(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/64 20060101AFI20240110BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20240110BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20240110BHJP
H04B 1/52 20150101ALI20240110BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/54 Z
H03H9/17 F
H04B1/52
(21)【出願番号】P 2019169404
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 義宣
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204743(JP,A)
【文献】特表2008-508822(JP,A)
【文献】特開2018-088678(JP,A)
【文献】特開2014-171210(JP,A)
【文献】国際公開第2006/059416(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/040922(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019722(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145-9/76
H04B 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地端子に接続された並列腕共振子を含む少なくとも1つのラダー型フィルタ回路を有し、第1端子と第2端子とを接続する第1経路と、
接地された共振子を有し、前記少なくとも1つのラダー型フィルタ回路のうちの少なくともいずれかに並列に接続されている第2経路と、
容量と、を備え、
前記容量の一端は、前記第2経路に接続され、前記容量の他端は、前記並列腕共振子と前記接地端子とを接続する第3経路に接続さ
れ、
前記容量は、前記第2経路と前記第3経路とが、面で対向する部分を有することで形成されている、
フィルタ装置。
【請求項2】
前記共振子は、縦結合型の共振子である、
請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記部分では、前記第2経路と前記第3経路とが立体的に交差している、
請求項1又は2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記容量を形成している前記第2経路と前記第3経路とに挟まれる空間の少なくとも一部には、絶縁体で形成された中間層が配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記絶縁体は、ケイ素の酸化物である、
請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記容量を形成している前記第2経路と前記第3経路とに挟まれる空間の少なくとも一部には、セラミック層が配置されている、
請求項
1から3
のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記第1経路は、送信用の前記ラダー型フィルタ回路である送信フィルタ回路と、受信用の前記ラダー型フィルタ回路である受信フィルタ回路と、を有する、
請求項1から
6のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記第2経路は、前記送信フィルタ回路及び前記受信フィルタ回路に並列に接続されている、
請求項
7に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話などの無線通信機には、特定の信号をフィルタリングするためのフィルタ装置が搭載されている。例えば、送信信号及び受信信号のように、異なる帯域の信号を分離するためのフィルタ装置が搭載される。
【0003】
特許文献1には、ラダー型フィルタ回路を用いたフィルタ装置に関する技術が開示されている。特許文献1には、フィルタ装置において、ラダー型フィルタ回路に並列に接続されたループ回路を設けることで、フィルタ装置におけるアイソレーション特性などを改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラダー型フィルタ回路が備える並列腕共振子は、一般的に数GHz程度の高周波数において副共振により減衰極を発生させ、高周波における信号の減衰に寄与している。副共振による減衰させたい信号の帯域を調整したい場合には、副共振を調整する必要がある。例えば、WiFi(登録商標)などの通信に利用されるフィルタ装置では、減衰極が調整できることが求められている。
【0006】
例えば、減衰極を低域側にシフトさせるためには、ラダー型フィルタ回路を構成する並列腕共振子の容量を増加させることが考えられる。しかしながら、並列腕共振子の容量を増加させると、フィルタ装置を小型化することが困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、小型化を実現しつつ、副共振により発生する減衰極を低域側にシフトさせることができるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るフィルタ装置は、接地端子に接続された並列腕共振子を含む少なくとも1つのラダー型フィルタ回路を有し、第1端子と第2端子とを接続する第1経路と、接地された共振子を有し、少なくとも1つのラダー型フィルタ回路のうちの少なくともいずれかに並列に接続されている第2経路と、容量と、を備え、容量の一端は、第2経路に接続され、容量の他端は、並列腕共振子と接地端子とを接続する第3経路に接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型化を実現しつつ、副共振により発生する減衰極を低域側にシフトさせることができるフィルタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るフィルタ装置の回路図である。
【
図2】第1実施形態に係るフィルタ装置が有する受信フィルタ回路の回路図である。
【
図3】第1実施形態に係るフィルタ装置の一部を示す上面図である。
【
図4】
図3に示すフィルタ装置をA-A’で切り取った断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るフィルタ装置における、送信入力端子から受信出力端子への伝送特性を示す図である。
【
図6】送信入力端子からアンテナへの減衰特性を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係るフィルタ装置の回路図である。
【
図8】第2実施形態に係る受信フィルタ回路の回路図である。
【
図9】第2実施形態に係るフィルタ装置におけるアイソレーション特性を示す図である。
【
図10】第3実施形態に係るフィルタ装置の回路図である。
【
図11】第3実施形態に係るフィルタ装置におけるアイソレーション特性である。
【
図12】第1変形例に係るフィルタ装置の回路図である。
【
図13】第2変形例に係るフィルタ装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
<1.第1実施形態>
<<1.1.フィルタ装置の回路図>>
図1は、第1実施形態に係るフィルタ装置1の回路図である。また、
図2は、第1実施形態に係るフィルタ装置1が備える受信フィルタ回路14を示す回路図である。
【0013】
第1実施形態に係るフィルタ装置1は、主に、送信入力端子Txと、受信出力端子Rxと、第1経路10と、第2経路20と、第2共通端子30と、第1容量C1と、を備える。
【0014】
第1経路10は、送信入力端子Txと、受信出力端子Rxとを接続し、送信フィルタ回路12及び受信フィルタ回路14を有している。
【0015】
送信フィルタ回路12には、送信回路(不図示)から出力される送信信号が送信入力端子Txを経由して供給される。送信フィルタ回路12は、送信入力端子Txから第1共通端子16に所定の周波数帯域の信号を通過させ、その他の周波数帯域の信号を減衰させる機能を有する。送信フィルタ回路12を通過した送信信号は、第1共通端子16を経由して第2共通端子30から基地局に送信される。
【0016】
受信フィルタ回路14には、第2共通端子30により基地局から受信された受信信号が、第1共通端子16を経由して供給される。受信フィルタ回路14は、所定の周波数帯域の信号を通過させ、その他の周波数帯域の信号を減衰させる機能を有する。受信フィルタ回路14を通過した受信信号は、受信出力端子Rxを経由して受信回路(不図示)に供給される。
【0017】
このように、本実施形態に係るフィルタ装置1は、送信フィルタ回路12及び受信フィルタ回路14を有しており、デュプレクサとしての機能を有する。
【0018】
本実施形態に係る送信フィルタ回路12は、複数の共振子が直列及び並列に接続されたラダー型フィルタ回路である。具体的には、送信フィルタ回路12は、直列腕に配置された4つの直列腕共振子S11~S14と、並列腕に配置された3つの並列腕共振子P11~P13と、を備える。並列腕共振子P11~P13の各々は、接地端子g11又はg12に接続されている。具体的には、並列腕共振子P11及びP12は、接地端子g11に接続されている。また、並列腕共振子P13は、接地端子g12に接続されている。以下では、並列腕共振子P11~P13の中で最も送信入力端子Txに近い位置に配置された並列腕共振子P11と、接地端子g11とを接続する経路を第3経路24と称する。
【0019】
なお、これらの直列腕共振子S11~S14及び並列腕共振子P11~P13のそれぞれの数は一例であり、これに限定されない。例えば、直列腕共振子の数は3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。また、並列腕共振子の数は、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。また、以下の第2実施形態以降で説明する各種の共振子の数も、図面で示されている数に限定されるものではない。
【0020】
また、直列腕共振子S11~S14、及び並列腕共振子P11~P13を構成する素子は特に限定されないが、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタ、圧電薄膜共振子等のフィルタ、又はバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)フィルタ等であってもよい。なお、以下の第2実施形態以降で説明する各種の共振子も、同様に上記の各種の素子の少なくともいずれかにより構成されていてもよい。
【0021】
次いで、
図2を参照して、本実施形態に係る受信フィルタ回路14の構成について説明する。
図2に示すように、受信フィルタ回路14は、ラダー型フィルタ回路であり、2つの直列腕共振子S21及びS22と、2つの並列腕共振子P21及びP22と、縦結合型共振子140とを備えている。また、並列腕共振子P21及びP22は、接地端子g21に接続されている。
【0022】
縦結合型共振子140は、2つの5IDT(Inter Digital Transducer)の縦結合型共振子と、3つの反射器144a~144cとを備えている。2つの5IDTの縦結合型共振子はそれぞれ、5つのIDT電極142a~142jと5つのIDT電極142f~142jとを備えている。
【0023】
図1に戻って、第2経路20について説明する。第2経路20は、第1経路10において、送信フィルタ回路12に並列に接続されている。具体的には、第2経路20は、第1経路10における送信入力端子Txの近傍と、第1共通端子16とに接続されている。また、第2経路20は、送信入力端子Txから近い順に、第2容量C2、接地された2IDTの縦結合型共振子22、及び第3容量C3を有している。
【0024】
第2経路20は、第1経路10における不要な信号に対して同振幅かつ逆位相のキャンセル信号を生成し、第1経路10の信号に合成させることで、第1経路10における不要な信号を減衰させる機能を有する。本実施形態に係る第2経路20では、第2容量C2及び第3容量C3は、キャンセル信号の振幅を調整する機能を有する。
【0025】
2IDTの縦結合型共振子22は、2つのIDT電極で構成されており、縦結合型共振子22に入力された入力信号の位相を調整する機能を有する。縦結合型共振子22では、それぞれのIDT電極において励振される定在波の位相がλ/2だけずれるように、IDTピッチ(電極指のピッチ)、IDTの極性、及びIDT間のギャップが設定されている。縦結合型共振子22は、入力信号の位相をおおよそλ/2だけ変え、入力信号に対して逆位相の出力信号を生成し、出力することができる。この結果、第2経路20は、第1経路10における不要な信号と逆位相のキャンセル信号を生成することができる。なお、縦結合型共振子22が位相を調整する帯域は、IDT電極の共振周波数などを変更することで調整することができる。なお、おおよそλ/2とは、製造ばらつきなどで変化し得る位相の範囲を含む。
【0026】
第1容量C1は、第2経路20と、第3経路24とに接続されている。より具体的には、第1容量C1の一端は、第2容量C2及び2IDTの縦結合型共振子22を接続する経路に接続され、第1容量C1の他端は、第3経路24に接続されている。なお、第3経路24と第1容量C1とを接続する点と、接地端子g11との間には、例えば配線によりインダクタンス(図示しない。)が生じている。
【0027】
<<1.2.フィルタ装置の構造>>
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係るフィルタ装置1の構造について説明する。
図3は、本実施形態に係るフィルタ装置1の一部を示す上面図である。また、
図4は、
図3に示すフィルタ装置を一点鎖線で示されるA-A’で切り取った断面図である。
【0028】
フィルタ装置1は、圧電基板42を有する。圧電基板42は、SAWが用いられる場合には、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)又はニオブ酸リチウム(LiNbO3)などの圧電体を含み、BAWが用いられる場合には、例えば窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体を含んでもよい。例えば、送信フィルタ回路12、受信フィルタ回路14、及び第2経路20などは、圧電基板42の上に形成されている。
【0029】
図3には、送信フィルタ回路12の並列腕共振子P11と、接地端子g11と、第2経路20が有する2IDTの縦結合型共振子22と、第2容量C2と、が示されている。2IDTの縦結合型共振子22及び第2容量C2は、第1配線43により接続されている。ここで、第1配線43は、第2経路20の一部を形成している。また、直列腕共振子S11及び接地端子g11は、第2配線45により接続されている。第2配線45は、第3経路24の一部を形成している。第1配線43は、破線部分において、圧電基板42と第2配線45との間を通過している。つまり、第1配線43と第2配線45とは、立体的に交差している。
【0030】
図4には、
図3のA-A’の断面図が示されている。
図4に示すように、A-A’の断面では、5つの層が形成されている。具体的には、下から順に、圧電基板42、第1配線43、中間層44、第2配線45、及び表面層46が形成されている。
【0031】
中間層44は、第1配線43及び第2配線45に挟まれる空間に配置されている。中間層44は、絶縁体で形成されており、例えばセラミックで形成されたセラミック層であってもよい。セラミック層は、例えばSiO2などのガラスであってもよい。表面層46は、例えばSiNなどであってもよい。表面層46が第2配線45の上に形成されることにより、第2配線45の表面が保護される。
【0032】
また、本実施形態では、第1配線43と第2配線45とが対向することで、第1容量C1が発生している。第1容量C1の大きさは、対向している第1配線43と第2配線45との面積、第1配線43と第2配線45との間の距離、及び中間層44の材質又は形状などを適宜変更することによって調整することができる。第1容量C1の大きさを変更することで、第2経路20により生成されるキャンセル信号の振幅や位相を調整することができる。つまり、第1容量C1は、キャンセル信号を調整するためのパラメータの1つとなっている。このため、第1容量C1を調整することで、例えば第2容量C2の容量を変更(例えば、増加)しなくとも、適切なキャンセル信号を生成することが可能になる。
【0033】
<<1.3.効果>>
図5及び
図6を参照して、本実施形態に係るフィルタ装置1の効果について説明する。
図5は、本実施形態に係るフィルタ装置1における、送信入力端子Txから受信出力端子Rxへの伝送特性(以下、「アイソレーション特性」とも称する。)を示す図である。
図6は、送信入力端子Txから第2共通端子30への減衰特性を示す図である。
【0034】
図5において、送信帯域は、送信フィルタ回路12の通過帯域を示す。また、受信帯域は、受信フィルタ回路14の通過帯域を示す。
図5において、実線は本実施形態に係るフィルタ装置1におけるアイソレーション特性、破線は第1容量C1が形成されていないフィルタ装置(比較例)におけるアイソレーション特性を示している。
【0035】
図5に示すように、本実施形態に係るフィルタ装置1では、比較例と比較して、受信帯域における減衰が改善されている。すなわち、送信フィルタ回路12における受信帯域の減衰量を大きくすることができる。これは、上記のように第1容量C1が形成されることで、キャンセル信号を生成するためのパラメータが増加し、第1容量C1が存在しない場合と比較して、不要な信号と同振幅かつ同位相のキャンセル信号を生成しやすくなったためである。これにより、送信フィルタ回路12に入力された信号が受信フィルタ回路14に漏れて、受信帯域に混ざることが抑止される。この結果、受信フィルタ回路14の受信感度が低下することが抑止される。
【0036】
送信フィルタ回路12では、一般的には、数GHz程度の高周波に発生する副共振の減衰極により、高周波において信号が減衰される。当該副共振による減衰極は、並列腕共振子P11~P13の容量と、当該並列腕共振子P11~P13から接地端子g11又はg12までの配線により形成されるインダクタンスとにより形成される。具体的には、減衰極は、例えば、並列腕共振子P11の容量と、当該並列腕共振子P11から接地端子g11までの配線により形成されるインダクタンスとによる、直列LC共振により形成される。このため、第1容量C1が形成されていない場合には、当該減衰極を低周波数側へシフトさせたいとき、並列腕共振子P11の容量を増加、又はインダクタンスを増加させる必要があった。これらの増加のためには、並列腕共振子又はフィルタ装置を形成しているパッケージの内層のインダクタンスなどのサイズアップ等が必要となるため、フィルタ装置の小型化が困難であった。
【0037】
図6では、実線は本実施形態に係るフィルタ装置1における減衰特性、破線は第1容量C1が形成されていないフィルタ装置(比較例)における減衰特性を示している。
図6に示すように、本実施形態に係るフィルタ装置1における減衰極は、比較例における減衰極よりも低周波数側にシフトしている。つまり、第1容量C1が形成されていることで、上記の直列LC共振に基づく減衰極が低周波数側にシフトしている。
【0038】
このように、本実施形態では、並列腕共振子などのサイズアップ等を行わなくとも、高周波に発生する副共振による減衰極を調整することができる。つまり、本実施形態では、小型化を実現しつつ、減衰極を低周波数側にシフトすることができる。
【0039】
<2.第2実施形態>
図7~
図9を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、主に、異なる点について説明する。
【0040】
<<2.1.フィルタ装置の回路図>>
図7は、第2実施形態に係るフィルタ装置2の回路図である。また、
図8は、第2実施形態に係る送信フィルタ回路13の回路図である。さらに、
図9は、第2実施形態に係るフィルタ装置2におけるアイソレーション特性を示す図である。
【0041】
まず、
図7及び
図8を参照して、第2実施形態に係るフィルタ装置2の回路図について説明する。
図7に示すように、第2実施形態に係るフィルタ装置2は、主に、送信入力端子Txと、受信出力端子Rxと、第1経路50と、第2経路52と、第2共通端子30と、第4容量C4とを備える。
【0042】
第2実施形態に係る第1経路50は、送信入力端子Txと、受信出力端子Rxとを接続し、送信フィルタ回路13及び受信フィルタ回路15を有している。第2実施形態に係る送信フィルタ回路13は、
図8に示すように、第1実施形態に係る送信フィルタ回路12と同様に、4つの直列腕共振子S11~S14と、3つの並列腕共振子P11~P13と、2つの接地端子g11及びg12と、を備えている。第2実施形態に係る送信フィルタ回路13は、第1実施形態に係る送信フィルタ回路12と比較して、最も送信入力端子Txに近い並列腕共振子P11が、容量を介して第2経路に接続されていない点で異なる。
【0043】
図7に戻って、第2実施形態に係るフィルタ装置2の回路図について説明する。第2実施形態に係る受信フィルタ回路15は、第1実施形態に係る受信フィルタ回路14と同様に、2つの直列腕共振子S21及びS22と、2つの並列腕共振子P21及びP22と、縦結合型共振子140と、を備えている。第2実施形態に係る受信フィルタ回路15は、第1実施形態に係る受信フィルタ回路14と異なり、並列腕共振子P21と接地端子g21とを接続する第3経路56に、第4容量C4の一端が接続されている。
【0044】
第2実施形態に係る第2経路52は、第1経路50において、受信フィルタ回路15に並列に接続されている。第2経路52は、第1共通端子16に近い方から順に、第5容量C5、接地された2IDTの縦結合型共振子54、及び第6容量C6を備えている。縦結合型共振子の左側のIDT電極は第5容量C5に接続され、縦結合型共振子54の右側のIDT電極は第6容量C6に接続されている。また、第4容量C4の一端は、第5容量C5と縦結合型共振子54の左側のIDT電極とを接続する経路に接続されている。
【0045】
ここで、第4容量C4を形成する方法は特に限定されないが、例えば、第3経路56と、第5容量C5と縦結合型共振子54とを接続する経路と、が対向することで第4容量C4が形成されていてもよい。
【0046】
<<2.2.効果>>
図9を参照して、第2実施形態に係るフィルタ装置2のアイソレーション特性について説明する。実線は本実施形態に係るフィルタ装置2におけるアイソレーション特性を示し、破線は第4容量C4が接続されていないフィルタ装置(比較例)におけるアイソレーション特性を示している。
図9に示すように、本実施形態に係るフィルタ装置2では、第4容量C4が接続されることで、比較例と比較して、送信帯域における減衰が改善されていることがわかる。すなわち、受信フィルタ回路15における送信帯域の減衰量を大きくすることができる。これは、第4容量C4が形成されることで、キャンセル信号を生成するためのパラメータが増加し、第2経路52において不要な信号と同振幅かつ同位相のキャンセル信号を生成しやすくなったためである。
【0047】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、フィルタ装置2の小型化を実現しつつ、高周波帯域に発生する副共振に基づく減衰極を低域側にシフトすることができる。
【0048】
<3.第3実施形態>
<<3.1.第3実施形態の回路図>>
図10及び
図11を参照して、第3実施形態について説明する。
図10は、第3実施形態に係るフィルタ装置3の回路図である。また、
図11は、第3実施形態に係るフィルタ装置3におけるアイソレーション特性を示す図である。
【0049】
第3実施形態に係るフィルタ装置3では、第2実施形態に係るフィルタ装置2と異なり、第2経路62が、第1経路60において、送信フィルタ回路13及び受信フィルタ回路15に並列に接続されている。より具体的には、第2経路62が、送信入力端子Txの近傍と、受信出力端子Rxの近傍とに接続されている。また、第2経路62は、送信入力端子Txから近い順に、第8容量C8、接地された2IDTの縦結合型共振子64、及び第9容量C9を備えている。縦結合型共振子64の左側のIDT電極は、第8容量C8に接続され、縦結合型共振子64の右側のIDT電極は、第9容量C9に接続されている。また、縦結合型共振子64の右側のIDT電極と第9容量C9とを接続する経路には、第7容量C7の一端が接続されている。また、当該第7容量C7の他端は、受信フィルタ回路15が有する並列腕共振子P21と接地端子g21とを接続する第3経路66に接続されている。
【0050】
<<3.2.効果>>
図11を参照して、第3実施形態に係るフィルタ装置3におけるアイソレーション特性について説明する。
図11において、実線は本実施形態に係るフィルタ装置3におけるアイソレーション特性を示し、破線は第7容量C7が形成されていないフィルタ装置(比較例)におけるアイソレーション特性を示している。
図11に示すように、本実施形態では、送信帯域と受信帯域とにおいて、比較例と比較して、減衰が改善されている。すなわち、本実施形態によれば、受信フィルタ回路15における送信帯域の減衰量を大きくし、さらに、送信フィルタ回路13における受信帯域の減衰量を大きくすることができる。これは、第7容量C7が追加されることで、不要な信号をキャンセルするためのパラメータが増加し、不要な信号をキャンセルすることができたためである。
【0051】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、フィルタ装置3の小型化を実現しつつ、高周波帯域に発生する副共振に基づく減衰極を低域側にシフトすることができる。
【0052】
<4.1.変形例>
以下、
図12及び
図13を参照して、上記のフィルタ装置の変形例について説明する。
図12は、第1変形例に係るフィルタ装置4の回路図である。また、
図13は、第2変形例に係るフィルタ装置5の回路図である。これらの変形例では、第3実施形態に係るフィルタ装置3における第2経路62の構成が異なっている。
【0053】
<<4.1.第1変形例の回路図>>
図12に示すように、第1変形例に係るフィルタ装置4では、第2経路72は、送信フィルタ回路13及び受信フィルタ回路15に並列に接続されている。より具体的には、フィルタ装置4は、第1経路70において、送信入力端子Txの近傍と、第1共通端子16と、受信出力端子Rxの近傍と、に接続されている。このように、第1変形例に係る第2経路72は、第1経路70において3点で接続されている。また、第2経路72は、送信入力端子Txの近傍に接続された第11容量C11と、第1共通端子16に接続された第12容量C12と、受信出力端子Rxの近傍に接続された第13容量C13と、これらの容量に接続された、3IDTの縦結合型共振子74と、を有している。
【0054】
縦結合型共振子74は、3つのIDT電極により構成されている。これらのIDT電極は、いずれも互いに異なる接地端子に接続されている。また、これらの3つのIDT電極は、それぞれ左側から順に、第11容量C11、第12容量C12、及び第13容量C13に接続されている。
【0055】
また、第1変形例に係るフィルタ装置4は、第10容量C10を備えている。第10容量C10の一端は、第2経路72に接続され、第10容量C10の他端は、並列腕共振子P21と接地端子g21とを接続する第3経路76に接続されている。より具体的には、第10容量C10は、縦結合型共振子74の右側の共振子と第13容量C13とを接続する経路と、第3経路76と、に接続されている。
【0056】
<<4.2.第2変形例の回路図>>
図13に示すように、第2変形例に係るフィルタ装置5では、第1変形例と同様に、第1経路80において、送信入力端子Txの近傍と、第1共通端子16と、受信出力端子Rxの近傍と、に接続されている。また、第2経路82は、送信入力端子Txの近傍に接続された第16容量C16と、第1共通端子16に接続された第17容量C17と、受信出力端子Rxの近傍に接続された第18容量C18と、これらの容量に接続された2IDTの縦結合型共振子84と、を有している。
【0057】
縦結合型共振子84が備える2つのIDT電極は、上記の容量に接続されている。具体的には、縦結合型共振子84の左側のIDT電極は、第16容量C16及び第17容量C17に接続されており、右側のIDT電極は、第18容量C18に接続されている。
【0058】
また、第2変形例に係るフィルタ装置5は、第15容量C15を備えている。第15容量C15の一端は、第2経路82に接続され、第15容量C15の他端は、並列腕共振子P21と接地端子g21とを接続する第3経路86に接続されている。より具体的には、第18容量C18は、縦結合型共振子84の右側の共振子と第18容量C18とを接続する経路と、第3経路86と、に接続されている。
【0059】
<<4.3.効果>>
変形例1、2に係るフィルタ装置4、5によれば、第3実施形態に係るフィルタ装置3と同様に、送信帯域と受信帯域とにおける減衰を改善することができる。また、第1変形例及び第2変形例においても、第1実施形態と同様に、フィルタ装置4,5の小型化を実現しつつ、高周波帯域に発生する副共振に基づく減衰極を低域側にシフトすることができる。
【0060】
<5.補足>
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、第2経路は、第1経路において2点又は3点で接続されているが、第2経路が第1経路に接続される点数はこれに限らず、4点以上であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、第2経路と第3経路とに接続された容量が第2経路と第3経路とが対向することで形成されている例について説明した。これに限らず、当該容量は、各種の方法で形成されていてもよい。例えば、第1実施形態において、第1容量C1は、第2経路20と、並列腕共振子P11とが対向することで形成されていてもよい。より具体的には、第1容量C1は、第2経路20と、並列腕共振子P11が備える櫛歯電極又はバスバー(図示しない。)とが対向することで形成されていてもよい。また、当該バスバーは、接地端子g11に接続されるバスバーであってもよい。同様に、第4容量C4、第7容量C7、第10容量C10、及び第15容量C15を形成する方法も、上記実施形態に限定されるものではない。
【0063】
また、第3経路に接続される容量は、送信フィルタ回路又は受信フィルタ回路が備える複数の並列腕共振子のうちの、いずれの並列腕共振子に接続されていてもよい。例えば、第1実施形態では、第2経路20に接続されている第1容量C1は、並列腕共振子P11と接地端子g11とを接続する第3経路24に接続されている。これに限らず、第1容量C1は、例えば、並列腕共振子P12と接地端子g11とを接続する経路、又は並列腕共振子P13と接地端子g12とを接続する経路などに接続されていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第2経路が有する接地された共振子は、2IDT又は3IDTの縦結合型共振子であるものとして説明した。これに限らず、第2経路が有する接地された共振子は、4つ以上のIDT電極を有する縦結合型共振子であってもよい。また、縦結合型共振子が有するIDT電極の数に応じて、第2経路が第1経路に接続される点の数が適宜設計され得る。
【0065】
また、上記実施形態では、本発明に係るフィルタ装置がデュプレクサに適用される例について説明した。これに限らず、本発明に係るフィルタ装置は、フィルタ回路を備える、各種のフィルタ装置に適用することができる。フィルタ装置は、例えば、1つのフィルタ回路を有するフィルタ装置であってもよい。また、フィルタ装置は、2つのフィルタ回路を複合した上述のデュプレクサ、3つのフィルタ回路を複合したトライプレクサ、4つのフィルタ回路を複合したクアッドプレクサ、又は8つのフィルタ回路を複合したオクタプレクサなどを含んでもよい。
【0066】
また、第1実施形態では、第1配線43と第2配線45との間に、セラミック層が配置されるものとして説明したが、当該セラミック層は配置されていなくてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、第2経路に配置されている共振子は、主に縦結合型の共振子である。これに限らず、第2経路に配置されている共振子は、上記実施形態において並列腕共振子として用いられる共振子であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,2,3,4,5…フィルタ装置、10,50,60,70,80…第1経路、12,13…送信フィルタ回路、14,15…受信フィルタ回路、16…第1共通端子、20,52,62,72,82…第2経路、22,54,64,74,84,140…縦結合型共振子、24,56,66,76,86…第3経路、30…第2共通端子、42…圧電基板、43…第1配線、44…中間層、45…第2配線、46…表面層、50…第1経路、容量…C1~C18、接地端子…g11,g12,g21、並列腕共振子…P11~P13,P21,P22、直列腕共振子…S11~S14,S21,S22、送信入力端子Tx、受信出力端子Rx