(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】光学部品形成組成物、及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
G02B 1/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2020515599
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019017906
(87)【国際公開番号】W WO2019208763
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018086027
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/188452(WO,A1)
【文献】特開昭59-028149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0242336(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0242337(US,A1)
【文献】特開昭63-068161(JP,A)
【文献】Journal of Materials Science: Materials in Electronics,ドイツ,2006年,Volume 17, issue 9,p.723-733
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる化合物を含有する光学部品形成組成物。
[L
xTe(OR
1)
y] (1)
(上記式(1)中、Lは、アセチルアセトナート、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びメタクリル酸のいずれかであり、R
1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、1~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR
1は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記式(1)で表わされる化合物において、xが1~6の整数である、請求項1に記載の光学部品形成組成物。
【請求項3】
上記式(1)で表わされる化合物において、R
1が、置換又は無置換の炭素数1~6の直鎖状又は炭素数3~6の分岐状若しくは環状のアルキル基である、請求項1又は2に記載の光学部品形成組成物。
【請求項4】
溶媒をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学部品形成組成物。
【請求項5】
酸発生剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学部品形成組成物。
【請求項6】
酸架橋剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学部品形成組成物。
【請求項7】
酸拡散制御剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学部品形成組成物。
【請求項8】
重合開始剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学部品形成組成物。
【請求項9】
下記式(1)で表わされる化合物と、
酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散制御剤及び重合開始剤からなる群より選択される少なくとも1種と、
を含有する光学部品形成組成物。
[L
xTe(OR
1)
y] (1)
(上記式(1)中、Lは、OR
1以外の配位子であり、R
1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、1~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR
1は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の光学部品形成組成物を
硬化して得られる、光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品形成組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学部品形成組成物として、様々なものが提案されている。このような光学部品形成組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂又はアントラセン誘導体を含む組成物が挙げられる(例えば、下記特許文献1~4参照)。一方、非特許文献1~3には、テルル含有のポリマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-12061号公報
【文献】特開2015-174877号公報
【文献】特開2014-73986号公報
【文献】特開2010-138393号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Chem. Lett.,40,762-764(2011)
【文献】Angew. Chem. Int. Ed. 49, 10140 - 10144 (2010).
【文献】Org. Lett., 11, 1487 - 1490 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来数多くの光学部材向け組成物が提案されているにもかかわらず、保存安定性、構造体形成能(膜形成能)、耐熱性、透明性及び屈折率を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。さらに、非特許文献1~3にはテルル含有のポリマーが開示されているが、テルル含有のポリマーを光学部品形成組成物として適用することについて開示されていない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、光学特性に優れる光学部品形成組成物及びその硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表わされる化合物を含有する光学部品形成組成物。
[LxTe(OR1)y] (1)
(上記式(1)中、Lは、OR1以外の配位子であり、R1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。)
[2]
上記式(1)で表わされる化合物において、xが1~6の整数である、[1]の光学部品形成組成物。
[3]
上記式(1)で表わされる化合物において、yが1~6の整数である、[1]又は[2]の光学部品形成組成物。
[4]
上記式(1)で表わされる化合物において、R1が、置換又は無置換の炭素数1~6の直鎖状又は炭素数3~6の分岐状若しくは環状のアルキル基である、[1]~[3]のいずれかの光学部品形成組成物。
[5]
上記式(1)で表わされる化合物において、Lが、二座以上の配位子である、[1]~[4]のいずれかの光学部品形成組成物。
[6]
上記式(1)で表わされる化合物において、Lがアセチルアセトナート、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びメタクリル酸のいずれかである、[1]~[5]のいずれかの光学部品形成組成物。
[7]
溶媒をさらに含む、[1]~[6]のいずれかの光学部品形成組成物。
[8]
酸発生剤をさらに含む、[1]~[7]のいずれかの光学部品形成組成物。
[9]
酸架橋剤をさらに含む、[1]~[8]のいずれかの光学部品形成組成物。
[10]
酸拡散制御剤をさらに含む、[1]~[9]のいずれかの光学部品形成組成物。
[11]
重合開始剤をさらに含む、[1]~[10]のいずれかの光学部品形成組成物。
[12]
[1]~[11]のいずれかの光学部品形成組成物を用いて得られる硬化物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学特性に優れる光学部品形成組成物及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する。)について説明する。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、本実施形態のみに限定されない。
【0010】
[光学部品形成組成物]
本実施形態の光学部品形成組成物は、下記式(1)で表される化合物(「テルル含有化合物」ともいう。)を含有する光学部品形成組成物である。本実施形態の光学部品形成組成物は、テルルを含有することにより、高屈折率及び高透明性を有し、さらには優れた保存安定性、及び構造体形成能(膜形成能)を有する。また、本実施形態の光学部品形成組成物を硬化して得られる硬化物は、低温から高温までの広範囲の熱処理によって着色が抑制されるとともに、高屈折率、及び高透明性を有する。本実施形態の光学部品形成組成物は、高い耐熱性を有する。
【0011】
<テルル含有化合物>
本実施形態における、テルル含有化合物は、下記式(1)で表わされる化合物である。
[LxTe(OR1)y] (1)
【0012】
式(1)中、Lは、OR1以外の配位子であり、R1は、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニル基のいずれかであり、xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、xとyの合計は、1~6であり、xが2以上である場合、複数のLは同一でも異なっていてもよく、yが2以上である場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。
【0013】
R1としては、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状アルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、及び置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニル基のいずれかが挙げられる。R1が複数ある場合、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
R1の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロイコシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、ピレニル基、ビフェニル基、ヘプタセン基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、エチニル基 、プロアリル基、イコシニル基、パルギル基が挙げられる。これらの基は、異性体を包含する概念であり、例えば、ブチル基は、n-ブチル基に限らず、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってもよい。また、これらの基は、炭素数20を超えない範囲で置換基を有していてもよく、置換基としては、カルボキシル基、アクリル基、及びメタクリル基、並びにこれらの基を含有する基からなる群より選ばれる1種の官能基が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、R1は、硬化性、及び溶解性の観点から、炭素数1~6の直鎖状又は炭素数3~6の分岐状若しくは環状アルキル基であることが好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は炭素数3~4の分岐状若しくは環状アルキル基であることがより好ましい。置換基を有する場合、置換基としては、カルボキシル基、カルボキシル基を含有する基、アクリレート基及びメタクリレート基からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、アクリレート基及びメタクリレート基からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0016】
Lは、OR1以外の配位子であり、単座配位子であってもよく、二座以上の多座配位子であってもよい。Lが複数ある場合、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
単座配位子の具体例としては、アクリレート、メタクリレート、アミン、クロロ、シアノ、チオシアノ、イソチオシアナノ、ニトロ、ニトリト、トリフェニルホスフィン、ピリジン、シクロペンテン等が挙げられる。多座配位子の具体例としては、例えば、エチレンジアミン、アセチルアセトナート、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、ジエチレントリアミン、アクリル酸、メタクリル酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0018】
Lは、平坦化性の観点から、二座以上の多座配位子であることが好ましく、アセチルアセトナート、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びメタクリル酸のいずれかであることがより好ましく、アセチルアセトナート、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン、及びメタクリル酸のいずれかであることがさらに好ましい。
【0019】
xは、0~6の整数であり、yは、0~6の整数であり、x+yは、1~6である。xは、安全溶媒に対する溶解性の観点から、1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。yは、硬化性及び耐熱性の観点から、1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、2~4の整数であることがさらに好ましい。
【0020】
テルル含有化合物は、好ましくは下記式(1-1)、下記式(1-2)、又は下記式(1-3)で表される化合物である。
[Te(OR
1)
4] (1-1)
(式(1-1)中、R
1は、式(1)のものと同定義である。)
【化1】
(式(1-2)中、R
1は、式(1)のものと同定義であり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニル基である。)
【化2】
(式(1-3)中、R
1は、式(1)のものと同定義であり、R
9、及びR
11は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、R
8、及びR
10は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状又は炭素数3~20の分岐状若しくは環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、又は、置換又は無置換の炭素数2~20のアルキニル基である。)
【0021】
本実施形態におけるテルル含有化合物としては、特に限定されないが、以下の化合物が挙げられる。これらの中でも、式(TOX-1)、式(TOX-2)、式(TOX-3)、又は式(TOX-4)で表される化合物が好ましい。
【0022】
Te(OEt)4 (TOX-1)
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
(テルル含有化合物の製造方法)
本実施形態に係るテルル含有化合物は、例えば、以下の方法により得られる。すなわち、金属テルル、又は二酸化テルルを塩素ガス流通下で500℃程度に加熱させることにより、四塩化テルルを得る。次に、得られた四塩化テルルと、ナトリウムアルコキシドとを無触媒で、氷冷下で反応させることにより、式(1)において、xが0であり、yが1以上であるアルコキシテルル化合物を得ることができる。例えば、上述の式(TOX-1)で表される化合物(テトラエトキシテルル(IV))は、四塩化テルルと、エタノールとを反応させることにより得られる。また、金属テルルを陽極に用いた電気分解によってもテルル含有化合物を得ることができる。
【0031】
本実施形態において、OR1以外の配位子であるLは、各種の方法で得ることができる。例えば、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶解させたアルコキシテルル化合物又は金属テルルと、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶解させた配位子であるLとを混合撹拌し、有機溶媒を除去することにより、Lが配位したテルル含有化合物を得ることができる。具体例を以下に示す。すなわち、アルコキシテルル化合物として、テトラエトキシテルル(IV)(上述の式(TOX-1)で表される化合物)を用いる場合、攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に、20mLのテトラヒドロフランに溶解させた式(TOX-1)で表されるテトラエトキシテルル(IV)1.0gを入れ、5mLのテトラヒドロフランに溶解させたアセチルアセトン0.6gをさらに加え、1時間還流し、溶媒を減圧下で除去することにより、上述の式(TOX-2)で表される化合物を得ることができる。
その他、例えば、亜テルル酸ナトリウム水溶液とカルボン酸を撹拌することにより、カルボキシラートが配位したテルル含有化合物を容易に生成する。
【0032】
(テルル含有化合物の精製方法)
本実施形態のテルル含有化合物は、以下の工程を含む精製方法によって精製することができる。精製方法は、テルル含有化合物を、水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶媒に溶解させて溶液(A)を得る工程と、得られた溶液(A)と酸性の水溶液とを接触させて、前記テルル含有化合物中の不純物を抽出する第一抽出工程と、を含む。本実施形態の精製方法によれば、上述した特定の構造を有する化合物に不純物として含まれうる種々の金属の含有量を効果的に低減することができる。
【0033】
テルル含有化合物を含む溶液(A)に含まれる金属分を水相に移行させたのち、有機相と水相とを分離して金属含有量の低減された、テルル含有化合物を得ることができる。
【0034】
本実施形態の精製方法で使用するテルル含有化合物は単独でもよいが、2種以上混合することもできる。また、テルル含有化合物は、各種界面活性剤、各種架橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤と共に本実施形態の製造方法に適用されてもよい。
【0035】
本実施形態の精製方法で使用される「水と任意に混和しない有機溶媒」とは、水に対し任意の割合で均一に混ざり合わない有機溶媒を意味する。このような有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましく、具体的には、室温下における水への溶解度が30%未満である有機溶媒であり、より好ましくは20%未満であり、特に好ましくは10%未満である有機溶媒が好ましい。当該有機溶媒の使用量は、使用するテルル含有化合物100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましい。
【0036】
水と任意に混和しない有機溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン(CHN)、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、2-ペンタノン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等からなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒が好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルがよりさらに好ましい。メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等はテルル含有化合物の飽和溶解度が比較的高く、沸点が比較的低いことから、工業的に溶媒を留去する場合や乾燥により除去する工程での負荷を低減することが可能となる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0037】
本実施形態の精製方法で使用される酸性の水溶液としては、一般に知られる有機系化合物若しくは無機系化合物を水に溶解させた水溶液の中から適宜選択される。酸性の水溶液は、以下に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸を水に溶解させた鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を水に溶解させた有機酸水溶液が挙げられる。これら酸性の水溶液は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら酸性の水溶液の中でも、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液であることが好ましく、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液がより好ましく、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液がさらに好ましく、蓚酸の水溶液がよりさらに好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より効果的に金属を除去できる傾向にあるものと考えられる。また、ここで用いる水は、本実施形態の精製方法の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等を用いることが好ましい。
【0038】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液のpHは特に限定されないが、テルル含有化合物への影響を考慮し、水溶液の酸性度を調整することが好ましい。通常、酸性の水溶液のpH範囲は0~5程度であり、好ましくは0~3である。
【0039】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液の使用量は特に限定されないが、金属除去のための抽出回数を低減する観点及び全体の液量を考慮して操作性を確保する観点から、当該使用量を調整することが好ましい。前記観点から、酸性の水溶液の使用量は、前記溶液(A)100質量%に対して、好ましくは10~200質量%であり、より好ましくは20~100質量%である。
【0040】
本実施形態の精製方法においては、前記のような酸性の水溶液と、上述のテルル含有化合物から選ばれる1種以上及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液(A)とを接触させることにより、溶液(A)中の前記化合物から金属分を抽出することができる。
【0041】
水と任意に混和する有機溶媒を含むと、テルル含有化合物の仕込み量を増加させることができ、また分液性が向上し、高い釜効率で精製を行うことができる傾向にある。水と任意に混和する有機溶媒を加える方法は特に限定されない。例えば、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法、予め水又は酸性の水溶液に加える方法、有機溶媒を含む溶液と水又は酸性の水溶液とを接触させた後に加える方法のいずれでもよい。これらの中でも、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法が操作の作業性や仕込み量の管理のし易さの点で好ましい。
【0042】
本実施形態の精製方法で使用される水と任意に混和する有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。水と任意に混和する有機溶媒の使用量は、溶液相と水相とが分離する範囲であれば特に限定されないが、テルル含有化合物100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.1~50質量部であることがより好ましく、0.1~20質量部であることがさらに好ましい。
【0043】
本実施形態の精製方法において使用される水と任意に混和する有機溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、N-メチルピロリドン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類等の脂肪族炭化水素類が挙げられる。これらの中でも、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0044】
本実施形態の精製方法において、溶液(A)と酸性の水溶液との接触の際、すなわち、抽出処理を行う際の温度は、好ましくは20~90℃であり、より好ましくは30~80℃の範囲である。抽出操作は、特に限定されないが、例えば、溶液(A)と酸性の水溶液とを、撹拌等により、よく混合させた後、得られた混合溶液を静置することにより行われる。これにより、テルル含有化合物から選ばれる1種以上と、有機溶媒とを含む溶液(A)に含まれていた金属分が水相に移行する。また、本操作により、溶液(A)の酸性度が低下し、テルル含有化合物の変質を抑制することができる。
【0045】
前記混合溶液の静置により、テルル含有化合物から選ばれる1種以上と有機溶媒を含む溶液相と、水相とに分離するので、デカンテーション等によりテルル含有化合物から選ばれる1種以上と有機溶媒とを含む溶液相を回収することができる。混合溶液を静置する時間は特に限定されないが、有機溶媒を含む溶液相と水相との分離をより良好にする観点から、当該静置する時間を調整することが好ましい。通常、静置する時間は1分間以上であり、好ましくは10分間以上であり、より好ましくは30分間以上である。また、抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。
【0046】
本実施形態の精製方法において、前記第一抽出工程後、前記化合物を含む溶液相を、さらに水に接触させて、前記化合物中の不純物を抽出する工程(第二抽出工程)を含むことが好ましい。具体的には、例えば、酸性の水溶液を用いて前記抽出処理を行った後に、該水溶液から抽出され、回収されたテルル含有化合物から選ばれる1種以上と有機溶媒を含む溶液相を、さらに水による抽出処理に供することが好ましい。前記の水による抽出処理は、特に限定されないが、例えば、前記溶液相と水とを、撹拌等により、よく混合させたあと、得られた混合溶液を、静置することにより行うことができる。当該静置後の混合溶液は、テルル含有化合物から選ばれる1種以上と有機溶媒とを含む溶液相と、水相とに分離するのでデカンテーション等によりテルル含有化合物から選ばれる1種以上と有機溶媒とを含む溶液相を回収することができる。また、ここで用いられる水は、本実施形態の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等であることが好ましい。抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に限定されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0047】
こうして得られたテルル含有化合物から選ばれる1種以上と有機溶媒を含む溶液に混入しうる水分については、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により前記溶液に有機溶媒を加え、テルル含有化合物の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0048】
得られたテルル含有化合物から選ばれる1種以上と有機溶媒を含む溶液から、前記テルル含有化合物から選ばれる1種以上を単離する方法は、特に限定されず、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【0049】
(光学部品形成組成物の物性等)
本実施形態の光学部品形成組成物は、スピンコート等公知の方法によってアモルファス膜を形成することができる。
【0050】
(光学部品形成組成物の他の成分)
本実施形態の光学部品形成組成物は、テルル含有化合物を固形成分として含有する。本実施形態の光学部品形成組成物は、テルル含有化合物から選ばれる2種類以上を含有してもよい。
【0051】
テルル含有化合物の含有量は、塗布性及び品質安定性の観点から、光学部品形成用組成物の固形分100質量%中、0.1~100質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
テルル含有化合物の含有量は、塗布性及び品質安定性の観点から、光学部品形成用組成物の全質量中、0.1~30質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1.0~10質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
<溶媒>
本実施形態の光学部品形成組成物は、テルル含有化合物以外に、さらに溶媒を含有することが好ましい。本実施形態の光学部品形成組成物で使用される溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸n-ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルプロピオン酸ブチル、3-メトキシ-3-メチル酪酸ブチル、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン(CHN)等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;γ-ラクトン等のラクトン類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
本実施形態の光学部品形成組成物で使用される溶媒は、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、PGMEA、PGME、CHN、CPN、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも一種であり、さらに好ましくはPGMEA、PGME及びCHNから選ばれる少なくとも一種である。
【0055】
本実施形態の光学部品形成組成物において、固形成分の量と溶媒の量との関係は、特に限定されないが、固形成分及び溶媒の合計に対して、固形成分1~80質量%及び溶媒20~99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1~50質量%及び溶媒50~99質量%、さらに好ましくは固形成分2~40質量%及び溶媒60~98質量%であり、特に好ましくは固形成分2~10質量%及び溶媒90~98質量%である。
【0056】
本実施形態の光学部品形成組成物は、他の固形成分として、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0057】
本実施形態の光学部品形成組成物において、テルル含有化合物の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(テルル含有化合物、後述する樹脂、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様)の10~99質量%であることが好ましく、より好ましくは20~90質量%、さらに好ましくは20~80質量%、特に好ましくは25~60質量%である。
なお、テルル含有化合物を2種類以上含有する場合、前記含有量は、2種類以上のテルル含有化合物の合計量である。
【0058】
<酸発生剤(C)>
本実施形態の光学部品形成組成物は、熱により直接的又は間接的に酸を発生する酸発生剤(C)を一種以上含有することが好ましい。この場合、本実施形態の光学部品形成組成物において、酸発生剤(C)の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましく、3~30質量%がさらに好ましく、10~25質量%が特に好ましい。前記含有量の範囲内で酸発生剤(C)を使用することにより、一層高屈折率が得られる。
【0059】
本実施形態の光学部品形成組成物では、系内に酸が発生すれば、酸の発生方法は限定されない。g線、i線などの紫外線の代わりにエキシマレーザーを使用すれば、より微細加工が可能であるし、また高エネルギー線として電子線、極端紫外線、X線、イオンビームを使用すればさらに微細加工が可能である。
【0060】
前記酸発生剤(C)は、特に限定されず、下記式(8-1)~(8-8)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0061】
【化10】
(式(8-1)中、R
13は、各々同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子であり、X
-は、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオン又はハロゲン化物イオンである。)
【0062】
前記式(8-1)で示される化合物は、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジフェニルトリルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジ-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-4-t-ブトキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-4-t-ブトキシフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-フェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(4-メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(4-フルオロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニル-p-トルエンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-2-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-2,4-ジフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニルナフチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10-カンファースルホネート、ジフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウム10-カンファースルホネート及びシクロ(1,3-パーフルオロプロパンジスルホン)イミデートからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0063】
【化11】
(式(8-2)中、R
14は、各々同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を表す。X
-は前記と同様である。)
【0064】
前記式(8-2)で示される化合物は、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム p-トルエンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム-2-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム-4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム-2,4-ジフルオロベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロベンゼンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム10-カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム p-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10-カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム-2-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム-4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム-2,4-ジフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムへキサフルオロベンゼンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウム p-トルエンスルホネート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート及びジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウム10-カンファースルホネートからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0065】
【化12】
(式(8-3)中、Qはアルキレン基、アリーレン基又はアルコキシレン基であり、R
15はアルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基又はハロゲン置換アリール基である。)
【0066】
前記式(8-3)で示される化合物は、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(n-オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(n-オクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(p-トルエンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(p-トルエンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(2-トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(4-トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(ノナフルオロ-n-ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ノナフルオロ-n-ブタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(パーフルオロ-n-オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド及びN-(パーフルオロ-n-オクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミドからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0067】
【化13】
(式(8-4)中、R
16は、各々同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、任意に置換された直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基又は任意に置換されたアラルキル基である。)
【0068】
前記式(8-4)で示される化合物は、ジフェニルジスルフォン、ジ(4-メチルフェニル)ジスルフォン、ジナフチルジスルフォン、ジ(4-tert-ブチルフェニル)ジスルフォン、ジ(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフォン、ジ(3-ヒドロキシナフチル)ジスルフォン、ジ(4-フルオロフェニル)ジスルフォン、ジ(2-フルオロフェニル)ジスルフォン及びジ(4-トルフルオロメチルフェニル)ジスルフォンからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0069】
【化14】
(式(8-5)中、R
17は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、任意に置換された直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基又は任意に置換されたアラルキル基である。)
【0070】
前記式(8-5)で示される化合物は、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-フェニルアセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル、α-(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)-フェニルアセトニトリル、α-(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル、α-(エチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル、α-(プロピルスルホニルオキシイミノ)-4-メチルフェニルアセトニトリル及びα-(メチルスルホニルオキシイミノ)-4-ブロモフェニルアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0071】
【0072】
式(8-6)中、R18は、各々同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、1以上の塩素原子及び1以上の臭素原子を有するハロゲン化アルキル基である。ハロゲン化アルキル基の炭素数は1~5が好ましい。
【0073】
【0074】
【0075】
式(8-7)及び(8-8)中、R19及びR20はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1~3のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1~3のアルコキシル基;又はフェニル基、トルイル基、ナフチル基等アリール基;好ましくは、炭素数6~10のアリール基である。L19及びL20はそれぞれ独立に1,2-ナフトキノンジアジド基を有する有機基である。1,2-ナフトキノンジアジド基を有する有機基としては、具体的には、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホニル基、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基、1,2-ナフトキノンジアジド-6-スルホニル基等の1,2-キノンジアジドスルホニル基を好ましいものとして挙げることができる。特に、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホニル基及び1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基が好ましい。s1はそれぞれ独立して、1~3の整数、s2はそれぞれ独立して、0~4の整数、かつ1≦s1+s2≦5である。J19は単結合、炭素数1~4のポリメチレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、下記式(8-7-1)で表わされる基、カルボニル基、エステル基、アミド基又はエーテル基であり、Y19は水素原子、アルキル基又はアリール基であり、X20は、それぞれ独立に下記式(8-8-1)で示される基である。
【0076】
【0077】
【化19】
(式(8-8-1)中、Z
22はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、R
22はアルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシル基であり、rは0~3の整数である。)
【0078】
その他の酸発生剤として、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、1、3-ビス(シクロヘキシルスルホニルアゾメチルスルホニル)プロパン、1、4-ビス(フェニルスルホニルアゾメチルスルホニル)ブタン、1、6-ビス(フェニルスルホニルアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1、10-ビス(シクロヘキシルスルホニルアゾメチルスルホニル)デカン等のビススルホニルジアゾメタン類;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-(ビストリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-(ビストリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等のハロゲン含有トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0079】
前記酸発生剤のうち、本実施形態の光学部品形成組成物に用いられる酸発生剤(C)としては、芳香環を有する酸発生剤が好ましく、式(8-1)又は(8-2)で示される酸発生剤がより好ましい。式(8-1)又は(8-2)のX-が、アリール基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤がさらに好ましく、アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤が特に好ましく、ジフェニルトリメチルフェニルスルホニウム p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウム ノナフルオロメタンスルホナートが特に好ましい。該酸発生剤を用いることで、ラインエッジラフネスを低減することができる。前記酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0080】
<酸架橋剤(G)>
本実施形態の光学部品形成組成物は、構造体の強度を増す為の添加剤として使用する場合に、酸架橋剤(G)を一種以上含むことが好ましい。酸架橋剤(G)とは、酸発生剤(C)から発生した酸の存在下で、前記式(A-1)で表される化合物を分子内又は分子間架橋し得る化合物である。このような酸架橋剤(G)は、特に限定されないが、例えばテルル含有化合物を架橋し得る1種以上の基(以下、「架橋性基」という。)を有する化合物を挙げることができる。
【0081】
このような架橋性基の具体例としては、特に限定されないが、例えば(i)ヒドロキシ(炭素数1~6のアルキル基)、炭素数1~6のアルコキシ(炭素数1~6のアルキル基)、アセトキシ(炭素数1~6のアルキル基)等のヒドロキシアルキル基又はそれらから誘導される基;(ii)ホルミル基、カルボキシ(炭素数1~6のアルキル基)等のカルボニル基又はそれらから誘導される基;(iii)ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基等の含窒素基含有基;(iv)グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等のグリシジル基含有基;(v)ベンジルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基等の、炭素数1~6のアリルオキシ(炭素数1~6のアルキル基)、炭素数1~6のアラルキルオキシ(炭素数1~6のアルキル基)等の芳香族基から誘導される基;(vi)ビニル基、イソプロペニル基等の重合性多重結合含有基等を挙げることができる。酸架橋剤(G)の架橋性基としては、ヒドロキシアルキル基、及びアルコキシアルキル基等が好ましく、特にアルコキシメチル基が好ましい。
【0082】
前記架橋性基を有する酸架橋剤(G)としては、公知のものが使用でき、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024778号の段落0096~0123に記載されている化合物が挙げられる。これらの架橋性基含有化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
前記酸架橋剤(G3)としては、遊離のα-ヒドロキシイソプロピル基を2以上有する化合物が好ましく、α-ヒドロキシイソプロピル基を2以上有する前記ベンゼン系化合物(1)、α-ヒドロキシイソプロピル基を2以上有する前記ジフェニル系化合物(2)、α-ヒドロキシイソプロピル基を2個以上有する前記ナフタレン系化合物(3)がさらに好ましく、α-ヒドロキシイソプロピル基を2個以上有するα-ヒドロキシイソプロピルビフェニル類、α-ヒドロキシイソプロピル基を2個以上有するナフタレン系化合物(3)が特に好ましい。
【0084】
前記酸架橋剤(G3)は、通常、1,3-ジアセチルベンゼン等のアセチル基含有化合物に、CH3MgBr等のグリニヤール試薬を反応させてメチル化した後、加水分解する方法や、1,3-ジイソプロピルベンゼン等のイソプロピル基含有化合物を酸素等で酸化して過酸化物を生成させた後、還元する方法により得ることができる。
【0085】
本実施形態の光学部品形成組成物において、酸架橋剤(G)の含有量は、固形成分の全質量の0.5~49質量%が好ましく、0.5~40質量%がより好ましく、1~30質量%がさらに好ましく、2~20質量%が特に好ましい。前記酸架橋剤(G)の含有割合を0.5質量%以上とすると、光学部品形成組成物の有機溶媒に対する溶解性の抑制効果を向上させることができるので好ましく、一方、49質量%以下とすると、光学部品形成組成物としての耐熱性の低下を抑制できることから好ましい。
【0086】
また、前記酸架橋剤(G)中の前記酸架橋剤(G1)、酸架橋剤(G2)、及び酸架橋剤(G3)から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量も特に限定はなく、光学部品形成組成物を形成する際に使用される基板の種類等によって種々の範囲とすることができる。
【0087】
全酸架橋剤成分において、前記アルコキシメチル化メラミン化合物及び/又は式(12-1)~式(12-3)で表される化合物の含有量は、特に限定されず、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~98質量%、特に好ましくは80~97質量%である。アルコキシメチル化メラミン化合物及び/又は式(12-1)~式(12-3)で表される化合物を全酸架橋剤成分の50質量%以上とすることにより、解像度を一層向上させることができるので好ましく、99質量%以下とすることにより、構造体の形状を良好とし易いので好ましい。
【0088】
<酸拡散制御剤(E)>
本実施形態の光学部品形成組成物は、酸発生剤から生じた酸の光学部品形成組成物中における拡散を制御して、好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(E)を含有してもよい。この様な酸拡散制御剤(E)を使用することにより、光学部品形成組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が一層向上するとともに、加熱後の引き置き時間の変動による構造体の線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。このような酸拡散制御剤(E)は、特に限定されず、例えば、窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の放射線分解性塩基性化合物が挙げられる。酸拡散制御剤(E)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0089】
前記酸拡散制御剤としては、特に限定されず、例えば、含窒素有機化合物や、露光により分解する塩基性化合物等が挙げられる。前記含窒素有機化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(14)で示される化合物が挙げられる。
【0090】
【0091】
前記式(14)で示される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」という。)、同一分子内に窒素原子を2個有するジアミノ化合物(以下、「含窒素化合物(II)」という。)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、「含窒素化合物(III)」という。)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、及び含窒素複素環式化合物等を挙げることができる。なお、酸拡散制御剤(E)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
前記式(14)中、R61、R62及びR63は相互に独立に水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、前記アルキル基、アリール基又はアラルキル基は、非置換でもよく、ヒドロキシル基等で置換されていてもよい。ここで、前記直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~15、好ましくは1~10のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、テキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。また、前記アリール基としては、炭素数6~12のものが挙げられ、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、1-ナフチル基等が挙げられる。更に、前記アラルキル基は、特に限定されず、炭素数7~19、好ましくは7~13のものが挙げられ、具体的には、ベンジル基、α-メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0093】
前記含窒素化合物(I)は、特に限定されず、具体的には、例えば、国際公開WO2017/188452号に記載のもの等を挙げることができる。
【0094】
前記含窒素化合物(II)は、特に限定されず、具体的には、例えば、国際公開WO2017/188452号に記載のもの等を挙げることができる。
【0095】
前記含窒素化合物(III)は、特に限定されず、具体的には、例えば、国際公開WO2017/188452号に記載のもの等を挙げることができる。
【0096】
前記アミド基含有化合物は、特に限定されず、具体的には、例えば、国際公開WO2017/188452号に記載のもの等を挙げることができる。
【0097】
前記ウレア化合物は、特に限定されず、具体的には、例えば、国際公開WO2017/188452号に記載のもの等を挙げることができる。
【0098】
前記含窒素複素環式化合物は、特に限定されず、具体的には、例えば、国際公開WO2017/188452号に記載のもの等を挙げることができる。
【0099】
また、前記放射線分解性塩基性化合物は、特に限定されず、例えば、下記式(15-1)で示されるスルホニウム化合物、又は下記式(15-2)で示されるヨードニウム化合物が挙げられる。
【0100】
【0101】
【0102】
前記式(15-1)及び(15-2)中、R71、R72、R73、R74及びR75は相互に独立に水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシル基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を示す。Z-はHO-、R-COO-(ここで、Rは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~11のアリール基若しくは炭素数7~12のアルカリール基を示す。)又は下記式(15-3)で示されるアニオンを示す。
【0103】
【0104】
前記放射線分解性塩基性化合物として具体的には、特に限定されず、例えば、国際公開WO2017/188452号に記載のもの等が挙げられる。
【0105】
酸拡散制御剤(E)の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%がさらに好ましく、0.01~3質量%が特に好ましい。酸拡散制御剤(E)の含有量が前記範囲内であると、解像度の低下、光部品形状、寸法精度等の劣化を一層抑制できる。また、酸拡散制御剤(E)の含有量が10質量%以下であると、感度、硬化性等の低下を防ぐことができる。またこのような酸拡散制御剤を使用することにより、光学部品形成組成物の貯蔵安定性が向上し、また解像度、光部品形状、寸法精度が向上するため、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0106】
<重合開始剤(I)>
本実施形態の光学部品形成組成物は、硬化性の向上の観点から、重合開始剤(I)を含有することが好ましい。
【0107】
本実施形態の光学部品形成組成物に含有できる重合開始剤は露光により前記テルル含有化合物、及び後述の樹脂から選ばれる1つ以上の成分の重合反応を開始させるものであれば限定されず、公知の重合開始剤を含有することができる。重合開始剤としては、限定されるものではないが、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤を挙げることができ、反応性の観点から、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0108】
光ラジカル重合開始剤としては、限定されるものではないが、アルキルフェノン系、アシルフォスシンオキサイド系、オキシフェニル酢酸エステル系を挙げることができ、反応性の観点から、アルキルフェノン系が好ましく、容易入手性の観点から、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(BASF社製品名イルガキュア184)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(BASF社製品名:イルガキュア651)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(BASF社製品名:イルガキュア1173)が好ましい。
【0109】
本実施形態の組成物中、重合開始剤の含有量は、テルル含有化合物、及び樹脂の全質量100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~20質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
【0110】
<その他の任意成分(F)>
本実施形態の光学部品形成組成物には、本実施形態の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、その他の任意成分(F)として、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0111】
(溶解促進剤)
低分子量溶解促進剤は、テルル含有化合物の現像液に対する溶解性が低すぎる場合に、その溶解性を高めて、現像時の前記化合物の溶解速度を適度に増大させる作用を有する成分であり、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。前記溶解促進剤としては、例えば、低分子量のフェノール性化合物を挙げることができ、例えば、ビスフェノール類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等を挙げることができる。これらの溶解促進剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。溶解促進剤の含有量は、使用するテルル含有化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0112】
(溶解制御剤)
溶解制御剤は、テルル含有化合物が現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を制御して現像時の溶解速度を適度に減少させる作用を有する成分である。このような溶解制御剤としては、光学部品の焼成、加熱、現像等の工程において化学変化しないものが好ましい。
【0113】
溶解制御剤は、特に限定されず、例えば、フェナントレン、アントラセン、アセナフテン等の芳香族炭化水素類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、フェニルナフチルケトン等のケトン類;メチルフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン等のスルホン類等を挙げることができる。これらの溶解制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
溶解制御剤の含有量は、特に限定されず、使用するテルル含有化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0114】
(増感剤)
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(C)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、光部品形成組成物の見掛けの硬化性を向上させる成分である。このような増感剤は、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン類、ビアセチル類、ピレン類、フェノチアジン類、フルオレン類等を挙げることができる。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。増感剤の含有量は、使用するテルル含有化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0115】
(界面活性剤)
界面活性剤は、本実施形態の光学部品形成組成物の塗布性やストリエーション等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤は、特に限定されず、アニオン系、カチオン系、ノニオン系或いは両性のいずれでもよい。好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤は、光学部品形成組成物の製造に用いる溶媒との親和性がよく、より効果がある。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類等が挙げられるが、特に限定はされない。市販品としては、以下商品名で、エフトップ(ジェムコ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業社製)、フロラード(住友スリーエム社製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子社製)、ペポール(東邦化学工業社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社油脂化学工業社製)等を挙げることができる。界面活性剤の含有量は、特に限定されず、使用するテルル含有化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0116】
(有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体)
本実施形態の光学部品形成組成物は、硬化性劣化防止又は構造体、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有してもよい。なお、酸拡散制御剤と併用することもできるし、単独で用いてもよい。有機カルボン酸としては、特に限定されず、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルなどの誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸又はそれらのエステルなどの誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルなどの誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
【0117】
有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、単独で又は2種以上を使用することができる。有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体の含有量は、使用するテルル含有化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0118】
(その他添加剤)
さらに、本実施形態の光学部品形成組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、前記溶解制御剤、増感剤、及び界面活性剤以外の添加剤を1種又は2種以上含有できる。そのような添加剤としては、特に限定されず、例えば、染料、顔料、及び接着助剤等が挙げられる。例えば、染料又は顔料を含有すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できるので好ましい。また、接着助剤を含有すると、基板との接着性を改善することができるので好ましい。さらに、他の添加剤としては、特に限定されず、例えば、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、形状改良剤等、具体的には4-ヒドロキシ-4’-メチルカルコン等を挙げることができる。
【0119】
任意成分(F)の合計含有量は、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0120】
本実施形態の光学部品形成組成物において、テルル含有化合物、後述する樹脂、酸架橋剤(G)、酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(E)、重合開始剤(I)、任意成分(F)の含有量は、固形物基準の質量%で、好ましくは10~99/0.1~50/0.1~50/0.01~5/0~5/0~20、より好ましくは20~90/1~50/1~50/0.1~5/0~5/0~10、さらに好ましくは20~80/5~40/5~40/0.5~4/0~4/0~5、特に好ましくは20~60/10~30/10~30/1~3/0~3/0~3である。
各成分の含有割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。前記含有割合にすると、感度、解像度、現像性等の性能に一層優れる。
【0121】
本実施形態の光学部品形成組成物の調製方法は、特に限定されず、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過する方法等が挙げられる。
【0122】
<樹脂>
本実施形態の光学部品形成組成物において、前記テルル含有化合物以外に、リソグラフィー用材料(特にレジスト材料)等の光部品形成用材料として用いられる樹脂を含有してもよい。本明細書にいう「樹脂」は、前記テルル含有化合物、後述する溶媒、酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散制御剤、重合開始剤、及びその他の成分を除く膜形成成分をいい、低分子量の化合物も包含する概念をいう。
【0123】
樹脂としては、特に限定されず、例えば、ナフトール樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂がフェノール類(例えば、フェノール、ナフトールなど)により変性した変性樹脂、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂がフェノール類(例えば、フェノール、ナフトールなど)により変性した変性樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体又はこれらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、樹脂は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、ナフトール樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂のナフトール変性樹脂、及びナフタレンホルムアルデヒド樹脂のフェノール変性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のフェノール変性樹脂であることがより好ましい。
【0124】
樹脂の数平均分子量(Mn)は、300~5,000が好ましく、300~3,000が好ましく、500~2,000がさらに好ましい。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、500~20,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000がさらに好ましい。
樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.2~4.0がより好ましく、1.5~3.0がさらに好ましい。
上述の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、ポリスチレン換算にて求めることができる。これらの測定方法は、より具体的には、実施例に記載の方法による。
【0125】
樹脂の含有量は、特に限定されず、本実施形態のテルル含有化合物の総量100質量部に対して、1000質量部以下が好ましく、より好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下、特に好ましくは100質量部以下である。また、樹脂が含まれる場合、樹脂の含有量は、特に限定されず、本実施形態のテルル含有化合物の総量100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、特に好ましくは80質量部以上である。
【0126】
また本実施形態の硬化物は、光学部品形成組成物を硬化して得られ、各種樹脂として使用することができる。これらの硬化物は、高融点、高屈折率及び高透明性といった様々な特性を付与する高汎用性の材料として様々な用途に用いることができる。なお、当該硬化物は、前記の組成物を光照射、加熱等の各組成に対応した公知の方法を用いることによって得ることができる。
【0127】
これらの硬化物は、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の各種合成樹脂として、さらには、機能性を活かしてレンズ、光学シート等の光学部品として用いることができる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を挙げて、本実施形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定はされない。以下に、実施例における化合物の測定方法及び光学部品性能等の評価方法を示す。
【0129】
[測定法]
(1)化合物の構造
化合物の構造は、Bruker.Inc社製「Advance600II spectrometer」を用いて、以下の条件で、1H-NMR測定により確認した。
周波数:400MHz
溶媒:d6-DMSO(後述の製造例4以外)
内部標準:テトラメチルシラン(TMS)
測定温度:23℃
【0130】
(2)Mn、Mw及びMw/Mn
Mn、Mw及びMw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、以下の測定条件にてポリスチレン換算にて求めた。
装置:昭和電工(株)製「Shodex GPC-101型」
カラム:昭和電工(株)製「KF-80M」×3
溶離液:テトラヒドロフラン(以下「THF」ともいう)
流速:1mL/min
温度:40℃
【0131】
[評価方法]
(1)化合物の有機溶媒への溶解性
化合物の有機溶媒への溶解度について、化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解性を測定した。当該溶解性は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートへの溶解量を用いて以下の基準に従って評価した。なお、溶解量の測定は23℃にて、化合物を試験管に精秤し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを所定の濃度となるよう加え、超音波洗浄機にて30分間超音波をかけ、その後の液の状態を目視にて観察し、完全に溶解した溶解量の濃度を基準として評価した。
A:5.0質量%≦溶解量
B:3.0質量%≦溶解量<5.0質量%
C: 溶解量<3.0質量%
【0132】
(2)光学部品形成組成物の保存安定性及び薄膜形成
化合物を含む光学部品形成組成物の保存安定性は、光学部品形成組成物を調製後、23℃にて3日間静置し、析出の有無を目視にて観察することにより評価した。3日間静置後の光学部品形成組成物において、均一溶液であり析出がない場合には「A」、析出が認められた場合は「C」と評価した。また、均一状態の光学部品形成組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中でプレベーク(prebake:PB)して、厚さ1μmの光学部品形成膜を形成した。調製した光学部品形成組成物について、膜形成が良好な場合には「A」、形成した膜に欠陥がある場合には「C」と評価した。
【0133】
(3)屈折率及び透明性
均一な光学部品形成組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中でプレベークして、厚さ1μmの膜を形成した。その膜につき、ジェー・エー・ウーラム製多入射角分光エリプソメーター「M-2000DI-YK」にて、25℃における屈折率(λ=589.3nm)を測定した。調製した膜について、屈折率が1.8以上の場合には「A」、1.6以上1.8未満の場合には「B」、1.6未満の場合には「C」と評価した。また透明性(λ=632.8nm)が90%以上の場合には「A」、90%未満の場合には「C」と評価した。
【0134】
[製造例1]CR-1の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製、試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の分子量は、Mn:562、Mw:1168、Mw/Mn:2.08であった。
【0135】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、上述のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶媒希釈後、中和及び水洗を行い、溶媒を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。得られた樹脂(CR-1)は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:2.51であった。また、得られた樹脂(CR-1)のPGMEAへの溶解性を上述の測定方法によって評価した結果、5質量%以上(評価A)であると評価された。
【0136】
[製造例2]TOX-2の合成
攪拌機、冷却管、及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に、20mLのテトラヒドロフランに溶解させたテトラエトキシテルル(IV)(アルファエイサー(株)製品、純度85%)1.0g(2.8mmol)を入れ、5mLのテトラヒドロフランに溶解させたアセチルアセトン0.6g(6.0mmol)をさらに加えた。1時間還流させた後、溶媒を減圧留去することにより、以下の式(TOX-2)で表される化合物0.6gを得た。
【0137】
反応前後の1H-NMRのケミカルシフトから、式(TOX-2)で表される化合物が得られていることを確認した。
【0138】
【0139】
【0140】
[製造例3]TOX-3の合成
攪拌機、冷却管、及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に、20mLのテトラヒドロフランに溶解させたテトラエトキシテルル(IV)(アルファエイサー(株)製品、純度85%)1.0g(2.8mmol)を入れ、5mLのテトラヒドロフランに溶解させた2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン0.8g(5.6mmol)をさらに加えた。1時間還流させた後、溶媒を減圧留去することにより、以下の式(TOX-3)で表される化合物0.7gを得た。
【0141】
反応前後の1H-NMRのケミカルシフトから、式(TOX-3)で表される化合物が得られていることを確認した。
【0142】
【0143】
【0144】
[製造例4]TOX-4の合成
攪拌機、冷却管、及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に、20mLのテトラヒドロフランに溶解させたテトラエトキシテルル(IV)(アルファエイサー(株)製品、純度85%)1.0g(2.8mmol)を入れ、さらにメタクリル酸0.5g(5.8mmol)をさらに加えた。1時間還流させた後、溶媒を減圧留去することにより、以下の式(TOX-4)で表される化合物0.5gを得た。
【0145】
反応前後の1H-NMRのケミカルシフト(溶媒:重クロロホルム)から、式(TOX-4)で表される化合物が得られていることを確認した。
【0146】
【0147】
【0148】
[実施例1~8、比較例1]
(光学部品形成組成物の調製)
前記製造例1~4で合成した化合物を用いて、下記表4に示す配合で光学部品形成組成物を調製した。なお、表4中の光学部品形成組成物の各成分のうち、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及び溶媒(S-1)については、以下のものを用いた。
〔酸発生剤(C)〕
P-1:トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株)製)
〔酸架橋剤(G)〕
G-1:MX-270((株)三和ケミカル社製)
〔酸拡散制御剤(E)〕
Q-1:トリオクチルアミン(東京化成工業(株)製)
〔重合開始剤(I)〕
I-1:イルガキュア184(BASF社製)
〔溶媒〕
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業(株)製)
【0149】
上述の測定方法により、得られた光学部品形成組成物の「保存安定性」を評価した。また、均一状態の光学部品形成組成物を用いて「膜形成」を評価した。得られた結果を表4に示す。実施例1、及び実施例5に使用したTOX-1を以下に示す。
【0150】
Te(OEt)4 (TOX-1)
【0151】
【0152】
表4から分かるように実施例1~8で用いた化合物は溶解性が良好であることが確認できた。
また、保存安定性評価について、実施例1~8で得られた光学部品形成組成物は析出が無く保存安定性が良好であることを確認した(評価:A)。
【0153】
前記測定方法に従って、膜形成について評価したところ実施例1~8で得られた光学部品形成組成物は、優れた膜を形成することができた。
【0154】
前記結果から、テルル含有化合物は、有機溶媒に対する溶解性が高く、テルル含有化合物を含む光学部品形成組成物は、保存安定性が良好で、膜形成が可能であり、高屈折率及び高透過率を付与できることがわかった。上述した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した化合物以外の化合物も同様の効果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の光学部品形成組成物は、特定の構造を有し、有機溶媒に対する溶解性が高い化合物を含み、保存安定性が良好で、膜形成が可能であり、かつ、高屈折率の構造体を付与できる。したがって、本発明は、高屈折率な光学部品形成組成物が使用される光学部品分野等において有用である。