には、タッチセンサ基板10と対向基板20とを挟むように、偏光板等の光学部材(図示せず)が設けられている。また、パネルモジュール1の表面(パネルモジュール1よりもZ1方向)には、カバーガラス(図示せず)が設けられている。また、パネルモジュール1の背面(パネルモジュール1よりもZ2方向)には、バックライト(図示せず)が設けられている。なお、
図3Aでは、液晶分子30a、絶縁層13及び画素電極11dの図示を省略している。
【0014】
パネルモジュール1の表側からユーザによって画像が視認されるように構成されている。そして、パネルモジュール1の表面(タッチ面)において、例えば、指等(指示体)によるタッチ操作を受け付ける。また、パネルモジュール1において、液晶層30に含まれる液晶分子30aの駆動方式は横電界駆動方式である。横電界駆動方式を実現するため、電界を形成するための薄膜トランジスタ層11(以下、「TFT層11」という)がタッチセンサ基板10に形成されている。
【0015】
図3B~
図3Eは、パネルモジュール1の構成を示す断面図である。
図3B~
図3Eに示すように、パネルモジュール1は、TFT層11と、タッチセンサ電極12と、タッチセンサ電極12と絶縁層13を介して積層された画素電極11dとを有する。タッチセンサ電極12と画素電極11dとは絶縁層13を介して積層されており、FFS(Fringe Field Switching)型の電極構造を構成する。絶縁層13の材料としては、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物等の無機材料が挙げられる。
【0016】
タッチセンサ電極12は、ベタ電極であることが好ましい。タッチセンサ電極12は、複数の絵素毎に配置されてもよく、複数の絵素で共通して配置されてもよい。上記ベタ電極とは、少なくとも平面視において絵素の光学的開口部と重畳する領域に、スリットや開口が設けられていない電極をいう。タッチセンサ電極12の材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電材料が挙げられる。
【0017】
図4は、タッチセンサ基板10に形成された回路の構成を示す図である。タッチセンサ基板10には、複数のゲート線11aと、複数のゲート線11aと交差する複数のデータ線11bとが形成されている。タッチセンサ基板10には、複数のデータ線11bと複数のゲート線11aとで規定される複数の画素Pが形成されている。画素Pには、薄膜トランジスタ(TFT)11cと、画素電極11dとが設けられている。画素電極11dは、対向電極として機能するタッチセンサ電極12との間に容量を有する。また、タッチセンサ電極12は、複数の画素電極11dに共通して配置された共通電極である。また、TFT11cのゲートはゲート線11aと接続され、TFT11cのソースはデータ線11bと接続され、TFT11cのドレインは画素電極11dと接続される。画素電極11d及びタッチセンサ電極12は、それぞれ、例えば、ITO等の透明導電膜又はメッシュ状の金属膜で構成されている。ここで、
図3Aに示すTFT層11は、ゲート線11aが形成された層と、データ線11bが形成された層と、TFT11cが形成された層と、画素電極11dが形成された層とを含む。
【0018】
また、
図3Aに示すように、対向基板20の液晶層30側には、複数のカラーフィルタ21が形成されている。複数のカラーフィルタ21は、赤色フィルタ、緑色フィルタ、及び青色フィルタを含む。また、複数のカラーフィルタ21の各々の間には、ブラックマトリクス22が形成されている。また、ブラックマトリクス22の液晶層30側に、対向基板電極23が形成されている。ブラックマトリクス22は、例えば、遮光性を有する樹脂材料により構成されている。対向基板電極23は、これに限られないが、金属膜又はITO等の透明導電膜で構成されている。
【0019】
図2Aに示すように、対向基板電極23は、平面視で、ブラックマトリクス22の一部と重なる位置に形成されている。詳細には、
図2A及び
図2Bに示すように、対向基板電極23は、複数のカラーフィルタ21のX方向の間に配置されたブラックマトリクス22に重なる位置には配置されない。対向基板電極23は、複数のカラーフィルタ21のY方向の間に配置されたブラックマトリクス22に重なる位置に配置されている。この構成によれば、遮光を目的とするブラックマトリクス22と重なる位置に対向基板電極23を配置するので、対向基板電極23により光が吸収又は拡散された場合でも、表示に影響を与えない。この結果、対向基板電極23が対向基板20に配置された場合でも、表示に影響を与えない。また、カラーフィルタ21に入射する光、又はカラーフィルタ21から出射した光を、対向基板電極23が遮らないので、対向基板電極23が対向基板20に配置された場合でも、表示に影響を与えない。
【0020】
図5は、対向基板電極23とタッチセンサ電極12との配置関係を示す模式図である。
図5に示すように、対向基板電極23は、平面視で梯子状に形成されている。また、タッチセンサ電極12は、平面視でマトリクス状に形成されている。また、
図2及び
図5に示すように、対向基板電極23には、平面視でカラーフィルタ21と重なる位置にスリット23aが形成されている。
【0021】
図6は、タッチパネル制御回路3の機能ブロック図である。
図6に示すように、タッチパネル制御回路3は、表示制御部31と、駆動制御部32と、モード切替制御部33とを含む。表示制御部31は、データ線11bを介して、TFT11cにデータ信号(表示用信号)を供給する。また、表示制御部31は、ゲート線11aを介して、TFT11cにゲート信号を供給することにより、TFT11cがオンになり、画素電極11dにデータ信号が供給される。また、駆動制御部32は、タッチセンサ電極12に駆動信号を供給する。駆動信号は、例えば、パルス状の電圧波形を有する。そして、駆動制御部32は、タッチセンサ電極12と指示体との間に形成される容量に応じて波形が変化した駆動信号に基づいて、タッチを検出する。モード切替制御部33は、表示モードとタッチ検出モードとを、時分割で実行する。表示モードとは、表示制御部31によりデータ信号を画素電極11dに供給するモードである。タッチ検出モードとは、駆動制御部32により駆動信号をタッチセンサ電極12に供給するモードである。なお、
図6では、表示制御部31と、駆動制御部32と、モード切替制御部33とを、タッチパネル制御回路3内の機能ブロックとして図示しているが、機能ごとに別個の回路を構成してもよい。
【0022】
図7は、タッチパネル制御回路3から視野角制御回路2に供給される信号及び視野角制御回路2からパネルモジュール1に供給される信号の波形の一例を示す図である。
図7に示すように、タッチセンサ電極12には、タッチパネル制御回路3から電圧Vcomが印加されている。視野角制御回路2は、視野角を制御するための視野角制御信号S1を対向基板電極23に供給する。例えば、視野角制御回路2は、パネルモジュール1の視野角が狭視野角(以下、「狭視野角モード」という)に設定されている場合には、視野角制御信号S1を対向基板電極23に供給することにより、対向基板電極23とタッチセンサ電極12(共通電極)との間に電位差を生じさせる。これにより、液晶層30に電界を生じさせ、パネルモジュール1の視野角を狭くする。例えば、狭視野角モードで白表示とする場合、例えば、視野角制御回路2は、タッチセンサ電極12及び画素電極11dのいずれか一方に対して定電圧(コモン電圧Vcom)を印加し、他方に対して上記コモン電圧Vcomとは異なる電位を印加する制御を行う。また、視野角制御回路2は、上記対向基板電極23に対して交流電圧を印加する制御を行う。上記交流電圧の絶対値は、タッチセンサ電極12及び画素電極11dに印加される電圧の絶対値と異なることが好ましい。一例としては、画素電極11dにコモン電圧Vcomが印加された場合、タッチセンサ電極12には上記コモン電圧Vcomに対して4Vの交流電圧が印加され、対向基板電極23には上記コモン電圧に対して6Vの交流電圧が印加される。これにより、
図3Bに示すように、タッチセンサ電極12と画素電極11dとの間にはフリンジ電界が形成され、対向基板電極23とタッチセンサ電極12及び画素電極11dとの間には、液晶層30の厚み方向に対して斜め電界が形成される。この結果、狭い視野角の範囲からはパネルモジュール1上の画像を観察することができる。一方、液晶層30の液晶分子30aはタッチセンサ基板10に対して角度をなすため、広い視野角の範囲からパネルモジュール1を観察した場合には、コントラストが極端に低くなる等の画像の変化が得られ、画像が観察され難くなる。
【0023】
狭視野角モードで黒表示とする場合、例えば、視野角制御回路2は、タッチセンサ電極12及び画素電極11dに対してコモン電圧Vcomを印加する制御を行う。また、視野角制御回路2は、対向基板電極23に対して交流電圧を印加する制御を行う。上記交流電圧の絶対値は、上記コモン電圧Vcomの絶対値と異なることが好ましい。一例としては、
図3Cに示すように、画素電極11dにコモン電圧Vcomが印加された場合、タッチセンサ電極12にもコモン電圧Vcom(コモン電圧に対して0Vの電圧)が印加され、対向基板電極23には上記コモン電圧Vcomに対して6Vの交流電圧が印加される。これにより、対向基板電極23と、タッチセンサ電極12及び画素電極11dとの間には斜め電界が形成される。液晶層30の液晶分子30aは、上記斜め電界により、タッチセンサ基板10に対して角度をなす。液晶層30の面内で液晶分子30aの配向方位は変化しないため、タッチセンサ基板10の背面からの光を透過せず黒表示を行う。液晶分子30aはタッチセンサ基板10に対して角度をなすため、広い視野角の範囲からパネルモジュール1を観察した場合には、狭い視野角の範囲から観察される黒表示よりも白っぽい表示として観察される。
【0024】
広視野角モードで白表示とする場合、例えば、視野角制御回路2は、タッチセンサ電極12及び画素電極11dのいずれか一方に対して定電圧(コモン電圧Vcom)を印加し、他方に対して上記コモン電圧Vcomとは異なる電位を印加する制御を行う。また、視野角制御回路2は、対向基板電極23に対してタッチセンサ電極12及び画素電極11dと共通の定電圧(コモン電圧Vcom)を印加する制御を行う。一例としては、画素電極11dにコモン電圧Vcomが印加された場合、タッチセンサ電極12には上記コモン電圧Vcomに対して4Vの交流電圧が印加され、対向基板電極23にはタッチセンサ電極12と共通のコモン電圧Vcomが印加される。これにより、
図3Dに示すように、タッチセンサ電極12と画素電極11dとの間にはフリンジ電界が形成される。一方で、狭視野角モードとは異なり、液晶層30の厚み方向の電界は小さい。そのため、液晶分子30aは、タッチセンサ電極12と画素電極11dとの間に形成される電界により、タッチセンサ基板10に対して平行に配向しつつ配向方位を変化させる。
【0025】
広視野角モードで黒表示とする場合は、例えば、視野角制御回路2は、画素電極11d及びタッチセンサ電極12に対してコモン電圧Vcomを印加する制御を行う。また、視野角制御回路2は、上記対向基板電極23に対してもタッチセンサ電極12又は画素電極11dと共通の定電圧を印加する制御を行う。
図3Eに示すように、液晶層30中に電界が発生しないため、液晶分子30aは、初期配向方位に配向する。上記初期配向方位は、タッチセンサ基板10に対して平行であり、かつ平面視において図示しない偏光板の吸収軸と平行であることが好ましい。
【0026】
視野角制御回路2は、パネルモジュール1の視野角が広視野角に設定されている場合には、
図7に示す視野角制御信号S1よりも小さい振幅を有する信号を対向基板電極23に供給して対向基板電極23と電圧Vcomが印加されているタッチセンサ電極12(共通電極)との間の電位差を小さくするか、または当該電位差をゼロにする。これにより、パネルモジュール1の視野角を広くする。
【0027】
上述した狭視野角モードの白表示と広視野角モードの白表示とは、対向基板電極23に電圧を印加することで切り替えることができる。同様に、狭視野角モードの黒表示と広視野角モードの黒表示とは、対向基板電極23に電圧を印加することで切り替えることができる。中間調表示も同様である。狭視野角モードと広視野角モードとは、対向基板電極23への交流電圧の印加の有無で切り替えることができる。
【0028】
また、表示制御部31は、フレーム期間が切り替わるタイミングを示すフレーム同期信号S2を、視野角制御回路2に送信する。そして、視野角制御回路2は、フレーム同期信号S2に応じて、電圧Vcomに対する視野角制御信号S1の電圧の極性を反転させる。言い換えると、視野角制御回路2は、1フレーム期間ごとに、視野角制御信号S1の電圧の極性を反転させる。
【0029】
また、駆動制御部32は、駆動信号をタッチセンサ電極12に供給するタイミングを示す駆動同期信号S3を、視野角制御回路2に送信する。また、モード切替制御部33は、表示モードとタッチ検出モードとを切り替えるタイミングを示すモード切替同期信号S4を、視野角制御回路2に送信する。表示モードとタッチ検出モードとは、1フレーム期間中に時分割で実行される。例えば、表示モードとタッチ検出モードとは、1フレーム期間中に交互に複数回実行される。そして、視野角制御回路2は、モード切替同期信号S4に基づいて、現時点が、タッチパネル制御回路3により表示モードが実行されている期間T1であるか、又は、タッチ検出モードが実行されている期間T2であるかを判断する。
【0030】
ここで、第1実施形態では、視野角制御回路2は、タッチ検出モードが実行されている期間T2に、負荷低減信号S5を対向基板電極23に供給する。この負荷低減信号S5は、駆動信号と同期した信号でかつ駆動信号と同じ極性の信号である。ここで、駆動同期信号S3は、駆動信号と同期した信号でかつ駆動信号と同じ極性の信号である。そして、視野角制御回路2は、視野角制御信号S1に、駆動同期信号S3と同期した信号でかつ駆動同期信号S3と同じ極性の信号を重畳させることにより、負荷低減信号S5を生成する。駆動信号は、例えば、
図7に示す駆動同期信号S3のように、期間T2のうちの期間T2aと期間T2bとで異なる波形を有する。例えば、期間T2aでは、駆動信号にはパルス状の電圧は含まれず、期間T2bでは、駆動信号にはパルス状の電圧が含まれる。また、1フレーム期間に、複数の期間T2bが設けられている。そして、
図7に示すように複数の期間T2bにおける駆動信号(駆動同期信号S3)の周波数(パルスの幅や数)は、期間T2bごとに異なる大きさであってもよい。そして、
図7に示すように、負荷低減信号S5は、期間T2aでは視野角制御信号S1から所定の電圧低下させたベース電圧Vbを有し、期間T2bではベース電圧Vbに上記パルス状の電圧と同期しかつ上記パルス状の電圧と同じ極性を有しかつ上記パルス状の電圧と同じ振幅の電圧が印加された電圧値を有する。
【0031】
図8は、第1実施形態による対向基板電極23における負荷となる容量が低減される原理を説明するための模式図である。
図9は、第1比較例の電極123及び第2比較例の電極123aによる負荷となる容量の発生の原理を説明するための図である。第1比較例の電極123は、グラウンド(GND)に接続されている。これにより、第1比較例の電極123の電位は、接地電圧となっている。また、第2比較例の電極123aには、タッチ検出モードが実行されている期間においても、視野角制御信号が印加されている。なお、第1比較例及び第2比較例の構成は、第1実施形態の作用及び効果を説明するために記載したものであり、第1比較例及び第2比較例の構成を従来の構成として自認するものではない。
【0032】
接地電圧と駆動信号の電圧とは、異なる値及び波形である。また、視野角制御信号と駆動信号の電圧とは、異なる値及び波形である。このため、
図9に示すように、第1比較例の電極123の電位及び第2比較例の電極123aの電位は、いずれも、駆動信号が印加されるタッチセンサ電極112の電位と異なる値となる。この結果、電極123とタッチセンサ電極112との間に電界が生じ、負荷となる容量CLが生じる。この負荷となる容量CLに起因して、指示体Qがパネルモジュールに触れた場合に、指示体Qとタッチセンサ電極112との間での容量の形成が阻害され、タッチ検出のシグナルが低下してしまう。
【0033】
これに対して、
図7に示すように、第1実施形態による対向基板電極23には、タッチセンサ電極12に印加される駆動同期信号S3と同期した信号でかつ駆動同期信号S3と同じ極性の信号である負荷低減信号S5が印加される。このため、
図8に示すように、対向基板電極23とタッチセンサ電極12との間に電界が生じないか、又は、電界が生じた場合でも微小の大きさとなる。この結果、対向基板電極23に起因するタッチ検出(シグナル)に対する負荷となる容量が低減され、指示体Qがパネルモジュール1に触れた場合に、対向基板電極23の影響を低減した状態で、指示体Qのタッチを検出することが可能となる。なお、
図8では、液晶分子30a、絶縁層13及び画素電極11dの図示を省略している。
【0034】
[第1実施形態の第1変形例]
次に、
図10及び
図11を参照して、第1実施形態の第1変形例によるインセルタッチパネル装置200の構成について説明する。第1実施形態の構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図10は、第1実施形態の第1変形例によるインセルタッチパネル装置200のブロック図である。
図11は、タッチパネル制御回路3から視野角制御回路202に供給される信号及び視野角制御回路202からパネルモジュール1に供給される信号の波形の一例を示す図である。
【0035】
図10に示すように、インセルタッチパネル装置200は、視野角制御回路202を含む。
【0036】
ここで、上記第1実施形態では、期間T2aには、視野角制御信号S1から所定の電圧低下させたベース電圧Vbを対向基板電極23に供給し、期間T2bには、駆動信号と同期しかつベース電圧Vbに対して正の極性のパルス電圧を対向基板電極23に供給するように視野角制御回路2を構成したが、本開示はこれに限られない。視野角制御回路202は、
図11に示すように、期間T2aには、視野角制御信号S1と同一の電圧を負荷低減信号S5aのベース電圧Vb2として対向基板電極23に供給し、期間T2bには、当該ベース電圧Vb2に駆動信号と同期しかつ正の極性のパルス電圧を重畳した電圧である負荷低減信号S5aを、対向基板電極23に供給する。この第1変形例の構成によっても、対向基板電極23とタッチセンサ電極12との間に生じる負荷となる容量を低減することができる。この結果、タッチセンサ電極12と指示体との間の容量の形成が妨げられないので、対向基板20上に電極を形成する場合でも、タッチ検出の性能の低下を防止することができる。また、上記第1実施形態では、負荷低減信号S5を生成するために、視野角制御信号S1の正の極性の電圧及び負の極性の電圧のそれぞれに対して、2つのレベルの電圧を印加する電源(合計4種のレベルを出力する電源)が必要になる。これに対して、第1実施形態の第1変形例では、負荷低減信号S5aを生成するために、視野角制御信号S1の正の極性の電圧及び負の極性の電圧のそれぞれに対して、1つのレベルの電圧を印加する電源(合計2種のレベルを出力する電源)を準備すればよい。この結果、第1実施形態に比べて、視野角制御回路202の構成を簡素化することができ、低コスト化が可能となる。
【0037】
[第1実施形態の第2変形例]
次に、
図12及び
図13を参照して、第1実施形態の第2変形例によるインセルタッチパネル装置300の構成について説明する。第1実施形態の構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図12は、第1実施形態の第2変形例によるインセルタッチパネル装置300のブロック図である。
図13は、タッチパネル制御回路3から視野角制御回路302に供給される信号及び視野角制御回路302からパネルモジュール1に供給される信号の波形の一例を示す図である。
【0038】
図12に示すように、インセルタッチパネル装置300は、視野角制御回路302を含む。
【0039】
視野角制御回路302は、
図13に示すように、視野角制御信号S1の電圧が電圧Vcomに対して正の極性となる期間T11では、視野角制御信号S1と同一の電圧を負荷低減信号S5bのベース電圧Vb3として対向基板電極23に供給する。また、視野角制御信号S1の電圧が電圧Vcomに対して負の極性となる期間T12では、視野角制御信号S1の電圧から駆動信号の振幅と同一の値低下させた電圧を負荷低減信号S5bのベース電圧Vb4として対向基板電極23に供給する。この第2変形例の構成によっても、対向基板電極23とタッチセンサ電極12との間に生じる負荷となる容量を低減することができる。この結果、タッチセンサ電極12と指示体との間の容量の形成が妨げられないので、対向基板20上に電極を形成する場合でも、タッチ検出の性能の低下を防止することができる。また、第1実施形態の第2変形例では、負荷低減信号S5bを生成するために、視野角制御信号S1の正の極性の電圧及び負の極性の電圧のそれぞれに対して、1つのレベルの電圧を印加する電源(合計2種のレベルを出力する電源)を準備すればよい。この結果、第1実施形態に比べて、視野角制御回路302の構成を簡素化することができ、低コスト化が可能となる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、
図14~
図18を参照して、第2実施形態によるインセルタッチパネル装置400の構成について説明する。第1実施形態の構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図14は、第2実施形態のインセルタッチパネル装置400のブロック図である。
図15は、第2実施形態のタッチパネル制御回路403のブロック図である。
図16は、第2実施形態による対向基板電極423における負荷となる容量が低減される原理を説明するための模式図である。
図17は、第2実施形態によるインセルタッチパネル装置400における信号の波形の一例を示す図である。
図18は、対向基板電極423の構成を示す模式図である。
【0041】
図14に示すように、インセルタッチパネル装置400は、パネルモジュール401と、視野角制御回路402と、タッチパネル制御回路403とを含む。また、
図15に示すように、タッチパネル制御回路403は、駆動制御部432を含む。駆動制御部432は、第1実施形態と異なり、視野角制御回路402に駆動同期信号S3を送信しない。
【0042】
また、
図16に示すように、パネルモジュール401は、対向基板電極423を含む。第2実施形態では、視野角制御回路402は、対向基板電極423に対して、
図17に示すように、表示モードを実行している期間T1には、視野角制御信号S1を供給するとともに、タッチ検出モードを実行している期間T2には、対向基板電極423の電位をフローティングの状態にする。「フローティングの状態」とは、電圧源から直接電圧が印加されておらず、かつ、グラウンドに接続されていない状態を意味するものとする。なお、
図16では、液晶分子30a、絶縁層13及び画素電極11dの図示を省略している。
【0043】
ここで、
図18に示すように、1つの対向基板電極423と、複数のタッチセンサ電極12とは、対向して配置されている。このため、1つの対向基板電極423と複数のタッチセンサ電極12との間で容量が生じる。ここで、複数のタッチセンサ電極12に駆動信号(
図17参照)が供給された場合、対向基板電極423の電位がフローティングの状態となっているので、複数のタッチセンサ電極12との間の容量によって、対向基板電極423の電位が駆動信号と同じ波形の電圧S5cとなる。従って、対向基板電極423の電位をフローティングの状態にすれば、結果として、第1実施形態の負荷低減信号S5を対向基板電極423に印加した状態と同様になる。すなわち、対向基板電極423と複数のタッチセンサ電極12との間に容量が形成された場合でも、この容量は負荷とはならない。これにより、第2実施形態の構成によっても、対向基板20上に電極を形成する場合でも、タッチ検出の性能の低下を防止することができる。
【0044】
また、第2実施形態の構成によれば、第1実施形態と異なり、視野角制御回路402内で駆動信号と同期する制御及び負荷低減信号S5を生成する処理が不要となり、視野角制御回路402の回路構成の単純化、コスト削減が可能となる。なお、その他の構成及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0045】
[比較例との比較結果]
次に、
図19を参照して、第1実施形態、第2実施形態、第1比較例、及び第2比較例におけるタッチセンサ電極により検出されるシグナル(以下、「タッチシグナル」という)の測定結果について説明する。
図19は、測定結果を説明するための図である。
【0046】
第1比較例の電極123(
図9参照)をグラウンド(GND)に接続することにより、電極123の電位を接地電圧にした状態で、タッチセンサ電極により検出されるタッチシグナルを測定した。この結果、
図19に示すように、タッチパネル制御回路の検出限界を超えた容量がタッチセンサ電極に付与され、タッチシグナルの測定値がオーバーフロー(測定不能な値)となった。また、第2比較例の電極123a(
図9参照)に視野角制御信号を供給しながら、タッチセンサ電極により検出されるタッチシグナルを測定した。この結果、第2比較例においても、タッチパネル制御回路の検出限界を超えた容量がタッチセンサ電極に付与され、タッチシグナルの測定値がオーバーフロー(測定不能な値)となった。
【0047】
また、第1実施形態の対向基板電極23(
図3A参照)に負荷低減信号S5を供給しながら、タッチセンサ電極12により検出されるタッチシグナルを測定した。この結果、
図19に示すように、タッチシグナルは、タッチ検出可能な範囲内の値となった。また、第2実施形態の対向基板電極423(
図16参照)の電位をフローティングにした状態で、タッチセンサ電極12により検出されるタッチシグナルを測定した。この結果、
図19に示すように、タッチシグナルは、タッチ検出可能な範囲内の値となった。従って、第1実施形態及び第2実施形態では、対向基板20上に電極を配置する場合でも、タッチ検出することが可能であることが判明した。
【0048】
[変形例]
以上、発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。以下、上述した実施の形態の変形例について説明する。
【0049】
(1)上記第1及び第2実施形態では、対向基板電極を、カラーフィルタ及びブラックマトリクスよりも液晶層側に配置する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、
図20に示す変形例のパネルモジュール501のように、カラーフィルタ21及びブラックマトリクス22よりも対向基板20側(Z1方向)に対向基板電極523が配置されていてもよいし、図示しないが、カラーフィルタ及びブラックマトリクスと同一の層に対向基板電極を配置してもよい。例えば、対向基板電極523の液晶層30側を平坦化膜524が覆った状態で、さらに、カラーフィルタ21及びブラックマトリクス22が、液晶層30側に形成されていてもよい。なお、
図20では、液晶分子30a、絶縁層13及び画素電極11dの図示を省略している。
【0050】
(2)上記第1及び第2実施形態では、
図5及び
図18に示すように、対向基板電極をパネルモジュールに1つ設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、対向基板電極をパネルモジュールに複数設けられていてもよい。
【0051】
(3)上記第1及び第2実施形態では、対向基板電極にスリット部を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、対向基板電極にスリット部が設けられていなくても良い。
【0052】
(4)上記第1及び第2実施形態では、対向基板電極をカラーフィルタとは平面視で重ならないで、ブラックマトリクスと重なる位置に配置する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、対向基板電極が透明電極膜により構成されている場合には、対向基板電極をカラーフィルタと平面視で重なる位置に配置されていてもよい。この場合、対向基板電極がブラックマトリクスと重なる位置に配置されていなくてもよい。
【0053】
(5)上記第1実施形態では、負荷低減信号S5の電圧の振幅を、駆動信号の電圧の振幅とする例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、負荷低減信号が駆動信号と同期した信号でかつ駆動信号と同じ極性の信号であれば、負荷低減信号の電圧の振幅が駆動信号の電圧の振幅と異なる大きさであってもよい。
【0054】
(6)上記第1及び第2実施形態では、表示モードにおいて対向基板電極に、視野角制御信号を供給する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、表示モードにおいて対向基板電極に視野角制御信号を供給しなくてもよいし、視野角制御信号とは異なる信号を対向基板電極に供給してもよい。
【0055】
(7)上記第1及び第2実施形態では、
図2A及び
図2Bに示すように、複数のカラーフィルタのY方向の間に配置されたブラックマトリクスに重なる位置に対向基板電極を配置する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、複数のカラーフィルタのX方向の間に配置されたブラックマトリクスに重なる位置に、対向基板電極を配置してもよい。
【0056】
上述したインセルタッチパネルは、以下のように説明することもできる。
【0057】
第1の構成に係るインセルタッチパネルは、タッチセンサ基板と、タッチセンサ基板に形成された画素電極と、タッチセンサ基板に形成されたタッチセンサ電極と、タッチセンサ基板に対向して配置された対向基板と、対向基板に形成された対向基板電極であって、タッチ検出に使用されない対向基板電極と、タッチセンサ基板と対向基板との間に配置された液晶層と、タッチセンサ電極に駆動信号を供給する駆動制御回路と、画素電極に表示用信号を供給する表示制御回路と、表示制御回路により表示用信号を画素電極に供給する表示モードと、駆動制御回路により駆動信号をタッチセンサ電極に供給するタッチ検出モードとを、時分割で実行するモード切替制御回路と、タッチ検出モードが実行されている期間に、駆動信号と同期した信号でかつ駆動信号と同じ極性の信号を対向基板電極に供給するか、または、タッチ検出モードが実行されている期間に、対向基板電極の電位をフローティングの状態にする、対向基板電極制御回路と、を備える(第1の構成)。
【0058】
上記第1の構成によれば、対向基板電極に駆動信号と同期した信号でかつ駆動信号と同じ極性の信号を供給する場合には、対向基板電極とタッチセンサ電極との間に生じる負荷となる容量を低減することができる。また、対向基板電極の電位をフローティングの状態にする場合でも、対向基板電極とタッチセンサ電極との間に生じる負荷となる容量を低減することができる。この結果、タッチセンサ電極と指示体との間の容量の形成が妨げられないので、対向基板上にタッチ検出に使用されない電極を形成する場合でも、タッチ検出の性能の低下を防止することができる。
【0059】
第1の構成において、インセルタッチパネルは、対向基板に配置されたブラックマトリクスを、さらに備えてもよく、対向基板電極は、平面視でブラックマトリクスと重なる位置に配置されていてもよい(第2の構成)。
【0060】
上記第2の構成によれば、遮光を目的するブラックマトリクスと重なる位置に対向基板電極を配置するので、対向基板電極により光が吸収又は拡散された場合でも、表示に影響を与えない。この結果、対向基板電極が対向基板に配置された場合でも、表示に影響を与えない。
【0061】
第1又は第2の構成において、インセルタッチパネルは、対向基板に配置されたカラーフィルタを、さらに備えてもよく、対向基板電極は、平面視でカラーフィルタと重ならない位置に配置されていてもよい(第3の構成)。
【0062】
上記第3の構成によれば、カラーフィルタに入射する光、又はカラーフィルタから出射した光を、対向基板電極が遮らないので、対向基板電極が対向基板に配置された場合でも、表示に影響を与えない。
【0063】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、対向基板電極制御回路は、表示モードが実行されている期間に、視野角を変更するための視野角制御信号を対向基板電極に供給するように構成されてもよい(第4の構成)。
【0064】
上記第4の構成によれば、タッチ検出の性能を低下させることなく、インセルタッチパネルの視野角を変更することができる。
【0065】
第4の構成において、対向基板電極制御回路は、表示モードが実行されている期間に、視野角が狭視野角に設定されている場合には、第1の視野角制御信号を対向基板電極に供給することにより、対向基板電極とタッチセンサ電極との電位差を生じさせ、表示モードが実行されている期間に、視野角が広視野角に設定されている場合には、第1の視野角制御信号よりも小さい振幅を有する第2の視野角制御信号を対向基板電極に供給するか、または電位差をゼロにするように構成されてもよい(第5の構成)。
【0066】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、対向基板電極制御回路は、タッチ検出モードが実行されている期間に、視野角制御信号から所定の電圧を低下させた第1のベース電圧を対向基板電極に供給し、第1のベース電圧に駆動信号と同期しかつ同じ極性を有しかつ同じ振幅のパルス状の電圧を対向基板電極に供給するように構成されてもよい(第6の構成)。
【0067】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、対向基板電極制御回路は、タッチ検出モードが実行されている期間に、視野角制御信号と同一の第2のベース電圧を対向基板電極に供給し、第2のベース電圧に駆動信号と同期しかつ正の極性のパルス電圧を重畳した電圧を対向基板電極に供給するように構成されてもよい(第7の構成)。
【0068】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、対向基板電極制御回路は、タッチ検出モードが実行されている期間で、かつ、視野角制御信号の電圧がタッチセンサ電極の電圧に対して正の極性となる期間に、視野角制御信号と同一の第2のベース電圧を対向基板電極に供給し、タッチ検出モードが実行されている期間で、かつ、視野角制御信号の電圧がタッチセンサ電極の電圧に対して負の極性となる期間に、視野角制御信号の電圧から駆動信号の振幅と同一の値低下させた第3のベース電圧を対向基板電極に供給するように構成されてもよい(第8の構成)。
【符号の説明】
【0069】
1,401,501…パネルモジュール、2,202,302,402…視野角制御回路、3,403…タッチパネル制御回路、10…タッチセンサ基板、11d…画素電極、12…タッチセンサ電極、20…対向基板、21…カラーフィルタ、22…ブラックマトリクス、23,423,523…対向基板電極、30…液晶層、31…表示制御部、32,432…駆動制御部、33…モード切替制御部、100,200,300,400…インセルタッチパネル装置、S1…視野角制御信号、S3…駆動同期信号、S4…モード切替同期信号、S5,S5a,S5b…負荷低減信号