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特許7415310リソグラフィー用膜形成材料、リソグラフィー用膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】リソグラフィー用膜形成材料、リソグラフィー用膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20240110BHJP
   C08F 22/40 20060101ALI20240110BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240110BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20240110BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03F7/11 503
C08F22/40
G03F7/027 504
G03F7/039 601
G03F7/11 502
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020557606
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2019045524
(87)【国際公開番号】W WO2020105692
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018218081
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳矢
(72)【発明者】
【氏名】牧野嶋 高史
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/172434(WO,A1)
【文献】特開2013-242348(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141618(WO,A1)
【文献】特開2010-204298(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038074(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/039
G03F 7/027
C08F 22/40
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(0A)の基:
【化1】
(式(0A)中、
AおよびRBは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である)
を有する化合物および潜在型硬化促進剤を含むリソグラフィー用膜形成材料と、
溶媒と、
を含有する、リソグラフィー用膜形成用組成物であって、
リソグラフィー用膜がリソグラフィー用下層膜である、リソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項2】
前記潜在型硬化促進剤の分解温度が600℃以下である、請求項1に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項3】
前記潜在型硬化促進剤が潜在型塩基発生剤である、請求項1又は2に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項4】
式(0A)の基を有する化合物が、2以上の式(0A)の基を有する、請求項1~3のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項5】
式(0A)の基を有する化合物が、2つの式(0A)の基を有する化合物、又は式(0A)の基を有する化合物の付加重合樹脂である、請求項1~4のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項6】
式(0A)の基を有する化合物が、式(1A0)で表される、請求項1~5のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【化2】
(式(1A0)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
Zはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~100の2価の炭化水素基である)。
【請求項7】
式(0A)の基を有する化合物が、式(1A)で表される、請求項1~6のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【化3】
(式(1A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
Xは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH32-、-CO-、-C(CF32-、-CONH-又は-COO-であり、
Aは、単結合、酸素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~80の2価の炭化水素基であり、
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~30の基であり、
m1は、それぞれ独立して、0~4の整数である)。
【請求項8】
Aが、単結合、酸素原子、-(CH2p-、-CH2C(CH32CH2-、-(C(CH32p-、-(O(CH2qp-、-(О(C64))p-、又は以下の構造のいずれかであり、
【化4】
Yは単結合、-O-、-CH2-、-C(CH32-、-C(CF32-、
【化5】
であり、
pは0~20の整数であり、
qは0~4の整数である、
請求項7に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項9】
式(0A)の基を有する化合物が、式(2A)で表される、請求項1~5のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【化6】
(式(2A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
2は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m2’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
nは、0~4の整数である)。
【請求項10】
式(0A)の基を有する化合物が、式(3A)で表される、請求項1~5のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【化7】
(式(3A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m3は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
m4は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
nは、1~4の整数である)。
【請求項11】
前記潜在型硬化促進剤の含有割合が、式(0A)の基を有する化合物の合計質量を100質量部とした場合に、1~25質量部である、請求項1~10のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項12】
架橋剤をさらに含有する、請求項1~11のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項13】
前記架橋剤が、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物及びアジド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項14】
前記架橋剤が、少なくとも1つのアリル基を有する、請求項12又は13に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項15】
前記架橋剤の含有割合が、式(0A)の基を有する化合物の合計質量を100質量部とした場合に、0.1~100質量部である、請求項12~14のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて形成される、リソグラフィー用下層膜。
【請求項17】
基板上に、請求項1~15のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、
該下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、及び
該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項18】
基板上に、請求項1~15のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、
該下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程、
該中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、
該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程、
該レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングする工程、
得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングする工程、及び
得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程、
を含む、回路パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィー用膜形成材料、該材料を含有するリソグラフィー用膜形成用組成物、該組成物を用いて形成されるリソグラフィー用下層膜及び該組成物を用いるパターン形成方法(例えば、レジストパターン方法又は回路パターン方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。そして、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されている。しかしながら、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じてくるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。
【0004】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、従来のエッチング速度の速いレジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、所定のエネルギーが印加されることにより末端基が脱離してスルホン酸残基を生じる置換基を少なくとも有する樹脂成分と溶媒とを含有する多層レジストプロセス用下層膜形成材料が提案されている(特許文献1参照。)。また、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献2参照。)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献3参照。)。
【0005】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性を持つ材料としては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガス等を原料に用いたCVDによって形成されたアモルファスカーボン下層膜がよく知られている。
【0006】
また、本発明者らは、光学特性及びエッチング耐性に優れるとともに、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構成単位を含むナフタレンホルムアルデヒド重合体及び有機溶媒を含有するリソグラフィー用下層膜形成組成物(特許文献4及び5参照。)を提案している。
【0007】
なお、3層プロセスにおけるレジスト下層膜の形成において用いられる中間層の形成方法に関しては、例えば、シリコン窒化膜の形成方法(特許文献6参照。)や、シリコン窒化膜のCVD形成方法(特許文献7参照。)が知られている。また、3層プロセス用の中間層材料としては、シルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料が知られている(特許文献8及び9参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-177668号公報
【文献】特開2004-271838号公報
【文献】特開2005-250434号公報
【文献】国際公開第2009/072465号
【文献】国際公開第2011/034062号
【文献】特開2002-334869号公報
【文献】国際公開第2004/066377号
【文献】特開2007-226170号公報
【文献】特開2007-226204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来数多くのリソグラフィー用膜形成材料が提案されているが、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが適用可能な高い溶媒溶解性を有するのみならず、耐熱性、段差基板における膜の平坦性を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。
【0010】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性、段差基板における膜の平坦性に優れ、溶媒への溶解性、溶液形態での長期保存安定性に優れたリソグラフィー用膜形成材料、該材料を含有するリソグラフィー用膜形成用組成物、並びに、該組成物を用いたリソグラフィー用フォトレジスト層、下層膜及びパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する化合物及び潜在型硬化促進剤を用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は次のとおりである。
【0012】
[1]
式(0A)の基:
【化1】
(式(0A)中、
AおよびRBは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である)
を有する化合物および潜在型硬化促進剤を含むリソグラフィー用膜形成材料。
[1-1]
AおよびRBの少なくとも一方が炭素数1~4のアルキル基である、[1]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[2]
前記潜在型硬化促進剤の分解温度が600℃以下である、[1]又は[1-1]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[3]
前記潜在型硬化促進剤が潜在型塩基発生剤である、[1]~[2]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[3-1]
前記潜在型硬化促進剤がビグアニド構造を有する、[1]~[3]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[4]
式(0A)の基を有する化合物が、2以上の式(0A)の基を有する、[1]~[3-1]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[5]
式(0A)の基を有する化合物が、2つの式(0A)の基を有する化合物、又は式(0A)の基を有する化合物の付加重合樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[6]
式(0A)の基を有する化合物が、式(1A0)で表される、[1]~[5]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
【化2】
(式(1A0)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
Zはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~100の2価の炭化水素基である)。
[7]
式(0A)の基を有する化合物が、式(1A)で表される、[1]~[6]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
【化3】
(式(1A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
Xは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH32-、-CO-、-C(CF32-、-CONH-又は-COO-であり、
Aは、単結合、酸素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~80の2価の炭化水素基であり、
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~30の基であり、
m1は、それぞれ独立して、0~4の整数である)。
[8]
Aが、単結合、酸素原子、-(CH2p-、-CH2C(CH32CH2-、-(C(CH32p-、-(O(CH2qp-、-(О(C64))p-、又は以下の構造のいずれかであり、
【化4】
Yは単結合、-O-、-CH2-、-C(CH32-、-C(CF32-、
【化5】
であり、
pは0~20の整数であり、
qは0~4の整数である、
[7]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[8-1]
Xが-O-であり、
Aが以下の構造であり、
【化6】
Yが-C(CH32-である、[8]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[9]
式(0A)の基を有する化合物が、式(2A)で表される、[1]~[5]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
【化7】
(式(2A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
2は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m2’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
nは、0~4の整数である)。
[9-1]
nが1~4の整数である、[9]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[10]
式(0A)の基を有する化合物が、式(3A)で表される、[1]~[5]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
【化8】
(式(3A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m3は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
m4は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
nは、1~4の整数である)。
[10-1]
nが2~4の整数である、[10]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[11]
前記潜在型硬化促進剤の含有割合が、式(0A)の基を有する化合物の合計質量を100質量部とした場合に、1~25質量部である、[1]~[10-1]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[12]
架橋剤をさらに含有する、[1]~[11]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[13]
前記架橋剤が、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物及びアジド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[12]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[14]
前記架橋剤が、少なくとも1つのアリル基を有する、[12]又は[13]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[15]
前記架橋剤の含有割合が、式(0A)の基を有する化合物の合計質量を100質量部とした場合に、0.1~100質量部である、[12]~[14]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[16]
[1]~[15]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料と溶媒とを含有する、リソグラフィー用膜形成用組成物。
[17]
リソグラフィー用膜がリソグラフィー用下層膜である、[16]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物。
[18]
[17]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて形成される、リソグラフィー用下層膜。
[19]
リソグラフィー用膜がレジスト膜である、[16]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物。
[20]
[19]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて形成される、レジスト膜。
[21]
基板上に、[19]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
該レジスト膜形成工程により形成したレジスト膜の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う現像工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
[22]
絶縁膜パターンの形成方法である、[21]のレジストパターン形成方法。
[23]
基板上に、[17]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、
該下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、及び
該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程、
を含む、レジストパターン形成方法。
[24]
基板上に、[17]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、
該下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程、
該中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、
該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程、
該レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングする工程、
得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングする工程、及び
得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程、
を含む、回路パターン形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性、段差基板における膜の平坦性に優れるだけでなく、溶媒への溶解性、溶液形態での長期保存安定性および低温での硬化性を兼ね備えたフォトレジスト下層膜を形成するために有用な、リソグラフィー用膜形成材料、該材料を含有するリソグラフィー用膜形成用組成物、並びに、該組成物を用いたリソグラフィー用下層膜及びパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0015】
[リソグラフィー用膜形成材料]
<化合物>
本発明の一実施形態は、式(0A)の基:
【化9】
(式(0A)中、
A及びRBは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。)
を有する化合物及び潜在型の硬化促進剤を含む、リソグラフィー用膜形成材料に関する。RAおよびRBの少なくとも一方が炭素数1~4のアルキル基であってもよい。
【0016】
式(0A)の基を有する化合物(以下「化合物0A」という。)は、2以上の式(0A)の基を有することが好ましい。化合物0Aは、例えば、分子内に1個以上の第1級アミノ基を有する化合物と無水マレイン酸あるいは無水シトラコン酸との脱水閉環反応により得ることができる。
【0017】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料中の、化合物0Aの合計含有量は、耐熱性及び段差基板における膜の平坦性の観点から、51~98質量%であることが好ましく、60~96質量%であることがより好ましく、70~94質量%であることがさらに好ましく、80~92質量%であることが特に好ましい。
【0018】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料中の化合物0Aは、リソグラフィー用膜形成用の酸発生剤あるいは塩基発生剤としての機能以外を有することを特徴とする。
【0019】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料に用いられる化合物0Aとしては、原料入手性と量産化に対応した製造の観点から、2つの式(0A)の基を有する化合物、及び式(0A)の基を有する化合物が付加重合した樹脂が好ましい。
【0020】
化合物0Aは、式(1A0)で表される化合物であることが好ましい。
【化10】
(式(1A0)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
Zはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~100の2価の炭化水素基である。)
炭化水素基の炭素数は、1~80、1~60、1~40、1~20等であってもよい。ヘテロ原子としては、酸素、窒素、硫黄、フッ素、ケイ素等を挙げることができる。
【0021】
化合物0Aは、式(1A)で表される化合物であることが好ましい。
【化11】
(式(1A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
Xは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH32-、-CO-、-C(CF32-、-CONH-又は-COO-であり、
Aは、単結合、酸素原子、又はヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、フッ素)を含んでいてもよい炭素数1~80の2価の炭化水素基であり、
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい炭素数0~30の基であり、
m1は、それぞれ独立して、0~4の整数である。)
【0022】
耐熱性及びエッチング耐性向上の観点から、式(1A)において、Aは、単結合、酸素原子、-(CH2p-、-CH2C(CH32CH2-、-(C(CH32p-、-(O(CH2qp-、-(О(C64))p-、又は以下の構造のいずれかであることが好ましく、
【化12】
Yは単結合、-O-、-CH2-、-C(CH32-、-C(CF32-、
【化13】
であることが好ましく、
pは0~20の整数であることが好ましく、
qは0~4の整数であることが好ましい。
【0023】
Xは、耐熱性の観点から、単結合であることが好ましく、溶解性の観点から、-COO-であることが好ましい。
Yは、耐熱性向上の観点から、単結合であることが好ましい。
1は、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい炭素数0~20又は0~10の基であることが好ましい。R1は、有機溶媒への溶解性向上の観点から、炭化水素基であることが好ましい。例えば、R1として、アルキル基(例えば、炭素数1~6又は1~3のアルキル基)等が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。
m1は、0~2の整数であることが好ましく、原料入手性及び溶解性向上の観点から、1又は2であることがより好ましい。
qは、2~4の整数であることが好ましい。
pは、0~2の整数であることが好ましく、耐熱性向上の観点から、1~2の整数であることがより好ましい。
【0024】
また、一例として、式(1A)中、
AおよびRBは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり(RAおよびRBの少なくとも一方が炭素数1~4のアルキル基であってもよい)、
Xは-O-であり、
Aは以下の構造であり、
【化14】
Yは-C(CH32-であり、
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~30の基であり、
m1は、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0025】
<付加重合型樹脂>
硬化膜の耐熱性および埋込み性、平坦性向上の観点から、化合物0Aは、式(2A)で表される化合物であることが好ましい。
【化15】
(式(2A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
2は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m2’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
nは、0~4の整数である)
【0026】
前記式(2A)及び式(2B)中、R2はそれぞれ独立に、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい炭素数0~10の基である。また、R2は、有機溶媒への溶解性向上の観点から、炭化水素基であることが好ましい。例えば、R2として、アルキル基(例えば、炭素数1~6又は1~3のアルキル基)等が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。
m2はそれぞれ独立に0~3の整数である。また、m2は、0又は1であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
m2’はそれぞれ独立に、0~4の整数である。また、m2’は、0又は1であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
nは、0~4の整数である。また、nは、1~4の整数であることが好ましく、耐熱性向上の観点から、1~2の整数であることがより好ましい。nが1以上であることにより、昇華物の原因となりうる単量体が除去され、平坦性と耐熱性の両立が期待でき、nが1であることがより好ましい。
【0027】
硬化膜の耐熱性および段差基板における膜の平坦性向上の観点から、化合物0Aは、式(3A)で表される化合物であることが好ましい。
【化16】
(式(3A)中、
A及びRBは前記のとおりであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m3は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
m4は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
nは、1~4の整数である)
【0028】
前記式(3A)中、R3及びR4はそれぞれ独立に、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい炭素数0~10の基である。また、R3及びR4は、有機溶媒への溶解性向上の観点から、炭化水素基であることが好ましい。例えば、R3及びR4として、アルキル基(例えば、炭素数1~6又は1~3のアルキル基)等が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。
m3はそれぞれ独立に0~4の整数である。また、m3は、0~2の整数であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
m4はそれぞれ独立に、0~4の整数である。また、m4は、0~2の整数であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
nは、1~4の整数である。また、nは、2~4の整数であることが好ましく、耐熱性向上の観点から、2~3の整数であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。nが2以上であることにより、昇華物の原因となりうる単量体が除去され、平坦性と耐熱性の両立が期待でき、nが2であることがより好ましい。
【0029】
本実施形態で使用される化合物0Aとしては、具体的には、m-フェニレンジアミン、4-メチル-1,3-フェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、4,4-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等のフェニレン骨格含有ビスアミンから得られるビスマレイミドおよびビスシトラコンイミド;ビス(3-エチル-5-メチル-4-アミノフェニル)メタン、1,1-ビス(3-エチル-5-メチル-4-アミノフェニル)エタン、2,2-ビス(3-エチル-5-メチル-4-アミノフェニル)プロパン、N,N'-4,4'-ジアミノ3,3'-ジメチル-ジフェニルメタン、N,N'-4,4'-ジアミノ3,3'-ジメチル-1,1-ジフェニルエタン、N,N'-4,4'-ジアミノ3,3'-ジメチル-1,1-ジフェニルプロパン、N,N'-4,4'-ジアミノ-3,3'-ジエチル-ジフェニルメタン、N,N'-4,4'-ジアミノ3,3'-ジn-プロピル-ジフェニルメタン、N,N'-4,4'-ジアミノ3,3'-ジn-ブチル-ジフェニルメタン等のジフェニルアルカン骨格含有ビスアミンから得られるビスマレイミドおよびビスシトラコンイミド;N,N'-4,4'-ジアミノ3,3'-ジメチル-ビフェニレン、N,N'-4,4'-ジアミノ3,3'-ジエチル-ビフェニレン等のビフェニル骨格含有ビスアミンから得られるビスマレイミドおよびビスシトラコンイミド;1,6-ヘキサンジアミン、1,6-ビスアミノ(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、1,3-ジメチレンシクロヘキサンジアミン、1,4-ジメチレンシクロヘキサンジアミンなどの脂肪族骨格ビスアミンから得られるビスマレイミドおよびビスシトラコンイミド;1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(3-アミノブチル)-1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン、ビス(4-アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(4-アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェノキシ-1,3-ビス(2-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ビス(2-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ビス(3-アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(2-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(3-アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(4-アミノブチル)ジシロキサン、1,3-ジメチル-1,3-ジメトキシ-1,3-ビス(4-アミノブチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(4-アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(4-アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(5-アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(2-アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(4-アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(5-アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサエチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサプロピル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン等のジアミノシロキサンから得られるビスマレイミド及びビスシトラコンイミド等が挙げられる。
【0030】
上記ビスマレイミド化合物の中でも特にビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、N,N'-4,4'-[3,3'-ジメチル-ジフェニルメタン]ビスマレイミド、N,N'-4,4'-[3,3'-ジエチルジフェニルメタン]ビスマレイミドが、硬化性や耐熱性にも優れるため、好ましい。
上記ビスシトラコンイミド化合物の中でも特にビス(3-エチル-5-メチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、N,N'-4,4'-[3,3'-ジメチル-ジフェニルメタン]ビスシトラコンイミド、N,N'-4,4'-[3,3'-ジエチルジフェニルメタン]ビスシトラコンイミドが、溶剤溶解性に優れるため、好ましい。
【0031】
本実施形態で使用される付加重合型マレイミド樹脂としては、例えば、ビスマレイミドM-20(三井東圧化学社製、商品名)、BMI-2300(大和化成工業株式会社製、商品名)、BMI-3200(大和化成工業株式会社製、商品名)、MIR-3000(日本化薬株式会社製、製品名)等が挙げられる。この中でも特にBMI-2300が溶解性や耐熱性にも優れるため、好ましい。
【0032】
<潜在型硬化促進剤>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、架橋反応、硬化反応を促進させるための潜在型の硬化促進剤を含む。潜在型硬化促進剤とは、通常の保管条件では活性を示さないが、外部刺激(例えば、熱、光等)に応答して活性を示す硬化促進剤である。潜在型硬化促進剤を使用することにより、季節を問わず、通常の室温保管条件下において、長期の安定保存が可能となる。
【0033】
潜在型硬化促進剤の分解温度は、硬化速度の制御および硬化膜の平坦性制御の観点から、例えば600℃以下であり、好ましくは450℃以下であり、より好ましくは400℃以下であり、さらに好ましくは350℃以下であり、最も好ましくは240℃以下である。「分解温度」とは、潜在型硬化促進剤を分解して、硬化促進作用を有する物質を生成する温度を意味する。
【0034】
また、分解温度の下限は、例えば100℃であり、より好ましくは150℃であり、さらに好ましくは200℃であり、最も好ましくは220℃である。
【0035】
本発明の実施形態にて使用できる化合物の構造特性上、潜在型硬化促進剤としては、潜在型塩基発生剤が好ましい。潜在型塩基発生剤としては、例えば、熱分解によって塩基を発生するもの(熱潜在型塩基発生剤)、光照射によって塩基を発生するもの(光潜在型塩基発生剤)等が挙げられる。なお、光潜在型塩基発生剤は、熱分解によって塩基を発生することもできる。
【0036】
熱潜在型塩基発生剤としては、例えば、40℃以上に加熱すると塩基を発生する酸性化合物(A1)、pKa1が0~4のアニオンとアンモニウムカチオンとを有するアンモニウム塩(A2)等が挙げられる。
上記酸性化合物(A1)および上記アンモニウム塩(A2)は、加熱すると塩基を発生するので、これらの化合物から発生した塩基により、架橋反応、硬化反応を促進できる。また、これらの化合物は、加熱しなければリソグラフィー用膜形成材料の環化が殆ど進行しないので、安定性に優れたリソグラフィー用膜形成組成物を調製することができる。
【0037】
光潜在型塩基発生剤としては、例えば、電磁波に露光することによって塩基を生成する中性化合物等が挙げられる。例えばアミンが発生するものとしては、ベンジルカルバメート類、ベンゾインカルバメート類、0-カルバモイルヒドロキシアミン類、O-カルバモイルオキシム類など、およびRR’-N-CO-OR”(ここで、R、R’は水素または低級アルキルであり、R”はニトロベンジルまたはαメチル・ニトロベンジルである。)が挙げられる。特に、溶液に添加した際の保存安定性を確保し、低い蒸気圧に起因したベーク時の揮発を抑制するため、三級アミンを発生するボレート化合物または、ジチオカルバメートをアニオンとして含む四級アンモニウム塩(C.E.Hoyle,et.al.,Macromolucules,32,2793(1999))等が好ましい。
【0038】
本実施形態で使用される潜在型塩基発生剤の具体例としては、例えば、以下のものをあげることができる。
【0039】
(ヘキサアンミンルテニウム(III)トリフェニルアルキルボレートの例)
ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルエチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルプロピルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルヘキシルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルオクチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルオクタデシルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルイソプロピルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルイソブチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニル-sec-ブチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニル-tert-ブチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルネオペンチルボレート)等。
【0040】
(ヘキサアンミンルテニウム(III)トリフェニルボレートの例)
ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルシクロペンチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルシクロヘキシルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(4-デシルシクロヘキシル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(フルオロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(クロロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(ブロモメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(トリフルオロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(トリクロロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(ヒドロキシメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(カルボキシメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(シアノメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(ニトロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(アジドメチル)ボレート]等。
【0041】
(ヘキサアンミンルテニウム(III)トリアリールブチルボレートの例)
ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(1-ナフチル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(2-ナフチル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(o-トリル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(m-トリル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(p-トリル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(2,3-キシリル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(2,5-キシリル)ブチルボレート]等。
【0042】
(ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)の例)
トリス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、cis-ジアンミンビス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、trans-ジアンミンビス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、トリス(トリメチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、トリス(プロピレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、テトラアンミン{(-)(プロピレンジアミン)}ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、トリス(trans-1,2-シクロヘキサンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、ビス(ジエチレントリアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、ビス(ピリジン)ビス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、ビス(イミダゾール)ビス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)等。
【0043】
上記潜在型塩基発生剤は、各々の錯イオンのハロゲン塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等と、アルカリ金属ボレート塩とを、水、アルコールもしくは含水有機溶剤等の適当な溶媒中で、混和することで容易に製造可能である。これら原料となる各々の錯イオンのハロゲン塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等は、市販品として容易に入手可能である他、例えば、日本化学会編、新実験化学講座8(無機化合物の合成III)、丸善(1977年)等に、その合成法が記載されている。
【0044】
また、光潜在型塩基発生剤として、例えばビグアニド構造を有するもの、具体的には1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム n-ブチルトリフェニルボレート(商品名:WPBG-300、富士フイルム和光純薬株式会社製)、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート(商品名:WPBG-266、富士フイルム和光純薬株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
潜在型硬化促進剤の含有量としては、前記化合物0Aの質量に対して化学量論的に必要な量であればよいが、前記化合物0Aの質量を100質量部とした場合に1~25質量部であることが好ましく、1~15質量部であることがより好ましい。潜在型硬化促進剤の含有量が1質量部以上である場合には、リソグラフィー用膜形成材料の硬化が不十分となることを防ぐことができる傾向にあり、他方、潜在型硬化促進剤の含有量が25質量部以下である場合には、リソグラフィー用膜形成材料の室温での長期保存安定性が損なわれることを防ぐことができる傾向にある。
【0046】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能である。また、本実施形態の好ましいリソグラフィー用膜形成材料は、芳香族構造を有しており、また剛直な骨格を有しており、単独でも高温ベークによって、その官能基が架橋反応を起こし、高い耐熱性を発現する。その結果、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、プラズマエッチング等に対するエッチング耐性に優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態の好ましいリソグラフィー用膜形成材料は、芳香族構造を有しているにも関わらず、有機溶媒に対する溶解性が高く、安全溶媒に対する溶解性が高い。また、架橋反応、硬化反応を促進させるための潜在型の塩基発生剤を含むことにより、季節を問わず、通常の室温保管条件下における長期保存安定性に優れ、所定の温度以上あるいは所定の光照射の条件にて膜形成が可能となるため、プロセス制御の観点からも優れている。さらに、後述する本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物からなるリソグラフィー用下層膜は段差基板における膜の平坦性に優れ、製品品質の安定性が良好であるだけでなく、レジスト層やレジスト中間層膜材料との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。
【0047】
<架橋剤>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、硬化温度の低下やインターミキシングを抑制する等の観点から、必要に応じて架橋剤を含有していてもよい。
【0048】
架橋剤としては化合物0Aと架橋反応すれば特に限定されず、公知のいずれの架橋システムを適用できるが、本実施形態で使用可能な架橋剤の具体例としては、例えば、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、アクリレート化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの架橋剤は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物又はシアネート化合物が好ましく、エッチング耐性向上の観点から、ベンゾオキサジン化合物がより好ましい。
【0049】
化合物0Aと架橋剤との架橋反応では、例えば、これらの架橋剤が有する活性基(フェノール性水酸基、エポキシ基、シアネート基、アミノ基、又はベンゾオキサジンの脂環部位が開環してなるフェノール性水酸基)が、化合物0Aの炭素-炭素二重結合と付加反応して架橋する他、化合物0Aの2つの炭素-炭素二重結合が重合して架橋する。
【0050】
前記フェノール化合物としては、公知のものが使用できる。例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。好ましくは、耐熱性及び溶解性の点から、アラルキル型フェノール樹脂が望ましい。
【0051】
前記エポキシ化合物としては、公知のものが使用でき、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものの中から選択される。例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。エポキシ樹脂は、単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、耐熱性と溶解性という点から、フェノールアラルキル樹脂類、ビフェニルアラルキル樹脂類から得られるエポキシ樹脂等の常温で固体状エポキシ樹脂である。
【0052】
前記シアネート化合物としては、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物であれば特に制限なく、公知のものを使用することができる。例えば、国際公開2011-108524に記載されているものが挙げられるが、本実施形態において、好ましいシアネート化合物としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の水酸基をシアネート基に置換した構造のものが挙げられる。また、シアネート化合物は、芳香族基を有するものが好ましく、シアネート基が芳香族基に直結した構造のものを好適に使用することができる。このようなシアネート化合物としては、例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。シアネート化合物は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、シアネート化合物は、モノマー、オリゴマー及び樹脂のいずれの形態であってもよい。
【0053】
前記アミノ化合物としては、例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。
【0054】
前記ベンゾオキサジン化合物のオキサジンの構造は特に限定されず、ベンゾオキサジンやナフトオキサジン等の、縮合多環芳香族基を含む芳香族基を有するオキサジンの構造が挙げられる。
【0055】
ベンゾオキサジン化合物としては、例えば下記一般式(a)~(f)に示す化合物が挙げられる。なお下記一般式において、環の中心に向けて表示されている結合は、環を構成しかつ置換基の結合が可能ないずれかの炭素に結合していることを示す。
【0056】
【化17】
【0057】
一般式(a)~(c)中、R1及びR2は独立して炭素数1~30の有機基を表す。また一般式(a)~(f)中、R3乃至R6は独立して水素又は炭素数1~6の炭化水素基を表す。また前記一般式(c)、(d)及び(f)中、Xは独立して、単結合、-O-、-S-、-S-S-、-SO2-、-CO-、-CONH-、-NHCO-、-C(CH32-、-C(CF32-、-(CH2)m-、-O-(CH2)m-O-、-S-(CH2)m-S-を表す。ここでmは1~6の整数である。また一般式(e)及び(f)中、Yは独立して、単結合、-O-、-S-、-CO-、-C(CH32-、-C(CF32-又は炭素数1~3のアルキレンを表す。
【0058】
また、ベンゾオキサジン化合物には、オキサジン構造を側鎖に有するオリゴマーやポリマー、ベンゾオキサジン構造を主鎖中に有するオリゴマーやポリマーが含まれる。
【0059】
ベンゾオキサジン化合物は、国際公開2004/009708号パンフレット、特開平11-12258号公報、特開2004-352670号公報に記載の方法と同様の方法で製造することができる。
【0060】
前記メラミン化合物としては、例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。
【0061】
前記グアナミン化合物としては、例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。
【0062】
前記グリコールウリル化合物としては、例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。
【0063】
前記ウレア化合物としては、例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。
【0064】
また、本実施形態において、架橋性向上の観点から、少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤を用いてもよい。少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤としては、例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤は単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。化合物0Aとの相溶性に優れるという観点から、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類が好ましい。
【0065】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は単独で、あるいは前記架橋剤を配合させた後、公知の方法で架橋、硬化させて、本実施形態のリソグラフィー用膜を形成することができる。架橋方法としては、熱硬化、光硬化等の手法が挙げられる。
【0066】
前記架橋剤の含有割合は、化合物0Aの合計質量を100質量部とした場合に、0.1~100質量部の範囲であり、好ましくは、耐熱性及び溶解性の観点から1~50質量部の範囲であり、より好ましくは1~30質量部の範囲である。
【0067】
<ラジカル重合開始剤>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料には、必要に応じてラジカル重合開始剤を配合することができる。ラジカル重合開始剤としては、光によりラジカル重合を開始させる光重合開始剤であってもよいし、熱によりラジカル重合を開始させる熱重合開始剤であってもよい。
【0068】
このようなラジカル重合開始剤としては、例えば、国際公開2018-016614号に記載のものが挙げられる。本実施形態におけるラジカル重合開始剤としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
前記ラジカル重合開始剤の含有量としては、化合物0Aの合計質量に対して化学量論的に必要な量であればよいが、化合物0Aの合計質量を100質量部とした場合に0.01~25質量部であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量が0.01質量部以上である場合には、硬化が不十分となることを防ぐことができる傾向にあり、他方、ラジカル重合開始剤の含有量が25質量部以下である場合には、リソグラフィー用膜形成材料の室温での長期保存安定性が損なわれることを防ぐことができる傾向にある。
【0070】
[レジスト組成物]
本実施形態のレジスト組成物は、上述した本実施形態におけるリソグラフィー用膜形成材料を含む。
【0071】
本実施形態のレジスト組成物は、溶媒をさらに含有することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、国際公開2013-024778号に記載のものを挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0072】
溶媒としては、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、CHN(シクロヘキサノン)、CPN(シクロペンタノン)、オルソキシレン(OX)、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種である。
【0073】
本実施形態において固形成分の量と溶媒との量は、特に限定されないが、固形成分の量と溶媒との合計質量100質量%に対して、固形成分1~80質量%及び溶媒20~99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1~50質量%及び溶媒50~99質量%、さらに好ましくは固形成分2~40質量%及び溶媒60~98質量%であり、特に好ましくは固形成分2~10質量%及び溶媒90~98質量%である。
【0074】
[リソグラフィー用膜形成用組成物]
本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物は、前記リソグラフィー用膜形成材料と溶媒とを含有する。リソグラフィー用膜は、例えば、リソグラフィー用下層膜である。
【0075】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物は、基材に塗布し、その後、必要に応じて加熱して溶媒を蒸発させた後、加熱又は光照射して所望の硬化膜を形成することができる。本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物の塗布方法は任意であり、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法を適宜採用できる。
【0076】
前記膜の加熱温度は、溶媒を蒸発させる目的では特に限定されず、例えば、40~400℃で行うことができる。加熱方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で蒸発させればよい。加熱温度及び加熱時間は、目的とする電子デバイスのプロセス工程に適合した条件を選択すればよく、得られる膜の物性値が電子デバイスの要求特性に適合するような加熱条件を選択すればよい。光照射する場合の条件も特に限定されるものではなく、用いるリソグラフィー用膜形成材料に応じて、適宜な照射エネルギー及び照射時間を採用すればよい。
【0077】
<溶媒>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物に用いる溶媒としては、化合物0A及び潜在型の塩基発生剤が少なくとも溶解するものであれば、特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。
【0078】
溶媒の具体例としては、例えば、国際公開2013/024779に記載のものが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
前記溶媒の中で、安全性の点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、アニソールが特に好ましい。
【0080】
前記溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、リソグラフィー用膜形成用材料中の化合物0Aと潜在型塩基発生剤の合計質量を100質量部とした場合に、25~9,900質量部であることが好ましく、400~7,900質量部であることがより好ましく、900~4,900質量部であることがさらに好ましい。
【0081】
さらに、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、消泡剤、着色剤、顔料、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
[レジスト膜及びレジストパターン形成方法]
本実施形態のレジスト膜は、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて形成される。
【0083】
本実施形態のレジストパターン形成方法は、基板上に、本実施形態の記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、該レジスト膜形成工程により形成したレジスト膜の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う現像工程と、を含む。本実施形態のレジストパターン形成方法は、各種パターンの形成に用いることができ、絶縁膜パターンの形成方法であることが好ましい。
【0084】
[リソグラフィー用下層膜及びパターンの形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて形成される。
【0085】
また、本実施形態のパターン形成方法は、基板上に、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程(A-1)と、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(A-2)と、前記工程(A-2)の後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程(A-3)と、を有する。
【0086】
さらに、本実施形態の他のパターン形成方法は、基板上に、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程(B-1)と、前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程(B-2)と、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(B-3)と、前記工程(B-3)の後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(B-4)と、前記工程(B-4)の後、前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程(B-5)と、を有する。
【0087】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物から形成されるものであれば、その形成方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布法或いは印刷法等で基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させる等して除去することで、下層膜を形成することができる。
【0088】
下層膜の形成時には、上層レジストとのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークをすることが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80~450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200~400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10~300秒間の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、通常、30~20,000nmであることが好ましく、より好ましくは50~15,000nmであり、さらに好ましくは50~1000nmである。
【0089】
基板上に下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその上に珪素含有レジスト層、或いは通常の炭化水素からなる単層レジスト、3層プロセスの場合はその上に珪素含有中間層、さらにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0090】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0091】
3層プロセス用の珪素含有中間層としてはポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果がある中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としてはフェニル基又は珪素-珪素結合を有する吸光基を導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0092】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによる中間層の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0093】
さらに、本実施形態の下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。本実施形態の下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0094】
前記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、前記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法等で塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80~180℃で10~300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30~500nmが好ましく、より好ましくは50~400nmである。
【0095】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0096】
上述の方法により形成されるレジストパターンは、本実施形態の下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態の下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させ得る。
【0097】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Ar等の不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO2、NH3、N2、NO2、H2ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0098】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上述の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0099】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公報(特許文献6)、WO2004/066377(特許文献7)に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0100】
中間層として、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号(特許文献8)、特開2007-226204号(特許文献9)に記載されたものを用いることができる。
【0101】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0102】
本実施形態の下層膜は、これら基板のエッチング耐性に優れる特徴がある。なお、基板は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50~1,000,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75~500,000nmである。
【実施例
【0103】
以下、本発明を、合成実施例、実施例、及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0104】
[分子量]
合成した化合物の分子量は、Water社製Acquity UPLC/MALDI-Synapt HDMSを用いて、LC-MS分析により測定した。
【0105】
[耐熱性の評価]
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製EXSTAR6000TG-DTA装置を使用し、試料約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(100ml/min)気流中昇温速度10℃/minで500℃まで昇温することにより熱重量減少量を測定した。実用的観点からは、下記A又はB評価が好ましい。A又はB評価であれば、高い耐熱性を有し、高温ベークへの適用が可能である。
<評価基準>
A:400℃での熱重量減少量が、10%未満
B:400℃での熱重量減少量が、10%~25%
C:400℃での熱重量減少量が、25%超
【0106】
[溶解性の評価]
50mlのスクリュー瓶にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とシクロヘキサノン(CHN)が1:1の重量比となるように調整された混合溶媒、化合物及び/又は樹脂を仕込み、23℃にてマグネチックスターラーで1時間撹拌後に、化合物及び/又は樹脂の上記混合溶媒に対する溶解量を測定し、その結果を以下の基準で評価した。実用的観点からは、下記S、A又はB評価が好ましい。
<評価基準>
S:20質量%以上30質量%未満
A:10質量%以上20質量%未満
B:5質量%以上10質量%未満
C:5質量%未満
【0107】
(合成実施例1) BAPPシトラコンイミドの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器を準備した。この容器に、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(製品名:BAPP、和歌山精化工業(株)製)4.10g(10.0mmol)、無水シトラコン酸(関東化学(株)製)4.15g(40.0mmol)、ジメチルフォルムアミド30mlおよびトルエン60mlを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)、重合禁止剤BHT0.1gを加えて、反応液を調製した。この反応液を120℃で5時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をアセトンで洗浄し、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で示される目的化合物(BAPPシトラコンイミド)3.76gを得た。
【化18】
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、上記式の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)6.8~7.4(16H,Ph-H)、6.7(2H,-CH=C)、2.1(6H,C-CH3)、1.6(6H,-C(CH3)2)。得られた化合物について、前記方法により分子量を測定した結果、598であった。
【0108】
(合成実施例2) m-BAPPビスマレイミドの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器を準備した。この容器に、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(製品名:m-BAPP、(株)テクノケム製)4.10g(10.0mmol)、無水マレイン酸(関東化学(株)製)2.15g(22.0mmol)、ジメチルフォルムアミド40mlおよびm-キシレン30mlとを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)を加えて、反応液を調製した。この反応液を130℃で4.0時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をメタノールで洗浄し、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で示される目的化合物(m-BAPPビスマレイミド)3.10gを得た。
【化19】

なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、上記式の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)6.8~7.4(16H,Ph-H)、6.9(4H,-CH=CH)、1.6(6H,-C(CH3)2)。得られた化合物について、前記方法により分子量を測定した結果、598であった。
【0109】
(合成実施例3) m-BAPPシトラコンイミドの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器を準備した。この容器に、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(製品名:m-BAPP、(株)テクノケム製)4.10g(10.0mmol)、無水シトラコン酸(関東化学(株)製)4.15g(40.0mmol)、ジメチルフォルムアミド30mlおよびトルエン60mlを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)、重合禁止剤BHT0.1gを加えて、反応液を調製した。この反応液を120℃で5時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をアセトンで洗浄し、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で示される目的化合物(m-BAPPシトラコンイミド)3.52gを得た。
【化20】
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、上記式の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)6.8~7.4(16H,Ph-H)、6.7(2H,-CH=C)、2.0(6H,C-CH3)、1.6(6H,-C(CH3)2)。得られた化合物について、前記方法により分子量を測定した結果、598であった。
【0110】
(合成実施例4) BMIシトラコンイミド樹脂の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器を準備した。この容器に、特開2001-26571号公報の合成例1を追試することで得られたジアミノジフェニルメタンオリゴマー2.4g、無水シトラコン酸(関東化学(株)製)4.56g(44.0mmol)、ジメチルフォルムアミド40mlおよびトルエン60mlを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)および重合禁止剤BHT0.1gを加えて、反応液を調製した。この反応液を110℃で8.0時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をメタノールで洗浄し、下記式で示されるシトラコンイミド樹脂(BMIシトラコンイミド樹脂)4.7gを得た。
【化21】
なお、前記方法により分子量を測定した結果、446であった。
【0111】
(合成実施例5) BANシトラコンイミド樹脂の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器を準備した。この容器に、ビフェニルアラルキル型ポリアニリン樹脂(製品名:BAN、日本化薬(株)製)6.30g、無水シトラコン酸(関東化学(株)製)4.56g(44.0mmol)、ジメチルフォルムアミド40mlおよびトルエン60mlを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)、重合禁止剤BHT0.1gを加えて、反応液を調製した。この反応液を110℃で6.0時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をメタノールで洗浄し、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で示される目的化合物(BANシトラコンイミド樹脂)5.5gを得た。
【化22】
【0112】
(合成実施例6) 単量体除去BMIマレイミド樹脂の合成
保温可能な蒸留塔を備えた内容積300mlの容器を準備した。この容器に、特開2001-26571号公報の合成例1を追試することで得られたジアミノジフェニルメタンオリゴマー100gを仕込み、初めに常圧蒸留にて水および低沸点不純物を留去した。減圧度を30Paへ徐々に高め、塔頂温度200~230℃で主としてジアミノジフェニルメタン単量体を除去することにより、単量体除去ジアミノメタンオリゴマーを32g取得した。
次に、攪拌機、冷却管を備えた内容積200mlの容器に上記にて得られた単量体除去ジアミノジフェニルメタンオリゴマーを2.4g仕込み、無水マレイン酸(関東化学(株)製)4.56g(44.0mmol)、ジメチルフォルムアミド40mlおよびトルエン60mlを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)および重合禁止剤BHT0.1gを加えて、反応液を調製した。この反応液を100℃で6.0時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をメタノールで洗浄し、下記式で示される単量体除去BMIマレイミド樹脂を5.6g得た。前記方法により該樹脂の分子量を測定した結果、836であった。
【化23】
【0113】
(合成実施例7) 単量体除去BMIシトラコンイミド樹脂の合成
保温可能な蒸留塔を備えた内容積300mlの容器を準備した。この容器に、特開2001-26571号公報の合成例1を追試することで得られたジアミノジフェニルメタンオリゴマー100gを仕込み、初めに常圧蒸留にて水および低沸点不純物を留去した。減圧度を30Paへ徐々に高め、塔頂温度200~230℃で主としてジアミノジフェニルメタン単量体を除去することにより、単量体除去ジアミノメタンオリゴマーを32g取得した。
次に、攪拌機、冷却管を備えた内容積200mlの容器に上記にて得られた単量体除去ジアミノジフェニルメタンオリゴマーを2.4g仕込み、無水シトラコン酸(関東化学(株)製)4.56g(44.0mmol)、ジメチルフォルムアミド40mlおよびトルエン60mlを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)および重合禁止剤BHT0.1gを加えて、反応液を調製した。この反応液を110℃で8.0時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をメタノールで洗浄し、下記式で示される単量体除去BMIシトラコンイミド樹脂を6.3g得た。前記方法により該樹脂の分子量を測定した結果、857であった。
【化24】
【0114】
<実施例1>
マレイミド化合物として、下記式で表されるビスマレイミド(BMI-80;ケイアイ化成製)9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-300;富士フィルム和光純薬製)1質量部を用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化25】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は十分な溶解性を有するものと評価された。
前記リソグラフィー用膜形成材料10質量部に対し、上記混合溶媒を90質量部加え、室温下、スターラーで少なくとも3時間以上攪拌させることにより、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0115】
<実施例2>
マレイミド化合物として、合成実施例2で得られたm-BAPPビスマレイミドを9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-300;富士フィルム和光純薬製)1質量部を用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0116】
<実施例3>
ビスマレイミド樹脂として、下記式で表されるBMIマレイミドオリゴマー(BMI-2300、大和化成工業製)9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-300;富士フィルム和光純薬製)1質量部を用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化26】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0117】
<実施例4>
ビスマレイミド樹脂として、下記式で表されるビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(MIR-3000-L、日本化薬株式会社製)9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-300;富士フィルム和光純薬製)1質量部を用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化27】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0118】
<実施例5>
ビスシトラコンイミド化合物として、合成実施例1で得られたBAPPシトラコンイミドを9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-300;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は良好な溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0119】
<実施例6>
ビスシトラコンイミド化合物として、合成実施例3で得られたm-BAPPシトラコンイミドを9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-300;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は良好な溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0120】
<実施例7>
シトラコンイミド樹脂として、合成実施例4で得られたBMIシトラコンイミド樹脂を9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-300;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0121】
<実施例8>
シトラコンイミド樹脂として、合成実施例5で得られたBANシトラコンイミド樹脂を9質量部、潜在型塩基発生剤(WPBG-300;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0122】
<実施例9>
マレイミド化合物として、前記BMI-80を9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は十分な溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調整した。
【0123】
<実施例10>
マレイミド化合物として、前記m-BAPPビスマレイミドを9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は十分な溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調整した。
【0124】
<実施例11>
ビスマレイミド樹脂として、前記BMIマレイミドオリゴマーを9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0125】
<実施例11A>
マレイミド樹脂として、合成実施例6で得られた単量体除去BMIマレイミド樹脂を9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0126】
<実施例12>
ビスマレイミド樹脂として、前記MIR-3000-Lを9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。をそれぞれ用いて、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0127】
<実施例13>
ビスシトラコンイミド化合物として、合成実施例1で得られたBAPPシトラコンイミドを9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は良好な溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0128】
<実施例14>
ビスシトラコンイミド化合物として、合成実施例3で得られたm-BAPPシトラコンイミドを9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は良好な溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0129】
<実施例15>
シトラコンイミド樹脂として、合成実施例4で得られたBMIシトラコンイミド樹脂を9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0130】
<実施例15A>
シトラコンイミド樹脂として、合成実施例7で得られた単量体除去BMIシトラコンイミド樹脂を9質量部および潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0131】
<実施例16>
シトラコンイミド樹脂として、合成実施例5で得られたBANシトラコンイミド樹脂を9質量部、潜在型塩基発生剤(WPBG-266;富士フィルム和光純薬製)1質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0132】
<実施例17>
マレイミド化合物として、BMI-80を9質量部および潜在型塩基発生剤WPBG-300を1質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるベンゾオキサジン(BF-BXZ;小西化学工業株式会社製)2質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化28】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0133】
<実施例18>
マレイミド化合物として、BMI-80を9質量部および潜在型塩基発生剤WPBG-300を1質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-L;日本化薬株式会社製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化29】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0134】
<実施例19>
マレイミド化合物として、BMI-80を9質量部および潜在型塩基発生剤WPBG-300を1質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるジアリルビスフェノールA型シアネート(DABPA-CN;三菱ガス化学製)2質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化30】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0135】
<実施例20>
マレイミド化合物として、BMI-80を9質量部および潜在型塩基発生剤WPBG-300を1質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるジアリルビスフェノールA(BPA-CA;小西化学製)2質量部を配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化31】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0136】
<実施例21>
マレイミド化合物として、BMI-80を9質量部および潜在型塩基発生剤WPBG-300を1質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるジフェニルメタン型アリルフェノール樹脂(APG-1;群栄化学工業製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化32】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHN混合溶媒への溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0137】
<実施例22>
マレイミド化合物として、BMI-80を9質量部および潜在型塩基発生剤WPBG-300を1質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるジフェニルメタン型プロペニルフェノール樹脂(APG-2;群栄化学工業製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化33】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHNへの溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0138】
<実施例23>
マレイミド化合物として、BMI-80を9質量部および潜在型塩基発生剤WPBG-300を1質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表される4,4´-ジアミノジフェニルメタン(DDM;東京化成製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【化34】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、PGMEA/CHNへの溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価S)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価された。また、実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0139】
<比較例1~6>
硬化促進剤として、潜在型の塩基発生剤WPBG-300に変え、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ;四国化成製)を1質量部配合した以外は実施例1、3~5、7、8と同様にして、リソグラフィー用膜形成材料とした。また、実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0140】
<比較例7~13>
硬化促進剤として、潜在型の塩基発生剤WPBG-300に変え、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ;四国化成製)を1質量部配合した以外は実施例17~23と同様にして、リソグラフィー用膜形成材料とした。また、実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0141】
<実施例24~37>
表2に示す組成となるように、リソグラフィー用膜形成用組成物を各々調製した。
【0142】
<実施例1~23及び比較例1~13のリソグラフィー用膜形成用組成物の評価>
[保存安定性の評価]
リソグラフィー用膜形成用組成物を40℃の恒温槽にて1か月保管した後の溶液の色相変化ΔYIを、色差・濁度計(日本電色工業製)及び光路長1cmの石英ガラスセルを用いて測定した。下記に示す評価基準に従って、保存安定性を評価した。
(評価基準)
S:40℃1か月保管後 ΔYI≦1.0
A:40℃1か月保管後 1.0<ΔYI≦3.0
B:40℃1か月保管後 3.0<ΔYI
【0143】
[硬化性の評価]
リソグラフィー用膜形成用組成物をシリコン基板上に回転塗布し、その後、240℃で60秒間ベークして、塗布膜の膜厚を測定した。その後、該シリコン基板をPGMEA70%/PGME30%の混合溶媒に60秒間浸漬し、エアロダスターで付着溶媒を除去後、110℃で溶媒乾燥を行った。浸漬前後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、下記に示す評価基準に従って、各下層膜の硬化性を評価した。
(評価基準)
S:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦1%(良好)
A:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦5%(やや良好)
B:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦10%
C:溶媒浸漬前後の膜厚減少率>10%
【0144】
[膜耐熱性の評価]
硬化性の評価における240℃での硬化ベーク後の下層膜をさらに450℃で120秒間ベークした。ベーク前後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、下記に示す評価基準に従って、各下層膜の膜耐熱性を評価した。
(評価基準)
SS:450℃ベーク後の膜厚減少率≦5%
S:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦10%(良好)
A:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦15%(やや良好)
B:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦20%
C:450℃ベーク前後の膜厚減少率>20%
【0145】
[平坦性の評価]
幅100nm、ピッチ150nm、深さ150nmのトレンチ(アスペクト比:1.5)及び幅5μm、深さ180nmのトレンチ(オープンスペース)が混在するSiO2段差基板上に、リソグラフィー用膜形成用組成物をそれぞれ塗布した。その後、大気雰囲気下にて、240℃で120秒間焼成して、膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜の形状を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「S-4800」)にて観察し、トレンチ又はスペース上におけるレジスト下層膜の膜厚の最大値と最小値の差(ΔFT)を測定した。下記に示す評価基準に従って、段差基板での平坦性を評価した。
(評価基準)
S:ΔFT<10nm(平坦性最良)
A:10nm≦ΔFT<20nm(平坦性良好)
B:20nm≦ΔFT<40nm(平坦性やや良好)
C:40nm≦ΔFT(平坦性不良)
【0146】
<実施例24~37のリソグラフィー用膜形成用組成物の評価>
[保存安定性の評価]
実施例1~23及び比較例1~13のリソグラフィー用膜形成用組成物の評価と同様に実施した。
【0147】
[硬化性の評価]
リソグラフィー用膜形成用組成物をシリコン基板上に回転塗布し、150℃で60秒間ベークして塗膜の溶媒を除去し、高圧水銀ランプにより、積算露光量1500mJ/cm2、照射時間60秒で硬化さ、塗布膜の膜厚を測定した。その後、該シリコン基板をPGMEA70%/PGME30%の混合溶媒に60秒間浸漬し、エアロダスターで付着溶媒を除去後、110℃で溶媒乾燥を行った。浸漬前後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出し、下記に示す評価基準に従って、各下層膜の硬化性を評価した。
(評価基準)
S:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦1%(良好)
A:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦5%(やや良好)
B:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦10%
C:溶媒浸漬前後の膜厚減少率>10%
【0148】
[膜耐熱性の評価]
硬化性の評価における高圧水銀ランプによる硬化後の下層膜をさらに450℃で120秒間ベークし、ベーク前後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出し、下記に示す評価基準に従って、各下層膜の膜耐熱性を評価した。
(評価基準)
SS:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦5%
S:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦10%(良好)
A:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦15%(やや良好)
B:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦20%
C:450℃ベーク前後の膜厚減少率>20%
【0149】
[平坦性の評価]
実施例1~23及び比較例1~13のリソグラフィー用膜形成用組成物の評価と同様に実施した。
【0150】
【表1-1】

【表1-2】
【0151】
【表2-1】

【表2-2】
【0152】
<実施例38>
実施例1におけるリソグラフィー用膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚70nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。ArF用レジスト溶液としては、下記式(22)の化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。
なお、下記式(22)の化合物は、次のように調製した。すなわち、2-メチル-2-メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ-γ-ブチロラクトン3.00g、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn-ヘキサン中に滴下した。このようにして得られる生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて下記式で表される化合物を得た。
【0153】
【化35】
【0154】
前記式(22)中、40、40、20とあるのは各構成単位の比率を示すものであり、ブロック共重合体を示すものではない。
【0155】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表3に示す。
【0156】
<実施例39>
前記実施例1におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物の代わりに実施例2におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いること以外は、実施例38と同様にして、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表3に示す。
【0157】
<実施例40>
前記実施例1におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物の代わりに実施例3におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いること以外は、実施例38と同様にして、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表3に示す。
【0158】
<比較例14>
下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例38と同様にして、フォトレジスト層をSiO2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表3に示す。
【0159】
[評価]
実施例38~40、及び比較例14のそれぞれについて、得られた55nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの形状を(株)日立製作所製の電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察した。現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なものを良好とし、そうでないものを不良として評価した。また、当該観察の結果、パターン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を解像性として評価の指標とした。さらに、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を感度として、評価の指標とした。
【0160】
【表3】
【0161】
表3から明らかなように、シトラコンイミド又はマレイミドを含む本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いた実施例38~40は、比較例14と比較して、解像性及び感度ともに有意に優れていることが確認された。また、現像後のレジストパターン形状もパターン倒れがなく、矩形性が良好であることが確認された。さらに、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例1~3のリソグラフィー用膜形成用組成物から得られる実施例38~40の下層膜は、レジスト材料との密着性が良いことが示された。
【0162】
(レジスト組成物のレジスト性能の評価方法)
上記膜形成材料を用いて、表4に示す配合でレジスト組成物を調製し、均一なレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、電子線描画装置(ELS-7500、(株)エリオニクス社製)を用いて、80nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。当該照射後に、レジスト膜を、それぞれ所定の温度で、90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ネガ型のレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンについて、ラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S-4800)により観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性を評価した。
【0163】
【表4】
【0164】
表4から明らかなように、レジストパターン評価については、実施例41~44では80nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射により、良好なレジストパターンを得ることができた。一方、潜在型塩基発生剤を含まない比較例15では良好なレジストパターンを得ることはできなかった。
【0165】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性、段差基板における膜の平坦性に優れるだけでなく、溶媒への溶解性、溶液形態での長期保存安定性および低温での硬化性を兼ね備えたフォトレジスト下層膜を形成するために有用である。
そのため、リソグラフィー用膜形成材料を含むリソグラフィー用膜形成用組成物はこれらの性能が要求される各種用途において、広く且つ有効に利用可能である。とりわけ、本発明は、リソグラフィー用下層膜及び多層レジスト用下層膜の分野において、特に有効に利用可能である。