(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】まくらぎ下用ボルト固定治具
(51)【国際特許分類】
E01B 9/38 20060101AFI20240110BHJP
E01B 3/00 20060101ALI20240110BHJP
E01B 7/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E01B9/38
E01B3/00
E01B7/00
(21)【出願番号】P 2023087448
(22)【出願日】2023-05-29
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000159423
【氏名又は名称】吉原鉄道工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】永井 登望
(72)【発明者】
【氏名】征矢 伍朗
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-227810(JP,A)
【文献】特開2011-074988(JP,A)
【文献】特開2021-055483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 9/38
E01B 3/00
E01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両のレールの下に敷かれるまくらぎに被固定器具を固定するために、前記被固定器具及び前記まくらぎを貫通させたボルトの先端に取り付けられるまくらぎ下用ボルト固定治具であって、
前記ボルトが通される挿通孔と、
前記挿通孔において、前記挿通孔の開口面の一方である第一面部から前記挿通孔の開口面の他方である第二面部に向けて、第一間隔だけ離れた位置に形成されている第一係止部と、
前記挿通孔において、前記第二面部から前記第一面部に向けて、前記第一間隔と異なる第二間隔だけ離れた位置に形成されている第二係止部と、を有し、
前記ボルトの先端に形成された被係止部が前記第一係止部に係止し、前記第一面部が前記まくらぎの下面と対面した第一姿勢と、前記被係止部が前記第二係止部に係止し、前記第二面部が前記まくらぎの下面と対面した第二姿勢と、に反転して使い分けられる、
ことを特徴とするまくらぎ下用ボルト固定治具。
【請求項2】
前記挿通孔の内面のうち、前記挿通孔の軸方向における中央から軸方向にずれた位置から内側に向けて突出した係止突部を有し、
前記係止突部のうち、前記第一面部と同じ向きの面が、前記第二係止部であり、
前記係止突部のうち、前記第二面部と同じ向きの面が、前記第一係止部である、
ことを特徴とする請求項1に記載されたまくらぎ下用ボルト固定治具。
【請求項3】
前記挿通孔の軸方向と直交した側方の面である側面部から前記挿通孔に通じた通路部を有し、前記通路部に前記被係止部が通される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたまくらぎ下用ボルト固定治具。
【請求項4】
前記第一面部に形成されている第一爪部と、
前記第二面部に形成されている第二爪部と、を有し、
前記第一姿勢において、前記第一爪部が前記まくらぎの下面に引っ掛けられ、前記第二姿勢において、前記第二爪部が前記まくらぎの下面に引っかけられる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたまくらぎ下用ボルト固定治具。
【請求項5】
前記通路部の内面から内側に向けて突出していて前記係止突部に連接されている通路突部を有し、
前記通路突部のうち、前記第一面部と同じ向きの面である第二通路面部が、前記第二係止部に連接され、前記第二係止部が、前記第二通路面部に対して陥没しており、
前記通路突部のうち、前記第二面部と同じ向きの面である第一通路面部が、前記第一係止部に連接され、前記第一係止部が、前記第一通路面部に対して陥没している、
ことを特徴とする請求項2に従属する請求項3に記載されたまくらぎ下用ボルト固定治具。
【請求項6】
前記側面部に窪み部が形成されている、
ことを特徴とする請求項
3に記載されたまくらぎ下用ボルト固定治具。
【請求項7】
前記第一係止部及び前記第二係止部が、雄ネジである前記被係止部に螺合する雌ネジである、
ことを特徴とする請求項1に記載されたまくらぎ下用ボルト固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両のレールの下に敷かれるまくらぎに転てつ装置等を固定するために用いられるまくらぎ下用ボルト固定治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の進路を選択する分岐器のポイント部を担う転てつ器として、例えば下記非特許文献1に記載された転てつ装置がある(
図1参照)。この転てつ装置は転換装置と鎖錠装置とから構成され、電気転てつ機101によって稼働する。ここで転換装置は、固定された基本レール102に対してトングレール103を密着させ、又は離反させるものであり、一方、鎖錠装置はトングレール103と基本レール102との密着状態を保持するものである。
【0003】
一般的に、電気転てつ機101は、軌間外側(一対の基本レール102間の外側)に延びたまくらぎ100の上に設置され、爪ボルト(図示省略)によってまくらぎ100に固定されている。例えば、下記特許文献1に記載されているとおり、爪ボルトは、まくらぎの上に敷かれた敷板と電気転てつ機とを、まくらぎの下面から貫通し、まくらぎの上面でナットが締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】平成17年6月28日、社団法人日本鉄道電気技術協会発行、「鉄道技術者のための電気概論 信号シリーズ4 転てつ装置」、第7刷、第1、38~47頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、木製のまくらぎに替わって、無発泡ウレタン等の弾性層で被覆された弾性まくらぎが増えてきている。弾性まくらぎは、従来のまくらぎと比較して、厚みがあるため、従来のまくらぎの厚みに合わせた長さの爪ボルトが適合しない。すなわち、まくらぎの下面からまくらぎを貫通した爪ボルトは、上端がまくらぎの上面に露出するところ、まくらぎが厚い場合、爪ボルトの突出度合いが足りないため、ナットで締結することができない。したがって、弾性まくらぎに適合する長さの爪ボルトが必要である。施工現場では、まくらぎの種類まで作業者に伝達されていることは少なく、まくらぎの種類に適合した爪ボルトが用意されていなかった場合、施工が中断し、非効率である。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものであり、厚みの異なる種々のまくらぎに適合することができる爪ボルトとして用いられるまくらぎ下用ボルト固定治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、鉄道車両のレールの下に敷かれるまくらぎに被固定器具を固定するために、前記被固定器具及び前記まくらぎを貫通させたボルトの先端に取り付けられるまくらぎ下用ボルト固定治具であって、前記ボルトが通される挿通孔と、前記挿通孔において、前記挿通孔の開口面の一方である第一面部から前記挿通孔の開口面の他方である第二面部に向けて、第一間隔だけ離れた位置に形成されている第一係止部と、前記挿通孔において、前記第二面部から前記第一面部に向けて、前記第一間隔と異なる第二間隔だけ離れた位置に形成されている第二係止部と、を有し、前記ボルトの先端に形成された被係止部が前記第一係止部に係止し、前記第一面部が前記まくらぎの下面と対面した第一姿勢と、前記被係止部が前記第二係止部に係止し、前記第二面部が前記まくらぎの下面と対面した第二姿勢と、に反転して使い分けられる、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、前記挿通孔の内面のうち、前記挿通孔の軸方向における中央から軸方向にずれた位置から内側に向けて突出した係止突部を有し、前記係止突部のうち、前記第一面部と同じ向きの面が、前記第二係止部であり、前記係止突部のうち、前記第二面部と同じ向きの面が、前記第一係止部である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、前記挿通孔の軸方向と直交した側方の面である側面部から前記挿通孔に通じた通路部を有し、前記通路部に前記被係止部が通される、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、前記第一面部に形成されている第一爪部と、
前記第二面部に形成されている第二爪部と、を有し、前記第一姿勢において、前記第一爪部が前記まくらぎの下面に引っ掛けられ、前記第二姿勢において、前記第二爪部が前記まくらぎの下面に引っかけられる、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、前記通路部の内面から内側に向けて突出していて前記係止突部に連接されている通路突部を有し、前記通路突部のうち、前記第一面部と同じ向きの面である第二通路面部が、前記第二係止部に連接され、前記第二係止部が、前記第二通路面部に対して陥没しており、前記通路突部のうち、前記第二面部と同じ向きの面である第一通路面部が、前記第一係止部に連接され、前記第一係止部が、前記第一通路面部に対して陥没している、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、前記側面部に窪み部が形成されている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、前記第一係止部及び前記第二係止部が、雄ネジである前記被係止部に螺合する雌ネジである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、鉄道車両のレールの下に敷かれるまくらぎに被固定器具を固定するために、被固定器具及びまくらぎを貫通させたボルトの先端に取り付けられるものであって、ボルトが通される挿通孔と、挿通孔において、挿通孔の開口面の一方である第一面部から挿通孔の開口面の他方である第二面部に向けて、第一間隔だけ離れた位置に形成されている第一係止部と、挿通孔において、第二面部から第一面部に向けて、第一間隔と異なる第二間隔だけ離れた位置に形成されている第二係止部とを有し、ボルトの先端に形成された被係止部が第一係止部に係止し、第一面部がまくらぎの下面と対面した第一姿勢と、被係止部が第二係止部に係止し、第二面部がまくらぎの下面と対面した第二姿勢とに反転して使い分けられる。すなわち、第一姿勢では、ボルトの被係止部が、まくらぎの下面から(又はこの下面と対面した第一面部から)第一間隔だけ離れた位置で、まくらぎ下用ボルト固定治具によって係止され、一方で、第二姿勢では、被係止部が、まくらぎの下面から(又はこの下面と対面した第二面部から)第二間隔だけ離れた位置で、まくらぎ下用ボルト固定治具によって係止される。第一間隔と第二間隔とが異なる長さであることから、同じボルトであっても、各姿勢において、まくらぎの上面側に露出するボルトの突出度合いが変わる。よって、厚みの異なる種々のまくらぎに適合することができる。また、反転させることで姿勢が変化するため、作業が簡便である。
【0016】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、挿通孔の内面のうち、挿通孔の軸方向における中央から軸方向にずれた位置から内側に向けて突出した係止突部を有し、係止突部のうち、第一面部と同じ向きの面が第二係止部であり、係止突部のうち、第二面部と同じ向きの面が第一係止部である。すなわち、係止突部が第一係止部と第二係止部とを担っていることから、構成が簡便である。
【0017】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、挿通孔の軸方向と直交した側方の面である側面部から挿通孔に通じた通路部を有し、通路部に前記被係止部が通される。したがって、ボルトに対して側方からまくらぎ下用ボルト固定治具を着脱することができる。例えば、作業者は、まくらぎ下用ボルト固定治具を持ってまくらぎの下方に手を差し込み、ボルトの被係止部の側方に通路部を当て、被係止部を挿通孔に挿入する。よって、作業が簡便である。なお、仮に、通路部がない場合、挿通孔にボルトを挿入した状態で、まくらぎの下面からボルトを貫通させる必要があるため、ボルトの長さ相当の穴をまくらぎの下方に掘削しておく必要がある。
【0018】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、第一面部に形成されている第一爪部と、第二面部に形成されている第二爪部とを有し、第一姿勢において、第一爪部がまくらぎの下面に引っ掛けられ、第二姿勢において、第二爪部がまくらぎの下面に引っかけられる。各爪部がまくらぎの下面に食い込むことで、まくらぎ下用ボルト固定治具がまくらぎに堅牢に固定される。
【0019】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、通路部の内面から内側に向けて突出していて係止突部に連接されている通路突部を有し、通路突部のうち、第一面部と同じ向きの面である第二通路面部が、第二係止部に連接され、第二係止部が、第二通路面部に対して陥没しており、通路突部のうち、第二面部と同じ向きの面である第一通路面部が、第一係止部に連接され、第一係止部が、第一通路面部に対して陥没している。ボルトの被係止部は、通路突部を通って挿通孔に配置され、第一係止部又は第二係止部に篏合する。第一係止部が第一通路面部に対して陥没したことで、段差が形成されており、下段である第一係止部に篏合した被係止部は、通路部から抜け出ることがない。同様に、第二係止部が第二通路面部に対して陥没したことで、段差が形成されており、下段である第二係止部に篏合した被係止部は、通路部から抜け出ることがない。よって、まくらぎ下用ボルト固定治具とボルトとの篏合が堅牢である。
【0020】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、側面部に窪み部が形成されている。よって、作業者は、指を窪み部に当ててまくらぎ下用ボルト固定治具を挟むことができるため、作業が簡便となる。特に、第一面部に第一爪部が形成され、第二面部に第二爪部が形成されている場合、作業者は何れの面を把持しても、爪部によって負傷する虞があるところ、作業者が窪み部を把持することができれば、負傷の虞がない。
【0021】
本発明に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、第一係止部及び第二係止部が、雄ネジである被係止部に螺合する雌ネジである。よって、雄ネジタイプのボルトに適合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、従来の転てつ装置の施設状態の概略が示された概略平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具を用いた爪ボルトの概略説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における正面透し図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第二姿勢における正面透し図である。
【
図6】
図6は、本発明の第一実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における下面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第一実施形態に係る第一姿勢のまくらぎ下用ボルト固定治具を用いた爪ボルトの使用状態の断面が示された使用状態断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第一実施形態に係る第二姿勢のまくらぎ下用ボルト固定治具を用いた爪ボルトの使用状態の断面が示された使用状態断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第二実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具を用いた爪ボルトの概略説明図である。
【
図10】
図10は、本発明の第二実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における上面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第二実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における正面透し図である。
【
図12】
図12は、本発明の第二実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第二姿勢における正面透し図である。
【
図13】
図13は、本発明の第二実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における下面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第三実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具を用いた爪ボルトの概略説明図である。
【
図15】
図15は、本発明の第三実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における上面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第三実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における正面透し図である。
【
図17】
図17は、本発明の第三実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第二姿勢における正面透し図である。
【
図18】
図18は、本発明の第三実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の第一姿勢における下面図である。
【
図19】
図19は、本発明の第四実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の平面図である。
【
図20】
図20は、本発明の第四実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の側面図である。
【
図21】
図21は、本発明の第五実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の平面図である。
【
図22】
図22は、本発明の第五実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具は、鉄道車両のレールの下に敷かれるまくらぎに、転てつ装置等の被固定器具を固定するために、被固定器具及びまくらぎを貫通させたボルトの先端に取り付けられるものである。まくらぎ下用ボルト固定治具は、ボルトと共に、爪ボルトとして用いられる。なお、被固定器具には、例えば、敷板、電気転てつ機、転てつ標識、鎖錠装置、標識付転換機、発条転てつ機、エスケープクランク、信号リバー、ロッドキャリア等が含まれる。まくらぎには、木製のまくらぎや弾性まくらぎ等、厚みの異なる種々のものが含まれる。
【0024】
以下に、本実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具を図面に基づいて説明する。
図2には、第一実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具20が用いられた爪ボルト6が示されている。
【0025】
図2に示されているとおり、爪ボルト6は、ボルト7とまくらぎ下用ボルト固定治具20とから構成されている。ボルト7は、棒状の軸心部8と、この軸心部8の上端に形成された被押え部9と、軸心部8の下端に形成された被係止部12とを有している。軸心部8は、円柱状であり、上部11にネジ溝が形成されている。上部11には、ナット5(
図7参照)が締結される。被押え部9は、側面に一対の平坦面10を有している。被押え部9は、スパナやレンチ等の工具(図示省略)で把持される。被係止部12は、軸心部8よりも幅が狭まった首部13と、軸心部8と同径であって首部13に連接された頭部14とを有している。首部13は、いわゆるHカット、ダブルDカットによって形成されたものであり、外側面の一部が軸心部8及び頭部14よりも凹んでいる。よって、首部13と頭部14との境には、段部15が形成されている。段部15には、まくらぎ下用ボルト固定治具20が引っかけられる。まくらぎ下用ボルト固定治具20は、ほぼ直方体であり、ボルト7が通される挿通孔25が中心に形成されている。
【0026】
ここで、まくらぎ下用ボルト固定治具20を図面に基づいて説明する。
図3ないし6は、まくらぎ下用ボルト固定治具20の全体が示されている。
【0027】
図3ないし6に示されているとおり、まくらぎ下用ボルト固定治具20は、上下に抜けた挿通孔25と、この挿通孔25の内面に形成された一対の係止突部26と、挿通孔25が形成された上側の開口面である第一面部27及び下側の開口面である第二面部28と、挿通孔25の軸方向と直交した側方の外面である四つの側面部21と、この側面部21の一つである正面部22から挿通孔25に通じた通路部31と、この通路部31の内面に形成された一対の通路突部32と、正面部22と直角に連接された一対の側面部21である右面部23及び左面部24に形成された窪み部38とを有している。係止突部26と通路突部32とは連接されている。
【0028】
第一面部27の四隅には、第一爪部39が形成されており、第二面部28の四隅には、第二爪部40が形成されている。第一爪部39及び第二爪部40は、ほぼ円錐の突起であり、それぞれ上方又は下方に向けて突出している。窪み部38は、左右各面部23,24が内側に向かって凹んだものであり、前後方向に伸びている。
【0029】
通路部31は、正面部22から挿通孔25に渡って上下に抜けた空間を形成している。通路部31に形成された通路突部32は、通路部31の内面からそれぞれ内側に向けて突出し、挿通孔25まで伸びている。通路突部32は、挿通孔25の軸方向における中央から第二面部28寄りにずれた位置に形成されている。通路突部32のうち、第一面部27と同じ向きの面は、第二通路面部34であり、第二面部28と同じ向きの面は、第一通路面部33である。第一通路面部33は、第二面部28と同一平面上に在る。
【0030】
通路突部32が形成されているため、通路部31は、第一面部27側と第二面部28側とで幅が異なる。すなわち、通路部31は、第一面部27に連接された第一通路部35と、第二面部28に連接された第二通路部36とを有している(
図4参照)。第二通路部36は、通路突部32によって狭められているため、第二通路部36の幅は、第一通路部35の幅よりも狭い(換言すれば、第一通路部35の幅は、第二通路部36の幅よりも広い)。第一通路部35の幅は、ボルト7の頭部14が通る広さであり、第二通路部36の幅は、ボルト7の首部13が通る広さである。
【0031】
係止突部26は、左右各面部23,24の内側である挿通孔25の内面からそれぞれ内側に向けて突出し、通路突部32に連接されている。係止突部26は、挿通孔25の軸方向における中央から第二面部28寄りにずれた位置に形成されている。挿通孔25における係止突部26のうち、第一面部27と同じ向きの面は、第二係止部30であり、第二面部28と同じ向きの面は、第一係止部29である。第二係止部30には、第二通路面部34が連接されており、第二係止部30は、第二通路面部34に対して挿通孔25の軸方向(
図4において下向き)に陥没している。第一係止部29には、第一通路面部33が連接されており、第一係止部29は、第一通路面部33に対して挿通孔25の軸方向(
図5において下向き)に陥没している。第一係止部29及び第二係止部30は、円板状であって、ボルト7の頭部14が嵌合する大きさである。
【0032】
第一係止部29は、第一面部27から第二面部28に向けて、第一間隔41だけ離れた位置に形成されている。第二係止部30は、第二面部28から第一面部27に向けて、第二間隔42だけ離れた位置に形成されている。第一間隔41と第二間隔42とは、長さが異なっており、第一間隔41の方が第二間隔42よりも長い(換言すれば、第二間隔42の方が第一間隔41よりも短い。)。
【0033】
図4及び5に示されているとおり、まくらぎ下用ボルト固定治具20は、上下を反転させることで、第一姿勢又は第二姿勢に変化し、使い分けられる。第一姿勢では、第一面部27が上に向けられ(
図4参照)、第二姿勢では、第二面部28が上に向けられている(
図5参照)。
【0034】
次に、まくらぎ下用ボルト固定治具20の使用方法を、作用及び効果と共に、図面に基づいて説明する。
図7及び8には、まくらぎ下用ボルト固定治具20を用いた爪ボルト6の使用状態が示されている。
図7には、第一姿勢のまくらぎ下用ボルト固定治具20を用いた場合の使用状態が示され、
図8には、第二姿勢のまくらぎ下用ボルト固定治具20を用いた場合の使用状態が示されている。
【0035】
図7に示されているとおり、まくらぎ1の上に敷板2が敷かれ、敷板2の上に被固定器具3が載せられている。まくらぎ1、敷板2及び被固定器具3のそれぞれには、孔が形成され(以下、各孔をまとめて「孔」と記す。)、孔4は同軸上に揃えられている。孔4には、ボルト7が通されており、ボルト7の向きは、被押え部9が上向きで、被係止部12が下向きである。被係止部12がまくらぎ1の下面から突出した状態で、まくらぎ下用ボルト固定治具20が第一姿勢で被係止部12に取り付けられる。詳説すれば、作業者は、例えば人差し指と中指、又は人差し指と薬指等を窪み部38(
図7において省略)に当ててまくらぎ下用ボルト固定治具20を挟み、その腕をまくらぎ1の下方に入れる。まくらぎ下用ボルト固定治具20が被係止部12に当てられ、被係止部12が通路部31に通されて挿通孔25に配置される。その際、被係止部12の首部13が通路部31に通され、被係止部12の頭部14が第一通路面部33の外側に通される。ボルト7がまくらぎ1の上側から引っ張られ、又はまくらぎ下用ボルト固定治具20がボルト7に対して下方に押し下げられることで、頭部14が第一係止部29に係止し、かつ、篏合する。第一面部27がまくらぎ1の下面と対面し、第一爪部39がまくらぎ1に食い込んで引っ掛けられる。ボルト7の上部11にナット5が取り付けられ、工具で被押え部9が把持された状態でナット5が締め付けられることで、被固定器具3、敷板2及びまくらぎ1が、ナット5とまくらぎ下用ボルト固定治具20とで挟まれる。
【0036】
図8に示されているとおり、まくらぎ下用ボルト固定治具20が第二姿勢で被係止部12に取り付けられる場合、被係止部12が通路部31に通されて挿通孔25に配置される際、被係止部12の首部13が第二通路部36に通され、被係止部12の頭部14が第一通路部35に通される。頭部14は、第二係止部30に係止し、かつ、篏合する。第二面部28がまくらぎ1の下面と対面し、第二爪部40がまくらぎ1に食い込んで引っ掛けられる。
【0037】
第一姿勢では、ボルト7の被係止部12が、まくらぎ1の下面から(又はこの下面と対面した第一面部27から)第一間隔41だけ離れた位置で、まくらぎ下用ボルト固定治具20によって係止される(
図7参照)。一方で、第二姿勢では、ボルト7の被係止部12が、まくらぎ1の下面から(又はこの下面と対面した第二面部28から)第二間隔42だけ離れた位置で、まくらぎ下用ボルト固定治具20によって係止される(
図8参照)。第一間隔41の方が第二間隔42よりも長いことから、第一姿勢では、まくらぎ1に対するボルト7の上部11の突出度合いは比較的少なくなり、一方で、第二間隔42の方が第一間隔41よりも短いことから、第二姿勢では、まくらぎ1に対するボルト7の上部11の突出度合いは比較的多くなる。したがって、まくらぎ下用ボルト固定治具20は、一般的な厚みのまくらぎ1に対しては、第一姿勢で用いられ、厚みのあるまくらぎ1に対しては、反転した第二姿勢で用いられる。よって、同じボルト7を用いて、厚みの異なる種々のまくらぎ1に適合することができる。また、反転させることで姿勢が変化するため、作業が簡便である。
【0038】
作業者は、指を窪み部38に当ててまくらぎ下用ボルト固定治具20を挟むことができるため(
図4参照)、作業が簡便となる。また、通路部31が挿通孔25に通じていることから(
図3参照)、ボルト7に対して側方から取り付けることができるため、作業が簡便である。
【0039】
作業者が窪み部38を把持することができれば、第一面部27及び第二面部28に触れずに作業ができるため、各爪部39,40によって負傷する虞がない。
【0040】
第一係止部29が第一通路面部33に対して陥没したことで、段差37が形成されており(
図5及び6参照)、下段である第一係止部29に篏合したボルト7の被係止部12は、通路部31から抜け出ることがない。同様に、第二係止部30が第二通路面部34に対して陥没したことで、段差37が形成されており(
図3及び4参照)、下段である第二係止部30に篏合した被係止部12は、通路部31から抜け出ることがない。よって、まくらぎ下用ボルト固定治具20とボルト7との篏合が堅牢である。
【0041】
次に、本発明の第二ないし第五実施形態を図面に基づいて説明する。
図9ないし13には、第二実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具220が用いられた爪ボルト206が示されている(
図9における中段の円は、ボルト207の下面図である。)。
図14ないし18には、第三実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具320が用いられた爪ボルト306が示されている。
図19及び20には、第四実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具420が示されている。
図21及び22には、第五実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具520が示されている。なお、以下では、第一実施形態に係るまくらぎ下用ボルト固定治具20と異なる構成が主に説明され、まくらぎ下用ボルト固定治具20と同様の構成は説明が省略されている。
【0042】
図9に示されているとおり、第二実施形態では、ボルト207の被係止部212は、軸心部208よりも長い直径を有する長孔形又は楕円形の基部243と、この基部243よりも直径が大きな拡大頭部244とを有している。拡大頭部244は半球状である。
図10ないし13に示されているとおり、まくらぎ下用ボルト固定治具220は、上下に抜けた挿通孔225と、この挿通孔225の内面に形成された係止突部226と、挿通孔225が形成された上側の開口面である第一面部227及び下側の開口面である第二面部228とを有している。
【0043】
係止突部226は、環状であり、挿通孔225の内周面から内側に向けて突出している。係止突部226は、挿通孔225の軸方向における中央から第二面部228寄りにずれた位置に形成されている。係止突部226は、挿通孔225を、ボルト207の基部243が篏合する長孔形又は楕円形に形成している。挿通孔225における係止突部226のうち、第一面部227と同じ向きの面は、第二係止部230であり、第二面部228と同じ向きの面は、第一係止部229である。第一係止部229は、第二面部228と同一平面上に在る。
【0044】
まくらぎ下用ボルト固定治具20と同様に、第一係止部229は、第一面部227から第二面部228に向けて第一間隔241だけ離れた位置に形成されている。第二係止部230は、第二面部228から第一面部227に向けて、第二間隔242だけ離れた位置に形成されている。第一間隔241と第二間隔242とは、長さが異なっており、第一間隔241の方が第二間隔242よりも長い(換言すれば、第二間隔242の方が第一間隔241よりも短い。)。まくらぎ下用ボルト固定治具20と同様に、まくらぎ下用ボルト固定治具220も、上下を反転させることで、第一姿勢又は第二姿勢に変化し、使い分けられる。
【0045】
まくらぎ下用ボルト固定治具220の使用方法は、まくらぎ下用ボルト固定治具20の使用方法と異なり、ボルト207がまくらぎ1等の孔4に通される前に、予めボルト207にまくらぎ下用ボルト固定治具220が取り付けられる。詳説すれば、第一姿勢であれば、ボルト207の被押え部209側がまくらぎ下用ボルト固定治具220の第二面部228側から挿通孔225に挿入され、ボルト207の基部243が挿通孔225に篏合し、ボルト207の拡大頭部244が第一係止部229に係止する。この状態で、被押え部209側が孔4に下から挿入される。第二姿勢であれば、まくらぎ下用ボルト固定治具220が反転された状態で、被押え部209側がまくらぎ下用ボルト固定治具220の第一面部227側から挿通孔225に挿入され、基部243が挿通孔225に篏合し、拡大頭部244が第二係止部230に係止し、かつ篏合する。
【0046】
図14に示されているとおり、第三実施形態では、ボルト307の被係止部312は、雄ネジ345が形成されている。
図15ないし18に示されているとおり、まくらぎ下用ボルト固定治具320は、上下に抜けた挿通孔325と、この挿通孔325の内面に形成された第一係止部329及び第二係止部330と、挿通孔325が形成された上側の開口面である第一面部327及び下側の開口面である第二面部328とを有している。
【0047】
第一係止部329は、第一面部327から第二面部328に向けて第一間隔341だけ離れた位置に渡って形成された雌ネジ346である。第二係止部330は、第二面部328から第一面部327に向けて、第二間隔342だけ離れた位置に渡って形成された雌ネジ346である。第一係止部329と第二係止部330との間である境界部349には、ネジ溝が形成されていないため、第一係止部329と第二係止部330とは連接されていない。したがって、挿通孔325は、第一係止部329が形成されて第一面部327に連接された第一挿通孔部347と、第二係止部330が形成されて第二面部328に連接された第二挿通孔部348とに二分されており、第一挿通孔部347の底部(境界部349)を第一係止部329と言うこともでき、第二挿通孔部348の底部(境界部349)を第二係止部330と言うこともできる。第一間隔341と第二間隔342とは、長さが異なっており、第一間隔341の方が第二間隔342よりも長い(換言すれば、第二間隔342の方が第一間隔341よりも短い。)。
【0048】
まくらぎ下用ボルト固定治具320の使用方法は、まくらぎ下用ボルト固定治具20の使用方法と概ね同一である。第一姿勢であれば、ボルト307の被係止部312が、まくらぎ1の下面から突出した状態でまくらぎ下用ボルト固定治具320の第一挿通孔部347に挿入され、雌ネジ346(第一係止部329)に螺合して係止される。第二姿勢であれば、まくらぎ下用ボルト固定治具320が反転された状態で、被係止部312がまくらぎ下用ボルト固定治具320の第二挿通孔部348に挿入され、雌ネジ346(第二係止部330)に螺合して係止される。
【0049】
図19及び20に示されているとおり、まくらぎ下用ボルト固定治具420は、第一爪部439及び第二爪部440の構成がまくらぎ下用ボルト固定治具20と異なる。第一爪部439は、第一面部427の四隅の角に形成されており、第二爪部440は、第二面部428の四隅の角に形成されている。第一爪部439及び第二爪部440は、ほぼ三角錐の突起である。
【0050】
図21及び22に示されているとおり、まくらぎ下用ボルト固定治具520は、第一爪部539及び第二爪部540の構成がまくらぎ下用ボルト固定治具20と異なる。第一爪部539は、第一面部527の四隅の角に形成されており、第二爪部540は、第二面部528の四隅の角に形成されている。第一爪部539及び第二爪部540は、角がめくれ上がったような、板状の突起である。
【0051】
なお、本発明の他の実施形態は、第一実施形態と異なり、第一係止部及び第二係止部が陥没していない。
他の実施形態は、窪み部を有していない。
他の実施形態では、第一爪部及び第二爪部の数、位置及び突起の形状等が任意である。よって、この実施形態では、第一爪部及び第二爪部の数が、一個ないし三個又は五個以上である。第一爪部の位置は第一面部の縁であり、第二爪部の位置は第二面部の縁である。第一爪部及び第二爪部の形状は、まくらぎに係止し得る様々な突起である。
他の実施形態は、第一爪部及び第二爪部を有してない。この実施形態では、第一面部又は第二面部がまくらぎの下面に圧着することで、まくらぎ等が、ナットとまくらぎ下用ボルト固定治具とで挟まれる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 まくらぎ
2 敷板
3 被固定器具
4 孔
5 ナット
6,206,306 爪ボルト
7,207,307 ボルト
8,208,308 軸心部
9,209,309 被押え部
10,210,310 平坦面
11,211,311 上部
12,212,312 被係止部
13 首部
14 頭部
15 段部
20,120,220,320,420,520 まくらぎ下用ボルト固定治具
21 側面部
22 正面部
23 右面部
24 左面部
25,225,325 挿通孔
26,226 係止突部
27,227,327,427,527 第一面部
28,228,328,428,528 第二面部
29,229,329 第一係止部
30,230,330 第二係止部
31 通路部
32 通路突部
33 第一通路面部
34 第二通路面部
35 第一通路部
36 第二通路部
37 段差
38 窪み部
39,239,339,439,539 第一爪部
40,240,340,440,540 第二爪部
41,241,341 第一間隔
42,242,342 第二間隔
100 まくらぎ
101 電気転てつ機
102 基本レール
103 トングレール
243 基部
244 拡大頭部
345 雄ネジ
346 雌ネジ
347 第一挿通孔部
348 第二挿通孔部
349 境界部
【要約】
【課題】厚みの異なる種々のまくらぎに適合することができる爪ボルトとして用いられるまくらぎ下用ボルト固定治具を提供する。
【解決手段】ほぼ直方体のまくらぎ下用ボルト固定治具20は、上下に抜けた挿通孔25の内面に、第一面部27から第一間隔41だけ離れた第一係止部29と、裏面である第二面部から第二間隔だけ離れた第二係止部とを有し、第一間隔41と第二間隔との長さが異なっていることから、上下を反転させることで第一姿勢又は第二姿勢に変化し、まくらぎ1の厚みに応じて使い分けられる。
【選択図】
図7