(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】管組立体、圧縮機、冷凍装置、及び管組立体の製造方法
(51)【国際特許分類】
F04B 39/12 20060101AFI20240110BHJP
F04B 39/14 20060101ALI20240110BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240110BHJP
F04C 29/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F04B39/12 101H
F04B39/14
F04C29/00 B
F04C29/04 L
(21)【出願番号】P 2022086943
(22)【出願日】2022-05-27
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2021200734
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】永原 顕治
(72)【発明者】
【氏名】塚 義友
(72)【発明者】
【氏名】長道 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】新木 康介
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-018189(JP,U)
【文献】特開昭59-133972(JP,A)
【文献】特開平05-093592(JP,A)
【文献】特開2020-109297(JP,A)
【文献】特開2018-017233(JP,A)
【文献】実開昭58-127281(JP,U)
【文献】特開平09-253839(JP,A)
【文献】特開2012-206147(JP,A)
【文献】特開2001-087853(JP,A)
【文献】特開昭60-015066(JP,A)
【文献】特開2002-066730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/12
F04B 39/14
F04C 29/00
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面第1部分(71)及び外周面第2部分(72)を有し、かつ圧縮機(11)の冷媒通路を構成する内管(70)と、
内周面第1部分(81)及び内周面第2部分(82)を有し、かつ前記冷媒通路を構成する外管(80)であって、前記内周面第1部分は前記外管の端部
の側に位置しており、前記内周面第2部分は前記内周面第1部分
と比較して前記端部から離間する側に位置しており、前記外周面第1部分は前記内周面第1部分
に圧入されている、外管(80)と、
前記外周面第2部分と前記内周面第2部分の間のロウ付け隙間(65)に配置され、かつ、前記外周面第2部分と前記内周面第2部分を固定するロウ材(61)と、
を備える、管組立体(60)。
【請求項2】
前記内管は、内管線膨張係数(α)を有し、
前記外管は、前記内管線膨張係数よりも大きな外管線膨張係数(β)を有し、
前記ロウ材は、前記内周面第1部分と前記外周面第1部分とを少なくとも部分的に固定する、
請求項1に記載の管組立体。
【請求項3】
管組立体外周面(62)、
をさらに備え、
前記ロウ材の一部は、前記管組立体外周面における前記内管と前記外管の接続部(63)に位置する、
請求項1に記載の管組立体。
【請求項4】
前記内管の内径(H1)は、6.4mm以上である、
請求項1に記載の管組立体。
【請求項5】
前記ロウ付け隙間(65)の管組立体径方向(r)の寸法(Gr)は、50μm以上かつ450μm以下である、
請求項1に記載の管組立体。
【請求項6】
前記ロウ付け隙間(65)の管組立体軸方向(a)の寸法(Ga)は、4mm以上かつ6mm以下である、
請求項5に記載の管組立体。
【請求項7】
前記
外周面第1部分が前記
内周面第1部分に
圧入される前には、前記外周面第1部分(71)の径方向位置(P1)は、前記内周面第1部分(81)の径方向位置(P2)よりも、0.25mm以下だけ外側に位置している、
請求項1に記載の管組立体。
【請求項8】
前記外周面第1部分(71)の管組立体軸方向(a)における長さ(Ta)は、2mm以上かつ3mm以下である、
請求項1に記載の管組立体。
【請求項9】
前記内管は、前記外周面第2部分(72)に隣接して、前記ロウ材の余剰分(66)を収容できる収容部(73)を有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の管組立体。
【請求項10】
前記収容部(73)は、
前記外周面第2部分(72)と隣接する収容部第1壁面(731)、
前記収容部第1壁面から離間する収容部第2壁面(732)、及び、
前記収容部第1壁面(731)と前記収容部第2壁面(732)とを接続する収容部底面(733)、
を有し、
前記内管(70)は、
前記外周面第2部分(72)と前記収容部第1壁面(731)とによって形成される角部(75)、及び、
前記収容部第1壁面(731)と前記収容部底面(733)とによって形成される隅部(76)、
を有し、
前記角部(75)には、
前記内管(70)の軸線(70A)を通過する前記内管(70)の断面において曲線を形成する曲面部(75R)、又は、
前記断面において直線を形成する面取り部(75C)、
が設けられている、
請求項9に記載の管組立体。
【請求項11】
前記角部(75)には前記曲面部(75R)が設けられており、
前記曲面部(75R)の曲率半径(c)は0.5mm以上かつ1.0mm以下である、
請求項10に記載の管組立体。
【請求項12】
前記角部(75)には前記面取り部(75C)が設けられており、
前記面取り部(75C)が前記断面において形成する前記直線の長さ(L)は(0.5×√2)mm以上かつ(1.0×√2)mm以下である、
請求項10に記載の管組立体。
【請求項13】
前記隅部(76)には、
前記内管(70)の前記軸線(70A)を通過する前記内管(70)の前記断面において曲線を形成する曲面部(76R)、
が設けられている、
請求項10に記載の管組立体。
【請求項14】
前記内管は、前記収容部(73)に隣接して、管組立体径方向(r)の外方に膨出するフランジ(74)を有する、
請求項9に記載の管組立体。
【請求項15】
ケーシング(51)と、
前記ケーシングに収容される圧縮機構(55)と、
前記ケーシングの外部の低圧冷媒(R1)を前記圧縮機構へ案内する吸入管(52)と、
前記圧縮機構から吐出される高圧冷媒(R2)を前記ケーシングの外部へ案内する吐出管(53)と、
請求項9に記載の管組立体(60)によって構成され、前記ケーシングの外部から冷媒を前記圧縮機構へ供給するインジェクション経路(54)と、
を備える、
圧縮機(11)。
【請求項16】
請求項15に記載の圧縮機(11)と、
減圧装置(15)と、
熱交換器(13、21)と、
前記減圧装置によって減圧された冷媒(R4)を前記インジェクション経路へ案内するインジェクション配管(45)と、
を備え、
前記インジェクション配管は絞り部(46)を有し、前記絞り部と前記内管によってマフラ空間(59)が画定される、
冷凍装置(100)。
【請求項17】
外周面第1部分(71)及び外周面第2部分(72)を有し、かつ圧縮機(11)のインジェクション経路(54)を構成する内管(70)を、前記外周面第1部分が前記外周面第2部分の下に位置するように置き、
端部
の側に位置する内周面第1部分(81)及び前記内周面第1部分
と比較して前記端部から離間する側に位置している内周面第2部分(82)を有し、かつ前記インジェクション経路を構成する外管(80)
を準備し、
前記外周面第2部分と前記内周面第2部分がロウ付け隙間(65)を形成するように、
前記外周面第1部分を前記内周面第1部分に圧入し、
前記ロウ付け隙間にロウ材(61)が位置するように、前記
圧入に先んじて又は前記
圧入の後で前記ロウ材を配置し、
前記内管、前記外管、及び前記ロウ材を炉中ロウ付けし、それによって溶融した前記ロウ材が前記外周面第2部分と前記内周面第2部分を固定する、
管組立体(60)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管組立体に関する。本開示はさらに、管組立体を有する圧縮機、及び、管組立体を有する冷凍装置に関する。本開示はさらに、管組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2020-109297号公報)に開示される冷媒流路部材は、冷媒を案内するものであり、圧縮機に搭載される。冷媒流路部材は、2つの金属部材を含む。冷媒流路部材の製造時に、2つの金属部材は例えば炉中ロウ付けなどの方法によって互いに接合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2つの金属部材の接合部に大きな隙間がある場合、ロウ付けの工程中にその2つの金属部材の位置や配向が互いに対してずれるおそれがある。このずれは、ロウ付けの状態の不良を招き、冷媒流路部材の強度を低下させうる。ひいては、冷媒流路部材を搭載する圧縮機、及びその圧縮機を含む冷凍装置において、このずれによって動作不良が引き起こされるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の管組立体は、内管と、外管と、ロウ材と、を備える。内管は、外周面第1部分及び外周面第2部分を有する。内管は、圧縮機のインジェクション経路を構成する。外管は、内周面第1部分及び内周面第2部分を有する。外管は、インジェクション経路を構成する。内管が外管に部分的に挿入されることによって、外周面第1部分は内周面第1部分と接触している。ロウ材は、外周面第2部分と内周面第2部分の間のロウ付け隙間に配置される。ロウ材は、外周面第2部分と内周面第2部分を固定する。
【0005】
この構成によれば、外周面第1部分は内周面第1部分と接触している。したがって、内管と外管が互いを保持するので、ロウ付け隙間が維持され、それによって管組立体の全体の形状及び強度を保つことができる。
【0006】
第2観点の管組立体は、第1観点の管組立体であって、内管が、内管線膨張係数を有する。外管は、内管線膨張係数よりも大きな外管線膨張係数を有する。ロウ材は、内周面第1部分と外周面第1部分とを少なくとも部分的に固定する。
【0007】
この構成によれば、外管は内管よりも大きな線膨張係数を有する。したがって、高温のロウ付けの過程で一時的に生じる内周面第1部分と外周面第1部分の間の隙間にロウ材の一部が入り込むので、管組立体の強度がより確保される。
【0008】
第3観点の管組立体は、第1観点又は第2観点の管組立体であって、管組立体外周面、
をさらに備える。ロウ材の一部は、管組立体外周面における内管と外管の接続部に位置する。
【0009】
この構成によれば、ロウ材の一部は、管組立体の軸方向に、ロウ付け隙間から接続部にわたって延びる。したがって、内管と外管がより強固に固定されるので、管組立体の強度がより確保される。
【0010】
第4観点の管組立体は、第1観点から第3観点のいずれか1つの管組立体であって、内管の内径が、6.4mm以上である。
【0011】
この構成によれば、内径が所定の大きさを有する。したがって、ロウ付けのために大きなロウ付け隙間が必要となる管組立体においても、内管と外管の接触部位が互いを保持するので、管組立体の強度がより確保される。
【0012】
第5観点の管組立体は、第1観点から第4観点のいずれか1つの管組立体であって、ロウ付け隙間の管組立体径方向の寸法が、50μm以上かつ450μm以下である。
【0013】
この構成によれば、ロウ付け隙間の径方向の寸法の最小値と最大値が設定される。したがって、管組立体の強度と確実なロウ付けを両立できる。
【0014】
第6観点の管組立体は、第1観点から第5観点のいずれか1つの管組立体であって、ロウ付け隙間の管組立体軸方向の寸法は、4mm以上かつ6mm以下である。
【0015】
この構成によれば、ロウ付け隙間の軸方向の寸法の最小値と最大値が設定される。したがって、管組立体の強度と確実なロウ付けを両立できる。
【0016】
第7観点の管組立体は、第1観点から第6観点のいずれか1つの管組立体であって、内管が外管に挿入される前には、外周面第1部分の径方向位置は、内周面第1部分の径方向位置よりも、0.25mm以下だけ外側に位置している。
【0017】
この構成によれば、内管の外管への挿入の前において、外周面第1部分は内周面第1部分よりも所定の寸法だけ径方向外側に位置する。したがって、外周面第1部分と内周面第1部分との接触部位の圧力を確保できる。
【0018】
第8観点の管組立体は、第1観点から第7観点のいずれか1つの管組立体であって、外周面第1部分の管組立体軸方向における長さが、2mm以上かつ3mm以下である。
【0019】
この構成によれば、所定の軸方向寸法にわたり、外周面第1部分と内周面第1部分とが接触する。したがって、外周面第1部分と内周面第1部分との接触部位の軸方向寸法を確保できる。
【0020】
第9観点の管組立体は、第1観点から第8観点のいずれか1つの管組立体であって、内管が、外周面第2部分に隣接して、ロウ材の余剰分を収容できる収容部を有する。
【0021】
この構成によれば、内管は収容部を有する。したがって、溶融したロウ材の余剰分を収容部に収容することができるので、管組立体の全体の形状を保つことができる。
【0022】
第10観点の管組立体は、第1観点から第9観点のいずれか1つの管組立体であって、収容部が、収容部第1壁面、収容部第2壁面、及び、収容部底面を有する。収容部第1壁面は、外周面第2部分と隣接する。収容部第2壁面は、収容部第1壁面から離間する。収容部底面は、収容部第1壁面と収容部第2壁面とを接続する。内管は、角部、及び、隅部、を有する。角部は、外周面第2部分と収容部第1壁面とによって形成される。隅部は、収容部第1壁面と収容部底面とによって形成される。角部には、曲面部、又は、面取り部、が設けられている。曲面部は、内管の軸線を通過する内管の断面において曲線を形成する。面取り部は、断面において直線を形成する。
【0023】
この構成によれば、内管は角部において曲面部又は面取り部を有する。したがって、角部の曲面部又は面取り部が、溶融したロウ材をロウ付け隙間へ移動しやすくする。
【0024】
第11観点の管組立体は、第10観点の管組立体であって、角部には曲面部が設けられている。曲面部の曲率半径は0.5mm以上かつ1.0mm以下である。
【0025】
この構成によれば、内管は角部において曲面部を有する。したがって、角部の曲面部が、溶融したロウ材をロウ付け隙間へ移動しやすくする。
【0026】
第12観点の管組立体は、第10観点の管組立体であって、角部に面取り部が設けられている。面取り部(75C)が断面において形成する直線の長さは(0.5×√2)mm以上かつ(1.0×√2)mm以下である。
【0027】
この構成によれば、内管は角部において面取り部を有する。したがって、角部の面取り部が、溶融したロウ材をロウ付け隙間へ移動しやすくする。
【0028】
第13観点の管組立体は、第10観点から第12観点のいずれか1つの管組立体であって、隅部には、曲面部が設けられている。曲面部は、内管の軸線を通過する内管の断面において曲線を形成する。
【0029】
この構成によれば、内管は隅部において曲面部を有する。したがって、隅部の曲面部が、溶融したロウ材をロウ付け隙間へ移動しやすくする。
【0030】
第14観点の管組立体は、第1観点から第13観点のいずれか1つの組立体であって、内管が、収容部に隣接して、管組立体径方向の外方に膨出するフランジを有する。
【0031】
この構成によれば、内管はフランジを有する。したがって、フランジが外管の傾きを抑制するので、管組立体の全体の形状を保つことができる。
【0032】
第15観点の圧縮機は、ケーシングと、圧縮機構と、吸入管と、吐出管と、インジェクション経路と、を備える。圧縮機構は、ケーシングに収容される。吸入管は、ケーシングの外部の低圧冷媒を圧縮機構へ案内する。吐出管は、圧縮機構から吐出される高圧冷媒をケーシングの外部へ案内する。インジェクション経路は、第1観点から第14観点のいずれか1つの管組立体によって構成される。インジェクション経路は、ケーシングの外部から冷媒を圧縮機構へ供給する。
【0033】
この構成によれば、圧縮機はインジェクション経路において管組立体を有する。したがって、インジェクション経路を構成する部品の形状及び強度が確保されるので、圧縮機の動作不良を抑制することができる。
【0034】
第16観点の冷凍装置は、第15観点の圧縮機と、減圧装置と、熱交換器と、インジェクション配管と、を備える。インジェクション配管は、減圧装置によって減圧された冷媒をインジェクション経路へ案内する。インジェクション配管は絞り部を有する。絞り部と内管によってマフラ空間が画定される。
【0035】
この構成によれば、冷凍装置はインジェクション経路において管組立体を有する。したがって、インジェクション経路を構成する部品の形状及び強度が確保されるので、冷凍装置の動作不良を抑制することができる。
【0036】
第17観点の製造方法によって、管組立体を製造することができる。製造方法では、外周面第1部分及び外周面第2部分を有し、かつ圧縮機のインジェクション経路を構成する内管を、外周面第1部分が外周面第2部分の下に位置するように置く。内周面第1部分及び内周面第2部分を有し、かつインジェクション経路を構成する外管の中に、前外周面第1部分が内周面第1部分と接触するとともに外周面第2部分と内周面第2部分がロウ付け隙間を形成するように、内管を圧入によって挿入する。ロウ付け隙間にロウ材が位置するように、挿入に先んじて又は挿入の後でロウ材を配置する。内管、外管、及びロウ材を炉中ロウ付けし、それによって溶融したロウ材が外周面第2部分と内周面第2部分を固定する。
【0037】
この方法によれば、ロウ付けに先立って、圧入によって内管が外管に固定される。したがって、内管と外管の位置関係が安定するので、管組立体の形状及び強度が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図4】
図4は、マフラ空間59を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、管組立体60の製造工程を示す模式図である。
【
図8】
図8は、管組立体60の製造工程を示す別の模式図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る管組立体60の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<基本実施形態>
(1)全体構成
図1は、冷凍装置100を示す。冷凍装置100は、熱源から冷熱(cold)又は温熱(heat)を取得して、その冷熱又は温熱をユーザに提供するためのものである。冷凍装置100の具体的態様は、例えば、空気調和装置、冷蔵庫、冷凍庫、給湯機、床暖房装置、洗濯乾燥機である。
【0040】
冷凍装置100は、冷媒を循環する冷媒回路RCを有する。冷媒回路RCは、1台の熱源ユニット10、1台の利用ユニット20、及び連絡配管30によって構成されている。これに代えて、1台の冷凍装置100に含まれる熱源ユニット10及び利用ユニット20の数は複数であってもよい。
【0041】
(1-1)熱源ユニット10
熱源ユニット10は、熱源である空気から冷熱又は温熱を取得するためのものである。熱源ユニット10は、圧縮機11、四路切換弁12、熱源熱交換器13、熱源ファン14、熱源膨張弁15、液閉鎖弁17、及びガス閉鎖弁18を有する。熱源ユニット10はさらに、中間圧冷媒発生部40、及びインジェクション配管45を有する。
【0042】
圧縮機11は、吸入した低圧冷媒R1を圧縮して、高圧冷媒R2を図中の矢印の方向に吐出する。四路切換弁12は、冷熱提供運転のときには
図1の実線で示した接続を実現する一方、温熱提供運転のときには
図1の破線で示した接続を実現する。熱源熱交換器13は、冷熱提供運転のときには凝縮器又は放熱器として機能する一方、温熱提供運転のときには蒸発器又は吸熱器として機能する。熱源ファン14は、熱源熱交換器13で行われる空気と冷媒との熱交換を促進する。熱源膨張弁15は、冷媒を減圧するための減圧装置として機能する。さらに、熱源膨張弁15は、冷媒の循環量を調節する。液閉鎖弁17及びガス閉鎖弁18は、冷凍装置100の設置の際などに冷媒回路RCを遮断する。
【0043】
中間圧冷媒発生部40は、過冷却熱交換器41及び過冷却弁42を有する。過冷却熱交換器41は、第1流路x及び第2流路yを有する。冷熱提供運転のときには、熱源膨張弁15によって減圧された減圧冷媒R4が第1流路xを通過する。第2流路yを通過する冷却ガスは、第1流路xを通過する減圧冷媒R4を冷却することによって、減圧冷媒R4に過冷却度を与える。過冷却弁42は、第1流路xを通過し終えた減圧冷媒R4を減圧することによって、冷却ガスを生成する。冷却ガスは、第2流路yを通過し終えた後、中間圧冷媒R3としてインジェクション配管45を通過し、その後圧縮機11に含まれる後述するインジェクション経路54へ案内される。インジェクション配管45は、流路断面積が他の部位よりも小さくなっている絞り部46を有している。
【0044】
(1-2)利用ユニット20
利用ユニット20は、冷熱又は温熱をユーザに提供するためのものである。利用ユニット20は、利用熱交換器21、及び利用ファン22を有する。利用熱交換器21は、冷熱提供運転のときには蒸発器又は吸熱器として機能する一方、温熱提供運転のときには凝縮器又は放熱器として機能する。利用ファン22は、利用熱交換器21で行われる空気と冷媒との熱交換を促進する。
【0045】
(1-3)連絡配管30
連絡配管30は、熱源ユニット10と利用ユニット20を接続することによって、冷媒が循環する冷媒回路RCを構成する。連絡配管30は、液連絡配管31とガス連絡配管32を有する。液連絡配管31は、液閉鎖弁17に接続されており、液冷媒又は気液二相冷媒を案内する。ガス連絡配管32は、ガス閉鎖弁18に接続されており、ガス状の低圧冷媒R1又は高圧冷媒R2を案内する。
【0046】
(2)圧縮機11の構成
図2は、圧縮機11を示す。圧縮機11は、ケーシング51、圧縮機構55、モータ56を有する。
【0047】
ケーシング51は、圧縮機構55及びモータ56を収容する。ケーシング51には、吸入管52、吐出管53、インジェクション経路54が設けられている。吸入管52は、ケーシング51の外部の低圧冷媒R1を圧縮機構55へ案内する。吐出管53は、圧縮機構55から吐出される高圧冷媒R2をケーシング51の外部へ案内する。インジェクション経路54には、冷媒回路RCのインジェクション配管45が接続されている。インジェクション経路54は、低圧冷媒R1の圧力よりも高く、かつ高圧冷媒R2の圧力よりも低い
圧力を有する中間圧冷媒R3を圧縮機構55の圧縮室57へ直接的に供給するように構成された、冷媒通路である。
【0048】
モータ56は外部から電力を受け取り、圧縮機構55を駆動する動力を発生させる。
【0049】
圧縮機構55は、圧縮室57を有する。圧縮機構55は、吸入管52を介して提供される低圧冷媒R1を圧縮室57へ吸入する。圧縮機構55は、圧縮室57の中で生じた高圧冷媒R2を吐出管53へ送り出す。
【0050】
(3)管組立体60の構成
図3に示すように、インジェクション経路54は、管組立体60によって構成されている。管組立体60は、内管70及び外管80を有している。
【0051】
内管70は、インジェクション経路54を構成する部品の1つである。内管70は、例えば鉄製である。内管70は、内径H1を有する。内管70の線膨張係数は内管線膨張係数αである。
【0052】
外管80もまた、インジェクション経路54を構成する部品の1つである。外管80は、例えば銅製である。外管80は、内径H2を有する。内径H2は、内径H1よりも大きい。外管80の線膨張係数は外管線膨張係数βである。外管線膨張係数βは、内管線膨張係数αよりも大きい。
【0053】
図4に示すように、管組立体60によって構成されるインジェクション経路54は、インジェクション配管45が接続されることによって、中間圧冷媒R3の流路を形成している。小さい内径H1を有する内管70は、当該流路における1つの絞り部を構成している。さらに、当該流路は、インジェクション配管45の絞り部46を有している。これらの2つの絞り部によって挟まれる区間がマフラ空間59を形成している。マフラ空間59は、中間圧冷媒R3の圧力脈動に起因する騒音を低減させる機能を有する。
【0054】
図5は、管組立体60の構造を示す。内管70と外管80は軸線70Aを共有している。本図は、内管70の軸線70Aを通過する断面における、管組立体60、すなわち内管70及び外管80の構造を示している。管組立体60は管組立体外周面62を有する。管組立体外周面62は、管組立体60における外部から視認できる部位である。管組立体外周面62は、内管70の外周面と外管80の外周面により構成されている。
【0055】
内管70の外周面は、外周面基本部分79、外周面第1部分71、外周面第2部分72、収容部73、及び、フランジ74をこの順で有する。管組立体径方向rにおいて、外周面基本部分79は、これらのうち最も外方に位置している。次いで、外周面第1部分71、外周面第2部分72、及び収容部73は、この順でより内方へ位置している。収容部73は最も内方に位置している。収容部73は、ロウ材61の余剰分66を収容できる。収容部73は、外周面第2部分72に隣接している。フランジ74は、管組立体径方向rの外方に膨出する。フランジ74は、収容部73に隣接している。
【0056】
外管80の内周面は、内周面第1部分81、内周面第2部分82、及び内周面残余部分83をこの順で有する。内周面第1部分81及び内周面第2部分82は内径H2を有する。内周面残余部分83の一部は内径H2を有する。内周面第1部分81に隣接する外管80の端面は、外周面基本部分79に隣接する内管70の端面に接触しており、両者は管組立体外周面62における内管70と外管80の接続部63を構成している。接続部63は、管組立体60の外側から視認できる。
【0057】
内管70が外管80に部分的に挿入されることによって、外周面第1部分71が内周面第1部分81と接触するとともに、外周面第2部分72と内周面第2部分82の間にロウ付け隙間65が形成される。ロウ付け隙間65は、管組立体60の製造工程においてロウ材61が配置される場所である。ロウ材61は、溶融した後固着することによって、外周面第2部分72と内周面第2部分82を固定している。ロウ材61の一部は、外周面第1部分71と内周面第1部分81の間に浸透している。これにより、ロウ材61は、外周面第1部分71と内周面第1部分81を少なくとも部分的に固定している。ロウ材61が外周面第1部分71と内周面第1部分81の間に浸透した結果、ロウ材61の一部が、管組立体外周面62における接続部63に位置してもよい。
【0058】
図6は、管組立体60の収容部73の周辺を示している。ただし、本図においてロウ材61は省略されている。収容部73は、収容部第1壁面731、収容部第2壁面732、及び、収容部底面733を有する。収容部第1壁面731は、外周面第2部分72と隣接している。収容部第2壁面732は、収容部第1壁面731から離間している。収容部底面733は、収容部第1壁面731と収容部第2壁面732とを接続している。内管70は、角部75、及び、隅部76、を有する。角部75は、外周面第2部分72と収容部第1壁面731とによって形成される。隅部76は、収容部第1壁面731と収容部底面733とによって形成される。
【0059】
角部75には、曲面部75Rが設けられている。曲面部75Rは、内管70の軸線70Aを通過する内管70の断面において曲線を形成する。隅部76には、曲面部76Rが設けられている。曲面部76は、内管70の軸線70Aを通過する内管70の断面において曲線を形成する。
【0060】
(4)管組立体60の設計パラメータ
図5を参照して、以下に、管組立体60の設計パラメータの一例を挙げる。
【0061】
内管70の内径H1は、6.4mm以上である。
【0062】
外管80の内径H2は、18mm以上である。
【0063】
管組立体径方向rにおけるロウ付け隙間65の寸法Grは、50μm以上かつ450μm以下である。
【0064】
管組立体軸方向aにおけるロウ付け隙間65の寸法Gaは、4mm以上かつ6mm以下である。
【0065】
管組立体軸方向aにおける外周面第1部分71の長さTaは、2mm以上かつ3mm以下である。
【0066】
図6を参照して、管組立体60の別の設計パラメータの例を挙げる。曲面部75Rの曲率半径cは0.5mm以上かつ1.0mm以下である。
【0067】
(5)管組立体60の製造方法
管組立体60は以下の手順で製造される。
【0068】
第1工程として、
図7に示すように、外周面第1部分71が外周面第2部分72の下に位置するように、内管70が置かれる。
【0069】
第2工程として、
図8に示すように、内管70が外管80の上に配置され、内管70を圧入によって外管80に挿入するための準備が行われる。
図8に示すように、内管70が外管80に挿入される前には、外周面第1部分71の径方向位置P1は、内周面第1部分81の径方向位置P2よりも、Δ=0.25mm以下だけ外側に位置しているのが望ましい。これにより、圧入が可能になる。
【0070】
第3工程として、挿入に先んじて、ロウ付け隙間65を形成する外周面第2部分72にロウ材61が配置される。これは、挿入後にロウ付け隙間65にロウ材61を位置させるためである。代替的に、挿入の後で、ロウ付け隙間65にロウ材61が配置されてもよい。
【0071】
第4工程として、内管70が圧入によって外管80に挿入される。圧入の結果、外周面第1部分71は内周面第1部分81と接触するとともに、外周面第2部分72と内周面第2部分82はロウ付け隙間65を形成する。
【0072】
第5工程として、内管70、外管80、及びロウ材61の集合体を炉中ロウ付けする。これにより、
図5に示すように、溶融したロウ材61が外周面第2部分72と内周面第2部分82を固定する。好ましくは、ロウ材61の一部が外周面第1部分71と内周面第1部分81の間に浸透する。さらに好ましくは、ロウ材61の一部が接続部63から管組立体外周面62に露出する。
【0073】
(6)特徴
(6-1)
管組立体60において、外周面第1部分71は内周面第1部分81と接触している。したがって、内管70と外管80が互いを保持するので、管組立体60の製造工程の間及び管組立体60の製造完了後の両方において、ロウ付け隙間65の正常な形状を維持することができる。したがって管組立体60の全体の形状及び強度を保つことができる。
【0074】
(6-2)
外管80の線膨張係数である外管線膨張係数βは、内管70の線膨張係数である内管線膨張係数αよりも大きい。したがって、高温のロウ付けの過程で一時的に生じる内周面第1部分81と外周面第1部分71の間の隙間にロウ材61の一部が入り込むので、管組立体60の強度がより確保される。
【0075】
(6-3)
ロウ材61の一部は、管組立体軸方向aに、ロウ付け隙間65から接続部63にわたって延びる。したがって、内管70と外管80がより強固に固定されるので、管組立体60の強度がより確保される。
【0076】
(6-4)
内管70の外管80への挿入の前において、外周面第1部分71は内周面第1部分81よりも所定の寸法だけ径方向外側に位置する。したがって、外周面第1部分71と内周面第1部分81との接触部位の圧力を確保できる。
【0077】
(6-5)
内管70は収容部73を有する。したがって、溶融したロウ材61の余剰分66を収容部73に収容することができるので、管組立体60の全体の形状を保つことができる。
【0078】
(6-6)
角部75には、曲面部75Rが設けられている。曲面部75Rの曲率半径cは0.5mm以上かつ1.0mm以下でありうる。このような曲面部75Rが、溶融したロウ材61をロウ付け隙間65へ移動しやすくする。隅部76に設けられた曲面部76Rも、溶融したロウ材61の移動を促進する場合がある。
【0079】
(6-7)
内管70はフランジ74を有する。したがって、フランジ74が外管80の傾きを抑制するので、管組立体60の全体の形状を保つことができる。
【0080】
(6-8)
圧縮機11及びそれを含む冷凍装置100は、インジェクション経路54において管組立体60を有する。したがって、インジェクション経路54を構成する部品の形状及び強度が確保されるので、圧縮機11及び冷凍装置100の動作不良を抑制することができる。
【0081】
(6-9)
管組立体60の製造工程において、ロウ付けに先立って、圧入によって内管70が外管80に固定される。したがって、内管70と外管80の位置関係が安定するので、管組立体60の形状及び強度が確保される。
【0082】
<基本実施形態の変形例>
(7)変形例
図9は、変形例に係る管組立体60の構造である。
【0083】
前述の実施形態では角部75に曲面部75が設けられているのに対し、変形例では角部75に面取り部75Cが設けられている。面取り部75Cは、内管70の軸線70Aを通過する内管70の断面において直線Lを形成する。
【0084】
面取り部75Cが断面において形成する直線Lの長さは(0.5×√2)mm以上かつ(1.0×√2)mm以下である。
【0085】
このような面取り部75Cも、溶融したロウ材61をロウ付け隙間65へ移動しやすくする。
【0086】
<むすび>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0087】
10 :熱源ユニット
11 :圧縮機
12 :四路切換弁
13 :熱源熱交換器
14 :熱源ファン
15 :熱源膨張弁
17 :液閉鎖弁
18 :ガス閉鎖弁
20 :利用ユニット
21 :利用熱交換器
22 :利用ファン
30 :連絡配管
31 :液連絡配管
32 :ガス連絡配管
40 :中間圧冷媒発生部
41 :過冷却熱交換器
42 :過冷却弁
45 :インジェクション配管
46 :絞り部
51 :ケーシング
52 :吸入管
53 :吐出管
54 :インジェクション経路
55 :圧縮機構
56 :モータ
57 :圧縮室
59 :マフラ空間
60 :管組立体
61 :ロウ材
62 :管組立体外周面
63 :接続部
65 :ロウ付け隙間
66 :余剰分
70 :内管
70A :軸線
71 :外周面第1部分
72 :外周面第2部分
73 :収容部
74 :フランジ
75 :角部
75C :面取り部
75R :曲面部
76 :隅部
76R :曲面部
79 :外周面基本部分
80 :外管
81 :内周面第1部分
82 :内周面第2部分
83 :内周面残余部分
100 :冷凍装置
731 :収容部第1壁面
732 :収容部第2壁面
733 :収容部底面
Ga :寸法
Gr :寸法
H1 :内径
H2 :内径
L :直線の長さ
P1 :径方向位置
P2 :径方向位置
R1 :低圧冷媒
R2 :高圧冷媒
R3 :中間圧冷媒
R4 :減圧冷媒
RC :冷媒回路
a :管組立体軸方向
c :曲率半径
r :管組立体径方向
x :第1流路
y :第2流路
α :内管線膨張係数
β :外管線膨張係数
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】