(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】経腸栄養バッグ及び経腸栄養バッグの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61J1/10 333E
(21)【出願番号】P 2020562557
(86)(22)【出願日】2019-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2019051636
(87)【国際公開番号】W WO2020138504
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018248510
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019043202
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】亀井 一成
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄太
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-111032(JP,U)
【文献】米国特許第04838874(US,A)
【文献】特表2012-529406(JP,A)
【文献】特開2009-263008(JP,A)
【文献】特開昭62-028348(JP,A)
【文献】国際公開第2012/066865(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/002730(WO,A1)
【文献】特開2010-083583(JP,A)
【文献】米国特許第5913456(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏両側のシートの重ね合わせ面間に、開口部分を上部に有する液状体の収容領域が形成された経腸栄養バッグにおいて、
前記シートの幅方向少なくとも一方の端部が、表裏両側の該シートを互いに重ね合わせ状態で固定された閉止端とされており、該閉止端が傾斜形状とされることで、前記開口部分に傾斜案内部が設けられて、該開口部分の開口幅寸法が開口端側に向かって大きくなっていると共に、
前記開口部分には、表裏両側の前記シートの少なくとも一方において該シートの幅方向に延びる作用部材が取り付けられていると共に、該開口部分における該シートの幅方向両縁部を互いに接近させる方向へ押圧する開口操作力の作用に際して、該作用部材における該開口部分の開き方向への変形を補助する変形補助機構が設けられて
おり、
該変形補助機構において、前記作用部材が前記傾斜案内部の上下方向長さよりも小さな上下寸法をもって該傾斜案内部の開口幅方向に延びており、且つ、前記シートの幅方向において該作用部材が前記開口部分の開き方向へ湾曲した初期形状とされる経腸栄養バッグ。
【請求項2】
前記作用部材が前記シートの幅方向において前記開口部分の開き方向へ湾曲した状態で包装体に収容されて包装されている請求項
1に記載の経腸栄養バッグ。
【請求項3】
前記開口部分が幅寸法の大きい幅広部と幅寸法の小さい幅狭部とを有しており、
該幅狭部の幅方向外側に前記開口操作力が及ぼされる押圧部分が設けられていると共に、該幅広部に前記作用部材が設けられている請求項
1又は
2に記載の経腸栄養バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野で用いられる経腸栄養バッグ及び経腸栄養バッグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、患者の鼻腔や口腔、瘻孔に挿し入れられたチューブを通じて栄養液や薬液を胃や腸などへ投与する経腸栄養法では、所定量の栄養液や薬液を収容しておく経腸栄養バッグが利用されている。
【0003】
このような経腸栄養バッグでは、一般に軟質合成樹脂製のシートが袋状に加工されて、液状体の収容領域が内部に形成されており、上側には開口部分が設けられている。
【0004】
ところで、経腸栄養バッグを使用する際には、液状の栄養液を開口部分から注ぎ入れる。この注入作業は、一般に一人で行われ、一方の手で経腸栄養バッグの開口部分を開いた状態に保ちつつ、他方の手で持ったカップ等の容器を傾けて、容器内に収容された液状体を経腸栄養バッグへ開口部分から注ぎ入れることによって行われる。
【0005】
ところが、経腸栄養バッグの袋本体が軟質の樹脂シートで形成されていることから、液状体を注ぎ入れる際に開口部分を充分に且つ一定に開いた状態に保ち難いという問題があった。
【0006】
なお、このような問題に鑑み、特開2011-78737号公報(特許文献1)には、開口部分を構成する2枚の樹脂シートの各外面にシート状の開閉操作部を固定して両樹脂シートの外側にそれぞれ指挿入用の孔を設けることにより、各開閉操作部に挿入した両方の指を互いに遠ざけるように開くことで開口部分を開口状態に保持できるようにした構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者が検討したところ、特許文献1に記載の従来構造では、軟質の樹脂シートで形成された開口部分の形状を維持するのに各指を大きく広げ続けなければならない。特に1000ml程度の液状体の収容も想定される経腸栄養バッグにおいては、使用者は各指を広げた状態を維持し難く、また、液状体の重量が開口部分の樹脂シートに作用して開口部分が変形し易いことから、安定した開口形状を保持し続けることが難しいという、新規の問題を有していることが明らかとなった。
【0009】
本発明の解決課題とするところは、開口部分をより安定して開口し、更に開口状態に保持することができる、新規な構造の経腸栄養バッグ及び経腸栄養バッグの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0011】
本発明の第1の態様は、表裏両側のシートの重ね合わせ面間に、開口部分を上部に有する液状体の収容領域が形成された経腸栄養バッグにおいて、前記シートの幅方向少なくとも一方の端部が、表裏両側の該シートを互いに重ね合わせ状態で固定された閉止端とされており、該閉止端が傾斜形状とされることで、前記開口部分に傾斜案内部が設けられて、該開口部分の開口幅寸法が開口端側に向かって大きくなっていると共に、前記収容領域の前記開口部分には、表裏両側の前記シートの少なくとも一方において該シートの幅方向に延びる作用部材が取り付けられていると共に、該開口部分における該シートの幅方向両縁部を互いに接近させる方向へ押圧する開口操作力の作用に際して、該作用部材における該開口部分の開き方向への変形を補助する変形補助機構が設けられており、該変形補助機構において、前記作用部材が前記傾斜案内部の上下方向長さよりも小さな上下寸法をもって該傾斜案内部の開口幅方向に延びており、且つ、前記シートの幅方向において該作用部材が前記開口部分の開き方向へ湾曲した初期形状とされるものである。
【0012】
本態様の経腸栄養バッグでは、手指による掴む方向の力を利用して、変形補助機構で変形方向を外方に向けた作用部材を変形させることで、開口部分を容易に開口させることができると共に、開口状態を安定した形状で保つことが可能になる。即ち、開くよりも閉じる方が格段に大きな力を発揮する手指による掴む力を利用することで、作用部材で剛性を高めて変形の形状を安定化させた開口部分を容易に且つ安定した開口形状をもって開き且つ保持することができる。
【0013】
それ故、栄養液や薬液などの液状体を、開口部分を通じて収容領域へ入れ易く、且つ、液状体の重量が大きくなっても、開口部分が意図せずに変形したり閉じてしまうなどの不具合を防ぐことができる。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
また、本態様の経腸栄養バッグでは、初期形状において作用部材の中立軸を長さ方向につないだ中心面又は作用部材の中立軸の中心を長さ方向につないだ中心軸が外方に湾曲していることで、作用部材の両端から圧縮方向に加えられる開口操作力が作用部材を外方に湾曲させる曲げモーメントを生ずることとなる。その結果、開口操作力によって作用部材の曲率が大きくなるように外方へ弾性変形して、開口部分が安定して開口され得る。
【0024】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された経腸栄養バッグにおいて、前記作用部材が前記シートの幅方向において前記開口部分の開き方向へ湾曲した状態で包装体に収容されて包装されているものである。
【0025】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された経腸栄養バッグにおいて、前記開口部分が幅寸法の大きい幅広部と幅寸法の小さい幅狭部とを有しており、該幅狭部の幅方向外側に前記開口操作力が及ぼされる押圧部分が設けられていると共に、該幅広部に前記作用部材が設けられているものである。
【0026】
本態様の経腸栄養バッグでは、開口部分において幅狭とされた部分を押圧して開口操作力を及ぼすことで、開口操作力が幅広部に設けられた作用部材に伝達されて、作用部材により開口部分を大きく開くことができる。特に、作用部材が開口部分の開き方向へ湾曲した初期形状とされることで、より小さい操作力で幅広部全域を大きく開口することができる。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、経腸栄養バッグにおいて、開口部分をより安定して開口し、更に開口状態に保持することが可能になる。また、開口部分をより安定して開口し、更に開口状態に保持することが可能な経腸栄養バッグを簡単に製造して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての経腸栄養バッグを示す正面図
【
図4】
図1に示す経腸栄養バッグの開口部分を開く操作について説明する図であって、(a)は開口部分が閉じた状態を、(b)は開口部分が開いた状態を、それぞれ示す。
【
図5】本発明の第2の実施形態としての経腸栄養バッグを示す断面図
【
図6】本発明の第3の実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材の斜視図
【
図7】
図6に示す弾性部材を備えた経腸栄養バッグの要部を示す図であって、(a)が表側を、(b)が裏側を、それぞれ示す。
【
図8】
図6に示す弾性部材を備えた経腸栄養バッグの要部を示す断面図であって、(a)が弾性部材の取付け完了状態を、(b)が弾性部材の取付け前の状態を、それぞれ示す。
【
図9】本発明の別の一実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材の斜視図
【
図10】本発明の第4の実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材の斜視図
【
図11】本発明の第5の実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材の斜視図
【
図12】
図11に示す弾性部材を備えた経腸栄養バッグの正面図
【
図13】
図12に示す経腸栄養バッグに開口操作力を及ぼしている状態を示す写真
【
図14】
図12に示す経腸栄養バッグの開口部分の開口状態を示す写真
【
図15】本発明の第6の実施形態としての経腸栄養バッグを示す正面図
【
図16】
図15に示す経腸栄養バッグの製造工程を説明する分解斜視図
【
図17】本発明の第7の実施形態としての経腸栄養バッグを示す正面図
【
図18】
図17に示す経腸栄養バッグの製造工程を説明する分解斜視図
【
図19】本発明の第8の実施形態としての経腸栄養バッグを示す正面図
【
図20】
図19に示す経腸栄養バッグの開口部分の断面図であって、
図19のXX-XX断面に相当する図
【
図21】
図19に示す経腸栄養バッグの開口部分に癖付けをする工程を説明する断面図
【
図22】本発明の第9の実施形態としての経腸栄養バッグを示す正面図
【
図23】本発明の別の一実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材の斜視図
【
図24】本発明のまた別の一実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0048】
図1~3には、本発明の第1の実施形態としての経腸栄養バッグ10が示されている。この経腸栄養バッグ10は、
図1中の上下方向に長い袋構造とされており、上部には開閉可能な開口部分12が設けられている一方、下部には外部チューブ14を接続可能な排出用ポートとしてのポート部16が設けられている。そして、内部に栄養液等の液状体が収容されて栄養剤補給用バッグとして用いられるようになっている。なお、
図2~
図4における経腸栄養バッグ10の袋本体22(後述)は、理解しやすくするために厚さ方向(
図2中の左右方向)の縮尺を他の方向に比して拡大して図示している。
【0049】
より詳細には、経腸栄養バッグ10は、シートとしての外側シート18,18が互いに重ね合わされて、周囲の固着部20において相互に固着された構造を有しており、袋状の袋本体22を備えている。固着部20は重ね合わされる表裏2枚の外側シート18,18の周囲の三方向に設けられており、固着されない上方(
図1中の上方)に開口部分12が設けられている。なお、この固着部20における表裏の外側シート18,18の固着手段は、例えば接着剤による接着等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、好ましくは熱による溶着(ヒートシール)が採用される。そして、表裏の外側シート18,18を上方へ開口する袋状に構成することにより、袋本体22の内部、すなわち表裏の外側シート18,18の間には、液状体を収容する収容領域24が形成されている。
【0050】
さらに、収容領域24の上方である袋本体22の開口部分12には、袋本体22、換言すれば収容領域24を開閉可能とするチャック状封止部26が、表裏の外側シート18,18に設けられている。要するに、表裏の外側シート18,18がチャック状封止部26で開閉可能に重ね合わされることにより、開口部分12が形成されている。
【0051】
チャック状封止部26は、開口部分12を繰り返し開閉可能にするものであって、閉状態では収容領域24を外部から液密に密閉し得るようになっている。チャック状封止部26の具体的構造は限定されないが、例えば一方の外側シート18の内面に設けられて開口部分12の幅方向に延びる凹溝と、他方の外側シート18の内面に設けられて開口部分12の幅方向に延びる凸条とによって構成された樹脂製チャックなど、各種公知の構造が採用可能である。本実施形態のチャック状封止部26は、凹溝と凸条からなる樹脂製チャックであって、それら凹溝と凸条が互いに押し付けられて弾性的に凹凸嵌合されることによって閉じられる。
【0052】
なお、
図1中において、チャック状封止部26を構成する凹凸嵌合部は、袋本体22の内部で、表裏の外側シート18,18の各内面に形成されているが、それら外側シート18,18が透明材料で形成されていることと、構造を理解し易くする趣旨から、チャック状封止部26を実線で図示している。また、チャック状封止部26は、開口部分12を密閉することができるように、開口部分12において外側シート18の幅方向(
図1中の左右方向)の全長に亘って形成されている。
【0053】
さらに、袋本体22の上端部には、一対のフラップ状部28,28が形成されている。即ち、袋本体22を構成する表裏の外側シート18,18には、チャック状封止部26よりも上方(
図1中の上方)へ延び出した一対のフラップ状部28,28が形成されており、相互に重ね合わされている。
【0054】
なお、本実施形態では一対のフラップ状部28,28は同形とされているが、一対のフラップ状部は形状が同一でなくても良い。例えば、一対のフラップ状部の少なくとも一方において、外方に突出する摘み片を設けて、かかる摘み片を手指で摘んで開く方向の外力を及ぼすことにより、一対のフラップ状部を開く操作をし易くすること等も可能である。
【0055】
袋本体22を構成する表裏の外側シート18,18の材料としては、液状体への耐性等を考慮して、従来公知である軟質の樹脂シートの材料が適宜に採用され得る。即ち、表裏の外側シート18,18は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の樹脂材から形成されて、好ましくは透明な可撓性樹脂シートとされる。なお、表裏の外側シート18,18は、同一の樹脂材により形成されることが好ましいが、互いに異なる樹脂材で形成されていても良い。また、袋本体22において、各外側シート18,18が全体に亘って同一の材料で形成されていても良いし、例えば、フラップ状部28と収容領域24を形成する部分とを異なる材料で形成する等、部分によって形成材料を異ならせても良い。
【0056】
また、一対のフラップ状部28,28における幅方向の一方(
図1中の左方)の端部には、固着部20が上端まで延び出している。これにより、一対のフラップ状部28,28の一方の端部が、相互に固着された閉止端30とされている。
【0057】
これに対して、一対のフラップ状部28,28における幅方向の他方(
図1中の右方)の端部では、固着部20が一対のフラップ状部28,28の上端までは延びていない。本実施形態では、右方の固着部20は一対のフラップ状部28,28の下端までしか延びておらず、これにより、一対のフラップ状部28,28の他方の端部は、重ね合わせ方向で互いに離れ得る開放端32とされている。要するに、開放端32において、一対のフラップ状部28,28の上下方向の長さに対して上端から半分以上の範囲で相互に固着されておらず、互いに引き離し可能に開放されている。閉止端である場合、閉止端が表裏のシートで構成されている関係上、閉止端が湾曲する方向に表裏シートが重なったままで湾曲してしまいやすいが、開放端であることで閉止端を介した表裏シートへの力の作用を低減することができる。また、閉止端である場合、幅方向側方を内側に押圧して開口させる形態において、閉止端が幅方向の内側に移動して、開口端の開口面積が小さくなってしまうが、開放端32があることで、開口端174の幅方向端部が開き方向に移動可能であるため、開口端174の幅方向端部が開口操作に連動して幅方向内側に移動してしまう事態が生じ難く、開口端174の開口面積を大きくすることができる。なお、一対のフラップ状部28,28は、幅方向の両方の端部が開放端32とされていてもよいし、両方の端部が閉止端30とされていてもよいが、好適には少なくとも一方の端部が開放端32とされる。
【0058】
特に、本実施形態では、一対のフラップ状部28,28における閉止端30側の固着部20は、袋本体22の上端から下方(
図1中の下方)へ行くに従って、閉止端30側から開放端32側(
図1中の左方から右方)に傾斜している。このように一対のフラップ状部28,28の閉止端30側が傾斜して溶着されていることによって、傾斜案内部34が形成されている。そして、後述する各フラップ状部28,28を互いに引き離した開口状態において、開口部分12の幅方向(
図1中の左右方向)での開口寸法が、傾斜案内部34によって、開口部分12の下端から上端へ向けて次第に大きくなっている。
【0059】
さらに、一対のフラップ状部28,28には、内側シート38,38が重ね合わされている。内側シート38,38は、外側シート18,18と同様の合成樹脂シートであって、一対のフラップ状部28,28の高さ方向(
図1中の上下方向)および幅方向(
図1中の左右方向)の中間部分において、それらフラップ状部28,28の内面側に重ね合わされている。そして、重ね合わされたフラップ状部28,28と内側シート38,38は、周囲の固着部36において相互に固着されている。これにより、一対のフラップ状部28,28には、内部に空間を有する収容部としての袋状部40がそれぞれ形成されている。なお、内側シート38,38が外側シート18,18の上端部分に固着されていることから、外側シート18,18における開口部分12が内側シート38,38によって補強されており、部分的な剛性の向上などが図られている。
【0060】
袋状部40は、略一定の上下寸法で幅方向(
図1中の左右方向)に延びており、一方の端部が封止されていると共に、他方の端部が外側シート18のフラップ状部28に開口する差入口42を通じて外部に開放されている。袋状部40の周壁部は、固着部36において相互に固着された外側シート18のフラップ状部28と内側シート38とによって構成されている。本実施形態では、外側シート18,18の重ね合わせ面である内面に内側シート38,38を重ね合わせて固着することで、外側シート18,18の内面側に空間を備える収容部(袋状部40)が形成されている。これによれば、外側シート18と内側シート38の加熱溶着が容易になると共に、耐久性に優れた袋状部40を安価に得ることができる。尤も、例えば、外側シート18,18の外面に別のシートを重ね合わせて固着することで、外側シート18,18の外面側に空間を備える収容部(袋状部)を形成することも可能である。
【0061】
袋状部40を形成するための固着部36の固着手段は、前述の固着部20と同様であり、例えば接着剤による接着等が挙げられて、特に限定されるものではないが、熱溶着(ヒートシール)が好適に採用される。また、外側シート18の材料と内側シート38の材料は、互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。
【0062】
差入口42は、外側シート18に設けられる切込みや窓状の切抜き、切欠きなどによって形成することができる。本実施形態の差入口42は、外側シート18に開口する矩形窓状の切抜きによって形成されており、袋状部40の周壁部において、内側シート38で構成される部分が、外側シート18で構成される部分よりも、幅方向の外側(
図1中の右側)まで延び出している。そして、内側シート38において外側シート18に形成された切抜きを通じて外部に露出する部分が、差入口42へ続く案内面44とされている。
【0063】
なお、差入口42は、例えば、外側シート18にU字状などの切込みを入れて切片を形成し、この切片を外側シート18と内側シート38の重ね合わせ面間へ折り込むことによっても形成可能である。これによれば、切片によって外側シート18と内側シート38が互いに離れて、袋状部40の開口である差入口42が広げられることから、後述する弾性部材46の袋状部40への差し入れが容易になり得る。
【0064】
袋状部40,40には、それぞれ作用部材としての弾性部材46が挿入されている。弾性部材46は、金属や合成樹脂或いは複合材などで形成された長手板状の部材であって、
図1中の左右方向となる長さ方向で湾曲する曲げ変形について弾性を有している。弾性部材46は、袋本体22よりも硬質とされて、曲げ方向の変形剛性が袋本体22よりも大きくされている。本実施形態の弾性部材46は、
図3に示すように、長手方向(
図1,3中の左右方向)において、外方に向かって凸となるカーブを描くように湾曲している。弾性部材46は、略一定の曲率半径で湾曲していても良いし、曲率半径が徐々に変化していても良いが、全体として後述する袋状部40への収容状態で外側シート18に向けて凸となっている。
【0065】
本実施形態では、板状の弾性部材46を例示するが、弾性部材は、例えば、ロッド状やシート状などであってもよく、外側シート18に対して変形剛性が大きくされた長手状の部材が採用される。なお、弾性部材46は、好適には合成樹脂製とされており、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ナイロン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、硬質塩化ビニル等によって形成される。
【0066】
そして、弾性部材46は、差入口42を通じて袋状部40へ差し入れられている。これにより、弾性部材46は、開口部分12において外側シート18に取り付けられて、外側シート18の幅方向へ延びている。本実施形態では、
図2,3に示すように、表裏両側の外側シート18,18に対して、それぞれ弾性部材46が取り付けられている。なお、弾性部材46は、表裏何れか一方の外側シート18にのみ取り付けられていても良い。
【0067】
本実施形態の弾性部材46は、
図1に示すように、外側シート18の幅方向において袋状部40よりも短くされて、全体が袋状部40に収容されているが、袋状部40以上の長さを有して、袋状部40から突出していても良い。また、袋状部40の壁部を構成する外側シート18と内側シート38を、差入口42側の端部において相互に固着することで、弾性部材46の袋状部40からの抜けを防ぐこともできる。また、差入口42が閉止端30側に設けられる場合には、外側シート18,18を袋状部40の差入口42側の端部で相互に固着することによって、弾性部材46の抜けを防ぐことが可能であり、内側シート38,38を固着する必要はない。なお、袋状部40における差入口42側の端部を固着する以外に、例えば、弾性部材の中間部分に穴や括れが設けられている場合には、当該穴や括れの形成部分で袋状部40の周壁部を固着することにより、弾性部材の穴や括れと袋状部40の固着部分との係止によって抜けを防ぐことができる。また、本実施形態の弾性部材46は、湾曲板状とされており、袋状部40に対する抜差し方向(
図1,3中の左右方向)の両端部が、内側シート38側へ傾斜していることから、外側シート18に形成された差入口42からの抜けが生じ難い。
【0068】
湾曲板状の弾性部材46が袋状部40に収容状態で配されることにより、フラップ状部28,28には、弾性部材46の形状に基づいて、開口部分12を開く方向の力、換言すれば、フラップ状部28,28を互いに引き離す方向の力が及ぼされる。
【0069】
袋本体22の上部には、貫通孔48が形成されている。貫通孔48は、2枚の外側シート18,18の開口部分12の上方(
図1中の上方)に設けられている。本実施形態において、貫通孔48は、一対のフラップ状部28,28における閉止端30側(
図1中の左方)に設けられた延出片50に形成されており、互いに重ね合わせ状態に固着された一対のフラップ状部28,28を貫通している。貫通孔48は、好適には、袋本体22の幅方向で袋状部40と並んで配置されて、上下方向で略同じ位置に設けられる。なお、貫通孔48は、必ずしも一対のフラップ状部28,28の重ね合わせ部分に形成する必要はなく、例えば一方のフラップ状部28だけに延出片50を形成し、かかる延出片50に貫通孔48を形成しても良い。また、例えば、貫通孔48を袋状部40の周壁部に形成して、貫通孔48を袋状部40の差入口42とすることも可能である。
【0070】
そして、この貫通孔48に図示しない吊下フック等を挿通させることにより、図示しない点滴スタンド等に対して、経腸栄養バッグ10を吊り下げ支持させることができるようになっている。また、貫通孔48は、手指を差し入れることが可能とされている。本実施形態の貫通孔48は、スタンドの吊下フックなどに経腸栄養バッグ10を引っ掛けるための掛止孔と、開口部分12を通じて収容領域24へ液状体を注入する作業を行う作業者(後述)が、経腸栄養バッグ10を片手で支持するための手指の挿入孔とを、兼ねている。
【0071】
袋本体22の底部には、収容領域24を内外に貫通するポート部16が設けられている。本実施形態では、ポート部16は、袋本体22の下端縁部において、貫通孔48と対角線方向で対向する角部に設けられている。ポート部16は、合成樹脂等の硬質材製とされており、好適には、袋本体22を構成する2枚の外側シート18,18より剛性が大きくされる。なお、ポート部16は、表裏の外側シート18,18間に挟まれて、両シート18,18の固着部20を貫通して配されており、例えば両シート18,18と一体的に溶着されたり、接着等によって固着されている。
【0072】
そして、ポート部16には、袋本体22の内部(収容領域24)に連通接続される内側開口部と反対の外側開口部に対して、
図1に二点鎖線で示されているように外部チューブ14が接続可能とされている。この外部チューブ14は、従来公知のものが使用可能であって、本発明の構成要素でないから詳しい説明を省略するが、可撓性のチューブであり、必要に応じてチャンバー(点滴筒)やクレンメ(流量調整器)、コネクター等(何れも図示せず)が設けられて、鼻腔や瘻孔等から挿入されて胃や小腸等の患者体内(図示せず)に至っている。そして、収容領域24に収容される栄養液などの液状体が、この外部チューブ14を通じて患者の体内に投与される。
【0073】
袋本体22および収容領域24の高さ方向中間部分から下方は、幅方向において、上方より開放端32側(
図1中の右方)に大きくされた拡幅部52とされており、幅方向の重心位置が開放端32側に偏倚している。また、図示しないスタンドの吊下フックに吊下げられた状態で支持点となる貫通孔48が、経腸栄養バッグ10の閉止端30側の上端部分に設けられている。これにより、経腸栄養バッグ10を図示しないスタンドに懸架する際に、経腸栄養バッグ10が
図1の状態から貫通孔48を中心として右回りに傾斜して静置される。この結果、ポート部16が略鉛直方向に延びるように位置する。さらに、収容領域24におけるポート部16の周辺部分が狭幅となっていることから、経腸栄養バッグ10がスタンドに懸架された際に、収容領域24に収容された液状体がポート部16に流れ込みやすくなっており、液状体の収容領域24への残留量を軽減させることができる。
【0074】
このような構造とされた経腸栄養バッグ10によれば、作業者は、栄養液や薬液などの液状体を袋本体22の収容領域24へ入れる作業を行う際に、
図4に示すように、開口部分12を片手で開いて保持することが可能となる。
【0075】
先ず、作業者は、
図4(a)に示すように、親指54を経腸栄養バッグ10の貫通孔48に挿入すると共に、人差指56および中指58を経腸栄養バッグ10のフラップ状部28,28の開放端32側に当てる。或いは、人差指56又は中指58を貫通孔48に挿入すると共に、親指54をフラップ状部28,28の開放端32側に当てても良い。なお、フラップ状部28,28の幅方向端部に当てる指は、必ずしも人差指56又は中指58に限定されない。具体的には、例えば、人差指56、中指58に代えて、薬指や小指を当てるようにしても良いし、それら人差指、中指、薬指、小指のうちの複数を当てても良い。要するに、フラップ状部28,28の幅方向の両端部に対して、親指と、人差指、中指、薬指、小指の少なくとも1つとを当てるようにすれば良い。
【0076】
次に、作業者は、親指54と人差指56および中指58との距離を縮める方向で、経腸栄養バッグ10の開口部分12に幅方向の圧縮力である開口操作力を加える。これにより、経腸栄養バッグ10の開口部分12に設けられた弾性部材46,46に対して、外側シート18の幅方向(
図4中の上下方向)の圧縮力が作用する。なお、作業者は、外側シート18,18よりも剛性の高い弾性部材46に開口操作力を加えることによって、経腸栄養バッグ10を片手で把持することができる。
【0077】
弾性部材46は、予め外側シート18の幅方向において湾曲した初期形状を有していることから、開口操作力によって圧縮されると、曲率を増すように弾性変形する。弾性部材46は、初期形状において、開口部分12の開き方向である外側シート18の外面側へ向けて凸となるように、袋状部40に配設されている。それ故、弾性部材46,46は、開口操作力の作用によって、相互に離れるように、開口部分12の開き方向に変形する。このように、本実施形態では、弾性部材46における開口部分12の開き方向への変形を補助する変形補助機構が、外側シート18の幅方向において弾性部材46が開口部分12の開き方向へ湾曲した初期形状とされることによって構成されている。
【0078】
開口部分12の壁部を構成する外側シート18,18は、弾性部材46,46に比して柔軟であることから、開口部分12において弾性部材46の変形に追従する。従って、
図4(b)に示すように、弾性部材46,46が開口部分12の開き方向へ変形すると、開口部分12の外側シート18,18が追従して変形し、開口部分12が開口する。
【0079】
本実施形態では、弾性部材46を保持するフラップ状部28,28が、外側シート18の幅方向の一方の端縁部を開放端32とされている。それ故、弾性部材46,46の変形に伴う外側シート18,18の変形が、開放端32において拘束されることなく許容されて、開口部分12がより開き易くなる。このように、本実施形態では、フラップ状部28,28の幅方向一方の端縁部が開放端32とされていることによって、弾性部材46による開口部分12の開き方向への変形が補助されており、変形補助機構が開放端32によっても構成されている。なお、変形補助機構は、本実施形態のように2種類以上の複数が設けられていても良いが、1種類のみが設けられていても良い。
【0080】
チャック状封止部26におけるチャックの噛合力は、チャックの形状や大きさ等により調節可能であることから、チャックの噛合力を調節することで、開口操作力の作用によってチャックを閉状態から開状態へ切り替えることも可能である。チャックの信頼性を高めるためにチャックの噛合力を強く設定する場合には、予めチャック状封止部26を開状態としておけば良い。
【0081】
そして、開いた開口部分12に対して、図示しないカップから栄養液などの液状体を収容領域24へ注ぎ入れる。液状体を収容領域24へ注入した後に、開口操作力を解除すると共に、チャック状封止部26のチャックを閉状態とすることにより、収容領域24が密封状態とされる。これにより、経腸栄養バッグ10の開口部分12から液状体が漏出するのを防止できると共に、収容領域24内の液状体が細菌等に汚染されるおそれを低減させることができる。
【0082】
なお、指で押圧する部材は弾性部材46ではなく、チャック状封止部26であってもよい。また、作用部材により開口部分12が予め開き方向に開いていることが好適であり、これにより、指でチャック状封止部26を押圧した際に開口部分12が閉方向に動くことがなく、指の押圧操作により確実に開口部分12を開方向に開くことができる。
【0083】
収容領域24に対する液状体の注入量が多くなるに従って、経腸栄養バッグ10を把持する手にはより大きな荷重が作用するが、本実施形態では、親指54が貫通孔48に挿通されていることから、液状体の重量を支え易くなっている。
【0084】
図4では、左手で経腸栄養バッグ10を把持している状態が示されているが、例えば、右手で経腸栄養バッグ10を把持して、左手で液状体を収容領域24に注ぎ入れることも可能である。作業者が右利きの場合、
図4のように左手で経腸栄養バッグ10を把持すれば、利き手によって液状体を収容領域24へ高精度に注ぎ入れることができる。あるいは、右手で経腸栄養バッグ10を把持すれば、経腸栄養バッグ10の開口部分12をより確実に開口状態に維持することができる。従って、経腸栄養バッグ10は表裏対称であることが好適である。
【0085】
なお、収容領域24に適量の液状体が収容された経腸栄養バッグ10は、図示しないスタンドの吊下フックが貫通孔48に挿通されて、ポート部16が下側となる向きで吊下げられる。そして、収容領域24内の液状体が重力によってポート部16から流出して、外部チューブ14を通じて患者の体内へ注入される。
【0086】
本実施形態では、経腸栄養バッグ10をスタンドの吊下フックに吊下げる前に、開口部分12を開いて液状体を注ぎ入れる場合について説明したが、例えば、吊下フックに空の経腸栄養バッグ10を吊下げた状態で、開口操作力を及ぼして開口部分12を開口させ、吊下げられた状態の経腸栄養バッグ10に液状体を注ぎ入れるようにしても良い。この場合には、親指54を貫通孔48に挿入する代わりに、親指54を吊下フックに添えることで、親指54に当てられた吊下フックと人差指56および中指58との間に開口操作力を及ぼすことができる。これによれば、経腸栄養バッグ10が予めスタンドで支持されることから、液状体の注入による経腸栄養バッグ10の重量の増加が問題になり難い。
【0087】
このように、経腸栄養バッグ10によれば、開口部分12に弾性部材46が取り付けられていることにより、開口部分12の開き方向と略直交する幅方向で内向きの開口操作力を及ぼすことによって、弾性部材46を開口部分12の開き方向に曲げ変形させることができる。それ故、親指54と人差指56および中指58との間で開口部分12を幅方向に潰すように変形させる簡単な操作によって、開口部分12を開くことができる。
【0088】
手指を伸ばす方向に動かすことで開口操作力を及ぼす特許文献1のような構造に比して、手指を曲げる方向に動かすことで開口操作力を及ぼす本発明に係る経腸栄養バッグ10は、開口操作力をより自然な動作によって効率的に及ぼすことが可能となる。従って、特許文献1に開示された従来構造に比して、より大きな開口操作力を及ぼすことが可能であると共に、開口操作力をより精度よく調節することも容易になる。
【0089】
しかも、経腸栄養バッグ10に液状体を注ぎ入れる作業者は、開口操作力を開口部分12に対して外側から及ぼすことで、開口部分12の開口変形を容易に且つ安定して実現できる。それ故、作業者は、液状体に接し得る外側シート18,18および内側シート38,38の内面側に触れる必要がなく、液状体の汚染などを回避することができる。
【0090】
さらに、弾性部材46に対して開口操作力を持続的に及ぼすことで、開口部分12を開状態に保持することも容易である。経腸栄養バッグ10は、片手で把持することが可能であり、把持した手で開口操作力を及ぼして開口部分12を開口させることができると共に、開口操作力を持続的に及ぼすことで、経腸栄養バッグ10の開状態を維持することができる。このため、もう一方の手で液状体を収容領域24へ注入することができる。したがって、収容領域24へ液状体を入れる作業の従事者が1人でも、十分に高精度および高効率な作業が実施可能となる。
【0091】
また、弾性部材46は、差入口42から袋状部40に差し入れることで、開口部分12の外側シート18,18に対して簡単に取り付けることができる。
【0092】
さらに、袋状部40の周壁部の一部を構成する内側シート38が、袋状部40の周壁部の他の部分を構成する外側シート18よりも幅方向の外方へ延び出して、差入口42へ続く案内面44を構成している。そして、弾性部材46を内側シート38の案内面44に対して接触状態で摺動させることにより、弾性部材46が内側シート38に沿って差入口42へ案内される。これにより、弾性部材46を差入口42から袋状部40へ差し入れる作業が容易になる。なお、弾性部材46は、外側シート18における案内面44よりも幅方向の開放端32側に位置する部分の外面に沿って、案内面44まで案内され得る。
【0093】
また、一対のフラップ状部28,28の一方端に閉止端30が設けられて、他方端に開放端32が設けられており、開放端32側から一対のフラップ状部28,28を離隔させて開口部分12を拡開させることから、フラップ状部28,28の両端が封止されている場合に比較して、開口部分12を大きく拡開させることができる。これにより、液状体を収容領域24へ注入する作業者は、作業を容易に行うことが可能であり、作業者の精神的および労力的な負担が軽減され得る。
【0094】
特に、本実施形態では、一対のフラップ状部28,28の閉止端30側の端縁部分が傾斜案内部34とされており、一対のフラップ状部28,28の拡開時において、開口部分12の開口面積が液状体を注ぎ込む上端側に向けて次第に大きくなっている。これにより、収容領域24に対する液状体の注入口が大きくされており、液状体を零すことなく収容領域24へ容易に注ぎ入れることができる。
【0095】
ところで、作用部材の具体的な構造は、第1の実施形態の例示によって限定的に解釈されるものではない。以下に、別構造の作用部材の例を幾つか示す。以下の説明において、他の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0096】
図5には、本発明の第2の実施形態としての経腸栄養バッグ60の要部を示す。経腸栄養バッグ60は、袋状部40に作用部材としての弾性部材62が差し入れられた構造を有している。弾性部材62は、上下方向(
図5中の上下方向)で傾斜角度が変化する湾曲板形状とされており、外側シート18,18の幅方向(
図5中の紙面直交方向)に延びている。この弾性部材62は、袋状部40に挿入された状態において、外側シート18,18の外面側(
図5中の左右外側)に向けて凸となる向きで配設されている。なお、
図5では、理解を容易にするために、各部材の厚さが誇張されていると共に、弾性部材62の曲率が大きく示されている。
【0097】
このような本実施形態に従う構造とされた経腸栄養バッグ60の弾性部材62によれば、外側シート18の幅方向で作用する圧縮力が開口操作力として入力されると、中間部分において弾性部材62が折れ曲がるように弾性変形して、経腸栄養バッグ60の開口部分12に開き方向の変形が生ぜしめられる。これにより、経腸栄養バッグ60は、第1の実施形態の経腸栄養バッグ10と同様に、開口部分12を容易に開口させることができると共に、開口部分12の開口状態を安定して維持することができる。
【0098】
特に本実施形態の弾性部材62は、開口部分12の開き方向(
図5中の左右外側方向)に向けて凸となる湾曲断面形状を有していることから、弾性部材62が外側シート18の幅方向に作用する開口操作力によって圧縮される際に、変形方向が断面形状に基づいて開口部分12の開き方向に誘導される。要するに、本実施形態では、弾性部材62における開口部分12の開き方向への変形を補助する変形補助機構が、弾性部材62が外側シート18の外面側に凸となる湾曲断面形状をもって外側シート18の幅方向に延びる形状とされることによって構成されている。それ故、開口部分12の意図しない方向への変形や歪な変形などが防止されて、開口部分12を安定して開くことができる。
【0099】
また、弾性部材62は、湾曲断面形状を有していることにより、平板形状に比して高い変形剛性を有している。それ故、曲がり始めるまでは十分な形状安定性やそれに伴う抵抗力を有しているが、弾性部材の断面形状によって弾性部材の変形剛性を調節して、開口部分12の開き易さを調節することもできる。なお、弾性部材62の中間部分に上下方向の長さを部分的に小さくしたり、中間部分に肉抜穴を形成したり等することにより、弾性部材62を中間部分で曲がり易くして、弾性部材62が曲がり始めるまでに必要とされる開口操作力を小さく設定することもできる。
【0100】
しかも、開口操作力の作用に際して、開口部分12を開く中間部分での折れ曲がりに加えて、折れ曲がり部分における断面形状の変化を生じる。より具体的には、弾性部材62は、折れ曲がり部分において、曲率が小さくなるように断面形状が変化する。これにより、十分に大きな開口操作力によって弾性部材62を変形させると、変形部分における弾性部材62の剛性が、断面形状の変化によって小さくなる。その結果、弾性部材62の変形状態を開口部分12を開くために必要な力よりも小さな力で維持することが可能であり、開口部分12の開口状態を安定して維持することができる。
【0101】
図6には、本発明の第3の実施形態としての経腸栄養バッグを構成する作用部材としての弾性部材70を示す。弾性部材70は、表裏両側の外側シート(後述)に取り付けられる一対の挿入片72,72が、折返部74によって相互につながれた連続構造体とされている。
【0102】
挿入片72は、袋状部(後述)に差し入れられるなどして外側シートに取り付けられる部分であって、本実施形態では略平板形状とされている。挿入片72は、第1の実施形態の弾性部材46のような湾曲板形状であっても良いし、第2の実施形態の弾性部材62のような湾曲断面で延びる板状であっても良い。
【0103】
折返部74は、略半円筒形状とされており、両端部分が一対の挿入片72,72の基端部につながっている。折返部74は、厚さ方向に弾性変形可能とされていることから、弾性部材70は、折返部74の弾性変形によって、一対の挿入片72,72の相対的な傾斜角度を変化させることが可能とされている。一対の挿入片72,72は、外力が作用していない弾性部材70の初期形状において、折返部74と反対側の端部が相互に離隔していることが望ましい。より好適には、初期形状において、一対の挿入片72,72は全体が相互に離れて対向位置している。なお、一対の挿入片72,72の折返部74と反対側の端部が、初期形状において相互に当接していると共に、後述する袋状部への挿入によって相互に離れるようにしても良い。
【0104】
例えば、長手状の平板を長さ方向の一部で厚さ方向に折り返すように加工することで、一対の挿入片72,72と折返部74を一体的に備える弾性部材70を得ることができる。尤も、一対の挿入片72,72と折返部74を別体で形成して組み合わせることにより、弾性部材70を得るようにしても良い。
【0105】
そして、弾性部材70は、一対の挿入片72,72が
図7に示す経腸栄養バッグ80或いは
図8に示す経腸栄養バッグ90の袋状部40,40に差し入れられることにより、それら一対の挿入片72,72が外側シート18,18の幅方向に延びるように配されて、表裏の外側シート18,18に取り付けられている。
【0106】
弾性部材70は、一対の挿入片72,72が相互につながっていることから、一対の挿入片72,72を同時に挿入しようとすると、作業が難しくなるおそれがある。そこで、
図7に示す経腸栄養バッグ80の袋状部40,40は、表側の差入口42aと裏側の差入口42bが弾性部材70の差入方向で互いにずれた位置に設けられている。すなわち、
図7(a)に示す外側シート18の端縁部から表側の差入口42aまでの距離L1と、
図7(b)に示す外側シート18の端縁部から裏側の差入口42bまでの距離L2が、相互に異なっており、本実施形態ではL1<L2とされている。
【0107】
これにより、弾性部材70の一方の挿入片72を表側の差入口42aに差し入れた後、他方の挿入片72を裏側の差入口42bに差し入れることができる。それ故、一対の挿入片72,72を表裏の袋状部40,40へ入れ易くなって、弾性部材70の外側シート18,18への取付作業が容易になる。
【0108】
このような構造とされた弾性部材70を採用すれば、折返部74に入力される開口操作力が、一対の挿入片72,72にモーメントとして作用して、一対の挿入片72,72が各外側シート18の外面側に向けて凸となるように変形する。これにより、開口部分12が開状態とされる。このように、本実施形態の変形補助機構は、弾性部材70が一対の挿入片72,72を折返部74によって連続させた構造とされて、弾性部材70が一方の端部において折り返された連続構造体とされていることにより構成されている。
【0109】
図7では、分かり易さのために、弾性部材70の折返部74が袋状部40,40から露出して、外部から見えるように配されているが、弾性部材70を外部から見えにくいように設けても良い。これによれば、外部から見える部分の略全体を外側シート18,18で構成して、経腸栄養バッグ80の見栄えを良くすることができる。例えば、弾性部材70の差入口42a,42bを、外側シート18,18ではなく、外側シート18,18の内面側に重ね合わされる図示しない内側シートに形成することで、弾性部材70を外部から見えにくくすることが可能である。
【0110】
なお、例えば、外側シート18の端縁部から表側の差入口42aまでの距離と外側シート18の端縁部から裏側の差入口42bまでの距離が同じであっても、弾性部材70の一方の挿入片72と他方の挿入片72の長さを相互に異ならせることにより、一対の挿入片72,72を表裏の差入口42a,42bへ順に差し入れることができる。
【0111】
また、
図8に示す構造を採用すれば、弾性部材70の一対の挿入片72,72を表裏の差入口42a,42bに同時に差し入れ易くなる。
【0112】
すなわち、
図8(a)に示す経腸栄養バッグ90では、表側の差入口92aが、表側の外側シート18aに形成されていると共に、裏側の差入口92bが、裏側の外側シート18bではなく、裏側の外側シート18bに固着された裏側の内側シート38bに形成されている。これにより、表側の差入口92aと裏側の差入口92bが何れも経腸栄養バッグ90の正面側(
図8中の下側)の面に開口している。
【0113】
さらに、袋状部40の周壁部において、表側の内側シート38aが表側の外側シート18aの差入口92aよりも開放端32側(
図8中右側)まで延び出しており、表側の内側シート38aにおける表側の差入口92aよりも開放端32側の部分によって、第1案内面94が構成されている。また、袋状部40の周壁部において、裏側の外側シート18bが裏側の内側シート38bの差入口92bよりも開放端32側(
図8中右側)まで延び出しており、裏側の外側シート18bにおける裏側の差入口92bよりも開放端32側の部分によって、第2案内面96が構成されている。
【0114】
そして、弾性部材70の一対の挿入片72,72を表裏の差入口92a,92bに差し入れる際に、
図8(b)に示すように、一方の挿入片72を第1案内面94に押し付けながら、他方の挿入片72を第2案内面96に押し付けることが可能とされている。これにより、一方の挿入片72を第1案内面94に沿わせて表側の差入口92aに差し入れながら、他方の挿入片72を第2案内面96に沿わせて裏側の差入口92bに差し入れることができる。
【0115】
なお、第1,第2案内面94,96よりも開放端32側には、表側の外側シート18aの外面(
図8中の下面)によって第1挿入補助面98が構成されていると共に、裏側の内側シート38bの内面(
図8中の下面)によって第2挿入補助面99が構成されている。そして、弾性部材70の一方の挿入片72が第1挿入補助面98に接しながら摺動することで、第1案内面94へ案内されると共に、弾性部材70の他方の挿入片72が第2挿入補助面99に接しながら摺動することで、第2案内面96へ案内される。これにより、弾性部材70の一対の挿入片72,72を、差入口92a,92bへより差し入れ易くなっている。
【0116】
また、
図9に示す作用部材としての弾性部材100のように、折返部102の外側面を、開口操作力が入力される作用面としての押圧面104とすることもできる。弾性部材100は、弾性部材70と同様に、一対の挿入片72,72と、それら一対の挿入片72,72を一方の端部において相互につなぐ折返部102とを備えており、部分的に折り返されたトング状の連続構造体とされている。また、一対の挿入片72,72と折返部102の接続部分には、折れ線106が形成されている。この折れ線106は、必ずしも角状をなす屈折の稜線に限定されず、曲げの稜線であっても良い。
【0117】
弾性部材100の折返部102は、平板形状又は外側へ向けて凹となる湾曲断面形状とされている。これにより、折返部102には、平面乃至は凹面の押圧面104が、一対の挿入片72,72の延び出し方向と反対側に設けられている。このように折返部102に押圧面104を設けることにより、弾性部材100に手指で開口操作力を及ぼす際に、手指で面(押圧面104)を押すことによって、開口操作力を安定して及ぼすことができる。
【0118】
図9の弾性部材100では、一対の挿入片72,72が、外側に向けて凸となる湾曲断面形状を有していると共に、折返部102の押圧面104が凹状の湾曲断面形状を有している。要するに、本実施形態の弾性部材100は、折返部102の外面である押圧面104が、一対の挿入片72,72の厚さ方向の表面とは逆向きの湾曲断面形状とされている。このように、一対の挿入片72,72と折返部102が何れも湾曲断面形状とされており、且つ一対の挿入片72,72の湾曲方向と折返部102の湾曲方向が互いに逆向きとされていることにより、開口操作力の入力時に一対の挿入片72,72が厚さ方向外方へ向けて凸となるように変形し易い。それ故、一対の挿入片72,72の変形態様の安定化や、開口操作力の作用に対する折返部102の変形剛性の確保などが実現され得る。
【0119】
図10は、本発明の第4の実施形態としての経腸栄養バッグを構成する作用部材としての弾性部材110を示す。本実施形態の弾性部材110は、図示しない経腸栄養バッグの外側シートの幅方向で少なくとも一方の端部が、上方に向けて外側へ傾斜する上傾斜部114と、下方に向けて外側へ傾斜する下傾斜部116とを備えた括れ部118を有している。特に、上傾斜部114が下傾斜部116よりも上下方向で長くされていることが望ましい。
【0120】
より詳細には、弾性部材110の各挿入片112は、長手板状とされており、図示しない袋状部への収容状態で経腸栄養バッグの幅方向となる挿入片112の長さ方向の両端縁が、括れ形状とされている。挿入片112の長さ方向の端縁は、上側部分が、上方に向けて長さ方向外側へ傾斜する上傾斜部114とされている一方、下側部分が、下方に向けて長さ方向外側へ傾斜する下傾斜部116とされている。これにより、挿入片112の長さ方向の端縁には、上下方向で中央よりも下寄りに位置する上下傾斜部114,116の接続部分が最も凹んだ括れ部118が形成されている。
【0121】
そして、弾性部材110は、一対の挿入片112,112が前記第3の実施形態に示すような図示しない経腸栄養バッグの袋状部に差し入れられる(
図7参照)。使用者である作業者が、袋状部に差し入れられた一対の挿入片112,112に対して、挿入片112の長さ方向で圧縮側へ作用する開口操作力を加えることにより、一対の挿入片112,112が厚さ方向の外側へ撓むように変形し、重ね合わせ方向で互いに離隔することで、経腸栄養バッグの開口部分が一対の挿入片112,112によって開口方向へ押し広げられる。
【0122】
ここにおいて、経腸栄養バッグを開口させる作業者の人差指や中指又は親指は、一対の挿入片112,112の長さ方向両端部分に設けられた括れ部118に対して押し付けられることとなる。これら手指によるバッグ幅方向の挟持力が及ぼされる挿入片112,112の長さ寸法が、上傾斜部114によって上方に向かって長くされていることで湾曲変形時の円弧長が上方に向かって長くなる。その結果、栄養バッグの開口部分が上方に向けて開口面積が大きくなるテーパ状とされて、バッグ開口部をより大きく開口させ易くなる。なお、上傾斜部114に付された傾斜による指先の下方へのズレ移動も、下傾斜部116で抑えられることから、押圧する指先の弾性部材110の端縁からの外れも防止される。また、栄養剤の充填等でバッグ重量が増えても、上傾斜部114が手指に引っ掛かることで支え易い。
【0123】
本実施形態では、上傾斜部114と下傾斜部116がそれぞれ直線的に傾斜する形状とされているが、例えば、湾曲傾斜形状などであっても良い。また、上傾斜部114と下傾斜部116の各長さや相対的な長さの比などは限定されるものでない。下傾斜部116がなくても良いし、下傾斜部116に代えて、上傾斜部114の下端に突起を設けても良い。また、例えば、上傾斜部114と下傾斜部116の端部が鋭角に尖るのを防ぐために、角を湾曲形状としてもよい。
【0124】
図11は、本発明の第5の実施形態としての経腸栄養バッグ132(後述)を構成する作用部材としての弾性部材120を示す。本実施形態の弾性部材120は、一対の挿入片122,122を一端側において連結する折返部124を備えており、折返部124が上方に向かって幅広とされて、一対の挿入片122,122が延び出す両端縁が傾斜辺とされている。なお、
図11では、折返部124が、上下逆向きの略等脚台形の平板状とされているが、上辺部中央に開口する切欠を設けて全体を略V字形の平板状とすることもできるし、折返部124を三角形状としてもよい。
【0125】
より詳細には、本実施形態における折返部124は、上辺126が下辺128よりも長い逆向きの略等脚台形とされており、折返部124の幅方向両側の傾斜した対辺130,130からは、一対の挿入片122,122が略直角に延び出している。一対の挿入片122,122は、折返部124が位置する少なくとも基端側において、経腸栄養バッグ132が開口する上方に向かって相互に拡開するように傾斜している。なお、各挿入片122は、長さ方向の中央部分で捩じれ状とされて、先端部分が互いに平行に重なっていても良く、それによって、挿入片122の先端を経腸栄養バッグの後述する袋状部40に差し入れ易くできる。
【0126】
そして、弾性部材120は、
図12に示すように、経腸栄養バッグ132の袋状部40に差し入れられている。袋状部40は、チャック状封止部26の上方で近い位置に設けられており、チャック状封止部26に及ぼされる開口操作力(後述)が袋状部40に有効に伝達されるようになっている。本実施形態の経腸栄養バッグ132は、前記実施形態の貫通孔48を備えていないが、前記実施形態と同様の貫通孔48を適宜に設けることもできる。
【0127】
経腸栄養バッグ132は、チャック状封止部26の幅方向一方側に段差部134が形成されており、段差部134よりも下側が上側に比してバッグ幅方向外側に突出している。経腸栄養バッグ132は、チャック状封止部26の幅方向他方側に括れ部136が形成されている。括れ部136は、幅方向外側に向けて凹となる形状とされており、括れ部136の上側に幅方向外側へ突出する引掛部138が設けられていると共に、下側に幅方向外側へ突出する支持部140が設けられている。なお、以下の説明では、理解を容易にするために、外側シート及び内側シートの各溶着領域をグレーで着色して示す。更に、外側シート同士の溶着領域は、外側シートと内側シートの溶着領域よりも薄いグレーで着色した。また、構造の隠れ線を太い破線で示すと共に、溶着領域を細い破線で示す。
【0128】
本実施形態では、弾性部材120の折返部124が、一対のフラップ状部28,28の開放端32側に位置していると共に、一対の挿入片122,122の折返部124と反対側の自由端が、一対のフラップ状部28,28の閉止端30側に位置している。
【0129】
そして、
図13に示すように、作業者がチャック状封止部26の幅方向一方の端部に親指54を当てると共に、チャック状封止部26の幅方向他方の端部に人差指56を当てて、親指54と人差指56の間で開口操作力を入力する。チャック状封止部26で補強された部分に入力された開口操作力が袋状部の内周面を介して弾性部材120に伝達されて、弾性部材120が厚さ方向の開口側へ向けて凸となるように湾曲する。これにより、
図14に示すように、経腸栄養バッグ132の開口部分12が弾性部材120によって押し広げられる。なお、一方の指をチャック状封止部26に、他方の指を弾性部材120に当てて、開口操作力を入力してもよい。
【0130】
弾性部材120は、折返部124が板状とされていることから、開口操作力の作用によって折返部124が撓み変形することにより、一対の挿入片122,122の折返部124への接続側の端部が、開口方向に延び出すようになる。それ故、開口操作力によって開口部分12を効率的に大きく開口させることができる。
【0131】
折返部124が台形板状とされて、折返部124から延び出す一対の挿入片122,122が上方に向けて開口方向へ傾斜していることから、挿入片122,122がそれぞれ厚さ方向に撓み変形すると、開口部分12の開口形状が上方に向けて拡開する漏斗状のテーパ形状となる。これにより、開口部分12の上端部分の開口面積が大きく確保されると共に、栄養剤などを経腸栄養バッグ132に開口部分12を通じて入れ易くなる。
【0132】
また、チャック状封止部26の幅方向一方側に段差部134が形成されていることにより、親指54の位置を段差部134によって適切な位置に誘導し易くなって、親指54による開口操作力が所定の位置に加えられるように誘導させることができる。
【0133】
さらに、チャック状封止部26の幅方向一方側に括れ部136が設けられており、括れ部136において経腸栄養バッグ132の幅寸法が小さくなっている。これにより、作業者は、経腸栄養バッグ132を開く際に把持すべき位置を、形状から直感的に把握することができる。括れ部136の上側に設けられる引掛部138によって、栄養剤の充填された重い状態の経腸栄養バッグ132であっても、手指に引掛部138が上方から引っ掛かって、握力が比較的に小さくても経腸栄養バッグ132を支持することができる。特に、チャック状封止部26に開口操作力を及ぼして経腸栄養バッグ132を変形させた状態では、弾性部材120の挿入片122,122が人差指56の上側に位置することから、挿入片122,122が人差指56に引っ掛かることで、経腸栄養バッグ132の重量の分担がより効果的に実現される。括れ部136の下側に設けられる支持部140によって、人差指56の位置を経腸栄養バッグ132に対して適切な位置に位置決めし易くなる。それ故、人差指56から経腸栄養バッグ132に及ぼされる開口操作力を経腸栄養バッグ132の適切な位置に作用させることができる。
【0134】
また、弾性部材120の折返部124側の端部が袋状部40から突出していることから、弾性部材120が親指54に引っ掛かることによっても、経腸栄養バッグ132の重量が分担支持される。それ故、握力の小さい作業者であっても、経腸栄養バッグ132を安定して支持することができる。
【0135】
なお、本実施形態では、弾性部材120の折返部124が一対のフラップ状部28,28の開放端32側に位置していると共に、弾性部材120の自由端である挿入片122の折返部124と反対側の端部が、一対のフラップ状部28,28の閉止端30側に位置している。また、閉止端30は、上方に向かってバッグ幅方向外方に広がっている。これにより、
図14に示す開口状態で、バッグ幅方向一方の端部が開放端32で上方に向けて広げられると共に、バッグ幅方向他方の端部が傾斜した閉止端30で上方に向けて広げられて、全体として開口部分12が上方に向けて漏斗状に一層大きく広げられ得る。しかも、広げられた開放端32側の開放部分には、弾性部材120の折返部124が蓋をするように配置されることから、開放端32の外側や下方に位置して操作力を及ぼす手指に対して注入薬液等が直接に降りかかることも防止され得る。尤も、弾性部材120の折返部124を一対のフラップ状部28,28の閉止端30側に配置すると共に、弾性部材120の自由端を開放端32側に配置することもできる。これによれば、開口部分12を開く際に、一対のフラップ状部28,28の開放端32が相互に離れるように変位可能となる。これにより、開口部分12の開口面積を大きく得ることができる。なお、一対のフラップ状部28,28の幅方向の両端が開放端32とされていてもよい。
【0136】
しかも、弾性部材120の自由端を一対のフラップ状部28,28の開放端32側に位置させることにより、開口部分12を開く際に、挿入片122の自由端から長さ方向で離れた長さ方向の中央部分でモーメントが大きくなって曲がりやすくなる。それ故、バッグ幅方向の中央付近において開口方向に向けて凸となる湾曲が生じ易くなる結果、開放端32の拡開と相俟ってバッグ開口部分12が、略5角形状に広がって開口面積も大きく確保され得る。
【0137】
図15には、本発明の第6の実施形態としての経腸栄養バッグ150を示す。経腸栄養バッグ150は、外側シート18,18の一対のフラップ状部28,28に内側シート38が固着されて、外側シート18と内側シート38の間に形成される袋状部40に弾性部材70が差し入れられた構造を有している。なお、以下の説明では、内側シート同士の溶着領域を、外側シートと内側シートの溶着領域よりも薄く、且つ外側シート同士の溶着領域よりも濃いグレーで着色して示す。また、表裏の外側シートと表裏の内側シートの4枚のシートが溶着される部分を、他の溶着領域よりも濃いグレーで着色して示す。
【0138】
本実施形態の経腸栄養バッグは、表裏の内側シート38,38を重ね合わせる工程と、表裏の内側シート38,38の外面に弾性部材70を重ね合わせて配置する工程と、表裏の内側シート38,38に表裏の外側シート18を重ね合わせて固着することで、内側シート38と外側シート18の間に弾性部材70が配された袋状部40を形成する工程とを、有する製造工程によって得ることができる。
【0139】
すなわち、
図16に示すように、細長い矩形薄膜状の内側シート38,38を厚さ方向で相互に重ね合わせる。内側シート38,38は、開口部分12の幅方向両端部において相互に固着されていても良いし、相互に独立した状態で重ね合わされていても良い。
【0140】
次に、重ね合わされた内側シート38,38の外側面に弾性部材70の一対の挿入片72,72を重ね合わせて配置する。
図16では、一対の挿入片72,72が折返部74によって相互につながった構造の弾性部材70が例示されているが、前記第1の実施形態の弾性部材46の如き一方の挿入片72に相当する板型構造の弾性部材を採用することもできる。
【0141】
また次に、内側シート38,38に対して、外側シート18,18を表裏両側から内側シート38,38を挟み込むように重ね合わせて、表側の内側シート38の外周部分を表側の外側シート18に溶着すると共に、裏側の内側シート38の外周部分を裏側の外側シート18に溶着する。これにより、内側シート38,38と外側シート18,18の間に、袋状部40,40を弾性部材70の一対の挿入片72,72が挿入された状態で形成する(
図15参照)。
【0142】
さらに、表裏の外側シート18,18を相互に溶着して、
図15に示す袋本体22を形成する。これにより、袋本体22の開口部分12に弾性部材70が取り付けられた経腸栄養バッグ150を得る。
【0143】
このような製造方法を採用すれば、予め形成された袋状部40に弾性部材70の挿入片72を差し入れる作業が不要となって、製造が容易になる。袋状部40が密封状態とされる場合にも、弾性部材70を袋状部40に収容状態で配することができる。
【0144】
前記第6の実施形態では、表裏の内側シート38,38が細長い矩形シートとされていると共に、表裏の外側シート18,18が袋本体22を構成する構造とされていたが、例えば、
図17に示す経腸栄養バッグ160のように、表裏の内側シート162,162が袋本体22を構成する構造であっても、前記第6の実施形態と同様の製造方法を適用することができる。なお、
図17では、外側シート164,164と内側シート162,162の4枚のシートが溶着される部分を、他の溶着領域よりも濃いグレーで着色して示す。
【0145】
すなわち、本発明の第7の実施形態としての経腸栄養バッグ160は、表裏の内側シート162,162を重ね合わせて相互に固着することで袋本体22を形成する工程と、袋本体22の開口部分12における内側シート162,162の外側の面に弾性部材70を重ね合わせる工程と、内側シート162,162と弾性部材70の重ね合わせ部分を覆うように重ね合わされた外側シート164,164を内側シート162,162に固着して、弾性部材70が収容された袋状部40,40を形成する工程とを、有する製造方法によって得ることができる。
【0146】
より具体的には、
図17,18に示すように、本実施形態の表裏の内側シート162,162は、第1の実施形態の外側シート18,18と実質的に対応するものとされており、それら表裏の内側シート162,162の外周部分を相互に溶着することで、上側に開口部分12を備える袋本体22を形成する。
【0147】
次に、袋本体22の開口部分12に対して弾性部材70の一対の挿入片72,72が重ね合わされる。本実施形態においても、弾性部材70は、必ずしも折返部74を備えた一体構造に限定されない。
【0148】
また次に、細長い矩形シートである外側シート164,164を、袋本体22と弾性部材70を挟み込むように表裏両側から重ね合わせる。そして、外側シート164,164の外周部分を内側シート162,162に溶着することにより、弾性部材70が差し入れられた袋状部40を、相互に固着された内側シート162と外側シート164の間にそれぞれ形成する。このようであると、外部に弾性部材70が露出し難く、また、輸送時などに弾性部材70が外れてしまう事態を防止することができる。なお、弾性部材70を組み付ける前段階で内側シートと外側シートの一部を固定し、固定した部分と弾性部材70を当接させて位置決めした状態で内側シートと外側シートを固定し、弾性部材70を収容する収容部(袋状部)を形成してもよい。
【0149】
本実施形態では、外側シート164,164が内側シート162,162の幅方向一方側(
図17の左側)において、内側シート162,162よりも外側まで延びている。そして、内側シート162,162を外れた位置まで延びた外側シート164,164の端部は、相互に溶着されている。これにより、袋状部40が略密封状態で形成されており、弾性部材70が外部に露出することなく袋状部40に収容されている。
【0150】
このように、内側シート162,162によって袋本体22が構成される構造の経腸栄養バッグ160においても、弾性部材70を袋状部40の形成時に予め挿入状態で配置することができる。また、外部から隔てられた袋状部40の内部空間に対して、弾性部材70を収容することも可能となる。
【0151】
図19には、本発明の第8の実施形態としての経腸栄養バッグ170を示す。経腸栄養バッグ170は、外側シート18,18の一対のフラップ状部28,28に作用部材として弾性部材172がそれぞれ固着された構造を有している。なお、以下の説明では、外側シート18,18の溶着領域をグレーで着色して示す。
【0152】
弾性部材172は、樹脂や金属などで形成された細長いプレート状の部材であって、厚さ方向に撓み変形可能とされている。弾性部材172は、
図20に示すように、外側シート18,18の各外面173にそれぞれ固着されている。弾性部材172の外側シート18への固着方法は特に限定されず、例えば接着剤を用いて接着することも可能であるが、本実施形態では、弾性部材172が熱可塑性樹脂で形成されており、外側シート18に対して溶着によって固着されている。
【0153】
弾性部材172は、
図19に示すように、外側シート18の幅方向に直線的に延びており、チャック状封止部26よりも開口部分12の開口端174に近い位置に配置されている。開口端174は、開口部分12の上端であって、外側シート18,18の最上端によって構成されている。
【0154】
弾性部材172に対する外側シート18の幅方向の外側(
図19中の左側)に、閉止端30の傾斜案内部34が設けられている。本実施形態では、弾性部材172の一方の端部が傾斜案内部34に位置して傾斜形状とされている。弾性部材172は、傾斜案内部34から外側シート18の幅方向に延びている。弾性部材172は、一方の端部が傾斜案内部34上に位置していても良いし、傾斜案内部34から幅方向に離れて位置していても良い。
【0155】
外側シート18の幅方向他方の端部は、チャック状封止部26よりも開口端174に近い側に開放端32を備えている。弾性部材172の他方の端部は、開放端32に位置している。なお、開放端32よりも開口端174から遠い位置に配されたチャック状封止部26の幅方向の両側が固着部20とされている。それ故、チャック状封止部26の両端部分は、開き方向の変形が制限されている。
【0156】
このような本実施形態に従う構造の経腸栄養バッグ170によれば、弾性部材172に外側シート18,18の幅方向で力を加えることにより、収容領域24の開口部分12を安定して開き方向へ変形させることができる。
【0157】
すなわち、弾性部材172が上下方向において傾斜案内部34が設けられた位置に固着されていることから、開口部分12の開口端174を開かせる方向に弾性部材172が変形を誘導されて、開口部分12を漏斗状に大きく開口させ易くなっている。即ち、弾性部材172には、閉止端30の傾斜案内部34から伝達される開口操作力の分力として、外側シート18の幅方向の力に加えて、開口端174側への力が入力される。その結果、弾性部材172は、傾斜案内部34側の端部が開口端174側へ変位することで、開口端174に向かって凹となる曲げ変形を生じつつ、外側シート18の幅方向で圧縮される。これにより、開口部分12が開き方向への変形を誘導される。加えて、弾性部材172の一方の端部が傾斜形状であるため、傾斜形状に沿って外側シート18が変形するように誘導される。換言すれば、弾性部材172の端部から傾斜案内部34に対して、傾斜案内部34を押し広げる方向の力が及ぼされることにより、開口部分12が開口端174に向けて開口面積が大きくなる形状に変形する。特に、開口部分12が開口端174に向けて開口面積が大きくなる漏斗状に変形し易く、開いた開口部分12が液状体を入れ易い形状とされる。
【0158】
また、開口部分12に設けられたチャック状封止部26は、弾性部材172に開口操作力を及ぼす前に開いた状態とされる。即ち、例えばチャック状封止部26が予め開かれた状態で経腸栄養バッグ10が包装体175内に包装されている。これにより、使用時において、チャック状封止部26の分だけその近傍の表裏シート18,18が閉止端30より開き方向に位置し、表裏シート18,18が開き方向に開きやすい状態とされる。また、チャック状封止部26は、開口部分12において外側シート18,18を開き方向に引き離すことで大きく開いた状態とされるが、単に表裏のチャックを離しただけの開封状態とされたチャック状封止部26であっても、外側シート18の幅方向における中央では実質的に表裏が密着状態に維持される両端よりも大きく離れることで、開き方向に向けて凸の湾曲形状となる。これにより、開口部分12は、チャック状封止部26が単にチャックを離しただけの開封状態とされるだけでも、開き方向へ変形し易くなる形状とされる。それ故、チャック状封止部26が開いた状態で開口部分12へ開口操作力を及ぼすと、弾性部材172が開き方向へ変形し易い。
【0159】
本実施形態の変形補助機構は、(i)弾性部材172が閉止端30の傾斜案内部34から延びていることによって、換言すれば、外側シート18の幅方向において弾性部材172の外側に閉止端30の傾斜案内部34が設けられることによって、及び/又は、(ii)開口部分12にチャック状封止部26が設けられていることによって、構成されている。
【0160】
開口部分12における幅方向他方の端部が開放端32とされていることにより、開口部分12の開口端174における開口面積を更に大きくすることが可能となる。特に、外側シート18,18に固着された弾性部材172,172の他方の端部が、開放端32に位置していることから、弾性部材172,172の他方の端部が相互に離れる開き方向に変位可能とされている。それ故、弾性部材172,172の両端が閉止端30で拘束される場合に比べて、開口部分12の開口端174における開口面積を安定して大きくすることができる。
【0161】
なお、弾性部材172は、
図2,3の弾性部材46のように、外側シート18の幅方向で両端から中央に向けて開口部分12の開き方向に突出するように湾曲していても良い。これによれば、弾性部材172に外側シート18の幅方向で力が及ぼされる際に、弾性部材172の弾性変形が開口部分12の開き方向に誘導され易くなる。
【0162】
弾性部材172を湾曲形状とする場合には、予め湾曲した弾性部材172を外側シート18に固着しても良いが、外側シート18の開口部分12に固着した弾性部材172を、プレス加工によって湾曲させることもできる。
【0163】
具体的には、
図21に示すように、外側シート18,18の外面173に弾性部材172,172が固着された経腸栄養バッグ170の開口部分12に対して、凸プレス型176が差し入れられる。差し入れられた凸プレス型176と対応する位置には、凹プレス型178,178が開口部分12の開き方向の両側に配置される。そして、弾性部材172を備える開口部分12が、凸プレス型176と凹プレス型178,178の間でプレス加工される。これにより、開口部分12に設けられた弾性部材172が、プレス加工によって、凸プレス型176と凹プレス型178,178のプレス面に対応する湾曲形状に癖付けされる。
【0164】
好適には、凸プレス型176と凹プレス型178,178を所定の温度に加熱しておくなどして、癖付けされるべき弾性部材172を備えた開口部分12が、プレス加工時に加熱される。これにより、熱可塑性樹脂製の弾性部材172が、熱によって軟化された状態でプレス加工されて効率的に変形する。そして、開口部分12に設けられた弾性部材172が、プレス加工に際して、加熱後に冷却されることにより、開き方向の外方へ凸となる形状に癖付けされる。このような加熱プレス処理によって、弾性部材172が開口部分12の開き方向の外側へ凸となる形状により効率的に癖付けされる。尤も、加熱しながらプレス加工を行う加熱プレス処理は必須ではなく、プレス加工だけによって弾性部材172に癖付けを行うこともできる。なお、開口部分12に設けられた弾性部材172に癖付けを行うことから、外側シート18,18で構成された開口部分12が弾性部材172と共に癖付けされても良い。
【0165】
図22には、本発明の第9の実施形態としての経腸栄養バッグ180を示す。経腸栄養バッグ180は、外側シート18,18の開口部分12に作用部材として弾性部材182がそれぞれ固着された構造を有している。
【0166】
本実施形態において、外側シート18,18は、外周部分が上部においてのみ開放された袋状に溶着されている。要するに、経腸栄養バッグ180は、一対のフラップ状部28,28の幅方向の両端部分が相互に溶着された閉止端30,30とされており、開放端32が設けられていない。外側シート18,18の上部に設けられる開口部分12は、幅方向の両側がそれぞれ傾斜案内部34とされることによって、上方に向けて幅方向寸法が次第に大きくなっている。即ち、開口部分12において、傾斜案内部34の最も下部が幅方向寸法が小さくされた幅狭部184とされていると共に、当該幅狭部184よりも上方の部分が幅狭部184よりも幅方向寸法の大きくされた幅広部186とされている。
【0167】
そして、開口部分12において傾斜案内部34,34を下側へ外れた位置には、チャック状封止部26が幅方向に延びて設けられている。なお、本実施形態では、傾斜案内部34よりも下方には、幅狭部184と略等しい幅方向寸法をもって上下方向に延びる部分が設けられており、幅狭部184がある程度の上下方向寸法をもって形成されている。この幅狭部184にチャック状封止部26が設けられている。また、開口部分12においてチャック状封止部26よりも開口部分12の開口端174に近い上側には、即ち幅広部186には、弾性部材182が設けられている。弾性部材182は、傾斜案内部34,34の間で外側シート18の幅方向に延びている。弾性部材182の両端は、傾斜案内部34,34に近接する位置又は達する位置にまで延びている。開操作部分に幅狭部184を設定したことにより、たとえ指が短い使用者であっても良好な開口操作性を得ることが可能となる。また、幅狭部184よりも開口側に幅広部186を設けたことにより、幅狭部184による良好な開口操作性を確保しつつ、開口端174において大きな開口面積を確保することが可能になり、使用者による経腸栄養バッグ180への液体充填操作性の向上も達成され得る。更に、幅広部186における幅方向外側は開口方向への操作力が比較的に伝わりにくい部分であるが、予め幅広部186が開方向に開かれていることにより要求される操作力の軽減が図られて、少ない力で幅広部186を大きく開口することが可能となる。なお、弾性部材182は、初期状態で、開口部分12の開き方向へ湾曲した形状であることが好ましい。
【0168】
また、収容領域24の幅寸法は、経腸栄養バッグ180の上下方向の上側部分で狭くなっており、この狭くなっているネック状の部分(開口部分12)において、チャック状封止部26が設けられている。そして、狭くなっている開口部分12の上方には、ネック状の部分よりも幅寸法の広がったフラップ状部28が設けられており、このフラップ状部28において、チャック状封止部26よりも幅寸法(
図22中の左右方向寸法)の大きい弾性部材182が設けられている。
【0169】
なお、開口部分12よりフラップ状部28が幅広となっていれば良く、図示の如き上方に向かって直線的に傾斜した傾斜案内部34に限定されることなく、例えば開口部分12とフラップ状部28との境界で急激に段差状に幅寸法が広がっていたり、上方の開口端174に向かって階段状に多段階に幅寸法が広がっていたり、傾斜案内部34の傾斜角度が湾曲線や屈曲線をもって変化する態様であったりしても良い。また、傾斜案内部34を設けずにL字状の閉止端とされることで、開口端174の幅寸法が、フラップ状部28よりも下側に位置する開口部分12の幅寸法に比して大きくされていてもよい。特にフラップ状部28を開口端174に向けて大きく広がるフレア状に開口させるには、フラップ状部28の上下方向の寸法が2cm以上であり、開口端174の幅方向の寸法が開口部分12の幅寸法に比して2cm以上大きいことが望ましい。また、開口端174の幅方向両端が開口部分12の幅方向両端よりも幅方向外方に位置していることが望ましい。特に、開放端32がない形態において、幅方向側方を内側に押圧して開口させる場合には、開口端174の幅方向両端が開口部分12の幅方向両端よりも幅方向外方に位置していることが好適である。例えば、開口部分12が閉じた状態において、開口端174の幅方向一方の端部と開口部分12の幅方向一方の端部とが幅方向で同じ位置にあると、開口部分12が開くことで、開口端174の幅方向一方の端部が、開口部分12の幅方向一方の端部より内側に位置して、開口端174の開口面積が小さくなってしまう場合がある。
【0170】
なお、
図22に示された実施形態では、フラップ状部28の上下方向において、中央よりも下側に弾性部材182が配されているが、弾性部材182の配置位置は限定されるものでなく、フラップ状部28の開口端174に近い位置に弾性部材182を配することも可能である。また、フラップ状部28の上下方向で並んで複数の弾性部材を配しても良いし、外側シートの幅方向において厚さ寸法及び/又は上下方向寸法が変化するような弾性部材を採用することも可能である。
【0171】
また、本実施形態では、経腸栄養バッグ180の上端部分に幅狭部184が設けられており、換言すれば、固着部20の幅方向寸法が幅狭部184の左右両側で大きくされている。そして、この固着部20において幅方向寸法が大きくされた部分に貫通孔48が設けられている。即ち、幅狭部184の幅方向外側に手指が差し入れられる貫通孔48が設けられており、手指を相互に近づける方向に移動させて外側シート18の幅方向両縁部を相互に接近する方向に押圧することで開口操作力が及ぼされることから、貫通孔48により開口操作力が及ぼされる押圧部分が構成されている。
【0172】
このような本実施形態に従う構造とされた経腸栄養バッグ180によれば、弾性部材182の両端部が外側シート18,18同士が溶着された閉止部分に近接位置していることから、弾性部材182の変形に対する開口部分12の開口形状の安定化が図られ得る。また、弾性部材182の両端が両側の傾斜案内部34,34に位置している。これにより、開口端174の開口面積がより大きく確保されるように開口部分12が漏斗状に開くことから、液状体を開口部分12を通じて収容領域24に注ぎ入れ易くなる。
【0173】
また、作業者は、収容領域24の幅寸法が小さくされたネック状の開口部分12を片手で把持することが多く、開口部分12を持って開口状態に保持する操作外力は、チャック状封止部26に及ぼされることとなる。このような状況では、フラップ状部28の幅寸法が、チャック状封止部26の配された開口部分12よりも上方に向けて大きく広がっていても、フラップ状部28においてチャック状封止部26と上下方向で重ならない部分(チャック状封止部26よりも幅方向両側に広がる部分)に対しては、チャック状封止部26に及ぼされる開口力が伝達され難い。しかし、本実施形態のフラップ状部28では、チャック状封止部26と上下方向で重ならない部分にまで両端が延びる大きさで、弾性部材182が位置していることにより、当該部分にも開口力を伝達することができ、開口端174の開口面積がより大きく確保される。
【0174】
すなわち、例えば、開口部分12に設けられたチャック状封止部26しかない場合では、いくら上方に幅広のフラップ状部28を設けたとしても、作業者の把持等で及ぼされる力が巧く伝達され難いために、チャック状封止部26と略同じ幅の筒状にしか開口し難く、フラップ状部28が上方に向かって広がった漏斗形状には開口し難い。これに対して、本実施形態のように開口部分12より幅方向の長さが長い開口端174を有するフラップ状部28において、開口部分12よりもシート幅方向に延びる弾性部材182を採用することにより、チャック状封止部26の配された開口部分12に及ぼされる操作力が、チャック状封止部26の幅寸法に限定されることなく、弾性部材182の幅寸法の全体に亘って一対の外側シート18,18を離してフラップ状部28を大きく広げる力として及ぼされ得ることとなる。このことは、例えば、チャック状封止部26に及ぼされる開口操作力が、弾性部材182に対して、チャック状封止部26の各一方の端部から弾性部材182の各一方の端部に向けて直線的に広がるように伝達されるような態様として把握され得る。或いは、例えば、チャック状封止部26に及ぼされる開口操作力が、チャック状封止部26の幅で上方に伝達されるものの、かかる力を受けた弾性部材182によって、該弾性部材182の幅方向の全体に亘って分散されることで、幅方向の広い領域に開口操作力が及ぼされるような態様として把握され得る。或いは、例えば、外側シート18に及ぼされる開口操作力が、開口部分12の幅で上方に伝達されるものの、かかる力を受けた弾性部材182によって、該弾性部材182の幅方向の全体に亘って分散されることで、幅方向の広い領域に開口操作力が及ぼされるような態様として把握され得る。或いは、例えば、弾性部材182に及ぼされる開口操作力が、該弾性部材182の幅方向の全体に亘って分散されることで、幅方向の広い領域に開口操作力が及ぼされるような態様として把握され得る。何れにしても、開口端174よりも幅方向の長さが短い開口部分12の上方に位置して且つ開口部分12よりも大きな幅方向寸法をもって弾性部材182が設けられていることにより、開口部分12よりも幅方向寸法が広げられたフラップ状部28の開口端174において、幅方向の両側部分における外側シート18,18間が開く方向に誘導されて、開口端174を開口部分12より大きく開くことができるため、開口端174に向かってフレア状に広がるように開口させることができ、上方から見た場合に開口面積が大きいように見せることができる。
【0175】
特に、弾性部材182を開口部分12の開き方向へ湾曲した初期形状とすることで、開口操作時に弾性部材182が開口部分12の開き方向へ変形し易く、開口部分12が大きく開かれ得る。これにより、押圧部分(本実施形態では貫通孔48)及びその内側に設けられるチャック状封止部26と弾性部材182とを上下方向である程度離隔して設けることも可能となり、弾性部材182を開口端174付近に設けることも可能となる。
【0176】
なお、作用部材の例示的な別態様として、例えば、
図23に示すような弾性部材190を作用部材として採用することもできる。弾性部材190は、図示しないシートの幅方向(
図23中の左右方向)が長手とされた略矩形板状とされている。弾性部材190は、内面192が略平面とされて図示しないシートの外面に固着されると共に、外面194には複数の切込み196が設けられている。
【0177】
切込み196は、
図23に示す上下方向に延びている。本実施形態では、切込み196は、弾性部材190における上下方向の全長に亘って連続している。切込み196は、直線的に延びている。切込み196は、弾性部材190を厚さ方向に貫通することなく、外面194から厚さ方向の途中までの深さで形成されている。切込み196は、好適には、幅寸法が実質的に0とされて、弾性部材190の初期形状において切込み196の幅方向の内面が相互に密着している。
【0178】
このような構造とされた弾性部材190は、シートの幅方向に開口操作力が及ぼされると、各切込み196が開くことで、図示しない開口部分の開き方向である外面194側に凸となる形状に変形する。これにより、弾性部材190が取り付けられたシートの開口部分が、開き方向に変形する。弾性部材190は、切込み196が開くことで開口操作力に対する変形方向が誘導されており、弾性部材190の外面194に切込み196が設けられることによって、本実施形態の変形補助機構が構成されている。
【0179】
なお、切込み196の数や配置は特に限定されない。例えば、シートの幅方向で弾性部材190の中央に1つの切込み196だけが形成されても、弾性部材190の変形方向を誘導する効果が発揮される。切込み196の断面形状は、弾性部材190の変形方向を規定するために、弾性部材190の初期形状において切込み196の幅方向内面が相互に接触した線状であることが望ましい。尤も、切込み196は、例えば幅方向内面が相互に離隔した溝状などであっても良い。
【0180】
また、切込み196を外面側に備える作用部材は、弾性部材190のような板形状に限定されず、例えば棒形状や筒形状などの別形状とされ得る。また、切込み196を外面側に備える作用部材として、切込み196を外面側に備えるチャック状封止部を採用することもできる。
【0181】
また、作用部材は、例えば、シートの幅方向で隣接して並べられた複数の分割体によっても構成され得る。これによれば、開口操作力がシートの幅方向で作用部材に入力されると、隣り合う分割体間の隙間が開くことで上記の切込み196と同様に機能して、作用部材の開き方向への変形が補助される。即ち、隣り合う分割体の内面側は固着されたシートによる例えば隣り合う分割体同士が当接した状態で拘束されて実質的につながった状態とされることによって、外面側から所定深さの切込み196が入れられた上記の弾性部材190と略同様に機能し得る。なお、隣り合う分割体は、開口操作力の作用しない静置状態において、当接状態で並んでいても良いし、相互に離れて並んでいても良いが、作用部材の開き方向と反対側への変形を規制できる程度に近接して配置される。
【0182】
また、
図24に示すような弾性部材200を作用部材として採用することもできる。弾性部材200は、内面202が平面とされていると共に、外面204が凸形湾曲面とされている。これにより、弾性部材200は、外側シート18の幅方向となる
図24中の左右方向の両側から中央に向かって、厚さ寸法(
図24中、上下方向の寸法)が外面204側に大きくされている。本実施形態では、弾性部材200の厚さ寸法の変化率が、外側シート18の幅方向で徐々に変化しており、弾性部材200の外面204が湾曲面とされている。
【0183】
弾性部材200は、内面202が外側シート18の外面173に固着されている。外面173からの突出高さである弾性部材200の厚さ寸法は、外側シート18の幅方向の両側から中央に向けて、弾性部材200が固着される外側シート18の外面173側(
図24中の上側)に向けて大きくされている。なお、外側シート18の外面173側とは、外側シート18において開口部分12の開き方向となる外側シート18の厚さ方向の中央から外面173に向かう方向であって、必ずしも外側シート18の外面173に接近する方向を意味しない。
【0184】
弾性部材200の厚さ寸法が、外側シート18の幅方向の両側から中央に向けて、外側シート18の外面173側へ大きくされていることにより、
図24に一点鎖線で示す中心軸Lが、外側シート18の外面173側に向かって凸とされている。本実施形態では、弾性部材200の厚さ寸法の変化率が、外側シート18の幅方向で中央に向けて次第に小さくなっていることから、中心軸Lは外側シート18の外面173側に向かって凸の湾曲形状とされている。なお、弾性部材200の中心軸Lは、外側シート18の幅方向に対して直交する弾性部材200の各断面における中立軸の中央をつないだものである。
【0185】
このように、弾性部材200の中心軸Lが外側シート18の外面173側に向けて凸となる形状であることから、弾性部材200の両端に幅方向で内向きの開口操作力が及ぼされると、弾性部材200が外側シート18の外面173側へ突出するように湾曲変形する。これにより、弾性部材200が固着された外側シート18の開口部分12は、開き方向の外側である
図24中の上側に向けて変形する。
【0186】
なお、片方の外側シート18及び弾性部材200のみを図中に示して説明したが、表裏2枚の外側シート18が重ね合わされて外周部分を適宜に溶着されることによって袋状とされており、各外側シート18の外面173にそれぞれ弾性部材200が固着されている。そして、開口操作力によって各弾性部材200が変形して、各外側シート18が開き方向へ変形することにより、開口部分12の開口面積が確保される。
【0187】
厚さ寸法がシート幅方向の両側から中央に向けて大きくなる作用部材の例として、外面204が湾曲面とされた弾性部材200を示したが、作用部材の外面は、必ずしも湾曲面に限定されない。例えば、作用部材の外面は、複数の平面を組み合わせた多角面状であっても良いし、平面と湾曲面を組み合わせた構造も採用され得る。また、作用部材の厚さ寸法は、シート幅方向の全体に亘って変化している必要はなく、全体として幅方向両側から中央に向けて厚肉になっていれば、部分的に厚さが一定の部分を有していても良い。また、作用部材の内面は、弾性部材200の内面202のような平面であることが望ましいが、凹状や凸状とされ得る。なお、厚さ寸法がシート幅方向の両側から中央に向けて大きくなる作用部材として、厚さ寸法がシート幅方向の両側から中央に向けて大きくなるチャック状封止部を採用しても良い。
【0188】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、作用部材の形状は特に限定されない。例えば、
図6では一対の挿入片72,72の一端だけが折返部74によって連続した構造の弾性部材70を作用部材として例示したが、作用部材は、一対の挿入片72,72の両端がそれぞれ折返部74でつながれた環状の連続構造体であっても良い。なお、作用部材が環状の連続構造体である場合には、外力の作用しない作用部材の初期形状において、一対の挿入片72,72の中間部分が相互に離れた形状であることが望ましい。
【0189】
作用部材は、一定の断面形状で延びるものに限定されず、断面形状が部分的に或いは全体的に変化していても良い。具体的には、例えば、部分的に上下方向の寸法が小さく或いは大きくされていても良いし、
図5に示すような湾曲断面形状を有する弾性部材において、部分的に非湾曲断面形状の部分、即ち平板状の部分が設けられていても良い。このように弾性部材の断面形状を部分的に変化させることにより、開口操作力の作用状態における弾性部材の湾曲形態を制御することも可能となる。
【0190】
前記実施形態では、作用部材として、変形に対する弾性的な復元力を発揮する弾性部材を例示したが、作用部材は弾性部材に限定されるものではなく、弾性を持たない部材であっても良い。また、作用部材が弾性部材で構成される場合に、必ずしも形成材料が弾性材料である必要はなく、例えば形状によって弾性を有するようにもできる。
【0191】
弾性部材46は、必ずしも袋状部40に差し入れられることで外側シート18に取り付けられる構造に限定されず、例えば、外側シート18に接着などの手段で固着されるなどして取り付けられ得る。この場合には、袋状部40が不要であることから、内側シート38を設ける必要はなく、外側シート18の外面と内面の少なくとも一方に対して、弾性部材46が直接固着され得る。
【0192】
前記実施形態では、収容部として、外側シート18の幅方向で一方の端部が開口しているとともに他方の端部が封止された袋状部40を例示したが、収容部は、袋状の構造に限定されない。具体的には、例えば、外側シート18の幅方向で両方の端部が開口した筒状部によって、収容部を構成することもできる。また、収容部の開口は、必ずしも外側シート18の幅方向の端部に形成されるものに限定されず、例えば、収容部の開口が上側に設けられて、作用部材が当該開口を通じて上側から差し入れられるようになっていても良い。また、収容部の周壁は、必ずしも全体に亘って連続的に設けられた筒状に限定されず、例えば、外側シート18と内側シート38が、固着部36において、外側シート18の幅方向の複数箇所で部分的に固着されていても良い。
【0193】
また、収容部は、必ずしも2枚のシートを重ね合わせて固着することで形成されるものに限定されない。具体的には、例えば、収容部は、1枚のシートを筒状に丸めたり、折り返して両端部を固着することで形成しても良い。収容部は、外側シート18に一体形成されていても良いし、別体で形成した収容部を袋本体22の上端部分に固着しても良い。
【0194】
また、前記実施形態の収容部は、略一定の断面形状で外側シート18の幅方向に延びた袋状部40とされていたが、収容部は、外側シート18の幅方向において断面形状が全体的に或いは部分的に変化していても良い。具体的には、例えば、収容部は、差入口42に向けて上下方向の寸法が徐々に大きくなっていても良い。これによれば、差入口42において大きな開口寸法を確保して、弾性部材46を挿入し易くなると共に、差入口42から離れた上下寸法の小さい部分では、弾性部材46が上下方向で位置決めされる。
【0195】
貫通孔48は、例えば、親指以外の4本の指を差し入れることが可能な長孔とされていても良い。また、前記実施形態の貫通孔48は、開口部分12を開口させる際に手指を差し入れるための手指の挿入孔と、液状体を患者の体内へ送入する際にスタンドの吊下フックに引っ掛けるための掛止孔とを兼ねているが、何れか一方の用途でのみ使用される貫通孔を設けることも可能である。この場合には、手指の挿入孔と掛止孔とを独立してそれぞれ設けても良い。なお、液状体の注入時に経腸栄養バッグ10を支えるために手指を挿入する挿入孔は、開口部分12を開きながら手指を挿入可能な位置に設けられていれば良く、例えば、外側シート18の上端部に突片を設けて、その突片に挿入孔を形成することもできる。
【0196】
手指の挿入孔を外側シート18における弾性部材46の取付部分の幅方向両側に形成して、それぞれに手指を差し入れた状態で開口操作力を及ぼすようにしても良い。具体的には、例えば、外側シート18の幅方向一方側に親指を挿入する手指の挿入孔を設けると共に、他方側に他の4指を挿入する長孔状の手指の挿入孔を設けることにより、経腸栄養バッグ10の開口部分12を把持し易くなる。これにより、液状体を収容して重くなった経腸栄養バッグ10をより支持し易くなると共に、開口操作力を弾性部材46に近い位置から作用させて、弾性部材46を効率的に変形させることもできる。
【0197】
さらに、例えば、弾性部材46が配される部分よりも下側において、幅方向寸法が部分的に小さくされた外側シート18,18を採用すれば、作業者が経腸栄養バッグを把持し易くなると共に、幅寸法の大きな部分が手に引っ掛かることで経腸栄養バッグを支持し易くなる。しかも、例えば、経腸栄養バッグの幅狭部分を手の全体で掴みながら、親指と人差指によって開口部分12に開口操作力を及ぼすことも可能になる。
【0198】
液状体を収容した経腸栄養バッグ10を作業者が手で支持し易くするための手指の挿入孔は、必ずしも外側シート18を貫通して形成される前記実施形態の貫通孔48のごとき態様に限定されず、外側シート18の幅方向外側に帯状体を固着することで、外側シート18と帯状体の間に手指の挿入孔を形成することもできる。また、単に幅方向内側に切り欠いたり、スリットを設けたりすることで、手による支持部分を形成することもできる。
【0199】
好適には、経腸栄養バッグ10の開口部分12のシート幅方向の両側に開口操作力の作用部分が設けられていると共に、それら開口操作力の作用部分の幅方向間には、閉止端30において傾斜形状とされた部分(以下、傾斜部分)である傾斜案内部34が位置している。換言すれば、閉止端30の傾斜部分である傾斜案内部34に対してシート幅方向の外側に開口操作力の作用部分が設けられている。これにより、開口部分12のシート幅方向両側から幅方向内側に向けて押圧することで開口操作力を及ぼす際に、開口操作力の作用方向の延長線上に傾斜案内部34が位置する。そして、傾斜案内部34に及ぼされた開口操作力の分力と、傾斜案内部34の傾斜形状に基づく案内作用とによって、開口部分12がフレア状に開口し易くなる。なお、例えば、
図22の経腸栄養バッグ180では、貫通孔48,48が開口操作力の作用部分であり、それら貫通孔48,48のシート幅方向間に、閉止端30,30の傾斜部分である傾斜案内部34,34が位置している。尤も、開口部分12の一方の端部が開放端32とされている場合にも、他方の端部である閉止端30の傾斜部分を開口操作力の作用部分の間に位置させることで、同様の効果を得ることができる。
【0200】
また、例えば、外側シート18の外面に両端部を固着された帯状体を設けて、外側シート18の幅方向に延びる支持孔を外側シート18と帯状体の間に形成しても良い。そして、作業者は、当該支持孔に手を通した状態で経腸栄養バッグ10を支持することにより、経腸栄養バッグ10を帯状体で支持しながら、開口部分12に開口操作力を及ぼすことができる。
【0201】
チャック状封止部26は、必須ではなく、例えば、液状体の漏れなどが生じない場合に省略することもできる。また、弾性部材46をチャック状封止部26よりも下側(収容領域24側)に設けることも可能であるが、好適には、弾性部材46は、チャック状封止部26よりも上側に設けられる。
【0202】
また、
図5に示された弾性部材62は断面湾曲形状とされていたが、中央部分で屈曲された山形断面形状等であっても略同様な効果が発揮される。更にまた、
図9に示された弾性部材100は、折返部102が2本の折れ線106,106を有しており、それら2本の折れ線106,106の間に開口操作力の作用面である押圧面104が形成されていたが、例えば3本以上の折れ線をもって折返部102が形成されていても良い。
【0203】
前記各実施形態において説明した構造は、適宜に組み合わせて採用することもできる。
また、本発明は、もともと以下(i)~(xiv)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 表裏両側のシートの重ね合わせ面間に、開口部分を上部に有する液状体の収容領域が形成された経腸栄養バッグにおいて、前記収容領域の前記開口部分には、表裏両側の前記シートの少なくとも一方において該シートの幅方向に延びる作用部材が取り付けられていると共に、該開口部分における該シートの幅方向両縁部を互いに接近させる方向へ押圧する開口操作力の作用に際して、該作用部材における該開口部分の開き方向への変形を補助する変形補助機構が設けられている経腸栄養バッグ、
(ii) 前記収容領域の前記開口部分には、表裏両側の前記シートの両方において該シートの幅方向に延びる前記作用部材が取り付けられていると共に、前記変形補助機構が、該作用部材が該シートの幅方向の少なくとも一方の端部において折り返された連続構造体とされることによって構成されている(i)に記載の経腸栄養バッグ、
(iii) 前記連続構造体からなる前記作用部材において、前記折り返された端部が、複数の折れ線を有する折返し構造とされている(ii)に記載の経腸栄養バッグ、
(iv) 前記作用部材が前記シートに沿って延びるプレート形状とされていると共に、前記折返し構造が2本の折れ線を有しており、該2本の折れ線の間において、前記開口操作力の作用面が設けられている(iii)に記載の経腸栄養バッグ、
(v) 前記変形補助機構が、前記作用部材が前記シートの外面側に凸となるように湾曲又は屈曲した断面形状をもって該シートの幅方向に延びる形状とされることによって構成されている(i)~(iv)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(vi) 前記変形補助機構が、前記シートの幅方向において前記作用部材が前記開口部分の開き方向へ湾曲した初期形状とされることによって構成されている(i)~(v)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(vii) 前記作用部材が前記シートの幅方向において前記開口部分の開き方向へ湾曲した状態で包装体に収容されて包装されている(vi)に記載の経腸栄養バッグ、
(viii) 前記開口部分が幅寸法の大きい幅広部と幅寸法の小さい幅狭部とを有しており、該幅狭部の幅方向外側に前記開口操作力が及ぼされる押圧部分が設けられていると共に、該幅広部に前記作用部材が設けられている(vi)又は(vii)に記載の経腸栄養バッグ、
(ix) 前記変形補助機構が、前記作用部材の外面に対して上下方向に延びる切込みが設けられていることによって構成されている(i)~(viii)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(x) 前記変形補助機構が、前記シートの幅方向の両側から中央に向かって前記作用部材の厚さ寸法が該シートの外面側へ大きくされて、該シートの幅方向に延びる該作用部材の中心軸が該シートの外面側に凸となる形状とされている(i)~(ix)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(xi) 前記変形補助機構が、前記収容領域の前記開口部分における前記シートの幅方向の少なくとも一方の端縁部において、表裏両側の該シートが互いに重ね合わせ状態で固定されずに開放端とされていることによって構成されている(i)~(x)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(xii) 前記シートには該シートの幅方向に延びる収容部が設けられており、該収容部へ前記作用部材が収容されることで、該作用部材が該シートに取り付けられている一方、該収容部における該シートの幅方向一方の側には差入口が設けられていると共に、該収容部の周壁部が該差入口の周方向で部分的に外方に延び出して、該収容部に差し入れられる前記作用部材の先端を該差入口へ案内する案内面が設けられている(i)~(xi)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(xiii) 前記開口部分を開閉可能とするチャック状封止部が設けられており、該チャック状封止部よりも該開口部分の開口端に近い側は、前記シートの幅方向少なくとも一方の端部において表裏両側の該シートが互いに重ね合わせ状態で固定された閉止端とされて、該閉止端が傾斜形状とされることで該開口部分の開口幅寸法が該開口端側に向かって大きくなっており、傾斜形状とされた該閉止端が前記作用部材に対して該シートの幅方向の外側に設けられている(i)~(xii)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(xiv) (v)に記載の経腸栄養バッグを製造するに際して、前記開口部分に取り付けられた前記作用部材に対してプレス加工によって該開口部分の開き方向の外方に凸となる癖付けを行う経腸栄養バッグの製造方法、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、手指による掴む方向の力を利用して、変形補助機構で変形方向を外方に向けた作用部材を変形させることで、開口部分を容易に開口させることができると共に、開口状態を安定した形状で保つことが可能になる。即ち、開くよりも閉じる方が格段に大きな力を発揮する手指による掴む力を利用することで、作用部材で剛性を高めて変形の形状を安定化させた開口部分を容易に且つ安定した開口形状をもって開き且つ保持することができる。それ故、栄養液や薬液などの液状体を、開口部分を通じて収容領域へ入れ易く、且つ、液状体の重量が大きくなっても、開口部分が意図せずに変形したり閉じてしまうなどの不具合を防ぐことができる。
上記(ii)に記載の発明では、表裏のシートに取り付けられた作用部材が少なくとも一端において相互につながっていることから、作用部材の両端部間に対して幅方向内向きの開口操作力が入力されると、作用部材のシートに取り付けられた部分には、開口部分の開き方向に向けて凸となるような変形を導くモーメントが作用する。それ故、表裏のシートの両方に対して折り返された作用部材が取り付けられていることにより、開口操作力が作用する際に、作用部材が開口部分の開き方向へ変形して、開口部分を安定して開口させる。
上記(iii)に記載の発明では、折れ線の間に開口操作力の作用部を設けることが可能となり、開口操作性の向上が図られ得る。
上記(iv)に記載の発明では、開口操作力を、作用部材の各シートに取り付けられた部分に対して、各折れ線を介して、開口方向へ伝達しやすくなる。特に、2本の折れ線の間に形成される作用面に及ぼされる押圧力による撓みを、折れ線を介して、作用部材の各シートに取り付けられた部分を外方に広げる方向の曲げ力として伝達して開口部分を開くことができる。なお、2本の折れ線の間に形成される作用面は、略平坦面の他、2本の折れ線を湾曲又は屈曲させて中央部分が内方に凹んだ湾曲面などとしても良い。
上記(v)に記載の発明では、作用部材が外面側に凸となる断面形状とされることで、開口部分の内方へ膨らむよりも外方へ膨らむ方向に曲がりやすくされている。その結果、開口操作力によって作用部材が外方に膨らむように弾性変形して、開口部分が安定して開口され得る。
上記(vi)に記載の発明では、初期形状において作用部材の中立軸を長さ方向につないだ中心面又は作用部材の中立軸の中心を長さ方向につないだ中心軸が外方に湾曲していることで、作用部材の両端から圧縮方向に加えられる開口操作力が作用部材を外方に湾曲させる曲げモーメントを生ずることとなる。その結果、開口操作力によって作用部材の曲率が大きくなるように外方へ弾性変形して、開口部分が安定して開口され得る。
上記(viii)に記載の発明では、開口部分において幅狭とされた部分を押圧して開口操作力を及ぼすことで、開口操作力が幅広部に設けられた作用部材に伝達されて、作用部材により開口部分を大きく開くことができる。特に、作用部材が開口部分の開き方向へ湾曲した初期形状とされることで、より小さい操作力で幅広部全域を大きく開口することができる。
上記(ix)に記載の発明では、開口部分の作用部材に対してシートの幅方向に開口操作力が作用する際に、作用部材の外面に設けられた切込みが開くことで、作用部材が開口部分の開き方向に向けて凸となるように変形し易い。開口部分の開き方向に向けて凹となるような作用部材の変形は、切込みの内面同士が押し付けられることから生じ難い。これらにより、開口操作力の作用に対して、作用部材が開口部分を開く方向に変形を誘導されて、開口部分の安定した開口が実現される。また、外面に切込みを設けることで作用部材の変形方向を誘導することから、開口操作力が及ぼされていない初期の作用部材を平坦な形状とすることができる。それ故、シートに対する固着や収容部への挿入などがし易い。更に、作用部材が配された開口部分が平坦な初期形状とされることから、輸送や保管に際して嵩張り難い。
上記(x)に記載の発明では、開口操作力がシートの幅方向で作用部材の両側部分から入力されると、作用部材が開口部分の開き方向への変形を生じ易く、開口部分の安定した開口が実現される。変形補助機構による作用部材の変形方向の誘導が、作用部材の厚さ寸法がシート幅方向の両側から中央に向けてシートの外面側へ大きくされていることによって実現されている。それ故、例えば、作用部材がシートの外面に固着される場合には、シートの外面に固着される作用部材の内面が平面とされることで、作用部材のシートへの固着が容易になる。
上記(xi)に記載の発明では、表裏両側のシートにおける幅方向の少なくとも一方の端縁部が、相互に固定されずに開放端とされていることにより、開口部分の開き方向への変形に対する抵抗力が解消される。これにより、開口操作力が作用する際に、シートの開口部分に取り付けられた作用部材が、表裏のシートの固着によって拘束されることなく、開口部分の開き方向へ変形し易くなって、それに伴って開口部分が開き易くなる。
上記(xii)に記載の発明では、作用部材をシートの収容部へ差し入れることで、作用部材をシートに簡単に取り付けることができる。また、作用部材を案内面に沿わせて移動させることで、作用部材が収容部の差入口へ案内されることから、作用部材の収容部への差入作業も容易になる。なお、本発明に係る経腸栄養バッグは、前記変形補助機構が、前記開口部分を開閉可能とするチャック状封止部によって構成されていることが好ましい。本態様の経腸栄養バッグでは、作用部材に開口操作力を及ぼす際に、開口部分に設けられたチャック状封止部は予め開かれている。これにより、チャック状封止部が開口部分の開き方向に向けて凸となる湾曲形状とされて、チャック状封止部近傍のシートが開口部分の開き方向に向けて凸となる湾曲形状とされる。このため、作用部材に開口操作力が及ぼされると、作用部材の変形方向が開き方向へ誘導されて、開口部分を安定して開くことができる。また、本発明に係る経腸栄養バッグは、前記開口部分を開閉可能とするチャック状封止部が設けられており、該チャック状封止部よりも該開口部分の開口端に近い位置に前記作用部材が設けられていることが好ましい。本態様の経腸栄養バッグでは、作用部材の開き方向への変形によって、開口部分が開口端により近い位置で開き方向に変形する。これにより、開口端の開口面積が大きく確保されやすい。また、開口部分においてチャック状封止部と作用部材の間に位置する開口端から離れた部分は、チャック状封止部と作用部材によって補強されている。それ故、作用部材の変形による開き方向への力が効率良く伝達されて、開口部分の開口端から離れた部分も十分に開口させることができる。
上記(xiii)に記載の発明では、開口端に向けて拡開する傾斜形状とされた閉止端が、作用部材に対するシート幅方向の外側に設けられていることにより、傾斜形状とされた閉止端に対して作用部材から力が及ぼされることで、開口部分が上方へ向けて拡開する形状にうまく押し広げられる。
上記(xiv)に記載の発明では、作用部材がプレス加工によって開き方向の外方に向けて凸となる形状に簡単に癖付けされる。作用部材が開口部分に取り付けられた状態で作用部材の癖付けが行われることにより、予め湾曲又は屈曲した形状とされた作用部材が開口部分に取り付けられる場合に比して、作用部材の開口部分への取付けも容易となり得る。
【符号の説明】
【0204】
10,60,80,90,132,150,160,170,180:経腸栄養バッグ、12:開口部分、18:外側シート(シート)、24:収容領域、32:開放端、34:傾斜案内部、40:袋状部(収容部)、42,92:差入口、44:案内面、46,62,70,100,110,120,172,182,190,200:弾性部材(作用部材)、48:貫通孔(押圧部分)、74,102,124:折返部、94:第1案内面、96:第2案内面、104:押圧面(作用面)、106:折れ線、162:内側シート(シート)、173:外面(シートの外面)、174:開口端、175:包装体、184:幅狭部、186:幅広部、194:外面(作用部材の外面)、196:切込み