(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ガラスロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 35/00 20060101AFI20240110BHJP
B65G 39/10 20060101ALI20240110BHJP
B65G 49/06 20060101ALI20240110BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C03B35/00
B65G39/10
B65G49/06 Z
B65H20/02 Z
(21)【出願番号】P 2019216853
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】山城 陸
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】桐畑 洋平
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202245324(CN,U)
【文献】実開昭63-11534(JP,U)
【文献】特開2004-189443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B35/00-35/26
B65G13/00-13/12
B65G39/00-39/20
B65G49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状ガラスフィルムを成形し、成形した前記帯状ガラスフィルムを横搬送部で横方向に搬送した後、巻取部でロール状に巻き取ることでガラスロールを得るガラスロールの製造方法であって、
前記横搬送部に、複数のローラを備えたローラコンベアを配置し、
前記ローラコンベアのうち少なくとも搬送方向下流側の領域を、
複数の前記ローラを前記帯状ガラスフィルムの幅方向に離間して配置したローラユニットを備え、前記ローラユニットが前記帯状ガラスフィルムの搬送方向に沿った複数箇所に配置され、かつ、前記ローラユニットの、前記幅方向で隣接するローラ間の空間と前記搬送方向で対向するように、当該ローラユニットに隣接する他のローラユニットのローラを配置した千鳥型ローラコンベアで構成し、
前記帯状ガラスフィルムを、前記千鳥型ローラコンベアにより前記巻取部に供給することを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項2】
隣接する前記ローラユニットの軸間距離を、前記ローラの直径寸法よりも小さくした請求項1に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項3】
前記各ローラユニットの、前記幅方向に隣接するローラの間に、前記ローラよりも外径寸法が小さいスペーサを介在させた請求項1または2に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項4】
前記ローラと前記スペーサの外径寸法の比が1.1以上、1.5以下である請求項3に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項5】
前記ローラの軸方向長さを、前記スペーサの軸方向長さよりも短くした請求項3または4に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項6】
前記ローラコンベアのうち、前記千鳥型ローラコンベアよりも搬送方向上流側の領域に、前記帯状ガラスフィルムを検査する検査装置を配置した請求項1~5何れか1項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項7】
前記検査装置に光源を設け、前記ローラコンベアのうち搬送方向上流側の領域の、前記搬送方向で隣接するローラ間の隙間を、前記光源から照射された光の通過経路として用いる請求項6に記載のガラスロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスロールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット型PC等のモバイル端末は、薄型、軽量であることが求められるため、これらの端末に組み込まれるガラス基板に対しては、薄板化への要請が高まっているのが現状である。このような現状の下、フィルム状にまで薄板化(例えば、厚みが300μm以下)されたガラス基板であるガラスフィルムが開発、製造されるに至っている。
【0003】
ところで、ガラスフィルムの製造工程には、これの元となる帯状ガラスフィルムを製造する工程が含まれることが通例である。そして、特許文献1には、オーバーフローダウンドロー法、リドロー法、スロットダウンドロー法等に代表されるダウンドロー法を利用して、帯状ガラスフィルムを製造する手法の一例が開示されている。
【0004】
同文献に開示された手法は、成形装置により帯状ガラスフィルムを縦方向下方に引き出しつつ成形する成形工程と、成形装置の鉛直下方に配置したローラコンベアにより、成形後の帯状ガラスフィルムを湾曲した湾曲搬送経路に沿って搬送することで、その搬送方向を縦方向下方から横方向に転換させる搬送方向転換工程と、搬送方向を転換させた帯状ガラスフィルムを横搬送経路に沿って横方向に搬送する横搬送工程と、レーザー切断装置により、横方向に搬送中の帯状ガラスフィルムから幅方向両端に存する非有効部を切断除去する切断除去工程と、非有効部が切断除去された帯状ガラスフィルムを巻取部で巻き取ってガラスロールとする巻取工程とを含んでいる。
【0005】
ところで、横搬送工程の最終段階、すなわち巻取部の搬送方向上流側の直前位置では、成形した帯状ガラスフィルムの検査、特に外観検査を行う場合がある。この検査装置は、例えば、帯状フィルムの表裏側のうち何れか一方側に光源が配置されると共に、他方側にガラスフィルムの表面を撮影する撮像装置が配置された構成を有する。撮像装置で得られた画像データを情報処理装置で解析することにより、ガラスフィルムの表面(表裏面あるいは端面)に生じた傷等の欠陥の有無が判定され、この判定結果に基づいて既に巻き取ったガラスロールの良否が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、帯状ガラスフィルムの検査を行うためには、光源からの光をガラスフィルムおよびコンベアに対して通過させる必要がある。ガラスフィルムに光を通過させることに格別の困難性はない。その一方で、コンベアとして例えばベルトコンベアを使用すると、光がベルトで遮られるため、光の通過経路を確保できず、必要な検査を行うことができない。このような事情から、検査工程では、帯状ガラスフィルムを搬送するコンベアとしてローラコンベアを使用する場合が多い。ローラコンベアであれば、搬送方向で隣り合うローラ間に隙間が存在するため、この隙間を光の通過経路として活用することができ、その結果、上記の検査を行うことが可能となる。
【0008】
このように横搬送部にローラコンベアを配置した場合、可撓性に富むガラスフィルムの端部がローラ間の隙間に入り込み、その後の搬送動作によってガラスフィルムに割れを生じるおそれがある。
【0009】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、横搬送部での搬送中、特に横搬送部から巻取部へ移行する直前でのガラスフィルムの割れや破損を防止することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、帯状ガラスフィルムを成形し、成形した前記帯状ガラスフィルムを横搬送部で横方向に搬送した後、巻取部でロール状に巻き取ることでガラスロールを得るガラスロールの製造方法であって、前記横搬送部に、複数のローラを備えたローラコンベアを配置し、前記ローラコンベアのうち少なくとも搬送方向下流側の領域を、複数の前記ローラを前記帯状ガラスフィルムの幅方向に離間して配置したローラユニットを備え、前記ローラユニットが前記帯状ガラスフィルムの搬送方向に沿った複数箇所に配置され、かつ、前記ローラユニットの、前記幅方向で隣接するローラ間の空間と前記搬送方向で対向するように、当該ローラユニットに隣接する他のローラユニットのローラを配置した千鳥型ローラコンベアで構成し、前記帯状ガラスフィルムを、前記千鳥型ローラコンベアにより前記巻取部に供給することにより特徴付けられる。
【0011】
このように、本方法において、ローラコンベアのうち少なくとも搬送方向下流側の領域を千鳥型ローラコンベアで構成することにより、隣接するローラユニット間の隙間が搬送方向に凹凸を持った形態となる。そのため、ローラユニット間の隙間に帯状ガラスフィルムの端部が入り込み難くなる。従って、検査等のガラスフィルムに対する処理が終わった後に、横搬送部から巻取部に移行する直前で、帯状ガラスフィルムが割れるのを回避することが可能となる。なお、搬送方向下流側の領域を、ベルトコンベアで構成することも考えられるが、搬送ラインが長尺化することと、巻取部とベルトコンベアとが干渉するおそれがあることから、好ましくない。
【0012】
本方法においては、隣接する前記ローラユニットの軸間距離を、前記ローラの直径寸法よりも小さくするのが好ましい。
【0013】
これにより、各ローラの外周面が他のローラユニットの幅方向で隣接するローラ間の空間に入り込むため、隣接するローラユニット間に、幅方向に延びる長大な(搬送される帯状ガラスフィルムの幅を大きく超えるような)直線状の隙間が形成されることはない。そのため、ローラユニット間の隙間への帯状ガラスフィルムの侵入を確実に防止することが可能となる。
【0014】
本方法においては、前記各ローラユニットの、前記幅方向に隣接するローラの間に、前記ローラよりも外径寸法が小さいスペーサを介在させるのが好ましい。
【0015】
これにより、各ローラの外周面と搬送方向で対向する隙間の幅を狭くすることができる。仮に、ローラユニット間の隙間に帯状ガラスフィルムの端部が落ち込もうとした場合であっても、スペーサに帯状ガラスフィルムの端部が乗り上げることで、隣接するローラにガラスフィルムの端部がさらに乗り上げることとなり、帯状ガラスフィルムの端部が破損することなく搬送ラインに復帰することができる。従って、ローラユニット間の隙間への帯状ガラスフィルムの侵入を確実に防止することができる。
【0016】
本方法においては、前記ローラと前記スペーサの外径寸法の比は1.1以上、1.5以下であるのが好ましい。
【0017】
この比が1.1を下回ると、隣接するローラユニット間でのローラ同士のオーバーラップ量が小さくなるため、ローラユニット間の隙間が幅方向に延びる直線に近い形態となり、その結果、当該隙間に帯状ガラスフィルムの端部が侵入し易くなる。この比が1.5を上回ると、スペーサが小径化するため、スペーサと当該スペーサと搬送方向で対向するローラとの間の隙間に帯状ガラスフィルムの端部が落ち込んだ際に、当該端部がローラに乗り上げ難くなり、帯状ガラスフィルムの搬送ラインへの復帰が難しくなる。
【0018】
本方法においては、前記ローラの軸方向長さを、前記スペーサの軸方向長さよりも短くするのが好ましい。
【0019】
これにより、隣接するローラユニット間でローラ同士の接触干渉を防止することが可能となり、千鳥型ローラコンベアのフリクションを低減することができる。
【0020】
本方法においては、前記ローラコンベアのうち、前記千鳥型ローラコンベアよりも搬送方向上流側の領域に、前記帯状ガラスフィルムを検査する検査装置を配置することができる。
【0021】
このようにローラコンベアのうち、千鳥型ローラコンベアよりも搬送方向上流側の領域に検査装置を配置することで、帯状ガラスの製造工程の最終段階で製品検査を行うことが可能となる。そのため、ガラスロールの不良率を低減することができる。
【0022】
本方法においては、前記検査装置に光源を設け、前記ローラコンベアのうち搬送方向上流側の領域の、前記搬送方向で隣接するローラ間の隙間を、前記光源から照射された光の通過経路として用いることができる。
【0023】
検査装置での搬送手段としてベルトコンベアを使用すると、検査装置の光源から照射された光がベルトで遮蔽されるため、検査を行うことが困難となる。ローラコンベアのうち搬送方向上流側の領域の、搬送方向で隣接するローラ間の隙間を、検査装置の光源から照射された光の通過経路として用いることにより、検査装置による検査を行うことが可能となる。
【0024】
また、上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラスフィルムを横搬送部で横方向に搬送する際に、前記横搬送部に、複数のローラを備えたローラコンベアを配置し、前記ローラコンベアを、複数の前記ローラを前記ガラスフィルムの幅方向に離間して配置したローラユニットを備え、前記ローラユニットが前記ガラスフィルムの搬送方向に沿った複数箇所に配置され、かつ、前記ローラユニットの、前記幅方向で隣接するローラ間の空間と前記搬送方向で対向するように、当該ローラユニットに隣接する他のローラユニットのローラを配置した千鳥型ローラコンベアで構成したことによって特徴付けられる。
【0025】
ガラスフィルム(帯状ガラスフィルムの他、枚葉状のガラスフィルムも含む)を横搬送部で搬送する際に、何らかの理由で横搬送部の一部をローラコンベアで構成せざるを得ない場合がある。この場合、既に述べたように、搬送されるガラスフィルムの先端がローラ間の隙間に入り込んでガラスフィルムに割れを生じるおそれがある。ローラコンベアを既に述べた千鳥型ローラコンベアで構成することにより、ローラユニット間の隙間が搬送方向に凹凸を持った形状となるため、ガラスフィルムの端部が該隙間に侵入し難くなり、ガラスフィルムの破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ガラスフィルムを横搬送部で搬送する際のガラスフィルムの割れや破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態にかかるガラスロールの製造方法の概略を示す縦断側面図である。
【
図2】本実施形態にかかるガラスロールの製造方法で使用されるローラコンベアを示す平面図である。
【
図3】
図2に示すローラコンベアのうち、千鳥型ローラコンベアの一部を拡大して示す平面図である。
【
図4】(a)図は、汎用型ローラコンベアを使用したガラスロールの製造方法を示す平面図であり、(b)図はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法について、添付の図面を参照して説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係るガラス
ロールの製造方法は、ダウンドロー法、例えばオーバーフローダウンドロー法により帯状ガラスフィルムGを縦方向下方に引き出しつつ成形する成形部2と、成形した帯状ガラスフィルムGを湾曲した湾曲搬送経路に沿って搬送することで、その搬送方向を縦方向下方から横方向に転換させる搬送方向転換部3と、搬送方向を転換させた帯状ガラスフィルムGを横搬送経路に沿って横方向に搬送する横搬送部4と、横方向に搬送中の帯状ガラスフィルムGから非有効部G1を切断除去する切断除去部5と、有効部のみからなる帯状ガラスフィルムGを巻き取ってガラスロールRを製作する巻取部6とを有する。なお、非有効部が切断除去された帯状ガラスフィルム(有効部)Gの厚みは、300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下とする。
【0030】
成形部2は、上端部にオーバーフロー溝7aが形成された断面が略楔形の成形体7と、成形体7の直下に配置されてリボン状の溶融ガラスGbを表裏両側から挟む冷却ローラ8と、冷却ローラ8の直下に配備されて上下方向複数段に配設されたアニーラローラ9を有するアニーラ10とから構成されている。詳述すると、成形部2の作用に着目した場合の主成形部2aは、オーバーフロー溝7aの上方から溢流した溶融ガラスGaを、両側面に沿ってそれぞれ流下させ、下端で合流させてリボン状の溶融ガラスGbとする成形体7と、リボン状の溶融ガラスGbの幅方向収縮を規制して所定幅の帯状ガラスフィルムGとする冷却ローラ8とから構成される。そして、この主成形部2aの下方に、帯状ガラスフィルムGに対して除歪処理を施すためのアニーラ10を配備することにより、上記の成形部2が構成されている。
【0031】
アニーラ10の下方には、帯状ガラスフィルムGを表裏両側から挟持する支持ローラ11が配設され、支持ローラ11と冷却ローラ8との間、または支持ローラ11と何れか一箇所のアニーラローラ9との間で、帯状ガラスフィルムGを薄肉にすることを助長するための張力が付与されている。
【0032】
帯状ガラスフィルムGは、可撓性を付与できる程度の厚みとなるように成形される。なお、成形された帯状ガラスフィルムGには、幅方向(
図1では紙面に鉛直な方向)の中央に存して後に製品となる有効部と、有効部に対して幅方向の外側に存して除去の対象となる一対の非有効部G1とが含まれている。さらに、非有効部G1のうち、帯状ガラスフィルムGの幅方向端部に位置する部位には、他の部位よりも厚みの大きい耳部が形成される。
【0033】
支持ローラ11の下方には、帯状ガラスフィルムGの搬送方向を縦方向下方から横方向に変換する搬送方向転換部3が備えられている。この搬送方向転換部3には、帯状ガラスフィルムGの裏面側に、帯状ガラスフィルムGの方向変換を案内するガイド部材としての複数のガイドローラ12が湾曲状に配列され、これらのガイドローラ12は、帯状ガラスフィルムGの裏面に接触している。なお、これらのガイドローラ12は、帯状ガラスフィルムGの裏面に対して気流等を噴射することによって帯状ガラスフィルムGを非接触で支持するものであってもよい。また、ガイド部材としては、湾曲状に形成されたベルトコンベア状の形態をなすものを使用してもよく、あるいは、搬送方向転換部3にガイド部材を配設せずに、帯状ガラスフィルムGが裏面側からの外力の影響を受けることなく方向変換させるようにしてもよい。また、複数のガイドローラ12のうち一部のガイドローラ12が、帯状ガラスフィルムGの裏面と接触していてもよい。さらに、ガイドローラ12は、帯状ガラスフィルムGの一部(例えば幅方向両端部)のみを支持していてもよい。
【0034】
搬送方向転換部3の搬送方向下流側には、帯状ガラスフィルムGを横方向に搬送する横搬送部4が備えられている。この横搬送部4には、搬送方向に直列に3機のベルトコンベア13a、13b、13cが配列され、さらにその下流側にローラコンベア15と検査装置16とが設けられている。ベルトコンベア13a、13b、13cの搬送面、およびローラコンベア15の搬送面は横搬送経路を構成する。
【0035】
本実施形態では、直列に配置された3機のベルトコンベアとして、主コンベア13bと、主コンベア13bの上流側に配置された第一コンベア13aと、主コンベア13bの下流側に配置された第二コンベア13cとが使用される。本実施形態では、横搬送部4が、帯状ガラスフィルムGを水平方向に搬送するように構成されているが、搬送方向は水平方向に対して上下にそれぞれ45°未満の範囲内(好ましくは、30°未満の範囲内)で傾斜していてもよい。
【0036】
第一コンベア13aは、帯状ガラスフィルムGの裏面に対し、ガス(例えばエア)を噴射することが可能となっており、帯状ガラスフィルムGは、第一コンベア13a上を幅方向中央(主として有効部)のみが浮上した状態で搬送されていく。この第一コンベア13aは、帯状ガラスフィルムGの非浮上部(主として非有効部)を搬送するための無端状のベルト13aaと、ベルト13aaの内周側に配置され、上方に向かってガスを噴射するガス噴射器(図示省略)とを備えている。ベルト13aaには多数の微細な貫通孔(図示省略)が形成されており、ガス噴射器から噴射されたガスが貫通孔を通って帯状ガラスフィルムGの裏面に到達する。
【0037】
主コンベア13bでは、発泡樹脂からなる伸縮性を有するシートリボンS1がベルト13baの上面部に重ねられている。このシートリボンS1の上面が、帯状ガラスフィルムGを搬送支持する搬送支持面となる。主コンベア13bの下方には、シートリボンS1を巻回してなるシートロールr1が配備されており、このシートロールr1から上方に向かって引き出されたシートリボンS1は、ベルト13baの上流側端部からベルト13baの上面部を経由し、ベルト13baの下流側端部から下方に向かって送り出されるようになっている。このシートリボンS1は、ベルト13baの上面部に伸縮可能な状態で負圧により吸着保持されている。
【0038】
主コンベア13bの搬送方向中央部の上方には、帯状ガラスフィルムGの幅方向の両端部に形成された非有効部を切断除去する切断除去部5が配置されている。切断除去部5には、帯状ガラスフィルムGの非有効部と有効部の境界に対して局部加熱を行うレーザー照射器5aaと、レーザー照射器5aaによる加熱部位に対して冷却を行う冷媒噴射器5abとが設けられている。レーザー照射器5aaは、自身の下方を通過する帯状ガラスフィルムGの有効部と非有効部との境界に沿ってレーザーを連続的に照射する。冷媒噴射器5abは、帯状ガラスフィルムGにおけるレーザーが照射された部位に対して冷媒(例えば、ミスト状の水)を連続的に噴射する。
【0039】
これにより、レーザーにより加熱された部位と、冷媒により冷却された部位との間の温度差に起因して、帯状ガラスフィルムGに熱応力を発生させると共に、熱応力により、有効部と非有効部との境界に沿って切断線(有効部と非有効部とが分離した部位)を連続的に形成していく。このようにして、帯状ガラスフィルムGを長手方向に沿って連続的に切断していく。なお、本実施形態では、レーザー割断法により帯状ガラスフィルムGを切断しているが、レーザー溶断法により帯状ガラスフィルムGを切断するようにしてもよい。
【0040】
非有効部G1が切断除去された帯状ガラスフィルムGは、主コンベア13bから第二コンベア13cに移乗させる。一方、帯状ガラスフィルムGから除去された非有効部G1は、第二コンベア13cに移乗させずに、横搬送経路から下方に離脱させた後、廃棄する。
【0041】
第二コンベア13cは、発泡樹脂からなる伸縮性を有するシートリボンS2がベルト13caの上面部に重ねられており、このシートリボンS2の上面が、帯状ガラスフィルムGを搬送支持する搬送支持面を構成する。第二コンベア13cの下方には、シートリボンS2を巻回してなるシートロールr2が配備されており、このシートロールr2から上方に向かって取り出されたシートリボンS2が、ベルト13caの上流側端部からベルト13caの上面部を経由して、ベルト13caの下流側端部から下方に向かって送り出されるようになっている。シートリボンS2は、ベルト13caの上面部に吸着保持されていない。
【0042】
横搬送部4の終端部には、ローラコンベア15が配置される。このローラコンベア15のうち、上流側の領域は、これまで汎用されている汎用型ローラコンベア15aで構成され、下流側の領域はローラ152(
図2参照)を千鳥状に配置した千鳥型ローラコンベア15bで構成される。また、汎用型ローラコンベア15aの搬送方向中間部には、検査装置16が配置される。ローラコンベア15および検査装置16の詳細は後で述べる。
【0043】
ローラコンベア15の搬送方向下流側には、非有効部G1が除去された帯状ガラスフィルムGを巻芯6aの周囲にロール状に巻き取ってガラスロールRを製作する巻取部6が配置されている。巻取部6では、各コンベア13a,13b,13c,15の搬送速度と同期させて巻芯6aを回転駆動することにより、帯状ガラスフィルムGの巻き取りが行われる。巻取部6の下方には、保護シートSを巻回してなるシートロールrが配置されており、このシートロールrから取り出された保護シートSが、巻取部6で帯状ガラスフィルムGに重ねられ、さらに帯状ガラスフィルムGと共に巻き取られていくことによって、ガラスロールRが製作される。以上により、帯状ガラスフィルムGの製造方法の全工程が完了する。
【0044】
次にローラコンベア15および検査装置16の詳細を説明する。
【0045】
図2に示すように、ローラコンベア15のうち、上流側の汎用型ローラコンベア15aでは、各ローラ151が帯状ガラスフィルムGの幅方向全長にわたって均一な外径寸法を有する。また、ローラ151の隙間αは、幅方向に沿って凹凸のない直線状に形成される。
【0046】
図1に示すように、汎用型ローラコンベア15aの搬送方向中間部には検査装置16が配置される。検査装置16は例えば帯状ガラスフィルムGの外観検査を行う装置であり、本実施形態では、検査装置16の一例として、帯状ガラスフィルムGに光を照射する光源16aと、光源16aと対向して配置されたCCDカメラ等の撮像手段16bとを備える検査装置16が使用されている。
図1では、光源16aを帯状ガラスフィルムGよりも上方に配置し、撮像手段16bを帯状ガラスフィルムGよりも下方に配置しているが、光源16aと撮像手段16bの上下の位置関係を逆にしてもよい。光源16aからの光が照射された領域を撮像手段16bで撮影し、その画像データを図示しない情報処理装置で解析することにより、帯状ガラスフィルムGの表裏面や両側面における傷等の欠陥の有無が判定される。
【0047】
汎用型ローラコンベア15aのうち、撮像手段16bによる撮影領域では、ローラ間の隙間α(
図2参照)が光源16aからの光の通過経路となる。汎用型コンベア15bにおけるローラ151間の隙間の幅は、検査装置16による撮影領域と当該撮影領域を除く他の領域とでは異なり、
図1に示すように、撮影領域では、隙間αの幅が他の領域での隙間の幅よりも若干大きくなっている。これにより十分な広さの撮影領域を確保することができ、検査の高精度化を図ることが可能となる。もちろん検査装置16による検査精度に問題がなければ、撮影領域におけるローラ間の隙間の幅を縮小し、例えば、全てのローラ151間の隙間αの幅を均等にすることもできる。
【0048】
図2に示すように、ローラコンベア15のうち、下流側の千鳥型ローラコンベア15bでは、複数のローラ152が帯状ガラスフィルムGの幅方向に離間して同軸に配置される。幅方向に離間したローラ152の間には、スペーサ153が配置されている。
図3に示すように、ローラ152の外径寸法D1はスペーサ153の外径寸法D2よりも大きい(D1>D2)。ローラ152は軸に固定されるが、スペーサ153は軸の外周面に隙間嵌めで嵌合し、あるいは軸の外周面に軸受を介して装着することにより、軸に対して回転可能とされる。共通の軸に取り付けられたローラ152およびスペーサ153と、当該軸とでローラユニット154が構成される。千鳥型ローラコンベア15bでは、このローラユニット154が、搬送方向に沿った複数箇所に互いに平行となるように配置されている。なお、
図2の実施形態では、ローラ152間にスペーサ153を配置したローラコンベア15を図示しているが、スペーサ153を省略することもできる。また、スペーサ153として、ローラ形状のものを例示しているが、球形状のスペーサ153を使用することもできる。
【0049】
千鳥型ローラコンベア15bでは、各ローラユニット154の、幅方向で隣接するローラ152間の空間と搬送方向で対向するように、当該ローラユニット154に隣接する他のローラユニットのローラ152が配置される。具体的には、各ローラ152の外周面が微小な隙間βを介して他のローラユニット154のスペーサ153の外周面と対向している。隙間βの幅は、汎用型ローラコンベア15aでのローラ151間の隙間αの幅よりも小さい。
【0050】
この千鳥型ローラコンベア15bにおいては、隣接するローラユニット154間の軸間距離Mは、ローラ152の外径寸法(直径寸法)よりも小さくするのが好ましい。また、ローラ152の軸方向寸法L1は、スペーサ153の軸方向寸法L2よりも小さくするのが好ましい(L1<L2)。かかる構成であれば、各ローラ152の外周面が、他のローラユニット154の幅方向で隣接するローラ間の空間に入り込む。そのため、帯状ガラスフィルムGの幅方向から見ると、隣接するローラユニット154のうち、一方のローラユニットのローラ152と、他方のローラユニットのローラ152の各外周面の輪郭が部分的にオーバーラップした状態となる。ローラ152の軸方向寸法L1を、スペーサ153の軸方向寸法L2よりも小さくすることにより、隣接するローラユニット154間でローラ152同士の接触干渉を防止することが可能となり、千鳥型ローラコンベア15bのフリクションを低減することができる。
【0051】
ローラ152の外径寸法D1とスペーサ153の外径寸法D2の比(D1/D2)は、1.1以上で1.5以下が好ましい。この比が1.1を下回ると、隣接するローラユニット154間でのローラ152同士のオーバーラップ量が小さくなるため、隣接するローラユニット154間の隙間が幅方向の直線に近い形態となり、当該隙間に帯状ガラスフィルムGの端部が侵入し易くなる。上記の比が1.5を上回ると、スペーサ153が小径化するため、スペーサ153と当該スペーサと搬送方向で対向するローラ152との間の隙間に帯状ガラスフィルムGの端部が落ち込んだ際に、当該端部がローラ152に乗り上げ難くなり、帯状ガラスフィルムGの搬送ラインへの復帰が難しくなる。
【0052】
図1では、汎用型ローラコンベア15aのローラ151の外径寸法と、千鳥型ローラコンベア15bのローラ152の外径寸法とを等しくした場合を例示している。この場合、両コンベア15a、15bの搬送速度を等しくするため、両ローラ151、152は同じ回転数で駆動される。汎用型ローラコンベア15aのローラ151の外径寸法と、千鳥型ローラコンベア15bのローラ152の外径寸法を異なる寸法にしてもよいが、その場合には、両コンベア15a、15bが同じ搬送速度となるように、両ローラ151、152は異なる回転数で駆動する必要がある。
【0053】
既存のガラスロールRの製造方法においては、
図4(a)に示すように、横搬送部4の終端部に設けられたローラコンベア15’全体が、既に述べた汎用型ローラコンベア、つまりローラ151’の外径寸法を帯状ガラスフィルムGの幅方向で均一にしたローラコンベアで構成される。この場合、ローラ151’間の隙間α’が帯状ガラスフィルムGの幅方向全長にわたって延びる直線状となるため、
図4(b)に示すように、帯状ガラスフィルムGが搬送される際に、その先端部gが当該隙間α’に入り込み易くなる。隙間α’に帯状ガラスフィルムGの先端が入り込むと、帯状ガラスフィルムGに割れや破損を生じるため、製造ラインを一時的に停止させて復旧作業を行う必要があり、帯状ガラスフィルムGの生産効率が低下する。特に帯状ガラスフィルムGの薄板化がさらに進展した場合、先端部gがローラ151’間の隙間α’に益々入り込み易くなり、この問題がより深刻化する。同様の問題は、たとえローラコンベア15’のローラ151’間の隙間を狭めたとしても同様に生じ得る。ローラコンベア15’をベルトコンベアに置き換えれば、この問題を解消できるが、これでは検査装置16による、光の透過を利用した製品検査を行うことが困難となる。
【0054】
これに対し、既に説明した千鳥型ローラコンベア15bを使用すれば、
図2に示すように、ローラユニット154間の隙間βは搬送方向に凹凸を有する屈曲した形態となる。そのため、当該隙間に帯状ガラスフィルムGの先端部gが入り込みにくくなり、上記の不具合を解消することができる。
【0055】
特に本実施形態では、隣接するローラユニット154の軸間距離Mを、ローラ152の直径寸法D1よりも小さくしているので(M<D1)、各ローラ152の外周面が他のローラユニット154の幅方向で隣接するローラ152間の空間に入り込む。そのため、隣接するローラユニット154間に、幅方向に延びる長大な(搬送される帯状ガラスフィルムの幅を大きく超えるような)直線状の隙間が形成されることはない。そのため、ローラユニット154間の隙間への帯状ガラスフィルムの侵入を確実に防止することが可能となる
【0056】
以上の説明では、巻取部6に帯状ガラスフィルムGを供給するローラコンベア15のうち、下流側の領域のみを千鳥型ローラコンベア15bで構成し、上流側の領域を汎用型ローラコンベア15aで構成した場合を例示しているが、検査装置16による検査で必要とされる光の通過経路をローラユニット154間の隙間で確保できるのであれば、当該ローラコンベア15の全体を千鳥型ローラコンベア15bで構成することもできる。
【0057】
また、このように、巻取部6に帯状ガラスフィルムGを供給するローラコンベア15の一部または全部を千鳥型ローラコンベア15bで形成する他、
図1に示すガラスロールRの製造装置(又は帯状ガラスフィルムの製造装置)における横搬送部の何れかの部位に、何らかの理由でローラコンベアの設置が必要とされる場合には、当該ローラコンベアの一部または全部を本実施形態で説明した千鳥型ローラコンベア15bで構成することもできる。さらに、連続した帯状ガラスフィルムGを搬送する場合のみならず、帯状ガラスフィルムGをその幅方向に予め切断した枚葉タイプのガラスフィルムを横搬送部で搬送する場合において、横搬送部にローラコンベアを設置する場合にも、当該ローラコンベアの一部または全部を上記実施形態で説明した千鳥型ローラコンベア15bで構成することもできる。
【0058】
また、以上の説明では、帯状ガラスフィルムGを成形するために、オーバーフローダウンドロー法を採用したが、これに代えて、スロットダウンドロー法等の他のダウンドロー法やリドロー法等を採用することも可能である。加えて、帯状ガラスフィルムGを成形する方法としては、フロートバスから帯状ガラスフィルムを引き出して横搬送部で搬送するようにしたフロート法を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
2 成形部
3 搬送方向転換部
4 横搬送部
5 切断除去部
6 巻取部
15 ローラコンベア
15a 汎用型ローラコンベア
15b 千鳥型ローラコンベア
16 検査装置
16a 光源
16b 撮像手段
151 ローラ
152 ローラ
153 スペーサ
154 ローラユニット
D1 ローラの外径寸法
D2 スリーブの外径寸法
L1 ローラの軸方向寸法
L2 スリーブの軸方向寸法
G 帯状ガラスフィルム
M ローラユニットの軸間距離
R ガラスロール