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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】抜取り結果確認装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/06 20060101AFI20240110BHJP
   A61J 1/14 20230101ALI20240110BHJP
   B65B 57/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61J1/06 L
A61J1/14 520
B65B57/10 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020110851
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007739
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】北出 幸大
(72)【発明者】
【氏名】小澤 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】金戸 慶一郎
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200515(JP,A)
【文献】特開2018-52573(JP,A)
【文献】特開平10-35614(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084295(WO,A1)
【文献】特開2008-249569(JP,A)
【文献】特開2013-28390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/06
A61J 1/14
B65B 57/02-57/10
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液等の充填された複数のシリンジを整列した状態で収容した包装容器の中から、不良と判定された不良シリンジの位置を記憶する記憶手段と、当該記憶手段に記憶された不良シリンジの位置を通知する通知手段と、上記通知手段に従って上記不良シリンジが除去された上記包装容器を撮影する撮影手段と、上記撮影手段が撮影した画像と上記記憶手段に記憶された不良シリンジの位置とを対比して、全ての不良シリンジが包装容器から抜き取られているか否かを判定する抜取り判定手段とを備えることを特徴とする抜取り結果確認装置。
【請求項2】
上記包装容器に収容された上記シリンジは、上端部に位置する開口部がアルミシートによって封止されており、
上記撮影手段が上記包装容器に対して斜め上方に設けられるとともに、包装容器に対して上記撮影手段と同じ側に設けられて、かつ、斜め上方から上記包装容器のシリンジに光を照射する照明手段が設けられ、
上記照明手段が照射して上記アルミシートで反射した反射光のうち、正反射光が直接撮影手段に入射しないように上記照明手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の抜取り結果確認装置。
【請求項3】
上記包装容器に収容された上記シリンジは、上端部に位置する開口部がゴム栓によって封止された状態で上記包装容器に収容され、
上記撮影手段が上記包装容器に対して斜め上方に設けられるとともに、包装容器に対して斜め上方から上記包装容器のシリンジに光を照射する照明手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の抜取り結果確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抜取り結果確認装置に関し、詳しくは複数のシリンジを収容した包装容器の中から、不良シリンジが適切に除去されたか否かを判定する抜取り結果確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス製または樹脂製のシリンジに薬液が充填されて封止されたプレフィルドシリンジが知られている。このようなプレフィルドシリンジは、アンプルやバイアルから薬液を吸引して使用するのと比較して、直ちに使用することができるのに加え、感染の危険性を低減することができるという利点がある。
そして薬液をシリンジに充填して封止する薬剤充填装置として、空のシリンジを複数本ずつネストタブと呼ばれる包装容器に収容し、当該包装容器に収容したシリンジに対して薬液の充填や、封止を行うようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-213625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような薬剤充填装置によって薬液の充填や封止がされたシリンジについては、充填した薬液の量や封止状態を検査するとともに、不良と判断された不良シリンジを上記包装容器より排除する必要がある。
包装容器から不良シリンジを排除する作業を作業者による手作業で行う場合、作業者は上記包装容器に収容されている不良シリンジの位置を確認しながら抜取り作業を行う必要があり、不注意等による抜取りミスが発生する恐れがあった。
このような問題に鑑み、本発明は包装容器から不良シリンジが抜き取られたことを正確に確認することが可能な抜取り結果確認装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる抜取り結果確認装置は、薬液等の充填された複数のシリンジを整列した状態で収容した包装容器の中から、不良と判定された不良シリンジの位置を記憶する記憶手段と、当該記憶手段に記憶された不良シリンジの位置を通知する通知手段と、上記通知手段に従って上記不良シリンジが除去された上記包装容器を撮影する撮影手段と、上記撮影手段が撮影した画像と上記記憶手段に記憶された不良シリンジの位置とを対比して、全ての不良シリンジが包装容器から抜き取られているか否かを判定する抜取り判定手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、通知手段の通知に従って包装容器から不良シリンジが抜き取られた後、撮影手段が撮影した画像と記憶手段に記憶された不良シリンジの位置とを対比することにより、全ての不良シリンジが包装容器から抜き取られているか否かを判定するため、抜取りミスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例にかかる薬液充填ラインの構成図
図2】包装容器の平面図
図3】抜取りエリアを説明する側面図
図4】通知手段としてのディスプレイの表示内容を説明する図
図5】撮影手段による撮影結果を説明する図
図6】第2実施例にかかる抜取りエリアを説明する側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1はシリンジ1に薬液を充填する薬液充填ライン2を示しており、本実施例の薬液充填ライン2において、上記シリンジ1は図2図3に示すネストタブと呼ばれる包装容器3に収容された状態で扱われるようになっている。
薬液充填ライン2は上記包装容器3を搬送する搬送コンベヤ4に沿って設けられ、包装容器3を包装している外袋3aを殺菌する外袋殺菌エリア5と、殺菌後の外袋3aを除去する外袋除去エリア6と、上記シリンジ1に薬液を充填する充填エリア7と、シリンジ1を封止する封止エリア8と、上記包装容器3から不良と判断された不良シリンジ1Aを抜き取る抜取りエリア9とを備えている。
このうち、外袋殺菌エリア5、外袋除去エリア6、充填エリア7、封止エリア8は、内部が無菌状態に維持されたアイソレータ10の内部に設けられており、上記作業を無菌環境下において行うようになっている。
一方、上記封止エリア8でシリンジ1が封止された後、包装容器3は非無菌環境に設置された上記抜取りエリア9へと搬送され、作業者が当該包装容器3から不良シリンジ1Aを抜き取る作業を行うようになっている。
そして、抜取りエリア9において不良シリンジ1Aが抜き取られると、包装容器3は搬送コンベヤ4によってさらに図示しない下流側の工程へと搬送され、搬出のための包装等が行われるようになっている。
【0009】
図3に示すように、上記シリンジ1は薬液を収容可能な筒状を有しており、先端の針装着部1aが下方を向き、使用時にピストンが挿入される開口部が上方を向いた状態で上記包装容器3に収容されるようになっている。
上記針装着部1aにはシリンジ1の使用時に穿刺針が装着されるようになっており、包装容器3に収容されている際にはゴム製の蓋部材が装着されている。
また上記シリンジ1の開口部には、当該開口部を囲繞するようにフランジ部1bが形成されている。
そして本実施例では、上記開口部を介してシリンジに薬液を充填するとともに、薬液が充填された後には当該開口部をアルミシート11によって封止するようになっている。
【0010】
上記包装容器3は、上記シリンジ1の長さ程度の深さを有した皿部12と、当該皿部12の開口部近傍に装着された板状のネスト13とから構成されている。
上記ネスト13には上記シリンジ1の直径と略同径のホール13aが穿設されており、上記シリンジ1を包装容器3の上方より上記ホール13aに挿入すると、上記フランジ部1bがネスト13に当接して、シリンジ1がネスト13によって支持されるようになっている。
上記ネスト13のホール13aは規則正しく設けられており、これにより上記シリンジ1は包装容器3内において整列した状態で収容されるようになっている。
そして本実施例では、空のシリンジ1を薬液充填ライン2に供給する際には、これら空のシリンジ1を予め包装容器3に収容したものとなっており、また当該包装容器3はビニール製の外袋3aによって包装されたものとなっている。
【0011】
以下、上記外袋殺菌エリア5、外袋除去エリア6、充填エリア7、封止エリア8について説明する。なお、これらは従来公知の構成によって構成することが可能であるため、図を用いた詳細な説明については省略するものとする。
上記外袋殺菌エリア5が設けられたアイソレータ10の内部には、過酸化水素蒸気などの殺菌媒体を噴射する殺菌手段が設けられており、上記外袋3aに包装された包装容器3に殺菌媒体を噴射し、上記外袋3aの外面を殺菌するものとなっている。
上記外袋除去エリア6が設けられたアイソレータ10には、作業者が無菌環境下において作業するためのグローブが設けられており、作業者は外袋3aより上記包装容器3を取り出すとともに、取り出した包装容器3を再度搬送コンベヤ4に載置する作業を行うようになっている。
ここで、上記包装容器3の開口部が予めシールされている場合には、当該外袋除去エリア6においてシールを除去する作業も併せて行う。
【0012】
上記充填エリア7が設けられたアイソレータ10の内部には、充填ノズルを備えた充填装置が設けられており、上記搬送コンベヤ4によって搬送された包装容器3内のシリンジ1に所定量の薬液を充填するようになっている。
また充填エリア7には、充填後のシリンジ1に対して、薬液が所定量充填されているか否かを検査する充填量検査手段7aが設けられており、液面の位置などから充填量を検出して、所定量の薬液が充填されていないシリンジ1を不良シリンジ1Aとして判定する。
【0013】
上記封止エリア8が設けられたアイソレータ10の内部には、シールヘッドを備えたシール装置が設けられており、上記搬送コンベヤ4によって搬送された包装容器3内のシリンジ1の開口部をアルミシート11によって封止するようになっている。
また封止エリア8には、封止後のシリンジ1に対して、アルミシート11の有無やシール不良を検査する封止検査手段8aが設けられており、適切に封止されていないシリンジ1を不良シリンジ1Aとして判定する。
【0014】
上記抜取りエリア9は、上述したようにアイソレータ10内部に設けられておらず、搬送コンベヤ4に隣接した位置には作業者のための作業スペースが確保され、上述したように包装容器3より不良シリンジ1Aを抜き取る作業を手作業にて行うようになっている。
また上記抜取りエリア9には、搬送コンベヤ4によって搬送される包装容器3を停止させるストッパ21が設けられており、このストッパ21は作業者による操作か、もしくは図示しない制御手段によって作動し、包装容器3の下流側への移動を許容したり阻止したりするものとなっている。
具体的には、上記充填エリア7や封止エリア8において包装容器3から上記不良シリンジ1Aが検出されなかった場合、ストッパ21は当該包装容器3を抜取りエリア9に停止させずに通過させ、包装容器3から上記不良シリンジ1Aが検出された場合、ストッパ21は当該包装容器3を抜取りエリア9の所定の位置に停止させるようになっている。また、必要に応じて包装容器3の位置決めが行われるようになっている。
【0015】
上述したように抜取りエリア9では作業者による手作業で不良シリンジ1Aの抜き取りを行うが、不注意等による抜取りミスの恐れがあることから、当該抜取りエリア9に本発明にかかる抜取り結果確認装置22を設けて、不良シリンジ1Aが正しく抜き取られたことを確認するようになっている。
上記抜取り結果確認装置22は、上記包装容器3における不良シリンジ1Aの位置を記憶する記憶手段23と、当該記憶手段23に記憶された不良シリンジ1Aの位置を作業者に通知する通知手段24と、不良シリンジ1Aが除去された後の上記包装容器3を撮影する撮影手段25と、上記撮影手段25による撮影に伴って包装容器3に光を照射する照明手段26と、上記不良シリンジ1Aと通知された位置のシリンジ1が包装容器3から抜き取られているか否かを判定する抜取り判定手段27とを備えている。
【0016】
上記記憶手段23は、上記充填エリア7の充填量検査手段7aおよび上記封止エリア8の封止検査手段8aに接続され、これらの検査手段で検出された包装容器3における不良シリンジ1Aの位置を記憶するようになっている。
上記通知手段24は、作業者に隣接して設けられたディスプレイ28と、搬送コンベヤ4の上方に設けられたプロジェクター29(図3参照)とから構成されている。
図4に示すように、上記ディスプレイ28はいわゆるタッチパネルディスプレイで、画面上をタッチして判定の開始といった操作ができるようになっており、包装容器3および当該包装容器3に収容されているシリンジ1の簡略化した平面画像を表示させるようになっている。
上記包装容器3の平面画像には、上記記憶手段23が記憶している不良シリンジ1Aの位置に、当該不良シリンジ1Aがその他の正常なシリンジ1から識別できるような状態で表示させるようになっている。
作業者はこのディスプレイ28の画像から、包装容器3中の不良シリンジ1Aの位置を認識することができ、また包装容器3から不良シリンジ1Aを抜き取った後、ディスプレイ28の包装容器3の画像の下に設けた確認ボタン28aをタッチすることで、上記抜取り判定手段27が判定を開始するようになっている。
【0017】
上記プロジェクター29は搬送コンベヤ4の上方に設けられており、上記抜取りエリア9に位置している包装容器3に収容された全てのシリンジ1に対して個別に光を照射可能な構成を有している。
上記プロジェクター29は、上記記憶手段23が記憶している不良シリンジ1Aの位置に、当該不良シリンジ1Aがその他の正常なシリンジ1と識別できるような青色や赤色の光を照射するようになっている。
その結果、作業者はプロジェクター29によって光の照射されたシリンジ1を不良シリンジ1Aであると認識でき、上記ディスプレイ28の画面を見なくても直接不良シリンジ1Aの位置を認識することができ、作業者の負担を低減することができる。
【0018】
上記撮影手段25には従来公知のCCDカメラやCMOSカメラを用いることができ、図3に示すように包装容器3の斜め上方、より具体的にはストッパ21によって搬送コンベヤ4上で停止している包装容器3に対し、当該搬送コンベヤ4の搬送方向上流側の斜め上方に設けられている。
また上記照明手段26は、複数のLEDを直線状に整列させたバータイプの照明を2組備えた構成を有しており、上記撮影手段25と同じ側、換言すると包装容器3に対して搬送コンベヤ4の搬送方向上流側の斜め上方であって、かつ上記撮影手段25に隣接した位置に設けられている。
このように上記撮影手段25および上記照明手段26を配置することで、撮影手段25および照明手段26を上記作業者の正面より退避させて作業者の邪魔にならないようにすることができ、また上記プロジェクター29の設置スペースを確保することが可能となっている。
また撮影手段25および照明手段26を包装容器3に対して同じ側の斜め上方に設けたことで、上記撮影手段25の撮影方向と、上記照明手段26による光の照射方向とが上記包装容器3に向けて略同じ方向を向くようになっている。
これにより、後に詳述するように照明手段26が照射して上記シリンジ1のアルミシート11で反射した反射光のうち、正反射光が直接撮影手段25に入射しないようにすることができ、確実な認識をすることが可能となっている。
【0019】
上記抜取り判定手段27は、上記撮影手段25が撮影した包装容器3の画像から、上記記憶手段23が記憶した不良シリンジ1Aの位置に不良シリンジ1Aが残っているか否かを判定するものとなっている。
上記撮影手段25が撮影した画像は、図示しない画像処理手段において所要の画像処理が行われ、抜取り判定手段27は当該画像からシリンジ1の有無の認識を行い、これを記憶手段23に記憶された包装容器3における不良シリンジ1Aの位置と対比する。
対比の結果、記憶手段23に記憶された不良シリンジ1Aの位置にシリンジ1が残存していた場合、抜取り判定手段27は作業者による抜取りミスに該当すると判定し、上記ディスプレイ28やその他の手段を用いて、不良シリンジ1Aが依然として包装容器3に残存していることを作業者に通知する。
【0020】
ここで、作業者による抜取りミスの原因としては、単なる抜取り忘れや取り違いの他、アルミシート11によって封止されていないシリンジ1を見逃すことが考えられる。
すなわちシリンジ1を構成する素材が透明であったり、また包装容器3のネスト13と同系色であったりする場合、アルミシート11がないことによって作業者が見過ごしてしまう恐れがある。
このような認識ミスは、上記撮影手段25を用いた画像認識においても生じうることから、本実施例では撮影手段25および照明手段26を包装容器3に対して同じ側の斜め上方に設けたことで、シリンジ1の有無およびアルミシート11によって封止されていないシリンジ1の検出を確実に行うようになっている。
【0021】
図5は撮影手段25が撮影した包装容器3の写真の一例を示したものとなっており、(a)は本実施例のように撮影手段25と同じ側に照明手段26を設けた場合の写真を、(b)は撮影手段25に対し包装容器3を挟んで反対側に照明手段26を設けた場合の写真を示している。
図3に示すように、照明手段26と撮影手段25とを包装容器3に対して同じ側に設けた場合、照明手段26が照射して上記アルミシート11で反射した反射光のうち、正反射光は直接撮影手段25に入射しないようになっている。
ここで、アルミシート11は金属光沢を有していることから、アルミシート11での光の乱反射は起きにくく、照明手段26から照射された光のほとんどが正反射するため、ごく一部の光だけが乱反射して撮影手段25に入射することとなる。
一方、アルミシート11以外のシリンジ1やネスト13の表面は、アルミシート11ほど光を正反射させないため、これらの表面で反射した乱反射光は、上記アルミシート11における乱反射光よりも高い光量で撮影手段25に入射することとなる。
その結果、図5(a)のAの部分に示すように、アルミシート11に該当する部分は暗灰色に認識され、Bの部分に示すネスト13に該当する部分に比べて暗く認識される。
一方、Cの部分に示すアルミシート11によって封止されていないシリンジ1は、照明手段26が斜め上方から光を照射することにより、シリンジ1の開口部に沿って略三日月状で黒色の影が形成されることから、上記Bの部分のネスト13と識別することが可能となっている。
以上のように撮影手段25と照明手段26とを配置することにより、アルミシート11によって封止されたシリンジ1(A)と、シリンジ1が抜き取られたネスト13(B)と、アルミシート11によって封止されていないシリンジ1(C)とを、反射光の明度や影の形状によって正確に認識することが可能となっている。
【0022】
一方、図5(b)は撮影手段25の反対側に照明手段26を設けた場合の写真であり、このように配置した場合、照明手段26が照射して上記アルミシート11で反射した正反射光が直接撮影手段25に入射する場所がある。一方、撮影手段25による撮影方向と照明手段26による光の照射方向が微妙にずれることで、正反射光が撮影手段に直接入射しない場所も存在する。
その結果、画像の下方に位置するAのアルミシート11は明るい画像として撮影され、これに対し画像の上方に位置するA′のアルミシート11は暗い画像として撮影されることとなり、シリンジ1の位置によって明るさのばらつきが生じてしまうこととなる。
このように、同じアルミシート11として異なる明度の画像が撮影されてしまうと、抜取り判定手段27は撮影された画像から、当該画像がアルミシート11によって封止されたシリンジ1であるか、シリンジ1が抜き取られたネスト13であるかを判定できなくなり、誤判定の恐れが生じてしまう。
【0023】
以下、上記構成を有する薬液充填ライン2の動作について説明する。
まず、複数の空のシリンジ1を収容した包装容器3は、ビニール製の外袋3aに収容された状態で、上記搬送コンベヤ4の上流端に供給される。
搬送コンベヤ4は上記外袋3aに収容された包装容器3をアイソレータ10の内部に設けられた外袋殺菌エリア5に移動させ、殺菌媒体を噴射して外袋3aの殺菌を行う。
次に、搬送コンベヤ4は上記外袋3aの殺菌された包装容器3をアイソレータ10の内部に設けられた外袋除去エリア6に移動させ、グローブを装着した作業者は外袋3aから包装容器3を取り出すとともに、当該包装容器3を再度搬送コンベヤ4の所定の位置に載置する。
【0024】
次に、搬送コンベヤ4は上記包装容器3をアイソレータ10の内部に設けられた充填エリア7に移動させ、包装容器3に収容された各シリンジ1に対してそれぞれ所定量ずつ薬液を充填する。
また充填エリア7では、薬液の充填が終了したシリンジ1に対し、充填量検査手段7aが薬液の充填量の検査を行い、充填量に過不足が検出された場合には当該シリンジ1を不良シリンジ1Aとして認識し、当該不良シリンジ1Aの位置が上記抜取り結果確認装置22の記憶手段23に記憶される。
【0025】
さらに、搬送コンベヤ4は上記包装容器3をアイソレータ10の内部に設けられた封止エリア8に移動させ、包装容器3に収容された各シリンジ1の開口部をそれぞれアルミシート11によって封止する。
また封止エリア8では、アルミシート11による封止が終了したシリンジ1に対し、封止検査手段8aが封止の良否の検査を行い、アルミシート11のないシリンジ1や、封止が不完全なシリンジ1を不良シリンジ1Aとして認識し、当該不良シリンジ1Aの位置が上記記憶手段23に記憶される。
【0026】
そして、シリンジ1への薬液の充填およびアルミシート11による封止が完了すると、搬送コンベヤ4は包装容器3をさらに搬送して上記抜取りエリア9へと移動させる。
上記抜取りエリア9に到達した包装容器3に不良シリンジ1Aがない場合、上記ストッパ21は当該包装容器3をそのまま通過させ、不良シリンジ1Aがある場合、上記ストッパ21が作動して当該包装容器3を抜取りエリア9に停止させる。
抜取りエリア9には作業者が待機しており、作業者に隣接した位置に設けられたディスプレイ28には、図4に示すように、包装容器3に収容されたシリンジ1の中から、上記記憶手段23が記憶した不良シリンジ1Aの位置を明示する。
これと同時に、搬送コンベヤ4の上方に設けられたプロジェクター29は、上記記憶手段23が記憶した不良シリンジ1Aの位置に対応して、抜取りエリア9に停止している包装容器3の不良シリンジ1Aに光を照射する。
すると作業者は、上記ディスプレイ28の表示や、上記プロジェクター29による光の指示に基づいて、抜取りエリア9に停止している包装容器3の中から、不良シリンジ1Aを抜き取る作業を行う。
作業者は、指示された不良シリンジ1Aをすべて抜き取ったと確信すると、ディスプレイ28に表示されている確認ボタン28aをタッチし、上記抜取り結果確認装置22による確認が開始される。
【0027】
抜取り結果確認装置22は、上記作業者が上記ディスプレイ28の確認ボタン28aをタッチすると、上記撮影手段25および照明手段26を作動させて、不良シリンジ1Aの抜き取られた包装容器3を撮影する。
撮影手段25が撮影した包装容器3の画像には、図5(a)に示すように、各シリンジ1が収容される位置に、アルミシート11によって封止されたシリンジ1(A)、シリンジ1の抜き取られたネスト13(B)、アルミシート11によって封止されていないシリンジ1(C)のいずれかの画像が撮影されている。
そして抜取り判定手段27は、上記記憶手段23に記憶されている不良シリンジ1Aの位置と、撮影手段25が撮影した画像とを比較し、不良シリンジ1Aの位置にシリンジ1の抜き取られたネスト13(B)が撮影されている場合には、不良シリンジ1Aが適切に抜き取られていると判定する。
一方、不良シリンジ1Aの位置として記憶されている部分に、アルミシート11によって封止されたシリンジ1(A)や、アルミシート11によって封止されていないシリンジ1(C)が撮影されている場合には、抜取りミスが生じているものと判定する。
なお、作業者が不良シリンジ1Aではない良品のシリンジ1を包装容器3から誤って抜き取ってしまう場合があるが、このように良品のシリンジ1が誤って抜き取られた場合であっても、抜取り判定手段27は抜取りミスの判定を行わず、当該良品のシリンジ1が抜き取られたネスト13(B)の位置を記憶しておくようになっている。
【0028】
このようにして、抜取りエリア9において抜取りミスが検出されると、抜取り判定手段27は上記ディスプレイ28に抜取りミスがあったことを通知し、併せて抜き取られていない不良シリンジ1Aの位置を表示させ、さらにプロジェクター29によって当該抜き取られていない不良シリンジ1Aに光を照射させる。
その後、作業者が全ての不良シリンジ1Aを抜き取り、再度確認ボタン28aをタッチすると、抜取り結果確認装置22は上述した手順に従って再度確認動作を行う。
ここで、最初の抜き取り作業時に作業者が誤って包装容器3から良品のシリンジ1を抜き取った場合、再度の確認動作の際に抜取り判定手段27は当該シリンジ1が抜き取られたネスト13(B)の位置についてのシリンジ1の有無の判定を行うようになっている。
判定の結果、当該ネスト13(B)の位置のシリンジ1が抜き取られた状態のままである場合、抜取り判定手段27は抜取りミスが生じていないものと判定し、逆に当該位置にシリンジ1が撮影された場合に抜取りミスが生じているものと判定する。
これは、シリンジ1の抜き取られたネスト13(B)の位置に、作業者がシリンジ1を戻してしまったからであるが、この戻されたシリンジ1が必ずしも良品とは断定できないことから、このような場合にも抜取りミスが生じたものと判定するようになっている。
そして上記抜取り判定手段27によって全ての不良シリンジ1Aが抜き取られていると判定すると、上記ストッパ21が作動して、抜取りエリア9の包装容器3が下流側へと搬送されることとなる。
【0029】
以上のように、本実施例の抜取り結果確認装置22によれば、複数のシリンジ1を収容した包装容器3の中から、作業者が手作業により不良シリンジ1Aだけを抜き取る作業について、抜取りミスを認識することができる。
このため、仮に作業者による抜取りミスが認識された場合であっても、抜き取られなかった不良シリンジ1Aを再度通知することで、全ての不良シリンジ1Aを抜き取ることができる。
【0030】
図6は第2実施例にかかる抜取り結果確認装置22を示しており、薬液充填ライン2における当該抜取り結果確認装置22以外の構成は、上記第1実施例の構成と同じであるため、詳細な説明については省略する。なお本実施例においては上記通知手段24としてのプロジェクター29を省略した構成となっている。
本実施例において、上記シリンジ1の開口部は黒色もしくは濃色のゴム栓31によって封止され、第1実施例と同様、包装容器3に収容された状態で搬送されるようになっている。
本実施例においても、上記封止エリア8において薬液の充填されたシリンジ1を上記ゴム栓31によって封止するようになっており、また封止エリア8に設けた封止検査手段8aがゴム栓31の有無やゴム栓31の装着不良による不良シリンジ1Aの判定を行い、当該不良シリンジ1Aの位置が記憶手段23に記憶されるようになっている。
【0031】
本実施例のように、シリンジ1をゴム栓31で封止すると、ゴム栓31は上記第1実施例におけるアルミシート11と異なる反射特性を有していることから、本実施例の抜取り結果確認装置22においては、撮影手段25および照明手段26を第1実施例とは異なる配置で設けている。
具体的には、本実施例の撮影手段25は図6において上記搬送コンベヤ4を挟んで作業者の作業スペースの反対側となる斜め上方に設けられており、これに対し照明手段26は上記搬送コンベヤ4の上方であって、上記包装容器3に対して搬送方向上流側および下流側の斜め上方に設けられている。
【0032】
このように撮影手段25および照明手段26を包装容器3に対して斜め上方に設けたことで、撮影手段25が撮影した包装容器3の画像から、ゴム栓31によって封止されたシリンジ1、シリンジ1の抜き取られたネスト13、ゴム栓31によって封止されていないシリンジ1を認識することができる。
まずアルミシート11と違い、ゴム栓31は黒色または暗色であるため、ゴム栓31は暗色に撮影され、ネスト13やシリンジ1はそれよりも明るく撮影されることから、ゴム栓31によって封止されたシリンジ1とシリンジ1の抜き取られたネスト13とを明確に認識することができる。
さらに、撮影手段25および照明手段26を包装容器3に対して斜め上方に設けたことで、ゴム栓31によって封止されていないシリンジ1については、当該シリンジ1の開口部に沿って形成される三日月状の影によって認識することが可能となっている。
【0033】
なお上記実施例では、作業者が包装容器3から不良シリンジ1Aを抜き取った後、ディスプレイ28の確認ボタン28aをタッチしているが、上記抜取り結果確認装置22による確認を所定時間間隔で行うようにして、全ての不良シリンジ1Aが抜き取られるまで不良シリンジ1Aの位置を指示し続けるようにすることも可能である。
その場合、作業者による確認ボタン28aのタッチ操作を要さず、全ての不良シリンジ1Aが抜き取られたら自動的にストッパ21を作動させて、包装容器3を移動させることが可能となる。
また上記実施例では、空のシリンジ1が包装容器3に収容された状態で薬液充填装置に供給されるようになっているが、例えば上記外袋除去エリア6において、空のシリンジ1を空の包装容器3に収容する作業を行うようにしてもよい。
また上記実施例では、包装容器3に収容されたシリンジ1に薬液が充填されるようになっているが、充填液は薬液に限定されるものではなく、他の充填液が充填されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 シリンジ 1b 開口部
2 薬液充填ライン 3 包装容器
4 搬送コンベヤ 9 抜取りエリア
11 アルミシート 13 ネスト
22 抜取り結果確認装置 23 記憶手段
24 通知手段 25 撮影手段
26 照明手段 27 抜取り判定手段
28 ディスプレイ 29 プロジェクター
31 ゴム栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6