(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20240110BHJP
H01R 13/64 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R13/64
(21)【出願番号】P 2020098290
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224480(JP,A)
【文献】特開平09-219256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに嵌合可能な第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに支持され、前記第1、第2ハウジングに対して相対移動可能なスライダと、
前記スライダと前記第1ハウジングとの間に弾性変形可能に配置される付勢部材と、を備え、
前記第1ハウジングは、当て部を有し、
前記スライダは、スライダロック部を有し、
前記第2ハウジングは、前記スライダが前記第2ハウジング側に押し込まれる間に前記当て部に当接して前記第1、第2ハウジングの嵌合動作を停止させるストッパ部と、前記スライダロック部に係止されて前記スライダの押し込みを停止させるスライダロック受け部と、を有し、
前記付勢部材は、前記スライダロック受け部が前記スライダロック部に係止され、前記ストッパ部と前記当て部との当接が解除された状態において、前記第1ハウジングを前記第2ハウジングとの嵌合位置へ向けて押す付勢力を有し、
前記第1ハウジングは、前記当て部から離れて配置される第1ロック部を有し、
前記第2ハウジングは、前記ストッパ部から離れて配置され、前記嵌合位置にて前記第1ロック部に係止する第2ロック部を有しているコネクタ。
【請求項2】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに嵌合可能な第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに支持され、前記第1、第2ハウジングに対して相対移動可能なスライダと、
前記スライダと前記第1ハウジングとの間に弾性変形可能に配置される付勢部材と、を備え、
前記第1ハウジングは、当て部を有し、
前記スライダは、スライダロック部を有し、
前記第2ハウジングは、前記スライダが前記第2ハウジング側に押し込まれる間に前記当て部に当接して前記第1、第2ハウジングの嵌合動作を停止させるストッパ部と、前記スライダロック部に係止されて前記スライダの押し込みを停止させるスライダロック受け部と、を有し、
前記付勢部材は、前記スライダロック受け部が前記スライダロック部に係止され、前記ストッパ部と前記当て部との当接が解除された状態において、前記第1ハウジングを前記第2ハウジングとの嵌合位置へ向けて押す付勢力を有し、
前記ストッパ部は、弾性変形可能とされ、
前記スライダは、
前記ストッパ部の弾性変位を抑えて前記ストッパ部と前記当て部との当接を保つ規制部を有してい
るコネクタ。
【請求項3】
前記第1ハウジングが前記第2ハウジングとの嵌合位置へ向かう側を前側とし前記前側の反対側を後側とした場合に、前記スライダは、前記第1ハウジングの前記後側の面より後方に枠状の枠部を有している請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、互いに嵌合可能な雌ハウジングおよび雄ハウジングと、雄ハウジングに移動可能に支持されるスライド部材と、スライド部材および雄ハウジング間に配置されるコイルばねと、を備えている。雌ハウジングは、両ハウジング(雌ハウジングおよび雄ハウジング)を嵌合状態に保持するロックアームを有している。コイルばねの前端はスライド部材に当接し、コイルばねの後端は雄ハウジングに当接している。
【0003】
両ハウジングが半嵌合状態にある場合、ロックアームが弾性変形してスライド部材に当接する。スライド部材は雌ハウジングに押圧されて後退する。スライド部材が後退すると、コイルばねがスライド部材と雄ハウジングとの間に縮んだ状態になる。この段階で、両ハウジングの嵌合作業を中止すると、雌ハウジングがコイルばねの付勢力によって押し返される。よって、両ハウジングは、半嵌合状態のまま放置されずに離脱させられる。両ハウジングが正規に嵌合されると、ロックアームが弾性復帰してスライド部材から離れる。スライド部材はコイルばねの付勢力によって前進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、両ハウジングが半嵌合状態にあるときに、雄ハウジングに収容された雄端子が雌ハウジングに収容された雌端子に挿入され始める。ここで、作業者が両ハウジングの嵌合作業を停止し、両ハウジングが離脱させられると、改めて両ハウジングの嵌合作業を行わねばならない。その結果、両端子(雌端子および雄端子)の接点の摺動回数が必要以上に増え、両端子間に接点摩耗が発生するおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、接続信頼性の高い嵌合保証機能を備えたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、第1ハウジングと、前記第1ハウジングに嵌合可能な第2ハウジングと、前記第1ハウジングに支持され、前記第1、第2ハウジングに対して相対移動可能なスライダと、前記スライダと前記第1ハウジングとの間に弾性変形可能に配置される付勢部材と、を備え、前記第1ハウジングは、当て部を有し、前記スライダは、スライダロック部を有し、前記第2ハウジングは、前記スライダが前記第2ハウジング側に押し込まれる間に前記当て部に当接して前記第1、第2ハウジングの嵌合動作を停止させるストッパ部と、前記スライダロック部に係止されて前記スライダの押し込みを停止させるスライダロック受け部と、を有し、前記付勢部材は、前記スライダロック受け部が前記スライダロック部に係止され、前記ストッパ部と前記当て部との当接が解除された状態において、前記第1ハウジングを前記第2ハウジングとの嵌合位置へ向けて押す付勢力を有している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、接続信頼性の高い嵌合保証機能を備えたコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態において、前方から見た第1コネクタの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、前方から見た第1コネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、後方から見た第2コネクタの斜視図である。
【
図4】
図4は、前方から見たスライダの斜視図である。
【
図5】
図5は、嵌合動作が停止された第1、第2コネクタを半割した斜視図である。
【
図6】
図6は、嵌合動作が停止された第1、第2コネクタの側断面図である。
【
図8】
図8は、嵌合位置に至る直前の第1、第2コネクタの
図7対応図である。
【
図9】
図9は、嵌合位置における第1、第2コネクタの側断面図である。
【
図11】
図11は、嵌合位置における第1、第2コネクタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)第1ハウジングと、前記第1ハウジングに嵌合可能な第2ハウジングと、前記第1ハウジングに支持され、前記第1、第2ハウジングに対して相対移動可能なスライダと、前記スライダと前記第1ハウジングとの間に弾性変形可能に配置される付勢部材と、を備え、前記第1ハウジングは、当て部を有し、前記スライダは、スライダロック部を有し、前記第2ハウジングは、前記スライダが前記第2ハウジング側に押し込まれる間に前記当て部に当接して前記第1、第2ハウジングの嵌合動作を停止させるストッパ部と、前記スライダロック部に係止されて前記スライダの押し込みを停止させるスライダロック受け部と、を有し、前記付勢部材は、前記スライダロック受け部が前記スライダロック部に係止され、前記ストッパ部と前記当て部との当接が解除された状態において、前記第1ハウジングを前記第2ハウジングとの嵌合位置へ向けて押す付勢力を有している。
【0011】
上記構成によれば、スライダが第2ハウジング側に押し込まれる間にストッパ部が当て部に当接し、第1、第2ハウジングの嵌合動作が停止されるため、第1、第2ハウジングに収容された両端子の接続動作が開始されるのを防止することができる。その結果、両端子間に不必要な接点摩耗が発生するのを防止することができ、接続信頼性を高めることができる。
スライダロック受け部がスライダロック部に係止され、ストッパ部と当て部との当接が解除された状態において、第1ハウジングが付勢部材の付勢力によって押されて第2ハウジングとの嵌合位置に至ることができる。
一方、スライダロック受け部がスライダロック部に係止される前にスライダの押し込みを中止すると、付勢部材の付勢力によって、スライダが第2ハウジングから離れる方向に押し返される。その結果、第1、第2ハウジングが嵌合位置に至る手前の半嵌合状態で放置される事態を防止することができる。
【0012】
(2)前記スライダは、前記ストッパ部を押さえて前記ストッパ部と前記当て部との当接を保つ規制部を有しているのが好ましい。この構成によれば、スライダが第2ハウジング側に押し込まれる間にストッパ部と当て部との当接を確実に維持することができる。規制部がストッパ部から離れることにより、ストッパ部の押さえを自動的に解除することができる。
【0013】
(3)前記第1ハウジングが前記第2ハウジングとの嵌合位置へ向かう側を前側とし前記前側の反対側を後側とした場合に、前記スライダは、前記第1ハウジングの前記後側の面より後方に枠状の枠部を有していると良い。この構成によれば、枠部を押し込むことにより、第1、第2ハウジングが嵌合状態に至ることができる。ここで、枠部が枠状であるため、押し込み領域(把持領域)を広く確保することができる。また、枠部の内側には電線などを挿通させることができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかるコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
コネクタは、第1ハウジング10と、第1ハウジング10に嵌合可能な第2ハウジング11と、第1ハウジング10に支持されるスライダ12と、スライダ12と第1ハウジング10との間に配置される付勢部材13と、を備えている。また、コネクタは、第1ハウジング10に収容される複数の第1端子金具14と、第2ハウジング11に収容される複数の第2端子金具15と、を備えている。第1ハウジング10、第1端子金具14、スライダ12および付勢部材13は、雌型の第1コネクタFを構成している(
図2を参照)。第2ハウジング11および第2端子金具15は、雄型の第2コネクタMを構成している(
図3を参照)。なお、以下の説明において、前後方向については、第1、第2ハウジング10、11の嵌合作業を開始する際に第1、第2コネクタF、Mが向き合う面側を前側とする。上下方向は、
図1~
図6および
図9の上下方向を基準とする。
【0016】
<第1ハウジング>
第1ハウジング10は合成樹脂製であって、
図1および
図2に示すように、矩形ブロック状のハウジング本体16を有している。ハウジング本体16は、複数の第1キャビティ17を有している。各第1キャビティ17は、ハウジング本体16に横並びに対をなして配置される。各第1キャビティ17は、前後方向に延びてハウジング本体16の前後面に開口している。第1端子金具14は、第1キャビティ17に抜け止め状態に挿入される。
【0017】
ハウジング本体16の上面前端部の左右中央部には、基壁部18が突出して設けられている。基壁部18は、正面視矩形の枠状をなし、内側に断面矩形の貫通孔19を有している。ハウジング本体16の上面には、基壁部18の左右両端部から後方に延びるリブ状の内壁部20が突出して設けられている。ハウジング本体16の上面の左右両端部には、板状の外壁部21が突出して設けられている。内壁部20と外壁部21との間には、ガイド空間22が形成されている。
図2に示すように、スライダ12は、ガイド空間22に挿入され、第1ハウジング10に対して前後方向に移動可能とされている。ハウジング本体16の上面の左右両端部には、前後方向に延びる溝部23が設けられている。溝部23には、この溝部23内を閉塞する形状の抜け止め受け部24(
図9を参照)が設けられている。ハウジング本体16の左右両側面には、ガイド溝25が設けられている。ガイド溝25は、前後方向に延びてハウジング本体16の後面に開口している。
【0018】
第1ハウジング10は、基壁部18の左右中央部から後方に延びる第1ロック部26を有している。第1ロック部26は、前後方向に長い帯板状をなしている。第1ロック部26の上面には、ロック突起27が設けられている。第1ロック部26の上面の後端部には、解除操作部28が設けられている。解除操作部28の上面は、周囲の面よりも一段高く配置される。第1ロック部26は、基壁部18に連なる部分を支点として弾性変形可能とされている。
【0019】
ハウジング本体16の上面の左右中央部には、当て部29が突出して設けられている。当て部29は、前後方向において基壁部18寄りの位置に配置される。当て部29は、基壁部18の貫通孔19を通して、前方から視認可能とされている。当て部29の上方には、第1ロック部26が配置される。当て部29は、
図6に示すように、台形状をなし、前面が後方に傾斜し、後面が前方に傾斜している。
【0020】
<第2ハウジング>
第2ハウジング11は合成樹脂製であって、
図3に示すように、矩形ブロック状の端子収容部30を有している。端子収容部30は、複数の第2キャビティ31を有している。各第2キャビティ31は、各第1キャビティ17と連通するように、端子収容部30に横並びに対をなして配置される。各第2キャビティ31は、前後方向に延びて端子収容部30の前後面に開口している。第2端子金具15は、第2キャビティ31に抜け止め状態に挿入される。
【0021】
図6に示すように、第2ハウジング11は、端子収容部30の前面上端部の左右中央部から前方に延びるストッパ部32を有している。ストッパ部32は、後述するフード部35内に配置される。ストッパ部32は、前後方向に長い帯板状をなしている。ストッパ部32は、端子収容部30の前面に連なる部分を支点として弾性変形可能とされている。ストッパ部32の前端部には、被規制部33が上方に突出して設けられている。被規制部33の上面は、前後方向に沿って平坦に形成されている。被規制部33の上面には、スライダ12の後述する規制部54が当接可能とされている。ストッパ部32の前端部は、被当て部34が下方に突出して設けられている。被当て部34の前面は、下向きに傾斜している。被当て部34の前面は、当て部29の前面(第1ハウジング10から見た前面)に当接可能とされている。
【0022】
第2ハウジング11は、端子収容部30の前端から前方に突出する角筒状のフード部35を有している。
図3に示すように、フード部35は、端子収容部30より一回り大きい外形形状を有している。フード部35の上壁前端には、凹所36が開口して設けられている。凹所36は、フード部35の上壁において、平面視矩形の切欠部分および切欠部分から前方へ向けて拡開する拡開部分からなる。フード部35の上壁後端には、前後方向に延びるロック溝37が開口して設けられている。ロック溝37は、ストッパ部32の上方に配置される。
【0023】
フード部35の上壁には、第2ロック部38が設けられている。第2ロック部38は、フード部35の上壁の左右両側間に架け渡された形状になっている。第2ロック部38の前面は、上下方向に切り立ち、凹所36の切欠部分の奥端を構成している。
図6に示すように、第2ロック部38の後面は、上向きに傾斜し、ロック溝37の前端を構成している。
【0024】
図3および
図11に示すように、フード部35は、上壁後端の左右両端部にスライダロック受け部39を有している。スライダロック受け部39は、フード部35の上壁後端の角部を切り欠いた孔状をなしている。スライダロック受け部39は、フード部35の上壁、後壁および側壁に跨がって開口している。スライダロック受け部39の前面は、フード部35の上壁および側壁において、前後方向と直交する方向(左右方向および上下方向)に沿って配置される。スライダロック受け部39の前面には、スライダ12の後述するスライダロック部59が係止可能とされている。
図7に示すように、フード部35は、両側壁の内面上端部に、前後方向に延びる延出溝40を有している。延出溝40の前端は、フード部35の前端(開口端)に開口している。延出溝40の後端は、スライダロック受け部39の前方に設けられた閉塞部41で閉塞される。延出溝40の後端は、閉塞部41の前面を構成し、内向き(フード部35内)に傾斜している。
【0025】
<第1端子金具>
第1端子金具14は、雌型の端子金具であって、導電性の金属板を曲げ加工等して形成される。
図6に示すように、第1端子金具14の前端部には、角筒状の接続本体部42が設けられている。接続本体部42内には、弾性接触片43が設けられている。第1端子金具14の後端部には、オープンバレル状の第1バレル部44が設けられている。第1バレル部44は、第1電線45の端部に圧着して接続される。
【0026】
<第2端子金具>
第2端子金具15は、雄型の端子金具であって、導電性の金属板を曲げ加工等して形成される。第2端子金具15の前端部には、前後方向に延びるタブ46が設けられている。
図9に示すように、タブ46は、第1、第2ハウジング10、11が嵌合位置にあるときに、第1端子金具14の接続本体部42内に挿入され、弾性接触片43の接点部分に接触する。第2端子金具15の後端部には、オープンバレル状の第2バレル部47が設けられている。第2バレル部47は、第2電線48の端部に圧着して接続される。
【0027】
<スライダ>
スライダ12は合成樹脂製であって、第1ハウジング10に組み付けられる。スライダ12は、第1ハウジング10に対して相対的に後方に配置される待機位置と、第1ハウジング10に対して待機位置よりも相対的に前方に配置される押し込み位置とに移動可能とされている。後述するように、スライダ12は、付勢部材13の付勢力を受けて常には待機位置に配置される。
【0028】
図4に示すように、スライダ12は、背面視で矩形枠状をなす枠部49を有している。枠部49は、ハウジング本体16の後面の外周部を全周にわたって覆う大きさを有している。枠部49は、待機位置にてハウジング本体16の後面から後方に離れて配置され、押し込み位置にてハウジング本体16の後面に当接可能に配置される。枠部49の内側には、断面矩形の開口部50が形成されている。
図6に示すように、枠部49の開口部50には、第1キャビティ17から引き出された第1電線45が挿通される。枠部49は、矩形枠状の下辺部分および左右の側辺部分に、前方に張り出す周壁部52を有している。枠部49を摘まんで前方へ押し込むことにより、スライダ12が待機位置から押し込み位置へと移動させられる。周壁部52は、押し込み位置にてハウジング本体16の下面の後端部および左右両側面の後端部を外側から覆うように配置される。
【0029】
枠部49の左右の側辺部分には、ガイド部53が前方に突出して設けられている。ガイド部53は、角柱状をなし、周壁部52の内側に配置される。ガイド部53の前端は、周壁部52の前端よりも前方に配置される。
図2に示すように、ガイド部53は、第1ハウジング10のガイド溝25に挿入される。ガイド部53がガイド溝25の内面を摺動することで、第1ハウジング10に対するスライダ12の移動動作がガイドされる。
【0030】
枠部49の上辺部分の左右中央部には、規制部54が前方に突出して設けられている。
図7に示すように、規制部54は、前後方向に延びる一対のアーム部分と、前端部にて両アーム部分をつなぐ規制本体55とを有している。規制部54には、平面視において前後方向に長い矩形孔状の逃がし部56が設けられている。スライダ12が待機位置にあるときに、規制部54の規制本体55は、基壁部18の後方でかつ当て部29の上方に対向して配置される。スライダ12が押し込み位置にあるときに、規制部54の規制本体55は、基壁部18の貫通孔19を貫通して配置される。
【0031】
図4に示すように、枠部49の上辺部分の左右両端部には、レール部57が前方に突出して設けられている。レール部57は、規制部54の両側に対をなして配置される。レール部57は、第1ハウジング10のガイド空間22に挿入され、スライダ12の移動過程で内壁部20と外壁部21とに摺動可能とされている。レール部57は、断面L字形の本体部分を有し、基壁部18の左右の角部に沿って配置される。
【0032】
レール部57の本体部分の内側には、収容空間58が設けられている。収容空間58は、レール部57の内面に開口し、後端部に閉塞されている。レール部57の収容空間58には、付勢部材13が収容される。レール部57の下面には、抜け止め受け部24に係止可能な抜け止め部51(
図9を参照)が設けられている。
【0033】
レール部57の外側には、スライダロック部59が設けられている。スライダロック部59は、左右のレール部57に対応するように対をなして配置される。スライダロック部59は、レール部57の外面の前後中間部から外側に突出する付け根部60と、付け根部60から前方へ向けてレール部57と平行に延びる延出部分と、延出部分の前端から外側に突出するロック本体部61と、を有している。スライダ12が待機位置にあるときに、スライダロック部59のロック本体部61がフード部35の延出溝40に挿入される。スライダ12が押し込み位置にあるときに、スライダロック部59のロック本体部61がスライダロック受け部39に嵌まり込んで係止される。第1、第2ハウジング10、11が嵌合位置にあるときに、
図11に示すように、ロック本体部61は、フード部35の外面側に露出して配置される。
【0034】
<付勢部材>
付勢部材13は、
図1に示すように、金属製のコイルばね(圧縮コイルばね)として構成される。付勢部材13は、レール部57の収容空間58に、前後方向に沿って配置される。付勢部材13は、左右のレール部57に対応するように対をなして配置される。
図7に示すように、付勢部材13の後端は、レール部57の後端部(以下、スライダ側支持部62と称する。)に支持される。付勢部材13の前端は、基壁部18の後面上部(以下、ハウジング側支持部63と称する。)に支持される。スライダ12が待機位置にあるときに、付勢部材13は、スライダ側支持部62とハウジング側支持部63との間に、自然状態に伸びて配置される。スライダ12が押し込み位置にあるときに、付勢部材13は、スライダ側支持部62とハウジング側支持部63との間に、前後方向に縮んだ状態に配置される。
【0035】
<第1、第2ハウジングの嵌合手順>
スライダ12は、第1ハウジング10に後方から組み付けられる。抜け止め部51が溝部23に進入した状態で抜け止め受け部24に係止されることにより、スライダ12が待機位置にて第1ハウジング10に対して後方への抜け出しを規制された状態に配置される。付勢部材13は、スライダ側支持部62とハウジング側支持部63との間に保持される。
【0036】
第1ハウジング10およびスライダ12は、第2ハウジング11のフード部35に挿入される。枠部49を持ちながらスライダ12を前側(押し込み位置側、第2ハウジング11側)へ押圧することにより、第1、第2ハウジング10、11の嵌合作業を進めることができる。
【0037】
スライダ12がフード部35に浅く挿入された状態においては、スライダロック部59のロック本体部61がフード部35の延出溝40の後部に挿入される。また、第1ハウジング10がフード部35に浅く挿入された状態で、ストッパ部32が貫通孔19に挿入され、
図5および
図6に示すように、ストッパ部32の被当て部34が当て部29に突き当たる。ストッパ部32が当て部29に突き当たることにより、第1ハウジング10のフード部35への挿入動作が停止される。つまり、第1、第2ハウジング10、11の嵌合動作がいったん停止される。第1、第2ハウジング10、11の嵌合動作が停止された状態において、規制部54の規制本体55は、ストッパ部32の被規制部33に接触可能に配置される。これにより、ストッパ部32の上方への弾性変位が抑えられる。また、第1、第2ハウジング10、11の嵌合動作が停止された状態において、第1、第2端子金具14、15の接近動作も停止される。このとき、第2端子金具15のタブ46は第1端子金具14の接続本体部42の手前に配置される。このため、第1、第2端子金具14、15は、互いに接触しない状態(非接触状態)に配置される。
【0038】
第1、第2ハウジング10、11の嵌合動作が停止される間においても、スライダ12の押し込みが継続される。この間、ストッパ部32の弾性変位が規制部54によって抑えられているため、ストッパ部32と当て部29との当接が維持される。スライダ12の押し込みにより、スライダ側支持部62がハウジング側支持部63に接近し、スライダ側支持部62とハウジング側支持部63との間に配置された付勢部材13が縮められる。
【0039】
スライダ12が押し込み位置に至る前に、
図7から
図8にかけて示すように、ロック本体部61が閉塞部41に当接し、スライダロック部59が付け根部60を支点として内側(レール部57側)に弾性変形させられる。その後、ロック本体部61が閉塞部41を通過し、スライダロック部59が弾性復帰することで、
図10に示すように、ロック本体部61がスライダロック受け部39に嵌まり込む。スライダロック部59がスライダロック受け部39に係止されることにより、スライダ12が第2ハウジング11に対して相対的に後退するのが規制される。また、レール部57の前端がフード部35の後壁に突き当たることにより、スライダ12が第2ハウジング11に対して相対的に前進するのも規制される。このようにしてスライダ12は押し込み位置に至り、押し込み位置にて第2ハウジング11に保持(固定)される。
【0040】
スライダ12が押し込み位置に至る際には、ストッパ部32の被規制部33が規制部54の規制本体55を通過する。さらに、被当て部34が当て部29に乗り上がり、ストッパ部32が弾性変形することで、被規制部33が逃がし部56に進入する。その後、被当て部34が当て部29を通過し、ストッパ部32が弾性復帰することで、被規制部33が逃がし部56から退避する。このようにしてストッパ部32と当て部29との当接が解除される。
【0041】
また、スライダ12が待機位置から押し込み位置に移動する間、付勢部材13が徐々に縮められて付勢力を蓄積する。仮に、スライダ12が押し込み位置に至る前に、作業者がスライダ12から手を離す等してスライダ12の押し込みを中止すると、スライダ12が付勢部材13の付勢力を受けて押し返される。つまり、付勢部材13がハウジング側支持部63を支点として後方に伸長し、スライダ12には第2ハウジング11から離脱する方向の力が加わる。このとき、第1、第2ハウジング10、11の嵌合動作は停止しており、第1、第2端子金具14、15の接続動作は開始されていない。このため、本実施形態によれば、第1、第2ハウジング10、11が半嵌合状態のまま放置される事態を防止することができる。
【0042】
スライダ12が押し込み位置に至り、スライダロック部59がスライダロック受け部39に係止されるとともに、ストッパ部32と当て部29との当接が解除されると、第1ハウジング10が付勢部材13の付勢力によって前進させられる。つまり、付勢部材13がスライダ側支持部62を支点として前方に伸長する。付勢部材13が前方に伸長するのに伴い、第1ハウジング10が付勢部材13の付勢力を受けて第2ハウジング11との嵌合位置に向けて相対移動する。
【0043】
具体的には、付勢部材13がスライダ側支持部62を支点として前方に伸長すると、ハウジング側支持部63が付勢部材13に押圧され、第1ハウジング10がフード部35の奥側へ向けて自動的に移動する。このようにして、スライダ12が押し込み位置に至った後、付勢部材13の付勢力によって第1、第2ハウジング10、11の嵌合動作が一挙に進行する。
【0044】
第1、第2ハウジング10、11が嵌合位置に至ると、
図9に示すように、ロック突起27がロック溝37に嵌まり込む。これにより、第1ロック部26が第2ロック部38に係止され、第1、第2ハウジング10、11が離脱を規制された状態に保持される。また、第1、第2ハウジング10、11が嵌合位置に至ると、第2端子金具15のタブ46が第1端子金具14の接続本体部42内に挿入されて弾性接触片43の接点部分に接触し、第1、第2端子金具14、15が導通接続される。付勢部材13は元の自然状態に伸長し、スライダ12は第1ハウジング10に対して再び待機位置に戻る。
図11に示すように、解除操作部28の一部はフード部35の凹所36に配置される。第1、第2ハウジング10、11を離脱する際には、解除操作部28の上面が押圧され、第1ロック部26が第2ロック部38との係止を解除する方向に弾性変形させられる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、スライダ12が待機位置から押し込み位置へ向けて押し込まれる間にストッパ部32が当て部29に当接し、第1、第2ハウジング10、11の嵌合動作が停止されることにより、第1、第2端子金具14、15の接続動作が開始されない状態にすることができる。その結果、第1、第2端子金具14、15間に不必要な接点摩耗が発生するのを防止することができ、接続信頼性を高めることができる。
【0046】
スライダ12が押し込み位置に至った後、スライダロック受け部39がスライダロック部59に係止され、ストッパ部32と当て部29との当接が解除された状態において、第1ハウジング10が付勢部材13の付勢力によって押されて第2ハウジング11との嵌合位置に迅速に至ることができる。
【0047】
一方、スライダロック受け部39がスライダロック部59に係止される前にスライダ12の押し込みを中止すると、付勢部材13の付勢力によって、スライダ12が第2ハウジング11から離れる方向に押し返される。その結果、第1、第2ハウジング10、11が嵌合位置に至る手前の半嵌合状態で放置される事態を防止することができる。
【0048】
また、スライダ12がストッパ部32を押さえてストッパ部32と当て部29との当接を保つ規制部54を有しているため、スライダ12が待機位置から押し込み位置へ向けて押し込まれる間にストッパ部32と当て部29との当接を確実に維持することができる。一方、スライダ12が押し込み位置に至った後、規制部54がストッパ部32から離れることにより、ストッパ部32の押さえを自動的に解除することができる。さらに、スライダ12は、第1ハウジング10のハウジング本体16の後面より後方に枠状の枠部49を有しているため、押し込み領域(把持領域)を広く確保することができる。
【0049】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態の場合、第1端子金具がタブを挿入可能な雌型の端子金具であり、第2端子金具がタブを有する雄型の端子金具であったが、他の実施形態としては、上記実施形態とは逆に、第1端子金具がタブを有する雄型の端子金具であり、第2端子金具がタブを挿入可能な雌型の端子金具であっても良い。第1端子金具が雄型の端子金具である場合、第1ハウジングはフード部を有する形状であると良い。
上記実施形態の場合、第1ロック部が弾性変形可能に設けられ、第2ロック部が突起状に固定して設けられていたが、他の実施形態としては、上記実施形態とは逆に、第1ロック部が突起状に固定して設けられ、第2ロック部が弾性変形可能に設けられていても良い。
上記実施形態の場合、付勢部材がコイルばねで構成されていたが、他の実施形態としては、付勢部材が板ばね、トーションばね、樹脂ばね、ゴムのいずれかで構成されていても良い。
上記実施形態の場合、逃がし部が規制部に貫通する孔形状であったが、他の実施形態としては、逃がし部が規制部の下面(当て部と対向する面)に開口し、規制部の上面に閉塞する有底の凹部であっても良い。
【符号の説明】
【0050】
F…第1コネクタ
M…第2コネクタ
10…第1ハウジング
11…第2ハウジング
12…スライダ
13…付勢部材
14…第1端子金具
15…第2端子金具
16…ハウジング本体
17…第1キャビティ
18…基壁部
19…貫通孔
20…内壁部
21…外壁部
22…ガイド空間
23…溝部
24…抜け止め受け部
25…ガイド溝
26…第1ロック部
27…ロック突起
28…解除操作部
29…当て部
30…端子収容部
31…第2キャビティ
32…ストッパ部
33…被規制部
34…被当て部
35…フード部
36…凹所
37…ロック溝
38…第2ロック部
39…スライダロック受け部
40…延出溝
41…閉塞部
42…接続本体部
43…弾性接触片
44…第1バレル部
45…第1電線
46…タブ
47…第2バレル部
48…第2電線
49…枠部
50…開口部
51…抜け止め部
52…周壁部
53…ガイド部
54…規制部
55…規制本体
56…逃がし部
57…レール部
58…収容空間
59…スライダロック部
60…付け根部
61…ロック本体部
62…スライダ側支持部
63…ハウジング側支持部