(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】小割用工具および小割方法
(51)【国際特許分類】
E21C 27/12 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
E21C27/12
(21)【出願番号】P 2023150007
(22)【出願日】2023-09-15
【審査請求日】2023-09-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399048869
【氏名又は名称】株式会社神島組
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】神島 昭男
(72)【発明者】
【氏名】神島 充子
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7162807(JP,B1)
【文献】特許第7243011(JP,B1)
【文献】特許第7087251(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大割破砕物を小割する小割用工具であって、
前記大割破砕物を上方から覆いながら近接可能に設けられる台座と、
前記台座の下面のうち前記台座の下面中央部から放射状にそれぞれ離れた位置で下方に突設される、少なくとも3つ以上の破砕部と、を備え、
前記破砕部の各々は一次当接部位および二次当接部位を有し、
前記一次当接部位は、下方に突起し、前記大割破砕物の上方から前記台座が前記大割破砕物に近接することに伴って前記大割破砕物を打撃して一次割岩し、
前記二次当接部位は、前記一次当接部位から前記下面中央部に延びる稜線が形成されるとともに前記稜線が前記下面中央部の下方空間を向くように、前記一次当接部位から前記台座に向けて延設され、前記一次割岩後に前記下方空間の下方に残った残留破砕物に前記台座が近接することに伴って前記稜線が前記残留破砕物を打撃して二次割岩する、
ことを特徴とする小割用工具。
【請求項2】
請求項1に記載の小割用工具であって、
前記破砕部と前記台座とは一体的に構成されている、小割用工具。
【請求項3】
請求項1に記載の小割用工具であって、
前記破砕部の各々と前記下面中央部との距離は全て等しい、小割用工具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の小割用工具を用いて大割破砕物を小割する小割方法であって、
前記大割破砕物の上方に前記小割用工具を配置する工程と、
前記台座に対して下方に向けた外力を付与することで、前記一次当接部位で前記大割破砕物を打撃して一次割岩し、前記一次割岩後に前記下方空間の下方に残った残留破砕物を前記稜線が前記残留破砕物を打撃して二次割岩する工程と、を備えることを特徴とする小割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物を破砕した際に生じる比較的大きな破片(以下「大割破砕物」という)を小割するための小割用工具および当該工具を用いた小割方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば岩盤破砕を伴う現場では、発破や本願発明者が開発した楔式岩盤破砕機などによって岩盤を破砕するが、破砕粒度はある程度の分布を持ち、大割破砕物はそのままでは大き過ぎ、搬出作業に支障を来す。このため、岩盤破砕後に、大割破砕物を更に小さく破砕する、いわゆる小割作業が行われることがある。この小割作業を効率的に行うために、特許文献1~3に記載の小割用工具および小割方法が提案されている。
【0003】
これらの小割用工具は、先細り形状の破砕部を台座の下面から突設したものである。そして、大割破砕物の上方から台座を大割破砕物に近接することで、台座の近接方向と直交する仮想面内において、複数の破砕部の先端部が互いに異なる位置で大割破砕物を打撃することで、小割作業が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7087251号
【文献】特許第7162807号
【文献】特許第7243011号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
破砕部の先端部による大割破砕物の割岩(本発明の「一次割岩」に相当)によって複数の破砕物(本発明の「残留破砕物」に相当)に分けられるが、それらの残留破砕物をさらに小割したいという要望が存在することがある。このような要望を満足するためには、現状、小割用工具による小割作業、つまり一次割岩処理を繰り返して行う必要がある。そこで、上記現場においては、1回の小割作業で、大割破砕物を複数の残留破砕物に小割するのみならず残留破砕物をさらに小割して作業効率を高めることが求められている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、従来の小割用工具よりも大割破砕物をさらに効率的に小割することができる小割用工具および当該工具を用いた小割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、大割破砕物を小割する小割用工具であって、大割破砕物を上方から覆いながら近接可能に設けられる台座と、台座の下面のうち台座の下面中央部から放射状にそれぞれ離れた位置で下方に突設される、少なくとも3つ以上の破砕部と、を備え、破砕部の各々は一次当接部位および二次当接部位を有し、一次当接部位は、下方に突起し、大割破砕物の上方から台座が大割破砕物に近接することに伴って大割破砕物を打撃して一次割岩し、二次当接部位は、一次当接部位から下面中央部に延びる稜線が形成されるとともに稜線が下面中央部の下方空間を向くように、一次当接部位から台座に向けて延設され、一次割岩後に下方空間の下方に残った残留破砕物に台座が近接することに伴って稜線が残留破砕物を打撃して二次割岩する、ことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の第2態様は、上記小割用工具を用いて大割破砕物を小割する小割方法であって、大割破砕物の上方に小割用工具を配置する工程と、台座に対して下方に向けた外力を付与することで、一次当接部位で大割破砕物を打撃して一次割岩し、一次割岩後に下方空間の下方に残った残留破砕物を稜線が残留破砕物を打撃して二次割岩する工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、大割破砕物の上方に配置した小割用工具の台座に対して下方に向けた外力を付与することで、大割破砕物を打撃して一次割岩した後で台座の下方空間の下方に残った残留破砕物を二次割岩することができる。つまり、従来の小割用工具よりも大割破砕物をさらに効率的に小割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明に係る小割用工具を用いた大割破砕物の小割作業現場を全体的に示す図である。
【
図1B】大割破砕物側から小割用工具を見たB-B線矢視図である。
【
図1C】小割用工具側から大割破砕物を見たC-C線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1Aは本発明に係る小割用工具を用いた大割破砕物の小割作業現場を全体的に示す図である。
図1Bは大割破砕物側から小割用工具を見たB-B線矢視図である。
図1Cは小割用工具側から大割破砕物を見たC-C線矢視図である。
図2は小割用工具の部分斜視図である。なお、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0012】
この小割用工具1は、
図1Aに示すように、岩盤破砕を伴う現場において使用されるバックホウ等の建設車両100に取り付けられ、岩盤を破砕した際に発生する大割破砕物200を更に小さく破砕するための工具である。より詳しくは、建設車両100のアーム101にブラケット102を介して油圧ブレーカー103が取り付けられている。この油圧ブレーカー103はブレーカー本体(図示省略)を備えている。また、このブレーカー本体は、中央部にシリンダーを有している。そして、不図示の油圧供給源から切換弁を介してシリンダーへ圧油を供給することにより、シリンダー内に摺嵌されるピストンが軸方向に前後進可能になっている。
【0013】
ブレーカー本体の先端部(
図1Aの下方側端部)に、小割用工具1が装着される。この小割用工具1は、
図1A、
図1Bおよび
図2に示すように、外観が略円柱形状に仕上げられた台座2を有している。台座2の下面23は、地面に置かれた大割破砕物200や積み上げられた大割破砕物200の全体あるいは一部を上方から覆うことが可能な平面サイズを有している。下面23は、
図2に示すように、下面中央部が内部に窪んでおり、下面中央部の下方に本発明の「下面空間」の一例に相当する凹部24が設けられている。そして、台座2の中央部に、下方に進むにしたがって内径が小さくなるように、台座2の上面21から中央貫通孔25が設けられ、凹部24と繋がっている。さらに、中央貫通孔25の下方開口を下方側から取り囲むように3個の破砕部22が下方に延設されている。
【0014】
この中央貫通孔25に対し、上下方向Zに延設された軸状体3の先端部31が装着されている。より詳しくは、軸状体3は、中央貫通孔25に圧入自在な先端部31と、油圧ブレーカー103に装着されてピストンからの打撃力を受ける後端部32と、後端部32で受けた打撃力を台座2に伝達する中央部33と、を有している。本実施形態では、先端部31は、中央貫通孔25に対応して下方に進むのに伴って外径が小さくなる先細り形状を有しており、中央貫通孔25に圧入可能となっている。そして、先端部31は台座2に固着される。その固着方法としては、溶接や焼付きなどを採用してもよい。また、台座2および軸状体3を一体的に形成してもよい。
【0015】
台座2では、中央貫通孔25の下面側開口を取り囲む下方周縁部を等角度間隔だけ離間しながら切り欠かれ、3つの下方凸部が設けられている。本実施形態では、円柱形状の工具鋼の上方端部の中央部に中央貫通孔25を穿設して円環形状に仕上げる一方、上方端部を下面側から切削加工を施すことによって、上記した凹部24および3つの下方凸部が形成されている。そして、各下方凸部が破砕部22として機能する。これら3個の破砕部22は、
図1Bに示すように中央貫通孔25の下方端部を中心として放射状に等距離だけ離れた位置に設けられている。本実施形態では、
図1A(および後で説明する
図3)に示すように、「中央貫通孔25の下方端部」が本発明の「台座の下面中央部」の一例に相当している。また、破砕部22は台座2の一部であり、一体的に構成されているが、特許文献1~3に記載されているように、破砕部22に相当する部材を台座2とは別体で準備し、台座2に固着することで破砕部22として機能するように構成してもよい。
【0016】
各破砕部22では、
図2に示すように、台座2の下方凸部に対して超硬芯221aが下方側、つまり(-Z)方向側から取り付けられ、その先端部が下方凸部から下方に突起している。このように超硬芯221aが取り付けられた下方凸部の先端部が一次当接部位221として機能する。また、下方凸部のうち先端部から台座2の上方端部に向けて延設された部位が二次当接部位222として機能する。二次当接部位222は、一次当接部位221から中央貫通孔25の下方端部に延びる稜線222aが形成されるとともに稜線222aが下面中央部の下方空間、つまり凹部24を向くように、仕上げられている。
【0017】
図1Bに示すように、台座2を下方側、つまり(-Z)方向側から見ると、3つの稜線222aが中央貫通孔25の下方端部に向かって延設され、それらよりも下方側で3つの超硬芯221aが中央貫通孔25の下方端部を中心として放射状に等距離だけ離れた位置に配置されている。したがって、次に説明するように、上記のように構成された小割用工具1を大割破砕物200の上方から下降させると、一次当接部位221の超硬芯221aが大割破砕物200を打撃して一次割岩する。このとき、凹部24の下方に中規模の破砕物(以下「残留破砕物」という)が残存するが、上記一次割岩に続いて、二次当接部位222の稜線222aが残留破砕物に当接し、残留破砕物を打撃して二次割岩する。このように2段階で割岩処理が実行される。
【0018】
図3は
図1A~
図1Cおよび
図2に示す小割用工具を用いた小割方法を模式的に示す図であり、
図1C中のIII-III線断面に相当する部分断面を示している。小割用工具1のシャフト部材3の上端部がブレーカー本体に装着される、小割用工具1が建設車両100に着された状態で、作業員が建設車両100を操作して大割破砕物200の上方に小割用工具1を位置させる。そして、作業員の建設車両100の操作により、小割用工具1が上方から大割破砕物200に近接すると、一次当接部位221の超硬芯221aが大割破砕物200に当接する。そして、複数の超硬芯221aが大割破砕物200と当接しながらブレーカー本体からシャフト部材3を介して超硬芯221aに与えられる外力が大割破砕物200に与えられる。つまり、シャフト部材3が上記外力を用いて複数の破砕部22が互いに異なる位置で大割破砕物200を打撃する。その結果、大割破砕物200を安定して打撃して
図3(a)に示すように大割破砕物200を一次割岩することができる。このとき、凹部24の下方に残留破砕物201が残存するが、次のようにして二次割岩される。
【0019】
作業員が引き続いて建設車両100を操作して小割用工具1を下降させると、
図3(b)に示すように、破砕部22が残留破砕物201を上方から覆うように近接し、二次当接部位222の稜線222aが残留破砕物に当接する。そして、複数の稜線222aが残留破砕物201と当接しながらブレーカー本体から稜線222aに与えられる外力が残留破砕物201に与えられる。つまり、上記外力を用いて複数の稜線222aが互いに異なる位置で残留破砕物201を打撃する。その結果、残留破砕物201を安定して打撃して
図3(b)に示すように残留破砕物201を割岩する(二次割岩)。このように稜線222aが残留破砕物201と当接する位置は、
図3(b)、(c)から明らかなように、小割用工具1の下降に伴って凹部空間24の内側に変位し、二次割岩が連続的に行われる。
【0020】
以上のように、本実施形態では、従来技術と同様にして一次割岩を行うのみならず、それに続けて二次割岩を実行しているため、従来の小割用工具よりも大割破砕物200をさらに効率的に小割することができる。
【0021】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、3個の破砕部22を、台座2を下方から見た平面視で、中央貫通孔25の下方端部を中心として放射状に配置しているが、破砕部22の数や配置態様はこれに限定されるものではなく、少なくとも3個以上の破砕部22が中央貫通孔25の下方端部を取り囲むように分散配置することで、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0022】
また、破砕部22による大割破砕物200の打撃により破砕部22の先端部が摩耗することを考慮し、超硬芯221aの取付に代え、特許文献1に記載の発明と同様に破砕部22を分割構造で構成してもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、平面視で円形の台座2を用いているが、台座2の平面形状はこれに限定されるものではなく、例えば平面視で矩形の台座を上記台座2として用いてもよい。
【0024】
また、上記実施形態では、稜線222aが直線となるように二次当接部位222を構成しているが、稜線222aが曲線となる二次当接部位222を構成してもよい。
【0025】
さらに、上記実施形態では、岩盤掘削現場で発生した大割破砕物200を破砕対象としているが、その他の現場、例えば道路解体現場や建造物解体現場などで発生する大割破砕物を破砕する際にも、本発明に係る小割用工具を使用することで小割作業を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物を破砕した際に生じる大割破砕物を小割するための小割技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…小割用工具
2…台座
21…(台座の)上面
22…破砕部
23…(台座の)下面
24…凹部(下方空間)
200…大割破砕物
201…残留破砕物
221…一次当接部位
222…二次当接部位
222a…稜線
Z…上下方向
【要約】
【課題】大割破砕物を効率的に小割することができる小割用工具および当該工具を用いた小割方法を提供する。
【解決手段】この発明では、小割用工具は、大割破砕物を上方から覆いながら近接可能に設けられる台座と、台座の下面のうち台座の下面中央部から放射状にそれぞれ離れた位置で下方に突設される、少なくとも3つ以上の破砕部と、を備えている。破砕部の各々は、下方に突起して大割破砕物の上方から台座が大割破砕物に近接することに伴って大割破砕物を打撃して一次割岩する一次当接部位と、一次当接部位から下面中央部に延びる稜線が形成されるとともに稜線が下面中央部の下方空間を向くように、一次当接部位から台座に向けて延設されて一次割岩後に下方空間の下方に残った残留破砕物に台座が近接することに伴って稜線が残留破砕物を打撃して二次割岩する二次当接部位とを有している。
【選択図】
図3