(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01N21/88 J
(21)【出願番号】P 2023143725
(22)【出願日】2023-09-05
【審査請求日】2023-09-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北田 啓順
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-157600(JP,A)
【文献】特開2004-187220(JP,A)
【文献】特開平09-275556(JP,A)
【文献】特開2017-053775(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083737(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/072103(WO,A1)
【文献】特開2016-183865(JP,A)
【文献】特開2021-086121(JP,A)
【文献】特表2018-535442(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106248684(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
G06T 1/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの側面を撮像して撮像画像を生成する撮像装置と、
前記撮像装置を前記ワークの側面に沿って移動させる移動機構と、
前記撮像画像に対する画像処理を実行する画像処理部と、を備えた外観検査装置であって、
前記撮像装置は、前記移動機構によって移動させられる複数の異なる位置において前記ワークの側面を撮像して複数の前記撮像画像を取得し、
前記画像処理部は、
前記撮像画像から第1特徴部を検出する第1特徴検出処理と、
前記第1特徴部の合焦度を評価する第1合焦度評価処理と、
複数の前記撮像画像における前記第1特徴部の合焦度を比較することで、複数の前記撮像画像の一つを第1基準画像に選定する第1基準画像選定処理と、
前記第1基準画像における前記第1特徴部を含む領域である特徴領域と、前記第1基準画像以外の前記撮像画像における
領域であって前記第1基準画像の中で前記特徴領域が占める位置に対応する位置に設けられた被検査領域に基づいて、前記ワークを評価する評価処理と、を実行する外観検査装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記第1基準画像選定処理において複数の前記撮像画像の一部の前記撮像画像について前記第1特徴部の合焦度を比較することで前記第1基準画像に選定する、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記特徴領域と前記被検査領域とを繋ぎ合わせて前記ワークの側面を表す合成画像を生成する合成処理を実行する、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項4】
複数の前記撮像装置を備え、
複数の前記撮像装置が、前記移動機構によって前記側面に沿って一体に移動させられ、同期して前記側面を撮像して複数の前記撮像画像をそれぞれ取得する、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、
前記撮像画像から前記第1特徴部と異なる第2特徴部を検出する第2特徴検出処理と、
前記第2特徴部の合焦度を評価する第2合焦度評価処理と、
複数の前記撮像画像における前記第2特徴部の合焦度を比較することで、複数の前記撮像画像の一つを第2基準画像に選定する第2基準画像選定処理と、
前記第1基準画像における前記第1特徴部の位置と、前記第2基準画像における前記
第2特徴部の位置とに基づいて、前記被検査領域を補正する補正処理を実行する、請求項1に記載の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物(ワーク)の外観を撮像する外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの外観をカメラ等の撮像装置で撮像して画像を取得し、取得した画像からワーク形状の異常や異物の付着等がないか確認する外観検査が行われている。このような外観検査をワークの側面について行う場合、通常、ワークの側面が撮像装置と対向するようにワークを搬送してワークの側面を撮像したり、被写界深度の深いレンズを使用してワークの側面を斜め方向から撮像したりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ワークを搬送してその側面を撮像する方法では、搬送時にワークにキズや異物が付着してワークを破損するおそれがある。また、被写界深度の深いレンズを使用する方法では、レンズの開口数が小さいため、分解能の高い画像を取得できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ワークの破損を抑えつつ、分解能の高いワークの側面の画像を取得することができる外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0007】
[1] ワークの側面を撮像して撮像画像を生成する撮像装置と、前記撮像装置を前記ワークの側面に沿って移動させる移動機構と、前記撮像画像に対する画像処理を実行する画像処理部と、を備えた外観検査装置であって、前記撮像装置は、前記移動機構によって移動させられる複数の異なる位置において前記ワークの側面を撮像して複数の前記撮像画像を取得し、前記画像処理部は、前記撮像画像から第1特徴部を検出する第1特徴検出処理と、前記第1特徴部の合焦度を評価する第1合焦度評価処理と、複数の前記撮像画像における前記第1特徴部の合焦度を比較することで、複数の前記撮像画像の一つを第1基準画像に選定する第1基準画像選定処理と、前記第1基準画像における前記第1特徴部を含む領域である特徴領域と、前記第1基準画像以外の前記撮像画像における領域であって前記第1基準画像の中で前記特徴領域が占める位置に対応する位置に設けられた前記特徴領域に対応する領域である被検査領域に基づいて、前記ワークを評価する評価処理と、を実行する外観検査装置。
【0008】
[2] 前記画像処理部は、前記第1基準画像選定処理において複数の前記撮像画像の一部の前記撮像画像について前記第1特徴部の合焦度を比較することで前記第1基準画像に選定する、上記[1]に記載の外観検査装置。
【0009】
[3] 前記画像処理部は、前記特徴領域と前記被検査領域とを繋ぎ合わせて前記ワークの側面を表す合成画像を生成する合成処理を実行する、上記[1]又は[2]に記載の外観検査装置。
【0010】
[4] 複数の前記撮像装置を備え、複数の前記撮像装置が、前記移動機構によって前記側面に沿って一体に移動させられ、同期して前記側面を撮像して複数の前記撮像画像をそれぞれ取得する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の外観検査装置。
【0011】
[5] 前記画像処理部は、前記撮像画像から前記第1特徴部と異なる第2特徴部を検出する第2特徴検出処理と、前記第2特徴部の合焦度を評価する第2合焦度評価処理と、複数の前記撮像画像における前記第2特徴部の合焦度を比較することで、複数の前記撮像画像の一つを第2基準画像に選定する第2基準画像選定処理と、前記第1基準画像における前記第1特徴部の位置と、前記第2基準画像における前記2特徴部の位置とに基づいて、前記被検査領域を補正する補正処理を実行する、上記[1]~[4]いずれか1つに記載の外観検査装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワークの破損を抑えつつ、分解能の高いワークの側面の画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる外観検査装置の概略構成を示す図
【
図3】外観検査装置の側面撮像装置が撮像した画像を例示する図
【
図4】領域設定部が特徴領域を設定する方法を説明する図
【
図5】領域設定部が被検査領域を設定する方法を説明する図
【
図6】領域設定部が設定した特徴領域及び被検査領域を例示する図
【
図7】外観検査装置で作成される合成画像の一例を示す図
【
図8】外観検査装置の検査処理を示すフローチャート
【
図9】本発明の変更例1にかかる外観検査装置の構成を示すブロック図
【
図10】本発明の変更例1において補正部が第1特徴部の位置を特定する方法を説明する図
【
図11】本発明の変更例1において補正部が第2特徴部の位置を特定する方法を説明する図
【
図12】本発明の変更例1において補正部が被検査領域Riを補正する方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(1)外観検査装置1の構成
まず、本実施形態の外観検査装置1の構成について、
図1及び
図2に基づいて説明する。外観検査装置1は、
図1及び
図2に示すように、ステージ2と、撮像部3と、移動機構4と、制御装置5とを備え、ステージ2に載置されたワークWの側面Ws1、Ws2を撮像して検査する装置である。
【0016】
以下の説明において、側面Ws1,Ws2が対向する方向(
図1において矢符Xで示す方向)を左右方向Xとし、
図1の紙面に対して垂直な方向を前後方向Yとし、
図1において矢印Zで示す方向を上下方向とする。また、撮像部3で撮像されたワークWの側面Ws1,Ws2の撮像画像においても、ステージ2に載置されたときに前後方向Yに相当する側面Ws1,Ws2の長手方向を矢印Yで示し、上下方向を矢印Zで示す。
【0017】
ステージ2は、検査対象のワークWが載置される。なお、テージ2の上に載置されたワークWは、その側面Ws1、Ws2が後述する側面撮像装置31,32と斜め方向に対向する。
【0018】
撮像部3は、対物レンズが取り付けられたCCD(Charge CoupledDevice)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラを備える側面撮像装置31,32を備える。側面撮像装置31,32は、ステージ2に載置されたワークWの側面Ws1、Ws2を斜め上方から撮影する。
【0019】
より具体的には、側面撮像装置31は、ワークWの一方の側面Ws1の法線方向H1に対して光軸L1が角度θだけ斜め上方に傾斜するように配置され、ワークWの側面Ws1の上下方向Zの一部分のみが撮像範囲(視野)に含まれ、ワークWの側面Ws1の前後方向Yの全体が撮像範囲に入るように設定されている。
【0020】
側面撮像装置32は、側面撮像装置31と左右対称に配置された同一構造の装置から構成されている。つまり、側面撮像装置32は、ワークWの側面Ws2の法線方向H2に対して光軸L2が角度θだけ斜め上方に傾斜するように配置され、ワークWの側面Ws2の上下方向Zの一部分のみが撮像範囲に含まれ、ワークWの側面Ws2の前後方向Yの全体が撮像範囲に入るように設定されている。
【0021】
側面撮像装置31,32は、ワークWを撮像して生成した撮像画像を制御装置5へ出力する。なお、撮像部3と制御装置5とは、無線接続であってもよいし有線接続であってもよい。
【0022】
移動機構4は、側面撮像装置31、32が固定された保持ベース41と、保持ベース41を上下方向へ摺動可能に保持するガイドレール42と、保持ベース41をガイドレール42に沿って上下動させる不図示の駆動部と、を備える。移動機構4は、左右前後方向への移動を制限しつつ上下方向のみへ側面撮像装置31、32を一体に移動させる。
【0023】
制御装置5は、コンピュータなどの処理装置51と、メモリーなどの記憶装置52とを有しており、記憶装置52に記憶されているプログラムを処理装置51が読み込んで実行することにより、装置制御部53、データ取得部54、及び画像処理部60として機能する。
【0024】
装置制御部53は、側面撮像装置31,32と移動機構4とを制御して、側面撮像装置31,32を上下方向Zへ移動させつつ、側面撮像装置31,32によってワークWの側面Ws1、Ws2を同期して撮像する。
【0025】
具体的には、装置制御部53は、撮像開始位置から撮像終了位置までワークWの側面Ws1、Ws2に沿って側面撮像装置31,32が上下方向Zへ移動するように、移動機構4を制御する。撮像開始位置は、側面撮像装置31,32の撮像範囲にワークWの側面Ws1,Ws2の上端E1が含まれる位置に設定される。撮像終了位置は、側面撮像装置31,32の撮像範囲にワークWの側面Ws1,Ws2の下端E2が含まれる位置に設定される。
【0026】
また、装置制御部53は、移動機構4によって側面撮像装置31,32が撮像開始位置から撮像終了位置まで移動する間、側面撮像装置31,32が上下方向Zに所定距離(以下の、この距離を「撮像ピッチ」ということもある)Dだけ移動する毎に、ワークWの側面Ws1、Ws2の上下方向Zの一部を撮像する。
【0027】
ここで、撮像ピッチDは、次の式(1)を満たすように設定され、好ましくは、式(2)を満たすように設定される。
【0028】
【0029】
【数2】
式(1)及び式(2)において、Aは側面撮像装置31,32に設けられた対物レンズ等のレンズの被写界深度、θはワークWの側面Ws1,Ws2の法線方向H1,H2に対する側面撮像装置31、32の光軸L1,L2の角度θである。つまり、撮像ピッチDは、レンズの被写界深度に入る上下方向の最大長さ(A/sinθ)以下に設定され、上記の最大長さの半分以下に設定されることが好ましい。
【0030】
図3に示すように、側面撮像装置31,32は、撮像開始位置において撮像したワークWの側面Ws1、Ws2の上端E1が写った撮像画像P1から、撮像終了位置において撮像したワークWの側面Ws1、Ws2の下端E2が写った撮像画像Pnまで、撮像範囲が上下方向Zに撮像ピッチDずつ異なる複数n個(nは2以上の整数)の撮像画像Pのデータを生成する。
【0031】
得られた複数n個の撮像画像Pは、側面撮像装置31,32の光軸L1,L2をワークWの側面Ws1、Ws2に対して傾斜させて撮像した画像であるため、上下方向Zの一部分のみが合焦した画像となっている。
【0032】
なお、以下の説明において、撮像開始位置において撮像した画像を1番目の撮像画像P1といい、撮像開始位置で撮像してからm枚目に撮像した画像をm番目の撮像画像Pmといい、撮像終了位置において撮像した画像をn番目の撮像画像Pnといい、1~n番目の撮像画像P1~Pnを総称して撮像画像Pという。
【0033】
データ取得部54は、側面撮像装置31,32でそれぞれ生成された複数n個の撮像画像Pのデータを取得する。データ取得部54では、取得した撮像画像Pのデータと、その撮像画像Pが何番目の撮像画像であるのか(つまり、撮像画像Pの順序数)とが紐付けられる。データ取得部54において紐付けられたデータは記憶装置52に記憶される。
【0034】
画像処理部60は、記憶装置52に記憶された複数n個の撮像画像Pに特徴領域Rs及び被検査領域Rmを設定し、設定した特徴領域Rs及び被検査領域Rmに基づいてワークWの側面Ws1,Ws2を評価する。
【0035】
(2)画像処理部60
画像処理部60は、
図2に示すように、第1特徴検出部61、第1合焦度評価部62、第1基準画像選定部63、領域設定部64、合成部65、及び評価部66を有している。
【0036】
なお、側面撮像装置31が撮像した撮像画像Pと、側面撮像装置32が撮像した撮像画像Pとで、画像処理部60において実行する処理が同一であるため、ここでは、一方の側面撮像装置31が撮像した撮像画像Pに対する処理について説明し、他方の側面撮像装置32が撮像した撮像画像に対する処理について詳細な説明を省略する。
【0037】
第1特徴検出部61は、記憶装置52に記憶された撮像画像Pから第1特徴部Wc1を検出する。本実施形態では、第1特徴検出部61は、第1特徴部Wc1としてワークWの側面Ws1の上端E1を検出する。
【0038】
また、第1特徴検出部61が検出する第1特徴部Wc1としては、ワークWの側面Ws1の上端E1などのワークWのエッジ部分が挙げられる。ワークWのエッジ部分以外にも、ワークWの側面Ws1に設けられている模様やマークなど、第1合焦度評価部62において合焦度を評価することができるものであれば、ワークWの側面Ws1の任意の箇所を第1特徴部Wc1とすることができる。
【0039】
第1合焦度評価部62は、第1特徴検出部61が検出した第1特徴部Wc1の合焦度を評価する。第1特徴部Wc1の合焦度を評価する方法として、種々の方法を採用することができ、例えば、第1特徴検出部61が第1特徴部Wc1を検出した撮像画像P毎に第1特徴部Wc1のシャープネス値を算出し、シャープネス値が大きい撮像画像ほど合焦度が高い画像と評価する。
【0040】
第1基準画像選定部63は、第1合焦度評価部62が評価した撮像画像から、合焦度の最も高い一つの画像を第1基準画像Ps1に選定する。また、第1基準画像選定部63は、記憶装置52に記憶された複数n個の撮像画像Pから第1基準画像Ps1を除いた撮像画像Pを検査画像Ptとする。
【0041】
例えば、第1合焦度評価部62において評価したn個の撮像画像Pのうち最も合焦度の高い撮像画像が2番目の撮像画像P2であると、第1基準画像選定部63は、撮像画像P2を第1基準画像Ps1に選定し、他の撮像画像P1,P3、P4・・・Pn-1、Pnを検査画像Ptに設定する(
図3参照)。
【0042】
領域設定部64は、第1基準画像Ps1の中から第1特徴部Wc1を含む領域Rcを設定する。また、領域設定部64は、検査画像Ptにおいて第1基準画像Psに設定した特徴領域Rcに対応する領域を被検査領域Riに設定する。
【0043】
具体的には、
図4に示すように、領域設定部64は、第1基準画像Ps1の第1特徴部Wc1から側面撮像装置31の移動方向(つまり、上下方向Z)へ所定画素数Δeだけ離れた箇所を境界B1、B2とすると、この境界B1、B2で挟まれた領域を特徴領域Rcに設定する。なお、特徴領域Rcの上下方向の幅F(ピクセル数)が次の式(3)を満たすように境界B1,B2は設定され、好ましくは幅Fが式(4)を満たすように境界B1,B2は設定される。
【0044】
【0045】
【数4】
式(3)及び式(4)において、Aは側面撮像装置31,32に設けられた対物レンズ等のレンズの被写界深度、Mはレンズの倍率、Spは側面撮像装置31,32に搭載されているイメージセンサの1ピクセルの大きさ、θはワークWの側面Ws1,Ws2の法線方向H1,H2に対する側面撮像装置31、32の光軸L1,L2の角度θである。
【0046】
領域設定部64は、第1基準画像Ps1に特徴領域Rcを設定すると、第1基準画像Ps1における特徴領域Rcの位置を特定する。例えば、領域設定部64は、第1基準画像Ps1の上端から境界B1、B2までの上下方向の画素数Np1、Np2を特定することで、第1基準画像Ps1の中で特徴領域Rcが設定された位置(画素)を特定する。
【0047】
そして、領域設定部64は、
図5に示すように、検査画像Ptの上端から下方に画素数Np1離れた位置と画素数Np2離れた位置にそれぞれ境界Bt1,Bt2を設定し、両境界Bt1,Bt2で挟まれた領域を被検査領域Riに設定する。領域設定部64は、このような被検査領域Riの設定を全ての検査画像Ptについて行う(
図6参照)。
【0048】
合成部65は、
図6に示すように、第1基準画像Ps1の中で特徴領域Rcに存在する画像データ(画素値)を抽出するとともに、検査画像Ptの中で被検査領域Riに存在する画像データ(画素値)を抽出する。なお、第1基準画像Ps1や検査画像Ptから抽出する領域を分かりやすくするため、
図6において当該領域にハッチングを付けている。
【0049】
これにより、1番目からn番目までの全ての撮像画像Pについて、第1基準画像Ps1又は検査画像Ptから抽出した画像データpが生成される。
【0050】
1番目の撮像画像P1から抽出した画像データを1番目の抽出画像データp1、n番目の撮像画像Pnから抽出した画像データをn番目の抽出画像データpnとすると、合成部65は、
図7に示すように、1番目の抽出画像データp1からn番目の抽出画像データpnまで上から順番に抽出画像データpを繋ぎ合わせてワークWの側面Ws1の合成画像CPを作成する。
【0051】
そして、評価部66は、合成部65において生成した合成画像CPに基づいて、ワークWの側面Ws1の外観検査を行う。
【0052】
(3)本実施形態の外観検査方法
上記した外観検査装置1によるワークWの側面Ws1、Ws2の外観検査方法について、
図8を参照して説明する。
【0053】
まず、外観検査装置1のステージ2に外観検査を行うワークWを載置する(ステップS1)。
【0054】
そして、移動機構4がステージ2に載置されたワークWの側面Ws1、Ws2に沿って撮像開始位置から撮像終了位置まで側面撮像装置31,32を下方へ移動させながら、側面撮像装置31,32が撮像ピッチDだけ移動する毎にワークWの側面Ws1,Ws2を撮像する。これにより、側面Ws1及び側面Ws2のそれぞれについて、複数n個の撮像画像Pを取得する(ステップS2)。
【0055】
そして、画像処理部60は、第1特徴検出部61において、ワークWの側面Ws1を撮像した複数の撮像画像Pから第1特徴部Wc1を検出する。また、他方の側面Ws2を撮像した複数の撮像画像Pについても側面Ws1と同様に第1特徴部Wc1を検出する(ステップS3)。
【0056】
そして、画像処理部60は、第1合焦度評価部62において、検出した第1特徴部Wc1のシャープネス値を算出して、撮像画像Pごとに第1特徴部Wc1の合焦度を評価する(ステップS4)。
【0057】
そして、画像処理部60は、第1基準画像選定部63において、複数の撮像画像Pから第1特徴部Wc1の合焦度が最も高い撮像画像Pを第1基準画像Ps1に選定する。また、第1基準画像Ps1に選定した撮像画像P以外の撮像画像Pを検査画像Ptとする(ステップS5)。
【0058】
そして、画像処理部60は、領域設定部64において、第1特徴部Wc1を含むように第1基準画像Ps1に特徴領域Rcを設定するとともに、検査画像Ptに被検査領域Riを設定する(ステップS6)。
【0059】
そして、画像処理部60は、合成部65において、第1基準画像Ps1に設定した特徴領域Rcの画像データpと検査画像Ptに設定した被検査領域Riの画像データpを抽出する(ステップS7)。また、合成部65は、第1基準画像Ps1及び検査画像Ptから抽出した特徴領域Rc及び被検査領域Riの画像データpを繋ぎ合わせてワークWの側面Ws1、Ws2の合成画像CPを作成する(ステップS8)。
【0060】
なお、ステップS2において側面撮像装置32が他方の側面Ws2を撮像して生成した複数の撮像画像Pについても、側面Ws1の撮像画像Pと同様の処理を側面Ws1と別々に実行して合成画像CPを作成する。つまり、側面Ws2の撮像画像Pについて、第1特徴部Wc1の検出(ステップS3)と、第1特徴部Wc1の合焦度を評価(ステップS4)と、第1基準画像Ps1及び検査画像Ptの選定(ステップS5)と、特徴領域Rc及び被検査領域Riの設定(ステップS6)と、特徴領域Rc及び被検査領域Riの画像データpの抽出(ステップS7)と、合成画像CPの作成(ステップS8)とを実行する。
【0061】
そして、画像処理部60は、評価部66において、合成部65において生成した合成画像CPに基づいて、傷や汚れの有無等を調べるワークWの側面Ws1、Ws2の外観検査を実行する(ステップS9)。
【0062】
(4)効果
側面撮像装置31,32の光軸L1,L2をワークWの側面Ws1、Ws2に対して傾斜させて撮像すると上下方向Zの一部分しか合焦していない画像が得られることがある。本実施形態の外観検査装置1では、撮像画像Pが上下方向Zの一部分しか合焦していない画像であっても、各撮像画像Pから合焦した領域のみを抽出して分解能の高いワークの側面の画像を取得することができる。そのため、ワークWの搬送に伴うワークの破損を抑えつつ、分解能の高いワークWの側面Ws1,Ws2の画像を取得することができる。
【0063】
また、本実施形態の外観検査装置1では、合焦度を評価しやすい第1特徴部に基づいて、複数の撮像画像Pから第1基準画像Ps1を選定するとともに第1基準画像Ps1の中から合焦している領域である特徴領域Rcを抽出する。また、第1基準画像Ps1における特徴領域Rcの位置に基づいて、第1基準画像Ps1以外の各検査画像Ptから合焦している領域である被検査領域Riを抽出し、抽出した特徴領域Rc及び被検査領域Riの画像データpに基づいてワークWの側面Ws1,Ws2を評価する。
【0064】
このため、外観検査装置1では、複数の撮像画像Pの中に輝度値の変化に乏しく合焦度を評価しにくい画像があっても、第1基準画像Ps1の特徴領域Rcに基づいて、合焦度を評価しにくい撮像画像の中から合焦している領域を特定することができ、分解能の高いワークWの側面Ws1,Ws2の画像を取得することができる。
【0065】
本実施形態の外観検査装置1では、ワークWの一方の側面Ws1を撮像する側面撮像装置31と、他方の側面Ws2を撮像する側面撮像装置32とが、上下方向へ一体に移動しながら、ワークWの側面Ws1、Ws2を同期して撮像するため、簡便な構成によってワークWの2つの側面Ws1,Ws2から撮像範囲が撮像ピッチDずつ異なる複数の画像を撮像することができる。
【0066】
しかも、本実施形態の外観検査装置1では、ワークWの一方の側面Ws1の撮像画像Pと、他方の側面Ws2の撮像画像Pとを、画像処理部60において別個に処理して合成画像CPを作成するため、ワークWの側面Ws1、Ws2を同期して撮像しても、ワークWの寸法公差を補正して合成画像CPを作成することができる。
【0067】
(5)変更例
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下に変更例を説明する。なお、上記の実施形態に対して、以下に説明する複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、以下に説明する変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。なお、以下の変更例の他にも様々な変更が可能である。
【0068】
(5-1)変更例1
次に、上記した実施形態の変更例1について、
図9~
図12を参照して説明する。なお、上記した実施形態と同一の構成のものについては同一の符号を付し、その構成の説明を省略する。
【0069】
ステージ2に載置されたワークWの側面Ws1,Ws2が上下方向Zに対して傾斜している場合、側面撮像装置31,32によるワークWの側面Ws1,Ws2の撮像範囲が上下方向Zで異なる撮像画像Pを比較すると、撮像画像Pの中で合焦する領域が変化する。つまり、ワークWの側面Ws1,Ws2が上下方向Zに対して傾斜しており側面撮像装置31,32の移動方向と平行ではない場合、検査画像Ptにおける被検査領域Riの位置が、第1基準画像Ps1における特徴領域Rcの位置からズレる。
【0070】
本変更例では、第1特徴部Wc1に加え第2特徴部Wc2を撮像画像Pから検出し、ワークWの側面Ws1,Ws2が上下方向Zに対して傾斜している場合に生じる被検査領域Riの位置ズレを、第1特徴部Wc1及び第2特徴部Wc2に基づいて補正する。
【0071】
具体的には、
図9に示すように、画像処理部60は、第2特徴検出部67、第2合焦度評価部68、第2基準画像選定部69、補正部70とを有している。
【0072】
第2特徴検出部67は、記憶装置52に記憶された複数n個の撮像画像Pの全部又は一部の撮像画像Pから第1特徴部Wc1と異なる第2特徴部Wc2を検出する。
【0073】
なお、第2特徴検出部67は、記憶装置52に記憶された複数n個の撮像画像Pの全てに対して第2特徴部Wc2を検出してもよく、また、複数n個の撮像画像Pの一部の撮像画像Pに対して第2特徴部Wc2を検出してもよい。
【0074】
第2特徴部Wc2としては、ワークWの側面Ws1、Ws2の下端E2や、ワークWの側面Ws1、Ws2に設けられている模様やマークなど、第1特徴部Wc1と上下方向Zに異なる位置にあり、第2合焦度評価部68において合焦度を評価することができるものであれば、ワークWの側面Ws1、Ws2の任意の箇所を第2特徴部Wc2とすることができる。本変更例では、第2特徴検出部67は、第2特徴部Wc2としてワークWの側面Ws1、Ws2の下端E2を検出する。
【0075】
第2合焦度評価部68は、第2特徴検出部67が検出した第2特徴部Wc2の合焦度を評価する。第2特徴部Wc2の合焦度を評価する方法は、第1特徴部Wc1の合焦度の評価と同様、種々の方法を採用することができ、例えば、第2特徴検出部67が第2特徴部Wc2を検出した撮像画像P毎に第2特徴部Wc2のシャープネス値を算出し、シャープネス値が大きい撮像画像ほど合焦度が高い画像と評価する。
【0076】
第2基準画像選定部69は、第2合焦度評価部68が評価した撮像画像Pから、合焦度の最も高い一つの画像を第2基準画像Ps2に選定する。
【0077】
補正部70は、第1基準画像Ps1における第1特徴部Wc1の位置と、第2基準画像Ps2における第2特徴部Wc2の位置とを特定する。
【0078】
例えば、
図10に示すように、補正部70は、第1基準画像Ps1の上端から第1特徴部Wc1までの上下方向Zの画素数Nc1を特定することで第1特徴部Wc1の位置を特定する。また、補正部70は、
図11に示すように、第2基準画像Ps2の上端から第2特徴部Wc2までの上下方向Zの画素数Nc2を特定することで第2特徴部Wc2の位置を特定する。
【0079】
補正部70は、領域設定部64がm番目の撮像画像Pmに設定した被検査領域Riに生じる位置ズレ量ΔQを式(5)によって算出し、算出した位置ズレ量ΔQだけ被検査領域Riを上下方向Zへ移動させて、m番目の撮像画像Pmの被検査領域Riを補正した補正被検査領域Ri’を設定する。
【0080】
【数5】
式(5)において、Nc1は第1基準画像Ps1の上端から第1特徴部Wc1までの上下方向Zの画素数、Nc2は第2基準画像Ps2の上端から第2特徴部Wc2までの上下方向Zの画素数、ns1は第1基準画像Ps1の順序数、ns2は第2基準画像Ps2の順序数、mは被検査領域Riを補正する検査画像Ptの順序数である。
【0081】
補正部70は、このような補正被検査領域Ri’の設定を、全ての検査画像Pt(つまり、第1基準画像Ps1及び第2基準画像Ps2以外の撮像画像P)について実行する。
【0082】
本変更例では、ワークWの側面Ws1,Ws2が上下方向Zに対して傾斜している場合に生じる被検査領域Riの位置ズレを補正することができ、分解能の高い画像を取得することができる。
【0083】
なお、本変更例のような被検査領域Riの補正は、外観検査装置1を最初に動作させる時に実行したり、ワークWの品種を変更した時に実行したり、ワークWを検査する毎に実行したり、任意のタイミングで実行することができる。
【0084】
(5-2)変更例2
上記の実施形態では、第1特徴検出部61が、記憶装置52に記憶された複数n個の撮像画像Pの全てに対して第1特徴部Wc1を検出する場合について説明したが、複数n個の撮像画像Pの一部の撮像画像Pに対して第1特徴部Wc1の検出、合焦度の評価、及び第1基準画像Ps1の選択を行ってもよい。
【0085】
例えば、画像処理部60が、複数n個の撮像画像Pのうち、第1特徴部Wc1が写っている撮像画像、あるいは、第1特徴部Wc1が写っていることが予想される一部の撮像画像P(例えば、1~10番目の撮像画像P1~P10)について、第1特徴部Wc1の検出、合焦度の評価、及び第1基準画像Ps1の選択を行ってもよい。
【0086】
また、画像処理部60が、複数n個の撮像画像Pのうち所定個数(例えば10個)おきに第1特徴部Wc1の検出及び合焦度の評価を行い、合焦度を評価した撮像画像Pのうち合焦度が最も大きい撮像画像P(例えば11番目の撮像画像P11)と2番目に大きい撮像画像P(例えば、21番目の撮像画像P21)とを決定する。そして、決定した2つの撮像画像の間で撮像された撮像画像P(例えば、12番目~20番目の撮像画像P12~P20)の全部又は一部の撮像画像Pに対して第1特徴部Wc1の検出、合焦度の評価、第1基準画像Ps1の選択を行ってもよい。
【0087】
本変更例のように、複数n個の撮像画像Pの一部の撮像画像Pに対して第1特徴部Wc1の検出、合焦度の評価、及び第1基準画像Ps1の選択をすることで、処理負荷を低減することができる。
【0088】
(5-3)変更例3
上記の実施形態では、特徴領域Rc及び被検査領域Riの画像データpを繋ぎ合わせた合成画像CPに基づいて、ワークWの側面Ws1,Ws2の外観検査を行ったが、合成画像CPを作成せず、特徴領域Rc及び被検査領域Riの画像データpに基づいてワークWの側面Ws1,Ws2の外観検査を行ってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…外観検査装置
2…ステージ
3…撮像部
4…移動機構
5…制御装置
31…側面撮像装置
32…側面撮像装置
33…上面撮像装置
41…保持ベース
51…処理装置
52…記憶装置
53…装置制御部
54…データ取得部
60…画像処理部
61…第1特徴検出部
62…第1合焦度評価部
63…第1基準画像選定部
64…領域設定部
65…合成部
66…評価部
【要約】 (修正有)
【課題】ワークの破損を抑えつつ、分解能の高いワークの側面の画像を取得することができる外観検査装置を提供する。
【解決手段】本発明の外観検査装置1は、複数の異なる位置においてワークWの側面Ws1,Ws2を撮像して複数の撮像画像Pを取得する撮像装置31,32と、撮像画像Pから第1特徴部Wc1を検出する第1特徴検出処理と、第1特徴部Wc1の合焦度を評価する第1合焦度評価処理と、複数の撮像画像Pにおける第1特徴部Wc1の合焦度を比較することで、複数の撮像画像Pの一つを第1基準画像Ps1に選定する第1基準画像選定処理と、第1基準画像Ps1における第1特徴部Wc1を含む領域である特徴領域Rcと、第1基準画像Ps1以外の撮像画像Pにおける特徴領域Rcに対応する領域である被検査領域Riに基づいて、ワークWを評価する評価処理と、を実行する。
【選択図】
図8