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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】トナー用ワックス組成物
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G03G9/097 365
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020116527
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014280
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】土井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健司
(72)【発明者】
【氏名】荻 宏行
(72)【発明者】
【氏名】森重 貴裕
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219297(JP,A)
【文献】特開2010-145552(JP,A)
【文献】特開2012-168505(JP,A)
【文献】特開2020-064221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールとの少なくとも一方と、炭素数14~24の一価の直鎖飽和脂肪酸との反応物からなるエステルワックス(A)、および炭素数2~6の直鎖モノアルカノールアミンと炭素数16~22の一価の直鎖飽和脂肪酸との反応物からなるアミドエステルワックス(B)とを含有し、前記エステルワックス(A)と前記アミドエステルワックス(B)との質量比((A):(B))が95:5~70:30であることを特徴とする、トナー用ワックス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真法や静電記録法などで形成される静電荷の現像に用いられるトナーに対して好適に添加されるトナー用ワックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンタ、ファクシミリ、およびこれらの機能を有する複写機などの電子写真装置に用いるトナーは、主成分となる熱可塑性樹脂(バインダー樹脂)の他に、着色剤(カーボンブラック、磁性粉、顔料など)、荷電制御剤、ワックスを含み、必要に応じて、流動性付加剤、クリーニング助剤、転写助剤を含む。
【0003】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速印刷に対応したトナー開発が要求されている。トナーに含まれるワックスは、定着時にトナー表面に染み出すことで、トナーが定着ロールに残存することを防止する離型効果を有し、高速印刷ではトナーからワックスが素早く染み出す性能が求められる。
【0004】
一方、素早く染み出すワックスは、樹脂との極性差が大きく親和性が低くいため、トナー保管時にトナー表面にブリードしやすい傾向にある。トナー表面にブリードしたワックスは、トナー同士のブロッキングや装置部材(ドクターブレード、現像ロール、感光体等)への付着の要因となり、画質不良を引き起こす。特に、高速印刷では摩擦等のストレスがより強くかかるため発生しやすい。
そこで、高速印刷の際、定着時に優れた離型効果を発揮し、且つ装置部材への付着を低減できるワックスが求められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、結着樹脂及び離型剤を含有する電子写真用トナーであって、離型剤が、ジペンタエリスリトールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル縮合物であるエステルワックスWを含み、前記脂肪族モノカルボン酸が、炭素数14以上24以下の脂肪族モノカルボン酸m1、及び前記脂肪族モノカルボン酸m1の炭素数よりも2以上、6以下少ない炭素数の脂肪族モノカルボン酸m2を含み、脂肪族モノカルボン酸m1と脂肪族モノカルボン酸m2のモル比率が、91/9以上、99.5/0.5以下である、電子写真用トナーが記載され、定着器耐フィルミング性、及び感光体耐フィルミング性に優れることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、炭化水素ワックスAとエステルワックスBを含有し、エステルワックスBが6価のアルコールと脂肪族酸のエステル、又は6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルであるトナーが記載され、高速現像システムにおける保存安定性と離型性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-087919号公報
【文献】特開2017-045058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、脂肪族モノカルボン酸の炭素数分布の微調整により、感光体への付着低減を図っており、付着低減の効果は不十分であった。
【0009】
また、特許文献2では、トナー表面へのワックス露出をなくしており、ワックスの染み出し性が低下するため、離型性が不十分であった。
【0010】
本発明の課題は、高速印刷でのトナー定着においても十分な離型効果を奏し、且つ、装置部材への付着を抑制できるトナー用ワックス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定構造のエステルワックスと特定構造のアミドエステルワックスを特定の割合で配合することで、エステルワックスの離型性を損なわずに、部材への付着性を抑制できることを見出した。そして、本ワックス組成物を高速印刷のトナー用ワックスとして使用した場合に、ワックスがブリードアウトした場合でも装置部材への付着が少なく、且つ定着工程で十分な離型性を付与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係るトナー用ワックス組成物は、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールとの少なくとも一方と、炭素数14~24の一価の直鎖飽和脂肪酸との反応物からなるエステルワックス(A)、および炭素数2~6の直鎖モノアルカノールアミンと炭素数16~22の一価の直鎖飽和脂肪酸との反応物からなるアミドエステルワックス(B)とを含有し、前記エステルワックス(A)と前記アミドエステルワックス(B)との質量比((A):(B))が95:5~70:30であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置部材への低付着性に優れ、定着工程で膨張により素早くトナーから染み出して離型性が向上するトナー用ワックス組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明のトナー用ワックス組成物は、下記に示すエステルワックス(A)とアミドエステルワックス(B)を含有する。
【0015】
〔(A)エステルワックス〕
本発明におけるエステルワックスは、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールとの少なくとも一方と、炭素数14~24の一価の直鎖飽和脂肪酸とから得られるエステルワックスである。
【0016】
(A)成分におけるペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールは、単独で使用しても良く、または併せて使用しても良い。なお、以下では、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールをまとめて「アルコール」とも言う。
【0017】
(A)成分における一価の直鎖飽和脂肪酸は、炭素数が14~24であり、好ましくは炭素数が16~22であり、さらに好ましくは炭素数が18または22であり、炭素数が22のものが特に好ましい。一価の直鎖飽和脂肪酸の炭素数が14未満である場合には、得られるエステルワックスの融点が低くなり、トナー保存時にブロッキングを引き起こすことがある。また炭素数が24を超える場合には、エステルワックスの融解時においてトナー表面への染み出し性が劣り、定着ロールからの離型性が低下することがある。
【0018】
一価の直鎖飽和脂肪酸の例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸などが挙げられる。これらの直鎖飽和脂肪酸を単独で使用しても良く、または複数を併せて使用しても良い。
【0019】
本発明におけるエステルワックス(A)の製造法としては、例えば、アルコールと脂肪酸とからの脱水縮合反応を利用する方法が挙げられる。反応の際には触媒を使用しても良く、触媒としては、酸性または塩基性触媒を使用することができ、例えば、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、チタン化合物、スズ化合物などが挙げられる。反応させる際には、脂肪酸とアルコールとを等モル比で、あるいは一方の成分を過剰に添加し反応させる。その後、再結晶法、蒸留法、溶剤抽出法、吸着処理法などにより高純度化させても良い。
【0020】
本発明におけるエステルワックス(A)は、トナー加熱定着時の揮発性有機化合物(VOC)の抑制の点で、酸価は5mgKOH/g以下が好ましく、さらには1mgKOH/g以下が好ましく、特に0.5mgKOH/g以下が好ましい。また、水酸基価は10mgKOH/g以下が好ましく、さらには5mgKOH/g以下が好ましく、特に3mgKOH/g以下が好ましい。なお、酸価はJOCS(日本油化学会)2.3.1-1996に準拠して測定することができ、水酸基価はJOCS(日本油化学会)2.3.6.2-1996に準拠して測定することができる。
【0021】
本発明におけるエステルワックス(A)の融点は60~90℃が好ましく、さらに好ましくは65~85℃である。
なお、本発明におけるエステルワックス(A)は、単独でまたは複数を併せて使用することができる。
【0022】
〔アミドエステルワックス(B)〕
本発明におけるアミドエステルワックス(B)は、直鎖モノアルカノールアミンと一価の直鎖飽和脂肪酸との反応物からなるアミドエステルワックスである。
【0023】
(B)成分を構成する直鎖モノアルカノールアミンは、炭素数が2~6であり、好ましくは炭素数2である。直鎖モノアルカノールアミンの炭素数が6を超える場合には、アミドエステルワックスの融点が低下し、軟化しやすくなることで、エステルワックスに対する付着抑制効果が低下することがある。
【0024】
直鎖モノアルカノールアミンとしては、例えば、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノールなどが挙げられる。
【0025】
(B)成分を構成する一価の直鎖飽和脂肪酸は、炭素数が16~22であり、好ましくは炭素数が16~18であり、炭素数が18のものが特に好ましい。一価の直鎖飽和脂肪酸の炭素数が16未満である場合には、耐熱性が低くなり、加熱定着時に揮発成分が発生することがある。また炭素数が22を超える場合には、アミドエステルワックスの粘度が上昇し、ワックスの染み出し性が低下することがある。一価の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。これらの直鎖飽和脂肪酸を単独で使用しても良く、または複数を併せて使用しても良い。
【0026】
本発明におけるアミドエステルワックス(B)の製造法としては、例えば、一価の直鎖飽和脂肪酸と直鎖モノアルカノールアミンとからの脱水縮合反応を利用する方法等が挙げられる。反応させる際には、一価の直鎖飽和脂肪酸と直鎖モノアルカノールアミンとをモル比2:1で、あるいは一価の直鎖飽和脂肪酸を過剰に添加し反応させる。例えば、直鎖飽和脂肪酸と直鎖モノアルカノールアミンの仕込み比(直鎖飽和脂肪酸のモル/モノエタノールアミンのモル)は1.8~2.3、好ましくは1.9~2.1である。その後、再結晶法、蒸留法、溶剤抽出法、吸着処理法などにより高純度化させても良い。
【0027】
本発明におけるアミドエステルワックスは、トナーの保存安定性や帯電性の点で、酸価は5mgKOH/g以下が好ましく、さらには1mgKOH/g以下が好ましく、特に0.5mgKOH/g以下が好ましい。また、水酸基価は10mgKOH/g以下が好ましく、さらには5mgKOH/g以下が好ましく、特に3mgKOH/g以下が好ましい。アミン価は5mgKOH/g以下が好ましく、さらには1mgKOH/g以下が好ましく、特に0.5mgKOH/g以下が好ましい。
【0028】
なお、酸価はJOCS(日本油化学会)2.3.1-1996に準拠して測定することができ、水酸基価はJOCS(日本油化学会)2.3.6.2-1996に準拠して測定することができ、アミン価はJSQI(医薬部外品原料規格)一般試験法3.2-2006に準拠して測定することができる。
【0029】
〔トナー用ワックス組成物〕
本発明のトナー用ワックス組成物は、上記エステルワックス(A)と上記アミドエステルワックス(B)とを含有し、その質量比((A):(B))は95:5~70:30であり、好ましくは90:10~80:20である。アミドエステルワックス(B)の質量比が5未満の場合には、トナー用ワックス組成物として用いた際に、十分な付着抑制効果が得られないことがある。またアミドワックス(B)の質量比が30を超える場合には、平均線膨張係数が低下し、十分な離型性を示さないことがある。
【0030】
本発明のトナー用ワックス組成物は公知の方法により製造することができる。例えば、エステルワックス(A)とアミドエステルワックス(B)をそれぞれ製造した後に、規定の質量比となるようにエステルワックス(A)とアミドエステルワックス(B)を配合しても良いし、規定の質量比になるように原料アルコール、原料脂肪酸、直鎖モノアルカノールアミンの量を調整して一括製造しても良い。エステルワックス(A)とアミドエステルワックス(B)をそれぞれ製造した後に配合してトナー用ワックス組成物を製造する方法については、アミドエステルワックス(B)の融点以上に加熱した上で、均一に混合した後に、冷却、粉砕等を行うことが組成の偏在化防止の観点から好ましい。
【0031】
本発明のトナー用ワックス組成物は、ポリエステルやスチレンアクリル等のバインダー樹脂、着色剤、外添剤、荷電制御剤などとともに配合され、通常の製法によってトナーが製造される。トナー中における本発明のトナー用ワックス組成物の配合量は、バインダー樹脂100質量部に対して、通常、0.1~15質量部である。
【0032】
本発明のトナー用ワックス組成物は、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと炭素数14~24の一価の直鎖飽和カルボン酸とから得られる高分子量のエステルワックスを含有することにより、ワックス組成物に加熱時の膨張性が得られるので、トナー粒子中からの素早い染み出しにより優れた離型性が得られる。更に、炭素数2~6の直鎖モノアルカノールアミンと炭素数16~22の一価の直鎖飽和脂肪酸とから得られる、エステルワックスへの親和性が高く、付着性の低いアミドエステルワックスを含有することで、部材への付着性が抑制される。
【0033】
本発明のトナー用ワックス組成物は、熱機械分析装置(Thermal Mechanical Analyzer;TMA)で、20mNの荷重を加えながら、5℃/分の速度で昇温した時の25℃の膨張率値%と最大膨張率値%との間の平均線膨張係数が、好ましくは2.0×10-4/℃以上であり、特に好ましくは2.5×10-4/℃以上である。平均線膨張係数が上記の範囲内である場合は、ワックスが膨張によりトナー内部から表面に素早く染み出すため、高い離型性が得られる。また、トナー用ワックス組成物の平均線膨張係数は、4.0×10-4/℃以下であることが好ましく、3.0×10-4/℃以下であることがさらに好ましい。
【実施例
【0034】
以下に本発明のトナー用ワックス組成物の製造例、およびその評価方法を示すことで、本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例および比較例において、「%」は質量部を示す。
【0035】
〔ワックスの評価方法〕
本実施例および比較例で採用した各種評価の方法を次に示す。
<融点> JIS K0064に準拠し、測定した。
<酸価> JOCS(日本油化学会)2.3.1-1996に準拠し、測定した。
<水酸基価> JOCS(日本油化学会)2.3.6.2-1996に準拠し、測定した。
<アミン価> JSQI(医薬部外品原料規格)一般試験法3.2-2006に準拠し、測定した。
【0036】
<ワックス付着率>
ワックスを乳鉢ですり潰し、篩で149メッシュパス、200メッシュオンの試料を作製した。試料をスクリュー管瓶用のキャップ(φ15mm×10mm)に500mg入れ、キャップをポリカーボネート板(150mm×70mm×2mm、全光線透過率:89%)の上に内部の試料が接触するように載せ、テープで固定した。
上記のポリカーボネート板を60℃恒温槽内で30分間保持し、その後、室温下で5分間冷却した。キャップが下向きになるようにポリカーボネート板を持ち、固定していたテープを外すことで、キャップと試料を落下させた。
上記ポリカーボネート板の試料付着部の全光線透過率をヘーズメーター(NDH-5000、日本電色工業社製)により測定し、以下の式でワックス付着率[%]を下記式(1)により算出した。

式(1)
(ワックス付着率[%])=100-(ポリカーボネート試料付着部の全光線透過率)/(ポリカーボネート板の全光線透過率)×100
[評価基準]

◎:25%未満。
○:25%以上35%未満。
×:35%以上。
【0037】
<平均線膨張係数>
評価に使用する試料(ワックス組成物)10gを底面が平滑なアルミカップ(φ60mm、高さ15mm)に入れて、140℃で完全に融解させた後、室温で冷却固化した。試料表面を金属ヤスリで整えることで、(縦×横×高さ)が4mm×4mm×3mmのワックス成型物を得た。熱機械分析装置((TMA/SS6100、セイコーインスツル株式会社製)により、先端径1mmの針入プローブを用いて、窒素ガス雰囲気下、5℃/minの昇温条件で測定を行った。30℃の膨張率値%と最大膨張率値%をプロットして平均線膨張係数を求めた。
[評価基準]

◎:2.5×10-4以上3.0×10-4以下。
○:2.0×10-4以上2.5×10-4未満、または3.0×10-4超過4.0×10-4以下。
×:2.0×10-4未満、または4.0×10-4超過。
【0038】
〔エステルワックスA1の製造〕
窒素導入管、撹拌羽、冷却管を取り付けた3L容の4つ口フラスコに、ペンタエリスリトール180g(1.3mol)、ステアリン酸1540g(5.5mol)を加え、窒素気流下、生成水を留去しながら、240℃で12時間反応した。酸価は7.1mgKOH/gであった。
トルエン、2-プロパノールおよび10%水酸化カリウム水溶液を用いて、粗生成物中の余剰の酸成分を取り除き、水洗を行ってpHを7に調整した。得られた精製物から加熱、および減圧条件下で溶媒を留去し、ろ過を経て、ペンタエリスリトールテトラステアレート(エステルワックスA1)1400gを得た。
得られたエステルワックスA1の融点、酸価、水酸基価を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
〔エステルワックスA2の製造〕
ペンタエリスリトール180g(1.3mol)とベヘニン酸1887g(5.5mol)を用い、エステルワックスA1の製造方法に準じてエステルワックスA2の製造を行った。得られたエステルワックスA2の融点、酸価、水酸基価を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
〔エステルワックスA3の製造〕
ジペンタエリスリトール200g(0.8mol)とステアリン酸1416g(5.0mol)を用い、エステルワックスA1の製造方法に準じてエステルワックスA3の製造を行った。
得られたエステルワックスA3の融点、酸価、水酸基価を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
〔アミドエステルワックスB1の製造〕
窒素導入管、撹拌羽、冷却管を取り付けた2L容の4つ口フラスコに、2-アミノエタノール125g(2.05mol)、ステアリン酸1162g(4.1mol)を加え、窒素気流下、生成水を留去しながら200℃で8時間反応した。酸価は4.0mgKOH/gであった。トルエン、2-プロパノールおよび10%水酸化カリウム水溶液を用いて、粗生成物中の余剰の酸成分を取り除き、水洗を行ってpHを7に調整した。得られた精製物から加熱、および減圧条件下で溶媒を留去し、ろ過を経て、ステアリン酸ステアラミド(アミドエステルワックスB1)1095gを得た。
得られたアミドエステルワックスB1の融点、酸価、水酸基価、アミン価を測定した。結果を表2に示す。
【0042】
〔アミドエステルワックスB2の製造〕
窒素導入管、撹拌羽、冷却管を取り付けた2L容の4つ口フラスコに、2-アミノエタノール125g(2.05mol)、ステアリン酸755g(2.7mol)、パルミチン酸370g(1.4mol)を加え、窒素気流下、生成水を留去しながら200℃で8時間反応した。酸価は5.3mgKOH/gであった。トルエン、2-プロパノールおよび10%水酸化カリウム水溶液を用いて、粗生成物中の余剰の酸成分を取り除き、水洗を行ってpHを7に調整した。得られた精製物から加熱、および減圧条件下で溶媒を留去し、ろ過を経て、アミドエステルワックスB2を1110g得た。
得られたアミドエステルワックスB2の酸価、水酸基価、アミン価を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
〔アミドエステルワックスB3の製造〕
窒素導入管、撹拌羽、冷却管を取り付けた200mL容の4つ口フラスコに、6-アミノ-1-ヘキサノール20g(0.17mol)、ステアリン酸99g(0.35mol)を加え、窒素気流下、生成水を留去しながら200℃で10時間反応した。室温まで冷却した反応物を1Lビーカーに移し、トルエン500g、2-プロパノール50gを加え、80℃で溶解した後、室温で冷却することで析出させた。この析出物を濾紙で回収し、減圧乾燥機で乾燥することで、アミドエステルワックスB3を88g得た。
得られたアミドエステルワックスB3の酸価、水酸基価、アミン価を測定した。結果を表2に示す。
【0044】
〔トナー用ワックス組成物の製造および評価〕
(実施例1)
撹拌羽、窒素導入管を取り付けた500mL容のセパラブルフラスコに、エステルワックスA1を270g、アミドエステルワックスB1を30g加え、窒素気流下、120℃で1時間撹拌した。その後、冷却、固化、粉砕を経て、トナー用ワックス組成物を得た。
得られたトナー用ワックス組成物について、ワックス付着率、平均線膨張係数の評価をした。結果を表3に示す。
【0045】
(実施例2~9、比較例1~5)
表1に示すエステルワックスおよび表2に示すアミドエステルワックスを用いて、実施例1と同様にしてトナー用ワックス組成物を得た。ただし、エステルワックスおよびアミドエステルワックスの種類および質量比率は、表3に示すように変更した。得られたトナー用ワックス組成物について、ワックス付着率、ワックス付着率、平均線膨張係数の評価をした。結果を表3に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
実施例1~9のワックス組成物は、エステルワックス単体(比較例1~3)と比較し、ワックス付着率が大きく低減されており、本ワックス組成物をトナーに用いることで、トナー同士のブロッキングや装置部材への付着を抑制することができる。また、実施例1~9のワックス組成物は、平均線膨張係数が高く、ワックス染み出し性が高くなり高い離型性が得られる。
【0050】
一方、アミドエステルワックスの含量が少ない比較例4は、ワックス付着率が高いため、トナーに用いた場合、トナー同士のブロッキングや装置部材への付着を引き起こすおそれがある。反対にアミドエステルワックスの含量が多い比較例5は、平均線膨張係数が低く、トナーに用いた場合、離型性を低下させる。