(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】リソグラフィー用膜形成材料、リソグラフィー用膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20240110BHJP
C08G 12/08 20060101ALI20240110BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240110BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03F7/11 503
C08G12/08
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G03F7/26 511
(21)【出願番号】P 2020557610
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2019045546
(87)【国際公開番号】W WO2020105696
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018218125
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳矢
(72)【発明者】
【氏名】牧野嶋 高史
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-085673(JP,A)
【文献】特開2015-176067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/26
G03F 7/20
C08G 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1A)で表されるマレイミド樹脂を含むリソグラフィー用膜形成材料
と、
【化1】
(式(1A)中、
Rはそれぞれ独立して、水素原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群より選ばれるいずれか1種の基であり、
Zはそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~100の3価あるいは4価の炭化水素基であり、
R
1はそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m1はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
nは1以上の整数である。)
溶媒と、
を含有する、リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項2】
前記nが2以上の整数である、請求項1記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記式(1A)のマレイミド樹脂が下記式(2A)又は下記式(3A)で表される、請求項1に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【化2】
(式(2A)中、Rは前記式(1A)と同義であり、
R
2はそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m2はそれぞれ独立して0~3の整数であり、
m2’はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
nは1以上の整数である。)
【化3】
(式(3A)中、Rは前記式(1A)と同義であり、
R
3及びR
4はそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m3はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
m4はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
nは2以上の整数である。)
【請求項4】
前記ヘテロ原子が、酸素、フッ素、及びケイ素からなる群より選ばれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項5】
架橋剤をさらに含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物及びアジド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項7】
前記架橋剤が、少なくとも1つのアリル基を有する、請求項5又は6に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項8】
架橋促進剤をさらに含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項9】
前記架橋促進剤が、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、及びルイス酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項10】
前記架橋促進剤の含有割合が、前記マレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に、0.1~5質量部である、請求項8又は9に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項11】
ラジカル重合開始剤をさらに含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項12】
前記ラジカル重合開始剤が、ケトン系光重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤及びアゾ系重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項13】
前記ラジカル重合開始剤の含有割合が、前記マレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に、0.05~25質量部である、請求項11又は12に記載の
リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項14】
塩基発生剤をさらに含有する、請求項1
~13のいずれか1項に記載のリソグラフィー用
下層膜形成用組成物。
【請求項15】
請求項1
~14のいずれか1項に記載のリソグラフィー用
下層膜形成用組成物を用いて形成される、リソグラフィー用下層膜。
【請求項16】
基板上に、請求項
1~14のいずれか1項に記載のリソグラフィー用
下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、
前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、及び
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項17】
基板上に、請求項
1~14のいずれか1項に記載のリソグラフィー用
下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、
前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程、
前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程、
前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングする工程、
得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングする工程、
得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程、
を含む、回路パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィー用膜形成材料、該材料を含有するリソグラフィー用膜形成用組成物、該組成物を用いて形成されるリソグラフィー用下層膜及び該組成物を用いるパターン形成方法(例えば、レジストパターン方法又は回路パターン方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。そして、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されている。しかしながら、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じてくるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。
【0004】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、従来のエッチング速度の速いレジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、所定のエネルギーが印加されることにより末端基が脱離してスルホン酸残基を生じる置換基を少なくとも有する樹脂成分と溶媒とを含有する多層レジストプロセス用下層膜形成材料が提案されている(特許文献1参照。)。また、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献2参照。)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献3参照。)。
【0005】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性を持つ材料としては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガス等を原料に用いたCVDによって形成されたアモルファスカーボン下層膜がよく知られている。
【0006】
また、本発明者らは、光学特性及びエッチング耐性に優れるとともに、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構成単位を含むナフタレンホルムアルデヒド重合体及び有機溶媒を含有するリソグラフィー用下層膜形成組成物を提案している(特許文献4及び5参照。)。
【0007】
なお、多層プロセスにおけるレジスト下層膜の形成において用いられる中間層の形成方法に関しては、例えば、シリコン窒化膜の形成方法(特許文献6参照。)や、シリコン窒化膜のCVD形成方法(特許文献7参照。)が知られている。また、塗布型の中間層形成に関しては、シルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料が知られている(特許文献8及び9参照。)。最近では、微細化の進展に伴い、エッチング選択性の向上を図るため、より緻密な中間層の形成が求められており、400℃を超える高温での熱処理が必要なシリコン窒化膜のCVD形成方法が採用されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-177668号公報
【文献】特開2004-271838号公報
【文献】特開2005-250434号公報
【文献】国際公開第2009/072465号
【文献】国際公開第2011/034062号
【文献】特開2002-334869号公報
【文献】国際公開第2004/066377号
【文献】特開2007-226170号公報
【文献】特開2007-226204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来数多くのリソグラフィー用膜形成材料が提案されているが、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが適用可能な高い溶媒溶解性を有するのみならず、400℃を超える高温ベーク時における膜耐熱性、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。
【0010】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、湿式プロセスが適用可能であり、400℃を超える高温ベーク時における膜耐熱性、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用な、リソグラフィー用膜形成材料、該材料を含有するリソグラフィー用膜形成用組成物、並びに、該組成物を用いたリソグラフィー用下層膜及びパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する化合物を用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は次のとおりである。
[1]
下記式(1A)で表されるマレイミド樹脂を含むリソグラフィー用膜形成材料。
【0012】
【0013】
(式(1A)中、
Rはそれぞれ独立して、水素原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群より選ばれるいずれか1種の基であり、
Zはそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~100の3価あるいは4価の炭化水素基であり、
R1はそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m1はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
nは1以上の整数である。)
[2]
前記nが2以上の整数である、上記[1]記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[3]
前記式(1A)のマレイミド樹脂が下記式(2A)又は下記式(3A)で表される、上記[1]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
【0014】
【0015】
(式(2A)中、Rは前記式(1A)と同義であり、
R2はそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m2はそれぞれ独立して0~3の整数であり、
m2’はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
nは1以上の整数である。)
【0016】
【0017】
(式(3A)中、Rは前記式(1A)と同義であり、
R3及びR4はそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m3はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
m4はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
nは2以上の整数である。)
[3-1]
前記式(2A)又は前記式(3A)のマレイミド樹脂が下記式(2B)又は下記式(3B)で表される、上記[2]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
【0018】
【0019】
(式(2B)中、R、R2、m2、m2’は前記式(2A)と同義であり、
nは2以上の整数である。)
【0020】
【0021】
(式(3B)中、R、R3、R4、m3及びm4は前記式(3A)と同義であり、
nは3以上の整数である。)
[4]
前記ヘテロ原子が、酸素、フッ素、及びケイ素からなる群より選ばれる、上記[1]~[3]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[5]
架橋剤をさらに含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[6]
前記架橋剤が、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物及びアジド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[5]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[7]
前記架橋剤が、少なくとも1つのアリル基を有する、上記[5]又は[6]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[8]
架橋促進剤をさらに含有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[9]
前記架橋促進剤が、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、及びルイス酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[8]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[10]
前記架橋促進剤の含有割合が、前記マレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に、0.1~5質量部である、上記[8]又は[9]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[11]
ラジカル重合開始剤をさらに含有する、上記[1]~[10]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[12]
前記ラジカル重合開始剤が、ケトン系光重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤及びアゾ系重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[11]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[13]
前記ラジカル重合開始剤の含有割合が、前記マレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に、0.05~25質量部である、上記[11]又は[12]に記載のリソグラフィー用膜形成材料。
[14]
上記[1]~[13]のいずれかに記載のリソグラフィー用膜形成材料と溶媒とを含有する、リソグラフィー用膜形成用組成物。
[15]
塩基発生剤をさらに含有する、上記[14]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物。
[16]
リソグラフィー用膜がリソグラフィー用下層膜である、上記[14]又は[15]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物
[17]
上記[16]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて形成される、リソグラフィー用下層膜。
[18]
基板上に、上記[16]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、
前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、及び
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程、
を含む、レジストパターン形成方法。
[19]
基板上に、上記[16]に記載のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、
前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程、
前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程、
前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングする工程、
得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングする工程、
得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程、
を含む、回路パターン形成方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、湿式プロセスが適用可能であり、高温ベーク時における耐昇華性、膜耐熱性、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用な、リソグラフィー用膜形成材料、該材料を含有するリソグラフィー用膜形成用組成物、並びに、該組成物を用いたリソグラフィー用下層膜及びパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0024】
本実施形態におけるリソグラフィー用膜形成材料は、下記式(1A)で表されるマレイミド樹脂を含む。
【0025】
【0026】
(式(1A)中、
Rはそれぞれ独立して、水素原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群より選ばれるいずれか1種の基であり、
Zはそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~100の3価あるいは4価の炭化水素基であり、
R1はそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数0~10の基であり、
m1はそれぞれ独立して0~4の整数であり、
nは1以上の整数である。)
【0027】
Rはそれぞれ独立して、水素原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群より選ばれるいずれか1種の基である。Rは、原料の入手性および製造のし易さの観点から、水素原子であることが好ましい。
Zはそれぞれ独立して、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~100の3価あるいは4価の炭化水素基である。Zとしては、例えば、フェニル環あるいはビフェニル環等が挙げられる。Zは、耐熱性の観点から、フェニル環であることが好ましい
R1はそれぞれ独立して、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい炭素数0~10の基である。また、R1は、有機溶媒への溶解性向上の観点から、炭化水素基であることが好ましい。例えば、R1としては、アルキル基(例えば、炭素数1~6又は1~3のアルキル基)等が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。
m1はそれぞれ独立して、0~4の整数である。また、m1は、0又は1であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
nは、1以上の整数である。また、nは膜の耐熱性の観点から、1~10の整数であることが好ましく、膜の平坦性の観点から、1~4の整数であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。膜形成の観点からも、1~4の整数であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料中の、マレイミド樹脂の含有量は、高温ベーク時における膜耐熱性の観点から、51~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることがさらに好ましく、80~100質量%であることが特に好ましい。
【0029】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料中のマレイミド樹脂は従来の下層膜形成組成物の耐熱性を向上させるために添加剤として使用することができる。その場合のマレイミド化合物の含有量としては、1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
従来の下層膜形成組成物としては、例えば、国際公開2013/024779号に記載のものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0030】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料中のマレイミド樹脂は、リソグラフィー用膜形成用の酸発生剤あるいは塩基性化合物とは異なる機能を有する。
【0031】
本実施形態のマレイミド樹脂の分子量は500以上であることが好ましい。分子量が500以上であることにより、薄膜形成時における高温ベークによっても昇華物あるいは分解物の生成が抑制される傾向にある。同様の観点から、マレイミド樹脂の分子量は600以上であることがより好ましい。
ここで分子量は、以下の実施例に記載された方法に従って測定することができる。
【0032】
本実施形態のマレイミド樹脂は、原料の入手性および耐熱性の観点から、下記式(2A)又は下記式(3A)で表される構造であることが好ましい。
【0033】
【0034】
前記式(2A)中、Rは前記式(1A)と同義であり、
R2はそれぞれ独立して、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい炭素数0~10の基である。また、R2は、有機溶媒への溶解性向上の観点から、炭化水素基であることが好ましい。例えば、R2としては、アルキル基(例えば、炭素数1~6又は1~3のアルキル基)等が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。
m2はそれぞれ独立して0~3の整数である。また、m2は、0又は1であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
m2’はそれぞれ独立して、0~4の整数である。また、m2’は、0又は1であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
nは、1以上の整数である。また、nは膜の耐熱性の観点から、1~10の整数であることが好ましく、膜の平坦性の観点から、1~4の整数であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。膜形成の観点からも、1~4の整数であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0035】
【0036】
前記式(3A)中、Rは前記式(1A)と同義であり、
R3及びR4はそれぞれ独立して、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい炭素数0~10の基である。また、R3及びR4は、有機溶媒への溶解性向上の観点から、炭化水素基であることが好ましい。例えば、R3及びR4として、アルキル基(例えば、炭素数1~6又は1~3のアルキル基)等が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。
m3はそれぞれ独立して0~4の整数である。また、m3は、0~2の整数であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
m4はそれぞれ独立して、0~4の整数である。また、m4は、0~2の整数であることが好ましく、原料入手性の観点から、0であることがより好ましい。
nは、2以上の整数である。また、nは膜の耐熱性の観点から、2~10の整数であることが好ましく、膜の平坦性の観点から、2~4の整数であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。膜形成の観点からも、2~4の整数であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
【0037】
上述した式(1A)~(3A)におけるヘテロ原子は、原料の入手性の観点から、酸素、フッ素、及びケイ素からなる群より選ばれるいずれか1種であることが好ましい。
【0038】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能である。また、本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、剛直な芳香族マレイミド骨格を有しており、さらに一定の分子量以上の成分を含む樹脂であることにより、薄膜形成時における高温ベークによっても昇華物あるいは分解物の生成が抑制される。その結果、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、エッチング耐性に優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、芳香族構造を有しているにも関わらず、有機溶媒に対する溶解性が高く、安全溶媒に対する溶解性が高い。さらに、後述する本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物からなるリソグラフィー用下層膜は段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性に優れ、製品品質の安定性が良好であるだけでなく、レジスト層やレジスト中間層膜材料との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。
【0039】
本実施形態におけるマレイミド樹脂としては、特に限定されないが、付加重合型マレイミド樹脂が好適に用いられる。付加重合型マレイミド樹脂としては、例えば、ビスマレイミドM-20(三井東圧化学社製、商品名)、BMI-2300(大和化成工業株式会社製、商品名)、BMI-3200(大和化成工業株式会社製、商品名)、MIR-3000(日本化薬株式会社製、製品名)等や、これらの高分子量体が挙げられる。
また、本実施形態におけるマレイミド樹脂としては、耐熱性と溶解性の両立の観点から、シトラコンイミド樹脂を用いることが好ましく、BMIシトラコン樹脂及びその高分子量体、BANシトラコンイミド樹脂及びその高分子量体等を用いることができる。
ここで、高分子量体とは、樹脂組成から単量体成分を選択的に除去したものを意味する。
【0040】
<架橋剤>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、マレイミド樹脂に加え、硬化温度の低下やインターミキシングを抑制する等の観点から、必要に応じて架橋剤を含有していてもよい。
【0041】
架橋剤としてはマレイミド樹脂と架橋反応すれば特に限定されず、公知のいずれの架橋剤も適用できる。架橋剤の具体例としては、例えば、フェノール化合物、アリル化合物、プロペニル化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、アクリレート化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの架橋剤は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物又はシアネート化合物が好ましく、膜耐性向上の観点から、ベンゾオキサジン化合物がより好ましい。
【0042】
マレイミド樹脂と架橋剤との架橋反応では、例えば、これらの架橋剤が有する活性基(フェノール性水酸基、アリル基、プロペニル基、エポキシ基、シアネート基、アミノ基、又はベンゾオキサジンの脂環部位が開環してなるフェノール性水酸基)が、マレイミド基を構成する炭素-炭素二重結合と付加反応して架橋する他、本実施形態のマレイミド樹脂が有する2つの炭素-炭素二重結合が重合して架橋する。
【0043】
前記フェノール化合物としては、公知のものが使用できる。例えば、フェノール類としては、フェノールの他、クレゾール類、キシレノール類等のアルキルフェノール類、ヒドロキノン等の多価フェノール類、ナフトール類、ナフタレンジオール類等の多環フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、あるいはフェノールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等の多官能性フェノール化合物等が挙げられる。上記の中でも、耐熱性及び溶解性の観点から、アラルキル型フェノール樹脂が好ましい。
【0044】
前記プロペニル化合物としては、公知のものが使用でき、例えば、具体例としては、1-プロペニルベンゼン、1-メトキシ-4-(1-プロペニル)ベンゼン、1,2-ジフェニルエテン(スチルベン)、4-プロペニル-フェノール、ジフェニルメタン型プロペニルフェノール樹脂等が挙げられる。上記の中でも、耐熱性向上の観点から、ジフェニルメタン型プロペニルフェノール樹脂が好ましい。
【0045】
前記エポキシ化合物としては、公知のものが使用でき、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものの中から選択される。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3’,5,5’-テトラメチル-ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、2,2’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェノール、レゾルシン、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類のエポキシ化物、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類のエポキシ化物、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、フェノール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるフェノールアラルキル樹脂類のエポキシ化物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から合成されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル樹脂類のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、耐熱性と溶解性の観点から、フェノールアラルキル樹脂類、ビフェニルアラルキル樹脂類から得られるエポキシ樹脂等の常温で固体状エポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
前記シアネート化合物としては、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物であれば特に制限なく、公知のものを使用することができる。例えば、国際公開第2011/108524号に記載されているものが挙げられる。好ましいシアネート化合物としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の水酸基をシアネート基に置換した構造のものが挙げられる。また、シアネート化合物は、芳香族基を有するものが好ましく、シアネート基が芳香族基に直結した構造のものを好適に使用することができる。このようなシアネート化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールE、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック樹脂、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールAノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂、3官能フェノール、4官能フェノール、ナフタレン型フェノール、ビフェニル型フェノール、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンアラルキル樹脂、脂環式フェノール、リン含有フェノール等の水酸基をシアネート基に置換した構造のものが挙げられる。これらのシアネート化合物は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、上記したシアネート化合物は、モノマー、オリゴマー及び樹脂のいずれの形態であってもよい。
【0047】
前記アミノ化合物としては、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン、O-トリジン、m-トリジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール等が挙げられる。これらの中でも、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等の芳香族アミン類、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類等が挙げられる。
【0048】
前記ベンゾオキサジン化合物のオキサジンの構造は特に限定されず、ベンゾオキサジンやナフトオキサジン等の、縮合多環芳香族基を含む芳香族基を有するオキサジンの構造が挙げられる。
【0049】
ベンゾオキサジン化合物としては、例えば下記一般式(a)~(f)に示す化合物が挙げられる。なお下記一般式において、環の中心に向けて表示されている結合は、環を構成しかつ置換基の結合が可能ないずれかの炭素に結合していることを示す。
【0050】
【0051】
一般式(a)~(c)中、R1及びR2は各々独立して炭素数1~30の有機基を表す。また一般式(a)~(f)中、R3乃至R6は各々独立して水素又は炭素数1~6の炭化水素基を表す。また前記一般式(c)、(d)及び(f)中、Xは独立して、単結合、-O-、-S-、-S-S-、-SO2-、-CO-、-CONH-、-NHCO-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-(CH2)m-、-O-(CH2)m-O-、-S-(CH2)m-S-を表す。ここでmは1~6の整数である。また一般式(e)及び(f)中、Yは独立して、単結合、-O-、-S-、-CO-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-又は炭素数1~3のアルキレンを表す。
【0052】
また、ベンゾオキサジン化合物には、オキサジン構造を側鎖に有するオリゴマーやポリマー、ベンゾオキサジン構造を主鎖中に有するオリゴマーやポリマーが含まれる。
【0053】
ベンゾオキサジン化合物は、国際公開2004/009708号パンフレット、特開平11-12258号公報、特開2004-352670号公報に記載の方法と同様の方法で製造することができる。
【0054】
前記アクリレート化合物としては、公知のものが使用でき、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記の中でも、硬化物の耐熱性の観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0055】
前記メラミン化合物の具体例としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0056】
前記グアナミン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0057】
前記グリコールウリル化合物の具体例としては、例えば、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0058】
前記ウレア化合物の具体例としては、例えば、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレア等が挙げられる。
【0059】
前記イソシアネート化合物としては、公知のものが使用でき、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。上記の中でも、耐熱性の観点から、トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0060】
前記アジド化合物としては、公知のものが使用でき、例えば、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビスアジド、4,4’-メチリデンビスアジド、4,4’-オキシビスアジド等等が挙げられる。上記の中でも、入手性の観点から、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビスアジドが好ましい。
【0061】
また、本実施形態において、架橋性向上の観点から、少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤を用いてもよい。少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤の具体例としては、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類、2,2-ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-シアナトシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)エ-テル等のアリルシアネート類、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールアリルエーテル等が挙げられるが、これら例示されたものに限定されるものではない。これらは単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。これらの中でも、マレイミド樹脂との相溶性に優れるという観点から、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類が好ましい。
【0062】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料はマレイミド樹脂を単独で、あるいは前記架橋剤を配合させた後、公知の方法で架橋、硬化させて、本実施形態のリソグラフィー用膜を形成することができる。架橋方法としては、熱硬化、光硬化等の手法が挙げられる。
【0063】
前記架橋剤の含有割合は、通常、前記マレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に、0.1~10000質量部の範囲であり、好ましくは、耐熱性及び溶解性の観点から0.1~1000質量部の範囲であり、より好ましくは0.1~100質量部の範囲であり、さらに好ましくは1~50質量部の範囲であり、特に好ましくは1~30質量部の範囲である。
【0064】
<架橋促進剤>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料には、必要に応じて架橋反応、硬化反応を促進させるための架橋促進剤を用いることができる。
【0065】
前記架橋促進剤としては、架橋、硬化反応を促進させるものであれば、特に限定されないが、例えば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等が挙げられる。これらの架橋促進剤は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもイミダゾール類又は有機ホスフィン類が好ましく、架橋温度の低温化の観点から、イミダゾール類がより好ましい。
【0066】
前記架橋促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0067】
架橋促進剤の含有量としては、通常、本実施形態におけるマレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1~10質量部の範囲であり、より好ましくは、制御のし易さ及び経済性の観点からの0.1~5質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.1~3質量部の範囲である。
【0068】
<ラジカル重合開始剤>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料には、必要に応じてラジカル重合開始剤を配合することができる。ラジカル重合開始剤としては、光によりラジカル重合を開始させる光重合開始剤であってもよいし、熱によりラジカル重合を開始させる熱重合開始剤であってもよい。
【0069】
このようなラジカル重合開始剤としては、特に制限されず、従来用いられているものを適宜採用することができる。例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のケトン系光重合開始剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノオエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメトルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等の有機過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0070】
また、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2´-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系重合開始剤も挙げられる。本実施形態におけるラジカル重合開始剤としては、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、他の公知の重合開始剤をさらに組み合わせて用いてもよい。
【0071】
前記ラジカル重合開始剤の含有量としては、前記マレイミド樹脂の合計質量に対して化学量論的に必要な量であればよいが、前記マレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に0.05~25質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量が0.05質量部以上である場合には、マレイミド樹脂の硬化が不十分となることを防ぐことができる傾向にあり、他方、ラジカル重合開始剤の含有量が25質量部以下である場合には、リソグラフィー用膜形成材料の室温での長期保存安定性が損なわれることを防ぐことができる傾向にある。
【0072】
[リソグラフィー用膜形成用組成物]
本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物は、前記リソグラフィー用膜形成材料と溶媒とを含有する。リソグラフィー用膜は、例えば、リソグラフィー用下層膜である。
【0073】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物は、基材に塗布し、その後、必要に応じて加熱して溶媒を蒸発させた後、加熱又は光照射して所望の硬化膜を形成することができる。本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物の塗布方法は任意であり、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法を適宜採用できる。
【0074】
前記膜の加熱温度は、溶媒を蒸発させる目的では特に限定されず、例えば、40~600℃で行うことができる。加熱方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で蒸発させればよい。加熱温度及び加熱時間は、目的とする電子デバイスのプロセス工程に適合した条件を選択すればよく、得られる膜の物性値が電子デバイスの要求特性に適合するような加熱条件を選択すればよい。光照射する場合の条件も特に限定されるものではなく、用いるリソグラフィー用膜形成材料に応じて、適宜な照射エネルギー及び照射時間を採用すればよい。
【0075】
<溶媒>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物に用いる溶媒としては、前記マレイミド樹脂が少なくとも溶解するものであれば、特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。
【0076】
溶媒の具体例としては、例えば、国際公開2013/024779号に記載のものが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
前記溶媒の中でも、安全性の観点から、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンが特に好ましい。
【0078】
前記溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、リソグラフィー用膜形成用材料中のマレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に、25~9,900質量部であることが好ましく、400~7,900質量部であることがより好ましく、900~4,900質量部であることがさらに好ましい。
【0079】
<塩基発生剤>
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料には、必要に応じて塩基発生剤を配合することができる。本実施形態にて使用できる化合物の構造特性上、潜在型の塩基発生剤が好ましく、熱分解によって塩基を発生するもの、光照射によって塩基を発生するもの等が知られているが、いずれのものも使用することができる。
【0080】
塩基発生剤の具体例としては、以下のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(ヘキサアンミンルテニウム(III)トリフェニルアルキルボレートの例)
ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルエチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルプロピルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルヘキシルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルオクチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルオクタデシルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルイソプロピルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルイソブチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニル-sec-ブチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニル-tert-ブチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルネオペンチルボレート)等。
【0081】
(ヘキサアンミンルテニウム(III)トリフェニルボレートの例)
ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルシクロペンチルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス(トリフェニルシクロヘキシルボレート)、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(4-デシルシクロヘキシル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(フルオロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(クロロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(ブロモメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(トリフルオロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(トリクロロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(ヒドロキシメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(カルボキシメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(シアノメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(ニトロメチル)ボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリフェニル(アジドメチル)ボレート]等。
【0082】
(ヘキサアンミンルテニウム(III)トリアリールブチルボレートの例)
ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(1-ナフチル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(2-ナフチル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(o-トリル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(m-トリル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(p-トリル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(2,3-キシリル)ブチルボレート]、ヘキサアンミンルテニウム(III)トリス[トリス(2,5-キシリル)ブチルボレート]等。
【0083】
(ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)の例)
トリス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、cis-ジアンミンビス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、trans-ジアンミンビス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、トリス(トリメチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、トリス(プロピレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、テトラアンミン{(-)(プロピレンジアミン)}ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、トリス(trans-1,2-シクロヘキサンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、ビス(ジエチレントリアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、ビス(ピリジン)ビス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)、ビス(イミダゾール)ビス(エチレンジアミン)ルテニウム(III)トリス(トリフェニルブチルボレート)等。
【0084】
以上述べた塩基発生剤は、各々の錯イオンのハロゲン塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等と、アルカリ金属ボレート塩とを、水、アルコールもしくは含水有機溶剤等の適当な溶媒中で、混和することで容易に製造可能である。これら原料となる各々の錯イオンのハロゲン塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等は、市販品として容易に入手可能である他、例えば、日本化学会編、新実験化学講座8(無機化合物の合成III)、丸善(1977年)等に、その合成法が記載されている。
【0085】
前記塩基発生剤の含有量としては、前記マレイミド樹脂の合計質量に対して化学量論的に必要な量であればよいが、前記マレイミド樹脂の合計質量を100質量部とした場合に0.01~25質量部であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましい。塩基発生剤の含有量が0.01質量部以上である場合には、リソグラフィー用膜形成材料の硬化が不十分となることを防ぐことができる傾向にあり、他方、塩基発生剤開始剤の含有量が25質量部以下である場合には、リソグラフィー用膜形成材料の室温での長期保存安定性が損なわれることを防ぐことができる傾向にある。
【0086】
さらに、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、消泡剤、着色剤、顔料、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0087】
[リソグラフィー用下層膜及びパターンの形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて形成される。
【0088】
また、本実施形態のレジストパターン形成方法は、基板上に、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程(A-1)と、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(A-2)と、前記工程(A-2)の後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程(A-3)と、を有する。
【0089】
さらに、本実施形態の回路パターン形成方法は、基板上に、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程(B-1)と、前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程(B-2)と、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(B-3)と、前記工程(B-3)の後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(B-4)と、前記工程(B-4)の後、前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程(B-5)と、を有する。
【0090】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物から形成されるものであれば、その形成方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布法或いは印刷法等で基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させる等して除去することで、下層膜を形成することができる。
【0091】
下層膜の形成時には、上層レジストとのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークを施すことが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80~600℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200~600℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10~300秒間の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、通常、30~20,000nmであることが好ましく、より好ましくは50~15,000nmであり、さらに好ましくは50~1000nmである。
【0092】
基板上に下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその上に珪素含有レジスト層、或いは通常の炭化水素からなる単層レジスト、3層プロセスの場合はその上に珪素含有中間層、さらにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましく、4層プロセスの場合は下層膜の上に珪素含有中間層、その上に反射防止膜、さらにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製する。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0093】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0094】
3層プロセス用の珪素含有中間層としてはポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果がある中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としてはフェニル基又は珪素-珪素結合を有する吸光基を導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0095】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で形成した中間層としては、例えば、SiON膜が知られている。
一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによる中間層の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0096】
さらに、本実施形態の下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。本実施形態の下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0097】
前記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、前記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法等で塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80~180℃で10~300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30~500nmが好ましく、より好ましくは50~400nmである。
【0098】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0099】
上述の方法により形成されるレジストパターンは、本実施形態の下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態の下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させ得る。
【0100】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Ar等の不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO2、NH3、N2、NO2、H2ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護の観点から好ましく用いられる。
【0101】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上述の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0102】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公報、国際公開2004/066377号に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0103】
中間層として、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜としての機能を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号、特開2007-226204号に記載されたものを用いることができる。
【0104】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0105】
本実施形態の下層膜は、これら基板のエッチング耐性に優れるという特徴がある。なお、基板は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50~1,000,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75~500,000nmである。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0107】
[分子量]
合成した樹脂の分子量は、Water社製Acquity UPLC/MALDI-Synapt HDMSを用いて、GPC-MS分析により測定した。
【0108】
[耐熱性の評価]
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製EXSTAR6000TG-DTA装置を使用し、試料約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(100ml/min)気流中昇温速度10℃/minで500℃まで昇温することにより熱重量減少量を測定した。実用的観点からは、下記A又はB評価が好ましい。A又はB評価であれば、高い耐熱性を有し、高温ベークへの適用が可能である。
<評価基準>
A:400℃での熱重量減少量が、10%未満
B:400℃での熱重量減少量が、10%~25%
C:400℃での熱重量減少量が、25%超
【0109】
[溶解性の評価]
50mlのスクリュー瓶に溶媒として、シクロヘキサノン(CHN)と樹脂を仕込み、23℃にてマグネチックスターラーで1時間撹拌後に、化合物及び/又は樹脂の溶媒に対する溶解量を測定し、その結果を以下の基準で評価した。実用的観点からは、下記A又はB評価が好ましい。A又はB評価であれば、溶液状態で高い保存安定性を有し、半導体微細加工プロセスでも十分に適用が可能である。
<評価基準>
A:10質量%以上
B:5質量%以上10質量%未満
C:5質量%未満
【0110】
(合成例1) BMIシトラコンイミド樹脂の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器を準備した。この容器に、特開2001-26571号公報の合成例1を追試することで得られたジアミノジフェニルメタンオリゴマー2.4g、無水シトラコン酸(関東化学(株)製)4.56g(44.0mmol)、ジメチルフォルムアミド40mlおよびトルエン60mlを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)および重合禁止剤BHT0.1gを加えて、反応液を調製した。この反応液を110℃で8.0時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をメタノールで洗浄し、下記式で示されるシトラコンイミド樹脂(BMIシトラコンイミド樹脂)4.7gを得た。前記方法により得られた樹脂の分子量を測定した結果、重量平均分子量446であった。
【0111】
【0112】
(合成例2) BANシトラコンイミド樹脂の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器を準備した。この容器に、ビフェニルアラルキル型ポリアニリン樹脂(製品名:BAN、日本化薬(株)製)6.30g、無水シトラコン酸(関東化学(株)製)4.56g(44.0mmol)、ジメチルフォルムアミド40mlおよびトルエン60mlを仕込み、p-トルエンスルホン酸0.4g(2.3mmol)、重合禁止剤BHT0.1gを加えて、反応液を調製した。この反応液を110℃で6.0時間撹拌して反応を行い、共沸脱水にて生成水をディーンスタークトラップにて回収した。次に、反応液を40℃に冷却した後、蒸留水300mlを入れたビーカーに滴下し、生成物を析出させた。得られたスラリー溶液をろ過後、残渣をメタノールで洗浄し、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で示される目的化合物(BANシトラコンイミド樹脂)5.5gを得た。前記方法により、得られた樹脂の分子量を測定した結果、重量平均分子量832であった。
【0113】
【0114】
<実施例1>BMI-2300単量体除去
フェニルメタンマレイミド樹脂(製品名:BMI-2300、大和化成工業製)20g及びメチルエチルケトン60gを、300mLフラスコに仕込み、60℃に加温溶解させることにより溶液を得た。上記溶液を中性のシリカゲル(関東化学(株)製)に吸着させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、酢酸エチル20重量%/ヘキサン80重量%の混合溶媒を展開させることにより、下記式で表される繰り返し単位の成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することでリソグラフィー用膜形成材料とした。
【0115】
【0116】
分取したマレイミド樹脂の平均分子量を測定した結果、680であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、表1に示す組成にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0117】
<実施例1A>BMI-2300高分子量体
実施例1と同様にして、フェニルメタンマレイミド樹脂から下記式で表される繰り返し単位の成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することでリソグラフィー用膜形成材料とした。
【0118】
分取したマレイミド樹脂の平均分子量を測定した結果、760であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様にリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0119】
【0120】
<実施例2>MIR-3000-L単量体除去
ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(製品名:MIR-3000-L、日本化薬株式会社製)20g及びメチルエチルケトン60gを、300mLフラスコに仕込み、60℃に加温溶解させることにより溶液を得た。上記溶液を中性のシリカゲル(関東化学(株)製)に吸着させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、酢酸エチル20重量%/ヘキサン80重量%の混合溶媒を展開させることにより、下記式で表される繰り返し単位の成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することでリソグラフィー用膜形成材料とした。
【0121】
【0122】
分取したマレイミド樹脂の平均分子量を測定した結果、1142であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様にリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0123】
<実施例2A>MIR-3000-L高分子量体
実施例1と同様にして、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂から下記式で表される繰り返し単位の成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することでリソグラフィー用膜形成材料とした。
【0124】
【0125】
分取したマレイミド樹脂の平均分子量を測定した結果、1322であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様にリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0126】
<実施例3>
実施例1で得られたフェニルメタンマレイミド樹脂(BMI-2300単量体除去)を10質量部、また、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0127】
<実施例3A>
実施例1Aで得られたフェニルメタンマレイミド樹脂(BMI-2300高分子量体)を10質量部、また、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0128】
<実施例4>
実施例2で得られたビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(MIR-3000-L単量体除去)10質量部、また、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0129】
<実施例4A>
実施例2Aで得られたビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(MIR-3000-L高分子量体)10質量部、また、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0130】
<実施例5>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるベンゾオキサジン(製品名:BF-BXZ、小西化学工業株式会社製)2質量部を使用し、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0131】
【0132】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0133】
<実施例5A>
マレイミド樹脂として、実施例1Aで得られたBMI-2300高分子量体を10質量部使用した。また、架橋剤として、前記ベンゾオキサジン(製品名:BF-BXZ、小西化学工業株式会社製)2質量部を使用し、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0134】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0135】
<実施例6>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(製品名:NC-3000-L、日本化薬株式会社製)2質量部を使用し、架橋促進剤としてTPIZを0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0136】
【0137】
(上記式中、nは1~4の整数である。)
【0138】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0139】
<実施例6A>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300高分子量体を10質量部使用した。また、架橋剤として、前記ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(製品名:NC-3000-L、日本化薬株式会社製)2質量部を使用し、架橋促進剤としてTPIZを0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0140】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0141】
<実施例7>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるジアリルビスフェノールA型シアネート(製品名:DABPA-CN、三菱ガス化学製)2質量部を使用し、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0142】
【0143】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0144】
<実施例7A>
マレイミド樹脂として、実施例1Aで得られたBMI-2300高分子量体を10質量部使用した。また、架橋剤として、前記ジアリルビスフェノールA型シアネート(製品名:DABPA-CN、三菱ガス化学製)2質量部を使用し、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0145】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0146】
<実施例8>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるジアリルビスフェノールA(製品名:BPA-CA、小西化学製)2質量部を使用し、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0147】
【0148】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0149】
<実施例8A>
マレイミド樹脂として、実施例1Aで得られたBMI-2300高分子量体を10質量部使用した。また、架橋剤として、前記ジアリルビスフェノールA(製品名:BPA-CA、小西化学製)2質量部を使用し、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0150】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0151】
<実施例9>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるジフェニルメタン型アリルフェノール樹脂(製品名:APG-1、群栄化学工業製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0152】
【0153】
(上記式中、nは1~3の整数である。)
【0154】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0155】
<実施例9A>
マレイミド樹脂として、実施例1Aで得られたBMI-2300高分子量体を10質量部使用した。また、架橋剤として、前記ジフェニルメタン型アリルフェノール樹脂(製品名:APG-1、群栄化学工業製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0156】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0157】
<実施例10>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部使用した。また、架橋剤として、下記式で表されるジフェニルメタン型プロペニルフェノール樹脂(製品名:APG-2、群栄化学工業製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0158】
【0159】
(上記式中、nは1~3の整数である。)
【0160】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0161】
<実施例10A>
マレイミド樹脂として、実施例1Aで得られたBMI-2300高分子量体を10質量部使用した。また、架橋剤として、前記ジフェニルメタン型プロペニルフェノール樹脂(製品名:APG-2、群栄化学工業製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0162】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0163】
<実施例11>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部、また、架橋剤として、下記式で表される4,4’-ジアミノジフェニルメタン(製品名DDM、東京化成製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0164】
【0165】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0166】
<実施例11A>
マレイミド樹脂として、実施例1Aで得られたBMI-2300高分子量体を10質量部、また、架橋剤として、前記4,4’-ジアミノジフェニルメタン(製品名DDM、東京化成製)2質量部を使用し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
【0167】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0168】
<実施例12>BMIシトラコンイミド単量体除去
マレイミド樹脂として、合成例1で得られたBMIシトラコンイミド樹脂20g及びメチルエチルケトン60gを、300mLフラスコに仕込み、60℃に加温溶解させることにより溶液を得た。上記溶液を中性のシリカゲル(関東化学(株)製)に吸着させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、酢酸エチル20重量%/ヘキサン80重量%の混合溶媒を展開させることにより、下記式で表される繰り返し単位の成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することでリソグラフィー用膜形成材料とした。
【0169】
【0170】
分取したシトラコンイミド樹脂の平均分子量を測定した結果、836であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、表1に示す組成にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0171】
<実施例12A>BMIシトラコンイミド高分子量体
実施例12と同様にして、合成例1で得られたBMIシトラコンイミド樹脂から下記式で表される繰り返し単位の成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することでリソグラフィー用膜形成材料とした。
【0172】
【0173】
分取したシトラコンイミド樹脂の平均分子量を測定した結果、936であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、表1に示す組成にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0174】
<実施例13>BANシトラコンイミド単量体除去
マレイミド樹脂として、合成例2で得られたBANシトラコンイミド樹脂20g及びメチルエチルケトン60gを、300mLフラスコに仕込み、60℃に加温溶解させることにより溶液を得た。上記溶液を中性のシリカゲル(関東化学(株)製)に吸着させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、酢酸エチル20重量%/ヘキサン80重量%の混合溶媒を展開させることにより、下記式で表される繰り返し単位の成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することでリソグラフィー用膜形成材料とした。
【0175】
【0176】
分取したシトラコンイミド単量体除去の平均分子量を測定した結果、1168であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、表1に示す組成にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0177】
<実施例13A>BANシトラコンイミド高分子量体
実施例13と同様にして、合成例2で得られたBANシトラコンイミド樹脂樹脂から下記式で表される繰り返し単位の成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することでリソグラフィー用膜形成材料とした。
【0178】
【0179】
分取したシトラコンイミド高分子量体の平均分子量を測定した結果、1278であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、表1に示す組成にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0180】
<実施例14>
実施例12で得られたBMIシトラコンイミド単量体除去を10質量部、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0181】
<実施例14A>
実施例12Aで得られたBMIシトラコンイミド高分子量体を10質量部、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した
【0182】
<実施例15>
実施例13で得られたBANシトラコンイミド単量体除去10質量部、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0183】
<実施例15A>
実施例13Aで得られたBANシトラコンイミド高分子量体10質量部、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.5質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0184】
<比較例1>
マレイミド化合物として、下記式で表されるN,N’-ビフェニル系ビスマレイミドBMI(製品名:BMIモノマー、大和化成工業製)を10質量部、架橋促進剤として2,4,5-トリフェニルイミダゾール(TPIZ)を0.1質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0185】
【0186】
<比較例2>
マレイミド化合物として、下記式で表されるビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(製品名:MIR-3000-L、日本化薬株式会社製)20g及びメチルエチルケトン60gを、300mLフラスコに仕込み、60℃に加温溶解させることにより溶液を得た。上記溶液を中性のシリカゲル(関東化学(株)製)に吸着させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒を展開させることにより、下記式で表される成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することで目的物を得た。
【0187】
【0188】
分取したマレイミド化合物の分子量を測定した結果、556であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様にリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0189】
<比較例3>
マレイミド化合物として、合成例1で得られたBMIシトラコンイミド樹脂を20g及びメチルエチルケトン60gを、300mLフラスコに仕込み、60℃に加温溶解させることにより溶液を得た。上記溶液を中性のシリカゲル(関東化学(株)製)に吸着させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒を展開させることにより、下記式で表される成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することで目的物を得た。
【0190】
【0191】
分取したマレイミド化合物の分子量を測定した結果、386であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は20%以上(評価C)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様にリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0192】
<比較例4>
マレイミド化合物として合成例2で得られたBANシトラコンイミド樹脂20g及びメチルエチルケトン60gを、300mLフラスコに仕込み、60℃に加温溶解させることにより溶液を得た。上記溶液を中性のシリカゲル(関東化学(株)製)に吸着させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒を展開させることにより、下記式で表される成分のみを分取し、濃縮後に真空乾燥を行い、溶媒を除去することで目的物を得た。
【0193】
【0194】
分取したマレイミド化合物の分子量を測定した結果、584であった。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は20%以上(評価C)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様にリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0195】
<実施例16>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部使用した。また、光ラジカル重合開始剤として、下記式で表されるイルガキュア(IRGACURE)184(BASF社製)を0.2質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0196】
【0197】
<実施例16A>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300高分子量体を10質量部使用した。また、光ラジカル重合開始剤として、イルガキュア(IRGACURE)184(BASF社製)を0.2質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0198】
<実施例17>
マレイミド樹脂として、実施例2で得られたMIR-3000-L単量体除去を10質量部使用した。また、光ラジカル重合開始剤として、イルガキュア(IRGACURE)184(BASF社製)を0.1質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0199】
<実施例17A>
マレイミド樹脂として、実施例2Aで得られたMIR-3000-L高分子量体を10質量部使用した。また、光ラジカル重合開始剤として、イルガキュア(IRGACURE)184(BASF社製)を0.1質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0200】
<実施例18>
マレイミド樹脂として、実施例12で得られたBMIシトラコンイミド単量体除去を10質量部使用したこと以外は実施例16と同様の組成とし、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0201】
<実施例18A>
マレイミド樹脂として、実施例12Aで得られたBMIシトラコンイミド高分子量体を10質量部使用したこと以外は実施例16と同様の組成とし、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0202】
<実施例19>
マレイミド樹脂として、実施例13で得られたBANシトラコンイミド単量体除去を10質量部使用したこと以外は実施例16と同様の組成とし、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0203】
<実施例19A>
マレイミド樹脂として、実施例13Aで得られたBANシトラコンイミド高分子量体を10質量部使用したこと以外は実施例16と同様の組成とし、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0204】
<実施例20>
マレイミド樹脂として、実施例1で得られたBMI-2300単量体除去を10質量部使用した。また、光塩基発生剤として、下記式で表されるWPBG-300(富士フィルム和光純薬製)を0.2質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0205】
【0206】
<実施例20A>
マレイミド樹脂として、実施例1Aで得られたBMI-2300高分子量体を10質量部使用した。また、光塩基発生剤として、WPBG-300を0.2質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0207】
<実施例21>
マレイミド樹脂として、実施例2で得られたMIR-3000-L単量体除去を10質量部使用した。また、光塩基発生剤として、WPBG-300を0.2質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0208】
<実施例21A>
マレイミド樹脂として、実施例2Aで得られたMIR-3000-L高分子量体を10質量部使用した。また、光塩基発生剤として、WPBG-300を0.2質量部配合し、リソグラフィー用膜形成材料とした。
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0209】
<実施例22>
マレイミド樹脂として、実施例12で得られたBMIシトラコンイミド単量体除去を10質量部使用すること以外は実施例20と同様の組成とし、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0210】
<実施例22A>
マレイミド樹脂として、実施例12Aで得られたBMIシトラコンイミド高分子量体を10質量部使用すること以外は実施例20と同様の組成とし、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0211】
<実施例23>
マレイミド樹脂として、実施例13で得られたBANシトラコンイミド単量体除去を10質量部使用すること以外は実施例20と同様の組成とし、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0212】
<実施例23A>
マレイミド樹脂として、実施例13Aで得られたBANシトラコンイミド高分子量体を10質量部使用すること以外は実施例20と同様の組成とし、リソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー用膜形成材料の400℃での熱重量減少量は10%未満(評価A)であった。また、CHNへの溶解性を評価した結果、10質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー用膜形成材料は優れた溶解性を有するものと評価されたため、前記実施例1と同様の操作にてリソグラフィー用膜形成用組成物を調製した。
【0213】
[評価]
実施例1~15、1A~15A、比較例1~4のリソグラフィー用膜形成用組成物をシリコン基板上に回転塗布し、150℃で60秒間プリベーク後の膜厚を測定し、初期膜厚とした。その後、240℃で60秒間硬化ベークして、塗布膜の膜厚を測定した。初期膜厚と硬化ベーク後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、下記に示す条件にて各下層膜の耐昇華性を評価した。
その後、該シリコン基板をPGMEA70%/PGME30%の混合溶媒に60秒間浸漬し、エアロダスターで付着溶媒を除去後、110℃で溶媒乾燥を行った。浸漬前後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、下記に示す条件にて各下層膜の硬化性を評価した。
240℃で硬化ベーク後の下層膜をさらに窒素置換された環境下において、450℃で240秒間ポストベークし、ベーク前後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、各下層膜の膜耐熱性を評価した。また、下記に示す条件にて、段差基板への埋め込み性、及び平坦性を評価した。
【0214】
実施例16~23、16A~23Aのリソグラフィー用膜形成用組成物をシリコン基板上に回転塗布し、その後、150℃で60秒間ベークして塗膜の溶媒を除去した後、高圧水銀ランプにより、積算露光量1500mJ/cm2、照射時間60秒で硬化させた後、塗布膜の膜厚を測定した。その後、該シリコン基板をPGMEA70%/PGME30%の混合溶媒に60秒間浸漬し、エアロダスターで付着溶媒を除去後、110℃で溶媒乾燥を行った。浸漬前後の膜厚差から膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、下記に示す条件にて各下層膜の硬化性を評価した。
さらに450℃で240秒間ベークし、ベーク前後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、各下層膜の膜耐熱性を評価した。また、下記に示す条件にて、段差基板への埋め込み性、及び平坦性を評価した。
【0215】
[硬化性の評価]
<評価基準>
S:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦1%
A:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦5%
B:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦10%
C:溶媒浸漬前後の膜厚減少率>10%
【0216】
[膜耐熱性の評価]
<評価基準>
S:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦10%
A:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦15%
B:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦20%
C:450℃ベーク前後の膜厚減少率>20%
【0217】
[段差基板埋め込み性の評価]
段差基板への埋め込み性の評価は、以下の手順で行った。
リソグラフィー用下層膜形成用組成物を膜厚80nmの60nmラインアンドスペースのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間ベークすることにより90nm下層膜を形成した。得られた膜の断面を切り出し、電子線顕微鏡にて観察し、段差基板への埋め込み性を評価した。
<評価基準>
○:60nmラインアンドスペースのSiO2基板の凹凸部分に欠陥無く下層膜が埋め込まれている。
×:60nmラインアンドスペースのSiO2基板の凹凸部分に欠陥があり下層膜が埋め込まれていない。
【0218】
[平坦性の評価]
幅100nm、ピッチ150nm、深さ150nmのトレンチ(アスペクト比:1.5)及び幅5μm、深さ180nmのトレンチ(オープンスペース)が混在するSiO2段差基板上に、上記得られた膜形成用組成物をそれぞれ塗布した。その後、大気雰囲気下にて、240℃で120秒間焼成して、膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜の形状を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「S-4800」)にて観察し、トレンチ又はスペース上におけるレジスト下層膜の膜厚の最大値と最小値の差(ΔFT)を測定した。
<評価基準>
SS:ΔFT<5nm(平坦性最良)
S :5nm≦ΔFT<10nm(平坦性優良)
A :10nm≦ΔFT<20nm(平坦性良好)
B :20nm≦ΔFT<40nm(平坦性やや良好)
C :40nm≦ΔFT(平坦性不良)
【0219】
【0220】
【0221】
<実施例24>
実施例1におけるリソグラフィー用膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚70nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。ArF用レジスト溶液としては、下記式(4)の化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。
なお、下記式(4)の化合物は、次のように調製した。すなわち、2-メチル-2-メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ-γ-ブチロラクトン3.00g、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn-ヘキサン中に滴下した。このようにして得られる生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて下記式で表される化合物を得た。
【0222】
【0223】
前記式(4)中、40、40、20とあるのは各構成単位の比率を示すものであり、ブロック共重合体を示すものではない。
【0224】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製:ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表3に示す。
【0225】
<実施例25>
前記実施例1におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物の代わりに実施例2におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いたこと以外は、実施例24と同様にして、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表3に示す。
【0226】
<比較例5>
下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例24と同様にして、フォトレジスト層をSiO2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表3に示す。
【0227】
[評価]
実施例24~25、及び比較例5のそれぞれについて、得られた55nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの形状を(株)日立製作所製の電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察した。現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なものを良好とし、そうでないものを不良として評価した。また、当該観察の結果、パターン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を解像性として評価の指標とした。さらに、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を感度として、評価の指標とした。
【0228】
【0229】
表3から明らかなように、マレイミド樹脂を含む本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いた実施例24~25は、比較例5と比較して、解像性及び感度ともに有意に優れていることが確認された。また、現像後のレジストパターン形状もパターン倒れがなく、矩形性が良好であることが確認された。さらに、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例1~2のリソグラフィー用膜形成用組成物から得られる実施例24~25の下層膜は、レジスト材料との密着性が良いことが示された。
【0230】
<実施例26~40>
前記実施例1A~15Aにおけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、150℃のホットプレートでベークして、厚さ70nmの膜を形成した。それらの膜を光学式顕微鏡で観察したところ、いずれも異物が認められず、膜形成が良好であることを確認した。
【0231】
<比較例6~9>
前記比較例1~4におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のホットプレートでベークして、厚さ70nmの膜を形成した。それらの膜を光学式顕微鏡で観察したところ、いずれも一部で異物が認められ、膜形成が不良であることを確認した。
【0232】
本出願は、2018年11月21日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2018-218125)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0233】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料は、溶剤可溶性が良好であり、湿式プロセスが適用可能である。剛直な芳香族マレイミド骨格を有しており、さらに一定の分子量以上の成分を含む樹脂であることにより、薄膜形成時における高温ベークによっても昇華物あるいは分解物の生成が抑制されるため、耐熱性が比較的に高く、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性にも優れ、そのため、リソグラフィー用膜形成材料を含むリソグラフィー用膜形成用組成物はこれらの性能が要求される各種用途において、広く且つ有効に利用可能である。とりわけ、本発明は、リソグラフィー用下層膜及び多層レジスト用下層膜の分野において、特に有効に利用可能である。