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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240110BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240110BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240110BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240110BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240110BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240110BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240110BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L101/00
C09D7/20
C09D7/63
C09D7/62
C09D133/00
C09D201/00
C08F292/00
C08F2/44 A
C08G18/00
C08J5/18 CEY
C08J5/18 CFF
C09K3/18 101
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019105539
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020196846
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 央基
(72)【発明者】
【氏名】トルティシ グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】茂原 健介
(72)【発明者】
【氏名】森田 正道
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/056663(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C09D201/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[1]撥水成分を構成する、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)
を含有する。]に由来する構成単位、及び
(Bs)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有する。]に由来する構成単位
を含有する重合体、及び
[2]耐磨耗成分を構成する、単量体(Bm);及び
[3]非フッ素有機溶剤、及び水からなる群より選択される1種以上の溶媒を主として含有する溶媒
を含有し、
フッ素有機溶剤の含有量が20質量%未満であり、
前記化合物(Bs)の少なくとも一種が、式:
【化1】
[式中、
Rは、C2n+1であり、
Yは、-CH-、又は-C-であり、及び
Xは、水素であり、及び
nは、1以上の数である。
但し、nが2以上であるときは、Yは-C-である。]
で表される化合物
であり、
前記撥水成分[1]、及び前記耐耗成分[2]の合計質量に対する、前記耐耗成分[2]の質量の比が85:100~35:100の範囲内である、
組成物。
【請求項2】
非フッ素有機溶剤を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
界面活性剤の含有量が1質量%未満である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記重合性基(a)及び(b)の一方又は両方が、ラジカル反応性基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記重合性基(a)及び(b)の一方又は両方が、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、又はマレイミド基である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記核微粒子(i)の数平均一次粒子径が1~1500nmの範囲内である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記核微粒子(i)の数平均一次粒子径が5~1000nmの範囲内である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記核微粒子(i)の少なくとも一種が無機粒子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物(Bs)の少なくとも一種が、C13CHCHOCOC(CH)=CHである、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記非フッ素有機溶剤が、
アルコール溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、及びアミド系溶媒からなる群より選択される1種以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記非フッ素有機溶剤が、アルコール溶媒である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記非フッ素有機溶剤が、イソプロピルアルコールである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物を用いて被膜を製造する被膜の製造方法であって、
(1)修飾微粒子(A)に1個以上の化合物(Bs)を結合させて、1個以上の重合性基(a)を有する微粒子(A)を得る工程;
(2)前記工程(1)で得られた微粒子(A)及び耐磨耗成分を構成する化合物(Bm)を含有する組成物を被処理面上に適用する工程;及び
(3)前記被処理面上で、前記化合物(Bm)を重合させる工程
を含む、被膜の製造方法。
【請求項14】
前記重合性基(a)は、ラジカル重合性基である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ラジカル重合性基は、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、又はマレイミド
基である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記化合物(Bm)の少なくとも一種が、化合物分子内に2個以上の重合性基(b)を有する化合物である、請求項13~15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記化合物(Bm)の少なくとも一種が、分子内に2~8個の重合性基(b)を有する化合物である、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記重合性基(b)が、各出現において独立して、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、及びアニオン重合性基からなる群より選択される、請求項16又は17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記被膜の平均表面粗さRaが、1.6~20μmの範囲内である、請求項13~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記被膜のWenzelの粗さ係数が、1.6~10の範囲内である、請求項13~19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記被膜の水接触角が、120°以上である、請求項13~20のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記被膜の水接触角が、150°以上である、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記被膜のPETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/cm、往復1500回)後の水接触角が、100°以上である、請求項13~22のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、好ましくは撥液性被膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撥液性被膜が種々提案されている。
【0003】
その更に別の例として、ハイドロフルオロエーテルを溶媒として使用した、
(1)重合性基を有する、少なくとも一種の微粒子;及び
(2)重合性基を有する、少なくとも一種の化合物
に基づく構成単位をそれぞれ有する重合体を含有する被膜であって、
前記微粒子(1)の少なくとも一種、及び/又は前記化合物(2)の少なくとも一種が、フルオロアルキル基を有するものであり、かつ
前記化合物(2)の少なくとも一種が、分子内に2つ以上の重合性基を有する化合物である、被膜が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/056663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フッ素有機溶剤の使用を抑制し(好ましくは実質的に使用せずに)、多用途に使用し得る、撥液性被膜形成可能な組成物を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
[1]撥水成分を構成する、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)
を含有する。]に由来する構成単位、及び
(Bs)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有する。]
に由来する構成単位
を含有する重合体、及び
[2]耐磨耗成分を構成する、単量体(Bm);及び
[3]非フッ素有機溶剤、及び水からなる群より選択される1種以上の溶媒を含有する溶媒
を含有し、
前記撥水成分[1]、及び前記耐摩耗成分[2]の合計質量に対する、前記耐摩耗成分[2]の質量の比が85:100~35:100の範囲内である、
組成物
を用いることによって、前記課題が解決できることを見出し、及び本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、次の態様を含む。
項1.
[1]撥水成分を構成する、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)
を含有する。]に由来する構成単位、及び
(Bs)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有する。]
に由来する構成単位
を含有する重合体、及び
[2]耐磨耗成分を構成する、単量体(Bm);及び
[3]非フッ素有機溶剤、及び水からなる群より選択される1種以上の溶媒を主として含有する溶媒
を含有し、
前記撥水成分[1]、及び前記耐摩耗成分[2]の合計質量に対する、前記耐摩耗成分[2]の質量の比が85:100~35:100の範囲内である、
組成物。
項2.
非フッ素有機溶剤を含有する項1に記載の組成物。
項3.
フッ素有機溶剤の含有量が20質量%未満である項1又は2に記載の組成物。
項4.
界面活性剤の含有量が1質量%未満である項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
項5.
前記重合性基(a)及び(b)の一方又は両方が、ラジカル反応性基である、項4に記載の組成物。
項6.
前記重合性基(a)及び(b)の一方又は両方が、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、又はマレイミド基である、項5に記載の組成物。
項7.
前記核微粒子(i)の数平均一次粒子径が1~1500nmの範囲内である、項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
項8.
前記核微粒子(i)の数平均一次粒子径が5~1000nmの範囲内である、項7に記載の組成物。
項9.
前記核微粒子(i)の少なくとも一種が無機粒子である、項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
項10.
前記化合物(Bs)の少なくとも一種が、
式:
【化1】
[式中、
当該式中、
Xは、
水素原子、
塩素原子、
臭素原子、
ヨウ素原子、
-CX基(当該式中、Xは、各出現において同一又は異なって、水素原子、又は塩素原子である。)、
シアノ基、
炭素数1~21の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、
置換若しくは非置換のベンジル基、
置換若しくは非置換のフェニル基、又は
炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基
であり;
Yは、
単結合、
酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基、
-CHCH-N(-Rya)-SO-基(当該式中、Ryaは炭素数1~4のアルキル基である。当該式の右端がRに、左端がOにそれぞれ結合している。)、
-CHCH(-ORyb)-CH-基(当該式中、Rybは水素原子又はアセチル基である。当該式の右端がRに、左端がOにそれぞれ結合している。)、又は
-(CH)-SO-基(当該式中、nは1~10である。当該式の右端がRに、左端がOにそれぞれ結合している。)であり;及び
Rは、
炭化水素基(当該炭化水素基は、1個以上の酸素原子を含有していてもよい。)である。]
で表される化合物である、項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
項11.
前記化合物(Bs)の少なくとも一種が、式:
【化2】
[式中、
Rは、C2n+1であり、
Yは、-CH-、又は-C-であり、及び
Xは、水素であり、及び
nは、1以上の数である。
但し、nが2以上であるときは、Yは-C-である。]
で表される化合物
である、項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
項12.(C6に限定:先行文献からの進歩性)
前記化合物(Bs)の少なくとも一種が、C13CHCHOCOC(CH)=CHである、項11に記載の組成物。
項13.
前記非フッ素機溶剤が、
前記溶媒の好ましい例としては、アルコール溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、及びアミド系溶媒からなる群より選択される1種以上である、項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
項14.
前記非フッ素有機溶剤が、アルコール溶媒である、項13に記載の組成物。
項15.
前記非フッ素機溶剤が、イソプロピルアルコールである、項14に記載の組成物。
項16.
フッ素含有撥水成分、及び耐磨耗成分を含有する、撥水性の被膜の製造方法であって、
(1)前記フッ素含有撥水成分を非フッ素有機溶剤中で調製することにより、前記フッ素含有撥水成分を含有する非フッ素有機溶剤中懸濁液を調製すること、
(2)前記溶液、及び耐磨耗成分を構成する単量体(Bm)を混合すること、
(3)前記単量体(Bm)を重合させて耐磨耗成分を調製すること、
及び
(4)前記非フッ素有機溶剤を除去すること
を含む、製造方法。
項17.
前記フッ素含有撥水成分が、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)を含有する。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有する。]
のそれぞれに由来する構成単位を含有する、
項16に記載の製造方法。
項18.
前記重合性基(a)及び(b)の一方又は両方が、ラジカル反応性基である、項17に記載の製造方法。
項19.
前記重合性基(a)及び(b)の一方又は両方が、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、又はマレイミド基である、項18に記載の製造方法。
項20.
前記核微粒子(i)の数平均一次粒子径が5~1000nmの範囲内である、項17~19のいずれか一項に記載の製造方法。
項21.
前記核微粒子(i)の少なくとも一種が無機粒子である、項17~20のいずれか一項に記載の製造方法。
項22.
前記化合物(B)の少なくとも一種が、
式(1):
【化3】
[式中、
Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX基(但し、XおよびXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基、置換若しくは非置換のフェニル基、又は炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルキル基であり、
Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基、-CHCHN(R)SO-基(但し、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、式の右端がRfに、左端がOにそれぞれ結合している。)、-CHCH(OY)CH-基(但し、Yは水素原子またはアセチル基であり、式の右端がRfに、左端がOにそれぞれ結合している。)、又は-(CH)SO-基(nは1~10であり、式の右端がRfに、左端がOにそれぞれ結合している。)であり、及び
Rfは、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、又は分子量400~5000のフルオロポリエーテル基である。]
で表される化合物
である、項17~21のいずれか一項に記載の製造方法。
項23.
Rfは、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基である、項22に記載の製造方法。
項24.
Rfは、炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基である、項23に記載の製造方法。
項25.
前記化合物(Bm)の少なくとも一種が、化合物分子内に2個以上の重合性基(b)を有する化合物である、項17~24のいずれか一項に記載の製造方法。
項26.
前記化合物(Bm)の少なくとも一種が、分子内に2~8個の重合性基(b)を有する化合物である、項25に記載の製造方法。
項27.
前記重合性基(b)が、各出現において独立して、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、及びアニオン重合性基からなる群より選択される、項25又は26に記載の製造方法。
項28.
前記非フッ素有機溶剤が、アルコール溶媒、非芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エステル溶媒、ニトリル溶媒、及びスルホキシド系溶媒からなる群より選択される1種以上である、項16~27のいずれか一項に記載の製造方法。
項29.
前記非フッ素有機溶剤が、アルコール溶媒である、項28に記載の製造方法。
項30.
前記非フッ素有機溶剤が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノールからなる群より選択される1種以上である、項29に記載の製造方法。
項31.
前記被膜の平均表面粗さRaが、1.6~20μmの範囲内である、項16~30のいずれか一項に記載の製造方法。
項32.
前記被膜のWenzelの粗さ係数が、1.6~10の範囲内である、項16~31のいずれか一項に記載の製造方法。
項33.
前記被膜の水接触角が、120°以上である、項16~32のいずれか一項に記載の製造方法。
項34.
前記被膜の水接触角が、150°以上である、項33に記載の製造方法。
項35.
前記被膜のPETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/cm、往復1500回)後の水接触角が、100°以上である、項1~34のいずれか一項に記載の製造方法。
項36.
項1~35のいずれか一項に記載の製造方法により製造された被膜。
項37.
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)を含有する。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有する。]
のそれぞれに由来する構成単位を含有する、
フッ素含有撥水成分
の製造方法であって、
非フッ素有機溶剤中で、前記修飾微粒子(A)が前記少なくとも一種の化合物(B)と反応する工程を含む、製造方法。
項38.
フッ素含有撥水成分、及び耐磨耗成分を含有し、並びに
150°以上の水の静的接触角を有する被膜の製造方法であって、
項19~26のいずれか一項に記載の組成物を、及び
(1)耐磨耗成分を構成する単量体(Bm)を混合すること、
(2)前記単量体(Bm)を重合させて耐磨耗成分を調製すること、
及び
(3)前記組成物に由来する非フッ素有機溶剤を除去すること
を含む、製造方法。
項39.
物品のコーティング方法であって、項38に記載の製造方法により、被膜を、当該物品の表面の一部又は全部の上に形成する工程を含む方法。
項40.
物品の撥液加工方法であって、項38に記載の製造方法により、当該物品の表面の一部又は全部の上に形成する工程を含む方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新たな組成物(好ましくは、撥液性被膜形成用組成物)等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「のみからなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、用語「撥液性」は、撥水性、及び撥油性、並びにこれらの組合せを包含する。
本明細書中、用語「撥液性」は、超撥液性を包含する。
本明細書中、用語「超撥液性」は、超撥水性、及び超撥油性、並びにこれらの組合せを包含する。
本明細書中、用語「フッ素有機溶媒」は、分子中に1個以上のフッ素原子を含有する有機化合物から本質的になる(又は、のみからなる)溶媒を意味する。本明細書中、用語「フッ素有機溶媒」は、混合溶媒中の「フッ素有機溶媒」も包含する。
本明細書中、用語「非フッ素有機溶媒」は、分子中にフッ素原子を含有しない有機化合物から本質的になる(又は、のみからなる)溶媒を意味する。本明細書中、用語「フッ素有機溶媒」は、混合溶媒中の「非フッ素有機溶媒」も包含する。
本明細書中、室温は、10~30℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「C-C」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0010】
本明細書中、用語「重合性基」は、重合反応に関与する基を意味する。
本明細書中、用語「重合反応」は、2個以上の分子(例:2個の分子、及び3個以上の分子)が結合して別の化合物が生成する反応を意味する。当該「2個以上の分子」は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0011】
本明細書中、特に限定の無い限り、「炭化水素基」の例は、
(1)1個以上の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族(非芳香族)炭化水素基(例:ベンジル基)、及び
(2)1個以上の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(例:トリル基)
を包含する。
本明細書中、芳香族炭化水素基をアリール基と称する場合がある。
本明細書中、「炭化水素基」は1価以上の基であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、炭化水素基は、環状、又は非環状(例:直鎖状又は分岐状)、或いはこれらの組合せである形状を有することができる。
【0012】
本明細書中、特に限定の無い限り、当該「脂肪族炭化水素基」は、非環状炭化水素基、若しくは環状炭化水素基、又はこれらの組合せであることができる。
当該組合せの例は、
(1)1個以上の非環状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、及び
(2)1個以上の環状炭化水素基で置換された非環状炭化水素基
を包含する。
【0013】
本明細書中、特に限定の無い限り、当該「脂肪族炭化水素基」の例は、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルキル基
を包含する。
【0014】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルキル基」の例は、
直鎖状又は分枝鎖状の、炭素数1~30のアルキル基を包含し、及び
その具体例は、
メチル、エチル、プロピル(例:n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例:n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、及びドコシル
を包含する。
【0015】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルケニル基」の例は、
直鎖状又は分岐状の、炭素数2~30のアルケニル基を包含し、及び
その具体例は、
ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、及び5-ヘキセニル
を包含する。
【0016】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルキニル基」の例は、
直鎖状又は分岐状の、炭素数2~30のアルキニル基を包含し、及び
その具体例は、
エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、及び5-ヘキシニル
を包含する。
【0017】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルキル基」の例は、
炭素数3~8のシクロアルキル基を包含し、及び
その具体例は
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基
を包含する。
【0018】
本明細書中、特に限定の無い限り、「芳香族炭化水素基」の例は、
炭素数6~14の芳香族炭化水素基を包含し、及び
その具体例は、
フェニル基、ナフチル基、フェナンスリル基、アンスリル基、及びピレニル基
を包含する。
【0019】
本発明の組成物は、撥液性被膜の製造に、用いられ得る。
当該本発明の組成物は、キットの形態であってもよい。
本発明は、当該被膜を有する物品、物品のコーティング方法、物品の撥液加工方法.被膜形成用微粒子
もまた提供する。
これ以後、以下の順で、本発明を説明する。
「2.本発明の組成物から得られる被膜」
「3.組成物」
「4.キット」
「5.物品」
「6.物品のコーティング方法」
「7.物品の撥液加工方法」
「8.被膜形成用微粒子」
「9.被膜形成用化合物」
「10.被膜形成用組成物」
「11.コーティング用組成物」
「12.撥液処理用組成物」
【0020】
2. 本発明の組成物から得られる被膜
本発明の組成物から得られる被膜は、好適に、
フッ素の含有量が、1重量%以上であり、
水(2μLの液滴)の接触角が、115°以上であり、且つ
PETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/cm、往復1500回)後の水の接触角が100°以上であり、
且つ、表面粗さの指標である、
平均表面粗さRaが、1.6μm以上、及び
Wenzelの粗さ係数1.2以上
のいずれかを満たす。
【0021】
2.1. 被膜の物性
2.1.1. 被膜の組成
【0022】
2.1.1.1. フッ素含有量
本明細書中、前記被膜のフッ素含有量は、X線光電子分光法(XPS)測定により得られる元素組成におけるF元素の含有量として定義される。
XPS測定は、市販の装置[例:ESCA3400(製品名)(SHIMADZU)、PHI5000 VersaProbe II(製品名)(UlVAC-PHI)を使用して実施される。
当該フッ素含有量は、例えば、1質量%以上である。
【0023】
このような、被膜内のフッ素含有量の分析方法としては、
(1)被膜の一部を被被覆物から剥離して分析する方法、及び
(2)被被覆物を被覆している被膜の状態のまま分析する方法
がある。
両者のいずれかが、分析対象である被膜の状態等に応じて、適宜選択され得る。
【0024】
被膜の一部を被被覆物から剥離して分析する方法(1)として、具体的には、フラスコを使用して試料を燃焼させ、及びイオンメーターを用いて分析する方法を採用できる。
【0025】
被被覆物を被覆している被膜の状態のまま分析する方法(2)として、具体的には、X線光電子分光法、又は走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型蛍光X線分析等を採用できる。
これらの方法のうちのいずれかが、分析対象である被膜の状態等に応じて、適宜選択され得る。
【0026】
2.1.2. 表面粗さ
本発明の組成物から得られる被膜の表面粗さは、その指標である、
(a)平均表面粗さRa1.6μm以上、及び
(b)Wenzelの粗さ係数1.2以上
の少なくともいずれかを満たす。
【0027】
2.1.2.1. 平均表面粗さRa
本発明の好適な一態様において、本発明の組成物から得られる被膜の平均表面粗さRaは、1.6μm以上であり、
好ましくは1.6~20μmの範囲内
より好ましくは2.0~19.0μmの範囲内、及び
更に好ましくは2.5~18.0μmの範囲内
である。
【0028】
当該特徴は、本発明の組成物から得られる被膜がより高い撥液性を有する要因の一つであることができる。
当該特徴は、本発明の組成物から得られる被膜がより高い耐久性を有する要因の一つであることができる。
【0029】
当該平均表面粗さRaは、以下の方法で測定される数値である。
(測定方法)
527.0 μm×703.0 μm四方の平均表面粗さを算出する。
その具体的な測定は、
カラー3Dレーザ顕微鏡 VK-9710(商品名)(KEYENCE)、及び
これに付属している顕微鏡ユニット MUL00201(商品名)(Nikon)
又はそれらの各同等品
を用いて行われる。
【0030】
2.1.2.2. Wenzelの粗さ係数
本発明の好適な一態様において、本発明の組成物から得られる被膜のWenzelの粗さ係数は、
1.2以上であり、
好ましくは1.6~10の範囲内であり、
より好ましくは2.4~9の範囲内であり、及び
更に好ましくは3.0~8の範囲内である。
【0031】
当該特徴は、本発明の組成物から得られる被膜がより高い撥液性を有する要因の一つであることができる。
当該特徴は、本発明の組成物から得られる被膜がより高い耐久性を有する要因の一つであることができる。
【0032】
ここで、Wenzelの粗さ係数は、通常の意味で用いられ、被膜の実際の表面積の、被膜の平滑面積(すなわち、幾何学的表面積)に対する比である。すなわち、定義上、Wenzelの粗さ係数は、常に1以上である。
【0033】
本明細書中、Wenzelの粗さ係数は、以下の方法で測定される数値である。
(測定方法)
351.4 μm×351.5 μm四方において、実際の表面積を測定し、及びWenzelの粗さ係数を算出する。
当該測定は、カラー3Dレーザ顕微鏡 VK-9710(商品名)(KEYENCE)、及び
これに付属している対物レンズ CF IC EPI Plan MUL00201(商品名)(Nikon)
又はそれらの各同等品
を用いて行われる。
【0034】
2.1.4. 水接触角
本発明の組成物から得られる被膜の水接触角は、
115°以上であり、
好ましくは120°以上、
より好ましくは130°以上、及び
更に好ましくは150°以上
である。
【0035】
本明細書中、水接触角は、水の静的接触角であり、以下の方法で測定される数値である。
(測定方法)
接触角計「Drop Master 701」(商品名)(協和界面科学)又はその同等品を用いて、水(2μLの液滴)を用いて、1サンプルに対して5点測定する。
静的接触角が150°以上になると、その液体は自立して基材表面に存在することができなくなる場合がある。このような場合はシリンジのニードルを支持体として静的接触角を測定し、その時の得られた値を静的接触角とする。
【0036】
2.1.5. n-ヘキサデカン接触角
本発明の組成物から得られる被膜のn-ヘキサデカン接触角(2μLの液滴)は、
好ましくは40°以上、
より好ましくは50°以上、
更に好ましくは60°以上、
より更に好ましくは70°以上、及び
特に好ましくは80°以上
である。
【0037】
なお、本明細書中、n-ヘキサデカンをn-HDと略記する場合がある。
【0038】
本明細書中、n-HD接触角は、n-HDの静的接触角であり、以下の方法で測定される数値である。
(測定方法)
接触角計「Drop Master 701」(商品名)(協和界面科学)又はその同等品を用いて、n-HD(2μLの液滴)を用いて、1サンプルに対して5点測定する。
静的接触角が150°以上になると、その液体は自立して基材表面に存在することができなくなる場合がある。このような場合はシリンジのニードルを支持体として静的接触角を測定し、その時の得られた値を静的接触角とする。
【0039】
2.1.6. 被膜の撥液性の耐摩耗性
2.1.6.1. PETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/cm 、往復1500回)後の水接触角
本発明の組成物から得られる被膜のPETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/cm、往復1500回)後の水接触角は、
100°以上、
好ましくは、115°以上、
より好ましくは120°以上、及び
更に好ましくは150°以上
である。
2.1.6.2. PETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/cm 、往復7000回)後の水接触角
PETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/cm)において、100°以上の水接触角が維持される表面摩擦回数は、好ましくは往復7000回以上である。
【0040】
当該接触角は、以下の方法で測定される数値である。
(測定方法)
耐摩耗試験機「ラビングテスター(3連仕様)151E」(商品名)(井元製作所)又はその同等品のホルダー(試料に接する面積:1cm)にPETフィルム「PETフィルム U-46」(商品名)(東レ)又はその同等品を装着し、荷重100gにて一定回数、試料表面の拭き取りを行い、その後、前記の水接触角の測定方法で、水接触角を測定する。
【0041】
2.2. 被膜の好適な一態様及びその組成
本発明の組成物から得られる被膜は、好ましくは、
[1]撥水成分を構成する、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)
を含有する。]に由来する構成単位、及び
(Bs)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有する。]
に由来する構成単位
を含有する重合体、及び
[2]耐磨耗成分を構成する、単量体(Bm)
に由来する構成単位
を含有する重合体、
を含有し、
前記重合体[1]、及び前記重合体[2]の合計質量に対する、前記重合体[2]の質量の比が85:100 ~ 35:100の範囲内である。
そのフッ素含有量は、好ましくは1質量%以上である。
前記重合体[1]は、主として、撥水成分として機能でき、及び前記重合体[2]は、主として、耐磨耗成分として機能できるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0042】
当該被膜の態様の例を以下に記載する。
【0043】
(態様E1)
当該被膜の一態様は、
[1]構成単位として、
(1)修飾微粒子(A)に由来する構成単位、及び
(2)化合物(Bs)に由来する構成単位
を有する第1化合物(これは、微粒子を含有する形態を有することができる。);及び
[2]構成単位として、化合物(Bm)に由来する構成単位
を有する第2化合物(これは、網状の形態を有することができる。)
を含有する。
念のため記載するに過ぎないが、当該一態様の被膜は、その他の化合物を含有してもよく、その例は、後記態様E2の第1化合物を包含する。
【0044】
(態様E2)
当該被膜の別の一態様は、
[1]構成単位として
(1)修飾微粒子(A)に由来する構成単位、及び
(2)化合物(Bm)に由来する構成単位
を有する第1化合物(これは、微粒子を含有する網状の形態を有することができる。);及び
所望により、
[2]構成単位として、
(1)化合物(Bm)に由来する構成単位
を有する第2化合物(これは、網状の形態を有することができる。)
を含有する。
念のため記載するに過ぎないが、当該態様の被膜は、その他の化合物を含有してもよく、その例は、前記態様E1の第1化合物を包含する。
【0045】
当該一態様の被膜は、好適に、界面活性剤の含有量が、1質量%以下であることができる。
本明細書中、「界面活性剤」は、疎水部及び親水部を有し、界面活性作用を有する有機化合物を意味する。
本明細書中、「有機化合物」は、
構成原子として、少なくとも炭素及び水素を含有し、且つ金属原子及び半金属原子の含有割合が原子数として50%未満である化合物を意味する。
本明細書中、「半金属原子」は、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、及びアンチモン、及びテルルである。
【0046】
3.組成物
本発明は、
[1]撥水成分を構成する、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)
を含有する。]に由来する構成単位、及び
(Bs)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有する。]
に由来する構成単位を含有する重合体、及び
[2]耐磨耗成分を構成する単量体(Bm);及び
[3]非フッ素有機溶剤、及び水からなる群より選択される1種以上の溶媒を主として含有する溶媒
を含有し、
撥水成分[1]、及び前記耐摩耗成分[2]の合計質量に対する、前記耐摩耗成分[2]の質量の比が85:100 ~ 35:100の範囲内である、
組成物を提供する。
当該組成物を用いることにより、前記被膜を製造し得る。
【0047】
前記修飾微粒子(A)、前記重合体(Bs)、及び前記単量体(Bm)、並びにこれらにそれぞれ含有される部分は、前記被膜に関しての、これらについての説明から、技術常識を考慮して、当業者によって理解され得る。
【0048】
撥水成分[1]の質量は、当業者が通常理解する通り、これを構成する材料である修飾微粒子(A)及び化合物(Bs)の質量の合計と、実質的に同じである。
耐摩耗成分[2]の質量は、当業者が通常理解する通り、これを構成する材料である単量体(Bm)の質量と、実質的に同じである。
【0049】
前記撥水成分(又は、含フッ素撥水成分)は、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)を含有する。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有する。]
のそれぞれに由来する構成単位を含有するものであることができる。
当該フッ素含有撥水成分の製造方法は、例えば、
非フッ素有機溶剤中で、前記修飾微粒子(A)が前記少なくとも一種の化合物(B)と反応する工程を含む、製造方法
であることができる
当該製造方法は、前記重合体[1]の製造方法に類似でき、及びその説明から、技術常識に基づいて、理解され得る。
【0050】
前記非フッ素有機溶剤は、後記する、本発明の被膜の製造方法に関しての、重合反応で用いられ得る溶媒について説明から、技術常識を考慮して、当業者によって理解され得る。
当該重合反応は、好ましくは、溶媒の存在下で実施される。
【0051】
前記「非フッ素有機溶剤、及び水からなる群より選択される1種以上の溶媒を主として含有する溶媒」は、前記「非フッ素有機溶剤、及び水からなる群より選択される1種以上の溶媒」を、通常50質量%より多く、好ましくは60質量%以上、及びより好ましくは70%質量%以上含有し得る。
本発明の組成物は、好ましくは、非フッ素有機溶剤を含有する。
【0052】
本発明の組成物は、フッ素溶媒を含有し得るが、
当該フッ素溶媒の含有量は、
好ましくは20質量%未満、
より好ましくは15質量%未満、及び
更に好ましくは10質量%未満、
である。
【0053】
本発明の組成物は、界面活性剤を含有し得るが、
当該界面活性剤の含有量は、
好ましくは1質量%未満、
より好ましくは0.75質量%未満、及び
更に好ましくは0.5質量%未満、
である。
【0054】
前記本発明の組成物では、
撥水成分[1]、及び前記耐摩耗成分[2]の合計質量に対する、前記耐摩耗成分[2]の質量の比が、
85:100~35:100の範囲内であり、
好ましくは82.5:100~36:100の範囲内であり、
より好ましくは80:100~37:100の範囲内であり、及び
更に好ましくは80:100~39:100の範囲内である。
【0055】
本発明において、
前記修飾微粒子(A)、及び前記化合物(Bs)の量比は、
好ましくは1:0.1~1:20、
より好ましくは1:0.2~1:15、及び
更に好ましくは1:0.5~1:5
の範囲内である。
【0056】
本発明において、
前記修飾微粒子(A)、及び前記化合物(Bm)の量比は、
好ましくは1:0.03~1:2.85、
より好ましくは1:0.10~1:2.5、及び
更に好ましくは1:0.30~1:2
の範囲内である。
【0057】
本発明において、
前記修飾微粒子(Bm)、及び前記化合物(Bs)の量比は、
好ましくは1:20~1:0.75、
より好ましくは1:15~1:1、及び
更に好ましくは1:10~1:2
の範囲内である。
【0058】
本発明の組成物の好適な一態様は、
(Bm)化合物[当該化合物は、2個以上の重合性基を分子内に有する。]との組み合わせにおいて硬化に付された場合に、
本発明の被膜が生成される、
組成物
である。
【0059】
本発明の組成物の詳細は、後記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である。
従って、当該組成物は、後記塗膜についての説明で述べた他の物質を含有してもよいことが理解される。
【0060】
3.2.1. 修飾微粒子(A)
前記修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部
を含有する。
【0061】
修飾部の微粒子表面への結合様式は、特に限定されず、その例は、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、及びファンデルワールス力による結合を包含する。
【0062】
本発明の被膜において、
前記核微粒子(i)の数平均粒子径は、
好ましくは5~1000nmの範囲内
である。
【0063】
本発明の被膜において、好ましくは
前記核微粒子(i)の少なくとも一種は、
無機粒子
である。
【0064】
当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。
修飾部に対する重合性基(a)の比率は、例えば、10モル%以上、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、又は100モル%であることができる。
【0065】
修飾微粒子(A)が前記核微粒子(i)上に有する修飾部の数は、1個以上、2個以上、3個以上、5個以上、7個以上、10個以上、15個以上、30個以上、50個以上、70個、又は100個以上であることができる。
【0066】
修飾微粒子(A)が前記核微粒子(i)の上に有する重合性基の数は、1個以上、2個以上、3個以上、5個以上、7個以上、10個以上、15個以上、30個以上、50個以上、70個、又は100個以上であることができる。
【0067】
3.2.1.1. 核微粒子(i)
前記修飾微粒子(A)における前記核微粒子(i)は、例えば、
無機微粒子[例:シリカ微粒子(例:多孔質シリカ微粒子)、及び金属酸化物微粒子];及び
有機微粒子(例:カーボンブラック、フラーレン、及びカーボンナノチューブ);
並びにそれらの組合せ(例:2種以上の混合物)
であることができる。
【0068】
当該特徴は、本発明の被膜がより高い撥液性を有する要因の一つであることができる。
当該特徴は、本発明の被膜がより高い耐久性を有する要因の一つであることができる。
【0069】
本発明に用いられる前記核微粒子(i)が有する数平均粒子径は、
好ましくは0.5nm~1000nm、
より好ましくは1nm~500nm、及び
更に好ましくは5nm~300nm
の範囲内であることができる。
【0070】
前記核微粒子(i)の数平均粒子径として前記の範囲を採用することによって、前述の水接触角、平均表面粗さ、及びWenzelの粗さ係数に関するパラメーターを達成しやすくなる。
【0071】
当該修飾微粒子(A)及び核微粒子(i)の一次粒子の一部又は全ては、本発明の被膜中において、凝集して二次粒子を形成してよい。
前記数平均粒子径は、当該二次粒子、及び当該一次粒子(これは、二次粒子を形成していない一次粒子である)を含む粒子の数平均粒子径であることができる。
【0072】
前記核微粒子(i)の数平均粒子径は、以下の方法で測定できる。
(測定方法)
試料を、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で撮影し、その写真上で200個以上の粒子の直径を測定し、及びその算術平均値を算出する。
【0073】
当該特徴は、本発明の被膜がより高い撥液性を有する要因の一つであることができる。
当該特徴は、本発明の被膜がより高い耐久性を有する要因の一つであることができる。
【0074】
本発明に用いられる前記核微粒子(i)が多孔質のシリカ微粒子である場合、その乾燥紛体状態での見かけ密度は、
好ましくは0.01~0.5g/cm
より好ましくは0.015~0.3g/cm、及び
更に好ましくは0.02~0.05g/cm
の範囲内であることができる。
【0075】
前記多孔質のシリカ微粒子の見かけ密度として前記の範囲を採用することによって、前述の水接触角、平均表面粗さ、及びWenzelの粗さ係数に関するパラメーターを達成しやすくなる。
【0076】
当該見かけ密度は、以下の方法で測定できる。
(測定方法)
0.2gの紛体試料を10mlのメスシリンダーに投入した際の体積を計測し、得られた密度を見かけ密度とする。
【0077】
3.2.1.2. 修飾部(ii)が有する重合性基(a)
前記重合性基(a)の例は、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、及びアニオン重合性基を包含する。
その好適な例は、ラジカル重合性基を包含する。
【0078】
ラジカル重合性基の例は、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、及びマレイミド基、並びにこれらの基を有する基を包含する。
【0079】
その好適な例は、(メタ)アクリル基、及びスチリル基、並びにこれらの基を有する基を包含する。
【0080】
前記重合性基(ii)は、修飾部の1個以上の末端に、重合可能な状態で位置することができる。
【0081】
前記1個以上の重合性基(ii)を有する前記修飾部の例は、1個以上の前記重合性基で置換されているアルキル基(例:炭素数1~10のアルキル基)又はポリエーテル基(例:炭素数2~10のポリエーテル基)を包含する。
【0082】
当該特徴は、本発明の被膜がより高い撥液性を有する要因の一つであることができる。
当該特徴は、本発明の被膜がより高い耐久性を有する要因の一つであることができる。
【0083】
前記修飾微粒子(A)は、フッ素を含有しない。
ここで、フッ素を含有しないことは、フッ素を実質的に含有しないことを包含する。具体的には、フッ素を含有しないことは、フッ素含有量が1質量%未満であることを意味することができる。
【0084】
前記修飾微粒子(A)は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0085】
3.2.1.3. 修飾微粒子(A)の製造方法
修飾微粒子(A)は、公知の方法、又はこれに類似する方法を採用し、及び前記結合様式を適宜選択し、製造できる。
例えば、化合物[当該化合物は、(a)1個以上の重合性基及び(b)粒子表面との反応性を有する1個以上の部位を有する]を、前記核微粒子(i)に反応させる方法等が挙げられる。
ここで、粒子表面との反応性を有する1個以上の前記部位(b)は、前記核微粒子(i)の表面の化学構造又は状態によって適宜選択できる。
このような反応の例は、シランカップリングを包含する。
【0086】
当該方法のより具体的な例は、
(1)前記シリカ微粒子上の水酸基若しくはシラノール基と、修飾部になる化合物中の官能基とを結合させる方法(例:シランカップリングを採用する方法)、
(2)前記金属粒子上の金属酸化物と、修飾部になる化合物中のホスホン酸部とを結合させる方法、及び
(3)金を含有する金属粒子の金と、修飾部になる化合物のチオール部位とを結合させる方法
を包含する。
【0087】
3.2.2. 化合物(B)
本発明で用いる、化合物(B)[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]は、一種又は二種以上であることができる。
このうち、少なくとも一種は、分子内に2個以上の重合性基を有する化合物[化合物(Bm)]である。
重合性基(b)の例は、前記重合性(a)の例を包含する。
【0088】
本発明の被膜において、
前記化合物(B)の少なくとも一種は、
好ましくは(メタ)アクリレート
である。
(メタ)アクリレートを採用することによって、前述の水接触角、平均表面粗さ、及びWenzelの粗さ係数に関するパラメーターを達成しやすくなる。
【0089】
本発明の被膜において、好ましくは
前記化合物(B)の少なくとも一種は、
好ましくは(メタ)アクリル酸C1-C22アルキル、
より好ましくは(メタ)アクリル酸C16-C22アルキル、
更に好ましくは(メタ)アクリル酸C18-C22アルキル、及び
である。
当該前記化合物(B)中のアルキルは、好ましくは直鎖状である。
【0090】
本発明の被膜において、より好ましくは
前記化合物(B)の全てが、
好ましくは(メタ)アクリル酸C1-C22アルキル、
より好ましくは(メタ)アクリル酸C16-C22アルキル、
更に好ましくは(メタ)アクリル酸C18-C22アルキル、及び
である。
【0091】
本発明の被膜における(メタ)アクリレート含有量は、被膜全体に対して、好ましくは33.5質量%以上、より好ましくは50.0質量%以上である。
【0092】
当該特徴は、本発明の被膜がより高い撥液性を有する要因の一つであることができる。
当該特徴は、本発明の被膜がより高い耐久性を有する要因の一つであることができる。
【0093】
3.2.2.1. 耐摩耗性成分を構成する単量体(Bm)
耐摩耗性成分を構成する単量体(Bm)は、
例えば、化合物分子内に2個以上の重合性基(b)を有する化合物[化合物(Bm)](多官能重合性化合物又は多官能架橋性化合物ともいう)であり、
本発明の被膜の耐摩耗性の点で、
分子内に2~8個の重合性基(b)を有するものが好ましく、
3~6個の重合性基(b)を有するものがより好ましく、及び
3個の重合性基(b)を有するものが更に好ましい。
前記化合物(Bm)としては、3次元架橋可能なものが好ましい。
3次元架橋可能とは、重合反応により3次元構造を構成できることを意味する。
前記化合物(Bm)として3次元架橋可能なものを用いることによって、前記PETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/)cm、往復1500回)後の水の接触角に関するパラメーターを達成し易くなる。
【0094】
前記重合性基(b)は、前記修飾微粒子(A)と結合可能であることが好ましい。
前記重合性基(b)として前記修飾微粒子(A)と結合可能であるものを採用することによって、前記PETフィルムによる表面摩擦(荷重100g重/)cm、往復1500回)後の水の接触角に関するパラメーターを達成し易くなる。
前記重合性基(b)の例は、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、及びアニオン重合性基を包含する。
前記重合性基(b)の特に好ましい例は、ラジカル重合性基を包含する。これは、汎用性及び/又は反応性の点で好ましい。
前記修飾微粒子(A)の有する重合性基(a)、及び重合性基(b)は、同じ原理で反応する基であることが好ましい。
その好適な態様の例は、
重合性基(a)がラジカル重合性基であり、及び
重合性基(b)もまたラジカル重合性基である
態様を包含する。
【0095】
前記ラジカル重合性基の例は、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、及びマレイミド基を包含する。
【0096】
前記ラジカル重合性基の好ましい例は、及び(メタ)アクリル基及びスチリル基を包含する。これらは、汎用性及び/又は反応性の点で好ましい。
【0097】
前記化合物(Bm)の例は、次式(Bm-1)で表される化合物を包含する。
【0098】
【化4】
【0099】
[式中、
Xは、
水素原子、
素原子、
臭素原子、
ヨウ素原子、
CX基(当該式中、Xは、各出現において同一又は異なって、水素原子、又は塩素原子である。)、
シアノ基、
炭素数1~21の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、
置換若しくは非置換のベンジル基、
置換若しくは非置換のフェニル基、又は
炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基であり;
Yは、
直接結合、
酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基、
-CHCHN(R)SO-基(当該式中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、式の右端がZに、左端がOにそれぞれ結合している。)、
-CHCH(OY)CH-基(当該式中、Yは水素原子又はアセチル基であり、式の右端がZに、左端がOにそれぞれ結合している。)、又は
-(CH)SO-基(nは1~10であり、式の右端がZに、左端がOにそれぞれ結合している。)であり;
は、各出願において同一又は異なって、m+1価の炭化水素基(当該炭化水素基は、1個以上の酸素原子を含有していてもよい。)、炭素原子、又は酸素原子であり、
は、各出願において同一又は異なって、n価の炭化水素基(当該炭化水素基は、1個以上の酸素原子を含有していてもよい。)、炭素原子、又は酸素原子であり、
mは1~3の整数であり;
nは1~4(好ましくは2~4)の整数であり;及び
mとnの積が2以上(好ましくは2~4)である。]
【0100】
前記式(Bm-1)において、Z及びZについての炭化水素は、それぞれ環状又は非環状のいずれであってもよく、また直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。
【0101】
前記式(Bm-1)において、Z及びZについての炭化水素は、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、及び更に好ましくは炭素数1~2の炭化水素である。
【0102】
前記した式(Bm-1)で表される化合物の具体例は、次の化合物を包含する。
【0103】
CH-CH-C-(CHOCO-CH=CH (トリメチロールプロパントリアクリレート、TMPTA)
C(-CHOCO-CH=CH
O[-CH(-CHOCO-CH=CH
【0104】
本発明の被膜は、前記修飾微粒子(A)及び前記化合物(Bm)を用いて共重合を行うことにより得られうる、前記の各物性を有する。
このこと(特に、構造的特徴に関する物性)は、本発明の塗膜の優れた耐摩耗性に関連し得る。
【0105】
前記化合物(Bm)の、前記修飾微粒子(A)に対する量比は、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内において適宜調整できる。
具体的な当該化合物(Bm)の使用量は、前記微粒子100重量部に対して、
通常5~1000重量部、
好ましくは10~750重量部、及び
より好ましくは20~500重量部
の範囲内であることができる。
【0106】
前記化合物(Bm)は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0107】
3.2.2.2. 分子内に1個の重合性基を有する化合物[化合物(Bs)]
本発明の被膜の製造において、前記修飾微粒子(A)及び前記化合物(Bm)に加えて、分子内に1個の重合性基を有する化合物[化合物(Bs)](単官能重合性化合物ともいう)の少なくとも一種をさらに共重合してもよい。
【0108】
前記重合性基の例は、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、及びアニオン重合性基を包含する。
前記重合性基の特に好ましい例は、ラジカル重合性基を包含する。これは汎用性及び/又は反応性の点で好ましい。
【0109】
ラジカル重合性基は、例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、及びマレイミド基等が挙げられる。
【0110】
前記ラジカル重合性基の好ましい例は、(メタ)アクリル基及びスチリル基等が、汎用性及び/又は反応性の点で好ましい。
【0111】
前記化合物(Bs)の例は、次式(Bs-1)で表される化合物を包含する。
【0112】
【化5】
【0113】
[当該式中、
Xは、
水素原子、
塩素原子、
臭素原子、
ヨウ素原子、
-CX基(当該式中、Xは、各出現において同一又は異なって、水素原子、又は塩素原子である。)、
シアノ基、
炭素数1~21の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、
置換若しくは非置換のベンジル基、
置換若しくは非置換のフェニル基、又は
炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基
であり;
Yは、
単結合、
酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基、
-CHCH-N(-Rya)-SO-基(当該式中、Ryaは炭素数1~4のアルキル基である。当該式の右端がRに、左端がOにそれぞれ結合している。)、
-CHCH(-ORyb)-CH-基(当該式中、Rybは水素原子又はアセチル基である。当該式の右端がRに、左端がOにそれぞれ結合している。)、又は
-(CH)-SO-基(当該式中、nは1~10である。当該式の右端がRに、左端がOにそれぞれ結合している。)であり;及び
Rは、
炭化水素基(当該炭化水素基は、1個以上の酸素原子を含有していてもよい。)である。]
前記式(Bs-1)において、炭化水素基は、環状又は非環状のいずれであってもよく、また直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。
前記式(Bs-1)において、炭化水素基は、好ましくは炭素数1~22、より好ましくは炭素数16~22、及び更に好ましくは炭素数18~22の炭化水素基である。
【0114】
前記化合物(Bs)の好適な例は、次式(Bs-1)で表される化合物を包含する。
式:
【化6】
[式中、
Rは、C2n+1であり、
Yは、-CH-、又は-C-であり、及び
Xは、水素であり、及び
nは、1以上の数である。
但し、nが2以上であるときは、Yは-C-である。]
で表される化合物。
【0115】
前記した式(Bs-1)で表される化合物の具体例は、次の化合物を包含する。
【0116】
CHO-CO-C(-CH)=CH (メチルメタクリレート)
O-CO-C(-CH)=CH (エチルメタクリレート)
O-CO-C(-CH)=CH (プロピルメタクリレート)
O-CO-C(-CH)=CH (ブチルメタクリレート)
13O-CO-C(-CH)=CH (ヘキシルメタクリレート)
17O-CO-C(-CH)=CH (オクチルメタクリレート)
1225O-CO-C(-CH)=CH (ラウリルメタクリレート)
CHO-CO-CH=CH (メチルアクリレート)
O-CO-CH=CH (エチルアクリレート)
O-CO-CH=CH (プロピルアクリレート)
O-CO-CH=CH (ブチルアクリレート)
13O-CO-CH=CH (ヘキシルアクリレート)
17O-CO-CH=CH (オクチルアクリレート)
1225O-CO-CH=CH (ラウリルアクリレート)
1837O-CO-CH=CH (ステアリルアクリレート)
2245O-CO-CH=CH (べへニルアクリレート)
【0117】
前記化合物(Bs)は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0118】
当該化合物(Bs)(単官能重合性化合物)の、前記化合物(Bm)(多官能重合性化合物)に対する量比は、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内において適宜調整できる。
具体的な当該化合物(Bs)の使用量は、前記化合物(Bm)の100重量部に対して、
通常5~1000重量部、
好ましくは10~500重量部、及び
より好ましくは20~300重量部
の範囲内であることができる。
【0119】
3.2.3. 被膜の適用対象
【0120】
本発明の被膜を適用する対象の材質については特に限定はなく、その例は、
ガラス、樹脂(例:天然樹脂、合成樹脂)、金属(例:アルミニウム、銅、及び鉄等の金属単体、又は合金等の複合体)、セラミックス、半導体(例:シリコン、ゲルマニウム)、繊維、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材、及び建築部材
を包含する
本発明の被膜を適用する対象の形態については特に限定はなく、適用対象の形態は、本板、フィルム、又はその他の形態であることができる。
例えば、前記線維の場合、織物、又は不織布の形態であってもよい。
【0121】
3.2.4. 被膜の製造方法
前記被膜の製造方法について説明する。
【0122】
本発明の被膜は、前記修飾微粒子(A)及び前記化合物(B)を含有する組成物(例えば、前記又は後記の本発明の組成物)に含まれる硬化性成分を被処理面上で硬化させることにより得ることができる。
本発明の被膜の一態様は、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子
[当該修飾微粒子(A)は、
(i)核微粒子、及び
(ii)当該核微粒子を修飾する1個以上の修飾部(当該1個以上の修飾部のうちの一部又は全部は、1個以上の重合性基(a)を有する。)
を含有し、及びフッ素を含有しない。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物
[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]
のそれぞれに由来する構成単位を含有する被膜であることができる。
前記化合物(B)のうちの少なくとも一種は、好適に、
(Bm)化合物[当該化合物は、2個以上の重合性基を分子内に有する。]
であることができる。
前記化合物(B)のうちの少なくとも一種は、より好適に、例えば、
式(1):
【化7】
[式中、
Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX基(但し、XおよびXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基、置換若しくは非置換のフェニル基、又は炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルキル基であり、
Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基、-CHCHN(R)SO-基(但し、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、式の右端がRfに、左端がOにそれぞれ結合している。)、-CHCH(OY)CH-基(但し、Yは水素原子またはアセチル基であり、式の右端がRfに、左端がOにそれぞれ結合している。)、又は-(CH)SO-基(nは1~10であり、式の右端がRfに、左端がOにそれぞれ結合している。)であり、及び
Rfは、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、又は分子量400~5000のフルオロポリエーテル基である。]
で表される化合物
であることができる。
Rfは、好適に、例えば、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基であることができる。
Rfは、より好適に、例えば、炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基であることができる。
当該硬化性成分による硬化は、例えば、硬化性成分として重合性化合物の重合反応に基づくことができる。
前記化合物(Bm)は、当該硬化性成分又は重合性化合物として好適に機能できる。
【0123】
本発明の被膜は、例えば、以下に説明する被膜の製造方法の一態様、又はこれに類似する方法によって製造できる。
【0124】
本発明の被膜の製造方法の一態様は、
(1)修飾微粒子(A)に1個以上の化合物(Bs)を結合させて、1個以上の重合性基(a)を有する微粒子(A)を得る工程;
(2)前記工程(1)で得られた微粒子(A)及び前記化合物(Bm)を含有する組成物を被処理面上に適用する工程;及び
(3)前記被処理面上で、前記化合物(Bm)を重合させる工程
を含む。
【0125】
本発明の被膜の製造方法の一態様の変形例として、1個以上の化合物(Bs)の一部又は全部に変えて、前記化合物(Bm)を用いてもよい。
この場合、工程(1)は、被処理面で実施されてもよい。
また、工程(2)は工程(1)と並行して同時に被処理面上で実施されてもよい
【0126】
前記工程(1)の反応条件は、修飾微粒子(A)上の重合性基(a)及び前記化合物(Bs)の各種類(つまりは、前記結合の反応の種類)に応じて、技術常識に基づき、設定すればよい。
【0127】
前記工程(2)における前記組成物の被処理面への適用又は塗布は、公知の適用又は塗布の方法(例:刷毛塗り、スプレー、スピンコート、バーコーダー及びディスペンサーを使用する方法)を採用して実施できる。
この際、必要に応じて、より塗布しやすくするために被処理面に対して各種のプライマー処理をあらかじめ行ってもよい。
なかでも、スプレー、又はバーコーターを用いて塗布することが好ましく、特に、前述の水接触角、平均表面粗さ、及びWenzelの粗さ係数に関するパラメーターを達成しやすくなる点で、スプレーを用いて塗布することが特に好ましい。
【0128】
前記工程(3)では、前記組成物を処理対象物に接触させた後、重合反応により硬化性成分を硬化させることにより、本発明の被膜を製造できる。
前記化合物(Bm)は、前述の通り、塗膜を形成できる。
当該修飾微粒子(A)の一部又は全部は、当該塗膜と化学的に結合していてもよい。
当該塗膜と化学的に結合している修飾微粒子(A)は、化学的に塗膜の一部として、塗膜中に保持され、及びその結果、当該塗膜が前記の物性を有することに寄与できる。
一方、当該塗膜と化学的に結合している修飾微粒子(A)は、物理的に(すなわち、非化学的に)塗膜の一部として、塗膜中に保持され、及びその結果、当該塗膜が前記の物性を有することに寄与できる。
【0129】
前記組成物を重合反応により硬化させる場合、重合反応は、重合開始剤の存在下又は非存在下のいずれにおいても行うことができる。
前記式(2)で表される化合物を使用する場合、重合開始剤を使用することが好ましい。
【0130】
当該重合開始剤は、好ましくは、例えば、350nm以下の波長領域の電磁波(例:紫外光線、電子線、X線、γ線等)が照射されることによって初めてラジカル又はカチオン等を発生し、重合体の炭素-炭素二重結合の硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであって、通常、紫外光線でラジカル又はカチオンを発生させるもの、特にラジカルを発生するものであることができる。
【0131】
前記重合開始剤の例は、次のものを包含する。
【0132】
アセトフェノン系:アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、ヒドロキシプロピオフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリンプロパン-1-オン等。
【0133】
ベンゾイン系:ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等。
【0134】
ベンゾフェノン系:ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ-プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等。
【0135】
2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン
【0136】
チオオキサンソン類:チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソン等。
【0137】
その他:ベンジル、α-アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3-ケトクマリン、2-エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノン等。
【0138】
なお、前述の電磁波等の光エネルギーによってラジカルを発生させる開始剤以外に、熱エネルギーによってラジカルを発生させる開始剤も使用可能である。
【0139】
前述の熱エネルギーによってラジカルを発生させる開始剤としては、公知の熱ラジカル重合反応用の重合開始剤を使用できる。
その例は、
アゾビスイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤;並びに
過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、及びジスルフィド誘導体等のその他の開始剤
を包含する。
【0140】
これらの重合開始剤は、一種単独で、又は二種以上の組合せで使用できる。
【0141】
重合開始剤の使用量は、通常、単量体成分100重量部に対して、0.01~10重量部程度とすることが好ましく、3~7重量部程度とすることがより好ましい。
【0142】
重合開始剤の非存在下においても行う重合方法の例としては、熱、電子線、又はγ線等を用いる方法等が挙げられる。
具体的には、例えば、熱及び/又は350nm以下の波長領域の電磁波(例:紫外光線、電子線、X線及びγ線等)を利用して重合を行うことができる。
【0143】
重合反応は二以上の段階に分けて実施してもよい。
【0144】
この場合、例えば、化合物(Bm)の少なくとも一種を、二以上の段階の最後の段階で被処理物上にて重合させることが好ましい。 具体的には、微粒子(A)、及び化合物(Bs)を重合させ、及びその後、化合物(Bm)を用いた重合を実施できる。
【0145】
重合温度、重合時間などの重合条件は、単量体成分の種類、その使用量、重合開始剤の種類、その使用量などに応じて適宜調整すればよいが、通常、50~100℃程度の温度で4~10時間の重合反応を行えばよい。
【0146】
前記組成物を処理対象物に接触させた後、硬化性成分を硬化させることにより、本発明の被膜を製造できる。
前記組成物が、
(1)修飾微粒子(A)、及び
(2)硬化性成分である多官能架橋性化合物(Bm)として、イソシアネート基を有する化合物(Bmi)含有する場合、
修飾微粒子(A)を作製した後、修飾微粒子(A)がイソシアネート基を有する化合物(Bmi)と共存するような溶液を作製し、被処理物に展開することで本発明の被膜を製造できる。
【0147】
前記組成物を修飾微粒子(A)と化合物(Bmi)を用いて硬化させる場合、熱を加えることが好ましい。
ここで、設定温度に対して適宜適切な時間を設定できる。
当該反応の温度は、例えば、
好ましくは30℃~300℃、及び
より好ましくは40℃~270℃
である。
当該反応の時間は、例えば
好ましくは1秒間~2時間、及び
好ましくはより好ましくは5秒間~1時間30分間
である。
【0148】
なお、より高い耐久性を有する被膜を形成するためには、前記組成物による処理に先だって、基材表面の汚染物質を取り除くために、基材をアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、ハイドロフルオロエーテルなどの溶剤もしくはそれらの混合溶媒などで洗浄した後、乾燥することが好ましい。
【0149】
更に、前記の洗浄に加えて、シリコン基材や金属製の基材であれば、酸(塩酸、硝酸、フッ化水素など)、UVオゾンなどの化学的洗浄、サンドブラスト、ガラスビーズ、プラズマなどの物理的洗浄で表面に形成される酸化膜を除去することも耐久性向上に有用である。
【0150】
より耐摩耗性能が向上する点で、前記洗浄した基材に化学吸着できる化合物であって、且つその構造中に前記組成物とも化学反応できる部位を有する化合物を表面修飾しておくことが、更に好ましくい。
【0151】
重合反応には、必要に応じてさらに、水酸基及びイソシアネート基の反応に対する触媒活性剤を含んでいてもよい。
特に化合物(Bmi)を多官能架橋性化合物として用いる際には、このような触媒を使用することが好ましい。
その例は、
有機チタン化合物[例:チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、チタンジイソブロボキシビス(エチルアセトアセテート)]など、
有機ジルコニア化合物[例:ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)]を包含する。
このような化合物は商業的に入手可能であり、その例は、
オルガチックスTA-30(マツモトファインケミカル)、TC-750(マツモトファインケミカル)、ZC-580(マツモトファインケミカル)、及びZC-700(マツモトファインケミカル)を包含する。
【0152】
当該重合反応は、好ましくは、溶媒の存在下で実施される。
当該溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノール等のアルコール溶媒;
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n-デカン、イソドデカン、及びトリデカン等の非芳香族炭化水素溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、ジエチルベンゼン、メチルナフタレン、ニトロベンゼン、o-ニトロトルエン、メシチレン、インデン、及びジフェニルスルフィド等の芳香族炭化水素溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジイソブチルケトン、及びイソホロン等のケトン;
ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチル t-ブチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、フェネトール、1,1-ジメトキシシクロヘキサン、及びジイソアミルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、マロン酸ジエチル、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、及びα-アセチル-γ-ブチロラクトン等のエステル溶媒;
アセトニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド系溶媒;及び
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミド等のアミド溶媒、並びに
これらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
前記溶媒の好ましい例としては、
アルコール溶媒[例:メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール];
ケトン系溶媒[例:メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン]、
エステル系溶媒[例:酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル]、
エーテル系溶媒[例:テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン]、及び
アミド系溶媒[例:ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド]が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
溶媒の量は、反応が適当に進行するように、技術常識に基づき、適宜決定できる。
【0153】
4.キット
本発明は、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子[当該修飾微粒子は、当該核微粒子、及びその表面上の1個以上の重合性基(a)を含有し、及びフッ素を含有しない。]、及び
(Bs)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、1個の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。];並びに
これらとは分離された状態で、
(Bm)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、2個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]
を含有する、キット
もまた提供する。
【0154】
本発明のキットの詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である。
従って、当該キットは、前記塗膜についての説明で述べた他の物質を含有してもよいことが理解される。
本発明のキットは、これが含有する物質を、適宜、混合した状態、又は分離した状態で含有できる。
【0155】
5.物品
本発明は、
本発明の被膜を、表面の一部又は全部の上に有する物品
もまた提供する。
【0156】
本発明の物品の詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である。
【0157】
6.物品のコーティング方法
【0158】
本発明は、
物品のコーティング方法であって、本発明の被膜を、当該物品の表面の一部又は全部の上に形成する工程を含む方法
もまた提供する。
【0159】
本発明の物品のコーティング方法の詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である。
【0160】
7.物品の撥液加工方法
【0161】
本発明は、
物品の撥液加工方法であって、本発明の被膜を、当該物品の表面の一部又は全部の上に形成する工程を含む方法
もまた提供する。
【0162】
本発明の物品の撥液加工方法の詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である。
もまた提供する。
本発明は、
物品の撥液加工方法であって、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子[当該修飾微粒子は、当該核微粒子、及びその表面上の1個以上の重合性基(a)を含有し、及びフッ素を含有しない。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]、或いはこれらの反応生成物;並びに
(Bm)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、2個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]
を、
当該物品の表面の一部又は全部の上に適用する工程を含む方法
もまた提供する。
【0163】
本発明の物品の撥液加工方法の詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である。
【0164】
8.被膜形成用微粒子
【0165】
本発明は、
本発明の被膜の形成用である、1個以上の重合性基を有し、及びフッ素原子を有さない、微粒子
もまた提供する。
【0166】
本発明の物品の微粒子の詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である
【0167】
9.被膜形成用化合物
【0168】
本発明は、
本発明の被膜の形成用である、1個以上の重合性基を有し、及びフッ素原子を有さない、化合物
もまた提供する。
本発明は、
本発明の被膜の形成用である、2個以上の重合性基を有し、及びフッ素原子を有さない、化合物
もまた提供する。
【0169】
これら、本発明の被膜形成用化合物の詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である
【0170】
10.被膜形成用組成物
【0171】
本発明は、
本発明の被膜の形成用である組成物であって、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子[当該修飾微粒子は、当該核微粒子、及びその表面上の1個以上の重合性基(a)を含有し、及びフッ素を含有しない。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]、或いはこれらの反応生成物;並びに
(Bm)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、2個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]
からなる群より選択される一種以上を含有する組成物
もまた提供する。
【0172】
11.コーティング用組成物
【0173】
本発明は、
コーティング用組成物であって、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子[当該修飾微粒子は、当該核微粒子、及びその表面上の1個以上の重合性基(a)を含有し、及びフッ素を含有しない。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]、或いはこれらの反応生成物;並びに
(Bm)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、2個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]
からなる群より選択される一種以上を含有する組成物
もまた提供する。
【0174】
本発明の撥液処理用組成物の詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である。
【0175】
12.撥液処理用組成物
【0176】
本発明は、
撥液処理用組成物であって、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子[当該修飾微粒子は、当該核微粒子、及びその表面上の1個以上の重合性基(a)を含有し、及びフッ素を含有しない。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]、或いはこれらの反応生成物;並びに
(Bm)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、2個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]
からなる群より選択される一種以上を含有する組成物
もまた提供する。
【0177】
本発明の撥液処理用組成物の詳細は、前記塗膜についての説明、及び技術常識から、当業者が理解可能である
【0178】
13.組成物
本発明は、また、
(A)少なくとも一種の修飾微粒子[当該修飾微粒子は、当該核微粒子、及びその表面上の1個以上の重合性基(a)を含有し、及びフッ素を含有しない。]、及び
(B)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、1個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]、或いはこれらの反応生成物;並びに
(Bm)少なくとも一種の化合物[当該化合物は、2個以上の重合性基(b)を分子内に有し、及びフッ素を含有しない。]、
を含有し、
界面活性剤の含有量が10質量%以下(好ましくは5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下)
であり、
前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(Bm)が前記液体媒体中に溶解又は分散している組成物
を提供する。
当該組成物の詳細は、本明細書の記載、及び技術常識から、当業者が理解可能である
【0179】
前記液体媒体の例は、前記で重合反応について述べた溶媒の例と同じであることができる。
【0180】
前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記化合物(Bm)の合計量に対する、前記液体媒体の量は、
好ましくは0.1~30質量%、
より好ましくは0.2~20質量%、及び
更に好ましくは0.3~15質量%
の範囲内であることができる。
【0181】
本明細書中、「溶解又は分散している(状態)」とは、10分間以上撹拌を行っていないときに、目視において均一な状態が観察される状態(すなわち、マクロ的に不均一な状態が観察されない状態)を意味する。
【実施例
【0182】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0183】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0184】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
【0185】
溶液A1 イソプロピルアルコールを溶媒として用いた、[Rf(C6)メタクリレート/微粒子]共重合体溶液の調製
撹拌装置付き反応器に、C6F13CH2CH2OCOC(CH3)=CH2[以下、Rf(C6)メタクリレートと略することがある。] 39.63g、ラジカル反応性基を表面に有した数平均一次粒子径が12 nmのシリカ微粒子 20.12g、及び イソプロピルアルコール(以下、IPAと略することがある。) 536.37gを仕込み、窒素バージし、80℃に加熱した。これにAIBN 1.96gを投入して、6時間反応させた。
【0186】
溶液A2(比較例用) フッ素有機溶剤Novec7200を溶媒として用いた、[Rf(C6)メタクリレート/微粒子]共重合体溶液の調製
撹拌装置付き反応器に、Rf(C6)メタクリレート 49.55g、ラジカル反応性基を表面に有した数平均一次粒子径が12 nmのシリカ微粒子 24.72g、及び Novec7200 924.38gを仕込み、窒素バージし、70℃に加熱した。これにAIBN 2.51gを投入して、6時間反応させた。
【0187】
試験例A
溶液A1、及び溶液A2(比較例用)を用いて塗膜化し、塗膜の物性を、それぞれに記載の方法を用いて求めた。
【0188】
接触角測定(試験例A1、A2)
溶液A1、及び溶液A2(比較例用)を、各々溶液を調製時の溶媒で希釈し、固形分濃度を4重量%に調整し、アルミ基材(表面が目視で平滑な板)に浸漬法によって処理をし、10分風乾した後に、80℃で5分間熱処理を施すことで、塗膜を作製し、その水と油(n-HD)の接触角を測定した。その結果、いずれの塗膜も水の接触角150°以上の超撥水を発現し、油の接触角も90°以上であった。
【表1】
【0189】
耐摩耗性評価(試験例A3~A8)
調製した溶液を用いてUV処理又は熱処理を施すことで耐摩耗性を有する超撥水塗膜を作製した。その作成例(塗膜例)、及び耐摩耗試験結果例を以下に示す。
各塗膜の作製、及び試験の条件を以下に記す。
【0190】
(UV処理による、耐摩耗性塗膜の作製)
塗膜例A3
バイアルに、トリメチロールプロパントリアクリレート(以下、TMPTAと略すことがある。) 0.498g、アルキルフェノン系光重合開始剤として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン 0.101g、固形分4重量%に調製した実施例A1の溶液 37.50gを投入し、混合することで溶液を調製し、アルミ基材(表面が目視で平滑な板)にスプレー法によって処理をした。その後、UV照射装置にて積算光量1,800 mJ/cmのUVを照射して、塗膜試料を作製した。
【0191】
(熱処理による、耐摩耗性塗膜の作製)
塗膜例A4
バイアルに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体 0.86g、硬化促進剤としてチタンジイソプロポキシ ビス(エチルアセトアセテート) 0.044g、酢酸ブチル19.53g、固形分6.5重量%に調製した実施例A1の溶液 39.45gを投入し、混合することで溶液を調製し、アルミ基材(表面が目視で平滑な板)にスプレー法によって処理をした。その後、オーブンで130℃、1時間熱処理して、塗膜試料を作製した。
【0192】
塗膜例A5及びA6
塗膜例A5、及びA6の塗膜試料は、それぞれ試験例A3、及びA4と同様の方法で、但しUV照射も熱処理もなしで、作製した。
【0193】
(耐摩耗性評価)
ラビングテスター「耐摩耗試験機151E 3連仕様」(井元製作所)のホルダー(試料に接する面積:1 cm)にPETフィルム U-46(製品名)(東レ)を装着し、荷重100g/cmにて所定回数、次表に記載の各例の試験片の表面を摩耗し、その後、塗膜試料の対水接触角を測定して、耐摩耗性を評価した。ここでの耐摩耗性は、5回平均の静的接触角の値が150°以上を維持できる摩耗回数と定義した。
【表2】
試験例A1~A6の結果より、有機溶剤で調製した分散体からなる塗膜の性能(撥水性・耐摩耗性)が、従来使用のフッ素有機溶剤で調製した分散体からなる塗膜の性能と同等であった。このことにより、本発明が、超撥水材料の原価の削減、および用途の拡大に貢献できる可能性があることを確認できた。
【0194】
溶液B1 水を主溶媒として用いた、[Rf(C6)メタクリレート/微粒子]共重合体溶液の調製
撹拌装置付き反応器に、C6F13CH2CH2OCOC(CH3)=CH2[以下、Rf(C6)メタクリレートと略することがある。] 4.00g、ラジカル反応性基を表面に有した数平均一次粒子径が12 nmのシリカ微粒子 2.00g、及び イソプロピルアルコール(以下、IPAと略することがある。) 17.67g、水 52.24gを仕込み、窒素バージし、及び80℃に加熱した。これにV-50 0.20gを投入して、6時間反応させた。
【0195】
溶液B2(比較例用) Novec7200を溶媒として用いた、[Rf(C6)メタクリレート/微粒子]共重合体溶液の調製
撹拌装置付き反応器に、Rf(C6)メタクリレート 49.55g、ラジカル反応性基を表面に有した数平均一次粒子径が12 nmのシリカ微粒子 24.72g、及び Novec7200 924.38gを仕込み、窒素バージし、及び70℃に加熱した。これにAIBN 2.51gを投入して、6時間反応させた。
試験例B1~B6
溶液B1、及び溶液B2(比較例用)を用いて塗膜化し、塗膜の物性を、それぞれに記載の方法を用いて求めた。
【0196】
接触角測定(試験例B1、及びB2)
溶液B1、及び溶液B2(比較例用)を、その調製時に用いた溶媒で希釈して、その固形分濃度を4重量%に調整した。当該液を用いて、アルミ基材(表面が目視で平滑な板)を浸漬法によって処理し、10分風乾した後に、80℃で5分間熱処理を施すことで、塗膜を作製した。
作成した塗膜の水と油(n-HD)の接触角を測定した。その結果、いずれの塗膜も水の接触角150°以上の超撥水を発現し、且つ油の接触角も90°以上であった。
【表3】
【0197】
耐摩耗性評価(試験例B3~B6)
調製した溶液を用いて熱処理を施すことで耐摩耗性を有する超撥水塗膜を作製した。
各塗膜の作製、試験の条件を以下に記す。
【0198】
(熱処理による、耐久性塗膜の作製)
試験例B3
バイアルに、70重量%ブロックドイソシアネートのジプロピレングリコールジメチルエーテル溶液の1.25g、及び固形分4重量%に調製した実施例B1の溶液 48.75gを投入し、及び混合して溶液を調製した。当該液を用いて、アルミ基材(表面が目視で平滑な板)をスプレー法によって処理をした。その後、オーブンで130℃、1時間静置した。比較例B1の溶液を用いた被膜も投入量を37.51gとして同様にして作製した。
【0199】
試験例B4
バイアルに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体 0.87g、硬化促進剤としてチタンジイソプロポキシ ビス(エチルアセトアセテート) 0.045g、酢酸ブチル19.42g、固形分6.5重量%に調製した比較例B1の溶液 39.51gを投入し、混合することで溶液を調製し、アルミ基材(表面が目視で平滑な板)にスプレー法によって処理をした。その後、オーブンで130℃、1時間熱処理した。
【0200】
試験例B5、及びB6は、それぞれ、試験例B1、及びB2と同様の方法で、但し熱処理なしで、作製した。
【0201】
(耐摩耗性評価)
耐摩耗性の評価は、ラビングテスター「耐摩耗試験機151E 3連仕様」(井元製作所)のホルダー(試料に接する面積:1 cm)にPETフィルム U-46(製品名)(東レ)を装着し、荷重100g/cmにて所定回数、次表に記載の各例の試験片の表面を摩耗し、その後、塗膜試料の対水接触角を測定して、拭き取りに対する耐摩耗性を評価した。ここでの耐摩耗性は、5回平均の静的接触角の値が150°以上を維持できる摩耗回数と定義した。
【表4】
【0202】
試験例B1~B6の結果、水を主溶媒として調製した分散体からなる塗膜の性能(撥水性・耐摩耗性)は、従来使用のフッ素有機溶剤で調製した分散体からなる塗膜の性能と同等であった。
このことにより、本発明が、超撥水材料の原価の削減、および用途の拡大に貢献できる可能性があることを確認できた。